【解決手段】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに(B)有機アルミニウム化合物、を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体またはプロピレンとエチレンとを共重合させて得た0.5重量%以下のエチレンを含有するポリプロピレン共重合体99〜99.99重量%と、結晶核剤0.01〜1重量%と、を含むシート用ポリプロピレン樹脂組成物であって、前記ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体の25℃でのキシレン不溶分が92.5〜97.5重量%であり、多分散指数が4.5〜10であり、前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが0.3〜10g/10分である、シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに
(B)有機アルミニウム化合物、を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体またはプロピレンとエチレンとを共重合させて得た0.5重量%以下のエチレンを含有するポリプロピレン共重合体99〜99.99重量%と、
結晶核剤0.01〜1重量%と、を含むシート用ポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体の25℃でのキシレン不溶分が92.5〜97.5重量%であり、多分散指数が4.5〜10であり、
前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが0.3〜10g/10分である、
シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
前記組成物を、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱することにより得た最終融解曲線において、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーをΔH175℃、全体の融解エンタルピーをΔHtotとするとき、
ΔH175℃/ΔHtotが15%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」は両端の値を含む。
I.本発明のポリプロピレン樹脂組成物
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体99.99〜99重量%と、結晶核剤0.01〜1重量%とを含む。以下、成分や特性について説明する。
【0010】
1.ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレン共重合体
本発明で用いるポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体(以下まとめて単に「ポリプロピレン」ともいう)は、(A)特定の固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、および、必要に応じて(C)特定の外部電子供与体化合物を含む触媒系によって得られる。
【0011】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で用いる(A)成分である固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する。この固体触媒成分については、多くの先行技術文献が、その製造方法を提示している。具体的には、この固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物ならびに電子供与体化合物を相互接触させることにより得られる。例えば、(1)マグネシウム化合物あるいはマグネシウム化合物と電子供与体化合物の錯化合物を、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下、粉砕し、または粉砕することなく、電子供与体化合物および/または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理し、又は予備処理せずに得た固体と反応条件下に液相をなすチタン化合物と反応させる方法;(2)マグネシウム化合物の液状物と、液状のチタン化合物を電子供与体化合物の存在下または不存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法;(3)固体状のマグネシウム化合物と液状のチタン化合物および電子供与体化合物と反応させる方法;(4)上記(2)や(3)で得られるものに、さらにチタン化合物を反応させる方法;(5)上記(1)や(2)や(3)で得られるものにさらに電子供与体化合物およびチタン化合物を反応させる方法;(6)マグネシウム化合物あるいはマグネシウム化合物と電子供与体化合物の錯化合物を、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下、およびチタン化合物の存在下に粉砕し、電子供与体化合物および/または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理し、又は予備処理せずに得た固体をハロゲン又はハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法;および(7)前記(1)〜(5)で得られる化合物をハロゲン又はハロゲン化合物又は芳香族炭化水素で処理する方法など、様々な方法にて、本発明で用いる(A)成分である固体触媒成分を得ることができる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:
【0013】
(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。より具体的には、TiCl
4、TiBr
4、TiI
4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O
n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(OisoC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(O
n−C
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O
n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O
n−C
4H
9)
4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられ、これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、とくにテトラハロゲン化チタンであり、とくに好ましいものは、四塩化チタンである。
【0014】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物として、マグネシウム・炭素結合やマグネシウム・水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いる事もでき、また、液状状態であっても固体状態であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム、弗化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フエノキシ塩化マグネシウム、メチルフエノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フエノキシマグネシウム、ジメチルフエノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0015】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸又は無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートの如き含窒素電子供与体などを知られているが、本発明ではスクシネート系の電子供与体化合物を使用する。
好適なスクシネート系化合物は、式I:
【0017】
(式中、基R
1及びR
2は、互いに同一か又は異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;基R
3〜R
6は、互いに同一か又は異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R
3〜R
6は一緒に結合して環を形成してもよい)
のコハク酸エステル(スクシネート)構造を有する化合物から選択される。
【0018】
R
1及びR
2は、好ましくは、C
1〜C
8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基である。R
1及びR
2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR
1及びR
2基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
【0019】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R
3〜R
5が水素であり、R
6が、3〜10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基であるものである。好適な単置換スクシネート化合物の具体例は、ジエチル−sec−ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジエチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−t−ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1−(エトキシカルボジイソブチルフェニル)スクシネート、ジイソブチル−sec−ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−t−ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−sec−ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートである。
【0020】
式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R
3〜R
6からの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。好適な二置換スクシネートの具体例は、ジエチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジエチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチルー2−シクロペンチル−2−n−プロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジエチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジイソブチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−プロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−プロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−プロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネートである。
【0021】
更に、水素とは異なる少なくとも2つの基、則ちR
3及びR
5、又はR
4及びR
6が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。好適な化合物の具体例は、ジエチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジエチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジエチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジエチル−2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジエチル−2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジエチル−2,2,3,3−テトラプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジイソブチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルー2,3−n−プロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジイソブチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジイソブチル−2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジイソブチル−2,2,3,3−テトラプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−3―シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2,3,3−テトラプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネートである。
【0022】
式Iの化合物のうち、基R
3〜R
6のうちのいくつかが一緒に結合して環を形成している化合物も好ましく用いることができる。このような化合物として特許文献5に挙げられている化合物、例えば、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,6−ジメチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,5−ジメチルシクロペンタン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチルメチル)−2−メチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンを挙げることができる。他には、例えば特許文献6に開示されているような環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。
【0023】
他の環状スクシネート化合物の例としては、特許文献7に開示されている化合物も好ましい。
式Iの化合物のうち、基R
3〜R
6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R
3〜R
6が第15族原子を含む化合物としては、特許文献8に開示される化合物が挙げられる。一方、基R
3〜R
6が第16族原子を含む化合物としては、特許文献9に開示される化合物が挙げられる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造に使用する固体触媒成分を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物をあげることができ、とくに塩素が好ましい。
【0024】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造に使用する(B)成分である有機アルミニウム化合物は、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシドのほかに、R
12.5Al(OR
2)
0.
5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム等から選択することができる。
【0025】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造において使用できる(C)成分である電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、有機ケイ素化合物を用いるのが好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサンなどが挙げられ、とりわけエチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、2−ノネボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0026】
本発明の第1成分としてエチレン成分を含むポリプロピレン共重合体を使用する場合、エチレンに由来する単位の含有量は0.5重量%以下である。この含有量が0.5重量%を超えると、所期の特性が得られない。
【0027】
2.結晶核剤
本発明の第2成分である結晶核剤は、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。
【0028】
キシリトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、ビス−1,3:2,4−(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン)1−アリルキシリトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−プロピルキシリトールが挙げられる。
【0029】
ソルビトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−メチル−4’−フルオロ−ベンジリデン)1−プロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1’−メチル−2’−プロペニルソルビトール、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’,3’−ジブロモプロピルソルビトール、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’−ブロモ−3’−ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、モノ2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−メチルソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール等が挙げられる。
【0030】
このうち、市販の結晶核剤としては、ノニトール系では例えばMillad NX8000(ミリケンジャパン)、ソルビトール系ではRiKAFAST R-1(新日本理化)、Millad 3988(ミリケンジャパン)、ゲルオールE-200(新日本理化)、ゲルオールMD(新日本理化)等が挙げられる。
【0031】
リン酸エステル系結晶核剤として、アルミニウム−ビス(4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−メチレンジフェニル−ホスファート)−ヒドロキシド等が挙げられる。市販のリン酸エステル系結晶核剤として、例えばアスカスタブNA−21(旭電化)、アスカスタブNA−71(旭電化)などが挙げられる。
【0032】
トリアミノベンゼン誘導体結晶核剤として、例えば、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。市販のトリアミノベンゼン誘導体結晶核剤として、例えばIRGACLEAR XT386(BASFジャパン)などが挙げられる。
【0033】
カルボン酸金属塩核剤として、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩等が挙げられる。市販のカルボン酸金属塩核剤として、例えばHyperform HPN−20E(ミリケンジャパン)などが挙げられる。特に2次加工(加熱)後の透明性を維持するためには、ノニトール系核剤またはソルビトール系核剤の使用が好ましい。
これらの結晶核剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
結晶核剤の配合量は、樹脂組成物に対して0.05〜0.5重量%であるが、0.2〜0.45重量%が好ましい。
【0034】
さらに本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、油展及び他の有機及び無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤及び顔料を添加してもよい。
【0035】
3.特性
本発明の第1成分であるポリプロピレンの25℃でのキシレン不溶分は92.5〜97.5重量%であり、好ましくは93.5〜97.5重量%であり、より好ましくは94〜96.5重量%である。キシレン不溶分は後述する方法で求められる。キシレン不溶分はポリプロピレンの立体規則性の指標である。本発明では、キシレン不溶分が92.5〜97.5%と比較的低い。すなわち、本発明では立体規則性を比較的低くすることで高い透明性を達成する。本発明はこの点において、多量のエチレンとの共重合によりポリプロピレンの透明性を向上させる従来の方法とは相違する。
【0036】
本発明の第1成分であるポリプロピレンの多分散指数(PI)は4.5〜10であり、5〜10が好ましい。多分散指数が4.5未満であるとドローダウン時間が短くドローダウンし易い。PIが10を超えると透明性が悪化する。多分散指数は後述する方法で測定できる。
【0037】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の、230℃におけるメルトフローレートは、0.3〜10g/10分であり、好ましくは5〜9g/10分、より好ましくは6〜8である。メルトフローレートが0.3未満では成形性が悪く、ロールへの転写性が悪くなる結果、透明性が低下する。メルトフローレートが10を超えるとドローダウン性が悪化するとともに耐衝撃性も低下する。
【0038】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱するという熱分析を行って得た最終融解曲線において、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーの、全体の融解エンタルピーに対する割合が15%以下であることが好ましい。極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返すとは、
図1に示すように、加熱温度の最大値が徐々に低くなるように反復して加熱と冷却を繰り返してアニーリングを行うことである。本発明においては、極大加熱温度は5℃ずつ低くなるようにし、最低温度は20℃、昇温速度は10℃/分、最終の極大加熱温度を80℃とすることが好ましい。このようにアニーリングを行ったサンプルを再度加熱して、最終融解曲線の全融解エンタルピー(ΔH
tot)と、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピー(ΔH
175oC)を求める。本発明においては、ΔH
175oC/ΔH
totは15%以下であることが好ましい。後で詳しく述べるとおり、最終融解曲線の175℃以上で融解する成分は、ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体における「欠陥の少ない成分」に相当する。この成分が高温で結晶化して形成する規則的な高次構造は光の散乱の要因となり、透明性を悪化させる。したがって、ΔH
175oC/ΔH
totが15%以下であると透明性に優れるシートを得ることができる。
【0039】
4.用途
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、シート状成形品用途に特に好適に用いることができる。シート状成形品への使用に好適な理由として、好適なシート成形性(押出特性)と2次加工性(ドローダウン性)と、成形品が良好な剛性を有することが挙げられる。従来シート状成形品用途に用いられてきた透明なポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工特性、特にシートの2次加工性が充分でなかった。シート成形性を向上させるためにメルトフローレートを増加させると、2次加工性が低下し、2次加工性を向上させる為にメルトフローレートを低下させるとシート成形性が低下するという相関関係があった。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、透明性と好適なシート成形性を維持しつつ、2次加工性を向上させることができた。シートの厚みは、100〜1000μmが好ましい。
【0040】
II.本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
次に本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法を具体的に説明する。
本発明の組成物に使用されるポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体は、既存のスラリープロセス(液体モノマー中の重合)や気相重合等で得られる。また、各後続の重合が直前の重合反応中に形成された重合性物質の存在下で行われる少なくとも2の逐次重合ステージを具備する逐次重合方法を用いても良い。ポリプロピレン共重合体は、プロピレンモノマー、エチレンモノマー、水素、触媒を供給し、プロピレンモノマーとエチレンモノマーとを共重合させて得られる。
【0041】
また、ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体を得る方法として、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いて行う方法が挙げられる。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法では、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体および/または液体混合物を下降管中に導入する。
上記の重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0042】
結晶核剤の添加は、例えば、重合により得られた重合体と結晶核剤を酸化防止剤とともにヘンシェルミキサー、ブラベンダー等で撹拌した後、押出機を用いて180℃から280℃で溶融ブレンドする事によりポリプロピレン樹脂組成物を得る事ができる。結晶核剤や酸化防止剤の添加は、重合、残留モノマー除去、乾燥工程を経た後、連結された押出機を用いて行ってもよい。
【0043】
重合ステージは、立体特異的チーグラーナッタ(Ziegler−Natta)触媒の存在下で行われる。好ましい実施形態によれば、全重合ステージは、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;(B)有機アルミニウム化合物;および必要に応じて(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物を含む触媒成分の存在下で行われる。上記特徴を有する触媒は、特許文献により周知である。重合ステージは、液相中、気相中又は液−気相中で生じてもよい。ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体の調製用の重合ステージにおける反応温度は同一でも異なっていてもよく、好ましくは40〜100℃;より好ましくは50〜80℃の範囲であり、さらに好ましくは70〜80℃の範囲である。ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体を調製するための重合ステージの圧力は、液体モノマー中で行われる場合には、用いられる運転温度での液体プロピレンの蒸気圧と競合する圧力であり、触媒混合物を供給するために用いられる少量の不活性希釈剤の蒸気圧によって、任意のモノマーの過圧によって及び分子量調節剤として用いられる水素によって調節されてもよい。
重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜43barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素又はZnEt
2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例により本発明についてさらに説明する。なお、実施例における分析等は以下の方法で行った。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
【0045】
[キシレン不溶分]
2.5gのポリマーを攪拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させた。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させた。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%(100−可溶性のポリマーの重量%)は、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。キシレン不溶分は、沈殿物をメタノールで残留したキシレンを十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させて採取する。
【0046】
[エチレン含有量(C2)]
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、
13C−NMR法で測定した値から算出した。
【0047】
[多分散性指数]
190℃の温度において、PaarPhysica社製UDS200を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に増加する振動数で運転することによって測定した。多分散性指数の値は、等式を用いてクロスオーバー弾性率から誘導した。
PI=10
5/Gc
式中、Gcは、G’=G”(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)における値(Paとして表す)として定義されるクロスオーバー弾性率である。
【0048】
[最終融解曲線による欠陥の少ない成分の割合の算出]
最終融解曲線は、通常の示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社のQ−200)を使用して得た。具体的には、まず、測定試料を、一旦、融解した後、冷却した。次いで、
図1に示すように、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱し、その再加熱の際の測定試料の熱分析を行って、最終融解曲線を得た。最終融解曲線の熱分析は、通常のDSCと同様の分析であり、簡便である。
【0049】
図2に実施例3の最終融解曲線を示す。極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返す熱処理では、測定試料のアニーリングとその後の冷却による結晶化とが高温から順次繰り返される結果、欠陥の少ない分子から順次、結晶を容易に形成することができる。また、冷却時に低温で形成された欠陥の多い分子からなる結晶は、極大加熱温度が充分低くなるまでは、加熱および極大加熱温度で保持している間に融解する。以下、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返す熱処理のことを、「反復アニ−リング処理」という。
【0050】
反復アニーリング処理での加熱および冷却では、例えば、一定の昇温速度でTs
1まで加熱し、温度を保持した後、一定の降温速度で20℃まで冷却し、次いで、Ts
1−5[℃](この温度をTs
2とする。)まで一定の昇温速度で加熱し、温度を保持した後、一定の降温速度で20℃まで冷却する。その後、n回目の加熱の際の極大加熱温度Ts
nがTs
1−5×(n−1)[℃]になるように加熱および冷却を繰り返す。Ts
nが80℃になるまで繰り返すと、欠陥の多い成分に対しても信頼性の高い結果が得られる。
【0051】
また、最終融解曲線を得る際の再加熱では、それぞれの極大加熱温度でのアニーリングとその後の冷却時の結晶化によって得られた結晶全ての融解挙動を得るため、一定の昇温速度で、20℃から200℃以上まで昇温する。高温で結晶化した欠陥の少ない分子からなる結晶は融点が高くなる一方、低温で結晶化した欠陥の多い分子からなる結晶は融点が低いので、最終融解曲線は試料の欠陥の分布を反映する。
【0052】
実施例では、上記の方法において、Ts
1を170℃、昇温速度と降温速度を10℃/分、保持時間を10分として得られた最終融解曲線において、以下の式により、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピー(ΔH
175oC)の、全体の融解エンタルピー(ΔH
tot)に対する割合(S)を求め、欠陥の少ない成分の割合の指標とした。
【0053】
【数1】
【0054】
[シート成形]
25mmφ単層押出型エアーナイフ付キャストシート成形機を用い、ポリプロピレン樹脂組成物からシートを製造した。スクリュウとしてフルフライトスクリュウを使用した。当該スクリュウのL/Dは24であった。
成形条件を以下に示す。
<温度>
C1:200℃、C2:230℃、C3:250℃、C5:250℃、H(ネック):250℃
D1:250℃、D2:250℃、D3:250℃
<スクリュウ回転数>
約90rpm
<ロール設定温度>
80℃
<引取り速度>
約1.3〜1.5m/分
<シート厚み>
0.3mm
【0055】
[剛性(テーバースティフネス)]
上記のように成形した0.3mm厚みのシートを用いて、ASTM D747に準拠して測定した。
【0056】
[透明性]
ISO 14782に準拠しヘイズ測定を行い、透明性を評価した。具体的に、上記のように成形した0.3mm厚みのシートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033-00)を刷毛にて塗布し、株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用し、定法にて内部ヘイズを測定した。
【0057】
[ドローダウン性]
100mm×150mmの金枠に固定した厚み約0.3mmのシートを、210℃(ポリプロピレンの平衡融点である約186℃を超え、真空成形における予熱温度付近である温度)のオーブンに入れ、融解後、シートが張り戻った時刻t
1から自重によりシート中央部が2cm垂れ下がるまでの時刻t
2までの時間(t
2−t
1)によりドローダウン性を評価した。ドローダウンは製品肉厚の不均一を招く原因になる。ドローダウン時間(t
2−t
1)が長いほどドローダウンし難いので、2次加工性に優れる。
【0058】
[実施例1]
(1)固体触媒成分の調製
特開2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl
4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl
2・1.8C
2H
5OH(USP−4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した)、及び9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl
4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0059】
(2)重合および組成物の製造
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、以下の方法で製造した:
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、ポリプロピレンを製造した。
【0060】
得られたポリプロピレンに、結晶核剤として、ノニトール系核剤(ミリケンジャパン社製Millad NX8000)を0.4重量%、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.24重量%および中和剤(カルシウムステアレート)を0.05重量%とともに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練してポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0061】
[実施例2]
重合反応器の水素濃度および温度を表1に示すとおりにしてポリプロピレンのMFRおよびキシレン不溶分を表1に示すように調整した。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0062】
[実施例3]
外部電子供与体化合物としてシクロヘキシルメチルジエトキシシラン(CHMMS)を、CHMMS/TEALのモル比が0.03となる量で添加した触媒を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0063】
[実施例4]
予備重合後の重合において、水素濃度およびプロピレンとエチレンを表1に示す量に示すとおりにし、CHMMS/TEALのモル比を0.016に変更して重合した以外は、実施例3と同様にして比較用樹脂組成物を得た。
【0064】
[実施例5および6]
異なる種類の結晶核剤を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。使用した結晶核剤は、実施例5ではRiKAFAST R−1(ソルビトールアセタール系結晶核剤、新日本理化株式会社製)、実施例6ではアスカタブNA−71(リン酸エステル系結晶核剤、株式会社アデカ製)であった。
【0065】
[比較例1]
フタレート系の電子供与化合物を含む固体触媒成分を用いて重合したポリプロピレンの樹脂組成物を製造した。具体的には以下のようにして樹脂組成物を製造した。
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。該固体触媒は、MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。
上記固体触媒と、TEAL及びシクロヘキシルメチルジエトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11であり、CHMMS/TEALのモル比が0.01となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、実施例1と同様の重合反応器を導入して、表1に示す条件でプロピレンを重合させた。得られたポリプロピレン単独重合体から、実施例1と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。
【0066】
[比較例2]
シクロヘキシルメチルジエトキシシラン(CHMMS)の代わりにジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、DCPMS/TEALのモル比が0.02となるような量で用いた以外は実施例3と同様にして触媒系を調整した。この触媒系を用い、実施例3と同様にして表1に示す条件でプロピレンを重合させた。ただし重合条件は表1に示すとおりとした。得られたポリプロピレン単独重合体から、実施例3と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。
【0067】
[比較例3および4]
予備重合後の重合において、プロピレンとエチレンを表1に示す量で重合した以外は、実施例3と同様にして比較用樹脂組成物を得た。ただし、外部電子供与体化合物(CHMMS)の量および重合条件は表1のとおりとした。なお、比較例4においては、2段に連結された逐次重合装置を用い、1段目の重合反応器でポリプロピレン単独重合体を重合した後、2段目の重合反応器でポリプロピレン共重合体の重合を行い、重合体混合物を得た。その際、1段目と2段目の重合反応器での水素濃度、および2段目の重合反応器でのエチレン濃度を表1に示す様にした。また、ポリプロピレン単独重合体とポリプロピレン共重合体の重量比が1:1となる様に、1段目と2段目の滞留時間を調整した。
【0068】
[比較例5]
比較例1と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。ただし、外部電子供与体化合物(CHMMS)の量と重合条件は表1のとおりとした。
実施例および比較例の結果を、表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は加工性に優れ、かつ高い剛性および透明性を有するシートを与えることが明らかである。特に本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、従来の樹脂組成物に比べて、ロールおよび金型への転写性が良好であり、かつ熱成形時の原反シートの伸びがよく偏肉や白化が起こりにくいので賦形性に優れ、さらには透明性にも優れる。