【解決手段】サーマルプリントヘッドA5は、複数の発熱部と、複数の個別電極33を有する電極層と、上記複数の発熱部を選択的に通電させる駆動ICと、複数の個別電極33と駆動ICとに接続された複数のワイヤ81と、を備えており、各個別電極33は、上記各発熱部と導通する帯状部331と、帯状部331よりも幅が広いパッド部332A,332Bとを有しており、各パッド部332A,332Bは、各ワイヤ81が接続されるボンディングパッド333A,333Bと、プローブ接触用パッド334A,334Bとを具備しており、プローブ接触用パッド334A,334Bの幅は、ボンディングパッド333A,333Bの幅よりも狭くなっており、パッド部332A,332Bが主走査方向x視において重なる部分を有している。
上記第1のパッド部の第1のボンディングパッドと、上記第2のパッド部の第2のボンディングパッドとが、主走査方向視において重ならない、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
上記第1のボンディングパッドの副走査方向における長さは、上記第2のプローブ接触用パッドの副走査方向における長さよりも短い、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
上記電極層は、通常厚部と、この通常厚部よりも厚く、かつ上記複数のボンディングパッドを含む厚肉部と、を有する、請求項1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
上記電極層は、上記通常厚部を構成する本体Au層と、上記本体Au層上に積層されており、かつ上記本体Au層とともに上記厚肉部を構成する補助Au層と、からなる、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
上記本体Au層および上記補助Au層は、いずれもAuを含むペーストを印刷した後に、これを焼成することによって形成されている、請求項8ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
上記基板上に形成されており、主走査方向に対して直角である断面形状が円弧状とされた主走査方向に延びる発熱抵抗体支持部、および副走査方向において上記発熱抵抗体支持部と離間したIC電極支持部、を有するグレーズ層をさらに備えており、
上記複数のパッド部と上記基板との間には、上記IC電極支持部が介在している、請求項1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【背景技術】
【0002】
図13は、従来のサーマルプリントヘッドの平面構造を部分的に示すものである(特許文献1)。
図13に示すサーマルプリントヘッドXは、基板91、基板91上に設けられた抵抗体層からなる発熱部92、発熱部92に通電させるための電極層93、および、駆動IC94を備えている。発熱部92は、主走査方向xに細分化されており、駆動IC94により個別に発熱させられる。電極層93は、共通電極95と主走査方向xに沿って配列された複数の個別電極96とを有している。
図13に示すように、共通電極95からは櫛歯状の電極配線95aが等間隔に延びており、隣り合う各電極配線95a同士の間に各個別電極96の一方の端部が入り込んでいる。さらに各個別電極96の他方の端部にはパッド部97が設けられている。各パッド部97は、駆動IC94のパッド94aに対してワイヤを介して配線されている。駆動IC94は、複数の個別電極96に選択的に通電させることにより、発熱部92の所望の位置を発熱させることが可能である。
【0003】
たとえば、200dpi、すなわち、1mmの長さに8ドットの発熱部92を配置するためには、各個別電極96のピッチは0.125mmといった微細なものとなる。これにともない、各電極配線95aおよび各個別電極96は微細な配線パターンとなる。一方で、 ワイヤボンディングを適切に行うには所定幅のパッド面が必要である。
図13に示す例では、複数のパッド部97を千鳥状に配置することで各パッド部97の幅を確保している。パッド部97を一列に配置した場合には、ワイヤのパッド部97への接触部分が密集しやすくなり、ワイヤを打つのが困難になることがある。
【0004】
サーマルプリントヘッドXの製造過程においては、個別電極96間のオープン・ショート検査や、発熱部92の抵抗値を所望の値とするために行われるパルス・トリミングが行われる。これらの作業を行うにあたり、たとえば、
図14に示すように、各パッド部97に検査用のプローブ98を接触させることが行われる。
【0005】
図14に示すように、パッド部97にプローブ98を接触させた場合、パッド面にプローブ痕97aが生じる。このような傷が残った部分はワイヤボンディングを行うには適さない。このため、事前にパッド部97の一部をプローブ接触用パッド97bとし、ワイヤボンディングを行うためのボンディングパッド97cとは分けておく必要がある。特許文献1においては、ボンディングパッド97cから離れた場所にプローブ接触用パッド97bを設ける例も示されている。いずれにせよ、各パッド部97の副走査方向yにおける寸法は長くなる傾向がある。
【0006】
これらの事情により、複数のパッド部97を主走査方向xにおいて高密度に配置しようとすればするほど、複数のパッド部97を設置するために必要なパッド設置領域97Aの副走査方向yにおける寸法は増大する傾向があった。このことは、サーマルプリントヘッドXの小型化を図る上で悪影響を及ぼしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、パッド設置領域を縮小することが可能なサーマルプリントヘッドを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、上記基板に支持されており、主走査方向に沿って配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、主走査方向に沿って配列された複数の個別電極を有する電極層と、上記複数の発熱部を選択的に通電させる駆動ICと、上記複数の個別電極と上記駆動ICとに接続された複数のワイヤと、を備えており、上記各個別電極は、上記各発熱部と導通し、主走査方向に沿って配列された帯状部と、上記帯状部よりも主走査方向における幅が広いパッド部とを有しており、上記各パッド部は、上記各ワイヤが接続されるボンディングパッドと、プローブ接触用パッドとを具備しているサーマルプリントヘッドであって、上記プローブ接触用パッドの主走査方向における幅は、上記ボンディングパッドの主走査方向における幅よりも狭くなっており、上記複数の個別電極は、第1のパッド部を有する第1の個別電極と、上記第1の個別電極と隣り合い、第2のパッド部を有する第2の個別電極とを含んでおり、主走査方向視において上記第1のパッド部と上記第2のパッド部とが重なる部分を有していることを特徴とする。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記第1のパッド部の第1のボンディングパッドと、上記第2のパッド部の第2のボンディングパッドとが、主走査方向視において重ならない。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記第1の個別電極は上記第1のパッド部と連結された第1の帯状部を有しており、上記第1のパッド部は、上記第1のボンディングパッドと、副走査方向において上記第1のボンディングパッドよりも上記第1の帯状部から遠い位置に設けられた第1のプローブ接触用パッドと、を具備しており、上記第2の個別電極は上記第2のパッド部と連結された第2の帯状部を有しており、上記第2のパッド部は、上記第2のボンディングパッドと、副走査方向において上記第2のボンディングパッドよりも上記第2の帯状部から遠い位置に設けられた第2のプローブ接触用パッドと、を具備しており、主走査方向視において、上記第2のボンディングパッドと上記第1のプローブ接触用パッドとが重なる部分を有している。
【0012】
別の好ましい実施形態においては、上記第1の個別電極は上記第1のパッド部と連結された第1の帯状部を有しており、上記第1のパッド部は、上記第1のボンディングパッドと、副走査方向において上記第1のボンディングパッドよりも上記第1の帯状部に近い位置に設けられた第1のプローブ接触用パッドと、を具備しており、上記第2の個別電極は上記第2のパッド部と連結された第2の帯状部を有しており、上記第2のパッド部は、上記第2のボンディングパッドと、副走査方向において上記第2のボンディングパッドよりも上記第2の帯状部に近い位置に設けられた第2のプローブ接触用パッドと、を具備しており、主走査方向視において、上記第1のボンディングパッドと上記第2のプローブ接触用パッドとが重なる部分を有している。
【0013】
別のより好ましい実施形態においては、上記第1の個別電極は上記第1のパッド部と連結された第1の帯状部を有しており、上記第1のパッド部は、上記第1のボンディングパッドと、副走査方向において上記第1のボンディングパッドよりも上記第1の帯状部から遠い位置に設けられた第1のプローブ接触用パッドと、を具備しており、上記第2の個別電極は上記第2のパッド部と連結された第2の帯状部を有しており、上記第2のパッド部は、上記第2のボンディングパッドと、副走査方向において上記第2のボンディングパッドよりも上記第2の帯状部に近い位置に設けられた第2のプローブ接触用パッドと、を具備している。
【0014】
好ましくは、主走査方向視において、上記第1のボンディングパッドと上記第2のプローブ接触用パッドとが重なる部分を有している。
【0015】
より好ましくは、上記第1のボンディングパッドの副走査方向における長さは、上記第2のプローブ接触用パッドの副走査方向における長さよりも短い。
【0016】
別のより好ましい実施形態においては、主走査方向視において、上記第1のボンディングパッドと上記第2の帯状部とが重なる部分を有し、かつ、上記第1のプローブ接触用パッドと上記第2のプローブ接触用パッドとが重なる部分を有している。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記パッド部は、副走査方向における上記ボンディングパッドと上記プローブ接触用パッドとの間に設けられた連結部を備えており、上記連結部は、副走査方向において上記ボンディングパッドに近づくにつれて主走査方向における幅が徐々に広くなるように形成されている。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記帯状部と上記パッド部との間にはパッド連結部が設けられており、上記パッド連結部は、副走査方向において上記パッド部に近づくにつれて主走査方向における幅が徐々に広くなるように形成されている。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記プローブ接触用パッドには、プローブ痕が形成されている。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記電極層は、通常厚部と、この通常厚部よりも厚く、かつ上記複数のボンディングパッドを含む厚肉部と、を有する。
【0021】
好ましくは、上記電極層は、上記通常厚部を構成する本体Au層と、上記本体Au層上に積層されており、かつ上記本体Au層とともに上記厚肉部を構成する補助Au層と、からなる。
【0022】
好ましい実施形態においては、上記補助Au層は、Auにガラスが混入された材料からなる。
【0023】
他の好ましい実施形態においては、上記補助Au層は、上記本体Au層よりもAu比率が高い。
【0024】
より好ましくは、上記本体Au層および上記補助Au層は、いずれもAuを含むペーストを印刷した後に、これを焼成することによって形成されている。
【0025】
好ましくは、上記補助Au層は上記プローブ接触用パッドを露出させるように形成されている。
【0026】
好ましい実施形態においては、上記抵抗体層は、TaSiO
2またはTaNを含む。
【0027】
好ましい実施形態においては、上記抵抗体層は、TaSiO
2またはTaNを含むペーストを印刷した後に、これを焼成することによって形成されている。
【0028】
好ましい実施形態においては、上記基板上に形成されており、主走査方向に対して直角である断面形状が円弧状とされた主走査方向に延びる発熱抵抗体支持部、および副走査方向において上記発熱抵抗体支持部と離間したIC電極支持部、を有するグレーズ層をさらに備えており、上記複数のパッド部と上記基板との間には、上記IC電極支持部が介在している。
【0029】
このような構成によれば、比較的幅の広い上記ボンディングパッド部を比較的幅の狭い部分で挟み込むことにより、主走査方向における上記パッド部の設置密度を高めつつ、副走査方向においてパッド部が占める長さを従来のように単純に千鳥状に配置するよりも短くすることが可能である。従って、本発明のサーマルプリントヘッドによれば、パッド部を設置するために必要なパッド設置領域を縮小することが可能となっている。
【0030】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0033】
図1〜
図5は、本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、支持部1、グレーズ層2、電極層3、抵抗体層4、保護層5、樹脂層6、駆動IC7、および封止樹脂82を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、たとえばバーコードシートやレシートを作成するために感熱紙に対する印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。なお、理解の便宜上、
図1においては、保護層5および樹脂層6を省略している。
【0034】
支持部1は、サーマルプリントヘッドA1の土台となっている部位であり、セラミック基板11、配線基板12、および放熱板13によって構成されている。セラミック基板11は、たとえばAl
2O
3などのセラミックからなり、たとえばその厚さが0.6〜1.0mm程度とされている。
図1に示すように、セラミック基板11は、主走査方向xに長く延びる長矩形状とされている。配線基板12は、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基材層とCuなどからなる配線層とが積層された構造を有する。
図3に示すように、配線基板12には、サーマルプリントヘッドA1をプリンタに接続するためのコネクタ83が取り付けられている。放熱板13は、セラミック基板11からの熱を放散させるためのものであり、たとえばAlなどの金属からなる。
【0035】
グレーズ層2は、セラミック基板11上に形成されており、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。このガラス材料の軟化点は、たとえば800〜850℃である。グレーズ層2は、発熱抵抗体支持部21とIC電極支持部22とを有している。発熱抵抗体支持部21は、主走査方向xに長く延びており、
図3および
図4に示すように、副走査方向yおよび厚さ方向zを含むyz平面の断面形状が円弧状とされている。発熱抵抗体支持部21のサイズは、副走査方向yにおける寸法がたとえば700μm程度、厚さ方向zにおける寸法がたとえば18〜50μm程度である。発熱抵抗体支持部21は、抵抗体層4のうち発熱する部分を印刷対象である感熱紙などに押し当てるために設けられている。IC電極支持部22は、発熱抵抗体支持部21に対して副走査方向yに離間した位置に設けられており、電極層3の一部や駆動IC7を支持している。IC電極支持部22の厚さは、たとえば50μm程度である。
【0036】
セラミック基板11のうち発熱抵抗体支持部21とIC電極支持部22とに挟まれた領域は、ガラス層25によって覆われている。ガラス層25は、軟化点がたとえば680℃程度と、グレーズ層2を形成するガラスよりも軟化点が低いガラスからなる。ガラス層2の厚さは、たとえば2.0μm程度である。
【0037】
電極層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、本実施形態においては、本体Au層301および補助Au層302からなる。本体Au層301は、たとえばAu比率が97%程度のレジネートAuからなり、添加元素としてたとえばロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されている。本実施形態においては、本体Au層301は、たとえば0.6μm程度である。補助Au層302は、本体Au層301上に積層されており、たとえばAu比率が99.7%程度のレジネートAuからなる。補助Au層302は、その厚さが0.3μm程度である。なお、補助Au層302は、上述した材質のほかに、たとえばAu比率が60%程度であり、かつガラスフリットが混入された材質でもよい。この場合、補助Au層302の厚さは、1.1μm程度である。
【0038】
電極層3は、複数の個別電極33および共通電極34を有している。
図13に示した従来のサーマルプリントヘッドXにおける場合と同様に、共通電極34は櫛歯状の電極配線(図示略)を有しており、これらの電極配線同士の間に各個別電極33の一方の端部が挟みこまれる構成となっている。また、共通電極34は、複数の個別電極33が設けられている領域を迂回し、駆動IC7の下側に回りこむように形成されている。
【0039】
共通電極34は、本体Au層301からなり、
図4に示すように導電性を高めるために、補助共通電極341が重ねて設けられている。補助共通電極341は、たとえばAg製である。なお、上述したように共通電極34の迂回する部分を補助共通電極341のみで構成しても構わない。
【0040】
複数の個別電極33は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものである。
図2に示すように、複数の個別電極33は、2種類の個別電極33A,33Bを含んでいる。個別電極33A,33Bは主走査方向に交互に配置されている。個別電極33A,33Bは、一方の端部が共通電極34の電極配線に挟まれる帯状部331と、帯状部331の他方の端部に接続されたパッド部332A,332Bを備えている。各パッド部332A,332Bは、ボンディングパッド333A,333Bとプローブ接触用パッド334A,334Bとを備えている。さらに
図2に示す例では、帯状部331とパッド部332A,332Bとの間にはパッド連結部335A,335Bが設けられている。パッド連結部335A,335Bは、副走査方向yにおいてパッド部332A,332Bに近付くにつれて主走査方向xにおける幅が徐々に広くなるように形成されている。
【0041】
パッド部332Aにおいては、パッド連結部335Aにボンディングパッド333Aの一方の端部が接続され、ボンディングパッド333Aの他方の端部からプローブ接触用パッド334Aが延出している。すなわち、副走査方向yにおいてプローブ接触用パッド334Aがボンディングパッド333Aよりも帯状部331から遠い位置にある。
図2に示すように、ボンディングパッド333Aはプローブ接触用パッド334Aよりも主走査方向xにおいて幅広に、プローブ接触用パッド334Aは帯状部331よりも幅広に形成されている。
【0042】
パッド部332Bにおいては、パッド連結部335Bにプローブ接触用パッド334Bの一方の端部が接続され、プローブ接触用パッド334Bの他方の端部からボンディングパッド333Bが延出している。すなわち、副走査方向yにおいてプローブ接触用パッド334Bがボンディングパッド333Bよりも帯状部331に近い位置にある。
図2に示すように、ボンディングパッド333Bはプローブ接触用パッド334Bよりも主走査方向xにおいて幅広に、プローブ接触用パッド334Bは帯状部331よりも幅広に形成されている。
【0043】
図2に示すように、ボンディングパッド333Aの副走査方向yおける長さはプローブ接触用パッド334Bの副走査方向yおける長さよりも短くなっている。さらに、ボンディングパッド333Bの副走査方向yおける長さはプローブ接触用パッド334Aの副走査方向yおける長さよりも短くなっている。ボンディングパッド333Aはプローブ接触用パッド334Bと隣り合い、ボンディングパッド333Bはプローブ接触用パッド334Aと隣り合う配置となっている。すなわち、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Bとが主走査方向x視において重なり合い、ボンディングパッド333Bプローブ接触用パッド334Aとが主走査方向x視において重なり合っている。このため、パッド部332Aとパッド部332Bの副走査方向yにおける他方の端部位置を揃えることが可能となっている。従って、本実施形態におけるパッド設置領域332の副走査方向yにおける長さは、パッド部332A,332B単体分の長さとなる。
【0044】
一例として、複数の帯状部331は主走査方向xに75μmごとに配置されており、各帯状部331の幅は30μmであり、各プローブ接触用パッド334A,334Bの幅は50μmであり、各ボンディングパッド333A,333Bの幅は70μmである。このとき、隣り合うボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Bとの間隔は15μmである。同様に、隣り合うボンディングパッド333Bとプローブ接触用パッド334Aとの間隔は15μmである。また、パッド設置領域332の副走査方向yにおける長さは230μmとなる。
【0045】
なお、
図3〜
図5における断面には個別電極33Bが表れている。
図3に示すように、帯状部331の一方の端部は、発熱抵抗体支持部21上に位置し、そこから副走査方向yに延びる部分がガラス層25上に形成されている。
図5に示すように、パッド部332BはIC電極支持部22上に形成されている。さらに、
図5によると、プローブ接触用パッド334Bにはプローブ痕334aが形成されている。このプローブ痕334aは、従来技術の
図14で示したように、製造過程で検査用のプローブを接触させることで生じるものである。個別電極33Aと個別電極33Bとの差異はそのパッド部332A,332Bにおけるボンディングパッド333A,333Bとプローブ接触用パッド334A,334Bの位置関係のみであるため、個別電極33Aも個別電極33Bと同様の断面構造を有している。個別電極33Aにおいてもプローブ痕334aと同様のプローブ痕が生じている。
【0046】
図4および
図5に示すように、電極層3は、通常厚部321、および厚肉部322に区分されている。通常厚部321は、本体Au層301によって構成されており、電極層3の大部分を占めている。厚肉部322は、本体Au層301と補助Au層302とが重なった部分であり、ボンディングパッド333A,332Bがこれに相当する。本実施形態においては、通常厚部321の厚さが0.6μm程度、厚肉部322の厚さが0.9μm程度である。なお、補助Au層302が上述したガラスフリットが混入された材質からなる場合、厚肉部322の厚さは、1.7μm程度である。
【0047】
本実施形態では、プローブ接触用パッド334A,334Bは通常厚部321により構成されている。すなわち、補助Au層302はプローブ接触用パッド334A,334Bを露出させるように形成されている。
【0048】
このような電極層3は、レジネートAuを用いて印刷・焼成することにより導体被膜を形成した後、フォト・エッチングの手法により不要部分を除去するといった手法により形成される。
【0049】
抵抗体層4は、電極層3によって部分的に通電されることにより発熱する部位であり、この発熱によって印字ドットが形成される。抵抗体層4は、たとえばTaSiO
2またはTaNからなり、その厚さが9〜10μm程度である。抵抗体層4は、複数の発熱部を備えている。各発熱部は、発熱抵抗体支持部21上において、共通電極34の電極配線と帯状部331の一方の端部とに挟まれた隙間を覆う部分であり、通電によって発熱する。
【0050】
抵抗体層4は、たとえばTaSiO
2またはTaNを材料としたペースト材を電極層3の発熱抵抗体支持部21と重なる領域に印刷・焼成することにより形成される。
【0051】
保護層5は、電極層3および抵抗体層4を保護するためのものであり、本実施形態においては、互いに積層された下層51および上層52からなる。下層51は、たとえばSiO
2からなり、その厚さが2μm程度である。上層52は、たとえばSiCを含む材料か
らなり、その厚さが6μm程度である。
【0052】
樹脂層6は、絶縁性の樹脂からなり、電極部61およびIC部62を有している。電極部61は、パッド部332A,332Bを露出させるように個別電極33A,33Bの大部分を覆っている。IC部62は、駆動IC7を支持している。樹脂層6の材質としては、たとえば透明なエポキシ樹脂が挙げられる。
【0053】
駆動IC7は、複数の個別電極33を介して抵抗体層4の発熱部を選択的に通電させるものである。駆動IC7は、樹脂層6のIC部62に搭載されている。駆動IC7の上面には、複数のパッド71が一列に形成されている。これらのパッド71は、ワイヤ81を介してボンディングパッド333A,333Bに接続されている。さらに、
図5に示すように、駆動IC7は、配線基板12に形成された配線パターンにも接続されている。この配線パターンは、コネクタ83と駆動IC7とを導通させる。また、共通電極34の延出部分と上記配線パターンとは、ワイヤによって接続されている。
【0054】
封止樹脂82は、たとえば黒色の樹脂からなり、駆動IC7、およびワイヤ81を保護している。本実施形態においては、封止樹脂82の副走査方向yにおける一端が樹脂層6の電極部61に重なっている。パッド部332A,332Bは封止樹脂82に覆われている。また、封止樹脂82の副走査方向yにおける他端は、配線基板12におよんでいる。
【0055】
次に、本実施形態のサーマルプリントヘッドA1の作用について説明する。
【0056】
上述したサーマルプリントヘッドA1においては、幅が広いボンディングパッド333A,333Bと幅の狭いプローブ接触用パッド334A,334Bの位置が互い逆であるパッド部332A,332Bが交互に配列されている。このため、パッド設置領域332の副走査方向y寸法をパッド部332A,332B単体の長さに抑えつつ、パッド部332A,332Bの主走査方向xにおける密度を増加させることができる。また、プローブ接触用パッド334A,334Bは、検査用のプローブを一時的に接触させるための部分であるため、主走査方向xにおける幅が狭くても支障なく検査を行うことが可能である。従って、本実施形態によれば、好ましくバッド設置領域332を縮小させることができ、ワイヤ81の長さを減少させ、セラミック基板11の小型化を図ることが可能である。これらの効果はサーマルプリントヘッドA1の小型化を図る上で好ましいものである。
【0057】
本実施形態によれば、ボンディングパッド333A,333Bの副走査方向yにおける位置が異なっているため、ボンディングパッド333A,333Bにワイヤ81を打ちやすくなっている。
【0058】
さらに、パッド設置領域332の副走査方向yにおける寸法を短くすることにより、パッド設置領域332を覆うために必要な封止樹脂82の量を削減することができる。
【0059】
図6〜
図12は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0060】
図6は本発明の第2実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図6に示すサーマルプリントヘッドA2は、パッド部332A,332Bの構成がサーマルプリントヘッドA1と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA1と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA2のサーマルプリントヘッドA1と異なる部分について説明を行う。
【0061】
本実施形態においては、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Aとの間に連結部336Aが設けられており、ボンディングパッド333Bとプローブ接触用パッド334Bとの間に連結部336Bが設けられている。連結部336Aは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Aに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。連結部336Bは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Bに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。
【0062】
上述したように電極層3は、たとえばエッチングを用いて形成される。このため、エッチングの不備により、パッド部332A,332Bにおいて角がある場合にはその部分がより突出するように形成されることが有り得る。あるいは熱変形により角が膨出することも有り得る。これらの事態はパッド部332A,332B同士の不当な接触を招くことがある。本実施形態の構成によれば、ボンディングパッド333Aとボンディングパッド333Bとが近接する部分に角が形成されておらず、こられの不具合を予防することが可能である。さらに接触を未然に防ぎやすいことにより、パッド部332A,332Bをより密に配置することが可能となる。
【0063】
図7は本発明の第3実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図7に示すサーマルプリントヘッドA3は、パッド部332A,332Bの構成および配置がサーマルプリントヘッドA1と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA1と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA3のサーマルプリントヘッドA1と異なる部分について説明を行う。
【0064】
本実施形態においては、
図7に示すように、ボンディングパッド333Aが帯状部331の間に挟まれ、プローブ接触用パッド334Aがプローブ接触用パッド333Bの間に挟まれるような配置となっている。すなわち、主走査方向x視においてプローブ接触用パッド334Aとプローブ接触用パッド333Bとが重なり合っている。また、パッド連結部335A,335Bが設けられていない。
【0065】
このような構成においても、パッド設置領域332の副走査方向yにおける寸法を短くしつつ、主走査方向xにおけるパッド部332A,332Bの設置密度を高めることが可能である。なお、本実施形態は、主走査方向xにおけるパッド部332A,332Bの設置密度をより高めたい場合に効果的である。
【0066】
図8は本発明の第4実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図8に示すサーマルプリントヘッドA4は、パッド部332A,332Bの構成がサーマルプリントヘッドA3と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA3と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA4のサーマルプリントヘッドA3と異なる部分について説明を行う。
【0067】
本実施形態においては、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Aとの間に連結部336Aが設けられており、ボンディングパッド333Bとプローブ接触用パッド334Bとの間に連結部336Bが設けられている。連結部336Aは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Aに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。連結部336Bは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Bに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。
【0068】
さらに本実施形態においては、パッド連結部335A,335Bが設けられている。また、プローブ接触用パッド334Aの先端部分が尖るように形成されている。
【0069】
上述したように電極層3は、たとえばエッチングを用いて形成される。このため、エッチングの不備により、パッド部332A,332Bにおいて角がある場合にはその部分がより突出するように形成されることが有り得る。あるいは熱変形により角が膨出することも有り得る。これらの事態はパッド部332A,332B同士の不当な接触を招くことがある。本実施形態の構成によれば、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Bとが近接する部分およびボンディングパッド333Bとプローブ接触用パッド334Aとが近接する部分に角が形成されておらず、これらの不具合を予防することが可能である。さらに接触を未然に防ぎやすいことにより、パッド部332A,332Bをより密に配置することが可能となる。
【0070】
図9は本発明の第5実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図9に示すサーマルプリントヘッドA5は、パッド部332A,332Bの構成および配置がサーマルプリントヘッドA1と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA1と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA5のサーマルプリントヘッドA1と異なる部分について説明を行う。
【0071】
本実施形態においては、
図9に示すように、パッド部332Bがパッド部332Aと同様に、ボンディングパッド333Bがプローブ接触用パッド334Bよりも帯状部331に近くなるように構成されている。さらに、ボンディングパッド333Aが帯状部331の間に挟まれ、プローブ接触用パッド334Aがボンディングパッド333Bの間に挟まれるような配置となっている。すなわち、主走査方向x視においてプローブ接触用パッド334Aとボンディングパッド333Bとが重なり合う部分を有している。また、本実施形態ではパッド連結部335A,335Bが設けられていない。
【0072】
このような構成においても、パッド設置領域332の副走査方向yにおける寸法を短くしつつ、主走査方向xにおけるパッド部332A,332Bの設置密度を高めることが可能である。
【0073】
図10は本発明の第6実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図10に示すサーマルプリントヘッドA6は、パッド部332A,332Bの構成がサーマルプリントヘッドA5と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA5と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA6のサーマルプリントヘッドA5と異なる部分について説明を行う。
【0074】
本実施形態においては、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Aとの間に連結部336Aが設けられており、ボンディングパッド333Bとプローブ接触用パッド334Bとの間に連結部336Bが設けられている。連結部336Aは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Aに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。連結部336Bは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Bに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。さらに本実施形態においては、パッド連結部335A,335Bが設けられている。
【0075】
上述したように電極層3は、たとえばエッチングを用いて形成される。このため、エッチングの不備により、パッド部332A,332Bにおいて角がある場合にはその部分がより突出するように形成されることが有り得る。あるいは熱変形により角が膨出することも有り得る。これらの事態はパッド部332A,332B同士の不当な接触を招くことがある。本実施形態の構成によれば、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Bとが近接する部分に角が形成されておらず、これらの不具合を予防することが可能である。さらに接触を未然に防ぎやすいことにより、パッド部332A,332Bをより密に配置することが可能となる。
【0076】
図11は本発明の第7実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図11に示すサーマルプリントヘッドA7は、パッド部332A,332Bの構成および配置がサーマルプリントヘッドA1と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA1と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA7のサーマルプリントヘッドA1と異なる部分について説明を行う。
【0077】
本実施形態においては、
図11に示すように、パッド部332Aがパッド部332Bと同様に、プローブ接触用パッド333Aがボンディングパッド333Aよりも帯状部331に近くなるように構成されている。さらに、ボンディングパッド333Aがプローブ接触用パッド334Bの間に挟まれるような配置となっている。すなわち、主走査方向x視においてボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Bとが重なり合う部分を有している。また、パッド連結部335A,335Bが設けられていない。
【0078】
このような構成においても、パッド設置領域332の副走査方向yにおける寸法を短くしつつ、主走査方向xにおけるパッド部332A,332Bの設置密度を高めることが可能である。
【0079】
図12は本発明の第8実施形態におけるサーマルプリントヘッドの要部拡大図である。
図12に示すサーマルプリントヘッドA8は、パッド部332A,332Bの構成がサーマルプリントヘッドA7と異なっており、その他の構成はサーマルプリントヘッドA7と同様の構成となっている。以下、サーマルプリントヘッドA8のサーマルプリントヘッドA7と異なる部分について説明を行う。
【0080】
本実施形態においては、ボンディングパッド333Aとプローブ接触用パッド334Aとの間に連結部336Aが設けられており、ボンディングパッド333Bとプローブ接触用パッド334Bとの間に連結部336Bが設けられている。連結部336Aは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Aに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。連結部336Bは、副走査方向yにおいてボンディングパッド333Bに近付くにつれて徐々に主走査方向xにおける幅が広くなるように形成されている。さらに本実施形態においては、パッド連結部335A,335Bが設けられている。また、ボンディングパッド333A,333Bの先端部分が狭くなるように形成されている。
【0081】
上述したように電極層3は、たとえばエッチングを用いて形成される。このため、エッチングの不備により、パッド部332A,332Bにおいて角がある場合にはその部分がより突出するように形成されることが有り得る。あるいは熱変形により角が膨出することも有り得る。これらの事態はパッド部332A,332B同士の不当な接触を招くことがある。本実施形態の構成によれば、ボンディングパッド333Aとボンディングパッドパッド333Bとが近接する部分に角が形成されておらず、これらの不具合を予防することが可能である。さらに接触を未然に防ぎやすいことにより、パッド部332A,332Bをより密に配置することが可能となる。
【0082】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、上述した実施形態ではパッド71が一列に配置しているが、
図13に示す従来のサーマルへプリントヘッドXの場合と同様に、千鳥状に配列しても構わない。