【実施例】
【0024】
以下実施例等により本発明に包含される実施形態をより具体的に説明する。なお、例中の部及び%は特に断りのない限り重量基準を意味するものとする。
【0025】
本発明のゲル状食品は、TCA可溶化率、かたさ、官能評価(油脂の放出、舌でのつぶれ、食感)により評価した。
【0026】
(TCA可溶化率)
本発明で用いるTCA可溶化率(%)とは蛋白質の分解率の尺度であり、全蛋白に対する0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶性蛋白の割合をケルダール法により測定した。
【0027】
(かたさ測定法)
試料を流水解凍し、試料を直径40mm高さ15mmの容器に充填し、(株)山電製のRHEONER RE-33005を用いて直径20mmのプランジャーで圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで測定した。測定温度は20±2℃とした(ユニバーサルデザインフード(UDF)「かたさ」測定法に従った)。
【0028】
(官能評価)
得られた試料を流水解凍し、室温になったものを専門パネラー(5名)により、「油脂の放出」と「舌でのつぶれ」及び「食感」について評価した。
「油脂の放出」は口中で油脂の滲み出しがあるかについて、5〜4名のパネラーがあると答えたものに「○」、3〜2名があると答えたものに「△」、1名も答えなかったものに「×」として評価をつけた。「○」は「口中で油の滲み出しを感じる」、「△」は「口中で油の滲み出しをほとんど感じない」、「×」は「口中で油の滲み出しを全く感じない」と解釈する。評価で「○」のものを合格と判断した。
「舌でのつぶれ」は舌でつぶせるかたさであると、5〜4名のパネラーがあると答えたものに「○」、3〜2名があると答えたものに「△」、1名も答えなかったものに「×」として評価をつけた。「○」は「舌でつぶせる」、「△」は「舌でつぶしにくい」、「×」は「舌でつぶせない」と解釈する。評価で「○」のものを合格と判断した。
「食感」は喉通りが良いと、5〜4名のパネラーがあると答えたものに「○」、3〜2名が良いと答えたものに「△」、1名もよいと答えなかったものに「×」として評価をつけた。ゲル状の組織を保っていないものも「×」の評価をつけた。「○」は「喉通りが良い」、「△」は「喉通りがやや悪い」、「×」は「喉通りが悪い」もしくは「ゲル状の組織を保っていない」と解釈する。評価で「○」のものを合格と判断した。
【0029】
(カロリー計算)
得られたゲル状食品のカロリー計算は、Atwaterのエネルギー換算係数、すなわち蛋白質は4kcal/g、脂質は9kcal/g、炭水化物は4kcal/gを用いて計算した。
【0030】
(製造例)TCA可溶化率の異なる分離大豆蛋白の調製
低変性脱脂大豆(不二製油(株)製)10kgに15倍の水を加え、1N NaOHでpHを7.5に調整し、室温でホモミキサーを用い1時間撹拌抽出を行った後、遠心分離機(1000×g、10分)によりおから成分を除去して脱脂豆乳を得た。これに1N HClを加えpH4.5に調整し、蛋白質成分を等電点沈殿させ、遠心分離して沈殿物を採取し、分離大豆蛋白カード(以下「カード」という。)を得た。このカードの固形分は約30重量%であった。固形分11重量%の濃度になるように水を加え、水酸化ナトリウムを用い溶液pH7.3に中和した。これを直接加熱殺菌機を用いて140℃、1分間加熱処理を行い、蛋白変性させた大豆蛋白溶液を得た。
この大豆蛋白溶液に「フレーバーザイム」(ノボザイムジャパン(株)製)を対乾物量当たり0.05〜0.5%の間で加え、55℃の反応温度で30分間蛋白加水分解を行った。酵素処理後の大豆蛋白溶液を直接加熱殺菌機を用いて加熱処理(140℃、15秒間)を行い噴霧乾燥し、TCA可溶化率の異なる分離大豆蛋白を得た。
酵素処理は、蛋白変性させた大豆蛋白溶液の酵素処理をしなかったものを分離大豆蛋白Aとし、酵素を対乾物量当たり0.05%、0.2%、0.5%、2.0%添加し得られたものをそれぞれ、分離大豆蛋白B、C、D、Eとした。
分離大豆蛋白A〜EのTCA可溶化率及び、ケルダール法により測定した蛋白含量を表1に示した。
【0031】
(表1)
【0032】
(実施例1)
下記の表1の配合にて、ゲル状食品を調製した。
攪拌機(Stephan Machinery GmbH製UMC-5)を用い、水1460重量部に米澱粉(松谷化学工業(株)製WR-2)50重量部、分離大豆蛋白B(TCA可溶化率4)200重量部、グルタミン酸ナトリウム 1.5重量部、コハク酸2ナトリウム 0.5重量部(キリン協和フーズ(株))を加え、減圧撹拌(0.9bar以下)し、蛋白スラリーを得た。蛋白スラリー1500重量部を、プロペラ撹拌機で撹拌しつつ中鎖脂肪酸油(不二製油(株)製MCT-64)500重量部を注ぎ水中油型の乳化スラリーを得た。2000重量部の乳化スラリーに対し、2重量部の架橋剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を18重量部の氷水で予め分散させた液を混ぜ合わせ、折幅65mmのケーシングチューブに充填し、架橋反応(55℃、30分間)、温水加熱(90℃、40分間)して4℃の低温室で60分間冷却した後、-20℃のストッカーで冷凍した。
流水解凍した試料をユニバーサルデザインフード(UDF)かたさ測定法、すなわち、直径40mm,高さ15mmの容器に充填し、直径20mmのプランジャーで圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで測定、測定温度は20±2℃でかたさの測定を行った。かたさは、16638 N/m
2でUDF区分3「舌でつぶせる」に該当した。得られたゲル状食品の100g当たりのカロリーは261kcal、蛋白質は7.4g、脂質は24.8gであった。
油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。
なお、工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は離油しており、不完全乳化状態であることが確認された。
【0033】
(実施例2)
実施例1の大豆蛋白を分離大豆蛋白C(TCA可溶化率8)200重量部に変えた以外は実施例1と同様に調製した。得られた試料を流水解凍し、実施例1に記載の方法と同じ方法で測定したところ、かたさは14255N/m
2でUDF区分3「舌でつぶせる」に該当した。得られたゲル状食品の100g当たりのカロリーは261kcal、蛋白質は7.4g、脂質は24.8gであった。
油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。
なお、工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は離油しており、不完全乳化状態であることが確認された。
【0034】
(実施例3)
実施例1の大豆蛋白の配合比を分離大豆蛋白A(TCA可溶化率3) 140重量部、分離大豆蛋白E(TCA可溶化率23) 60重量部に変えた以外は実施例1と同様に調製した。得られた試料を流水解凍し、実施例1に記載の方法と同じ方法で測定したところ、かたさは16544N/m
2でUDF区分3「舌でつぶせる」に該当した。得られたゲル状食品の100g当たりのカロリーは261kcal、蛋白質は7.4g、脂質は24.8gであった。
油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。
なお、工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は離油しており、不完全乳化状態であることが確認された。
【0035】
(実施例4)
実施例1の大豆蛋白の配合比を分離大豆蛋白A(TCA可溶化率3)110重量部、分離大豆蛋白E(TCA可溶化率23)90重量部に変えた以外は実施例1と同様に調製した。得られた試料を流水解凍し、実施例1に記載の方法と同じ方法で測定したところ、かたさは7180N/m
2でUDF区分3「舌でつぶせる」に該当した。得られたゲル状食品の100g当たりのカロリーは261kcal、蛋白質は7.4g、脂質は24.8gであった。
油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。
なお、工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は離油しており、不完全乳化状態であることが確認された。
【0036】
(比較例1)
実施例1の大豆蛋白を分離大豆蛋白A200重量部に変えた以外は実施例1と同様に調製した。得られた試料を流水解凍し、実施例1に記載の方法と同じ方法で測定したところ、かたさは29447 N/m
2でUDF区分3より上回った。得られたゲル状食品の100g当たりのカロリーは261kcal、蛋白質は7.4g、脂質は24.8gであった
油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。
なお、工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は離油しており、不完全乳化状態であることが確認された。
【0037】
(比較例2)
実施例1の大豆蛋白の配合比を分離大豆蛋白D(TCA可溶化率14)200重量部に変えた以外は実施例1と同様に調製した。得られた試料を流水解凍し、実施例1に記載の方法と同じ方法で測定したところ、かたさは2913N/m
2であった。得られたゲル状食品の100g当たりのカロリーは261kcal、蛋白質は7.4g、脂質は24.8gであった。しかし離油・離水が激しく、ゲル状の形態は保てなかった。このかたさはUDF区分4に該当するが、ユニバーサルデザインフードの性状についての特記事項に「ゲルについては著しい離水がないこと」とされており、この基準から比較例2で得られた試料はUDF区分に該当しなかった。
油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。
なお、工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は離油しており、不完全乳化状態であることが確認された。
【0038】
(比較例3)
実施例1で、大豆蛋白として分離大豆蛋白B(TCA可溶化率4)を用い、蛋白スラリー1500重量部及び中鎖脂肪酸油(不二製油(株)製MCT-64)500重量部をホモジナイザーで12000rpm、3分間の条件で撹拌し水中油型乳化スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にしてゲル状食品を調製した。かたさを実施例1に記載の方法と同じ方法で測定した。油脂の放出、舌でのつぶれ、食感、かたさについて評価した結果を表2に示した。工程中得られた水中油型乳化スラリーを架橋酵素を添加しない状態で2時間静置した結果、空気と接している面は全く離油しておらず、完全乳化状態であることが確認された。
【0039】
(表2)
油脂の放出
○:口中で油の滲み出しを感じる
△:口中で油の滲み出しをほとんど感じない
×:口中で油の滲み出しを全く感じない
舌でのつぶれ
○:舌でつぶせる
△:舌でつぶしにくい
×:舌でつぶせない
食感
○:喉通りが良い
△:喉通りがやや悪い
×:喉通りが悪いもしくはゲル状の組織を保っていない
※:口中に入れる前から離油が激しく不良
【0040】
実施例1〜4のゲル状食品は、舌でつぶせるものであり、口中で油の滲み出しを感じ、喉通りが良いものであり、油脂の放出、舌でのつぶれ、食感において良好な評価が得られた。一方、比較例1では、油脂の放出、舌でのつぶれ、食感のいずれも悪い評価であった。また、比較例2は、口中に入れる前から離油が激しく、油脂の放出及び舌でのつぶれは評価できず、食感も評価が悪かった。
【0041】
以上のように、本発明のゲル状食品はUDF区分3に該当する物性であり、口中での油の滲み出しも良好で高齢者および咀嚼・嚥下困難者に適した食感のものであることが示された。