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特開2015-95901販売時点管理用途向けRFIDアンテナ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-95901(P2015-95901A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】販売時点管理用途向けRFIDアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20150421BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20150421BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20150421BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20150421BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20150421BHJP
【FI】
   H01Q7/00
   G06K7/10 236
   H01Q15/14 Z
   H01Q1/52
   H01Q1/38
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-224649(P2014-224649)
(22)【出願日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】14/077,123
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】507219491
【氏名又は名称】エヌエックスピー ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ステファン マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ベノ フレッカー
(72)【発明者】
【氏名】ダリウシュ マステラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ウィードニッグ
【テーマコード(参考)】
5B072
5J020
5J046
【Fターム(参考)】
5B072BB10
5B072CC08
5B072CC39
5B072DD10
5J020AA03
5J020BA03
5J020BA04
5J020BC10
5J020BD02
5J020DA03
5J046AA04
5J046AB11
5J046PA07
5J046UA02
(57)【要約】
【課題】RFIDタグの誤検出読み取りを抑制するUHF−RFIDリーダ・アンテナを提供する。
【解決手段】受動的ダイポール構造によって包囲された中央のセグメント化ループ有するUHF−RFIDアンテナが、電界及び磁界の整形を行って、販売時点管理におけるUHF−RFIDリーダによる誤検出読み取りの回数を低減する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板上に配置された複数のセグメントで構成されるループと;
前記誘電体基板上に配置された複数の受動的ダイポール・セグメントとを具え、
前記複数の受動的ダイポール・セグメントが、前記ループと共振して、無線周波数の反射器兼エネルギー吸収器として機能するように、前記ループの周りに配置されていることを特徴とするRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項2】
前記複数の受動的ダイポール・セグメントの第1部分が、曲線形状であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項3】
前記複数の受動的ダイポール・セグメントの第2部分が、直線形状であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項4】
前記ループの前記複数のセグメントが、コンデンサによって互いに電気結合されていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項5】
前記ループが、円形の形状であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項6】
前記ループが、楕円形の形状であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項7】
前記複数の受動的ダイポール・セグメントの前記第1部分のうちの一部が、抵抗器によって電気結合されていることを特徴とする請求項2に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項8】
前記誘電体基板が、ガラス繊維強化エポキシ積層体であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項9】
前記複数のセグメントが、銅で構成されることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項10】
前記ループに電気結合された整合回路をさらに具えていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項11】
前記整合回路が、バランを具えていることを特徴とする請求項10に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項12】
前記複数のセグメントの各々が、前記共振の波長の約8分の1の長さを有することを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項13】
前記複数のセグメントのうち少なくとも2つが、抵抗器を用いて互いに結合されていることを特徴とする請求項4に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項14】
前記誘電体基板上の前記ループ及び前記複数の受動的ダイポール・セグメントが、読み取りゾーンを規定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ・アンテナ。
【請求項15】
RFIDリーダ・アンテナを作製する方法であって、
誘電体基板上に配置された複数のセグメントで構成されるループを用意するステップと;
前記誘電体基板上に配置された複数の受動的ダイポール・セグメントを用意するステップとを含み、
前記複数の受動的ダイポール・セグメントが、前記ループと共振して、無線周波数の反射器兼エネルギー吸収器として機能するように、前記ループの周りに配置されていることを特徴とするRFIDリーダ・アンテナの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在のRFID(Radio Frequency Identification:無線周波数ID)システムは、多数の用途においてバーコードシステムを置き換えることができる。衣服、及び食料品のような他の品目のRFIDタグ付けは、それぞれの産業における関心の高まりを目の当たりにしている。サプライチェーンの末端には、販売時点管理(POS:Point of Sales)用途がある。一般に、バーコード系の製品スキャナをPOSで使用して、販売した製品を識別する。POS端末からの情報に基づいて、サプライチェーン全体を通したすべてのデータを更新する(例えば、棚卸し)と共に、顧客の請求書の作成、及び顧客の支払いを受けた後のあらゆるセキュリティシステムの停止を行う。
【背景技術】
【0002】
バーコードPOSシステムは、一般に非常に小さい検出範囲を有し、このことは、バーコードタグをスキャナの光ビームに対面するように配置して初めて、バーコードタグが読み取り可能になることを意味する。このことは一般に、図1a〜eに示すように、スキャナとの適切な位置合わせに成功するまで、タグ付けした物を位置決めし直すことを必要とするか、あるいは、適切な位置合わせに成功するまで、バーコードに対してスキャナを位置決めし直す(例えば、手持ち型スキャナ)ことを必要とする。図1a〜bは、バーコード120をスキャナ110がスキャン(走査)することができない向きにした、バーコード120付きの製品115を示す。図1cは、バーコード120をスキャナ110がスキャンすることができる向きにした、バーコード120付きの製品115を示す。
【0003】
タグ付け用のRFIDシステムを用いれば、製品に取り付けたRFIDタグをアンテナと位置合わせする必要がないので、POSを通過する製品をより効率的な方法でスキャンすることができる。図2a〜cは、製品215、RFIDリーダ(読み取り機)アンテナ210、及びRFIDタグ220を有するRFIDシステムにおいて許容される位置合わせのいくつかを示す。RFIDタグ220は、ランダムに選定したリーダ・アンテナ210と製品215との位置合わせを用いて読み取ることができる。一般に、RFIDシステムは、バーコードシステムよりも大きい容積となる検出範囲を提供する。
【0004】
従来技術のUHF−RFIDシステムは、一般に、図3に示すような誤検出読み取りの問題を有する。リーダ(図示せず)のRFIDアンテナ310の電磁放射パターンは、RFIDアンテナ310上のRFIDタグ320を検出することになって初めて、POS300におけるRFIDアンテナ310の付近に配置されたRFIDタグ320、321、322及び323を有する製品の検出に至る。従って、POS300において、異なる顧客からの製品315を同時に読み取ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】”Antenna Theory and Design”, 2nd edition, Stutzman, W.L.; Thiele, G.A.; Wiley 1998
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、被制御の読み取り範囲を提供して、RFIDタグの誤検出読み取りを抑制する所定の放射パターンを有するUHF−RFIDリーダ・アンテナを開示する。特別な受動的ダイポール構造を用いて、誤検出読み取りを低減して所定の読み取りゾーンを生じさせるRF伝搬領域を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1a〜1bは、スキャナがスキャンすることのできない向きのバーコードを有する製品を示す図であり、図1cは、スキャナがスキャンすることのできる向きのバーコードを有する製品を示す図である。
図2図2a〜cは、RFIDシステムにおいて許容される製品の向きのいくつかを示す図である。
図3】UHF−RFIDシステムにおける誤検出読み取りの問題を示す図である。
図4a】本発明による実施形態を示す図である。
図4b】本発明による実施形態を示す図である。
図5】本発明による実施形態を示す図である。
図6a】本発明による実施形態を示す図である。
図6b】本発明による実施形態を示す図である。
図6c】本発明による実施形態を示す図である。
図6d】本発明による実施形態を示す図である。
図6e】本発明による実施形態の電界を、本発明によらない実施形態と比較して示す図である。
図7図8a〜bに用いる座標系を示す図である。
図8a】本発明による実施形態について、ゲインを角度の関数としてXY平面上に示す図である。
図8b】本発明による実施形態について、ゲインを角度の関数としてXZ平面上に示す図である。
図9】本発明による実施形態を示す図である。
図10】本発明による実施形態を示す図である。
図11a】本発明による実施形態の電界を、本発明によらない実施形態と比較して示す図である。
図11b】本発明による実施形態の電界を、本発明によらない実施形態と比較して示す図である。
図11c】本発明による実施形態の電界を、本発明によらない実施形態と比較して示す図である。
図11d】本発明による実施形態の電界を、本発明によらない実施形態と比較して示す図である。
図12】本発明によるセグメント化ループの代案実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図4aに、本発明の実施形態によるRFIDアンテナ400を示す。セグメント化ループ410は、受動的ダイポール構造420a及び420bによって包囲され、これらの受動的ダイポール構造は、セグメント化ループ410が放出するRF電磁界を閉じ込める。ループのセグメント化は、電気的に大型のアンテナが、電気的に小型のアンテナのように挙動することを可能にする。セグメント化されたセクション(区分)が、隣接するセクション間に非常に小さな位相遅延をもたらし、セグメント515(図5参照)に沿った電流が、強力で均一な磁界を生じさせる一定の大きさに留まる。セグメント長を1/8波長のオーダーになるように選択することは、構造の複雑さとループ・セグメント内の電流の均一性との妥協点を可能にする。
【0009】
本発明によれば、図4bに示すように、導電材料430(例えば銅)を誘電体基板440上に配置することによって、RFIDアンテナ400を作製することができる。導電材料430の厚さは、一般に、用途に適合するように選択する必要がある。代表的には、厚さ1.5mmのFR4材料(ガラス繊維強化エポキシ積層体)が、誘電体基板440用に選択され、代表的には、導電材料430用の厚さ0.035mmの銅と対にされる。適切なFR4材料は、代表的には、約4.3の誘電率εrを有する。誘電体基板440は、RFIDアンテナ400の共振長に影響を与える。誘電体基板440が空気より高い誘電率を有する限り、誘電体基板440上に配置されたアンテナの物理的サイズは、空気に囲まれた同じ共振周波数を有するアンテナに比べて、同じ共振周波数に対する倍率だけスケールダウン(縮小)される。この倍率は、1/√εrに比例する。
【0010】
RFIDアンテナは、導電線、集中素子(抵抗器、コンデンサ、コネクタ、バラン(平衡不平衡変成器))、及び誘電体基板を具えている。RFIDアンテナ400は、1層のPCB(Printed Circuit Board:プリント回路基板)ボードの構造と同様の構造を有し、このことは一般に容易な生産を可能にする。
【0011】
RFIDアンテナ400は、2つの主要部分を具えているものとして見ることができる。即ち、放射アンテナとして動作するセグメント化ループ410、及び所定の読み取りゾーン外に放射されるエネルギーを反射し吸収することによって放射電磁界を整形する受動的ダイポール構造420a及び420bである。図5に、セグメント化ループ410を示し、セグメント化ループ410のセグメント515は、ギャップ520によって互いに分離され、コンデンサ525を用いて互いに結合されている。セグメント化ループ410は、その直径及び共振周波数が所望用途に適するように設計されている。
【0012】
セグメント化ループ410は、任意にスケーリング(拡大縮小)することができ、セグメント化ループ410の直径及びコンデンサ525の値は、セグメント化ループ410の共振周波数に影響を与える。上述したように、セグメント化ループ410のセグメント515の長さは、一般に、共振波長の8分の1のオーダーである。セグメント化ループ410の円周が、より長いセグメント515を必要とする場合、一般に、追加的なセグメント化(区分)を導入して、セグメント長を一定に保つ。
【0013】
図6aに、本発明による実施形態の受動的ダイポール構造420a及び420bを示し、これは、所望の読み取りゾーンの外側の電磁界を抑制する。所望の読み取りゾーンは、主に、セグメント化ループ410(図5参照)の放射電力、及びアンテナ400を用いてスキャンされる受動的RFIDタグ(図示せず)の性能によって規定される。一般に、読み取りゾーンは、特定用途向けに、そして、RFIDシステムの全構成要素の知識を以って規定され、アンテナ400のような読み取りアンテナは、所望の読み取りゾーンを有するように設計することができる。
【0014】
受動的ダイポール構造420a及び420bは、それぞれ4つの直線セグメント620及び4つの曲線セグメント610の合計で構成される。図6aに示すように、直線セグメント620及び曲線セグメント610の各対は、抵抗器650を用いて互いに結合される。受動的ダイポール構造420a及び420bは、セグメント化ループ410の共振周波数に整合するように選択される。
【0015】
受動的ダイポール構造420a及び420bは、反射器及びエネルギー吸収器として機能する。適切な性能を保証するためには、セグメント化ループ410から受動的ダイポール構造420a及び420bまでの距離を適切に選択しなければならない。図6bに、距離675及び680を示す。距離680は、一般に、曲線セグメント610の端部が直線セグメント620の端部とy方向に整列するか、あるいは、曲線セグメント610が直線セグメント620とオーバラップするように選択する必要がある(例えば、図6a参照)。
【0016】
なお、本発明による実施形態では、アンテナ666について図6dに示すように、曲線セグメント610が、直線セグメント620の外側にオーバラップすることができる。
【0017】
図6cにアンテナ600を示し、このアンテナは、距離680が適切に調整されておらず電磁界抑制効果の消失は生じるが、他のすべての寸法はアンテナ400と同じである。
【0018】
図6eは、アンテナ400の電磁界400aを、アンテナ600のそれぞれの直線セグメント620の方向に沿った電磁界600aと比較したものであり、本発明による実施形態におけるアンテナ600についての所望の電磁界抑制効果の消失を示している。電界600aを、点x=−100mm、y=50mm、z=10mmから点x=100mm、y=50mm、z=10mmまでプロットし、x=0、y=0及びz=0が、セグメント化ループ410の中心を定義する。なお、アンテナ400について、セグメント化ループの円周が増加すれば、一般に、より大きな読み取りゾーンが生じ、受動的ダイポール構造420a及び420bを相応にスケーリングして、電磁界抑制効果を保ち、セグメント化ループ410及び受動的ダイポール構造420a及び420bの共振周波数は低下させるが、一般に、同程度までは低下させない。
【0019】
八木・宇田構成によれば、セグメント化ループ410と受動的ダイポール構造420a及び420b(図4a参照)との間の距離によって、受動的ダイポール構造420a及び420の反射挙動が決まる(”Antenna Theory and Design”, 2nd edition, Stutzman, W.L.; Thiele, G.A.; Wiley 1998(非特許文献1)参照、その全文を参照する形で本明細書に含める)。なお、八木・宇田構成についての代表的な「経験則」は、一般に用いることはできない、というのは、5つの結合アンテナ構造、即ち、4つの受動的ダイポール構造420aと420b、及びセグメント化ループ410が、誘電体基板440と共に存在し、このため、適切な幾何学的形状を見出すためには、一般に、数値シミュレーションが必要になるからである。受動的ダイポール構造420a及び420bの共振周波数がセグメント化ループ410の共振周波数と一致するので、受動的ダイポール構造420a及び420bがセグメント化ループ410と効率的に結合して、セグメントループ410によって放出される放射場からのエネルギーを反射し、部分的に吸収もする。受動的ダイポール構造420a及び420bが再放射することを防止するために、受動的ダイポール構造420a及び420bの各々の中間に抵抗器650を配置する(図6a参照)。抵抗器650は、受動的ダイポール構造420a及び420bが吸収したエネルギーを消散すべく機能する。
【0020】
一般に、RFIDアンテナ400は、標準的なSMA(SubMiniature version A:サブミニチュアA型)コネクタを有するケーブルを用いてRFIDリーダに接続され、ケーブル内の放射電磁界を抑制するための負平衡−平衡変換器またはバラン(図示せず)が後続する。使用するバランは、一般に、高いコモンモード・インピーダンスを有する電流バランである。
【0021】
図7に、それぞれ図8a及び8b中のプロット801及び802用に使用する座標系700を示す。
【0022】
図8aのプロット801は、受動的ダイポール構造420a及び402bの無いセグメント化ループ410についてのゲインパターン810を、受動的ダイポール構造420a及び420bの有るセグメント化ループ410についてのゲインパターン820と、XY平面(図7参照)内で比較したものである。プロット801は、PHI=−90度からPHI=+90度まで進む。図8bのプロット802は、受動的ダイポール構造420a及び420bの無いセグメント化ループ410についてのゲインパターン830を、受動的ダイポール構造420a及び420bのあるセグメント化ループ410についてのゲインパターン840と、XZ平面(図7参照)内で比較したものである。プロット802は、THETA=0度からTHETA=+180度まで進む。なお、整合回路931は、バラン(図示せず)及びSMAコネクタ(図示せず)を、給電点として働くギャップ930の所に含み、この給電点は非対称性を導入し、この非対称性はバランによってある程度抑制される。しかし、図8a〜bでは、バラン及び給電点の効果はモデル化されていない。
【0023】
図8a〜8bより、受動的ダイポール構造420a及び420b無しでは、図3のRFIDアンテナの平面であるx方向及びy方向に最大ゲインが得られ、POS300における誤検出読み取りを低減するためには、感度を低減することが望まれる。受動的ダイポール構造420a及び420bが、ゲインパターン810及び830を、それぞれゲインパターン820及び840に再整形して、図8a〜bに見られるように、x方向及びy方向の感度を低減しつつ、図8bに示すように、z方向の感度を高める。本発明によれば、セグメント化ループ410と受動的ダイポール構造420a及び420bとの組合せが、明確に規定された読み取りゾーンをアンテナ400用に生成し、z方向のゲインをより高くし、x方向及びy方向のゲインを抑制する。
【0024】
図9に、本発明による実施形態を示す。受動的ダイポール構造420aの直線セグメント980と981とは、ターミネータ(終端素子)として機能する50Ωの抵抗器950によって、ギャップ910間で互いに電気結合されている。受動的ダイポール構造420bの曲線セグメント901と902とは、ターミネータとして機能する50Ωの抵抗器950によって、ギャップ911間で互いに電気結合されている。ギャップ520は、セグメント化ループ410のセグメント515のうち一部を分離し、ギャップ520は、1.3pFのコンデンサ525によって架橋され、コンデンサ525は、それぞれのセグメント515を連結して、約915MHzの共振周波数を実現する。なお、コンデンサ525は、セグメント515のインダクタンスと共振して、セグメント化ループ410のインピーダンスを管理可能な状態に保つ。コンデンサ525の値を変化させることによって、共振周波数を、UHF−RFID帯域内の値に調整することができる。ギャップ925は、並列な1.3pFのコンデンサ525及び91Ωの抵抗器951の両者によって架橋されて、リーダ及びケーブルを含む50Ω系(図示せず)とセグメント化ループ410との、よりロバスト(頑健)な整合を実現する。91Ωの抵抗器951は、セグメント化ループ410のQ値を十分に減少させるべく機能する。ギャップ930は、セグメント化ループ410の励起用の給電スロットとして機能する。整合回路931は、リーダからのケーブルと給電スロット(ギャップ930)との間にバランを含む。
【0025】
図10に、本発明による実施形態についての寸法を示す。これらの寸法は、電磁界のコンピュータ・シミュレーションを用いて、適切な共振周波数に対して定まる。使用される代表的なコンピュータ・シミュレーション・パッケージは、HFSS(市販の有限要素法解法)及びCST(Computer Simulation Technology(コンピュータ・シミュレーション技術);時間領域の解法を用いる)である。セグメント化ループ410の直径1000は、約5.0cmである。曲線セグメント610とセグメント化ループ410との間の間隔1090は、約5.6cmである。直線セグメント620間の間隔1050は、約9.0cmである。距離1060は、誘電体基板440の長さであり、約16.5cmである。セグメント化ループ410と直線セグメント620との間隔1080は、約2.0cmである。曲線セグメント610の寸法1010は、約8.0cmであり、曲線セグメントの寸法1025は、約3.0cmである。曲線セグメント515の幅1026は、約0.2cmであり、曲線セグメント610の幅1005は、約0.2cmであり、直線セグメント620の幅1015は、約0.1cmである。各直線セグメント620は、約6.6cmの長さであり、各曲線セグメント515は、約1.9cmの長さである。すべてのギャップ520、925、930、910、911は、約0.05cmの径間である。ギャップ520、925、930、910、911のサイズは、使用するコンデンサ525及び抵抗器950のパッケージ及びフットプリント(実装面積)に応じて変更することができる。
【0026】
より一般的には、間隔1080及び1090は、セグメント化ループ410から、それぞれダイポール構造420a及び420bまでの間隔である。間隔1080及び1090は、ダイポール構造420a及び420bの共振長と共に、距離675及び680(図6b参照)を決定する。従って、距離675及び680は、セグメント化ループの直径1000、それぞれダイポール構造420a及び420bの共振長、及びそれぞれ間隔1080及び1090によって決まる。曲線セグメント610が直線セグメント620とオーバラップすることが重要であり;このオーバラップの量は、セグメント化ループ410の直径1000、ダイポール構造420a及び420bの共振長、及びそれぞれの間隔1080及び1090によって決まる。セグメント化ループ410及びダイポール構造420aと420bの幾何学的形状が、例えばスケーリングによるオーバラップを可能にしない際は、本発明により機能するアンテナ400の限界に達し、オーバラップが存在することを保証するための行動が必要になる。例えば、誘電体基板440を、より低い誘電率を有する誘電体基板と置き換えて、ダイポール構造420a及び420bの長さを増加させてオーバラップを作り出すことを可能にすることができる。
【0027】
曲線ダイポール・セグメント610は、特定の角度分だけ湾曲して円弧を構成し、その直径は、一般に、セグメント化ループ410の直径1000よりも約60パーセント〜70パーセントだけ大きくする必要がある。この要求は、間隔1080及び1090、セグメント化ループ410の直径1000、及びダイポール構造420a及び420bと共に、間隔675が適切な範囲内であることを保証する。
【0028】
図11a〜dに、本発明による実施形態について、受動的ダイポール構造420の方向に沿った電界1120、及び受動的ダイポール構造420を除去した、同じ位置における電界1130を示す。
【0029】
図11a及び11bは、それぞれ、上部の受動的ダイポール構造620(x=−100mm、y=50mm、z=10mm〜x=100mm、y=50mm、z=10mm、ここにx=0、y=0及びz=0は、セグメント化ループ410の中心である)、及び下部の受動的ダイポール構造6209(x=−100mm、y=−50mm、z=10mm〜x=100mm、y=−50mm、z=10mm、ここにx=0、y=0及びz=0は、セグメント化ループ410の中心である)の方向に沿った電界1120を示す。比較のため、すべての受動的ダイポール構造620及び610を除去した電界1130を示す。
【0030】
図11cに、図9の左側の受動的ダイポール構造610(x=−100mm、y=−50mm、z=10mm〜x=−100mm、y=50mm、z=10mm、ここにx=0、y=0及びz=0は、セグメント化ループ410の中心である)の方向に沿った電界1125を示し、このダイポール構造は、バランを含む整合回路931を有する。比較のため、すべての受動的ダイポール構造610及び620を除去した電界1140を示す。
【0031】
図11dに、図9の右側の受動的ダイポール構造610(x=100mm、y=−50mm、z=10mm〜x=100mm、y=50mm、z=10mm、ここにx=0、y=0及びz=0は、セグメント化ループ410の中心である)の方向に沿った電界1126を示す。比較のため、すべての受動的ダイポール構造610及び620を除去した電界1140を示す。なお、電界1125と1126との差、並びに電界1140と1150との差は、図9中の、セグメント化ループ410の左側にある(整合回路931の一部である)給電点の位置、及び91Ωの抵抗器951に起因する。
【0032】
図12に、本発明による実施形態における、セグメント化ループ410の代案としての、セグメント化ループ1200を示す。このセグメント化ループは楕円形であり、セグメント化ループ1200の楕円の短軸が、およそセグメント化ループ410の半径であるものと仮定すれば、セグメント化ループ410の電磁界よりも遠く左右に広がる電磁界を発生する。なお、長方形または正方形のセグメント化ループのような、より低次の多角形のセグメント化ループは、尖った角部が、同相かつ大きさが一定の電流を乱すので、一般に避けるべきである。導電経路のエッジに電束電流が発生し、一般に、電流はできる限り最短の経路を選ぶので、尖った角部の内角では、尖った角部の外角に比べて、より高い電流密度が存在する。このことは一般に不所望な放射をもたらす。
【0033】
本発明は、特定実施形態に関連して説明してきたが、以上の説明を考慮すれば、多数の代案、変更、及び変形が明らかであることは、当業者にとって明白である。従って、本発明は、添付した特許請求の範囲の精神及び範囲内に入る他の代案、変更、及び変形のすべてを包含することを意図している。
【符号の説明】
【0034】
110 スキャナ
115 製品
120 バーコード
210 アンテナ
215 製品
220 RFIDタグ
300 POS
310 RFIDアンテナ
315 製品
320、321、322、323 RFIDタグ
400 RFIDアンテナ
400a 電磁界
410 セグメント化ループ
420a、420b 受動的ダイポール構造
440 誘電体基板
515 セグメント
520 ギャップ
525 コンデンサ
600a 電磁界
610 曲線セグメント
620 直線セグメント
650 抵抗器
666 アンテナ
675 距離
680 距離
700 座標系
801、802 プロット
810、820、830、840 ゲインパターン
901、902 セグメント
910、911、925、930 ギャップ
931 整合回路
950、951 抵抗器
980、981 直線セグメント
1000 直径
1010、1025、寸法
1005、1015、1026 幅
1060 距離
1080、1090 間隔
1120、1125、1126、1130、1140、1150 電界
1200 セグメント化ループ
図1
図2
図3
図4b
図5
図6a
図6e
図8a
図8b
図9
図11a
図11b
図11c
図11d
図4a
図6b
図6c
図6d
図7
図10
図12
【外国語明細書】
2015095901000001.pdf