(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-96878(P2015-96878A)
(43)【公開日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】光受信モジュール及び光送信モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20150424BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20150424BHJP
H01S 5/022 20060101ALI20150424BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
G02B6/42
H01L31/02 D
H01S5/022
H01S5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-236514(P2013-236514)
(22)【出願日】2013年11月15日
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本オクラロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家村 光貴
(72)【発明者】
【氏名】笹田 道秀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博康
【テーマコード(参考)】
2H137
5F088
5F173
【Fターム(参考)】
2H137AB05
2H137AB06
2H137AB08
2H137AB11
2H137AC01
2H137AC05
2H137BA01
2H137BA31
2H137BB02
2H137BB12
2H137BB17
2H137BB25
2H137BB31
2H137BB33
2H137BC02
2H137BC07
2H137BC08
2H137BC14
2H137BC51
2H137BC53
2H137CA28C
2H137CA34
2H137CA66
2H137CA67
2H137CA72
2H137CC01
2H137CC03
2H137DA07
2H137FA06
2H137GA08
2H137HA00
2H137HA01
5F088AA01
5F088BA20
5F088BB01
5F088GA05
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5F173MA02
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5F173MC15
5F173MC17
5F173ME44
5F173ME85
5F173MF12
5F173MF23
5F173MF27
5F173MF28
5F173MF39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のチャネルを有する光受信モジュール又は光送信モジュールにおいて、それぞれ受光部又は発光部に対するレンズアレイの位置調整を光の利用効率の低下を抑えて行うことができる光受信モジュール又は光送信モジュールを提供する。
【解決手段】光受信モジュールは、複数の集光レンズが、互いの光軸を平行にして、一つの平面を形成するように一方向に並べられたレンズアレイ140と、集光レンズから出射される光を受光する複数の受光素子を有する受光素子アレイ150と、を備え、受光素子アレイ150は、集光レンズからの光が入射され、透過する半導体基板と、半導体基板を透過した光を受光し、電気信号に変換する受光部と、を有し、複数の集光レンズの光軸が、それぞれ対応する受光部の中心からのずれは、一方向へのずれよりも、一つの平面内で一方向に垂直な方向のずれの方が大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の集光レンズが、互いの光軸を平行にして、一つの平面を形成するように一方向に並べられたレンズアレイと、
前記集光レンズから出射される光を受光する複数の受光素子を有する受光素子アレイと、を備え、
前記受光素子アレイは、
前記集光レンズからの光が入射され、透過する半導体基板と、
前記半導体基板を透過した光を受光し、電気信号に変換する受光部と、を有し、
前記複数の集光レンズの光軸が、それぞれ対応する前記受光部の中心からのずれは、前記一方向へのずれよりも、前記一つの平面内で前記一方向に垂直な方向のずれの方が大きい、ことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光受信モジュールであって、
前記集光レンズから集光される光の焦点は、前記受光部よりも前記集光レンズ側に位置している、ことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光受信モジュールであって、
前記半導体基板の前記入射側に、前記集光レンズからの光を更に前記受光部に向けて集光するレンズ面が形成されており、
前記レンズ面で集光される光の焦点は、前記半導体基板内である、ことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光受信モジュールであって、
入射した光を相互に波長が異なる複数の光に分波し、前記複数の集光レンズに出射させる光分波回路をさらに備える、ことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光受信モジュールであって、
前記レンズアレイ及び前記受光素子アレイが配置される板と、
前記板と前記レンズアレイとの間に配置される支持基板と、を更に備え、
前記レンズアレイの前記一方向に垂直な方向のずれは、前記板から離れる方向のずれである、ことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光受信モジュールであって、
前記一方向のずれは、0〜10μmの範囲であり、
前記一方向に垂直な方向のずれは、8〜25μmの範囲である、ことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項7】
複数の集光レンズが、互いの光軸を平行にして、一つの平面を形成するように一方向に並べられたレンズアレイと、
前記集光レンズに入射させる光を出射する複数の発光素子からなる発光素子アレイと、を備え、
前記複数の集光レンズの光軸が、それぞれ対応する前記発光素子の中心からのずれは、前記一方向へのずれよりも、前記一つの平面内で前記一方向に垂直な方向のずれの方が大きい、ことを特徴とする光送信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信モジュール及び光送信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光通信などに用いられる光受信モジュール及び光送信モジュールは、受光部や発光部の他、光ファイバからの光を受光部に導くための、又は送信部からの光を光ファイバに光を導くための各種レンズを備えている。特許文献1には、このような光受信モジュール及び光送信モジュールのうち、光受信モジュールである半導体受光装置の構成が開示されている。
【0003】
また、光受信モジュール及び光送信モジュールにおいては、光反射減衰量(ORL:Optical Return Loss)と呼ばれる反射戻り光による損失があり、この損失の抑制に関し、特許文献2は、集光レンズに対して受光部面を光線に対して斜めに配置することについて開示し、特許文献3及び4は、集光レンズに対して受光部の軸をずらす配置について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−224101号公報
【特許文献2】特開平10−268164号公報
【特許文献3】実公昭62−006707号公報
【特許文献4】特開2013−200550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のチャネルを備えた光受信モジュール及び光送信モジュールにおいては、それぞれ光の分波回路及び合波回路を有し、1本の光ファイバからの光を分波又は複数の波長領域の光を1本の光ファイバに入射させるように合波している。このため、分波回路と受光部との間、又は合波回路と発光部との間には、チャネルの数に対応する集光レンズを有するレンズアレイを備えている。このようなレンズアレイは、一体として形成され、又は1つずつ形成されたものを一体化させて用いられることが多い。一方で、このようなレンズアレイの集光レンズには、それぞれ軸ずれ及び角度ずれが発生しやすいことから、これらを高い光利用効率の状態で配置することは難しい。また、それぞれのチャネルにおいて上述の光反射減衰量を抑えたいという要請もある。
【0006】
このような軸ずれ及び角度ずれの調整が不十分である場合には、所望の強度で光を伝送することができずに、信号の伝達に不具合を生じる恐れがあり、特に、光受信モジュールにおいては、分波されたチャネルとは異なるチャネルの受光部に受光させてしまう光クロストークを発生させてしまう恐れもある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてされたものであり、複数のチャネルを有する光受信モジュール又は光送信モジュールにおいて、より伝送効率の高い光受信モジュール又は光送信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光受信モジュールは、複数の集光レンズが、互いの光軸を平行にして、一つの平面を形成するように一方向に並べられたレンズアレイと、前記集光レンズから出射される光を受光する複数の受光素子を有する受光素子アレイと、を備え、前記受光素子アレイは、前記集光レンズからの光が入射され、透過する半導体基板と、前記半導体基板を透過した光を受光し、電気信号に変換する受光部と、を有し、前記複数の集光レンズの光軸が、それぞれ対応する前記受光部の中心からのずれは、前記一方向へのずれよりも、前記一つの平面内で前記一方向に垂直な方向のずれの方が大きい、ことを特徴とする光受信モジュールである。
【0009】
また、本発明の光受信モジュールにおいて、前記集光レンズから集光される光の焦点は、前記受光部よりも前記集光レンズ側に位置していてもよい。また、この場合には、前記レンズ面で集光される光の焦点は、前記半導体基板内であってもよく、更にこの場合には、前記半導体基板の前記入射側に、前記集光レンズからの光を更に前記受光部に向けて集光するレンズ面が形成されていることとしてもよい。
【0010】
また、本発明の光受信モジュールは、入射した光を相互に波長が異なる複数の光に分波し、前記複数の集光レンズに出射させる光分波回路をさらに備えていてもよい。
【0011】
また、本発明の光受信モジュールは、前記レンズアレイ及び前記受光素子アレイが配置される板と、前記板と前記レンズアレイとの間に配置される支持基板と、を更に備え、前記レンズアレイの前記一方向に垂直な方向のずれは、前記板から離れる方向のずれであってもよい。
【0012】
また、本発明の光受信モジュールは、前記一方向のずれは、0〜10μmの範囲であり、前記一方向に垂直な方向のずれは、8〜25μmの範囲である、こととしてもよい。
【0013】
本発明の光送信モジュールは、複数の集光レンズが、互いの光軸を平行にして、一つの平面を形成するように一方向に並べられたレンズアレイと、前記集光レンズに入射させる光を出射する複数の発光素子からなる発光素子アレイと、を備え、前記複数の集光レンズの光軸が、それぞれ対応する前記発光素子の中心からのずれは、前記一方向へのずれよりも、前記一つの平面内で前記一方向に垂直な方向のずれの方が大きい、ことを特徴とする光送信モジュールである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のチャネルを有する光受信モジュール又は光送信モジュールにおいて、より伝送効率の高い光受信モジュール又は光送信モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の光受信モジュールの一構成例を概略的に表す図である。
【
図2】
図1の光受信モジュールの光分波回路、レンズアレイ及び受光素子アレイの部分についての概略的に示す平面図である。
【
図3】受光素子アレイの受光素子について説明するための図である。
【
図4】
図1で示された集光レンズと受光素子との距離Lに対する、受光部での受光する光のスポット径Rとの関係を説明するためのグラフである。
【
図5A】
図4の距離Lの範囲Aに対応する焦点Fの位置を概略的に示す図である。
【
図5B】
図4の距離Lの範囲Bに対応する焦点Fの位置を概略的に示す図である。
【
図5C】
図4の距離Lの範囲Cに対応する焦点Fの位置を概略的に示す図である。
【
図5D】
図4の距離Lの範囲Dに対応する焦点Fの位置を概略的に示す図である。
【
図5E】
図4の距離Lの範囲Eに対応する焦点Fの位置を概略的に示す図である。
【
図6A】
図4の距離Lの範囲Aに対応し、集光レンズの中心軸と受光部の中心軸とのオフセットに対する、受光効率及び反射戻り光の損失についてそれぞれ示すグラフである。
【
図6B】
図4の距離Lの範囲Bに対応し、集光レンズの中心軸と受光部の中心軸とのオフセットに対する、受光効率及び反射戻り光の損失についてそれぞれ示すグラフである。
【
図6C】
図4の距離Lの範囲Cに対応し、集光レンズの中心軸と受光部の中心軸とのオフセットに対する、受光効率及び反射戻り光の損失についてそれぞれ示すグラフである。
【
図6D】
図4の距離Lの範囲Dに対応し、集光レンズの中心軸と受光部の中心軸とのオフセットに対する、受光効率及び反射戻り光の損失についてそれぞれ示すグラフである。
【
図6E】
図4の距離Lの範囲Eに対応し、集光レンズの中心軸と受光部の中心軸とのオフセットに対する、受光効率及び反射戻り光の損失についてそれぞれ示すグラフである。
【
図7】上述の実施形態の第1変形例について示す図である。
【
図8】上述の実施形態の第1変形例について示す図である。
【
図9】上述の実施形態の第1変形例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の受光モジュールの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光受信モジュールの一構成例を概略的に表す図である。この図に示される光受信モジュール100は、例えば、光通信などに用いられる光受信モジュールである。光受信モジュール100は、箱状の筐体101を備えており、筐体101の内部には支持基板103が配置されている。支持基板103には、4チャネルの光に分波する光分波回路170と、分波された光がそれぞれ入射されるレンズアレイ140と、受光した光を電気信号に変換する受光素子アレイ150と、受光素子アレイ150からボンディングワイヤ104を介して受信した電気信号を処理する回路基板102と、が取り付けられている。また、筐体101の内部にはコリメートレンズ108が配置されている。光ファイバ109から筐体101の内部に入射する光は、コリメートレンズ108によって平行光に変換され、光分波回路170、レンズアレイ140を経て、受光素子アレイ150により受光される。
【0017】
図2は、
図1の光受信モジュール100の光分波回路170、レンズアレイ140及び受光素子アレイ150の部分についての概略的に示す平面図である。コリメートレンズ108によって平行光に変換された光は、光分波回路170に入射する。入射する信号光は、例えば4つの波長領域にそれぞれ信号が重畳されており、光分波回路170に入射した光は、これらの4つの波長領域の光に分波され、レンズアレイ140の4チャネル分の集光レンズ40のそれぞれに出射される。ここで光分波回路170は、この図に示されるようなハーフミラー70を用いた空間光学型光分波回路であってもよいし、PLC(Planar Lightwave Circuit)型光分波回路その他の分波回路であってもよい。
【0018】
レンズアレイ140の4つの集光レンズ40は、互いの光軸を平行にして、一つの平面142を形成するように一方向に並べられている。4チャネル分の集光レンズ40は、光分波回路170からの光を受光素子アレイ150に含まれる4チャネル分のそれぞれの受光素子50に向けて集光させる。なお、本実施形態においては、
図1及び2に示されるように、この集光レンズ40が並ぶ一方向をX軸とし、平面142内でX軸に垂直な軸をY軸とし、支持基板103から離れる方向をプラスY方向としている。また、平面142に垂直な軸をZ軸とし、受光素子アレイ150に向う方向をプラスZ方向とている。なお、本実施形態においてはレンズアレイ140は一体的に形成されるものとしているが、一つの集光レンズ40がそれぞれ別個に形成されたものを一体的にした所謂ハイブリッドレンズアレイその他複数の集光レンズが互いの光軸を平行にして一方向に並べられたものであればよい。
【0019】
図3は、受光素子アレイ150の受光素子50について説明するための図である。受光素子50は、裏面入射型のフォトダイオードであり、半導体基板53の一方の面に受光部51が形成されており、受光部51において入射光を電気信号に変換する。本実施形態では、入射される光の波長が1.3μm帯もしくは1.55μm帯であり、半導体基板53は当該波長に対して十分な透過特性を有するInP基板とするが、これ以外の波長帯及び基板材料であってもよい。半導体基板53の他方の面には、レンズアレイ140に向かって突出した球面状の受光素子レンズ55が形成されている。例えば、受光素子レンズ55は、半導体基板53を選択的にエッチングすることによって形成される。これに限られず、例えば、半導体基板53上にレンズを別途形成してもよい。レンズアレイ140からの光は、受光素子レンズ55から半導体基板53の内側へ入射し、受光素子レンズ55によって受光部51に向けて更に集光される。しかしながら、受光素子50は、受光素子レンズ55を有さないものであってもよいし、半導体基板53の裏面に別途レンズを設けたものであってもよい。
【0020】
なお、本明細書において「受光素子レンズ55がレンズアレイ140からの光を受光部51に向けて集光する」とは、受光素子レンズ55から受光部51までの間の光の方向が、レンズアレイ140から受光素子レンズ55までの間の光の方向よりも集光レンズ40の中心軸の方向に近づいていればよく(但し、当該中心軸上の光を除く。)、受光部51上に焦点Fが位置する場合に限定されない。
【0021】
また、ここでは「焦点」という表現で光の集光具合を説明したが、光線が最も集光するポイントである「ビームウェスト」もほぼ同義であり、「焦点の位置」ではなく「ビームウェストの位置」として考えても、本願発明の思想は変わらない。
図1に戻り、レンズアレイ140は、支持基板103に対して台座105を介して接着剤等の固定剤106により固定されるが、受光部51における光反射減衰量を抑えるため、受光部51の中心よりも上方、つまりプラスY方向に集光レンズ40の中心をずらして配置している。この配置によって、集光レンズの出射光線は、受光部に対して斜めに入射し、受光部面での反射は、受光部への入射光線とは異なる方向に反射する。これにより光分波回路170から出射された光は、受光素子アレイ150のそれぞれの受光素子50に入射するが、受光部51の中心軸とずらしているため、受光部51の表面における光反射減衰量を抑えることができる。ここで、例えば
図2においてX方向にレンズアレイ140を移動させて、各集光レンズ40の中心をずらすことによっても、光反射減衰量を抑えることができる。しかしながら、X方向にずらした場合には、ミラーまたは光フィルタ70の端面等で反射が発生し、反射光が他チャンネルの受光部51で受光されてしまう等の光クロストークの原因となる恐れがある。したがって、本実施形態においては、受光部51の中心軸からのY方向のずれがX方向のずれよりも大きくなるように、集光レンズ40を配置し、光反射減衰量を抑えている。これにより、光クロストークの発生による信号の劣化を抑えると共に、光反射による減衰量を抑えることができる。
【0022】
ところで、受光部51上に焦点Fが位置する場合が、受光トレランスが最も広い状態である。ただし、受光面が照射される光が点に近い状態であるため、空間電荷効果により高周波特性が低下する恐れがある。空間電荷効果とは、受光部51の空乏層内部で局所的に高密度に電荷(電子正孔対)が発生することにより、外部バイアス電圧によって空乏層内部に与えられる本来の電界とは逆向きの内部電界が発生し、本来の電界強度を打ち消してしまうため、高周波特性が低下する現象である。
【0023】
図4は、
図1で示された集光レンズ40と受光素子50との距離Lに対する、受光部51での受光する光のスポット径Rとの関係を説明するためのグラフである。
図5A〜5Eは、
図4の距離Lの範囲A〜Eにそれぞれ対応する焦点Fの位置を概略的に示す図である。
図6A〜6Eは、
図4の距離Lの範囲A〜Eにそれぞれ対応し、集光レンズ40の中心軸と受光部51の中心軸とのオフセットに対する、受光効率及び反射戻り光の損失についてそれぞれ示すグラフである。ここで「反射戻り光の損失」とは、入射光に対する反射戻り光の比を対数で表したものであり、この値が大きい方が、光反射減衰量を低下させることができる値である。なお、
図4において、距離Lは、受光素子レンズ55の表面に焦点Fがある場合を基準(0)としており、また、受光可能なスポット径Rは、受光部51の半径を1とした場合に、例えばビームウェストのスポット径おおよそ0.18〜1.00の範囲であり、グラフにおいて最小値MIN〜最大値MAXで示されている。ここで、最小値MINは、この値に限られず、空間電荷効果の問題を回避するように定められる。
【0024】
具体的な例として、所望の範囲の最大値MAXのスポット径Rは、例えば、一般的な25Gb/sのフォトダイオードの有効受光半径を8.0μmとすると、この有効受光半径と同程度となる。また、所望の範囲の最小値MINのスポット径Rは、例えば、空間電荷効果の問題が発生しないように定められ、フォトダイオードの性能にもよるが、おおよそ2〜3μm程度となる。
【0025】
図4における距離Lの範囲Bは、受光部51でのスポット径Rが所望の範囲の最小値MINを下回る場合を示している。この場合、
図5Bに示されるように、焦点Fは受光部51表面に位置するか、若しくはその近傍に位置している。受光部51表面でのスポット径Rが所望の範囲の最小値MINを下回る場合、上述したように空間電荷効果により高周波特性が低下する恐れがある。
【0026】
図4における距離Lの範囲Aは、
図5Aに示されるように、焦点Fが受光部51の集光レンズ40側とは反対側に位置する場合である。この場合にはスポット径Rは、最小値MIN以上となるが、受光素子レンズ55の面積を広く使用する必要があるため、場合によっては受光素子レンズ55より広い範囲に光が照射される恐れがある。また、受光素子レンズ55の範囲に収まる場合であっても、特にエッチング等により形成した受光素子レンズ55は、中心から離れるほど理想的な曲面から外れやすく、受光素子レンズ55の外側を使用することは結果として受光部51に照射されない光を増加させる恐れがある。したがって、受光素子レンズ55の広い範囲を利用することとなる距離Lの範囲Aは使用しない方がよいと考えられる。
【0027】
図4における距離Lの位置Dは、
図5Dに示されるように、焦点Fが受光素子レンズ55の表面上に位置ものであるが、この場合、受光素子レンズ55の表面で反射して、受光感度が劣化する恐れがあり、使用しない方がよいと考えられる。また、
図6Dに示されるように、
図6A〜6Cのグラフと比較して、受光効率が良好な範囲は狭く、反射戻り光の影響を低減させるために、集光レンズ40の中心軸を受光部の中心からオフセットしたとしても、受光効率の低下に繋がってしまう。
【0028】
図4における距離Lの範囲Eは、
図5Eに示されるように、焦点Fは集光レンズ40と受光素子50との間に位置している。この場合、集光レンズ40からの光は、集光レンズ40と受光素子レンズ55の間で焦点Fを結んだ後、次第に広がっていく状態で受光素子レンズ55に入射する。受光素子レンズ55から半導体基板53の内側に入射した光は、入射前よりも広がり率が抑えられて受光部51に至る。したがって、受光素子50に入射する光は、受光素子レンズ55により集光し切れずに、受光部51から外れる光が多くなる確率が高くなる。また、
図6Eに示されるように、受光部の中心に対する集光レンズ40の中心軸のオフセットがない場合であっても受光効率が低く、距離Lの範囲Eについても使用には適さないものと考えられる。
【0029】
図4における距離Lの範囲Cは、
図5Cに示されるように、焦点Fは半導体基板53の内側に位置している。この場合、集光レンズ40からの光は、次第に狭まっていく状態で受光素子レンズ55に入射する。受光素子レンズ55に入射した光は、半導体基板53内で焦点Fを結んだ後、次第に広がりながら受光部51に至る。スポット径Rは、最小値MINから最大値MAXの範囲であり、
図6Cを参照すると、比較的大きいオフセットに対しても高い受光効率を維持しており、また、反射戻り光の影響は小さいオフセット範囲に限られている。したがってオフセットの許容範囲が広いため、反射戻り光の影響を回避しつつ、高い受光効率を得ることができる。
【0030】
以上述べたように、焦点Fが半導体基板53の内側である
図4の距離Lを範囲Cとすることにより、高い受光光率の範囲が広く、反射戻り光の影響を受けない範囲で光軸のオフセットを定めることができる。更に、
図1で示したようにX方向よりもY方向に大きく集光レンズ40の中心軸をずらした際にも、高い受光光率を維持しつつ、光反射減衰量を抑えることができる。また、オフセット量の許容範囲が広いため、搭載位置にばらつきが生じた場合であっても、受光効率の高い範囲に収めることができる。したがって、より伝送効率の高い光受信モジュールとすることができる。
【0031】
焦点Fが半導体基板53の内側に位置する距離Lの範囲Cは、レンズアレイ140と受光素子アレイ150の距離L、及び半導体基板53の厚み(受光素子レンズ55と受光部51との距離)、集光レンズ40及び受光素子レンズ55の光学パラメータにより決定される。
【0032】
図1で説明したように、レンズアレイ140を支持基板103に固定する際には台座105を介して固定剤106が用いられるが、固定剤106の厚さは、受光部51におけるトレランス範囲、集光レンズ40の製造公差、固定剤106の製造公差を加味して決定する必要がある。
図5Cに示されるように、焦点Fが半導体基板53の内側の位置となるように距離Lを
図4の範囲Cとして定めることにより、トレランス範囲を大きくすることができるため、オフセット量の許容範囲も広くなる。固定剤106として接着剤を使用する場合には、Y方向のうち、支持基板103から離れる方向に移動させつつ位置決めを行うと、接着剤の量を少なくすることができ、また、固定剤106の厚さを小さくすることができる。したがって、受光部51の中心軸からの集光レンズ40の中心軸のずれはY軸に関して言うとプラスY方向であることが望ましい。また、発明者らの研究によれば、Y方向のずれは、8〜25μmであれば35dB以上の光反射減衰量と0.85以上の受光効率が確保可能であり、また接着剤厚が少なくて済むため、接着剤の温度による膨張収縮量や長期信頼性による変動量が1μmと無視できるレベルで集光レンズを固定できるという結果となった。なおこの場合にはX方向のずれは、0〜10μmの範囲であれば、ほとんど結合効率が低下することなく実装することができる。本事例は、結合効率0.85、反射減衰量35dB以上を確保できる範囲を規定したが、本光受信モジュールの適用する光通信システムによっては、必要な結合効率と反射減衰量の規格が異なるため、X方向、Y方向のずれに対する許容範囲を変えてもよい。なお、台座105とレンズアレイ140との間の固定剤106は、スペーサ等であっても構わないが、製造時に微調整を行いつつ固定できる例えばUV硬化性の接着剤等が好ましい。また台座105は高さ調整のためであるため、台座105を用いないこととしてもよいし、支持基板103において予め高さが調整された形状としておいてもよい。
【0033】
また、
図2に示されるように、レンズアレイ140と受光素子アレイ150とが設けられるため、例えば距離Z1及びZ2が異なる等これらが互いに平行となるように配置できなかった場合には、一方の端の受光素子50では受光効率が高くても、他方の端の受光素子50では受光効率が低くなるおそれがある。しかしながら、上述のように距離Lを
図4の範囲Cとしているため、オフセット量の許容範囲が広く、配置の誤差があったとしても、高い受光効率で信号を受信できる。
【0034】
図7は、上述の実施形態の第1変形例について示す図である。上述の実施形態と異なる点は、オフセットが、受光部51の中心軸より、集光レンズ40の中心軸がマイナスY方向つまり支持基板103側にずれている点であり、その他の点は同様である。このように構成した場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
図8は、上述の実施形態の第2変形例について示す図である。この例では光分波回路170を出射した信号光は、ミラー210に反射して支持基板103方向に向けられた後、レンズアレイ140に入射し、受光素子アレイ150で受光される。この場合にも、レンズアレイ140は、それぞれの集光レンズ40の光軸を平行にして、一つの平面142を形成するように一方向に並べられて形成されており、集光レンズ40が並ぶ方向であるX軸、平面142内でX軸と垂直な方向であるY軸、平面142に垂直なZ軸は、
図8の通りに定められる。従って、上述の実施形態と同様に、受光素子50の中心から集光レンズ40の中心軸のずれは、X軸方向よりもY軸方向のずれの方が大きくなるように定められることにより、光クロストークの発生による信号の劣化を抑えると共に、光反射による減衰量を抑えることができる。また、集光レンズ40と受光素子50との距離Lを、受光素子50の半導体基板の内側に焦点Fが配置されるように定められることにより、X軸方向よりもY軸方向に大きく集光レンズ40の中心軸をずらした際にも、高い受光光率を維持しつつ、光反射減衰量を抑えることができる。また、オフセット量の許容範囲が広いため、搭載位置にばらつきが生じた場合であっても、受光効率の高い範囲に収めることができる。したがって、より伝送効率の高い光受信モジュールとすることができる。
【0036】
図9は、上述の実施形態の第3変形例について示す図である。上述の実施形態では光受信モジュールとしていたが、本発明を光送信モジュールに適用した例について示す。この図に示される光送信モジュール300は、箱状の筐体301を備えており、筐体301の内部には支持基板303が配置されている。支持基板303には、電気信号を処理する回路基板302と、電気信号を光に変換して発光する発光素子を4チャネル有する発光素子アレイ350と、4チャネルの光を合波する光合波回路370と、が取り付けられている。また、筐体301の内部にはコリメートレンズ306が配置されている。発光素子アレイ350で発光した光は、レンズアレイ340、光合波回路370を経て、コリメートレンズ306によって平行光に変換され、光ファイバ109により筐体301の外部へ出射される。
【0037】
この場合においても、レンズアレイ340は、それぞれの集光レンズの光軸を平行にして、一つの平面342を形成するように一方向に並べられて形成されており、集光レンズが並ぶ方向であるX軸、当該平面342内でX軸と垂直な方向であるY軸、当該平面342に垂直なZ軸は、
図9の通りに定められる。従って、発光素子アレイ350の発光素子の中心からレンズアレイ340の集光レンズの中心軸のずれは、X軸方向よりもY軸方向のずれの方が大きくなるようにずらすことにより、光クロストークの発生による信号の劣化を抑えると共に、光反射による減衰量を抑えることができ、より伝送効率の高い光送信モジュールとすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。例えば、受光素子アレイ150は、同一の半導体基板上に複数の受光部51が集積されたものであっても、複数の受光素子50が同一のサブマウントに搭載されたものであっても構わない。
【0039】
また、受光素子50が半導体基板上に受光部51が形成された裏面入射型のフォトダイオードではなく、入射する光が十分に透過できる半導体基板にフォトダイオードが搭載され、フォトダイオードが搭載されていない面側にレンズ面が配置されても構わない。
【符号の説明】
【0040】
40 集光レンズ、50 受光素子、51 受光部、53 半導体基板、55 受光素子レンズ、70 ハーフミラー、100 光受信モジュール、101 筐体、102 回路基板、103 支持基板、104 ボンディングワイヤ、105 台座、106 固定剤、108 コリメートレンズ、109 光ファイバ、140 レンズアレイ、142 平面、150 受光素子アレイ、170 光分波回路、210 ミラー、300 光送信モジュール、301 筐体、302 回路基板、303 支持基板、306 コリメートレンズ、340 レンズアレイ、342 平面、350 発光素子アレイ、370 光合波回路。