(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-95928(P2015-95928A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】スイッチングコンバータおよびその制御回路、電流検出方法、AC/DCコンバータ、電源アダプタおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20150421BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-232961(P2013-232961)
(22)【出願日】2013年11月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 弘基
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA04
5H730AA20
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD32
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD41
5H730FF19
5H730FG05
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX35
5H730XX43
(57)【要約】
【課題】実効しきい値電圧の変動やばらつきを抑制する。
【解決手段】制御回路200は、DC/DCコンバータ100に使用される。DC/DCコンバータ100は、少なくとも、コイルL
PおよびスイッチングトランジスタM
1を有する。電流検出回路300は、スイッチングトランジスタM1のオン期間にコイルL
Pに流れる電流I
Pを所定のしきい値電流I
THと比較する。しきい値電圧生成部304は、スイッチングトランジスタM1のオン期間において時間とともに増大するしきい値電圧V
TH(t)を生成する。コンパレータ302は、スイッチングトランジスタM1に流れるコイル電流I
Pに応じた検出電圧V
CSをしきい値電圧V
TH(t)と比較する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングコンバータに使用される制御回路であって、
前記スイッチングコンバータは、少なくとも、スイッチングトランジスタおよび前記スイッチングトランジスタと接続されたコイルを含み、
前記制御回路は、前記スイッチングトランジスタのオン期間に前記コイルに流れる電流を所定のしきい値電流と比較する電流検出回路を備え、
前記電流検出回路は、
前記スイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大するしきい値電圧を生成するしきい値電圧生成部と、
前記スイッチングトランジスタに流れる電流に応じた検出電圧を前記しきい値電圧と比較するコンパレータと、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記しきい値電圧は、前記スイッチングトランジスタのオン期間中、単調増加することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記コンパレータの応答遅延をτDとするとき、前記しきい値電圧VTH(t)は、所定の時間範囲において、
VTH(t)=VTH_EFF×t/(t+τD)
またはそれを近似した波形を有することを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記しきい値電圧VTHは、一定成分と、前記スイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大する補正成分と、を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御回路。
【請求項5】
前記補正成分は時間の経過とともに所定レベルに収束することを特徴とする請求項4に記載の制御回路。
【請求項6】
前記補正成分は、前記スイッチングトランジスタのオン期間中、実質的に一定の傾きで増加することを特徴とする請求項4に記載の制御回路。
【請求項7】
前記しきい値電圧生成部は、
定電流を生成する電流源と、
前記電流源により充電されるキャパシタと、
前記キャパシタと接続された抵抗と、
を含み、前記キャパシタの電圧を、前記しきい値電圧として出力するよう構成され、
前記しきい値電圧は、前記キャパシタと前記抵抗で定まる時定数にしたがって変化することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
前記しきい値電圧生成部は、
前記所定の基準電流を生成する基準電流生成部と、
前記スイッチングトランジスタのスイッチングと同期しており、前記スイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大する補正電流を生成する補正電流生成部と、
前記基準電流と前記補正電流を加算した電流を、前記しきい値電圧に変換する電流電圧変換回路と、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項9】
前記コンパレータは、過電流検出のために設けられ、
前記制御回路は、前記コンパレータの出力が、前記検出電圧が前記しきい値電圧より高いことを示すと、所定の過電流保護処理を行うことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の制御回路。
【請求項10】
前記制御回路は、
前記スイッチングコンバータの出力電圧が所定の目標値に近づくように値が調節されるフィードバック電圧を受けるフィードバック端子と、
前記検出電圧を前記フィードバック電圧と比較し、前記検出電圧が前記フィードバック電圧より高くなるとアサートされるオフ信号を生成するエラーコンパレータと、
前記オフ信号を契機としてオフレベルに遷移するパルス信号を生成するロジック部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の制御回路。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の制御回路。
【請求項12】
少なくとも、コイルと、前記コイルと接続されたスイッチングトランジスタと、前記スイッチングトランジスタと直列に設けられた検出抵抗と、を含む出力回路と、
請求項1から請求項11のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチングコンバータ。
【請求項13】
交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電圧を平滑化する平滑キャパシタと、
前記平滑キャパシタの電圧を入力電圧として受けるスイッチングコンバータと、
を備え、
前記スイッチングコンバータは、
少なくとも、コイルと、前記コイルと接続されたスイッチングトランジスタと、前記スイッチングトランジスタと直列に設けられた検出抵抗と、を含む出力回路と、
請求項1から請求項12のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするAC/DCコンバータ。
【請求項14】
負荷と、
前記負荷に直流電圧を供給する請求項13に記載のAC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項15】
請求項13に記載のAC/DCコンバータを備えることを特徴とする電源アダプタ。
【請求項16】
スイッチングコンバータにおける電流検出方法であって、
前記スイッチングコンバータは、少なくとも、スイッチングトランジスタおよび前記スイッチングトランジスタと接続されたコイルを含み、
前記電流検出方法は、
前記スイッチングトランジスタに流れる電流に応じた検出電圧を生成するステップと、
前記スイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大するしきい値電圧を生成するステップと、
前記検出電圧を前記しきい値電圧と比較するステップと、
を含むことを特徴とする電流検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビや冷蔵庫をはじめとするさまざまな家電製品は、外部からの商用交流電力を受けて動作する。ラップトップ型コンピュータ、携帯電話端末やタブレットPCをはじめとする電子機器も、商用交流電力によって動作可能であり、あるいは商用交流電力によって、機器に内蔵の電池を充電可能となっている。こうした家電製品や電子機器(以下、電子機器と総称する)には、商用交流電圧をAC/DC(交流/直流)変換する電源装置(インバータ)が内蔵され、あるいはインバータは、電子機器の外部の電源アダプタ(ACアダプタ)に内蔵される。
【0003】
図1は、本発明者が検討したAC/DCコンバータ400rのブロック図である。AC/DCコンバータ400rは主として整流回路402、平滑キャパシタ404およびDC/DCコンバータ(スイッチングコンバータ)100rを備える。
【0004】
整流回路402は、商用交流電圧V
ACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。整流回路402の出力電圧は、平滑キャパシタ404によって平滑化され、直流電圧V
DCに変換される。
【0005】
直流電圧V
DCは、後段の絶縁型のDC/DCコンバータ100rの入力ライン104に供給される。DC/DCコンバータ100rは、直流電圧V
DCを降圧して、目標値に安定化された出力電圧V
OUTを生成し、出力ライン106に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0006】
DC/DCコンバータ100rは、出力回路102および制御回路200rを備える。出力回路102は、スイッチングトランジスタM1、検出抵抗R
CS、トランスT1、整流ダイオードD1、出力キャパシタC1、フィードバック回路108を含む。フィードバック回路108は、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBを生成し、制御回路200rのフィードバック端子(FB端子)に供給する。
【0007】
スイッチングトランジスタM1および検出抵抗R
CSは、トランスT1の1次コイルL
Pと接続される。整流ダイオードD1および出力キャパシタC1は、トランスT1の2次コイルL
Sと接続される。
【0008】
制御回路200rの出力端子OUTは、スイッチングトランジスタM1のゲートに接続される。制御回路200rは、出力電圧V
OUTが所定の目標値に近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号S
OUTを生成し、スイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0009】
制御回路200rは、スイッチングトランジスタM1のオン期間において、1次コイルL
PおよびスイッチングトランジスタM1に流れる電流(コイル電流I
Pという)を検出可能に構成される。具体的には、制御回路200rの電流検出(CS)端子は、検出抵抗R
CSと接続されており、CS端子には、コイル電流I
Pに比例した検出電圧V
CSが入力される。電流検出回路300rは、検出電圧V
CSを所定のしきい値電圧V
THと比較することにより、コイル電流I
Pをしきい値電流I
TH(=V
TH/R
CS)比較する。
以上がAC/DCコンバータ400rの構成である。
【0010】
図2は、DC/DCコンバータ100rの動作波形図である。パルス信号S
OUTがハイレベルのとき、スイッチングトランジスタM1がオンする。スイッチングトランジスタM1がオンすると、コイル電流I
Pが時間とともに増加し、それにしたがって検出電圧V
CSも増大する。パルス信号S
OUTがローレベルとなると、スイッチングトランジスタM1がオフする。スイッチングトランジスタM1のオフ期間、2次コイルL
Sに電流I
Sが流れ、出力キャパシタC1に供給される。スイッチングトランジスタM1のスイッチングを繰り返すことにより、出力電圧V
OUTが所望のレベルに安定化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、
図1のAC/DCコンバータ400rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0012】
スイッチングトランジスタM1のオン期間におけるコイル電流I
Pに着目する。スイッチングトランジスタM1のオン期間において、1次コイルL
Pの両端間には直流電圧V
DCが印加され、以下の式が成り立つ。
V
DC==L
P・dI
P/dt …(1)
V
CS=R
CS×I
P …(2)
これを変形すると、式(3)を得る。
V
CS=R
CS/L
P×∫V
DCdt=(R
CS/L
P×V
DC)×t …(3)
(R
CS/L
P×V
DC)は、検出電圧V
CSの傾き[V/s]であり、以下、αと記す。
【0013】
したがってスイッチングトランジスタM1のオン期間における検出電圧V
CSの傾きαは、直流電圧V
DCおよび1次コイルL
Pのインダクタンスに依存する。
【0014】
図3(a)は、電流検出回路300rの動作波形図であり、
図3(b)は、実効しきい値電圧を示す図である。電流検出回路300rのコンパレータは応答遅延τ
Dを有しており、その出力信号S
CMPは、V
CS=V
THとなってから、遅延時間τ
D経過後に遷移する。コンパレータの出力信号S
CMPが変化したときの検出電圧V
CSを、実効しきい値電圧V
TH_EFFと呼ぶ。
図3(a)に示されるように、実効しきい値電圧V
TH_EFFは検出電圧V
CSの傾きαが大きいほど、その理想値V
THよりも高くなり、式(4)で与えられる。
V
TH_EFF=V
TH+α×τ
D …(4)
【0015】
したがって、コンパレータの出力S
CMPを過電流保護などに利用した場合、潮流電圧V
DCの変動やコイルL1のばらつきにより、傾きαが変化し、それにともなって実効しきい値電圧ひいては、しきい値電流I
THが変動し、あるいはばらつくことになる。
【0016】
なお以上の検討を、当業者の一般的な技術常識と認識してはならず、本発明者が独自に認識したものである。
【0017】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、実効しきい値電圧の変動やばらつきを抑制可能な、スイッチングコンバータの制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のある態様は、スイッチングコンバータに使用される制御回路に関する。スイッチングコンバータは、少なくとも、スイッチングトランジスタおよびスイッチングトランジスタと接続されたコイルを含む。制御回路は、スイッチングトランジスタのオン期間にコイルに流れる電流を所定のしきい値電流と比較する電流検出回路を備える。電流検出回路は、スイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大するしきい値電圧を生成するしきい値電圧生成部と、スイッチングトランジスタに流れる電流に応じた検出電圧をしきい値電圧と比較するコンパレータと、を備える。
【0019】
コンパレータの応答遅延τ
Dの間に、検出電圧V
CSがしきい値電圧V
THを超える電圧幅(オーバーシュート量)ΔVは、検出電圧V
CSの傾きαが大きいほど大きくなる。この態様では、オン期間での経過時間が長くなるにしたがい、しきい値電圧V
THのレベルを増加させることにより、オーバーシュート量ΔVをキャンセルすることができ、実効しきい値電圧V
TH_EFFの変動やばらつきを抑制できる。
【0020】
しきい値電圧は、スイッチングトランジスタのオン期間中、単調増加してもよい。
【0021】
しきい値電圧V
TH(t)は、所定の時間範囲において、
V
TH(t)=V
TH_EFF×t/(t+τ
D)
もしくは、それを近似した波形を有してもよい。τ
Dはコンパレータの応答遅延である。
【0022】
しきい値電圧V
THは、一定成分と、スイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大する補正成分と、を含んでもよい。
【0023】
補正成分は時間の経過とともに所定レベルに収束してもよい。
【0024】
しきい値電圧生成部は、定電流を生成する電流源と、電流源により充電されるキャパシタと、キャパシタと接続された抵抗と、を含み、キャパシタの電圧を、しきい値電圧として出力するよう構成され、しきい値電圧は、キャパシタと抵抗で定まる時定数にしたがって変化してもよい。
【0025】
補正成分は、スイッチングトランジスタのオン期間中、実質的に一定の傾きで増加しつづける。
【0026】
しきい値電圧生成部は、所定の基準電流を生成する基準電流生成部と、スイッチングトランジスタのスイッチングと同期しておりかつスイッチングトランジスタのオン期間において時間とともに増大する補正電流を生成する補正電流生成部と、基準電流と補正電流を加算した電流を、しきい値電圧に変換する電流電圧変換回路と、を含んでもよい。
【0027】
コンパレータは、過電流検出のために設けられ、制御回路は、コンパレータの出力が、検出電圧がしきい値電圧より高いことを示すと、所定の過電流保護処理を行う。
【0028】
制御回路は、スイッチングコンバータの出力電圧が所定の目標値に近づくように値が調節されるフィードバック電圧を受けるフィードバック端子と、検出電圧をフィードバック電圧と比較し、検出電圧がフィードバック電圧より高くなるとアサートされるオフ信号を生成するエラーコンパレータと、オフ信号がアサートされるとオフレベルに遷移するパルス信号を生成するロジック部と、をさらに備えてもよい。
【0029】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。制御回路をひとつのIC(Integrated Circuit)チップに集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0030】
本発明の別の態様は、スイッチングコンバータに関する。スイッチングコンバータは、少なくとも、コイルと、コイルと接続されたスイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタと直列に設けられた検出抵抗と、を含む出力回路と、上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。
【0031】
本発明の別の態様は、AC/DCコンバータに関する。AC/DCコンバータは、交流電圧を整流する整流回路と、整流回路の出力電圧を平滑化する平滑キャパシタと、平滑キャパシタの電圧を入力電圧として受ける上述のいずれかのスイッチングコンバータと、を備える。
【0032】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、負荷と、負荷に直流電圧を供給する上述のAC/DCコンバータと、を備えてもよい。
【0033】
本発明の別の態様は電源アダプタに関する。電源アダプタは、上述のAC/DCコンバータを備えてもよい。
【0034】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0035】
本発明のある態様によれば、実効しきい値電圧の変動やばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明者が検討したAC/DCコンバータのブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、電流検出回路の動作波形図であり、
図3(b)は、実効しきい値電圧を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る制御回路を備えたAC/DCコンバータの回路図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、
図4の電流検出回路の動作波形図である。
【
図6】
図6(a)は、しきい値電圧V
TH(t)と実効しきい値電圧V
TH_EFFの関係を示す図である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、しきい値電圧V
TH(t)の例を示す波形図である。
【
図8】第1の構成例に係るしきい値電圧生成部の回路図である。
【
図9】第2の構成例に係るしきい値電圧生成部の回路図である。
【
図10】AC/DCコンバータを備えるACアダプタを示す図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、AC/DCコンバータを備える電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0038】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0039】
図4は、実施の形態に係る制御回路200を備えたAC/DCコンバータ400の回路図である。AC/DCコンバータ400は、交流電圧V
ACを直流電圧V
OUTに変換する。AC/DCコンバータ400の基本構成は、
図1のAC/DCコンバータ400rと同様であるため、以下、相違点のみを重点的に説明する。
【0040】
AC/DCコンバータ400は、整流回路402、平滑キャパシタ404、DC/DCコンバータ100を備える。整流回路402、平滑キャパシタ404については、
図1を参照して説明した通りである。
【0041】
フィードバック回路108は、DC/DCコンバータ100の出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBを生成する。たとえばフィードバック回路108は、シャントレギュレータ110およびフォトカプラ112を含む。シャントレギュレータ110は、直流電圧V
OUTを分圧した電圧と所定の目標値V
REFの誤差を増幅することにより、誤差がゼロとなるようにレベルが調節されるフィードバック信号S1を生成する。
【0042】
フォトカプラ112は、その1次側の発光素子がフィードバック信号S1によって制御され、フォトカプラ112の2次側の受光素子に生ずる信号が、フィードバック電圧V
FBとして制御回路200のFB端子に入力される。
【0043】
なお、トランスT1の1次側と2次側の絶縁が要求されない場合、フォトカプラ112を用いずに、シャントレギュレータ110とFB端子を配線で接続してもよい。さらに、シャントレギュレータ110の機能、つまり誤差増幅器を、制御回路200に内蔵してもよい。
【0044】
検出抵抗R
CSは、スイッチングトランジスタM1と直列に設けられる。スイッチングトランジスタM1のオン期間において、1次コイルL
P、スイッチングトランジスタM1、検出抵抗R
CSの経路にコイル電流I
Pが流れる。なお本実施の形態では、スイッチングトランジスタM1のソースおよび検出抵抗R
CSの一端が接地され、検出抵抗R
CSの他端がFB端子と接続される。検出抵抗R
CSの他端に生ずる検出電圧V
CS’は負電圧となる。
V
CS’=−I
P×R
CS
当然のことながら、スイッチングトランジスタM1および検出抵抗R
CSを、
図1のようにレイアウトし、検出電圧V
CSを正電圧としてもよい。
【0045】
以下、制御回路200の具体的な構成を説明する。
制御回路200は、反転アンプ202、エラーコンパレータ204、ロジック部206、ドライバ208および電流検出回路300を備え、ひとつの半導体基板に一体集積化される。
【0046】
反転アンプ202は、負の検出電圧V
CS'を反転し、正の検出電圧V
CSを生成する。エラーコンパレータ204は、検出電圧V
CSをフィードバック電圧V
FBと比較し、V
CS>V
FBとなると、オフ信号S
OFFをアサート(たとえばハイレベル)する。
【0047】
ロジック部206は、スイッチングトランジスタM1のオン、オフを指示するパルス信号S
PWMを生成する。ロジック部206は、オフ信号S
OFFがアサートされると、パルス信号S
PWMをスイッチングトランジスタM1のオフに対応するオフレベル(たとえばローレベル)に遷移させる。またロジック部206は、所定の周期のクロック信号と同期して、所定のスイッチング周期ごとに、パルス信号S
PWMをスイッチングトランジスタM1のオンに対応するオンレベル(たとえばハイレベル)に遷移させる。かくしてパルス信号S
PWMはパルス幅変調される。
ドライバ208は、パルス信号S
PWMに応じたゲートパルス信号S
OUTを生成し、スイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0048】
電流検出回路300は、スイッチングトランジスタM1のオン期間に、1次コイルL
Pに流れるコイル電流I
Pを所定のしきい値電流I
THと比較する。たとえば電流検出回路300は、過電流保護(OCP:Over Current Protection)のために設けられ、ロジック部206は、I
P>I
THとなると、スイッチングトランジスタM1をオフし、過電流状態から回路素子を保護する。
【0049】
電流検出回路300は、コンパレータ302およびしきい値電圧生成部304を備える。しきい値電圧生成部304は、時間とともに変化するしきい値電圧V
TH(t)を生成する。
【0050】
コンパレータ302は、コイル電流I
Pに応じた検出電圧V
CSを、しきい値電圧V
TH(t)と比較し、V
CS>V
TH(t)のとき、保護信号S
OCPをアサート(たとえばハイレベル)する。
【0051】
ロジック部206は、保護信号S
OCPがアサートされると、パルス信号S
PWMをローレベルとして、スイッチングトランジスタM1をオフする。
【0052】
以上がAC/DCコンバータ400の構成である。続いて、電流検出回路300の動作を説明する。
【0053】
図5(a)、(b)は、
図4の電流検出回路300の動作波形図である。
図5(a)に示すように、パルス信号S
PWMがオンレベル(ハイレベル)に遷移すると、しきい値電圧V
TH(t)が時間とともに増大していく。したがって、しきい値電圧V
TH(t)は、オン期間T
ONに遷移してからの経過時間が長くなるほど高くなる。
【0054】
図5(b)には、傾きαが異なる検出電圧V
CSと、しきい値電圧V
TH(t)の関係が示される。検出電圧V
CSがしきい値電圧V
TH(t)と交差してから、コンパレータ302の応答遅延τ
D経過後の時刻における検出電圧V
CSの値が、実効しきい値電圧V
TH_EFFとなる。
【0055】
以上が電流検出回路300の動作である。
コンパレータの応答遅延τ
Dの間に、検出電圧V
CSがしきい値電圧V
TH(t)を超える電圧幅(オーバーシュート量)は、検出電圧V
CSの傾きαが大きいほど大きくなる。実施の形態に係る電流検出回路300では、オン期間T
ONの経過時間が長くなるにしたがい、しきい値電圧V
TH(t)のレベルを増加させる。これにより、オーバーシュート量ΔVをキャンセルすることができ、実効しきい値電圧V
TH_EFFの変動やばらつきを抑制できる。
【0056】
続いて、実効しきい値電圧V
TH_EFFを一定とするために必要なしきい値電圧V
TH(t)の波形について説明する。
図6(a)は、しきい値電圧V
TH(t)と実効しきい値電圧V
TH_EFFの関係を示す図である。
【0057】
時刻t=0にオン期間に遷移するものとする。オン期間に遷移してから検出電圧V
CSがしきい値電圧V
TH(t)に到達するまでの時間をt
1、オン期間に遷移してからコンパレータ302の出力S
OCPが変化するまでの時間をT
2とする。
t
2=t
1+τ
D
【0058】
検出電圧V
CSの傾きαに関して式(5)が成り立つ。
α=V
TH(t
1)/t
1=V
TH_EFF/(t
1+τ
D) …(5)
【0059】
式(5)を変形すると、式(6)を得る。
V
TH_EFF=V
TH(t
1)/t
1×(t
1+τ
D)=const …(6)
任意のt
1について、式(6)のV
TH_EFFを一定とするためには、しきい値電圧V
TH(t)は理想的には、式(7)を満たすことが好ましい。
V
TH(t)=V
TH_EFF×t/(t+τ
D) …(7)
【0060】
図6(b)には、式(7)を満たす理想的なしきい値電圧V
TH(t)の波形が示される。現実的には多くの用途において、傾きαはある範囲内に制約されるため、すべての時間範囲において、式(7)を満たす必要はなく、傾きαの範囲に対応する時間範囲T
RGNにおいて、式(7)を満たせばよい。
【0061】
限られたハードウェア資源を用いて、式(7)を満たす波形を生成することは難しい。そこで、しきい値電圧生成部304は、時間範囲T
RGNにおいて、式(7)を近似した波形をもとづいて、しきい値電圧V
TH(t)を生成してもよい。
【0062】
図7(a)、(b)は、しきい値電圧V
TH(t)の例を示す波形図である。
図7(a)、(b)にはそれぞれ、式(7)の波形が破線(i)で示される。
図7(a)のしきい値電圧V
TH(t)は、実線(ii)で示すように、式(7)の波形を線形近似したものである。
図7(b)のしきい値電圧V
TH(t)は、実線(iii)で示すように、式(7)の波形を曲線で近似したものである。
【0063】
図7(a)、(b)それぞれのしきい値電圧V
TH(t)は、式(8)で表すことができる。
V
TH(t)=V
CNST+V
CMP(t) …(8)
V
CNSTは、一定成分であり、V
CMP(t)は時間とともに増大する補正成分である。より具体的には補正成分V
CMP(t)は、時間とともに単調増加する。
【0064】
図7(a)の波形(ii)の補正成分V
CMP(t)は、式(9)を満たす。
V
CMP(t)=β×t …(9)
βは所定の係数である。
【0065】
図7(b)の波形(iii)の補正成分V
CMP(t)は、時間とともに増大し、時間の経過とともに所定レベルに収束する。
【0066】
続いて、しきい値電圧生成部304の構成例を説明する。
図8は、第1の構成例に係るしきい値電圧生成部304の回路図である。しきい値電圧生成部304は、電流源310、キャパシタC2、抵抗R1、R2、スイッチSW1を含む。電流源310は、定電流Icを生成する。たとえば電流源310は、定電流源312およびカレントミラー回路314を含む。
キャパシタC2は、定電流Icにより充電される。第1抵抗R1は、キャパシタC2と並列に設けられる。第2抵抗R2およびスイッチSW1は、キャパシタC2と並列に設けられる。スイッチSW1は、パルス信号S
PWMと同期してスイッチングし、スイッチングトランジスタM1のオン期間T
ONにおいてオフする。
【0067】
図8のしきい値電圧生成部304によれば、スイッチングトランジスタM1のオン期間T
ONにおけるしきい値電圧V
TH(t)は、CR時定数にしたがって変化する。これにより、
図7(b)の波形(iii)に準じたしきい値電圧V
TH(t)を生成できる。
【0068】
図9は、第2の構成例に係るしきい値電圧生成部304の回路図である。
しきい値電圧生成部304は、基準電流生成部320、補正電流生成部330、電流電圧変換回路340を含む。
【0069】
基準電流生成部320は、所定の電流量の基準電流I
CNSTを生成する。補正電流生成部330は、スイッチングトランジスタM1のスイッチングと同期しており、スイッチングトランジスタM1のオン期間T
ONにおいて時間とともに増大する補正電流I
CMP(t)を生成する。基準電流生成部320、補正電流生成部330それぞれの構成は特に限定されない。
【0070】
電流電圧変換回路340は、基準電流I
CNSTと補正電流I
CMP(t)を加算した電流を、しきい値電圧V
TH(t)に変換する。たとえば電流電圧変換回路340は、基準電流I
CNSTと補正電流I
CMP(t)を加算した電流の経路上に設けられた抵抗R3を含み、抵抗R3の電圧降下を、しきい値電圧V
TH(t)としてもよい。
【0071】
図9のしきい値電圧生成部304によれば、
図7(a)の波形(ii)に準じたしきい値電圧V
TH(t)を生成できる。
図7(a)の波形(ii)は、
図7(b)の波形(iii)よりも、理想的な波形(i)との誤差が小さい。したがって
図9のしきい値電圧生成部304によれば、
図8のしきい値電圧生成部304よりもさらに、実効しきい値電圧V
TH_EFFの変動、ばらつきを抑制できる。
【0072】
(変形例)
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0073】
(第1の変形例)
実施の形態では、電流検出回路300を、過電流保護に利用する場合を説明したが本発明はそれには限定されず、コイル電流I
Pにもとづくさまざまな信号処理に利用可能である。
【0074】
(第2の変形例)
実施の形態では、フライバック式のDC/DCコンバータ100の制御回路について説明したが、スイッチングコンバータの形式は特に限定されない。たとえばDC/DCコンバータ100は、フォワード式であってもよいし、バックコンバータやブーストコンバータであってもよい。出力回路102のトポロジーは、スイッチングコンバータの形式に応じて変更すればよい。
【0075】
(用途)
最後に、AC/DCコンバータ400の用途を説明する。AC/DCコンバータ400は、ACアダプタや電子機器の電源ブロックに好適に利用される。
【0076】
図10は、AC/DCコンバータを備えるACアダプタ800を示す図である。ACアダプタ800は、プラグ802、筐体804、コネクタ806を備える。プラグ802は、図示しないコンセントから商用交流電圧V
ACを受ける。AC/DCコンバータは、筐体804内に実装される。AC/DCコンバータにより生成された直流出力電圧V
OUTは、コネクタ806から電子機器810に供給される。電子機器810は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、携帯オーディオプレイヤなどが例示される。
【0077】
図11(a)、(b)は、AC/DCコンバータを備える電子機器900を示す図である。
図11(a)、(b)の電子機器900はディスプレイ装置であるが、電子機器900の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、電源装置を内蔵する機器であればよい。
プラグ902、図示しないコンセントから商用交流電圧V
ACを受ける。AC/DCコンバータは、筐体804内に実装される。AC/DCコンバータにより生成された直流出力電圧VOUTは、同じ筐体904内に搭載される、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路、デジタル回路などの負荷に供給される。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0079】
400…AC/DCコンバータ、402…整流回路、404…平滑キャパシタ、100…DC/DCコンバータ、102…出力回路、104…入力ライン、106…出力ライン、108…フィードバック回路、110…シャントレギュレータ、112…フォトカプラ、200…制御回路、202…反転アンプ、204…エラーコンパレータ、206…ロジック部、208…ドライバ、M1…スイッチングトランジスタ、R
CS…検出抵抗、T1…トランス、L
P…1次コイル、L
S…2次コイル、C1…出力キャパシタ、D1…整流ダイオード、300…電流検出回路、302…コンパレータ、304…しきい値電圧生成部、310…電流源、312…定電流源、314…カレントミラー回路、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、SW1…スイッチ、C2…キャパシタ、320…基準電流生成部、330…補正電流生成部、340…電流電圧変換回路、800…ACアダプタ、802…プラグ、804…筐体、806…コネクタ、810,900…電子機器、902…プラグ、904…筐体。