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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-96953(P2015-96953A)
(43)【公開日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】光学撮像レンズセット
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20150424BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20150424BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-231717(P2014-231717)
(22)【出願日】2014年11月14日
(31)【優先権主張番号】201310578911.8
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】504337659
【氏名又は名称】玉晶光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】張仲志
(72)【発明者】
【氏名】謝宏健
(72)【発明者】
【氏名】汪凱倫
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087PA05
2H087PA17
2H087PB05
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA34
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】撮影機器の全長を低減しながらも、良好な光学性能を維持する光学撮像レンズセットを提供する。
【解決手段】光学撮像レンズセットは、正の屈折力および物体側凸面を有する第1のレンズ10と、負の屈折力、およびその周辺部近傍に凹部を有する像側の面を持つ第2のレンズ素子20と、その周辺部近傍に凹部を有する物体側の面を持つ第3のレンズ素子30と、正の屈折力、物体側凹面および像側凸面を有する第4のレンズ素子40と、光軸近傍に凸部を有する物体側の面、光軸近傍に凹部を有する像側の面、および、第5のレンズ素子周辺部近傍に凸部を有する第5のレンズ素子50とを備えること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学撮像レンズセットであって、
光軸に沿って物体側から像側の方へ順に、開口絞りと、第1のレンズ素子と、第2のレンズ素子と、第3のレンズ素子と、第4のレンズ素子と、第5のレンズ素子と、
を備え、
当該光学撮像レンズセットのうち前記第1乃至第5のレンズ素子の各々のみが屈折力を有するとともに、当該第1乃至第5のレンズ素子の各々は物体側に向いた物体側の面と像側に向いた像側の面とを有し、
前記第1のレンズ素子は、前記屈折力が正であり、凸面をなす前記物体側の面を有し、
前記第2のレンズ素子は、前記屈折力が負であり、周辺部近傍に凹部をなす前記像側の面を有し、
前記第3のレンズ素子は、周辺部近傍に凹部をなす前記物体側の面を有し、
前記第4のレンズ素子は、前記屈折力が正であり、凹面をなす前記物体側の面と凸面をなす前記像側の面とを有し、
前記第5のレンズ素子は、前記光軸近傍に凸部をなす前記物体側の面と、前記光軸近傍に凹部をなすとともに周辺部近傍に凸部をなす前記像側の面とを有し、
前記第2のレンズ素子と前記第3のレンズ素子との間の前記光軸に沿った空隙を示すG23と、前記第3のレンズ素子と前記第4のレンズ素子との間の前記光軸に沿った空隙を示すG34と、前記第4のレンズ素子と前記第5のレンズ素子との間の前記光軸に沿った空隙を示すG45とは、関係
1.8≦(G34+G45)/G23
を満たしている
ことを特徴とする光学撮像レンズセット。
【請求項2】
前記第1のレンズ素子と前記第2のレンズ素子との間の前記光軸に沿った空隙を示すG12、前記G23、前記G34、および前記G45に基づく、前記第1のレンズ素子から前記第5のレンズ素子までの隣接するレンズ素子間の前記光軸に沿った4つの空隙の総和を示すGaaと、前記G34とは、関係
2.0≦Gaa/G34
を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項3】
前記第1のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第1のレンズ素子厚を示すTと、前記G45とは、関係
/G45≦3.5
を満たしていることを特徴とする請求項2に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項4】
前記第5のレンズ素子の前記像側の面から像面までの前記光軸に沿った距離を示すBFLと、前記Gaaとは、関係
aa/BFL≦1.1
を満たしていることを特徴とする請求項3に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項5】
前記G34と、前記G45とは、関係
34/G45≦1.7
をさらに満たしていることを特徴とする請求項4に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項6】
前記T、前記第2のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第2のレンズ素子厚を示すT、前記第3のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第3のレンズ素子厚を示すT、前記第4のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第4のレンズ素子厚を示すT、および前記第5のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第5のレンズ素子厚を示すTに基づく、当該光学撮像レンズセットにおける全てのレンズ素子の前記光軸に沿った全厚を示すTallと、前記BFLとは、関係
all/BFL≦1.7
を満たしていることを特徴とする請求項5に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項7】
前記第5のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第5のレンズ素子厚を示すTと、前記G23とは、関係
/G23≦1.8
を満たしていることを特徴とする請求項2に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項8】
前記第1のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第1のレンズ素子厚を示すT、前記第2のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第2のレンズ素子厚を示すT、前記第3のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第3のレンズ素子厚を示すT、前記第4のレンズ素子が有する前記光軸に沿った第4のレンズ素子厚を示すT、および前記Tに基づく、当該光学撮像レンズセットにおける全てのレンズ素子の前記光軸に沿った全厚を示すTallと、前記Gaaとは、関係
1.6≦Tall/Gaa
を満たしていることを特徴とする請求項7に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項9】
前記Tと、前記Tとは、関係
1.8≦T/T
を満たしていることを特徴とする請求項8に記載の光学撮像レンズセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、光学撮像レンズセットおよびその光学撮像レンズセットを備えた電子機器に関する。具体的には、本発明は、5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットおよびその5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機およびデジタルカメラの普及によって、(光学撮像レンズセット、ホルダおよびセンサなどを含む)撮影モジュールの開発が進んでいる。携帯電話機およびデジタルカメラは軽薄化されてきているため、撮影モジュールの軽薄短小化の要求がますます高まっている。
電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal−Oxide Semiconductor)技術が進歩するにつれて、撮影モジュールの小型化も可能であるが、これらの撮影モジュールは依然良好な撮像品質を維持する必要がある。5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットが開発されている。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4にはそれぞれ、5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットが開示されている。ただし、特許文献1および特許文献2において、第1のレンズ素子および第2のレンズ素子はそれぞれ、負の屈折力および正の屈折力を有する。特許文献3および特許文献4において、第1のレンズ素子および第2のレンズ素子は両方とも、負の屈折力を有する。この構成では、良好な光学性能を実現できない。その上、それら4つの特許文献では、光学撮像レンズセットの全長は10〜18mmであり、光学撮像レンズセットのサイズとしては大きすぎて、消費者の電子製品の仕様要件を満足できない。
【0004】
また、特許文献5、特許文献6および特許文献7にはそれぞれ、5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットがさらに開示されている。それらの特許文献では、第1のレンズ素子および第2のレンズ素子はそれぞれ、正の屈折力および負の屈折力を有しても(より望ましい構成である)、第3のレンズ素子から第5のレンズ素子までの相対的構成では収差を改善できない上に、全長を短くできない。従って、像品質を前提に考慮すると、これらの光学撮像レンズセットには、依然効率的な短縮は不可能である。例えば、光学撮像レンズの一部は依然約6mmあり、これにはさらなる改善が必要である。
【0005】
従って、どのようにして、撮影機器の全長を低減しながらも、良好な光学性能を維持するかが、重要な研究目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7480105号明細書
【特許文献2】米国特許第7639432号明細書
【特許文献3】米国特許第7486449号明細書
【特許文献4】米国特許第7684127号明細書
【特許文献5】米国特許第8233224号明細書
【特許文献6】米国特許第8363337号明細書
【特許文献7】米国特許第8000030号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明は、軽量、低製造コスト、短縮された長さ、高解像度、高い像品質の光学撮像レンズセットを提案することが可能である。本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットは、光軸に沿って物体側から像側へ順に、開口絞りと、第1のレンズ素子と、第2のレンズ素子と、第3のレンズ素子と、第4のレンズ素子と、第5のレンズ素子とを備える。
【0008】
本発明は、光学撮像レンズセットを提供する。当該光学撮像レンズセットは、正の屈折力および物体側凸面を有する第1のレンズと、第2のレンズ素子であって、負の屈折力、およびその周辺部近傍に凹部を有する像側の面を持つ第2のレンズ素子と、第3のレンズ素子であって、その周辺部近傍に凹部を有する物体側の面を持つ第3のレンズ素子と、正の屈折力、物体側凹面および像側凸面を有する第4のレンズ素子と、第5のレンズ素子であって、光軸近傍に凸部を有する物体側の面、光軸近傍に凹部を有する像側の面、および、当該第5のレンズ素子周辺部近傍に凸部を有する第5のレンズ素子とを、光軸に沿って物体側から像側の方へ順に備える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットにおいて、光軸に沿った空隙G12が第1のレンズ素子と第2のレンズ素子との間に配され、光軸に沿った空隙G23が第2のレンズ素子と第3のレンズ素子との間に配され、光軸に沿った空隙G34が第3のレンズ素子と第4のレンズ素子との間に配され、光軸に沿った空隙G45が第4のレンズ素子と第5のレンズ素子との間に配されており、第1のレンズ素子から第5のレンズ素子までの隣接するレンズ素子間の光軸に沿った4つの空隙の総和は、Gaa=G12+G23+G34+G45である。
【0010】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットにおいて、第1のレンズ素子は、光軸に沿った第1のレンズ素子厚Tを有し、第2のレンズ素子は、光軸に沿った第2のレンズ素子厚Tを有し、第3のレンズ素子は、光軸に沿った第3のレンズ素子厚Tを有し、第4のレンズ素子は、光軸に沿った第4のレンズ素子厚Tを有し、第5のレンズ素子は、光軸に沿った第5のレンズ素子厚Tを有し、光学撮像レンズセットにおける全てのレンズ素子の光軸に沿った全厚は、Tall=T+T+T+T+Tである。さらに、第5のレンズ素子の像側の面から光軸に沿った像面までの距離は、BFL(背面焦点距離)である。
【0011】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係1.8≦(G34+G45)/G23が満たされる。
【0012】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係2.0≦Gaa/G34が満たされる。
【0013】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係T/G45≦3.5が満たされる。
【0014】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係Gaa/BFL≦1.1が満たされる。
【0015】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係G34/G45≦1.7が満たされる。
【0016】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係Tall/BFL≦1.7が満たされる。
【0017】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係T/G23≦1.8が満たされる。
【0018】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係1.6≦Tall/Gaaが満たされる。
【0019】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係1.8≦T/Tが満たされる。
【0020】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係Gaa/G23≦3.8が満たされる。
【0021】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係(Tall+Gaa)/BFL≦2.6が満たされる。
【0022】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係T/G45≦2.8が満たされる。
【0023】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係(T+T)/T≦1.9が満たされる。
【0024】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、関係3.7≦Gaa/Tが満たされる。
【0025】
本発明は、上記のような光学撮像レンズセットを含む電子機器も提案する。電子機器は、ケースと、ケース内に配置された撮像モジュールとを含む。撮像モジュールは、上記のような光学撮像レンズセットと、光学撮像レンズセットを取り付けるための鏡筒と、鏡筒を取り付けるためのモジュール収容ユニットと、モジュール収容ユニットを取り付けるための基板と、基板上に、かつ、光学撮像レンズセットの像側に配置される撮像センサと、を有する。
【0026】
本発明のこれらおよび他の目的は、種々の図表および図面に示す好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を読むことで、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の光学撮像レンズセットの第1の例を示す図である。
図2】(A)は、第1の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第1の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第1の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第1の例の歪曲収差を示す図である。
図3】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第2の例を示す図である。
図4】(A)は、第2の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第2の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第2の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第2の例の歪曲収差を示す図である。
図5】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第3の例を示す図である。
図6】(A)は、第3の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第3の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第3の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第3の例の歪曲収差を示す図である。
図7】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第4の例を示す図である。
図8】(A)は、第4の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第4の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第4の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第4の例の歪曲収差を示す図である。
図9】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第5の例を示す図である。
図10】(A)は、第5の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第5の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第5の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第5の例の歪曲収差を示す図である。
図11】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第6の例を示す図である。
図12】(A)は、第6の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第6の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第6の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第6の例の歪曲収差を示す図である。
図13】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第7の例を示す図である。
図14】(A)は、第7の例の像面における縦球面収差を示す図である。(B)は、第7の例のサジタル方向の非点収差を示す図である。(C)は、第7の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示す図である。(D)は、第7の例の歪曲収差を示す図である。
図15】本発明の光学撮像レンズ素子の典型例となる形状を示す図である。
図16】本発明の光学撮像レンズセットを備えた携帯型電子機器の第1の好ましい例を示す図である。
図17】本発明の光学撮像レンズセットを備えた携帯型電子機器の第2の好ましい例を示す図である。
図18】光学撮像レンズセットの第1の例の光学データを示す図である。
図19】第1の例の非球面データを示す図である。
図20】光学撮像レンズセットの第2の例の光学データを示す図である。
図21】第2の例の非球面データを示す図である。
図22】光学撮像レンズセットの第3の例の光学データを示す図である。
図23】第3の例の非球面データを示す図である。
図24】光学撮像レンズセットの第4の例の光学データを示す図である。
図25】第4の例の非球面データを示す図である。
図26】光学撮像レンズセットの第5の例の光学データを示す図である。
図27】第5の例の非球面データを示す図である。
図28】光学撮像レンズセットの第6の例の光学データを示す図である。
図29】第6の例の非球面データを示す図である。
図30】光学撮像レンズセットの第7の例の光学データを示す図である。
図31】第7の例の非球面データを示す図である。
図32】上記例におけるいくつかの重要な比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明について詳細に説明するに当たり、まず最初に留意されるべきことは、本発明において、類似の(必ずしも同一ではない)要素は、同一の参照符号として分類されるということである。本明細書全体において、
「ある特定のレンズ素子が、負/正の屈折力を有する」とは、そのレンズ素子の光軸近傍部分が負/正の屈折力を有することを意味する。
「ある特定のレンズ素子の物体側/像側の面が、凹/凸部を有する」とは、その領域に隣接する外側の領域と比較して、その部分が、光軸と平行な方向に、より多く窪んでいる/膨らんでいることを意味する。図15を例にとると、光軸は「I」であり、レンズ素子は、その光軸Iに対して対称である。レンズ素子の物体側は、領域Aに凸部を有し、領域Bに凹部を有し、領域Cに凸部を有する。なぜなら、領域Aは、領域Aに隣接する外側の領域(領域B)と比較して、光軸に平行な方向に、より膨らんでおり、領域Bは領域Cと比較して、より窪んでおり、同様に、領域Cは領域Eと比較して、より膨らんでいるからである。
「ある特定のレンズ素子の周縁部」とは、そのレンズ素子の光を通過させるための面の周縁領域、すなわち、同図における領域Cを指す。同図において、撮像光は、Lc(主光線)とLm(周辺光線)とを含んでいる。
「光軸近傍」とは、そのレンズ素子の光を通過させるための面の光軸領域、すなわち、図15における領域Aを指す。さらに、レンズ素子は、当該レンズ素子を光学撮像レンズセット内に取り付けるための拡張部Eを備えることが可能である。理想的には、光は拡張部を通過せず、また、拡張部の実際の構造および形状は、このように限定されることなく、他の様々な変形が可能である。図1、3、5、7、9、11および13では、分かりやすくするため、拡張部を示していない。
【0029】
図1に示すように、本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセット1は、(物体が配置される)物体側2から像側3へ光軸4に沿って順に、第1のレンズ素子10と、第2のレンズ素子20と、第3のレンズ素子30と、第4のレンズ素子40と、第5のレンズ素子50と、フィルタ60と、像面71と、を備える。
一般的に、第1のレンズ素子10、第2のレンズ素子20、第3のレンズ素子30、第4のレンズ素子40、第5のレンズ素子50は、透明プラスチック材料で構成することができ、それぞれ適切な屈折力を有するが、本発明はこれに限定されない。本発明の光学撮像レンズセット1では、屈折力を有するレンズ素子は5つのみである。光軸4は、光学撮像レンズセット1全体の光軸であり、各々のレンズ素子の光軸は、光学撮像レンズセット1の光軸と一致している。
【0030】
さらに、光学撮像レンズセット1は、適切な位置に配置された開口絞り(ape.stop)80を備える。図1では、開口絞り80は、第1のレンズ素子10の前面に配置されている。物体側2に位置する物体(図示せず)によって放射または反射された光が、本発明の光学撮像レンズセット1に入射すると、それは、開口絞り80、第1のレンズ素子10、第2のレンズ素子20、第3のレンズ素子30、第4のレンズ素子40、第5のレンズ素子50、およびフィルタ60を通過した後に、明瞭かつ鮮鋭な像を、像側3の像面71に形成する。
【0031】
本発明の実施形態において、オプションのフィルタ60は、種々の適切な機能のフィルタであってよく、例えば、フィルタ60は、第5のレンズ素子50と像面71との間に置かれる赤外線カットフィルタ(IRカットフィルタ)であってよい。
【0032】
本発明の光学撮像レンズセット1における各々のレンズ素子は、物体側2に向いた物体側の面と、像側3に向いた像側の面とを有する。また、本発明の光学撮像レンズセット1におけるそれぞれの物体側の面および像側の面は、光軸4から離れたその周縁部近傍の部分(周縁部分)と、光軸4に近い光軸近傍の部分(光軸部分)とを有する。
例えば、第1のレンズ素子10は、第1の物体側の面11と第1の像側の面12とを有し、第2のレンズ素子20は、第2の物体側の面21と第2の像側の面22とを有し、第3のレンズ素子30は、第3の物体側の面31と第3の像側の面32とを有し、第4のレンズ素子40は、第4の物体側の面41と第4の像側の面42とを有し、第5のレンズ素子50は、第5の物体側の面51と第5の像側の面52とを有する。
【0033】
さらに、本発明の光学撮像レンズセット1における各々のレンズ素子は、光軸4における中心厚を有する。例えば、第1のレンズ素子10は、第1のレンズ素子厚Tを有し、第2のレンズ素子20は、第2のレンズ素子厚Tを有し、第3のレンズ素子30は、第3のレンズ素子厚Tを有し、第4のレンズ素子40は、第4のレンズ素子厚Tを有し、第5のレンズ素子50は、第5のレンズ素子厚Tを有する。従って、光学撮像レンズセット1における全てのレンズ素子の光軸4に沿った全厚は、Tall=T+T+T+T+Tである。
【0034】
また、本発明の光学撮像レンズセット1において、2つの隣接するレンズ素子間には、光軸4に沿って空隙が設けられている。例えば、第1のレンズ素子10と第2のレンズ素子20との間に空隙G12が配され、第2のレンズ素子20と第3のレンズ素子30との間に空隙G23が配され、第3のレンズ素子30と第4のレンズ素子40との間に空隙G34が配され、第4のレンズ素子40と第5のレンズ素子50との間に空隙G45が配されている。従って、第1のレンズ素子10から第5のレンズ素子50までの隣接するレンズ素子間の光軸4に沿った4つの空隙の総和は、Gaa=G12+G23+G34+G45である。さらには、第5のレンズ素子の第5の像側の面52から光軸4に沿った像面71までの距離は、BFLである。
【0035】
第1の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第1の例を示す図1を参照する。第1の例の像面71における縦球面収差については、図2(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図2(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図2(C)を参照し、歪曲収差については、図2(D)を参照する。各例における球面収差のY軸は、1.0で表す「視野」である。各例における非点収差および歪曲収差のY軸は、「像高」を表す。像高は、3.0mmである。
【0036】
第1の例の光学撮像レンズセット1は、5つのレンズ素子10〜50を備え、それぞれはプラスチック材料で構成されており、屈折力を有する。光学撮像レンズセット1は、さらに、開口絞り80と、フィルタ60と、像面71とを備える。開口絞り80は、第1のレンズ素子10と物体側2との間に設けられる。フィルタ60は、不可避の赤外光が像面に達して撮像品質に悪影響を及ぼすことを防ぐための赤外線フィルタ(IRカットフィルタ)であってよい。
【0037】
第1のレンズ素子10は、正の屈折力を有する。物体側2に向いた第1の物体側の面11は凸面であり、像側3に向いた第1の像側の面12も、凸面である。第1のレンズ素子10の第1の物体側の面11と第1の像側の面12は、両方とも非球面である。
【0038】
第2のレンズ素子20は、負の屈折力を有する。物体側2に向いた第2の物体側の面21は、凹面である。像側3に向いた第2の像側の面22は、凹面であり、その周縁部近傍に凹部27を有する。第2のレンズ素子20の第2の物体側の面21と第2の像側の面22は、両方とも非球面である。
【0039】
第3のレンズ素子30は、正の屈折力と、物体側2に向いた第3の物体側の面31と、像側3に向いた第3の像側の面32とを有する。第3の物体側の面31は凹面であり、その周縁部近傍に凹部34を有する。第3の像側の面32は凸面である。第3のレンズ素子30の第3の物体側の面31および第3の像側の面32は、両方とも非球面である。
【0040】
第4のレンズ素子40は、正の屈折力を有する。物体側2に向いた第4の物体側の面41は凹面であり、像側3に向いた第4の像側の面42は凸面である。第4のレンズ素子40の第4の物体側の面41および第4の像側の面42は、両方とも非球面である。
【0041】
第5のレンズ素子50は、負の屈折力と、物体側2に向いた第5の物体側の面51と、像側3に向いた第5の像側の面52とを有する。第5の物体側の面51は、光軸近傍に凸部53を有するとともに、その周縁部近傍に凹部54を有する。第5の像側の面52は、光軸近傍に凹部56を有するとともに、その周縁部近傍に凸部57を有する。また、第5のレンズ素子50の第5の物体側の面51と第5の像側の面52は、両方とも非球面である。
フィルタ60は、赤外線カットフィルタであってよく、第5のレンズ素子50と像面71との間に配置される。
【0042】
本発明の光学撮像レンズセット1において、物体側の面11/21/31/41/51および像側の面12/22/32/42/52は、全て非球面である。これらの非球面係数は、以下の式によって定義される。
ここで、
Rは、レンズ素子面の曲率半径を表す。
Zは、非球面の深さ(光軸から距離Yにある非球面上の点と、非球面の光軸上の頂点における接平面との間の垂直距離)を表す。
Yは、非球面上の点から光軸までの垂直距離を表す。
Kは、円錐定数である。
2iは、2i次の非球面係数である。
【0043】
光学撮像レンズセット1の第1の例の光学データを図18に示しており、非球面データを図19に示している。光学撮像レンズセットの本例では、光学レンズ素子系全体のFナンバーはFnoであり、HFOVは、光学レンズ素子系全体の視野の半分である半視野を表し、また、曲率半径、厚さ、および焦点距離の単位は、ミリメートル(mm)である。光学撮像レンズセットの有効焦点距離は、EFLである。光学撮像レンズセットの長さ(第1のレンズ素子10の第1の物体側の面11から像面71までの距離)は、4.544mmである。像高は、3.0mmである。第1の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=1.804
aa/G34=2.754
/G45=3.394
/G23=1.796
aa/BFL=0.591
34/G45=1.608
all/BFL=1.546
all/Gaa=2.617
/T=2.263
aa/G23=3.063
(Tall+Gaa)/BFL=2.136
/G45=2.058
(T+T)/T=1.489
aa/T=4.081
【0044】
第2の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第2の例を示す図3を参照する。第2の例の像面71における縦球面収差については、図4(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図4(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図4(C)を参照し、歪曲収差については、図4(D)を参照する。
第2の例における部品は、第1の例における部品と類似しているが、この例における、曲率半径、屈折力、レンズ厚、レンズ焦点距離、非球面、または背面焦点距離などの光学データは、第1の例における光学データと異なる。光学撮像レンズセットの第2の例の光学データを図20に示しており、非球面データを図21に示している。光学撮像レンズセットの長さは、4.388mmである。像高は、3.0mmである。第2の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=2.056
aa/G34=3.211
/G45=2.031
/G23=1.746
aa/BFL=0.651
34/G45=1.020
all/BFL=1.548
all/Gaa=2.380
/T=2.296
aa/G23=3.334
(Tall+Gaa)/BFL=2.199
/G45=1.498
(T+T)/T=1.720
aa/T=4.233
【0045】
第3の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第3の例を示す図5を参照する。第3の例の像面71における縦球面収差については、図6(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図6(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図6(C)を参照し、歪曲収差については、図6(D)を参照する。
第3の例における部品は、第1の例における部品と類似しているが、この例における、曲率半径、屈折力、レンズ厚、レンズ焦点距離、非球面、または背面焦点距離などの光学データは、第1の例における光学データと異なっており、この実施形態において、第3のレンズ素子30の第3の像側の面32は、光軸近傍に凸部36、および、その周縁部近傍に凹部37を有し、第5のレンズ素子50の第5の物体側の面51は、光軸近傍に凸部53、その周縁部近傍に凸部54’、および、光軸と周縁部との間に凹部55を有する。光学撮像レンズセットの第3の例の光学データを図22に示しており、非球面データを図23に示している。光学撮像レンズセットの長さは、4.429mmである。像高は、3.0mmである。第3の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=2.145
aa/G34=3.469
/G45=1.587
/G23=1.363
aa/BFL=0.739
34/G45=0.839
all/BFL=1.545
all/Gaa=2.090
/T=2.065
aa/G23=3.394
(Tall+Gaa)/BFL=2.285
/G45=1.200
(T+T)/T=1.637
aa/T=4.200
【0046】
第4の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第4の例を示す図7を参照する。第4の例の像面71における縦球面収差については、図8(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図8(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図8(C)を参照し、歪曲収差については、図8(D)を参照する。
第4の例における部品は、第1の例における部品と類似しているが、この例における、曲率半径、屈折力、レンズ厚、レンズ焦点距離、非球面、または背面焦点距離などの光学データは、第1の例における光学データと異なる。光学撮像レンズセットの第4の例の光学データを図24に示しており、非球面データを図25に示している。光学撮像レンズセットの長さは、4.412mmである。像高は、3.0mmである。第4の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=2.067
aa/G34=3.329
/G45=1.736
/G23=1.486
aa/BFL=0.711
34/G45=0.921
all/BFL=1.561
all/Gaa=2.194
/T=2.212
aa/G23=3.298
(Tall+Gaa)/BFL=2.272
/G45=1.321
(T+T)/T=1.703
aa/T=4.302
【0047】
第5の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第5の例を示す図9を参照する。第5の例の像面71における縦球面収差については、図10(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図10(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図10(C)を参照し、歪曲収差については、図10(D)を参照する。
第5の例における部品は、第1の例における部品と類似しているが、この例における、曲率半径、屈折力、レンズ厚、レンズ焦点距離、非球面、または背面焦点距離などの光学データは、第1の例における光学データと異なっており、この実施形態において、第2のレンズ素子20の第2の物体側の面21は、光軸近傍に凹部23、その周縁部近傍に凹部24、および、光軸と周縁部との間に凸部25を有し、第3のレンズ素子30の第3の物体側の面31は、光軸近傍に凸部33、および、その周縁部近傍に凹部34を有する。光学撮像レンズセットの第5の例の光学データを図26に示しており、非球面データを図27に示している。光学撮像レンズセットの長さは、4.361mmである。像高は、2.934mmである。第5の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=3.326
aa/G34=2.107
/G45=1.893
/G23=2.442
aa/BFL=0.998
34/G45=1.945
all/BFL=1.883
all/Gaa=1.887
/T=3.194
aa/G23=4.629
(Tall+Gaa)/BFL=2.881
/G45=1.280
(T+T)/T=2.109
aa/T=7.159
【0048】
第6の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第6の例を示す図11を参照する。第6の例の像面71における縦球面収差については、図12(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図12(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図12(C)を参照し、歪曲収差については、図12(D)を参照する。
第6の例における部品は、第1の例における部品と類似しているが、この例における、曲率半径、屈折力、レンズ厚、レンズ焦点距離、非球面、または背面焦点距離などの光学データは、第1の例における光学データと異なっており、この実施形態において、第2のレンズ素子20の第2の物体側の面21は、光軸近傍に凹部23、その周縁部近傍に凹部24、および、光軸と周縁部との間に凸部25を有し、第5のレンズ素子50の第5の物体側の面51は、光軸近傍に凸部53、その周縁部近傍に凸部54’、および、光軸と周縁部との間に凹部55を有する。光学撮像レンズセットの第6の例の光学データを図28に示しており、非球面データを図29に示している。光学撮像レンズセットの長さは、4.362mmである。像高は、2.934mmである。第6の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=2.418
aa/G34=2.738
/G45=1.411
/G23=1.303
aa/BFL=0.984
34/G45=1.161
all/BFL=1.598
all/Gaa=1.624
/T=2.374
aa/G23=3.557
(Tall+Gaa)/BFL=2.581
/G45=0.723
(T+T)/T=1.756
aa/T=5.749
【0049】
第7の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第7の例を示す図13を参照する。第7の例の像面71における縦球面収差については、図14(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図14(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図14(C)を参照し、歪曲収差については、図14(D)を参照する。
第7の例における部品は、第1の例における部品と類似しているが、この例における、曲率半径、屈折力、レンズ厚、レンズ焦点距離、非球面、または背面焦点距離などの光学データは、第1の例における光学データと異なっている。光学撮像レンズセットの第7の例の光学データを図30に示しており、非球面データを図31に示している。光学撮像レンズセットの長さは、4.403mmである。像高は、3.0mmである。第7の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(G34+G45)/G23=1.801
aa/G34=2.659
/G45=3.253
/G23=1.796
aa/BFL=0.580
34/G45=1.796
all/BFL=1.510
all/Gaa=2.603
/T=2.129
aa/G23=3.076
(Tall+Gaa)/BFL=2.090
/G45=2.597
(T+T)/T=1.649
aa/T=3.943
【0050】
各例のいくつかの重要な比率を、図32に示している。本出願人は、上記の各実施形態の有効性を以下のように要約した。
1.第1のレンズ素子は、光学撮像レンズセットにとって必要とされる屈折力を与えるための正の屈折力を有する。第2のレンズ素子は、収差を補正するための負の屈折力を有し、第4のレンズ素子は、光学撮像レンズセットにとって必要とされる屈折力をさらに与えるための正の屈折力を有し、製造プロセスにおける難点を簡易にする。さらに、開口部を第1のレンズ素子の前に配置し、その構成は、集光、および、光学撮像レンズセットの全長の縮小に有用である。
2.第1の像側の面は凸面であり、撮像光を集光するのに有用である。第2の像側の面は、その周辺近傍に凹部を有する。第3の物体側の面は、その周縁部近傍に凹部を有する。第4の物体側の面は凹面を有する。第4の像側の面は凸面である。第5の像側の面は、光軸近傍に凹部、および、その周縁部近傍に凸部を有する。これらのレンズ素子は互いに適合して像品質を確実なものにする。
【0051】
要約すれば、本発明は、設計されたレンズ素子を互いに適合させることによって、優れた像品質を実現可能である。
【0052】
さらに、本発明者らは、上記の種々の重要な比率による様々なデータについて、いくつかの、より望ましい比率の範囲があることを発見している。より望ましい比率範囲は、設計者が、より良好な光学性能で、かつ長さが効果的に縮小された、実際に可能な光学撮像レンズセットを設計する際の助けとなる。例えば、
(1)(G34+G45)/G23≧1.8
式中、G23、G34、G45は、第2のレンズ素子から第5のレンズ素子までの隣接するレンズ素子間の光軸に沿った空隙である。第2の像側の面および第3の物体側の面が両方とも凹面であるため、G23が大きすぎて光学撮像レンズセットを小型化できないことがないように、G23をより大きくすべきであり、G23を小さく設計すべきである。
一方、G34およびG45は大きいのが好ましく、G23は小さいのが好ましい場合、G34およびG45をわずかに大きくすることができる。従って、(G34+G45)/G23は1.8以上であるのが好ましいが、理想的には、その範囲は1.8〜4.0であってよいことを提案する。
(2)Gaa/G34≧2.0
aaは、第1のレンズ素子から第5のレンズ素子までの隣接するレンズ素子間の光軸に沿った4つの空隙の総和である。上記のように、G34は大きいのが好ましいが、光学撮像レンズセットの全長に影響を及ぼすほど大きくすべきではなく、そのため、Gaa/G34は2.0以上であるのが好ましいが、理想的には、その範囲は2.0〜4.0であってよいことを提案する。
(3)Gaa/BFL≦1.1;Tall/Gaa≧1.6;Gaa/G23≦3.8;(Tall/Gaa)/BFL≦2.6
上記のように、G34およびG45は大きいのが好ましいが、光学撮像レンズセットの全長に影響を及ぼすほど大きくすべきではなく、そのため、Gaaは特定値より低くなるよう制限されるべきであり、従って、Tall/Gaaも特定値より大きくすべきである。例えば、Gaa/BFLを1.1以下とすべきであり、理想的には、その範囲は0.4〜1.1であってよいことを提案し、Tall/Gaaを1.6以上とすべきであり、理想的には、その範囲は1.6〜3.0であってよいことを提案し、Gaa/G23を3.8以下とすべきであり、理想的には、その範囲は2.8〜3.8であってよいことを提案し、(Tall/Gaa)/BFLを2.6以下とすべきであり、理想的には、その範囲は1.5〜2.6であってよいことを提案する。
(4)T/G45≦3.5;G34/G45≦1.8;T/G45≦2.8
上記のように、G45は大きいのが好ましく、さらには、T、TおよびG34に関しても、全長を縮小するよう小さくすべきであり、従って、T/G45、G34/G45およびT/G45は小さいのが好ましい。例えば、T/G45を3.5以下とすべきであり、理想的には、その範囲は1.0〜3.5であってよいことを提案し、G34/G45を1.8以下とすべきであり、理想的には、その範囲は0.7〜1.8であってよいことを提案し、T/G45を2.8以下とすべきであり、理想的には、その範囲は0.5〜2.8であってよいことを提案する。
(5)Tall/BFL≦1.7
allは、光学撮像レンズセットにおける全てのレンズ素子の光軸に沿った全厚であり、その全長は、フィルタおよびその他部品を第5のレンズ素子と像面との間に配置するものとすると、Tallが低減可能である場合に縮小可能であり、よって、BFLを無制限に変更できない。従って、Tall/BFLは小さいのが好ましい。例えば、1.7以下とすべきであり、理想的には、その範囲は1.2〜1.7であってよいことを提案する。
(6)T/Tは、1.8以上であることが提案され、かつ、(T+T)/Tは1.9以下であることが提案されることで、各レンズ素子は確実により望ましい構成を有する。理想的には、T/Tの範囲は1.8〜3.5であってよいことが提案され、(T+T)/Tの範囲は1.2〜1.9であってよいことが提案される。
(7)Gaa/T≧3.7
第3のレンズ素子、第4のレンズ素子および第5のレンズ素子と比較すると、第2のレンズ素子はより容易に縮小され、従って、Tは小さくされるものとし、かつ、Gaa/Tは大きくされるものとする。例えば、Gaa/Tは3.7以上であるのが好ましく、理想的には、その範囲は3.7〜8.0であってよいことを提案する。
【0053】
本発明の光学撮像レンズセット1は、携帯型電子機器に適用可能である。図16を参照する。図16は、携帯型電子機器100で使用される本発明の光学撮像レンズセット1の第1の好ましい例を示している。携帯型電子機器100は、ケース110と、ケース110に装着された撮像モジュール120と、を備える。図16では、一例として携帯電話機を示しているが、携帯型電子機器100は、携帯電話機に限定されない。
【0054】
図16に示すように、撮像モジュール120は、上記のような光学撮像レンズセット1を備える。図16では、前述の、光学撮像レンズセット1の第1の例を示している。さらに、携帯型電子機器100は、光学撮像レンズセット1を取り付けるための鏡筒130と、鏡筒130を取り付けるためのモジュール収容ユニット140と、モジュール収容ユニット140を取り付けるための基板172と、光学撮像レンズセット1の像側3で基板172に配置される撮像センサ70と、を収めている。光学撮像レンズセット1における撮像センサ70は、電荷結合素子または相補型金属酸化膜半導体素子などの受光素子とすることができる。像面71は、撮像センサ70に形成される。
【0055】
ここで用いる撮像センサ70は、従来のチップ・スケール・パッケージ(CSP:Chip Scale Package)製品ではなく、チップ・オン・ボード(COB:Chip On Board)パッケージ製品であり、従って、基板172に直接留め付けられており、光学撮像レンズセット1において撮像センサ70の前面に保護ガラスを必要としないが、本発明はこれに限定されない。
【0056】
特に留意されるべきことは、オプションのフィルタ60を本例では設けているが、他の例では、オプションのフィルタ60を省くことができるということである。ケース110、鏡筒130、および/またはモジュール収容ユニット140は、単一の要素とするか複数の要素で構成可能であるが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
屈折力を有する5つのレンズ素子10、20、30、40、50の各々は、例示のようにして、2つの隣接するレンズ素子間に空隙を配して、鏡筒130内に取り付けられる。モジュール収容ユニット140は、レンズ素子ハウジング141と、このレンズ素子ハウジング141と撮像センサ70との間に取り付けられる撮像センサハウジング146と、を含んでいる。ただし、他の例では、撮像センサハウジング146はオプションである。鏡筒130は、軸I‐I’に沿ってレンズ素子ハウジング141と同軸状に取り付けられ、鏡筒130はレンズ素子ハウジング141の内部に設けられる。
【0058】
本発明の光学撮像レンズセット1は、4.5mmほどに短縮され得るので、この理想的な長さによって、携帯型電子機器100の寸法およびサイズの小型軽量化を可能にしながら、依然として優れた光学性能および像品質が可能である。このように、本発明の種々の例は、小型軽量化する製品設計の傾向および消費者需要に応えるだけではなく、使用原料の低減による経済的利益の要求に応えるものである。
【0059】
さらに、第2の好ましい例での、携帯型電子機器200における前述の光学撮像レンズセット1の別の応用について、図17を参照する。
第2の好ましい例における携帯型電子機器200と、第1の好ましい例における携帯型電子機器100との主な違いは、レンズ素子ハウジング141が、第1の台座要素142と、第2の台座要素143と、コイル144と、磁性部品145と、を有することである。第1の台座要素142は、鏡筒130を取り付けるためのものであり、鏡筒130の外側に留め付けられて、軸I‐I’に沿って配置される。第2の台座要素143は、軸I‐I’に沿って配置されて、第1の台座要素142の外側を取り囲む。コイル144は、第1の台座要素142の外側と第2の台座要素143の内側との間に設けられる。磁性部品145は、コイル144の外側と第2の台座要素143の内側との間に配置される。
【0060】
第1の台座要素142は、鏡筒130と、鏡筒130の内部に配置された光学撮像レンズセット1とを、軸I‐I’、すなわち、図1の光軸4に沿って動かすように引っ張ることが可能である。撮像センサハウジング146は、第2の台座要素143に留め付けられている。赤外線フィルタなどのフィルタ60は、撮像センサハウジング146に取り付けられる。
第2の好ましい例における携帯型電子機器200の他の細部は、第1の好ましい例における携帯型電子機器100のものと同様であり、従って、それらについての詳述は繰り返さない。
【0061】
本発明の教示を守りつつ、装置および方法の多数の変形ならびに変更を実施することができることは、当業者であれば容易に気づくことであろう。従って、上記開示は、添付の特許請求の範囲の限界および範囲によってのみ限定されるものと解釈されるべきである。
図1
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