【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて、本発明について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を「部」、「重量%」を「%」と表記する。
【0048】
〔分散体の調製〕
表1、表2に示す処方で、調製例1〜10にかかる各分散体1〜10、比較用調製例1〜9にかかる各分散体1A〜9Aを調製した。
なお、表1,2において、HPC(*1)は、分子量が4万で、2%水溶液の粘度が2.5mPa.s(20℃)であるヒドロキシプロピルセルロース、HPC(*2)は、分子量が10万で、2%水溶液の粘度が4.0mPa.s(20℃)であるヒドロキシプロピルセルロース、HPC(*3)は、分子量が30万で、2%水溶液の粘度が400mPa.s(20℃)であるヒドロキシプロピルセルロース、CMCはカルボキシメチルセルロースナトリウムを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
具体的な調製方法は、以下に詳述するとおりである。
<調製例1>
分子量が4万のHPC3部を精製水87部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を10部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0052】
<調製例2>
同様に、分子量が4万のHPC6部を精製水74部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を20部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0053】
<調製例3>
同様に、分子量が10万のHPC7部を精製水73部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を20部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0054】
<調製例4>
同様に、分子量が4万のHPC6部を精製水74部にて溶解し、これに、黄色三二酸化鉄を20部加えて攪拌し、黄色三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、黄色三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0055】
<調製例5>
同様に、分子量が10万のHPC6部を精製水74部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を20部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0056】
<調製例6>
同様に、分子量が4万のHPC6.4部を精製水72.1部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を21.3部及びショ糖脂肪酸エステル0.2部を加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の21.3%分散体を調製した。
【0057】
<調製例7>
同様に、分子量が10万のHPC5部を精製水74.8部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を20部及びショ糖脂肪酸エステル0.2部を加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0058】
<調製例8>
同様に、分子量が4万のHPC8部を精製水52部及びエタノール20部の混合溶液にて溶解し、これに、三二酸化鉄20部を加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0059】
<調製例9>
同様に、分子量が4万のHPC6部を精製水44部及びエタノール30部の混合溶液にて溶解し、これに、三二酸化鉄20部を加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0060】
<調製例10>
分子量が4万のHPC3部を精製水87部にて溶解し、これに、黒酸化鉄を10部加えて攪拌し、黒酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、黒酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0061】
<比較用調製例1>
分子量が4万のHPC3部を精製水87部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を10部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0062】
<比較用調製例2>
カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記載する)3部を精製水57部とエタノール30部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を10部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0063】
<比較用調製例3>
分子量が30万のHPC8部を精製水67部にて溶解し、これに、グリセリン脂肪酸エステル5部を混合する。これに、三二酸化鉄を20部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の20%分散体を調製した。
【0064】
<比較用調製例4>
分子量が30万のHPC3部を精製水82部にて溶解し、これに、グリセリン脂肪酸エステル5部を混合する。これに、黄色三二酸化鉄を10部加えて攪拌し、黄色三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、黄色三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0065】
<比較用調製例5>
分子量が4万のHPC3部をエタノール87部にて溶解し、これに、三二酸化鉄を10部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0066】
<比較用調製例6>
分子量が4万のHPC3部を精製水87部にて溶解し、これに、食用赤色3号アルミニウムレーキ10部加えて攪拌し、食用赤色3号アルミニウムレーキのプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、食用赤色3号アルミニウムレーキの10%分散体を調製した。
【0067】
<比較用調製例7>
精製水85.5部、グリセリン脂肪酸エステル3部、ショ糖脂肪酸エステル1部、ソルビタン脂肪酸エステル0.5部の混合液を調製した。三二酸化鉄10部に、この混合液を加えてプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0068】
<比較用調製例8>
分子量が4万のHPC1部を精製水89部にて溶解し、これに、三二酸化鉄10部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の10%分散体を調製した。
【0069】
<比較用調製例9>
分子量が4万のHPC7.8部を精製水82.4部にて溶解し、これに、三二酸化鉄9.8部加えて攪拌し、三二酸化鉄のプレミックスを調製した。
このプレミックスをビーズミルにて2時間分散処理し、三二酸化鉄の9.8%分散体を調製した。
【0070】
〔実施例:インクジェットインキの製造〕
<実施例1>
分子量が4万のHPC2部を77部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。20部の分散体1を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液を加えて、分散体1とHPC溶液を十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
<実施例2>
分子量が4万のHPC2部を87部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体2を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液を加えて、分散体2とHPC溶液を十分混合分散させた。この混合分散液に、乳酸ナトリウム1部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0071】
<実施例3>
分子量が10万のHPC2部を87部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体3を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液を加えて、分散体3とHPC溶液を十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0072】
<実施例4>
分子量が4万のHPC3部を86部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体4を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液を加えて、分散体4とHPC溶液を十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、黄色のインクジェットインキを得た。
【0073】
<実施例5>
分子量が10万のHPC2部を82部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体5を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液及びプロピレングリコール5部を加えて、分散体5とHPC溶液及びプロピレングリコールを十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0074】
<実施例6>
分子量が4万のHPC2部を86.7部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体6を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液を加えて、分散体6とHPC溶液を十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1.3部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0075】
<実施例7>
分子量が10万のHPC2部を86.2部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体7を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液及びグリセリン脂肪酸エステル0.5部を加えて、分散体7とHPC溶液及びグリセリン脂肪酸エステルを十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1.3部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0076】
<実施例8>
分子量が4万のHPC2部を85.5部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。10部の分散体8を攪拌しながら、そこに前記HPC溶液及びグリセリン脂肪酸エステル0.5部、さらにソルビタン脂肪酸エステル0.5部を加えて、分散体8とHPC溶液及びグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルを十分混合分散させた。この混合分散液に、酢酸ナトリウム1.5部を添加してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0077】
<実施例9>
分子量が4万のHPC2部を78.5部のエタノールにて溶解したHPC溶液を調製した。このHPC溶液に、プロピレングリコール3部、さらに酢酸ナトリウム1.5部を添加して溶解させた。15部の分散体9を攪拌しながら、そこに、HPC溶液にプロピレングリコール3部、酢酸ナトリウム1.5部を添加して調製した前記溶解液を加えて、分散体9とHPC溶液、プロピレングリコール、酢酸ナトリウムの溶解液を十分混合分散してインキに調製した。この調製液を孔径1μのフィルターにて濾過し、赤茶色のインクジェットインキを得た。
【0078】
<実施例10>
実施例1の分散体1を分散体10に代えたこと以外は実施例1と同様にして、黒色のインクジェットインキを得た。
【0079】
<実施例11>
実施例1の分散体1の調製を省略し、実施例1と実質的に同様の処方の混合溶解液のプレミックスを調製し、このプレミックスのビーズミル分散を行ってインキの分散液を調製した。この分散液を孔径1μのフィルターにて濾過し、インクジェットインキとした。
【0080】
<比較例1>
実施例1と同様に、後述する表4の配合によるインキを調製した。
具体的には、分子量4万のHPC4部を精製水74.5部に溶解し、これに、グリセリン脂肪酸エステル0.5部と酢酸ナトリウム1部を混合溶解した。20部の分散体1Aを攪拌させながら、そこに前記の混合溶解液を添加して、混合分散させた。
この混合分散液を孔径1μのフィルターにて濾過し、インクジェットインキとした。
【0081】
<比較例2〜9>
後述する表4の配合による混合溶解液を調製し、この混合溶解液を分散体2Aから9Aまでそれぞれに添加混合して、比較例2〜9にかかる各インクジェットインキを得た。
【0082】
<比較例10>
後述する表4の配合による混合溶解液を調製し、この混合溶解液を分散体1Aに添加混合して、比較例10にかかるインクジェットインキを得た。
【0083】
〔性能評価〕
上記各実施例1〜11、比較例1〜10の各インキについて、下記に詳述するインキの物性測定及び性能評価を行った。
その結果を、各実施例、比較例の処方とともに、表3、表4に示す。
なお、表3,4において、HPC(*1)は、分子量が4万で、2%水溶液の粘度が2.5mPa.s(20℃)であるヒドロキシプロピルセルロース、HPC(*2)は、分子量が10万で、2%水溶液の粘度が4.0mPa.s(20℃)であるヒドロキシプロピルセルロース、HPC(*3)は、分子量が30万で、2%水溶液の粘度が400mPa.s(20℃)であるヒドロキシプロピルセルロース、CMCはカルボキシメチルセルロースナトリウムを示す。
また、表4中の「−」は、評価に値しないか、評価不可であることを意味する。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
<インキの物性>
インキ中の酸化鉄の平均粒子径は日機装株式会社製の粒度分布計(UPA型)を用いてメジアン径(d50)で測定した。
インキの粘度(20℃、mPa・s)は東機産業社製の粘度計(EHコーン型 RE−80L)を用いて測定した。
導電率(mS/cm)は堀場製作所社製の導電率計(ES−51)を用いて測定した。
【0087】
<再分散性>
約1グラムの放置して乾燥したインキ面に、元のインキを振り掛けて20回振とうさせたのちの再溶解性と濾過での凝集物の有無の状態で以下の基準で評価した。
○:再分散性が良好。
×:粒子径が増大し、完全な凝集状態にある。
【0088】
<耐水性>
連続式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の型式KGK JET CCS−3000)にて天ぷら油の濾過用の紙に印字した記録対象物の印字面を水で湿らせたときのインキの溶け出しの有無、水の着色及び印字面を拭ったティッシュペーパーへの着色により確認し、以下の基準で評価した。また、打錠機により圧縮成形したとうもろこしでんぷんの加工品にも印字し、そのニジミ程度も確認した。
◎:水及びティッシュペーパーが全く着色しない。
○:若干、水及びティッシュペーパーが着色するが、印字の判読が可能である。
×:印字が完全に消失し、判読不可能である。
【0089】
<定着性>
打錠機により圧縮成形した加工品に連続式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の型式KGK JET CCS−3000)にて印字し、10秒経過したとき、ティッシュペーパーにて擦り、印字塗膜の剥離の有無を以下の基準で評価した。
◎:全く剥離無し。
○:若干剥離するが、印字の判読が可能である。
×:印字が完全に剥離し、判読不可能である。
【0090】
<視認性>
上記の定着性の評価と同様に印字し、目視により判読可能か確認し、以下の基準で評価した。
◎:印字直後と全く変化がない。
○:若干印字が欠けるが、判読可能である。
×:判読不可能である。
【0091】
<高温環境での印字性能>
室温を45℃に保持した環境室内でインクジェットプリンタで印字テストを行なったときの印字結果の状態を以下の基準で評価した。
○:印字状態良好。インクジェットプリンタのトラブルも無い。
×:酸化鉄粒子が高温で劣化・凝集し、配管詰まりを引き起こす。
【0092】
<低温環境での印字性能>
室温を5℃に保持した環境室内でインクジェットプリンタで印字テストを行なったときの印字結果の状態を以下の基準で評価した。
○:印字状態良好。インクジェットプリンタのトラブルも無い。
×:低温になることで、インキの流動性が増し、配管、ノズル詰まりを引き起こす。
【0093】
<連続吐出性>
上記のように調製したインキを、連続式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の型式KGK JET CCS−3000)に装填し、連続して印字テストを行なったときのトラブル(ノズル詰り、印字不良、インキ滴の着弾位置異常、噴出圧力異常など)の有無で以下の基準で判定した。
○:各印字ドットが正確に着弾できている。
×:ドットの欠損が生じたり、所定の位置に着弾しない。
【0094】
〔結果の考察〕
<実施例についての考察>
実施例1は、三二酸化鉄を2%含有するインクジェットインキで、安定な分散性を維持できており、プリンタでの吐出も安定している。視認性もよく、打錠剤への印字による定着性、その後の転着等も生じない良好な結果を示した。
実施例2も、実施例1と同様の良好な結果を示している。導電剤として使用した乳酸ナトリウムは、打錠剤への印字による定着性、その後の転着等でも良好な結果を示している。しかしながら、酢酸ナトリウムを使用したものに較べると、微妙な品質のマイナス面が見受けられる。
実施例3は、HPCの分子量が10万になっているが、インキの粘度が適性値に維持できており、良好な結果を示している。
実施例4は、三二酸化鉄の代わりに黄色三二酸化鉄を用いたものであるが、三二酸化鉄と同様の良好な結果を得ている。
実施例5は、プロピレングリコールを用いたもので、再分散性、特に、再溶解性がよくプリンタでのノズル乾燥に対する対応が良好となるものである。その反面、耐水性においては、問題のない範囲ではあるが、微妙なマイナス面が見受けられる。
実施例6,7においては、分散体の調製において、ショ糖脂肪酸エステルを加えて分散の促進をはかったもので、粒子径が微妙ではあるが、小さくすることを狙ったものである。
実施例7では、さらにグリセリン脂肪酸エステルも第二工程にて添加し、インキの安定化を図っている。
実施例8及び9は、分散溶媒にエタノールを混合して用いるものであり、分散機の冷却効率が十分でないような条件の場合において、分散時の温度上昇が比較的高いような場合への対応を意図した分散体を用いるものである。
実施例8は、グリセリン脂肪酸、ソルビタン脂肪酸エステルを適量に添加し、酸化鉄の安定性をさらに良好とさせている。
実施例9は、プロピレングリコールを用いたもので、再分散性、特に、再溶解性がよくプリンタでのノズル乾燥に対する対応が良好となるものである。その反面、耐水性においては、問題のない範囲ではあるが、微妙なマイナス面が見受けられる。
実施例10は、酸化鉄として黒酸化鉄を用いたものであるが、実施例1と同様に優れた物性を備え、かつ、黒色の良好な印字物を形成できるものであった。
実施例11は、予め分散体を得ることなくインキを調製したものであるが、分散体1を分散するときの分散時間よりも倍以上の分散時間をかけたにもかかわらず、粒度分布では、粒子径が大きめにあらわれた。
【0095】
<比較例1〜6の結果に基づくインキ組成についての考察>
比較例1は、水を主体としたインキであり、耐水性、乾燥の遅さも起因する定着性の不良を発生した。
比較例2は、HPCではなくCMCを用いたものであり、エタノールへの溶解性不足で分散不良を発生するものであった。
比較例3は、HPCの分子量が大きいため、プリンタ適性にあわせることが難しい。インキの粘度が高くなってしまった。
比較例4は、比較例3と同様HPCの分子量が大きいので含有量を減らしているが、それでも、粘度が低くできずプリンタでの安定吐出が困難であった。
比較例5は、HPCのアルコール溶液での分散体を用いるものであり、分散が十分なされていない。また、導電剤を2部以上添加させたもので、過剰に加えたための顔料の凝集をも発生させたものである。分散時に水の介在がなく、また、インキにおいても、水の介在がないので乾燥性が良好であるが、凝集しており、十分なインキの形態をなさない。
比較例6は、食用のレーキ顔料を用いたものであるが、耐水性やにじみの問題を発生した。また、酸化鉄の耐光性に較べると、著しい耐光性の劣化(変色、褪色)が認められた。
【0096】
<比較例7〜10の結果に基づくインキの製造条件についての考察>
比較例7は、HPCを用いずに、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルにて三二酸化鉄の分散体を調製したものであり、この分散体をHPCの溶液にてインキ化調製したものでは、分散体との混合時に顔料の凝集を発生させるものであった。
比較例8は、三二酸化鉄に対するHPCの量が10分の1であり、十分な分散が保持できていない。従って、経時にて凝集物を発生し、また、連続の安定吐出も得られなかった。
比較例9は、三二酸化鉄に対するHPCの量が10分の8も用いられているため、分散体の調製で粘度が高くなってしまう問題があった。この分散体を使用するための濃度調整を行ってインキ調製すると、粘度がプリンタの最適値よりも高くなり、連続の安定吐出ができない。分散不良も当然発生した。
比較例10は、第2樹脂溶液全量に対して、HPCの量が10重量%を超えたもので、粘度が20mPa.sを超えるインキとなってしまい、プリンタでの吐出が十分できず、印字サンプルの評価も十分できないものとなった。