【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、その局面の1つによれば、少なくとも1のパケットを変形する、特に分裂させるための、または少なくとも2のパケットを、特に崩壊させるために、互いの方に移動させるためのマイクロ流体デバイスに関し、上記デバイスは、軸を有するマイクロチャネルおよび下記の少なくとも1を含むパケット操作手段を含む:
発電ユニットおよび上記発電ユニットに連結しかつ上記マイクロチャネルの少なくとも一部分の内部にマイクロチャネルの軸(X)と実質的に共線的である電場を作るように構成された電極アッセンブリ、ここで、上記発電ユニットは、電場が、マイクロチャネルにおいて、少なくとも1のパケットを変形させるまたは少なくとも2のパケットを互いの方に移動させるような振幅および周波数を有する電場を発生させることができる、および
上記マイクロチャネルの一部と連結した第一端および溶液を運ぶために適したデリバリー系と連結した第二端を有する少なくとも1のサイドチャネル、ここで、上記溶液は特に界面活性剤を有し、上記界面活性剤は、上記少なくとも2のパケットの間または上記少なくとも1のパケットとその周囲との間の界面張力を変えることができ、上記デリバリー系は、少なくとも上記パケットがマイクロチャネルの上記部分を通過する間、上記溶液を上記マイクロチャネルに運ぶように構成されている。
【0022】
言い換えると、本発明に従うデバイスを用いるパケットの操作は、適切な電場を発生させることにより、または液体パケットの表面張力を調節することにより、または両方の技術を組み合わせることにより行なわれ得る。
【0023】
界面張力は、少なくとも20%、より好ましくは50%だけ調節され、好ましくは低下され得る。
【0024】
2つのパケットを崩壊させるように電場がかけられるマイクロチャネルの上記部分に2つのパケットが導入されると、上記電場によって双極子がパケット中に作られ、上記双極子は、2つのパケットが互いに引き合いそして崩壊するようにマイクロチャネルの軸に実質的に沿って配向される。
【0025】
表現「実質的に共線的」は、電場の方向の平均が、マイクロチャネルの軸と45°より小さい角度、例えば30°より小さい、好ましくは20°より小さい、より好ましくは10°または5°より小さい角度を作ることを意味する。
【0026】
本発明は、2つのパケットの崩壊(collapse)、例えば2つの小滴のマイクロチャネル内での合体、を誘発するために使用され得る。
【0027】
「電気合体(electrocoalescence)」と呼ばれる一般的な物理現象は、P. Atten, J. Electrostat. 30, 259(1993)に開示されている。電気泳動力のように、また誘電泳動とは対照的に、電気合体は場の勾配を必要としない。
【0028】
パケットが細胞である、またはいくつかの細胞を含むとき、本発明は、そのような細胞または多数の細胞のエレクトロポレーションを誘発するために使用され得る。
【0029】
本発明はまた、1つのパケットをより小さい大きさのいくつかのパケットに分裂させる、例えば1つの小滴からより小さい大きさの1つまたはいくつかの小滴を抜き取る、ために使用され得る。
【0030】
本発明に従うマイクロ容器は、任意の大きさを有し得る。好ましくは、1ミリメートルより小さい少なくとも1の寸法を有する。1実施態様では、上記マイクロ容器が、1mmより小さい直径を有するマイクロ毛細管である。例えば、上記毛細管の断面における少なくとも1の寸法が好ましくは100μm〜1mmである。1実施態様では、上記毛細管の少なくとも1の寸法が、約10nm〜100μm、好ましくは1μm〜100μmである。別の実施態様では、上記マイクロ容器が、1mmより小さい厚さを有するミクロ製作されたマイクロチャネルである。いくつかの実施態様では、上記マイクロチャネルの厚さが好ましくは約100μm〜1mmである。上記マイクロチャネルの厚さは、約10nm〜100μm、好ましくは1μm〜100μmである。
【0031】
本発明において、「マイクロ容器」、特に「マイクロチャネル」は、固体表面によって少なくとも部分的に包囲された容積を意味し、上記容積は小さい。好ましくは、本発明におけるマイクロ容器、特にマイクロチャネルは、1mm
−1より実質的に大きい、好ましくは4mm
−1より大きい、例えば10mm
−1より大きい、恐らく1μm
−1より大きい表面/容積比を有する。マイクロチャネルは、ナノチャネルをも包含する。
【0032】
1実施態様において、マイクロチャネルは好ましくは細長い、すなわち、その軸に沿った寸法が上記軸に垂直な任意の他の方向に沿った寸法よりも3倍、好ましくは10倍、例えば100倍または1000倍大きい。
【0033】
マイクロチャネルの軸は、直線であってもなくてもよい。
【0034】
マイクロチャネルは、断面が一定であってもなくても良い。断面は、例えば円形、楕円形、矩形、正方形であり得、またはお椀形状を有し得る。
【0035】
本発明において、「厚さ」は、マイクロチャネルの2つの向かい合う面の間の断面の最も小さい内側距離を意味する。例えば、円形の断面を有する円筒形のマイクロチャネルの場合、厚さは直径である。矩形の断面を有するスリット様マイクロチャネルの場合、厚さは矩形の小さい辺の長さである。
【0036】
マイクロチャネルの暑さは、数nm〜数mmの任意の値を取り得る。好ましくは、厚さが1μm〜1mmである。さらに好ましくは、マイクロチャネルの軸に沿った長さが厚さよりも少なくとも10倍大きいように選択され得る。マイクロチャネルは、10mm〜数mの長さ、例えば1cm〜50cmの長さを有し得る。
【0037】
好ましくは、電場がマイクロチャネルの軸と実質的に共線的であるところのマイクロチャネルの部分の軸に沿った長さが、マイクロチャネルの厚さと少なくとも同じ大きさでありかつマイクロチャネルの全長よりも小さい。本発明の好ましい実施態様では、マイクロチャネルの上記部分の長さが、上記部分の厚さの約1〜約100倍であり、好ましくは、上記部分の厚さの約1〜約10倍である。
【0038】
マイクロチャネルは、硬質であっても可撓性であってもよく、たとえば、可撓性の非導電性物質でできたチューブを含む。
【0039】
マイクロ容器、特にマイクロチャネルは、溶融シリカガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、任意の種類のエラストマーまたはプラスチック、例えばポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン(Parylene、商品名)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、非導電性酸化物、例えばガラス、二酸化ケイ素、ダイアモンド、非導電性セラミック、シリコーン、エラストマー、ガラス状物質、鉱物物質、セラミック、ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、コポリマーから選択される少なくとも1の物質から成り得る。
【0040】
本発明の例示的実施態様では、マイクロチャネルが少なくとも1の入り口および/または少なくとも1の出口を有する。所望により、上記口の少なくとも1が1またはいくつかの貯蔵器、1またはいくつかのポンプ、1またはいくつかの検出器もしくはセンサーあるいは1またはいくつかのサンプリングデバイスに連結され得る。
【0041】
マイクロチャネルは、連結したマイクロチャネルのネットワークの一部であり得る。
【0042】
本発明の好ましい実施態様では、上記電極アッセンブリが、マイクロチャネルの内部表面から、例えば絶縁物質によって、電気的に絶縁されている。絶縁物質は、少なくとも1nm、例えば少なくとも10nm、好ましくは少なくとも100nm、最も好ましくは少なくとも1μm、例えば数十μm乃至数百μmまでの厚さを有し得る。典型的には、より大きいマイクロチャネルのために、より厚い絶縁層が好ましくあり得る。この絶縁物質は、例えばポリマー状物質、例えばポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン、PMMA、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、PDMS、非導電性酸化物、例えばガラス、二酸化ケイ素、ダイアモンド、非導電性セラミックから成り得る。
【0043】
好ましくは、電極アッセンブリが、電極間の電場がマイクロチャネルの軸と実質的に共線的であるのに十分な距離だけ、マイクロチャネルの軸に沿って軸方向に間隔を置かれた少なくとも2の電極を含む。各電極は、マイクロチャネルの軸に関して対称であり得る。有利には、上記電極の少なくとも1が、マイクロチャネルを横切って互いに向かい合う少なくとも2の等電位部分を含む。上記電極の少なくとも1は、例えばマイクロチャネルを取り囲む円筒状の表面を有するモノリシック(monolithic)であり得る。1変形では、上記電極の少なくとも1が複合体である、すなわち、例えばマイクロチャネルを挟む少なくとも2の実質的に平行な等電位プレートを含む、複数の片から成る。電極はまた、上記した以外の形状を有し得る。
【0044】
これは、特許出願FR2794039またはPaikら、Lab Chip, 3, 28-33(2003)に開示された従来技術とは異なる。上記従来技術では、小滴の操作が、異なる構成により、すなわち、操作されるべき小滴が含まれるところのチャンバを横切って互いに向かい合う2の平らな電極の間に電位差を付与することにより得られる。
【0045】
好ましくは、電極が、マイクロチャネルの厚さよりも大きい、好ましくは厚さの2倍より大きい長さを有するギャップだけ間隔をあけて置かれる。
【0046】
発電ユニットは有利には、上記2の電極の間に電位差、好ましくは交差電位、を生じるように構成された電流および電圧発生器の少なくとも1を含む。
【0047】
有利には、電極アッセンブリが、マイクロチャネルの少なくとも1の断面において電場の振幅が10倍未満だけ、好ましくは5倍未満だけ、より好ましくは2倍未満だけ変化し、好ましくは実質的に同じであり、特に電極間のギャップにおいて実質的に同じであるように構成されている。
【0048】
電極アッセンブリを介して発電ユニットによって生じた電場は、任意の一時的なプロファイル、例えば連続の、可変のまたは交流(AC)のプロファイル、またはそのような一時的プロファイルの組み合わせを有し得る。たとえば、電場は可変周波数または二乗平均平方根(RMS)振幅を有するAC電場、あるいは連続およびAC成分の重ね合わせであり得る。
【0049】
「AC電場」は、時間的に周期的でありかつゼロ時間平均(zero time average)を有する任意の電場を意味する。本発明に従うAC電場の非制限的例は、正弦波、矩形波またはのこぎり波のAC電場である。
【0050】
発電ユニットは好ましくは、約0.01Hz〜約1GHz、好ましくは約1Hz〜約10MHzの範囲の周波数を有するAC電場を発生することができる。
【0051】
小滴の合体は、例えば100Hz〜10KHzの周波数によって効率的に達成される。少なくとも1の小滴の等分は、好ましくは、50Hz未満の周波数で達成される。
【0052】
発電ユニットは、パケットの、パケットを取り囲む流体の、およびマイクロチャネルの性質、ならびにデバイスのサイズに依存して、1V〜30kV、好ましくは60V〜2kVの範囲のRMS電圧をデリバリーするように構成され得る。電圧は、デバイスのサイズが増加するにつれて増加し得る。電極間のギャップにおけるマイクロチャネル内のRMS電場は、例えば、100V/cm〜100kV/cm、好ましくは500V/cm〜20kV/cmの範囲であり得る。
【0053】
発電ユニットは、振幅および周波数の少なくとも1が時間と関連して可変である電圧をデリバリーするように構成され得る。例えば、電場の振幅および/または周波数は、2つのパケットが接近接触するとき、変えられ得る。
【0054】
有利には、電極アッセンブリが支持体中に収容されており、支持体は、固定要素によって一緒に組み立てられた2つの分離した支持部材を有し、各支持部材は、電極アッセンブリの1つの電極を有する。支持体は、マイクロチャネルを受け入れるための少なくとも1のオリフィスを含み得る。
【0055】
マイクロチャネルがサイドチャネルに連結されるとき、サイドチャネルは、マイクロチャネルの寸法に匹敵する寸法を有する断面を有する。好ましくは、サイドチャネルの断面がマイクロチャネルのものより小さい。1変形では、サイドチャネルの断面がマイクロチャネルのものより大きい。
【0056】
上記サイドチャネルを伴うデリバリー系は、圧力制御手段または流動制御手段を含み得る。
【0057】
好ましくは、上記サイドチャネルおよび上記デリバリー系は、界面活性剤を含む溶液をマイクロチャネル中でデリバリーするように構成される。
【0058】
用語「界面活性剤」は、2つの流体間の界面張力を変えることができる任意の種、分子または分子の組み合わせを意味する。界面活性剤は、例えば、張力活性のまたは両親媒性の種であり得る。
【0059】
界面活性剤は、水中油系エマルジョンの形成を好むように選択され得る。
【0060】
パケットが非水性液体中に懸濁された水性小滴であるならば、上記界面活性剤は、典型的には、高HLB(親水性/親油性バランス)を有する界面活性剤、例えば15より大きいHLB値を有する界面活性剤である。そのような界面活性剤の非制限的例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、オレイン酸およびCTABである。
【0061】
パケットが周囲の水性流体中の油性小滴であるならば、上記溶液は、好ましくは、低いHLB、例えば15より低いHLB、好ましくは10より低いHLBを有する少なくとも1の界面活性剤を含む。
【0062】
油性相と水相との間の界面張力を減少させることができる、または小滴の合体を選好することができる多数の界面活性剤が、例えばEmulsions, afundamental and practical approach, J. S. Sjoblom Ed, Klumer, Dordrecht(1992)またはP. Becher, Emulsions, Theory and Practice, 第2版、R.E. Krieger Pub. Co, Malabar, Fl (1985)に列挙されている。
【0063】
デバイスが、デリバリー系に連結した第一のサイドチャネルを含む、2つの小滴を合体または分裂させるための本発明の例示的実施態様では、マイクロチャネルが、第二のサイドチャネルに連結され、第二のサイドチャネルは好ましくは第一のサイドチャネルに関してまたはその近くで連結されかつ最初のパケットの合体または分裂によって形成されたパケットを集めるように構成される。
【0064】
マイクロチャネルは、広範囲の均一のまたは複合の物質から成り得る。パケットが、上記パケットのための相互作用部位を提供するように構成された反応表面上で操作されるところの、米国特許第6294063号に開示された従来技術と反対に、本発明に従うマイクロチャネルの壁は、埋め込み用流体の存在下でのパケットとマイクロチャネルの壁との相互作用の危険を減少させる物質で作られ、または上記物質で処理され得る。パケットとマイクロチャネルとの間に化学的相互作用は全くないと考えられる。
【0065】
パケットが水系小滴である、例示的実施態様では、マイクロチャネル壁を処理することにより、および/または小滴中におよび/または流体添加物中に含めることにより、小滴とマイクロチャネルの壁との間の界面張力が、小滴と周囲の流体との間の界面張力より大きくされている。
【0066】
水系液体と表面との間の表面張力を高めるために多くの方法が使用され得る。例えば、本来疎水性の表面、例えばフルオロカーボンまたはポリエチレン、を選択することができる。また、表面を疎水性物質、例えばテフロン(登録商標)AF、シランまたはフルオロシラン、で処理することもできる。
【0067】
水と水素化油系流体との間の表面張力は、表面活性分子の存在によって低下され得る。多くのそのような表面活性分子が従来公知であり、例としてここにほんのいくつか挙げると、Pluronics(商品名)、Symperionics(商品名)、Triton(商品名)、Span(商品名)80、Tergitol(商品名)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、オレイン酸、メチルセルロース、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルセルロース、またはCoatex(商品名)などの表面活性剤が挙げられる。流体がフッ素化されているならば、フッ素化された界面活性剤、例えば1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール、または1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクタン−1−オールが特に適する。
【0068】
フッ素化された、水と混和しない流体は、下記要素の少なくとも1を含み得る。部分的にまたは完全にフッ素化されたアルカン、アルセンまたはアルシン、例えばパーフルオロアルカン、例えばパーフルオロデカリンである。本発明の1実施態様では、水と混和しない流体が、フッ素化された分子の混合物、例えば、「フレオン(Freon)」ファミリーのフッ素化された溶媒、またはFCフルオロ界面活性剤、例えばFC40またはFC75(3M製)である。好ましくは、上記混合物における所与の分子量の化合物はいずれも、混合物の75重量%以下である。
【0069】
本発明の例示的実施態様では、マイクロチャネルが少なくとも1のパケットを取り囲む流体で満たされており、上記流体は、任意の液体または気体状流体であり得る。ただし、それは、パケット中でまたはマイクロチャネルの壁と混和しない。
【0070】
パケットを取り囲む流体は、液体、例えば水と混和しない有機または無機の液体であり得る。
【0071】
流体はフッ素化された液体または気体であり得、小滴は有機またはヒドロ有機液体であり得、所望により種(species)を含む。
【0072】
本発明の例示的実施態様では、パケットおよび周囲の流体が異なる導電性および/または異なる誘電率を有する。例えば、パケットは、取り囲む流体の導電性より高い導電性を有し得る。
【0073】
本発明の例示的実施態様では、パケットが、非混和性の第二液体中に懸濁された第一液体の小滴であり、上記第一液体が第一よりも電気導電性が大きい。
【0074】
小滴は、水系小滴であり得る。上記水系小滴歯、任意の種類の天然の、人工の、有機のまたは無機の種、例えば生物学的分子、たんぱく質、たんぱく質複合体、酵素、ハプテン、抗原、抗体、アプタマー、エピトープ、核酸、ペプチド、ポリサッカライド、グリコペプチド、細胞、細胞の集合体、薬物、化学物質、ラテックス、生きたまたは死んだ生物、ウイルス、細胞小器官、リポゾーム、小胞、ミセル、合成または天然ポリマー、ナノ粒子、蛍光分子、量子ドット、化学試薬、バッファー、界面活性剤およびそのような種の任意の組み合わせを含み得る。
【0075】
本発明の別の例示的実施態様では、パケットが、水と混和しない液体の小滴であり、周囲の流体が水系溶液である。
【0076】
本発明は、マイクロチャネルの断面に匹敵する大きさを有するパケットの操作を可能にし得る。
【0077】
例示的実施態様として、上記パケットの最も小さい断面の面積が、どちらが小さいにしても、第一電極の位置または第二電極の位置でのマイクロチャネルの断面の面積の半分に少なくとも等しい。
【0078】
パケットは、マイクロチャネルの直径に匹敵し得る直径を有する球状の小滴、またはマイクロチャネルの断面全体に広がる細長い小滴であり得る。
【0079】
本発明に従うデバイスは、コロイドを融合して例えば鎖を形成するために使用され得る。
【0080】
デバイスはまた、スクリーニング処理のために使用され得る。
【0081】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも2のパケットをマイクロチャネル中で互いの方へ移動させるための方法に関し、これは特に、上記少なくとも2のパケットを崩壊させるためであり、上記マイクロチャネルは縦軸を有し、上記方法は、
上記少なくとも2のパケットをマイクロチャネルに導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分内に電場を発生させること
を含み、ここで、上記パケットが上記マイクロチャネル部分内に位置されるとき、上記電場が好ましくは、上記部分におけるマイクロチャネルの軸と実質的に共線的でありかつ上記2つのパケットを互いの方に移動させるように選択される振幅および周波数を有する。
【0082】
電場が、マイクロチャネルの軸に沿って軸方向に間隔をおいて置かれた少なくとも2の電極によって発生され、上記電極がギャップによって分離されているとき、上記方法は、
上記電場を発生させる前に、2つの電極間の上記ギャップ中に2つのパケットを位置させること、ここで上記パケットは静的平衡にある、および
上記電場を発生させること
を含み得る。
【0083】
1変形では、崩壊のためのパケットが、崩壊のインフライト(in-flight)操作を行なうように、流動する流れの中に最初に置かれ得る。上記方法は、したがって、
2つのパケットをマイクロチャネル中に置くこと、ここでパケットの少なくとも1は電極間のギャップの外にある、
上記パケットを、例えばマイクロチャネル中の流動する流れによって、ギャップの方に移動させること、および
少なくとも上記パケットがギャップ中に位置されるとき、上記電場を発生させること
を含み得る。
【0084】
本発明の例示的実施態様では、上記パケットの少なくとも1が生物学的物質、例えば細胞または細胞質核を含む。少なくとも2のパケットを崩壊させるための方法は、パケットが生物学的膜を含むときに特に有利である。
【0085】
上記方法は、ハイブリドーマを形成するために、または胚発生細胞を操作するために行なわれ得る。
【0086】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも2のパケットをマイクロチャネル中で互いの方に移動させるための方法に関し、この方法は特に、それらを崩壊させるため、または少なくとも1のパケットを分裂させるためであり、上記マイクロチャネルは軸を有し、上記方法は、
少なくとも2のパケットまたは少なくとも1のパケットをマイクロチャネルの1つの部分におくこと、および
上記少なくとも2のパケットの間または上記少なくとも1のパケットとその周囲との間の界面張力を変えることができる界面活性剤の溶液をマイクロチャネルの上記部分にデリバリーすること
を含む。
【0087】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも1のパケットを、縦軸を有するマイクロチャネル中で分裂させるための方法に関し、上記方法は
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記少なくとも1のパケットが上記少なくとも一部分内に置かれるとき、上記電場が好ましくは上記部分におけるマイクロチャネルの軸と実質的に共線的でありかつパケットを分裂させるように選択される振幅および周波数を有する。
【0088】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも2のパケットの崩壊または少なくとも1のパケットの分裂をモニターする方法に関し、上記方法は、
上記で定義されたマイクロ流体デバイスを使用してマイクロチャネル中での崩壊または分裂を引き起こすこと、および
崩壊または分裂を、例えばビデオデバイスを使用することにより、または電気パラメータ、例えば、マイクロチャネルに含まれる少なくとも1の物質と例えば関連する電気抵抗を測定することにより、検出すること
を含む。
【0089】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも1のパケットを、軸を有するマイクロチャネル中で移動させる方法に関し、上記方法は、
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記少なくとも1のパケットが上記部分内に置かれるとき、マイクロチャネルに沿ってパケットを移動させるように、上記電場が好ましくはマイクロチャネルの軸と共線的である。
【0090】
上記電場は連続であり得る。
【0091】
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中で移動させる操作は、崩壊または分裂の操作とは独立して行なわれ得る。
【0092】
1変形では、少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中で移動させる上記操作が、崩壊または分裂の操作を行なう前に上記少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中に適切に位置させるために行なわれ得る。
【0093】
本発明は、別の局面によれば、マイクロ容器中、特にマイクロチャネル中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法に関し、上記マイクロ容器は、マイクロ容器の内部空間を規定する少なくとも1の管状部分を有し、ここで、
上記管状部分が、内部がコーティングされていない、フッ素化されたバルク物質から成り、または
上記管状部分が、フッ素化されていないバルク物質から成りかつ管状部分の内部表面の周囲全ての上を永久の層でコーティングされている、または
マイクロ容器が、少なくとも2の管状部分の連続を含み、第一管状部分がフッ素化されたバルク物質で作られ、第二管状部分が、フッ素化されていないバルク物質で作られかつ内部周囲の全ての上を永久の層でコーティングされており、
上記永久の層が好ましくは疎水性であり、そして
上記マイクロ容器が少なくとも部分的に、上記パケットと混和しない担体流体で満たされ、上記担体流体は、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を減少させるのに十分大きい濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む。
【0094】
表現「バルク(bulk)物質」は、モノリシックな(monolithic)物質を意味する。
【0095】
例えば、本発明に従うバルク物質は、同じ物質、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)で作られた2つの部分のアッセンブリとは異なる。
【0096】
バルク物質はまた、異なる物質で作られた2つの部分のアッセンブリ、例えばPDMSで作られた部分がガラスで作られた部分に結合したアッセンブリまたはボロシリケートで作られた部分がシリコーンで作られた部分に結合したアッセンブリとは異なる。
【0097】
そのような公知の系では、マイクロ容器またはマイクロチャネルの周囲の異なる部分間の化学的性質の相違が、パケットのまたは担体流体の、そのような部分との相互作用を異なるものにする傾向にあり、したがって、上記パケットに行なわれる操作にわたって不十分な制御を与える傾向にある。
【0098】
「永久の層」は、担体流体によってマイクロ容器の内部表面へ運ばれない、または上記表面から除去されない層を意味し、典型的には、上記流体中に添加された表面活性成分、特に、SPAN、SDS、Pluronics(商品名)などの界面活性剤、に関するケースがそうであろう。永久の層の使用は、それが比較的丈夫であり、そして上記担体流体の組成に関してより多くの自由度を与えるので、有利である。
【0099】
本発明に従う方法では、いくつかの適用のために、上記担体流体にそのような界面活性剤を添加することができる。
【0100】
管状部分は、円形のまたは円形以外の断面を有する。例えば、断面が矩形であり得る。
【0101】
管状部分の断面は、マイクロ容器の長さに沿って変わっても変わらなくてもよい。
【0102】
永久の層は、以下から選択される物質を含み得る。すなわち、溶融シリカガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、任意の種類のエラストマーまたはプラスチック、例えばポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン(商品名)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、非導電性酸化物、例えばガラス、二酸化ケイ素、ダイアモンド、非導電性セラミック、シリコーン、エラストマー、ガラス状物質、鉱物物質、セラミック、ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、コポリマー、シラン、フルオロシラン、フルオロポリマーである。
【0103】
本発明はまた、別の局面によれば、パケットと混和しない担体流体中に包埋された少なくとも1のパケットに少なくとも1の化学的、物理的または生物学的操作を行なうためのデバイスに関し、上記デバイスは、上記パケットを含む上記担体流体を取り囲む少なくとも1のマイクロ容器を含み、上記マイクロ容器の内部表面はフッ素化されており、上記担体流体は、少なくとも0.1cmc(臨界ミセル濃度)の比濃度の界面活性剤を含む。
【0104】
本発明に従うマイクロ容器は、任意の形状であり得る。例えば矩形断面のマイクロチャネル、円筒状のマイクロ毛細管、薄いスラブ様容器、または円筒状、ピラミッド状もしくは矩形のマイクロバイアルであり得る。
【0105】
いくつかの用途のために、本発明に従うデバイスは、1より多くの、好ましくは10より多くまたは100より多くの、そして数十万までのそのようなマイクロ容器を集めることができる。
【0106】
1実施態様では、マイクロ容器が少なくとも1の入り口を有する。マイクロ容器は、少なくとも1の出口を有し得る。所望により、上記口は1またはいくつかの貯蔵器に、1またはいくつかのポンプに、または1またはいくつかのサンプリングデバイスに連結され得る。
【0107】
所望により、マイクロ容器はまた、連結したマイクロチャネルおよび貯蔵器のネットワークの一部であり得る。
【0108】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロ容器、特にマイクロチャネル中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法に関し、上記マイクロ容器は内部の管状疎水性表面を有し、上記マイクロ容器は、少なくとも部分的に、上記パケットと混和しない担体流体で満たされ、上記流体は、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を減少させるのに十分大きい濃度の少なくとも1の表面活性剤を含む。
【0109】
上記操作は、少なくとも1のパケットを移動させること、少なくとも1のパケットを分裂させること、少なくとも1のパケットを少なくとも1の別のパケットと合体させること、および少なくとも1のパケットを反応させることの少なくとも1であり得る。
【0110】
移動させることは、担体流体をマイクロ容器中で循環させることを含み得る。
【0111】
操作は、電場の不存在下で行なわれ得る。
【0112】
操作は、少なくとも1のパケットをマイクロ容器の入り口からマイクロ容器の出口の方へ移動させることを含み得る。
【0113】
操作は、少なくとも1のパケットを少なくとも2の異なる物理的および/または化学的条件に、特に少なくとも2の異なる温度に順次暴露することを含み得る。
【0114】
本発明はまた、別の局面によれば、内部管状表面を有するマイクロ容器、特にマイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスに関し、上記デバイスは、マイクロ容器の内部空間を形成する管状バルク疎水性部分をさらに含み、ここで、上記バルク部分は、疎水性の層でコーティングされている。
【0115】
1実施態様では、バルク部分が、フッ素化された物質で作られている。1変形では、バルク部分が、フッ素化されていない物質で作られ、かつフッ素された層でコーティングされている。
【0116】
マイクロ流体デバイスは、連続した少なくとも第一および第二のバルク部分を含み得、第一部分は、フッ素化された物質で作られかつコーティングされた層を有せず、第二部分はフッ素化されていない物質で作られかつフッ素化された層でコーティングされている。
【0117】
1変形では、マイクロ流体デバイスが、マイクロ容器の周囲を形成するための一緒に組み立てられた、テフロン(登録商標)で作られた2つの部分を含み得る。
【0118】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロ容器中、特にマイクロチャネル中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法に関し、上記マイクロ容器は内部表面を有し、上記マイクロ容器は、上記パケットと混和せずかつ少なくとも1の界面活性剤を含む担体流体を入れられており、パケットとマイクロ容器の内壁との間の界面張力と、パケットと担体流体との間の界面張力との間の相違が少なくとも26mN/m、好ましくは少なくとも35mN/mである。上記相違は、約35mN/m〜約45mN/mに含まれ得る。
【0119】
Ticeら、Langmuir 2003, 19, 9127-9133では、マイクロチャネル中の担体流体による小滴の輸送が、小滴と担体流体との間の界面張力が小滴とマイクロチャネルとの間の界面張力より小さいならば、マイクロチャネル壁との相互作用なしに行なわれることが提案されている。特に、上記著者らは、PDMSマイクロチャネル(界面張力38mN/m)中で、フルオロ界面活性剤(界面張力12〜14mN/m)を含むフルオロカーボン中に溶解された水小滴を使用した。
【0120】
この場合、小滴/マイクロチャネルと小滴/流体との間の相違が24〜26mN/mである。驚いたことに、同様の条件(シリコーン毛細管中での、FC40+1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール中の水小滴(流体と水との間の界面張力は12〜20mN/m(実施例11および
図14を参照)であり、水の毛細管に対する界面張力は38mN/mである))で、この条件(表面張力の差が明確であり、18〜26mN/mを含む)が満たされたが、小滴の不完全な挙動および小滴間の汚染(実施例14を参照)がなおも認められることが見出された。
【0121】
これに対して、シリコーンがフルオロシラン(水との界面張力:55mN/m)でさらに処理される、すなわち、マイクロチャネルの表面に関してのパケットの界面張力とパケットと流体との間の界面張力との相違が35〜45mN/mの値に増加されるならば、汚染は観察されない。
【0122】
また、水小滴が、テフロン(登録商標)の毛細管(界面張力55nN/m)中の純粋なFC40(水/FC40界面張力:51.8mN/m)中で輸送されるとき、Ticeらの文献に述べられた条件が満たされ、それにもかかわらず、満足のいかない小滴輸送が観察され、小滴が破壊する。これに対して、小滴/流体の界面張力が、0.5〜3%の1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールの添加によって10〜20mN/mの値に低下されるとき(マイクロチャネルの表面に関してのパケットの界面張力とパケットと流体との間の界面張力との相違が35〜45mN/mの値になる)、不規則な小滴運動および汚染は抑制され得る。
【0123】
好ましい実施態様では、担体流体中の界面活性剤の比濃度が少なくとも0.1cmc(臨界ミセル濃度)であり、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは1cmcである。
【0124】
有利には、担体流体中の界面活性剤の濃度が約0.01%〜約10%(重量/重量)、好ましくは約0.1%〜約3%である。
【0125】
好ましい実施態様では、上記界面活性剤がフルオロ界面活性剤、特にフルオロアルコールである。特に好ましい実施態様では、フルオロ界面活性剤が1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールである。
【0126】
特に好ましい実施態様では、バルク部分がシリコーンで作られている。例えば、マイクロチャネルがシリコーン毛細管で形成されている。
【0127】
特に好ましい実施態様では、バルク部分がシラン化されている。例えば、バルク部分の内部表面がシランで処理されている。
【0128】
1実施態様では、上記シランが、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシランなどから選択される。好ましい実施態様では、上記シランが、モノメチルフルオロシラン、ジメチルフルオロシラン、トリメチルフルオロシラン、モノクロロフルオロシラン、ジクロロフルオロシラン、トリクロロフルオロシランなどから選択される。さらに好ましい実施態様では、上記フルオロシランがパーフルオロシランである。1実施態様では、上記シランが少なくとも2の炭素原子、好ましくは4の炭素原子、さらに好ましくは8の炭素原子さらに好ましくは12、16またはそれ以上の炭素原子を含む骨格を有する尾部を有する。1実施態様では、上記フルオロシランが、1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリメチルシランおよび1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシルトリエトキシシラン(Fluorochem)から選択される。上記シランは好ましくは、水を含まない溶媒、例えばエタノール、メタノール、オクタン、DMFなどに溶解される。別の実施態様では、水を含まない担体ガスをシランの表面上に吹きかけることにより、上記シランが気相から直接、表面上に、そしてマイクロチャネル中に沈着される。
【0129】
1実施態様では、上記シラン化が、アルゴン雰囲気下で行なわれる。別の実施態様では、上記シラン化が、空気雰囲気下で行なわれる。好ましくは、上記雰囲気が水を含まない。なぜならば、水はシランを加水分解し、そのグラフト化を妨げるからである。
【0130】
別の実施態様では、マイクロチャネルの内部表面が、シラン化の前に、当業者に公知のいくつかの方法の1つによって活性化され得る。1実施態様では、上記活性化が、プラズマ活性化である。好ましい実施態様では、上記活性化が、マイクロチャネル中で酸性溶液を流動させることにより行なわれる。1実施態様では、上記溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、フッ化水素酸から選択される。
【0131】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも1のパケットを少なくとも1のマイクロチャネルから別のマイクロチャネルの方へ汚染なしに輸送することを可能にするコネクターに関し、上記コネクターはバルク物質によって構成され、その内部表面全体に疎水性の層を有し、上記層はフッ素化された物質およびシラン化された物質の1を含む。
【0132】
好ましい実施態様では、上記バルク物質がエラストマーである。
【0133】
さらに好ましい実施態様では、このコネクターがその入り口または出口の少なくとも1に関連し、異なる物質、好ましくは非エラストマー性物質で作られた別のマイクロチャネルに関連する。
【0134】
別の実施態様では、上記コネクターが、マイクロチャネルによって関連される少なくとも3のオリフィスを有する。興味深いことに、このコネクターはまた、上記コネクター内部の流体の流れを制御するために、その種々のオリフィスの間のピンチパルブまたはペリスタルティックポンプの中に挿入され得る部分を含む。
【0135】
上記コネクターは、所望により、成形された断片をまず作製し、次いでそのオリフィスの少なくとも1にエラストマー性チューブを連結することにより作製され得る。また、上記エラストマー性チューブは、その内部表面上に疎水性の層を有する。
【0136】
好ましくは、そしてマイクロ流体系においてパケットを操作するために従来使用されているほとんどのマイクロチャネルと対照的に、本発明では、マイクロチャネルの断面が円筒状である。これは、流体または固体物質を保持し、接触角を押さえ、従ってパケット間の汚染の危険を増加させる傾向にある鋭角を回避する。
【0137】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロ容器が、
フッ素化されたバルク物質で作られたマイクロ容器、
フッ素化されていないバルク物質で作られ、その周囲全体が永久の絶縁層で被覆された表面を有するマイクロ容器、および
フッ素化されたバルク物質で作られた少なくとも一部分およびフッ素化されていないバルク物質で作られた少なくとも一部分を含み、フッ素化されていないバルク物質で作られた部分がその全周囲を永久の絶縁層で被覆されたマイクロチャネル
から選択されるところのマイクロ容器に関し、上記マイクロ容器が、少なくとも部分的に、パケットと混和しない担体流体で満たされ、上記流体が、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を減少させるのに十分な大きさの濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む。
【0138】
本発明は、別の局面によれば、少なくとも1のマイクロ容器、特に少なくとも1のマイクロチャネル、およびマイクロ容器と連絡するコネクターを含むマイクロ流体デバイスに関し、上記コネクターが、上記マイクロ容器を別のマイクロ容器の少なくとも1、特にマイクロチャネル、およびデバイスの入口または出口に連結するように構成され、上記コネクターが、少なくとも1の疎水性の層を含む内部表面を有する
【0139】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロチャネルを形成する毛細管の一端に取り付けられるように構成されたコネクターに関し、上記コネクターが、少なくとも1の疎水性の層を含む内部表面を有する。
【0140】
本発明はまた、別の局面によれば、
マイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイス、および
上記マイクロ流体デバイスに取り付けられる、上記に開示したコネクター
を含むキットに関する。
【0141】
本発明はまた、別の局面によれば、パケットに少なくとも1の操作を行なうためのキットに関し、上記キットが、
少なくとも1の疎水性物質を含む内部表面を有するマイクロ容器、特にマイクロチャネル、および
上記パケットと混和しない担体流体、ここで、上記担体流体が、上記パケットと、水と混和しない流体との間の表面張力を減少させるのに十分な大きさの濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む
を含む。
【0142】
本発明はまた、
上記に開示したコネクター、および
上記コネクターに連結された少なくとも1の毛細管
を含むアッセンブリに関する。
【0143】
上記コネクターはT−コネクターであり得る。
【0144】
好ましくは、毛細管が、フッ素化されたまたはシラン化された内部表面を有する。
【0145】
本発明はまた、別の局面によれば、PCRを行なうためのデバイスに関し、上記デバイスは、界面活性剤を含むフルオロ溶媒で少なくとも部分的に満たされた毛細管で作られたコイルを含むマイクロチャネルを含み、上記コイルは、種々の温度に暴露される変性領域、アニーリング領域および伸長領域を含む。
【0146】
本発明は、非制限的実施態様の下記詳細な説明を読み、添付する図面を見ることにより一層理解され得る。
【0147】
図1は、本発明に従うマイクロ流体デバイスの概略部分図である。
図2は、
図1のデバイスの断面の概略図である。
図3は、
図2のデバイスの支持部材の概略透視図である。
図4A〜4Cおよび5A〜5Cは、本発明に従う2つの合体操作の3工程をそれぞれ概略的に示す。
図6A〜6Cは、本発明に従う、小滴を等分する3工程を概略的にかつ部分的に示す。
図7は、マイクロチャネルの一部における電場分布の概略図である。
図8は、本発明の1変形に従うデバイスの概略的部分図である。
図9および13は、本発明の他の変形を概略的にかつ部分的に示す。
図14は、実施例11で測定された、フルオロ界面活性剤1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールとフッ素化オイルFC−40との間の界面張力をプロットしたものである。
図15は、本発明に従うセグメント化された流れの中でDNAを増幅するために実施例12および13で使用されたサイクルPCRシステムを概略的にかつ部分的に示す。
図16は、実施例12に記載された、小滴の列における増幅の生成物のゲル電気泳動である。
図17は、実施例13に記載された、近隣の小滴間に汚染が無いことの証明である。
図18は、未処理、未洗浄のシリコーン毛細管における小滴の形状を示す。(a)および(b)は担体流体としてFC40を用い、(a)は初期の小滴であり、(b)はそれより後の小滴(上記列の60個目より後の小滴)である。(c)〜(e)は種々の濃度のフルオロ界面活性剤溶液を使用し、(c)は0.15重量%のフルオロ界面活性剤、(d)は0.5重量%のフルオロ界面活性剤、(e)は3.0重量%のフルオロ界面活性剤である(実施例14Aおよび14B)。
図19は、アルゴン雰囲気中でシラン化されたシリコーンチューブにおける小滴の形状を示す。(a)は7.5体積%のシラン、(b)は5体積%のシラン、初期の小滴、(c)は5体積%のシラン、後の小滴(100個目より後)、(d)は1体積%のシラン、(e)は0.25体積%のシランである(実施例14C)。
図20は、空気中でシラン化されたチューブにおける小滴の形状を示す。(a)は10体積%のシラン、5分反応、(b)は7.5体積%のシラン、5分反応、後の小滴の形状(列の110個目より後の小滴)、(c)は5体積%のシラン、30分反応、HCl活性化、(d)は5体積%のシラン、30分反応、プラズマ活性化、(e)は2.5体積%のシラン、30分反応である(実施例14D)。
図21は、0.5重量%のフルオロ界面活性剤でシラン化されたシリコーン管中での小滴の形状を示す。(a)は2.5体積%のシラン、30分反応、200個目の小滴、(b)は5体積%のシラン、30分反応、200個目の小滴である(実施例14E)。
図22〜24は、本発明に従う、汚染のないコネクターを概略的にかつ部分的に示す。