(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-96841(P2015-96841A)
(43)【公開日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】放射線検出器、これを用いたX線分析装置および放射線検出方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20150424BHJP
G01N 23/207 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
G01T1/17 A
G01N23/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-237225(P2013-237225)
(22)【出願日】2013年11月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】作村 拓人
(72)【発明者】
【氏名】中江 保一
(72)【発明者】
【氏名】前山 正孝
(72)【発明者】
【氏名】松下 一之
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001BA18
2G001CA01
2G001FA04
2G001FA05
2G001FA21
2G001GA01
2G001JA05
2G001JA06
2G001KA08
2G188AA03
2G188AA27
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB09
2G188CC32
2G188DD05
2G188EE13
2G188EE25
2G188EE27
(57)【要約】
【課題】連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる放射線検出器、これを用いたX線分析装置および放射線検出方法を提供する。
【解決手段】外部機器200に同期させて放射線を検出する放射線検出器100であって、放射線の粒子が検出されたときにパルスを発生させるセンサ110と、パルスを計数可能に設けられた複数のカウンタ140a、140bと、外部機器200から同期信号を受けたときに、複数のカウンタ140a、140bのうちパルスを計数するカウンタを切り換える制御回路160とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器の動作に同期させて放射線を検出する放射線検出器であって、
放射線の粒子が検出されたときにパルスを発生させるセンサと、
前記パルスを計数可能に設けられた複数のカウンタと、
外部機器からトリガ信号を受けたタイミングで、前記複数のカウンタのうち前記パルスを計数するカウンタを切り換え、連続露光を行なう制御回路と、を備えることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記外部機器からトリガ信号を受けるタイミング間において、直前に前記計数を終えたカウンタから読み出しを行なう読み出し回路を更に備えることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記複数のカウンタとして2つのカウンタを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記複数のカウンタとして3以上のカウンタを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記外部機器からのトリガ信号として、時間または位置を特定する信号を受けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の放射線検出器。
【請求項6】
連続してX線を入射させる機構と、
前記入射させたX線を検出する請求項1から請求項5のいずれかに記載の放射線検出器と、を備えることを特徴とするX線分析装置。
【請求項7】
外部機器の動作に同期させて放射線を検出する放射線検出方法であって、
放射線の粒子が検出されたときに発生させるパルスを複数設けられたカウンタのうちの一つで計数するステップと、
外部機器からトリガ信号を受けたタイミングで、前記パルスを計数可能に設けられた複数のカウンタのうち前記パルスを計数するカウンタを切り換えるステップと、
前記カウンタの切換えと同時に直前に計数を終了したカウンタから計数データを読み出すステップと、を含み、
測定が終了するまで一連のステップを繰り返すことを特徴とする放射線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器に同期させて放射線を検出する放射線検出器、これを用いたX線分析装置および放射線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線検出器としてCCD検出器が用いられている。CCD検出器は、データ読み出しに一定の時間が必要であり、データ読み出し時に露光していると検出画面の位置によって露光時間にバラツキが生じてしまう。そのような事情からCCDの露光準備が整ってから、シャッタを開け、シャッタを閉じてからデータ読み出しを行なうという手順で露光が行なわれている。例えば、特許文献1の
図4には、CCD検出器を用いたX線単結晶構造解析方法のシャッタ・タイミングが記載されている。
【0003】
上記のようにCCD検出器では、検出時にシャッタの開閉を伴うため、シャッタレス測定ができない。単結晶構造解析における測定で、1度の測定プロセスにおいて、結晶を回転させながら数百〜数千の画像を撮影すると、撮影のたびにシャッタを開閉することになり時間的に大きな損失となる。
【0004】
また、バッファ機能を持たない一般的な半導体検出器では、読み出し時間が存在する。読み出し時間においてはデータ露光が行なわれず、シャッタレス測定を行なったとしてもデータの欠損時間が生じる。
【0005】
このようなシャッタ開閉を前提とする従来技術に対し、シャッタを開けたままでCMOS検出器を用いてX線を検出する方法が提案されている。非特許文献1では、X線CMOS検出器を用いて高速・高精度な新しい回折データ測定方法が提案されている。非特許文献1記載の方法では、シャッタを開けたまま結晶を連続的に回転させ、一定の時間間隔で回折画像を読み取っている。また、非特許文献1にも連続試料回転モードが記載されているが、
図3に示されているようにリードアウトとしてデッドタイムが存在している。
【0006】
一方、検出器からの複数ラインの読み出しを利用する技術が開示されている。特許文献2には、2次元画像検出部のデータを奇数ラインと偶数ラインとに分け、2つのストレージエリアに読み出す方法が記載されている。また、特許文献3には、2次元画像検出部の連続露光中に各受光素子の読み出し動作を複数回行なうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−75373号公報
【特許文献2】特開平10−126692号公報
【特許文献3】特許第2830482号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kazuya Hasegawa, Kunio Hirata, Tetsuya Shimizu, Nobutaka Shimizu, Takaaki Hikima, Seiki Baba, Takashi Kumasaka and Masaki Yamamoto, "Development of a shutterless continuous rotation method using an X-ray CMOS detector for protein crystallography", Journal of Applied Crystallography, 2009, 42, 1165-1175
【非特許文献2】Gregor Hulsen, Christian Broennimann, Eric F.Eikenberry and Armin Wagner, "Protein crystallography with a novel large-area pixel detector", Journal of Applied Crystallography,2006, 39, 550-557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、シャッタを開けたまま一定の時間間隔で試料の回折画像を読み取る方法は存在するが、このような方法においても検出器側でデッドタイムは生じており、検出器の連続露光は実現できていない。また、検出器からの複数ラインの読み出しを利用する技術は存在するが、これを利用した連続露光は実現できていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる放射線検出器、これを用いたX線分析装置および放射線検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の放射線検出器は、外部機器の動作に同期させて放射線を検出する放射線検出器であって、放射線の粒子が検出されたときにパルスを発生させるセンサと、前記パルスを計数可能に設けられた複数のカウンタと、外部機器からトリガ信号を受けたタイミングで、前記複数のカウンタのうち前記パルスを計数するカウンタを切り換え、連続露光を行なう制御回路と、を備えることを特徴としている。
【0012】
これにより、連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる。その結果、測定時間が短縮され、測定を高速化できる。また、統計誤差を低減し高精度に測定することができる。
【0013】
(2)また、本発明の放射線検出器は、前記外部機器からトリガ信号を受けるタイミング間において、直前に前記計数を終えたカウンタから読み出しを行なう読み出し回路を更に備えることを特徴としている。これにより、一個のカウンタの稼働中にもう一個のカウンタから計数を読み出し、次のカウンタの切換えを準備することができ、連続露光が可能になる。
【0014】
(3)また、本発明の放射線検出器は、前記複数のカウンタとして2つのカウンタを備えることを特徴としている。これにより、シンプルな回路構成により、デッドタイムなしで露光を維持できる。
【0015】
(4)また、本発明の放射線検出器は、前記複数のカウンタとして3つ以上のカウンタを備えることを特徴としている。これにより、露光時間が読み出し時間より短い場合であっても、デッドタイムを生じさせずに露光を続けることができる。
【0016】
(5)また、本発明の放射線検出器は、前記外部機器からのトリガ信号として、時間または位置を特定する信号を受けることを特徴としている。これにより、例えば外部機器の動作タイミングに応じたカウンタの切換え、アームの位置に応じたカウンタの切換えや解析対象の位置に応じたカウンタ切換えが可能になる。
【0017】
(6)また、本発明のX線分析装置は、連続してX線を入射させる機構と、前記入射させたX線を検出する上記の放射線検出器と、を備えることを特徴としている。これにより、連続露光によるX線測定が可能になり、例えばX線回折測定を行なった場合には、小さいRmergeで高精度な測定が可能になる。
【0018】
(7)また、本発明の放射線検出方法は、外部機器の動作に同期させて放射線を検出する放射線検出方法であって、放射線の粒子が検出されたときに発生させるパルスを複数設けられたカウンタのうちの一つで計数するステップと、外部機器からトリガ信号を受けたタイミングで、前記パルスを計数可能に設けられた複数のカウンタのうち前記パルスを計数するカウンタを切り換えるステップと、前記カウンタの切換えと同時に直前に計数を終了したカウンタから計数データを読み出すステップと、を含み、測定が終了するまで一連のステップを繰り返すことを特徴としている。これにより、連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】放射線検出器の動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施例および比較例を示すタイミングチャートである。
【
図4】2つのカウンタを用いる場合と3つのカウンタを用いる場合を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
[第1の実施形態]
(検出器の構成)
図1は、放射線検出器100の構成を示す概略図である。放射線検出器100は、外部機器に同期させて放射線を検出する検出器であり、2次元のデータバッファ機能を持つ半導体検出器である。検出対象となる放射線は、X線である場合に機能を発揮しやすいが、これに限定されずα線、β線、γ線、中性子線等であってもよい。なお、放射線検出器100は、1次元検出器であってもよい。
【0023】
図1に示すように、放射線検出器100は、センサ110、検出回路120、切換え回路130、第1、第2のカウンタ140a、140b、読み出し回路150および制御回路160を備えている。センサ110は、放射線の粒子が検出されたときにパルスを発生させる。センサ110は、受光面に入射するX線束の強度を、面情報として検出できる。
【0024】
検出回路120は、パルスが基準値より高いか否かを判定し、高い場合には電圧信号として複数のカウンタ140a、140bのうち計数中のカウンタへ送出する。切換え回路130は、制御回路160のカウンタ切換え信号を受けたときには電圧信号を計数するカウンタを切り換える。
【0025】
2つのカウンタ140a、140bは、それぞれ同等の機能を有し、パルスを計数することができる。
図1に示す例では、2つカウンタが設けられているが、3以上設けられていても良い(後述)。カウンタを2つ用いる場合には、シンプルな回路構成により、デッドタイムなしで露光を維持できる。
【0026】
読み出し回路150は、直前に計数を終えたカウンタから計数値を読み出す。カウンタ切換えと同タイミングで計数値を読み出すのが好ましい。カウンタの計数値を早期に読み終えることで、早い段階でカウンタを計数可能な状態に戻すことができる。
【0027】
制御回路160は、外部機器200から同期信号を受けたときに、複数のカウンタの中でパルスを計数するカウンタを切り換える。これにより、連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる。その結果、測定時間が短縮され、測定を高速化できる。また、計数はリードアウト分落ちているのに対し、統計誤差が本来分入ってくる計数で効いてくる状況を解消し、統計誤差を低減し高精度に測定することができる。
【0028】
外部機器200からの同期信号としては、例えば、時間または位置を特定する信号を受けることができる。これにより、例えば外部機器の動作タイミング、アームの位置または解析対象の位置に応じたカウンタ切換えが可能になる。
【0029】
読み出し回路150は、外部機器200からトリガ信号を受けるタイミング間において、直前に計数を終えたカウンタ140aから読み出しを行なう。これにより、一個のカウンタ140bの稼働中にもう一個のカウンタ140aから計数を読み出し、カウンタ140aは、次の切換えにより計数の開始を準備をすることができ、連続露光が可能になる。
【0030】
(検出器の動作)
上記のように構成された放射線検出器100の動作を説明する。
図2は、放射線検出器100の動作を示すフローチャートである。
【0031】
まず、シャッタを開け放しにして、試料に対して放射線を照射する(ステップS1)。検出面に入った放射線の粒子がセンサ110により検出されるとパルスが発生する。最初に、一方のカウンタで放射線の計測を開始する(ステップS2)。パルスは、一方のカウンタで計数される。
【0032】
そして、外部機器200からトリガ信号を受信した際には、制御回路160により複数のカウンタ140a、140bのうちパルスを計数するカウンタを切り換える(ステップS3)。これにより、連続的に放射線が入射する露光状態を維持しデッドタイムを生じさせずに放射線を検出できる。
【0033】
同時に、読み出し回路150は、計数を終了したカウンタから計数データの読み出しを開始する(ステップS4)。計数しているカウンタは計数を維持し、カウンタの切換えのタイミングより先に計数を終了したカウンタからの計数データの読み出しが完了する(ステップS5)。
【0034】
その後、測定が終了したか否かを判定し(ステップS6)、測定が終了していない場合には、ステップS3に戻り、外部機器からのトリガ信号を待ってカウンタを切り換える。このように、測定が終わるまでステップS3〜ステップS6までを繰り返す。一方、ステップ6で測定が終了したと判断された場合には、計数を終了し、測定を終える。
【0035】
このような動作を、タイミングチャートを用いて、従来の動作と比較して説明する。
図3は、実施例および比較例を示すタイミングチャートである。
図3に示す共通制御信号は、放射線のシャッタの開閉の信号と外部機器からのトリガ信号を示している。図に示すように、シャッタは常に開いている状態を維持している。なお、外部機器200からのトリガ信号としては、例えばゴニオメータのアームの移動指示信号や所定時間ごとの信号を用いることができる。
【0036】
実施例1は、2つのカウンタを用いてそれらを交互に切り換え、デッドタイムなく連続露光して放射線を検出している。実施例1では、第1カウンタがトリガ信号の立ち上がりエッジで計数を開始している。また、第2カウンタは、最初は待機し、次のトリガ信号の立ち上がりエッジでカウンタの切換えを行ない、計数を開始している。また、切換えと同時に、計数を終えた第1カウンタの読み出しを開始している。以降、トリガ信号の立ち上がりエッジを利用して、交互にカウンタの切換えおよび計数データの読み出しを行なうことができる。
【0037】
比較例1、2は、1つのカウンタを用いて放射線を検出している。比較例1では、外部機器200からのトリガ信号のエッジで読み出しを開始している。最初は、ダミーの読み出し動作を行ない、その後、トリガ信号のエッジで第1カウンタの計数を終了するとともに、その読み出しを開始している。これにより、最初の計数を捨てる必要がなくなる。読み出しが終了したタイミングで、第2カウンタは計数を始めている。このようにして第1カウンタによる計数とその読み出しを繰り返している。
【0038】
比較例2では、外部機器200からのトリガ信号のエッジで第1カウンタは計数を開始している。最初の計数時間は、その後の繰り返し計数時間より長くなる。比較例2では、この最初の計数を捨てる必要がある。その後、トリガ信号のエッジで第1カウンタの計数を終了するとともに、その読み出しを開始している。読み出しが終了したタイミングで、カウンタ計数を始めている。このようにしてカウンタ1による計数とその読み出しを繰り返している。
【0039】
実施例1では、カウンタ1とカウンタ2の計数時間がデッドタイム無く連続している。比較例1、2では、いずれも読み出し時間分のデッドタイムが生じており、連続露光ができない。
【0040】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、2つのカウンタが設けられ、それらの間で計数するカウンタが切り換えられているが、3以上のカウンタで順に計数するカウンタを切り換えても良い。これにより、露光時間が読み出し時間より短い場合であっても、デッドタイムを生じさせずに露光を続けることができる。
図4は、2つのカウンタ(第1〜第2カウンタ)を用いる場合(実施例1)と3つのカウンタ(第1〜第3カウンタ)を用いる場合(実施例2)を示すタイミングチャートである。
【0041】
図4に示す実施例1では、2つのカウンタを設けた場合において各カウンタの計数時間(露光時間)を最短に設定しており、計数時間は、各カウンタからの読み取り時間と一致している。つまり、2つのカウンタを利用する場合には、デッドタイムを生じさせないようにするためには、露光時間≧読出し時間を満たす必要がある。
【0042】
これに対し、
図4に示す実施例2では、3つのカウンタを設けた場合において各カウンタの計数時間(露光時間)を最短に設定しており、計数時間は、(各カウンタからの読み取り時間)/2と一致している。つまり、3つのカウンタを利用する場合には、デッドタイムを生じさせないようにするためには、露光時間≧読出し時間/2を満たせばよい。このように、カウンタ3つ以上の場合でも適切なデータバッファや並行読出し手段等が有れば、読出し時間以下の露光時間でデッドタイムを無くすることができる。ただし、バッファを利用した場合には、総露光時間にバッファサイズによる制限が掛かる。
【0043】
[第3の実施形態]
(単結晶結晶解析装置)
上記のような放射線検出器をX線分析装置に組み込むことができる。
図5は、X線分析装置300の一例を示す平面図である。X線分析装置300は、回折X線像を撮影するための単結晶構造解析装置であり、X線源310、試料台320、アーム330、制御部340および放射線検出器100を備えている。X線源310は、シャッタレスであり、連続してX線を試料S0に照射している。
【0044】
測定中にシャッタの開閉を繰り返すことなく、開のままゴニオメータの測定軸を停止することなく全測定を行なうことができ、測定時間のスループットを改善できる。検出器は露光状態のまま、ゴニオメータからの信号によって、測定すべき分量を制御し、そのゴニオメータ信号の同期ごとに測定データを出力することが可能である。
【0045】
試料台320およびアーム330は、連動しており、制御部340の制御により一定の速度で試料S0回りを回転させることができる。放射線検出器100は、アーム330の端部に設けられており、アーム330とともに試料S0回りの移動が制御されている。
【0046】
X線分析装置300は、上記のような放射線検出器100を有することで、例えば制御部340からのアーム移動の制御信号をトリガ信号として、カウンタを切り換え、デッドタイムの無い連続露光でX線を計数することが可能である。これにより、角度に抜けのないX線回折像が得られる。
【0047】
その結果、例えばX線回折測定を行なった場合には、小さいRmergeで高精度な測定が可能になる。なお、同期信号を使用した連続測定(TDIなど)を行なうことにより、読み出し時間分のデータ欠落を考慮することなく測定することもできる。
【0048】
[第4の実施形態]
(製造ライン)
図6は、X線分析装置400の一例を示す側面図である。X線分析装置400は、X線による検査が可能な製造ラインであり、X線源410、ローラ420、ベルト425、制御部440および放射線検出器100を備えている。X線源410は、シャッタレスであり、連続してX線を製品S1に照射している。
【0049】
ローラ420の回転によりベルト425が動き、図中矢印の方向に製品S1を移動させている、制御部440の制御によりベルト425は一定の速度で移動している。放射線検出器100は、ベルト425および製品S1を挟んでX線源410の反対側に設けられており、ベルト425とともに製品S1の移動が制御されている。
【0050】
X線分析装置400は、上記のような放射線検出器100を有することで、例えば制御部440からのベルト制御信号をトリガ信号として、カウンタを切り換え、デッドタイムの無い連続露光でX線を計数することが可能である。
【0051】
[実験]
上記のX線分析装置300の構成を用いて、
図3に示す実施例1、比較例1の制御により実験を行なった。比較例1では、第1カウンターのみを用いた。カメラ長を45mmとし、1フレーム当たりの移動角度は0.5degとした。また、2sec/frameで露光した。
【0052】
図7は、実験結果を示す表である。
図7に示すように、実施例1では平均計数値2627、測定反射数8631、独立の反射数1455のX線回折像を撮影でき、Rmerge1.50%、R(>2σ)2.63%の結果が得られた。また、比較例1では、平均計数値2781、測定反射数8709、独立の反射数1451のX線回折像を撮影でき、Rmerge1.57%、R(>2σ)2.67%の結果が得られた。実施例1の方が比較例1に比べてRmerge、R(>2σ)のいずれも好ましい結果が得られた。
【符号の説明】
【0053】
100 放射線検出器
110 センサ
120 検出回路
130 切換え回路
140a、140b カウンタ
150 読み出し回路
160 制御回路
200 外部機器
300 X線分析装置
310 X線源
320 試料台
330 アーム
340 制御部
400 線分析装置
410 X線源
420 ローラ
425 ベルト
440 制御部