【課題】第1方向FB1およびその反対方向である第2方向FB2のいずれをも運転席からみて前進方向とすることができるキャリヤ10において、エンジン30a,30bを十分に冷却すること。
【解決手段】インタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aに対して第1方向FB1側には、ラジエータフード39aの開口部40aが設けられている。ラジエータフード39aは、直線案内部42a、湾曲部44aおよび仕切部材46aを備えている。インタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに対して第2方向FB2側には、ラジエータフード39bの開口部40bが設けられている。ラジエータフード39bは、直線案内部42b、湾曲部44bおよび仕切部材46bを備えている。
前記ラジエータフードの前記開口部に対して前記第2方向側には、前記エンジンの吸気を冷却するためのインタークーラが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の大型搬送車両。
前記エンジン、前記ラジエータ、前記ファン、前記開口部、および前記ラジエータフードは、それぞれ第1エンジン、第1ラジエータ、第1ファン、第1開口部、および第1ラジエータフードであり、
前記第1エンジンとは相違する第2エンジンと、
前記第2エンジンを冷却するための第2ラジエータと、
前記第2ラジエータに対して前記第2方向側に第2開口部を有する第2ラジエータフードと、
前記第2開口部から前記第2ラジエータへと進む気流を生じさせる第2ファンと、
を備え、
前記第2ラジエータフードは、前記第2開口部に対して前記車両の横方向の両側に、前記第2方向に流れる気体を前記ラジエータに案内するための案内部材を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の大型搬送車両。
前記ラジエータフードよりも前記第2方向側において前記ラジエータと前記ファンと前記エンジンとを覆い、前記ラジエータフードと連結され前記ラジエータフードを介して流入される気体の流路を形成するエンジンカバーと、
該エンジンカバーに開口され、前記エンジンカバー内に流入された気体を外部に排気する排気口とを備え、
前記エンジンカバーは、前記排気口に向けて細くなるように形成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の大型搬送車両。
前記エンジン、前記ラジエータ、前記ファン、前記開口部、前記ラジエータフード、前記エンジンカバー、および前記排気口は、それぞれ第1エンジン、第1ラジエータ、第1ファン、第1開口部、第1ラジエータフード、第1エンジンカバー、および第1排気口であり、
前記第1エンジンとは相違する第2エンジンと、
前記第2エンジンを冷却するための第2ラジエータと、
前記第2ラジエータに対して前記第2方向側に第2開口部を有する第2ラジエータフードと、
前記第2開口部から前記第2ラジエータへと進む気流を生じさせる第2ファンと、
前記第2ラジエータフードよりも前記第1方向側において前記第2ラジエータと前記第2ファンと前記第2エンジンとを覆い、前記第2ラジエータフードと連結され前記第2ラジエータフードを介して流入される気体の流路を形成する第2エンジンカバーと、
該第2エンジンカバー内に流入される気体の下流端として前記第2エンジンカバーに開口され、前記第2エンジンカバー内に流入された気体を外部に排気する第2排気口と、
を備え、
前記第2エンジンカバーは、前記第2排気口に向けて細くなるように形成されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の大型搬送車両。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1(a)に、本実施形態にかかる大型搬送車両(キャリヤ)10の側面図を示す。図示されるキャリヤ10は、車体12上に、一対の運転席20a,20bを備えている。すなわち、キャリヤ10は、いわゆるオーバーキャブである。運転席20a,20bは、いずれもキャリヤ10の長手方向(第1方向FB1および第2方向FB2)の端部に設けられている。詳しくは、運転席20aは、車体12のうち第1方向FB1側の端部に設けられており、運転席20bは、車体12のうち第2方向FB2側の端部に設けられている。これにより、運転席20aにドライバが乗車し、キャリヤ10を走行させる場合には、第1方向FB1が前進方向となって且つ第2方向FB2が後退方向となる。これに対し、運転席20bにドライバが乗車し、キャリヤ10を走行させる場合には、第2方向FB2が前進方向となって且つ第1方向FB1が後退方向となる。
【0023】
なお、図には、キャリヤ10の垂直上方Uおよび垂直下方Dと、第1左右方向LR1および第2左右方向LR2とを示してある。ここで、第1左右方向LR1は、第1方向FB1を前進方向とする運転席20aにとっての左側であり、第2左右方向LR2は、第2方向FB2を前進方向とする運転席20bにとっての左側である。
【0024】
上記車体12の下方には、サスペンション14を介して車輪16が設けられている。また、車体12の下方には、内燃機関(エンジン)を搭載したパワーユニット22a,22bが設けられている。これらは、いずれもキャリヤ10の長手方向両端に設けられており、特に、パワーユニット22aは、キャリヤ10の長手方向のうちの第1方向FB1側(運転席20a側)に設けられ、パワーユニット22bは、同長手方向のうちの第2方向FB2側(運転席20b側)に設けられている。パワーユニット22a,22bは、車輪16を回転駆動するための主機(油圧モータ)に供給する油圧や、操舵のための油圧、サスペンション14を駆動する油圧、車体12の高さを上下させる油圧を調整するアクチュエータを備えている。
【0025】
なお、
図1(b)は、キャリヤ10を垂直上方Uから見た平面図を示す。
【0026】
上記油圧モータが駆動されることで、キャリヤ10は、第1方向FB1および第2方向FB2のそれぞれに前進走行することができるのみならず、車輪16の軸方向を90度回転させることで、横方向(第1左右方向LR1または第2左右方向LR2)にも走行可能である。ただし、前進走行時の最大車速(たとえば「50km/h」)と比較して、横方向に走行する場合の最大車速(たとえば「10km/h」未満)は、小さい値に設定される。なお、パワーユニット22a,22bのそれぞれに内蔵されるエンジンは、第1方向FB1が前進方向とされるか、第2方向FB2が前進方向とされるかにかかわらず駆動される。すなわち、パワーユニット22a,22bの双方のエンジンの合計の出力によって、キャリヤ10の走行エネルギが生成される。
【0027】
図2に、パワーユニット22aの一部平面図を示す。詳しくは、
図2は、
図1(a)の垂直上方U側から見た平面図である。
【0028】
図示されるように、パワーユニット22aは、エンジン30aや、エンジン30aによって駆動される機関駆動式のファン38a、エンジン30aの吸気を冷却するインタークーラ32a、エンジン30aの冷却水を冷却するラジエータ34a、作動油を冷却するオイルクーラ36aを備えている。なお、ファン38aは、エンジン30aの回転に伴って、第2方向FB2へと進む気流を生成するものである。
【0029】
上記インタークーラ32a、ラジエータ34a、およびオイルクーラ36aには、ラジエータフード(
図2において図示せず)によって案内された気流が吹き付けられるようになっている。以下、これについて説明する。
【0030】
図3(a)〜
図3(c)のそれぞれに、ラジエータフード39aを含む冷却装置を、
図1の垂直上方U側から見た平面図、
図2の第2左右方向LR2側から見た側面図、
図2の第1方向FB1側から見た正面図を示す。なお、図中、「(L)」と「(R)」とは、第1左右方向LR1と第2左右方向LR2とのそれぞれに対応する一対の部材からなるものについて、それらを識別するために用いたものである。以下では、第1左右方向LR1側の部材と第2左右方向LR2側の部材とを識別する場合を除き、部材に付与した符号に「(L)」と「(R)」を用いない。
【0031】
ラジエータフード39aは、空気の流れを制御して、インタークーラ32a、ラジエータ34a、およびオイルクーラ36aに空気を案内するためのものであり、直線案内部42a、湾曲部44a、仕切部材46a、アンダーカバー50a、第1オーバーカバー52a、および第2オーバーカバー54aを備えて構成されている。
【0032】
図示されるように、インタークーラ32aに対して第1方向FB1側に、ラジエータフード39aによって空気の流れが妨げられない部分(開口部40a)が設けられている。本実施形態では、開口部40aの横幅(キャリヤ10の横方向、すなわち第1左右方向LR1および第2左右方向LR2における開口部40aの長さ)を、インタークーラ32aの冷却面の横幅程度としている。開口部40aのうちキャリヤ10の横方向両側(第1左右方向LR1および第2左右方向LR2)には、それぞれ横方向外側に延びる板状の直線案内部42aが設けられている。詳しくは、
図3(a)に示すように、キャリヤ10の横方向において、インタークーラ32aの冷却面の端部P1,P2よりも外側に、直線案内部42aの端部P3,P4が配置されている。そして、開口部40aよりも第1左右方向LR1側の直線案内部42a(L)には、第1左右方向LR1に進むほど第2方向FB2側に湾曲する板状の湾曲部44a(L)が結合しており、開口部40aよりも第2左右方向LR2側の直線案内部42a(R)には、第2左右方向LR2に進むほど第2方向FB2側に湾曲する板状の湾曲部44a(R)が結合している。
【0033】
また、インタークーラ32aよりも第1方向FB1側には、キャリヤ10の横方向に延びる仕切部材46aが設けられている。詳しくは、
図3(a)に示すように、第1左右方向LR1側に設けられている仕切部材46a(L)は、インタークーラ32aの冷却面の端部P1よりも第1左右方向LR1側に設けられており、第2左右方向LR2側に設けられている仕切部材46a(R)は、インタークーラ32aの冷却面の端部P2よりも第2左右方向LR2側に設けられている。なお、
図3(a)に示すように、仕切部材46aのうちキャリヤ10の横方向外側の端部P5,P6のそれぞれよりも、湾曲部44aのうちキャリヤ10の横方向外側の端部P7,P8のそれぞれの方が、キャリヤ10の横方向においてより外側に位置する。
【0034】
上記直線案内部42aおよび湾曲部44aの下側(垂直下方D側)と、仕切部材46aの下側とは、アンダーカバー50aに結合している。アンダーカバー50aは、さらに、第1左右方向LR1の直線案内部42a(L)および仕切部材46a(L)の下側と、第2左右方向LR2の直線案内部42a(R)および仕切部材46a(R)の下側との間に架橋されている。一方、上記直線案内部42aおよび湾曲部44aの上側(垂直上方U側)と仕切部材46aの上側(垂直上方U側)とは、第1オーバーカバー52aに結合している。第1オーバーカバー52aは、さらに、第1左右方向LR1の直線案内部42a(L)および仕切部材46a(L)の上側と、第2左右方向LR2の直線案内部42a(R)および仕切部材46a(R)の上側の間に架橋されている。これにより、アンダーカバー50aや第1オーバーカバー52aは、直線案内部42a、湾曲部44a、および仕切部材46aとともに、気体の流路を区画する中空の部材を構成している。特に、アンダーカバー50aや第1オーバーカバー52aは、直線案内部42a、湾曲部44a、および仕切部材46aとともに、中空の直方体状の部材を構成している。
【0035】
上記第1オーバーカバー52aには、第2オーバーカバー54aが結合している。詳しくは、第1オーバーカバー52aのうち、第1左右方向LR1側の直線案内部42a(L)の上側および仕切部材46a(L)の上側に結合する部分と、第2左右方向LR2側の直線案内部42a(R)の上側および仕切部材46a(R)の上側に結合する部分との間に架橋する部分は、第2方向FB2側の部分が、第2オーバーカバー54aへ向けて上昇する傾斜面となっており、これにより第2オーバーカバー54aに結合している。第2オーバーカバー54aは、インタークーラ32aの垂直上方U側に位置し、第2方向FB2側に行くほどその上面が垂直上方Uに延びている。第2オーバーカバー54aは、中空の上方案内部55を有している。上方案内部55は、第2オーバーカバー54aのうち、インタークーラ32a側の下面(垂直下方D側の面)と、オイルクーラ36a側の背面(第2方向FB2側の面)とに開口部が形成されることで形成され、第2オーバーカバー54aの下面と、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aの上部に対向する面とを連通するものである。このため、インタークーラ32aの上部へと流れる気体は、上方案内部55を介して、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aの上部に流出する。
【0036】
なお、上記開口部40aには、網目状部材であるエキスパンドメタル48aが設けられている。エキスパンドメタル48aは、インタークーラ32aやラジエータ34a、オイルクーラ36aを保護するための手段である。したがって、インタークーラ32aやラジエータ34a、オイルクーラ36aを傷つけうる部材の侵入を阻止しつつも、開口部40aからインタークーラ32aやラジエータ34a、オイルクーラ36a側に空気が流入することを極力妨げないように、各々の孔の開口面積が設定されている。
【0037】
図4に、
図1の第1方向FB1からキャリヤ10を見た正面図を示す。図示されるように、湾曲部44aのうちのキャリヤ10の横方向外側の端部は、車輪16よりもキャリヤ10の横方向外側に位置して且つ、車体12よりも内側に位置する。
【0038】
なお、
図3および
図4においては、パワーユニット22aの冷却装置の構造を示したが、パワーユニット22bの冷却装置の構造(寸法や形状)、機能も同一である。
図5に、パワーユニット22aとともに、パワーユニット22bを示す。
図5は、冷却装置の配置を模式的に示す平面図である。
図5において、パワーユニット22a内の部材の符号には、「a」が付与される一方、パワーユニット22b内の部材の符号には、「b」が付与されている。すなわち、パワーユニット22bは、エンジン30b、ファン38b、直線案内部42b、湾曲部44b、および仕切部材46bを備えており、これらはそれぞれ、エンジン30a、ファン38a、直線案内部42a、湾曲部44a、および仕切部材46aに対応しているとともに、開口部40bは、開口部40aに対応している。なお、ラジエータフード39bは、ファン38b、直線案内部42b、湾曲部44b、および仕切部材46bのみならず、ラジエータフード39aを構成するアンダーカバー50a、第1オーバーカバー52a、および第2オーバーカバー54aに対応する部材をも備えているが、ここではその図示を省略する。
【0039】
図示されるように、パワーユニット22aとパワーユニット22bとの配置は、対称性を有する。詳しくは、パワーユニット22aとパワーユニット22bとの中間であって且つキャリヤ10の横方向(第1左右方向LR1,第2左右方向LR2)に平行な線Lに対して線対称に配置されている。これは、パワーユニット22a,22bの冷却装置の構造(寸法や形状)を同一とすることに加えて、パワーユニット22aを構成する部材を以下のように配置することで実現したものである。すなわち、開口部40bを、インタークーラ32bやラジエータ34b、オイルクーラ36bよりも第2方向FB2側に設ける。また、湾曲部44bを、キャリヤ10の横方向外側に行くにつれて第1方向FB1側に湾曲する板状の部材とする。
【0040】
図6に、キャリヤ10の前進走行時における冷却装置の効果を示す。
図6(a)は、キャリヤ10が第1方向FB1側に前進走行する場合を示す。この場合、キャリヤ10から見て第2方向FB2側に流れる気流が生じる。これにより、パワーユニット22aについては、開口部40aから流入した気流が、インタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aに吹き付けられる。一方、パワーユニット22bについては、気流が湾曲部44bを介して進行方向を変更され、直線案内部42bに沿って流れた後、インタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに吹き付けられる。ここで、当初第2方向FB2側に流れていた気流が直線案内部42bに沿って流れた後、第1方向FB1側に流れるのは、ファン38bの吸引力によるところが大きい。なお、開口部40bよりも第2方向FB2側から開口部40bを介して流入する空気量は、車速が大きいほど小さくなる。これは、車速が大きいほど、キャリヤ10の走行に伴って生じる気流の流速が大きくなるため、湾曲部44bおよび直線案内部42bを介して案内された気流の流速が大きくなり、ファン38bによって、開口部40bよりも第2方向FB2側の空気が吸引されるのが妨げられるからである。
【0041】
図6(b)は、キャリヤ10が第2方向FB2側に前進走行する場合を示す。この場合、キャリヤ10から見て第1方向FB1側に進む気流が生じる。これにより、パワーユニット22bについては、開口部40bから流入した気流が、インタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに吹き付けられる。一方、パワーユニット22aについては、気流が湾曲部44aを介して進行方向を変更され、直線案内部42aに沿って流れた後、インタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aに吹き付けられる。ここで、当初第1方向FB1側に流れていた気流が直線案内部42aに沿って流れた後、第2方向FB2側に流れるのは、ファン38aの吸引力によるところが大きい。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0043】
(1)開口部40a,40bの両側に、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bを備えた。これにより、キャリヤ10が第1方向FB1を前進方向として前進走行するか、キャリヤ10が第2方向FB2を前進方向として前進走行するかにかかわらず、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bの冷却性能を高く維持することができる。
【0044】
すなわち、例えば、第1方向FB1に走行する場合(
図6(a))、パワーユニット22a側については、キャリヤ10の走行によって生じた気流が開口部40aを介してインタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aに勢いよく吹き付けられる。これに対し、パワーユニット22b側については、キャリヤ10の走行によって生じた気流が開口部40bから流入することはない。このため、直線案内部42bや湾曲部44bを備えないなら、インタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに吹き付けられる気流は、ファン38bの吸引力によって生じたもののみとなる。しかし、ファン38bによって生成される気流の流れる方向と、キャリヤ10の走行に伴って生じる気流の流れる方向とが逆であるため、ファン38bによる気流の生成能力は、キャリヤ10の走行によって低減される。これに対し、直線案内部42bや湾曲部44bを備えることで、キャリヤ10の走行によって生じた気流は、直線案内部42bや湾曲部44bによってその流れる方向を変更され、開口部40bに案内される。したがって、開口部40aから流入する気流の量に近似した量の気流を、インタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに吹き付けることが可能となる。
【0045】
ちなみに、ラジエータ34a,34bのそれぞれの冷却性能やインタークーラ32a,32bのそれぞれの冷却性能は、エンジン30a,30bのそれぞれの充填効率に影響する。このため、キャリヤ10が第1方向FB1に走行するか、キャリヤ10が第2方向FB2に走行するかにかかわらず、ラジエータ34a,34bの冷却性能やインタークーラ32a,32bの冷却性能を高く維持することは、エンジン30a,30bの出力性能を高く維持するうえで有効である。また、オイルクーラ36a,36bの冷却性能は、作動油によって駆動されるもの(車輪16等)の応答性等に影響する。これは、作動油の温度が高くなりすぎると、作動油の粘性が低下するためである。このため、キャリヤ10が第1方向FB1に走行するか、キャリヤ10が第2方向FB2に走行するかにかかわらず、オイルクーラ36a,36bの冷却性能を高く維持することは、キャリヤ10の走行性能を高く維持するうえで有効である。
【0046】
(2)直線案内部42a,42bのうちキャリヤ10の横方向の外側に湾曲部44a,44bを設けた。これにより、キャリヤ10が第1方向FB1に進む場合に生じる気流の方向を湾曲部44aによって開口部40a側になめらかに変更したり、キャリヤ10が第2方向FB2に進む場合に生じる気流の方向を湾曲部44bによって開口部40b側になめらかに変更したりすることができる。
【0047】
(3)仕切部材46a,46bを備えた。これにより、エンジン30aによって温められた空気がインタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aの側面に沿って流れてそれらの正面に回り込んだり、エンジン30bによって温められた空気がインタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bの側面に沿って流れてそれらの正面に回り込んだりする事態を回避することができる。また、仕切部材46a,46bのうちのキャリヤ10の横方向外側の端部よりも、湾曲部44a,44bのうちのキャリヤ10の横方向外側の端部の方が、横方向においてより外側にくるようにした。これにより、キャリヤ10の走行に伴って湾曲部44a,44b側に気流が流れようとするのを仕切部材46a,46bによって妨げられることを抑制できる。以上により、仕切部材46a,46bを備えることで、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34b、およびオイルクーラ36a,36bの冷却性能を高く維持することができる。
【0048】
(4)湾曲部44a,44bのうちの開口部40a,40bとは逆側の端を、車輪16よりもキャリヤ10の横方向の外側に位置させた(
図4)。これにより、湾曲部44a,44bに到達する空気量を増大させることができる。これに対し、上記逆側の端を車輪16よりも外側としない場合、たとえば第1方向FB1側への走行時(
図6(a))、第2方向FB2に進む気流は、湾曲部44bに突き当たる以前に、車輪16やサスペンション14に当たって乱される。このため、湾曲部44bに到達する空気量が減少しうる。
【0049】
(5)パワーユニット22aとパワーユニット22bとの配置に、
図5の線Lに対する対称性を持たせた。これにより、キャリヤ10が第1方向FB1に前進走行する場合と、第2方向FB2に前進走行する場合とで、キャリヤ10の走行性能を好適に均一化することができる。これは、対称性を持たせることで、キャリヤ10が第1方向FB1を前進方向として前進走行する場合と、第2方向FB2を前進方向として前進走行する場合とで、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bの冷却性能を均一化することができるためである。すなわち、開口部40a,40bを介してダイレクトに気流が流入する場合と、湾曲部44a,44bおよび直線案内部42a,42bによって案内された気流が流入する場合とでは、気流の密度に相違が生じうる。この場合であっても、対称性を持たせることで、キャリヤ10が第1方向FB1に前進走行する場合と、第2方向FB2に前進走行する場合との双方とも、開口部40a,40bのいずれか一方を介してダイレクトに気流が流入するとともに、湾曲部44a,44bおよび直線案内部42a,42bのいずれか一方によって案内された気流が流入するために、冷却性能を均一化することができる。
【0050】
なお、対称性を持たせることで、キャリヤ10の設計をしやすくなるという効果をも有する。
【0051】
(6)パワーユニット22a,22bをキャリヤ10の長手方向両端部のそれぞれに設けた。これにより、気流が開口部40a,40bや湾曲部44a,44bおよび仕切部材46a,46bによって区画された部分に流入するのを妨げる要因を極力少なくすることができる。特に、両端部のそれぞれに設けることは、パワーユニット22a,22bの配置に対称性を持たせることとの組み合わせによって、空気の流入を妨げる要因をさらに低減する効果がある。すなわち、対称性を持たせることなく、たとえば
図5において、インタークーラ32b等よりも第1方向FB1側に開口部40bを形成する場合、開口部40bよりも第1方向FB1側にあるサスペンション14や車輪16等が、開口部40bや湾曲部44bに空気が到達するのを妨げる部材となる。
【0052】
(7)車体12の下側に、パワーユニット22a,22bを備えた。このため、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bを開口部40a,40bの両側に設けることのメリットが特に大きい。すなわち、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bを開口部40a,40bに対して垂直下方D側に設ける場合には、路面からの粉塵が直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bによって、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36b側に案内されやすくなる。さらに、本実施形態のように、車体12が上下移動可能なキャリヤ10の場合、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bを開口部40a,40bに対して垂直下方Dに設けると、車体12を垂直下方Dに移動させた場合に、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bが路面と干渉するおそれがある。
【0053】
一方、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bを開口部40a,40bに対して垂直上方U側に設ける場合には、エンジン30a,30bや、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34b、オイルクーラ36a,36bの配置を、開口部40a,40bに合わせるべく、本実施形態よりも車体12に対して垂直下方Dに離間させて配置する必要が生じる。このため、エンジン30a,30b等と路面との距離が過度に短くなり、その結果、エンジン30a,30b等が路面からの粉塵や砂利等にさらされやすくなったり、路面に起伏がある場合に路面と干渉したりするおそれがある。さらに、本実施形態のように、車体12が上下移動可能なキャリヤ10の場合、直線案内部42a,42bおよび湾曲部44a,44bを開口部40a,40bに対して垂直上方Uに設けると、車体12を垂直下方Dに移動させた場合に、エンジン30a,30b等が路面と干渉するおそれがある。
【0054】
(8)運転席20a,20bを車体12の上に配置するいわゆるオーバーキャブを採用した。これにより、運転席20a,20bによって、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36b側への空気の流れが妨げられる事態を好適に回避することができる。
【0055】
(9)湾曲部44a,44bのうちのキャリヤ10の横方向外側の端を、車体12の左右の両端よりも内側とした。これにより、冷却装置のサイズによってキャリヤ10の横幅が拡大する事態を回避することができる。また、湾曲部44a,44bを車体12によって保護する効果も期待できる。
【0056】
(10)
図3(b)に示すように、アンダーカバー50aを備えた。これにより、エンジン30a,30bによって温められた空気がインタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bの垂直下方D側から開口部40a,40b側に回り込む事態を回避することができる。このため、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bの冷却性能を高く維持することができる。
【0057】
(11)
図3(b)に示すように、第1オーバーカバー52aを備えた。これにより、エンジン30a,30bによって温められた空気がインタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bの垂直上方U側から開口部40a,40b側に回り込む事態を回避することができる。このため、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bの冷却性能を高く維持することができる。
【0058】
(12)
図3(b)および
図3(c)に示すように、中空形状の第2オーバーカバー54aを備えた。これにより、ラジエータ34aやオイルクーラ36aのうち、第1オーバーカバー52aよりも垂直上方の部分に、開口部40aから流入した空気や、湾曲部44aや直線案内部42aを介して案内された空気を吹き付けることができる。
【0059】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0060】
図7に、冷却装置の平面図を示す。なお、
図7は、
図3(a)に対応している。また、
図7においては、パワーユニット22aの一部を示し、パワーユニット22bの構成については、
図7に示す構成と同様であるため、その記載を省略する。
【0061】
図示されるように、本実施形態では、開口部40aの中央側から第2方向FB2側に延びる薄板状の整流板60aを備える。これにより、第1左右方向LR1側の湾曲部44a(L)および直線案内部42a(L)に案内された空気と、第2左右方向LR2側の湾曲部44a(R)および直線案内部42a(R)に案内された空気との衝突が、整流板60aによって回避される。そして、第1左右方向LR1側の湾曲部44a(R)および直線案内部42a(R)に案内された空気と、第2左右方向LR2側の湾曲部44a(L)および直線案内部42a(L)に案内された空気とのそれぞれが整流板60aに衝突した後、それら空気の流れる方向をファン38aの吸引力によって第2方向FB2へと変更することができる。したがって、第1左右方向LR1側から流入した空気と、第2左右方向LR2側から流入した空気とをなめらかにインタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aへと導くことができる。
【0062】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0063】
図8に、冷却装置の平面図を示す。なお、
図8は、
図3(a)に対応している。また、
図8においては、パワーユニット22aの一部を示し、パワーユニット22bの構成については、
図8に示す構成と同様であるため、その記載を省略する。
【0064】
図示されるように、本実施形態では、直線案内部42aのうちの開口部40a側の端に、第2方向FB2へと湾曲する湾曲部62aを結合する。これにより、第1左右方向LR1側の湾曲部44a(L)および直線案内部42a(L)に案内された空気と、第2左右方向LR2側の湾曲部44a(R)および直線案内部42a(R)に案内された空気とのそれぞれは、湾曲部62aによって、その流れる方向を第2方向FB2側へと変更される。これにより、第1左右方向LR1側から流入した空気と、第2左右方向LR2側から流入した空気とを、なめらかにインタークーラ32a、ラジエータ34a、およびオイルクーラ36aへと導くことができる。
【0065】
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図9(a)は、第4の実施形態にかかるキャリヤ100の側面図、
図9(b)は、その平面図である。なお、
図9は、
図1に対応している。
【0066】
図9に示されるように、第4の実施形態のキャリヤ100は、
図1に示す第1の実施形態のキャリヤ10と同様に、車体12の下方に、パワーユニット22a,22bが設けられている。なお、パワーユニット22aと、パワーユニット22bとは同様に構成されるため、以下は、パワーユニット22aについて説明し、パワーユニット22bの説明は省略する。
【0067】
パワーユニット22aは、
図2及び
図9に示すように、エンジン30a、ファン38a、インタークーラ32a、ラジエータ34a、オイルクーラ36aを含み、それらはエンジンカバー70aによって覆われている。エンジンカバー70aは、車体12の下面に支持され、ラジエータフード39aと連結されている。
【0068】
エンジンカバー70aは、ラジエータフード39aと連結され、第2方向FB2側に延びる中空状の本体部71aと、その本体部71aから連続して第2方向FB2側に向かって細くなるように延びる中空状の先端部72aと、その先端部72aの先端面を開口して形成される排気口73aとによって構成されている。
【0069】
本体部71aは、エンジン30a、ファン38a、インタークーラ32a、ラジエータ34a、オイルクーラ36aを覆う部分である。本体部71aの第1方向FB1側の一端は、ラジエータフード39aと連結され、本体部71aは、ラジエータフード39aを介して流入される気体の流路を形成している。
【0070】
先端部72aは、エンジンカバー70a内に流入した気体を排気口73aに向けて整流する部分である。先端部72aは、
図9(b)に示すように、車体12の横方向の両側面(LR1側の側面とLR2側の側面)が排気口73aに向かって互いに接近することで、排気口73aに向かって細くなるように形成されている。なお、ラジエータフード39aの湾曲部44aは、
図9(b)に示す通り、先端部72aの両側面よりも車体12の横方向に突出して形成されている。
【0071】
排気口73aは、エンジンカバー70a内の気体を外部に排気する部分である。排気口73aは、車体12の横方向(LR1側とLR2側)の中央部に開口され、その開口面積は、ラジエータフード39aの開口部40a(
図3(c)参照)の約1/3の大きさに構成されている。
【0072】
次に、
図10を参照して上述したエンジンカバー70a,70bの作用、効果について説明する。
図10は、エンジンカバー70a,70bを模式的に示す平面図である。なお、
図10は、
図6に対応する図である。
【0073】
図10(a)は、キャリヤ100が第1方向FB1側に前進走行する場合を示す。この場合、キャリヤ100から見て第2方向FB2側に流れる気流が生じる。これにより、パワーユニット22aは、開口部40aから流入した気流が、エンジンカバー70a内のインタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aに吹き付けられ、エンジンカバー70a内を通過して排気口73aから外部へ排気される。なお、この場合、排気口73aは、第2方向FB2側に流れる気流と同じ向きに開口されているので、かかる気流は、排気口73aを介してエンジンカバー70a内には流入されない。
【0074】
一方、パワーユニット22bは、第2方向FB2側に流れる気流が湾曲部44bを介して進行方向を変更され、直線案内部42bに沿って流れた後、エンジンカバー70b内のインタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに吹き付けられ、エンジンカバー70b内を通過して、排気口73bから外部へ排気される。この場合、排気口73bは、第2方向FB2側に流れる気流と反対向きに開口されているので、かかる気流が排気口73bを介してエンジンカバー70b内に流入する可能性がある。
【0075】
しかし、エンジンカバー70bの先端部72bは、排気口73bに向かって細くなるように形成されるので、排気口73bにおいて、エンジンカバー70b内を通過して、排気口73bから外部へ排気される気体の流速は大きくなっている。そのため、かかる気流が、排気口73bを介してエンジンカバー70b内に流入するのを防止できる。従って、エンジンカバー70b内の冷却能力が低下するのを防止できる。
【0076】
また、エンジンカバー70bの先端部72bは、排気口73bに向かって細くなるように形成されている上、ラジエータフード39bの湾曲部44bは、先端部72bよりも車体12の横方向(LR1側とLR2側)に突出して形成されている。そのため、第2方向FB2側に流れる気流は、先端部72bの外面に沿って湾曲部44b(ラジエータフード39b)に案内される。そして、上述した通り、湾曲部44bを介して進行方向を変更され、直線案内部42bに沿って流れた後、エンジンカバー70b内に吹き付けられる。よって、第2方向FB2側に流れる気流を、効率的に湾曲部44b(ラジエータフード39b)に案内できる。
【0077】
更に、排気口73bは、車体12の横方向(LR1側とLR2側)の中央部に開口されている。即ち、排気口73bは、車体12の横方向から離れた位置に開口されているので、第2方向FB2側に流れる気流が車体12の横方向から巻き込まれて排気口73bを介してエンジンカバー70b内に流入するのを極力防止できる。
【0078】
図10(b)は、キャリヤ100が第2方向FB2側に前進走行する場合を示す。この場合、
図10(a)とは逆に、キャリヤ100から見て第1方向FB1側に進む気流が生じる。これにより、パワーユニット22bは、開口部40bから流入した気流が、インタークーラ32b、ラジエータ34bおよびオイルクーラ36bに吹き付けられ、エンジンカバー70b内を通過して排気口73bから外部へ排気される。なお、この場合、排気口73bは、第1方向FB1側に流れる気流と同じ向きに開口されているので、かかる気流は、排気口73bを介してエンジンカバー70b内には流入されない。
【0079】
一方、パワーユニット22aは、気流が湾曲部44aを介して進行方向を変更され、直線案内部42aに沿って流れた後、インタークーラ32a、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aに吹き付けられ、エンジンカバー70a内を通過して排気口73aから外部へ排気される。
【0080】
この場合、排気口73aは、第1方向FB1側に流れる気流と反対向きに開口されているので、かかる気流が排気口73aを介してエンジンカバー70a内に流入する可能性がある。
【0081】
しかし、エンジンカバー70aの先端部72aは、排気口73aに向かって細くなるように形成されるので、排気口73aにおいて、エンジンカバー70a内を通過して、排気口73aから外部へ排気される気体の流速は大きくなっている。そのため、かかる気流が、排気口73aを介してエンジンカバー70a内に流入するのを防止できる。従って、エンジンカバー70a内の冷却能力が低下するのを防止できる。また、上述したのと同様に、第1方向FB1側に流れる気流を、効率的に湾曲部44a(ラジエータフード39a)に案内することができる。更に、排気口73aは、車体12の横方向(LR1側とLR2側)の中央部に開口されているので、第1方向FB1側に流れる気流が車体12の横方向から排気口73aを介してエンジンカバー70a内に流入するのを極力防止できる。
【0082】
このように、第4の実施形態にかかるキャリヤ100は、エンジンカバー70a,70bの先端部72a,72bが排気口73a,73bに向けて細くなるように形成されるので、キャリヤ100が第1方向FB1に走行する場合と第2方向FB2に走行する場合とのいずれの場合でも、外気が排気口73a,73bからエンジンカバー70a,70b内に流入するのを防止できる。したがって、キャリヤ100が第1方向FB1に走行する場合と第2方向FB2に走行する場合とで、エンジンカバー70a,70b内の冷却能力が低下するのが防止され、両者の冷却能力を均一化できる。
【0083】
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図11は、第5の実施形態にかかるエンジンカバー75a,75bを模式的に示す側面図である。
【0084】
図10に示す第4の実施形態にかかるエンジンカバー70a,70bは、先端部72a,72bのうち、車体12の横方向の両側面を互いに接近させることで、排気口73a,73bに向けて細くなるように形成する場合について説明した。これに対し、第5の実施形態にかかるエンジンカバー75a,75bは、
図11に示す通り、先端部74a,74bのうち、下面(D方向側)を排気口73a,73bに向けて細くなるように形成したものである。
【0085】
このように、エンジンカバー75a,75bを形成した場合でも、第4の実施形態の場合と同様に、排気口73a,73bにおいて、外部へ排気される気体の流速を大きくできる。よって、外気が排気口73a,73bを介してエンジンカバー75a,75b内に流入するのを防止できる。
【0086】
また、第5の実施形態にかかるエンジンカバー75a,75bは、その先端部74a,74bのうち、下面(D方向側)が排気口73a,73bに向けて細くなるように形成されているので、特に、次の効果を奏する。即ち、
図11(a)に示す通り、キャリヤ101が第1方向FB1側に前進走行する場合に、第2方向FB2側に流れる気流は、エンジンカバー75bの先端部74bに沿って下方に案内され、外気が排気口73bに流入するのを一層確実に防止できる。同様に、
図11(b)に示す通り、キャリヤ101が第2方向FB2側に前進走行する場合に、第1方向FB1側に流れる気流は、エンジンカバー75aの先端部74aに沿って下方に案内され、外気が排気口73aに流入するのを一層確実に防止できる。
【0087】
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図12は、第6の実施形態にかかるエンジンカバー80a,80bを模式的に示す平面図である。
【0088】
図10に示す第4の実施形態にかかるエンジンカバー70a,70bは、排気口73a,73bを車体12の横方向の中央に開口する場合について説明した。これに対し、
図12に示す第6の実施形態にかかるエンジンカバー80a,80bは、排気口73a,73bを車体12の横方向の中央からずらして開口したものである。
【0089】
具体的には、エンジンカバー80aの排気口73aを、車体12の横方向の中央からLR1方向(図中上方)にずらし、エンジンカバー80bの排気口73bを、車体12の横方向の中央からLR2方向(図中下方)にずらして開口したものである。
【0090】
また、第6の実施形態にかかるエンジンカバー80aの先端部76aは、車体12の横方向の両側面(LR1側とLR2側)のうち、LR1側の側面は、本体部71aから連続して直線状に形成し、LR2側の側面をLR1側の側面に接近させることで、排気口73aに向けて細くなるように形成した。エンジンカバー80bの先端部76bは、車体12の横方向の両側面(LR1側とLR2側)のうち、LR2側の側面は、本体部71bから連続して直線状に形成し、LR1側の側面をLR2側の側面に接近させることで、排気口73bに向けて細くなるように形成した。
【0091】
このように、エンジンカバー80a,80bを形成した場合でも、第4の実施形態と同様に、排気口73a,73bにおいて、外部へ排気される気体の流速を大きくできる。よって、外気が排気口73a,73bを介してエンジンカバー80a,80b内に流入するのを防止できる。また、
図12(a)に示す通り、第2方向FB2側に流れる気流を、エンジンカバー80bの先端部76bのうち、LR1側の側面に沿って、効率的に湾曲部44b(ラジエータフード39b)に案内できる。同様に、
図12(b)に示す通り、第1方向FB2側に流れる気流を、エンジンカバー80aの先端部76aのうち、LR2側の側面に沿って、効率的に湾曲部44a(ラジエータフード39a)に案内できる。
【0092】
また、排気口73aと、排気口73bとは、車体12の横方向においてずれた位置に開口されるので、排気口73aから排気される気体が排気口73bから流入し、排気口73bから排気される気体が排気口73aから流入するのを確実に防止できる。
【0093】
また、排気口73a,73bは、車体12の横方向の中央からずれた位置に開口されているので、車体12の側方の遠い方から(
図12(a)の場合、排気口73bは車体12のLR1側から、
図12(b)の場合、排気口73aは車体12のLR2側から)、外気を排気口73a,73bに流入し難くできる。
【0094】
なお、車体12の側方の近い方からは(
図12(a)の場合、排気口73bは車体12のLR2側から、
図12(b)の場合、排気口73aは車体12のLR1側から)、外気を排気口73a,73bに流入し易くなる。しかし、キャリヤ102が低速走行する場合には、外気が進行方向と反対側に流れる速度も遅くなるため、外気が車体12の側方から排気口73a,73bに流入する可能性は低い。よって、排気口73a,73bを、車体12の横方向の中央からずれた位置に開口するのは、低速走行するキャリヤ102に対して特に好適である。
【0095】
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図13は、第7の実施形態にかかるエンジンカバー85a,85bを模式的に示す側面図である。
【0096】
図10に示す第4の実施形態にかかるエンジンカバー70aは、排気口73aを第2方向FB2側に向け、エンジンカバー70bは、排気口73bを第1方向FB1側に向けて開口する場合について説明した。これに対し、第7の実施形態にかかるエンジンカバー85aは、排気口73aをLR1側に向け、エンジンカバー85bは、排気口73bをLR2側に向けて開口したものである。
【0097】
即ち、第7の実施形態にかかるエンジンカバー85aの先端部78aは、LR1側に向いた排気口73aが開口され、本体部71aからLR1側に略90度屈曲しつつ、排気口73aに向けて細くなるように形成されている。また、エンジンカバー85bの先端部78bは、LR2側に向いた排気口73bが開口され、本体部71bからLR2側に略90度屈曲しつつ、排気口73bに向けて細くなるように形成されている。
【0098】
このように、エンジンカバー85a,85bを形成した場合でも、第4の実施形態と同様に、排気口73a,73bにおいて、外部へ排気される気体の流速を大きくできる。よって、外気が排気口73a,73bを介してエンジンカバー75a,75b内に流入するのを防止できる。
【0099】
また、
図13(a)に示す通り、第2方向FB2側に流れる気流を、エンジンカバー85bの先端部78bのうち、LR1側の側面に沿って効率的に湾曲部44b(ラジエータフード39b)に案内できる。同様に、
図13(b)に示す通り、第1方向FB2側に流れる気流を、エンジンカバー85aの先端部78aのうち、LR2側の側面に沿って、効率的に湾曲部44a(ラジエータフード39a)に案内できる。
【0100】
更に、排気口73aはLR1側に向いて開口し、排気口73bはLR2側を向いて開口している。よって、
図13(a)に示す通り、キャリヤ103が第1方向FB1側に前進走行し、第2方向FB2側に流れる気流が発生しても、また、
図13(b)に示す通り、キャリヤ103が第2方向FB2側に前進走行し、第1方向FB1側に流れる気流が発生しても、かかる気流に対して排気口73a,73bはいずれも交差する方向(直行する方向)を向いて開口している。よって、キャリヤ103が、どちらの方向に進行しても、かかる気流が、排気口73aから流入することも、排気口73bから流入することも防止できる。
【0101】
<その他の実施形態>
以上、上記各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしてもよい。以下、上記各実施形態の変形例としての実施形態を記載する。
【0102】
「案内部材について」
上記各実施形態では、キャリヤ10の横方向において、インタークーラ32a,32bの冷却面の端部(キャリヤ10の横方向の端部)が直線案内部42a,42bの端部よりも内側となるように配置したがこれに限らない。たとえば、キャリヤ10の横方向において、直線案内部42a,42bの端部を、インタークーラ32a,32bの冷却面の端部よりも内側に食い込むようにして配置してもよい。ただし、開口部40a,40bの面積を大きくするほど、開口部40a,40bから流入する空気量を大きくすることができる一方、開口部40a,40bを過度に大きくする場合、湾曲部44a,44bおよび直線案内部42a,42bによって案内される空気を、インタークーラ32a,32b、ラジエータ34a,34bおよびオイルクーラ36a,36bへと誘導することが困難となることに留意することが望ましい。
【0103】
上記各実施形態では、湾曲部44a,44bの端が車輪16よりも車両の横方向外側となるようにしたが、これに限らない。また、湾曲部44a,44bの端が車体12の横方向の端部よりも内側となることも必須ではない。
【0104】
直線案内部42a,42bを備えることは必須ではなく、開口部40a,40bのうちキャリヤ10の横方向の両側に湾曲部44a,44bの端部を設けるようにしてもよい。この場合、湾曲部44a,44bおよび仕切部材46a,46bによって区画される流通経路の流路断面積の変化を抑制する観点からは、仕切部材46a,46bについても湾曲形状とすることが望ましい。
【0105】
また、直線案内部42aのうちキャリヤ10の横方向外側の端部から第2方向FB2側になめらかに曲がる湾曲部44aや、直線案内部42bのうちキャリヤ10の横方向外側の端部から第1方向FB1側になめらかに曲がる湾曲部44bを備えることも必須ではない。たとえば、直線案内部42aのうちキャリヤ10の横方向外側から第2方向FB2側に所定角度(鋭角)だけ屈曲する直線状の部材や、直線案内部42bのうちキャリヤ10の横方向外側から第1方向FB1側に所定角度(鋭角)だけ屈曲する直線状の部材を備えてもよい。さらに、たとえば、
図3に示した構成よりも、直線案内部42aをキャリヤ10の横方向外側まで延長し、その横方向外側の端に第2方向FB2に延びる板状部材を結合してもよい。
【0106】
「冷却装置の個数について」
たとえばパワーユニット(エンジンと冷却装置)を1個のみ備えるものであってもよい。この場合、冷却装置やエンジン30aを備えたパワーユニット22aを、車両の他の部材との距離を極力大きくすることができる任意の位置に配置することが望ましい。
【0107】
またたとえば、パワーユニットを3個以上備えるものであってもよい。ここで、パワーユニットを3個備える場合、たとえば
図1に示したパワーユニット22a,22bに加えて、3個目のパワーユニットを、キャリヤ10の中央付近に配置するようにすればよい。そしてこの際、3個目のパワーユニットの備えるラジエータおよびエンジンの相対的な関係は、エンジンに対して第1方向FB1側にラジエータを配置するものであってもよく、エンジンに対して第2方向FB2側にラジエータを配置するものであってもよい。
【0108】
「冷却装置の配置について」
上記各実施形態では、パワーユニット22aにおいてエンジン30aに対して第1方向FB1側に開口部40aや、ファン38a、インタークーラ32a、ラジエータ34a、オイルクーラ36aを設ける一方、パワーユニット22bにおいては、エンジン30bに対し第2方向FB2側に開口部40bや、ファン38b、インタークーラ32b、ラジエータ34b、オイルクーラ36bを設けたがこれに限らない。たとえば、パワーユニット22bにおいても、エンジン30bに対し第1方向FB1側に開口部40bや、ファン38b、インタークーラ32b、ラジエータ34b、オイルクーラ36bを設けてもよい。
【0109】
上記各実施形態では、車体12の下方にパワーユニット22a,22b(冷却装置およびエンジン30a,30b)を配置するものを例示したがこれに限らず、車体12上に配置するものであってもよい。
【0110】
上記各実施形態では、一対のパワーユニット22a,22b(冷却装置およびエンジン30a,30b)を、キャリヤ10の縦方向の両端側に配置したがこれに限らない。
【0111】
「ファンについて」
たとえば、
図5において、開口部40aおよびインタークーラ32a間にファン38aを配置し、開口部40bおよびインタークーラ32b間にファン38bを配置してもよい。ただし、この場合、ファン38a,38bを機関駆動式とするうえでは、インタークーラ32a,32bを2分するなどして、エンジン30a,30bのクランクシャフトとファン38a,38bとを結合するに際し、インタークーラ32a,32bとの干渉を回避することが望ましい。
【0112】
「冷却装置について」
ラジエータ34a、オイルクーラ36aおよびインタークーラ32aを備えるものに限らない。たとえば、ラジエータ34aおよびインタークーラ32aのみを備えるものであってもよく、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aのみを備えるものであってもよい。またたとえば、ラジエータ34a、オイルクーラ36aおよびインタークーラ32aを備えるものにおいて、開口部40aおよびファン38a間に、ラジエータ34aおよびオイルクーラ36aのみを配置し、インタークーラ32aについては、これを別の場所に配置するものであってもよい。
【0113】
「エンジンカバーについて」
エンジンカバー70a,70bを排気口73a,73bに向けて細くなるように形成するのは、第4〜第7の実施形態で説明した態様に限定されない。例えば、
図10に示すエンジンカバー70a,70bの先端部72a,72bの全面を排気口73a,73bに向けて細くなるように形成してもよく、先端部72a,72bの上面を下面に対して排気口73a,73bに向けて細くなるように形成してもよい。更に、本体部71a,71bから連続して排気口73a,73bに向けて細くなるように形成してもよい。
【0114】
また、
図12に示す通り、排気口73aと、排気口73bとの位置をずらすのは、車体12の横方向に限定されない。上下方向でもよいし、完全にずらすのではなく、一部において対面するように、ずらしてもよい。
【0115】
また、排気口73aと、排気口73bとが開口する向きは、第4〜第7の実施形態で説明した向きに限定されない。例えば、
図13に示す場合において、排気口73bを、排気口73aと同じ向きに開口してもよいし、上方、下方、斜め方向に向けてもよい。
【0116】
更に、第4〜第7の実施形態で説明したエンジンカバー70a,70b等の態様と、上述したエンジンカバーの変形例とのうち、2以上組み合わせてエンジンカバーを構成しても良い。
【0117】
「そのほか」
大型搬送車両としては、運転席が車体12上にあるオーバーキャブに限らず、運転席が車体12の下方にあるいわゆるアンダーキャブであってもよい。