【課題】光学薄膜を製造する真空成膜プロセスにおいて、吸収膜を含んでいたとしても量産化に対応しながら光学系の大型化、高コスト化を抑止しつつ、歩留まりを向上させることが可能であり、また、必要に応じて膜の成膜時の反応の進行状態をモニタすることが可能な薄膜形成装置および薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】成膜チャンバー内に配置された成膜材料供給部と、成膜チャンバー内に配置され耐え基板ホルダと、成膜対象基板にモニタ光を投光する投光部と、モニタ光のうち成膜対象基板の膜形成面である表面側で反射された反射モニタ光LRを受光して第1受光信号S
を出力するトリガー信号出力部35と、第1受光信号とトリガー信号に基づく所定の信号処理を行い成膜対象基板毎の反射モニタ光の変化情報を取得する信号処理部70とを含む。
内部に成膜材料供給部とドーム状の形状または平面円板形状を有してドームの頂部または平面円板の中心を回転中心として回転される基板ホルダが配置された成膜チャンバーの前記基板ホルダに複数枚の成膜対象基板を膜形成面が前記成膜材料供給部側に臨むように保持し、ドームの頂部または平面円板の中心を回転中心として回転させる工程と、
前記成膜材料供給部から成膜材料を供給して前記成膜対象基板上に前記成膜材料の膜を形成する工程と、
前記基板ホルダの外周部に保持された前記成膜対象基板にモニタ光を投光する工程と、
前記モニタ光のうち、前記成膜対象基板の膜形成面である表面側で反射された反射モニタ光を受光して第1受光信号を取得する工程と、
前記基板ホルダの回転に同期したトリガー信号を取得する工程と、
前記第1受光信号と前記トリガー信号に基づいた所定の信号処理を行って前記成膜対象基板毎の前記反射モニタ光の変化情報を取得する工程と
を有する薄膜形成方法。
【背景技術】
【0002】
ND(Neutral Density)フィルタには、入射光を反射して減衰させる反射型NDフィルタと、入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルタがある。
そして、反射光が問題となる光学系には、一般的に吸収型NDフィルタが適用される。
【0003】
吸収型NDフィルタとしては、吸収物質を基板自体に混合するNDフィルタ、基板に塗布するNDフィルタ、あるいは基板表面に形成された薄膜に吸収機能があるNDフィルタが知られている。
薄膜に吸収機能があるNDフィルタは、薄膜表面の反射を防ぐため、薄膜を多層膜で構成し、透過光を減衰させる機能と共に、反射防止の機能を持たせている。
【0004】
たとえば特許文献1には、酸化物誘電体層と金属吸収膜層とを交互に多数積層したNDフィルタが開示されている。
NDフィルタを構成する光学多層膜は、屈折率の異なる誘電体の薄膜を多層積層した構成である。
たとえば、NDフィルタは、石英ガラスなどの光学基板上に、吸収膜としてのTiやTiO
2を含む薄膜と、反射防止膜としてのSiO
2の薄膜を交互に多数積層した光学多層膜が形成される。
【0005】
そして、光学多層膜を構成する各薄膜は、所定の光学膜厚を有するように形成されている。
光学膜厚は、薄膜の物理的な膜厚と薄膜の屈折率の積で定義され、光学多層膜に所望される光学特性を満たすための重要な要素である。
【0006】
光学多層膜を形成する方法としては、たとえば、イオンビームアシスト真空蒸着などの真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティングなどの方法がある。
薄膜の屈折率は薄膜を構成する元素の種類と組成に依存するため、たとえば薄膜を真空蒸着により形成する場合には、真空蒸着源の組成を適宜選択することで所望の屈折率の薄膜を形成することができる。
また、上記の構成の光学多層膜において所望の光学膜厚を得るために、各薄膜の物理的な膜厚の精度として設計値からの誤差を0.1%以下に抑えることが求められている。たとえば特許文献2〜4に、間接型あるいは直接型の膜厚モニタ法により、薄膜の物理的な膜厚を監視しながら形成する方法が開示されている。
【0007】
図11(a)は、従来例に係る直接型の膜厚モニタ方法を用いた真空蒸着装置の構成を模式的に示す図である。
たとえば、真空チャンバー110に、不図示の排気管および真空ポンプが接続されており、内部が所定の圧力に減圧可能となっている。
たとえば、真空チャンバー110の内部に、第1真空蒸着源120が配置されてその内部に第1蒸着材料121が収容されており、また、第2真空蒸着源122が配置されてその内部に第2蒸着材料123が収容されている。
【0008】
たとえば、真空チャンバー110内には、成膜対象基板130が基板ホルダにより回転移動可能に保持されている。
また、成膜対象基板130に対してモニタ光Lを投光する投光部141が真空チャンバー110内に設けられており、また、成膜対象基板130を通過したモニタ光Lを受光する受光部150が真空チャンバー110の外部に設けられている。
【0009】
第1真空蒸着源120および第2真空蒸着源122において、蒸着材料を抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザービーム加熱などにより加熱することで、第1真空蒸着源120および第2真空蒸着源122から噴出された蒸着材料の蒸気が成膜対象基板130の表面に達して固化すると、成膜対象基板130の表面に蒸着材料の薄膜が形成される。
ここで、第1真空蒸着源120からの蒸着材料の成膜と第2真空蒸着源122からの蒸着材料の成膜を交互に繰り返すことで、上記の構成の光学多層膜を形成することができる。
【0010】
図11(a)の真空蒸着装置においては、各薄膜の成膜中に、投光部141から成膜対象基板130に対してモニタ光Lを投光し、成膜対象基板130を透過したモニタ光Lを受光部150で受光し、干渉による光透過率の変化を捉えることで、成膜中の薄膜の膜厚をモニタする。
投光部141は、たとえば真空チャンバー110の外部に設けられた不図示の光源から導かれた光を成膜対象基板130に向けて投光するように構成されている。
成膜対象基板130を透過したモニタ光Lを受光して膜厚をモニタすることから、
図11(a)の構成の膜厚モニタ方法を直接型の膜厚モニタ方法と称する。
【0011】
図11(b)は、従来例に係る間接型の膜厚モニタ方法を用いた真空蒸着装置の構成を模式的に示す図である。なお、
図11(b)において、
図11(a)と同一構成部分は、理解を容易にするために同一符号をもって表している。
たとえば、真空チャンバー110に、不図示の排気管および真空ポンプが接続されており、内部が所定の圧力に減圧可能となっている。
たとえば、真空チャンバー110の内部に、第1真空蒸着源120が配置されてその内部に第1蒸着材料121が収容されており、また、第2真空蒸着源122が配置されてその内部に第2蒸着材料123が収容されている。
【0012】
たとえば、真空チャンバー110内には、複数個の成膜対象基板130が回転移動可能なドーム状の基板ホルダ131に保持されている。
基板ホルダ131の中央開口部に、一方の面(表面)が蒸着面となるようにモニタ基板132が保持されている。
また、モニタ基板132の蒸着面の反対側の面(裏面)に対してモニタ光L
Iを投光し、モニタ基板132からの反射光L
Rを受光する投受光部151が設けられている。
【0013】
図11(b)の真空蒸着装置において、
図11(a)の真空蒸着装置と同様にして光学多層膜を形成することができる。
図11(b)の真空蒸着装置においては、各薄膜の成膜中に、投受光部151からモニタ基板132に対してモニタ光L
Iを投光し、モニタ基板132からの反射光L
Rを投受光部151で受光し、光反射率の変化をモニタする。
モニタ基板132からの反射光L
Rの変化から成膜対象基板上の薄膜の膜厚を推定してモニタするものであり、
図11(b)の構成の膜厚モニタ方法を間接型の膜厚モニタ方法と称する。
【0014】
図12(a)は
図11(a)の真空蒸着装置の要部模式図である。成膜対象基板130が基板ホルダにより回転移動可能に保持されており、不図示の投光部から成膜対象基板130に対してモニタ光Lが投光され、成膜対象基板130を通過したモニタ光Lが受光部150で受光される。
【0015】
図12(b)は
図12(a)中の成膜対象基板の模式的平面図である。たとえば、回転して保持される成膜対象基板130に対するモニタ光Lの投光スポットSP
Lは、成膜対象基板130の外周部近傍に位置する。成膜対象基板130上の投光スポットSP
Lがトレースする領域Rが良品分布領域となる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の薄膜形成装置である真空成膜装置とそれを用いた薄膜形成方法である真空成膜方法の実施の形態について、図面に関連付けて説明する。
【0038】
[真空成膜装置の構成]
図1は、本実施形態に係る真空成膜装置であるイオンビームアシスト真空蒸着装置の構成例を模式的に示す図である。
たとえば、成膜チャンバーである真空チャンバー10に、排気管11および真空ポンプ12が接続されており、内部が所定の圧力に減圧可能となっている。真空蒸着による成膜時における真空チャンバー10内の背圧は、たとえば10
−2〜10
−5Pa程度である。
【0039】
たとえば、真空チャンバー10の内部の下方側に、成膜材料供給部200として、第1真空蒸着源20が配置されてその内部に第1蒸着材料21が収容されており、また、第2真空蒸着源22が配置されてその内部に第2蒸着材料23が収容されている。
第1蒸着材料21はたとえばSiO
2であり、第2蒸着材料23はたとえばTi、TiO
2等である。
吸収型NDフィルタを作製する場合、第1蒸着材料21は反射防止膜としてたとえばSiO
2が選択され、第2蒸着材料23は吸収膜として、たとえばTi、TiO
2等が選択される。
【0040】
各真空蒸着源には、たとえば不図示の抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザービーム加熱などの加熱手段が設けられており、真空蒸着源において蒸着材料が加熱されて気化すると蒸着材料の蒸気が噴出する。
【0041】
たとえば、真空チャンバー10内の上部側には、基板ホルダ部300が配置されている。基板ホルダ部300は、第1真空蒸着源20および第2真空蒸着源22の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に、複数枚の成膜対象基板30を膜形成面が成膜材料供給部200側に臨むように保持し、ドーム状の形状を有してドームの頂部を回転中心として回転される基板ホルダ31が設けられている。
たとえば、基板ホルダ31は、ホルダ支持部(32,33)により回転可能に支持されており、真空チャンバー10の外部に設置されたモータ34の駆動により回転駆動される。
【0042】
たとえば、各真空蒸着源から噴出された蒸着材料の蒸気が成膜対象基板30の表面に達して固化すると、成膜対象基板の表面に蒸着材料の薄膜が形成される。
【0043】
たとえば、真空チャンバー10内に酸素イオンなどのイオンを成膜対象基板30に照射するイオンソース24が設けられており、イオンビームアシスト真空蒸着を行うことができる。
イオンソース24からイオンを成膜対象基板30の膜形成面に照射することで、成膜材料供給部200から供給される蒸着物質により成膜されて膜厚が厚くなるプロセスと、既に成膜された膜の表面近傍の一部領域が、イオンソース24から照射されるイオンによりスパッタされて膜厚が薄くなるプロセスとを同時に進行させながら成膜できる。
このとき、成膜対象基板30面内において、成膜材料供給部200から供給される成膜物質の密度分布に依存して膜厚差が生じる場合には、その膜厚差を打ち消すような条件でイオンソース24から照射されるイオンによるスパッタを行うことで、均一な面内膜厚分布をもつ多層膜が得ることができる。
【0044】
基板ホルダ31の外周部に保持された成膜対象基板30に、モニタ光Lを投光する、たとえば以下の構成を有する投光部400が設けられている。
投光部400は、たとえば真空チャンバー10の外部に設置された光源40と、真空チャンバー10内に設けられ、光源40からの光を成膜対象基板30にモニタ光Lとして投光し、成膜対象基板30による反射光をモニタ光Lとは分離して取得するする投光ヘッド41を有する。
さらに、投光部400は、光源40からの光を投光ヘッド41に伝達する光ファイバなどの投光光学系42と、投光ヘッド41を支持する投光ヘッド支持部43などから構成される。光源40(および投光ヘッド41)は、たとえばハロゲンランプを用いることができる。
光源40からの光が投光光学系42により投光ヘッド41に伝達され、モニタ光Lとして成膜対象基板30に対して投光(照射)される。
【0045】
投光ヘッド41は、たとえばハーフミラーやダイクロイックミラー、ダイクロイックプリズム等により形成され、モニタ光Lを透過して成膜対象基板30に向かって出射し、成膜対象基板30の表面による反射モニタ光LRをモニタ光Lの出射方向とは異なる方向、たとえば直交する方向に反射する反射光取得部411を含んで構成されている。
【0046】
本実施形態においては、モニタ光Lは、成膜対象基板30において、成膜対象基板30を成膜材料供給部200側に臨む表面側から裏面側に透過する透過モニタ光LTと、成膜対象基板30の表面で反射される反射モニタ光LRとに分離される。
【0047】
またたとえば、投光ヘッド支持部43としては、膜厚分布を補正するために用いられる補正板などの真空チャンバー10に既存の設備を利用することができる。
【0048】
本実施形態に係る真空成膜装置は、たとえば、成膜対象基板30の表面側で反射され、反射光取得部411で取得された反射モニタ光LRを受光して第1受光信号S
R1を出力する第1受光部500と、成膜対象基板30の裏面側に透過した透過モニタ光LTを受光する第2受光信号S
R2を出力する第2受光部600が設けられている。
【0049】
第1受光部500は、たとえば、真空チャンバー10内に設けられ、成膜対象基板30の表面側で反射され、投光ヘッド41の反射光取得部4111で取得された反射モニタ光LRを受光する第1受光ヘッド50と、第1受光ヘッド50で受光された反射モニタ光を分光する第1分光部51と、第1分光部51で分光された光を検出する第1光検出部52と、第1受光ヘッド50で受光した反射モニタ光LRを第1分光部51に伝達する光ファイバなどの第1受光光学系53とを含んで構成されている。
【0050】
たとえば、第1光検出部52は、受光した光を電気信号に変換する受光画素がマトリクス状に配置された構成を有し、第1光検出部52としてCCDセンサなどを用いることができる。
成膜対象基板30の表面側で反射された反射モニタ光LRが第1受光ヘッド50で受光され、第1受光光学系53により第1分光部51に伝達されて分光され、分光された反射モニタ光が第1光検出部52で検出される。
本実施形態では、たとえば成膜対象基板30の表面で反射された反射モニタ光LRを第1分光部51で分光し、分光された光を、受光画素がマトリクス状に配置された第1光検出部52で検出して第1受光信号S
R1を出力する。第1光検出部52は反射モニタ光LRの連続スペクトルを取得することができ、すなわち、反射モニタ光LRを多波長で検出することができる。
【0051】
たとえば、受光ヘッド50は、基板ホルダ31およびホルダ支持部(32,33)の回転駆動を妨げないように設けられている。
【0052】
第2受光部600は、たとえば、真空チャンバー10内に設けられ、成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTを受光する第2受光ヘッド60と、第2受光ヘッド60で受光された透過モニタ光LTを分光する第2分光部61と、第2分光部61で分光された光を検出する第2光検出部62と、第2受光ヘッド60で受光した透過モニタ光LTを第2分光部61に伝達する光ファイバなどの第2受光光学系63と、第2受光ヘッド60を支持する受光ヘッド支持部64などから構成されている。
【0053】
たとえば、第2光検出部62は、受光した光を電気信号に変換する受光画素がマトリクス状に配置された構成であり、第2光検出部62としてCCDセンサなどを用いることができる。
成膜対象基板を裏面側に透過した透過モニタ光LTが第2受光ヘッド60で受光され、第2受光光学系63により第2分光部61に伝達されて分光され、分光された透過モニタ光が第2光検出部62で検出される。
成膜対象基板を裏面側に透過した透過モニタ光LTを第2分光部61で分光し、分光された光を、受光画素がマトリクス状に配置された第2光検出部62で検出して第2受光信号S
R2を出力する。第2光検出部62は透過モニタ光の連続スペクトルを取得することができ、すなわち、透過モニタ光LTを多波長で検出することができる。
【0054】
たとえば、受光ヘッド60を支持する受光ヘッド支持部64は、基板ホルダ31およびホルダ支持部(32,33)の回転駆動を妨げないように設けられている。
【0055】
図2(a)は
図1の真空蒸着装置の要部模式図である。
たとえば、ドーム状の形状を有してドームの頂部を回転中心として回転される基板ホルダ31に、膜形成面が成膜材料供給部側に臨むように複数枚の成膜対象基板30が保持されている。
不図示の投光部から成膜対象基板30に対してモニタ光Lが投光され、成膜対象基板30の表面で反射された反射モニタ光LRが第1受光ヘッド50で受光され、また、成膜対象基板30の裏面側に透過した透過モニタ光LTが第2受光ヘッド60で受光される。
【0056】
図2(b)は
図1中の成膜対象基板の模式的平面図である。
たとえば、モニタ光Lの投光スポットSP
Lは、基板ホルダ31の外周部に配置された成膜対象基板30上に照射されるように配置される。投光スポットSP
Lがトレースする領域Rの近傍が良品分布領域となる。
【0057】
本実施形態においては、たとえば、基板ホルダ31を回転駆動するモータ34に接続して、基板ホルダ31の回転に同期したトリガー信号S
Tを出力するトリガー信号出力部35が設けられている。
本実施形態においては、たとえば、第1受光部500による第1受光信号S
R1、第2受光部600による第2受光信号S
R2、およびトリガー信号出力部35のトリガー信号S
Tが供給される信号処理部70が設けられている。
【0058】
本実施形態において、信号処理部70は、図示しない制御系によるモード信号MDを受けて、たとえば第1モードMD1または第2モードMD2に応じた信号処理を行うことが可能に構成されている。
【0059】
[信号処理部の第1モード時の処理]
信号処理部70は、たとえばモード信号MDが第1モードMD1での動作を指示している場合、透過モニタ光では膜厚制御の対処が困難な吸収膜を含むたとえば
図3に示すような吸収型NDフィルタ90を成膜するものとして、次の処理を行う。
すなわち、信号処理部70は、第1モードMD1の場合、第1受光部500の反射モニタ光LRに応じた第1受光信号S
R1とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光反射率(反射モニタ光LRの変化情報)を取得する。
また、信号処理部70は、上記のように反射モニタ光の連続スペクトルを取得することで、成膜対象基板毎の光反射スペクトルを取得する。
本実施形態においては、得られた光反射率あるいは光反射スペクトルから、所望の光学特性が得られるように成膜条件を変更するように成膜途中において、図示しない制御系を通してフィードバックすることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、第1モードMD1の場合、必要に応じて第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率(透過モニタ光LTの変化情報)を取得する。
信号処理部70は、成膜対象基板30の蒸着面側の面(表面)における反射モニタ光の変化から成膜対象基板上の薄膜の膜厚を推定してモニタするための情報を生成するとともに、取得した光透過率(透過モニタ光LTの変化)の情報に基づいて、各膜の成膜時の反応の進行状態をモニタする情報を生成する。
【0061】
このように、本実施形態に係る真空成膜装置は、光学薄膜を製造する真空成膜プロセスにおいて、吸収膜を含んでいたとしても量産化に対応しながら光学系の大型化、高コスト化を抑止しつつ、歩留まりを向上させることが可能であり、また必要に応じて膜の成膜時の反応の進行状態をモニタすることが可能に構成されている。
【0062】
図3は、本実施形態に係る真空成膜装置で作製される吸収型NDフィルタの模式的な断面図である。
【0063】
図3の吸収型NDフィルタ90は、ガラスやプラスチック等の基板91上に、第1誘電体膜92、第1光吸収膜93、第2誘電体膜94、第2光吸収膜95、および第3誘電体膜96を、表記した順に成膜した積層構造として構成されている。
【0064】
第1誘電体膜92は、たとえばSiO
2により形成され、膜厚は60nm程度に制御される。
第1光吸収膜93は、たとえば金属Tiとその飽和酸化物TiO
2を主成分とし、その他の残余成分として低級酸化物Ti
2O
3,TiOなどや、金属化合物TiNなどの副生成物を含有している。第1光吸収膜93の膜厚は30nm程度に制御される。
第2誘電体膜94は、たとえばSiO
2により形成され、膜厚は50nm程度に制御される。
第2光吸収膜95は、たとえば金属Tiとその飽和酸化物TiO
2を主成分とし、その他の残余成分として低級酸化物Ti
2O
3,TiOなどや、金属化合物TiNなどの副生成物を含有している。第2光吸収膜95の膜厚は25nm程度に制御される。
第3誘電体膜96は、たとえばSiO
2により形成され、膜厚は80nm程度に制御される。
【0065】
NDフィルタ90においては、第3誘電体膜96側が最表面側に相当する、
【0066】
なお、
図3に示す積層構成は、一例であって、他の構成であってもよい。
光学薄膜の場合、通常使用波長において透明なセラミック材料を誘電体膜として表現している。光の干渉効果が現れる厚さ(波長の数倍程度)の誘電体を積層することで、入射する光の、反射量、透過量、偏光などの光学特性を調整することができる。
図3に示す構成を採用することで、NDフィルタに反射防止機能が付与されている。
【0067】
本実施形態において、たとえば
図3に示すような構造を有するNDフィルタが第1モードMD1において、モニタ光Lの成膜対象基板30の表面側で反射された反射モニタ光LRの変化情報に応じて成膜対象基板上の薄膜の膜厚を推定してモニタしながら作製される。
そして、信号処理部70は、第1モードにおいては、モニタ光Lの成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTの変化(光量の変化)から各膜の成膜時の反応の進行状態をモニタする情報を生成するように処理する。
【0068】
図4は、本実施形態において、透過モニタ光により吸収層(光吸収膜)を含む光学フィルタ(NDフィルタ)の各膜の成膜時の反応の進行状態のモニタ例を示す図である。
図5は、本実施形態において、透過モニタ光により光学フィルタ(NDフィルタ)の所定の誘電体膜の成膜時の反応の進行状態のモニタ例を示す図である。
【0069】
図4の情報に基づくモニタ例は、
図3のNDフィルタ90の各膜を成膜した後の透過モニタ光LTの光量変化を示している。
ただし、これは一例であって、各膜を成膜しながら、その都度、透過モニタ光LTの光量変化をモニタして、成膜時の反応の進行状態をモニタすることも可能である。
【0070】
図4において、層1は
図3の第3誘電体膜96であるSiO
2膜に相当し、層2は
図3の第2光吸収膜95のTi等からなる吸収膜に相当し、層3が
図3の第2誘電体膜94であるSiO
2膜に相当し、層4が
図3の第1光吸収膜93のTi等からなる吸収膜に相当し、層5が
図3の第1誘電体膜92であるSiO
2膜に相当する。
【0071】
図4の情報に基づくモニタにおいては、第3誘電体膜96であるSiO
2膜では透過モニタ光LTの光量変化は減衰することなくほぼ一定であり光量は95%程度に維持されている。
図4および
図5に示すように、第3誘電体膜96であるSiO
2膜では反射防止機能が発現されて、成膜時の反応の進行の度合が良好であることが確認される。
【0072】
次のTi等からなる第2光吸収膜95では光吸収機能が発現されて透過モニタ光LTの光量はその膜厚に応じて95%程度から31%程度に大きく減少している。第2光吸収膜95では良好に光吸収機能が発現されて、成膜時の反応の進行の度合が良好であることが確認される。
【0073】
次の第2誘電体膜94であるSiO
2膜では透過モニタ光LTの光量変化は減衰することなくほぼ一定であり光量は31%程度に維持されている。第2誘電体膜94であるSiO
2膜では反射防止機能が発現されて、成膜時の反応の進行の度合が良好であることが確認される。
【0074】
次のTi等からなる第1光吸収膜93では光吸収機能が発現されて透過モニタ光LTの光量はその膜厚に応じて31%程度から11%程度に減少している。第1光吸収膜93では良好に光吸収機能が発現されて、成膜時の反応の進行の度合が良好であることが確認される。
【0075】
次の第1誘電体膜92であるSiO
2膜では透過モニタ光LTの光量変化は減衰することなくほぼ一定であり光量は11%程度に維持されている。第1誘電体膜92であるSiO
2膜では反射防止機能が発現されて、成膜時の反応の進行の度合が良好であることが確認される。
【0076】
このように、本実施形態に係る真空成膜装置は、光学薄膜を製造する真空成膜プロセスにおいて、吸収膜を含んでいたとしても量産化に対応しながら光学系の大型化、高コスト化を抑止しつつ、歩留まりを向上させることが可能であり、かつ、膜の成膜時の反応の進行状態をモニタすることができる。
【0077】
[信号処理部の第2モード時の処理]
上述した第1モード時においては、吸収型NDフィルタは、完全に酸化されていない不酸化金属膜により形成される吸収膜を含むので、光透過率の変化において、1層目を積層したときは1回目のピークが現れるが、以降薄膜を積層しても次のピークが現れない(見えない)ことから、反射モニタ光LRを主体として、各膜の光学膜厚をモニタする制御が行われる。
本実施形態に係る真空成膜装置は、吸収膜を含まない光学フィルタを作製する場合、モニタ光の光透過率の時間変化において、小さなピークが複数現れるが、その各ピークが対応する薄膜の各層に相当し、透過モニタ光LTを用いて、光透過率の監視(モニタ)することにより各層の膜厚を監視することができる。
本実施形態において、この処理は第2モードMD2において行われる。
【0078】
信号処理部70は、たとえばモード信号MDが第2モードMD2での動作を指示している場合、透過モニタ光では膜厚制御の対処が可能なNBPフィルタ(狭帯域バンドパスフィルタ)等の光学薄膜を成膜するものとして、次の処理を行う。
すなわち、信号処理部70は、第2モードMD2の場合、第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率を取得する。
また、信号処理部70は、上記のように透過モニタ光の連続スペクトルを取得することで、成膜対象基板毎の光透過スペクトルを取得する。
本実施形態においては、得られた光透過率あるいは光透過スペクトルから、所望の光学特性が得られるように成膜条件を変更するように成膜途中において、図示しない制御系を通してフィードバックすることができる。
【0079】
たとえば、第2モードMD2において、上記の実施形態のイオンビームアシスト真空蒸着装置を用いて、光学ガラス基板上にSiO
2/TiO
2を交互に66層積層したNBPフィルタを作製することが可能である。たとえば、透過帯の中心波長は827nmであり、帯域幅は12nm以下である。
この場合、直接型の膜厚モニタ法により高精度に薄膜の膜厚を制御することができる。
【0080】
なお、上記した説明では第1モードMD1では、主とする反射モニタ光LRと反応進行確認用の透過モニタ光LTを用いたモニタによる制御を行い、第2モードMD2では、透過モニタ光LTを用いたモニタによる制御を行う例を説明した。
ただし、本実施形態に係る真空成膜装置は、用途に合わせて、反射モニタ光LRのみを用いる、主とする透過モニタ光LTに加えて反射モニタ光LRを用いる等、種々の態様が可能である。
【0081】
次に、トリガー信号を含む本実施形態の信号処理について説明する。
【0082】
図6は、本実施形態の真空蒸着装置に係る信号処理の一例を説明するための図である。
モニタ光Lの投光スポットSP
Lは、基板ホルダ31が回転することにより、基板ホルダ31の外周部に配置された複数枚の成膜対象基板(30
1,30
2,30
3・・・30
n)上を通過する。
移動する成膜対象基板(30
1,30
2,30
3・・・30
n)を反射または透過したモニタ光Lを受光することで、各成膜対象基板(30
1,30
2,30
3・・・30
n)の光反射率または光透過率が間欠的に反映された受光信号S
Rが取得される。
ここで、基板ホルダ31の回転に同期したトリガー信号S
Tから、回転する基板ホルダ31の位置を特定することで、各成膜対象基板30の光反射率または光透過率が間欠的に反映された受光信号S
R(1,2)のどの部分がいずれの成膜対象基板に対する光反射率または光透過率であるか特定することができる。トリガー信号S
Tは、基板ホルダ31の回転1周期に1回の出力、あるいは多数回の出力とする。
上記の受光信号S
Rのどの部分がいずれの成膜対象基板に対する光反射率または光透過率であるか特定することで、受光信号S
Rから、成膜対象基板30
1に対する受光信号S
1、成膜対象基板30
2に対する受光信号S
2、成膜対象基板30
3に対する受光信号S
3、・・・成膜対象基板30
nに対する受光信号S
nを取得することができる。
【0083】
たとえば、基板ホルダの外周部に位置する成膜対象基板の中心の起動半径を450mm、成膜対象基板の直径を30mm、基板ホルダの回転数を30rpmとしたとき、モニタ光を点光源として取り扱うと、成膜対象基板1枚あたり、基板ホルダ1回転あたりのモニタ時間は21msとなる。モニタ光のスポット径はある程度の大きさがあるので、モニタ時間はさらに短くなる。この限られた時間内で高い膜厚制御性を確保するためには、高い光検出感度が求められる。
【0084】
たとえば、光検出部52、62としてCCDセンサなどを用いることで、多波長での光反射率または光透過率の情報を得ることで得られる情報量を増加させることができ、光反射率または光透過率の精度を高め、S/N比を向上できる。
【0085】
次に、
図1の真空蒸着装置の要部の構成例についてさらに説明する。
【0086】
図7(a)および(b)は
図1の真空蒸着装置の要部模式図である。
たとえば、上述したように、基板ホルダ31の外周部に保持された成膜対象基板30に投光部を構成する投光ヘッド41からモニタ光Lが投光される。
成膜対象基板30の表面で反射された反射モニタ光LRが受光光学系を構成する第1受光ヘッド50で受光され、成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTが受光光学系を構成する第2受光ヘッド60で受光される。
図7(a)に示す基板ホルダ31と
図7(b)に示す基板ホルダ31とでは、径が異なり、保持できる成膜対象基板の数や大きさが異なっている。
上記の構成においては、たとえば、受光光学系の第2受光ヘッド60の位置が可変に設けられている。
【0087】
たとえば、受光ヘッド支持部64が伸縮可能、屈曲可能、あるいは伸縮および屈曲可能に設けられており、受光光学系の受光ヘッドの位置を変更できるように構成されている。
たとえば、
図7(a)に示す相対的に大きな基板ホルダ31を用いる場合、第2受光ヘッド60が基板ホルダ31の外周部に保持された成膜対象基板30を透過した透過モニタ光LTを受光する位置に届くように受光ヘッド支持部64が伸ばされている。
一方、たとえば、
図7(b)に示す相対的に小さな基板ホルダ31を用いる場合、受光ヘッド60が基板ホルダ31の外周部に保持された成膜対象基板30を透過したモニタ光Lを受光する位置に届くように受光ヘッド支持部64が縮められて、あるいは屈曲されている。
【0088】
たとえば、
図1に示すように、基板ホルダおよび受光光学系の近傍にヒータが設けられている。ヒータ80で加熱することで、真空チャンバー10の基板ホルダ近傍における内壁面などに不要な蒸着材料が堆積することを防止することができる。
ヒータ80は、たとえばハロゲンランプ、あるいはニッケルクロムなどからなる抵抗加熱部材を用いることができる。
この場合、たとえば受光光学系としてヒータによる加熱に対する耐熱性を有するものを用いることで、受光光学系のヒータによるダメージを抑制することができる。
【0089】
[真空成膜方法]
次に、本実施形態に係る真空成膜方法としてイオンビームアシスト真空蒸着方法について説明する。本実施形態に係る真空成膜方法は、上記の本実施形態の真空成膜装置を用いて行う。
図8は、本実施形態の真空成膜装置において吸収型NDフィルタ等の光学薄膜を作製する方法を説明するめのフローチャートである。
【0090】
まず、たとえば、内部に成膜材料供給部200とドーム状の形状を有してドームの頂部を回転中心として回転される基板ホルダが設けられた真空チャンバー10の基板ホルダ31に、複数枚の成膜対象基板30を保持する(ステップST1)。
ここで、成膜対象基板30の膜形成面(表面側)が成膜材料供給部200側に臨むように保持する。
たとえば、成膜対象基板30を保持した基板ホルダ31をドームの頂部を回転中心として回転させる(ステップST2)。
【0091】
次に、成膜材料供給部200から成膜材料を供給して成膜対象基板30上に成膜材料の膜を形成する(ステップST3)。
次に、たとえば、基板ホルダ31の外周部に保持された成膜対象基板30にモニタ光Lを投光する(ステップST4)。
次に、信号処理部70が、動作モードが第1モードMD1である否かを判別する(ステップST5)。
第1モードMD1の場合、信号処理部70は、成膜対象基板30の表面で反射モニタ光LRを受光して得られた第1受光信号S
R1、および成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTを受光して得られた第2受光信号S
R2を取得する(ステップST6)。
また、信号処理部70は、基板ホルダ31の回転に同期したトリガー信号S
Tを取得する(ステップST7)。
【0092】
第1モードMD1において、信号処理部70は、第1受光部500の反射モニタ光LRに応じた第1受光信号S
R1とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光反射率(反射モニタ光LRの変化情報)を取得する(ステップST8)。
また、信号処理部70は、上記のように反射モニタ光の連続スペクトルを取得することで、成膜対象基板毎の光反射スペクトルを取得する。
これに基づき、得られた光反射率(反射モニタ光LRの変化情報)あるいは光反射スペクトルから、所望の光学特性が得られるように成膜条件を変更するように成膜途中において、たとえば制御系を通してフィードバックされる。
【0093】
また、信号処理部70は、第1モードMD1において、第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率(透過モニタ光LTの変化情報)を取得する(ステップST9)。
信号処理部70は、成膜対象基板30の蒸着面側の面(表面)における反射モニタ光LRの変化から成膜対象基板上の薄膜の膜厚を推定してモニタするための情報を生成するとともに、取得した光透過率(透過モニタ光LTの変化)の情報に基づいて、各膜の成膜時の反応の進行状態をモニタする情報を生成するように処理する(ステップST10)。
【0094】
このように、本実施形態に係る真空成膜装置は、第1モードMD1において、光学薄膜を製造する真空成膜プロセスにおいて、吸収膜を含んでいたとしても量産化に対応しながら光学系の大型化、高コスト化を抑止しつつ、歩留まりを向上させることが可能であり、かつ、膜の成膜時の反応の進行状態をモニタすることができる。
【0095】
一方、ステップST5において、第1モードMD1ではなく第2モードMD2と判別した場合、信号処理部70は、たとえば、成膜対象基板を裏面側に透過した透過モニタ光LTを受光して得られた第2受光信号S
R2を取得する(ステップST11)。
次に、信号処理部70は、基板ホルダ31の回転に同期したトリガー信号S
Tを取得する(ステップST12)。
次に、たとえば、第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tを信号処理して成膜対象基板毎の光透過率を取得する。
信号処理部70は、第2モードMD2において、第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいて、所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率を取得する(ステップST13)。
信号処理部70は、成膜対象基板30の裏面側に透過した透過モニタ光LTの光透過率の変化から成膜対象基板上の薄膜の膜厚を推定してモニタするための情報を生成するように処理する(ST14)。
また、信号処理部70は、透過モニタ光の連続スペクトルを取得することで、成膜対象基板毎の光透過スペクトルを取得する。
これに基づき、得られた光透過率あるいは光透過スペクトルから、所望の光学特性が得られるように成膜条件を変更するように成膜途中において、たとえば制御系を通してフィードバックされる。
【0096】
本実施形態の真空成膜装置は、第2モードMD2において、複数枚の成膜対象基板を基板ホルダに保持し、基板ホルダの外周部に保持された成膜対象基板にモニタ光を投光し、これを透過したモニタ光を受光して成膜対象基板毎の光透過率を取得するものであり、光学フィルタを製造する真空成膜プロセスにおいて、量産化に対応しながら歩留まりを向上させることができる。
【0097】
なお、本実施形態において、たとえば、受光部としては、成膜対象基板を透過したモニタ光を受光および伝達する受光光学系と、モニタ光を分光する分光部と、分光部で分光された光を検出するCCDセンサなどの光検出部とを有する構成とし、モニタ光を多波長で検出することができる。
たとえば、光検出感度を高めることで信号の精度を高め、S/N比を向上でき、さらに、CCDセンサなどにより多波長での光透過率の情報を得ることで得られる情報量を増加させることができ、光透過率の精度を高め、S/N比を向上できる。
【0098】
たとえば、位置可変に設けられている受光光学系を用いることができる。
伸縮可能、屈曲可能、あるいは伸縮および屈曲可能に設けられている受光ヘッド支持部64を用いることで、受光光学系の受光ヘッドの位置を変更でき、曲面形状の異なる基板ホルダを用いた場合でも、基板ホルダの外周部に保持された成膜対象基板の光透過率あるいはスペクトルの精度を高めることができる。
【0099】
図9(a)および(b)は
図1の真空蒸着装置の変形例の要部模式図である。
たとえば、平面円板形状の基板ホルダ36の外周部に保持された成膜対象基板30に投光部を構成する投光ヘッド41からモニタ光Lが投光される。
成膜対象基板30の表面で反射された反射モニタ光LRが受光光学系を構成する第1受光ヘッド50で受光され、成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTが受光光学系を構成する第2受光ヘッド60で受光される。
図9(a)に示す基板ホルダ36と
図9(b)に示す基板ホルダ36はいずれも平面円板形状であるが、径が異なり、保持できる成膜対象基板の数や大きさが異なっている。
上記の構成において、たとえば、受光光学系の第2受光ヘッド60の位置が可変に設けられている。
【0100】
たとえば、受光ヘッド支持部64が伸縮可能、屈曲可能、あるいは伸縮および屈曲可能に設けられており、受光光学系の受光ヘッドの位置を変更できるように構成されている。
たとえば、
図9(a)に示す相対的に大きな基板ホルダ36を用いる場合、第2受光ヘッド60が基板ホルダ36の外周部に保持された成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTを受光する位置に届くように受光ヘッド支持部64が伸ばされている。
一方、たとえば、
図9(b)に示す相対的に小さな基板ホルダ36を用いる場合、第2受光ヘッド60が基板ホルダ36の外周部に保持された成膜対象基板30を裏面側に透過した透過モニタ光LTを受光する位置に届くように受光ヘッド支持部64が縮められて、あるいは屈曲されている。
伸縮可能、屈曲可能、あるいは伸縮および屈曲可能に設けられている受光ヘッド支持部64を用いることで、受光光学系の受光ヘッドの位置を変更でき、平面形状で径が異なる基板ホルダを用いた場合でも、基板ホルダの外周部に保持された成膜対象基板の光透過率あるいはスペクトルの精度を高めることができる。
【0101】
たとえば、投光部が、成膜対象基板の膜形成面に実質的に垂直に入射するようにモニタ光を投光する。
これにより、成膜対象基板の光透過率あるいはスペクトルの精度を高めることができる。
【0102】
たとえば、基板ホルダおよび受光光学系の近傍に設けられたヒータで加熱することで、真空チャンバー10の基板ホルダ近傍における内壁面などに不要な蒸着材料が堆積することを防止することができる。
この場合、たとえば受光光学系としてヒータによる加熱に対する耐熱性を有するものを用いることで、受光光学系のヒータによるダメージを抑制することができる。
【0103】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の構成を有する。
すなわち、本実施形態の真空成膜装置によれば、信号処理部70は、吸収膜を含むNDフィルタ等を作製する場合、第1モードMD1において、第1受光部500の反射モニタ光LRに応じた第1受光信号S
R1とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光反射率(反射モニタ光LRの変化情報)を取得する。
また、信号処理部70は、上記のように反射モニタ光の連続スペクトルを取得することで、成膜対象基板毎の光反射スペクトルを取得する。
本実施形態においては、得られた光反射率あるいは光反射スペクトルから、所望の光学特性が得られるように成膜条件を変更するように成膜途中において、図示しない制御系を通してフィードバックすることができる。
【0104】
また、本実施形態においては、第1モードMD1の場合、第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率(透過モニタ光LTの変化情報)を取得する。
信号処理部70は、成膜対象基板30の蒸着面側の面(表面)における反射モニタ光の変化から成膜対象基板上の薄膜の膜厚を推定してモニタするための情報を生成するとともに、取得した光透過率(透過モニタ光LTの変化)の情報に基づいて、各膜の成膜時の反応の進行状態をモニタする情報を生成するように処理する。
【0105】
このように、本実施形態に係る真空成膜装置は、光学薄膜を製造する真空成膜プロセスにおいて、吸収膜を含んでいたとしても量産化に対応しながら光学系の大型化、高コスト化を抑止しつつ、歩留まりを向上させることが可能であり、かつ、膜の成膜時の反応の進行状態をモニタすることが可能となる利点がある。
【0106】
また、信号処理部70は、吸収膜を含まない光学薄膜を作製する場合、第2モードMD2において、第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいて、所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率を取得する。
また、信号処理部70は、上記のように透過モニタ光の連続スペクトルを取得することで、成膜対象基板毎の光透過スペクトルを取得する。
本実施形態においては、得られた光透過率あるいは光透過スペクトルから、所望の光学特性が得られるように成膜条件を変更するように成膜途中において、図示しない制御系を通してフィードバックすることができる。
このように、第2モードMD2においては、成膜対象基板を裏面側に透過した透過モニタ光を受光して成膜対象基板毎の光透過率を取得するものであり、光学フィルタを製造する真空成膜プロセスにおいて、量産化に対応しながら歩留まりを向上させることができる。
【0107】
本発明は上記の説明に限定されない。
たとえば、イオンビームアシスト真空蒸着装置および方法に限らず、その他の真空成膜装置および方法に適用可能である。さらに、真空成膜以外にスパッタリングによる成膜あるいはCVD(化学気相成長)による成膜など、その他の薄膜形成装置および方法にも適用可能である。
トリガー信号の出力は、基板ホルダの回転の1周期に1回の出力でも多数回の出力でもよい。
また、エンコーダを用いて基板ホルダの回転軸の回転位置を検出し、得られた基板ホルダの位置情報を信号処理部に入力して成膜対象基板毎の光反射率あるいは光透過率を取得する構成とすることも可能である。
また、上記の実施形態における、投光部、受光部、トリガー信号出力部、および信号処理部は、成膜対象基板毎の光反射率あるいは光透過率を取得して成膜対象基板に形成された薄膜の光学膜厚をモニタする装置を構成する。光学薄膜モニタ装置として、上記の真空成膜装置から取り外し、他の薄膜形成装置に取り付けて成膜対象基板に形成された薄膜の光学膜厚をモニタすることもできる。
【0108】
また、上述した実施形態においては、成膜中におけるモニタ(監視)制御機能について説明したが、本発明に係る装置は、成膜中の膜厚等のモニタ制御機能だけでなく、反応ガスによる化学反応のモニタ制御機能も有している。
【0109】
図10は、本実施形態において光学薄膜を作製する場合における化学反応のモニタ制御機能について説明するめのフローチャートである。
たとえば、成膜処理を停止した状態である成膜停止中に(ステップST21)、酸素(O
2)などの反応ガスを流して(ステップST22)、基板の光透過率(透過モニタ光LTの変化情報)を取得する(ステップST23)。
具体的には、
図1の装置において、第2受光部600の透過モニタ光LTに応じた第2受光信号S
R2とトリガー信号S
Tに基づいた所定の信号処理を行って成膜対象基板30毎の光透過率を取得する。
信号処理部が、取得した光透過率(透過モニタ光LTの変化)の情報に基づいて、膜の化学反応処理時の反応の進行状態をモニタする情報を生成する。
そして、たとえば酸化により基板の光透過率が変化、あるいは一定の光透過率に達した場合には(ステップST24)、酸化処理を終了して(ステップST25)、次の処理(工程)に進む。
本発明は、このような、反応ガスによる化学反応のモニタ制御機能も有するように構成することも可能であえる
【0110】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。