【課題】乗り物の床面に連結されたリトラクタ本体の解除レバーが乗客の靴や荷物等の押下力付与体によって意図せず押下げられることを防止できる解除レバー誤操作防止構造を提供する。
【解決手段】この解除レバー誤操作防止構造は、車椅子に係合する係合部材11が一端に取付けられたベルト10をその他端側から巻取る巻芯と、巻芯を収容し、前面の開口部から前記ベルト10が巻出されるリトラクタ本体22と、巻芯のベルト巻出方向への回転を規制する回転規制機構と、リトラクタ本体22の前記前面以外の面から突出し、押下げられると巻芯の回転規制を解除する解除レバー24とを備えたリトラクタ20に取付けられ、解除レバー24の誤操作を防止するものであって、リトラクタ本体22又は解除レバー24に取付けられ、解除レバー24に上方から接近する押下力付与体により解除レバー24が押下げられることを防止する押下防止部材50を有する。
車椅子に係合する係合部材が一端に取付けられたベルトをその他端側から巻取る巻芯と、前記巻芯を収容し、前面の開口部から前記ベルトが巻出されるリトラクタ本体と、前記巻芯のベルト巻出方向への回転を規制する回転規制機構と、前記リトラクタ本体の前記前面以外の面から突出し、押下げられると前記巻芯の回転規制を解除する解除レバーとを備えたリトラクタに取付けられ、前記解除レバーの誤操作を防止する解除レバー誤操作防止構造であって、
前記リトラクタ本体又は前記解除レバーに取付けられ、前記解除レバーに上方から接近する押下力付与体により前記解除レバーが押下げられることを防止する押下防止部材を有する解除レバー誤操作防止構造。
前記押下防止部材が、前記リトラクタ本体に取付けられると共に前記解除レバーの少なくとも一部を上方から覆うように形成され、前記解除レバーに上方から接近する前記押下力付与体と前記解除レバーとの接触を防ぐ請求項1記載の解除レバー誤操作防止構造。
前記押下防止部材が、一端側が前記リトラクタ本体に固定されると共に他端側が前記リトラクタ本体に固定されずに前記解除レバーの少なくとも一部を上方から覆うように形成された板状部材から成る請求項2記載の解除レバー誤操作防止構造。
前記板状部材の他端側における、リトラクタ上面視で前記解除レバーに対応した位置に前記ベルト巻出方向に窪む凹部が形成されている請求項3記載の解除レバー誤操作防止構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、連結手段によって乗り物の床面に連結されたリトラクタ本体は車椅子の近くの床面の上又は床面近傍に配置されることになる。このため、乗り物の床面に連結されたリトラクタ本体が車椅子の周りの乗客から見え難い場合があり、また、乗り物が混んでおり車椅子の周りに多くの乗客が立っている場合は、車椅子の周りの乗客がリトラクタ本体を視認することができない。
【0006】
このため、乗り物の床面に連結されたリトラクタ本体の解除レバーが押下力付与体である乗客の靴や荷物等によって意図せず押下げられ、これにより巻芯の回転規制が解除されて車椅子の固定が緩む場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、乗り物の床面に連結されたリトラクタ本体の解除レバーが乗客の靴や荷物等の押下力付与体によって意図せず押下げられることを防止できる解除レバー誤操作防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様に係る解除レバー誤操作防止構造は、車椅子に係合する係合部材が一端に取付けられたベルトをその他端側から巻取る巻芯と、前記巻芯を収容し、前面の開口部から前記ベルトが巻出されるリトラクタ本体と、前記巻芯のベルト巻出方向への回転を規制する回転規制機構と、前記リトラクタ本体の前記前面以外の面から突出し、押下げられると前記巻芯の回転規制を解除する解除レバーとを備えたリトラクタに取付けられ、前記解除レバーの誤操作を防止する解除レバー誤操作防止構造であって、前記リトラクタ本体又は前記解除レバーに取付けられ、前記解除レバーに上方から接近する押下力付与体により前記解除レバーが押下げられることを防止する押下防止部材を有する。
【0009】
この態様によれば、混雑する車内で乗客の靴や荷物等の押下力付与体が意図せずリトラクタ本体上に置かれる場合でも、該押下力付与体によって解除レバーが押下げられることが防止される。
【0010】
本発明の第2の態様に係る解除レバー誤操作防止構造は、前記押下防止部材が、前記リトラクタ本体に取付けられると共に前記解除レバーの少なくとも一部を上方から覆うように形成され、前記解除レバーに上方から接近する前記押下力付与体と前記解除レバーとの接触を防ぐように構成されている。
このようにすることで、乗客の靴や荷物等の押下力付与体がリトラクタ本体上に置かれる場合に、押下力付与体が解除レバーに上方から接触することが防止される。
【0011】
本発明の第3の態様に係る解除レバー誤操作防止構造は、前記押下防止部材が、一端側が前記リトラクタ本体に固定されると共に他端側が前記リトラクタ本体に固定されずに前記解除レバーの少なくとも一部を上方から覆うように形成された板状部材から構成されている。
板状部材の他端がリトラクタ本体に固定されずに片側支持状態になっているので、板状部材の他端側もリトラクタ本体に固定される両端支持等の場合と異なり、板状部材の弾性によって他端側に撓む余地がある。リトラクタ本体は金属材料を用いて形成されており決して軽いものではなく、取扱時に誤って乗り物の床面等に落下させる場合もあるが、他端側に上記撓む余地があるので、リトラクタ本体の落下時に乗り物の床面が受ける損傷を低減することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る解除レバー誤操作防止構造は、前記板状部材の他端側における、リトラクタ上面視で前記解除レバーに対応した位置に前記ベルト巻出方向に窪む凹部が形成されている。
このようにすると、板状部材の他端側が解除レバーを上方から覆うように配置されているが、前記凹部があることにより解除レバーを容易に視認することができ、解除レバーの操作性を向上することができる。
【0013】
本発明の第5の態様に係る解除レバー誤操作防止構造は、前記押下防止部材が、一端側が前記解除レバーに揺動可能に取付けられた揺動部材から成り、該揺動部材が、前記解除レバーに対しその押下げ方向に配置されると前記揺動部材の他端が前記リトラクタ本体に当接して前記解除レバーの押下げ方向への移動を妨げ、前記解除レバーの押下げ方向の位置と異なる位置に傾動されると前記解除レバーの押下げ方向への移動を許容するように構成されている。
このようにすると、レバーの押下げ方向に配置された揺動部材はつっかえ棒として機能して解除レバーの押下げを確実に防止することができ、一方、揺動部材を傾動させることで解除レバーの押下げが可能になり、車椅子への取付け作業および取外し作業を容易に行うことができるので、作業性と安全性の両立を図る上で極めて有利な構造である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の解除レバー誤操作防止構造は、乗り物の床面に連結されたリトラクタ本体の解除レバーが乗客の靴や荷物等の押下力付与体によって意図せず押下げられることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造について図面を参照して以下に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造は、車椅子固定装置に設けられるものである。この車椅子固定装置は、
図1〜
図3に示されるように、車椅子に係合する係合部材11が一端に連結された布製のベルト10と、該ベルト10をその他端側から巻取る巻芯21と、巻芯21を回転可能に支持すると共に収容するリトラクタ本体22とを備え、ベルト10を巻取る量によりベルト10の長さを調整するリトラクタ20と、巻芯21の長手軸21aを含む平面に交差する方向に延びる揺動軸線30a回りに揺動可能に該リトラクタ20に連結されたフック部材30とを有する。また、フック部材30は平板状部材をその板厚方向に屈曲して形成されたフック部31を備えている。
【0017】
リトラクタ20は例えば特開2012−210312号公報等に開示のある公知のものを使用可能である。本実施形態のリトラクタ20のリトラクタ本体22は、その内部に設けられ、巻芯21をベルト巻取方向に付勢する付勢機構(図示せず)と、リトラクタ本体22の側面に設けられ巻芯21を手動でベルト巻取方向に回転させるための張力付与ハンドル23と、リトラクタ本体22内に設けられ、ラチェット機構等により巻芯21のベルト巻取方向への回転を許容すると共にベルト巻出方向への回転を規制し、これによりベルト10に張力が加わる状態を維持する回転規制機構(図示せず)と、リトラクタ本体22の背面側から突出し、押下げられると巻芯21の前記回転規制を解除する解除レバー24と、リトラクタ本体24からベルト10の巻出方向と略逆方向に延設された金属製の平板状のステー25とを有する。
【0018】
この車椅子固定装置は、バス等の乗り物の床面1に車椅子を固定するために使用される。より具体的には、
図4に示されるように、フック部材30のフック部31をバス等の乗り物の床面1に設置された略U字形状に形成された金属製の被固定部2に係合させると共に、ベルト10の一端の係合部材11を車椅子に係合させることにより、車椅子と床面1とを連結する。この時、解除レバー24を押下げることによりベルト10を巻き出して係合部材11を車椅子に係合させ、ベルト10の長さを調節すると共に張力付与ハンドル23を操作してベルト10に張力をかけ、前記回転規制機構によって巻芯21のベルト巻出方向への回転を規制することにより、車椅子が床面1に固定される。
本明細書では、
図4に示すように、リトラクタ本体22及びフック部材30において、車椅子の固定時に床を臨む側を下側若しくは下方と称し、床を臨む面を下面と称し、上方を臨む側を上側若しくは上方と称し、上方を臨む面を上面と称する。
また、本実施形態では、ステー25はリトラクタ本体22の下面と略平行になるように取付けられ、ステー25の下面とリトラクタ本体22の下面は同一平面内に配置されている。
尚、
図4では、押下防止部材50は概略的にあらわされている。
【0019】
一例として、複数の車椅子固定装置を上記のように使用することにより、1台の車椅子が床面1に固定される。尚、前記乗り物は、バス以外の自動車、船舶、航空機等のその他の乗り物であっても良い。本実施形態では、U字形状の被固定部2の両端部2aが乗り物の床面1に設置された凹部3に回動可能に取付けられ、これにより、被固定部2が凹部3に対し出没するように構成されているが、床面1に固定されているU字形状の被固定部2とすることも可能である。さらに、被固定部2はU字形状でなくても、線状や棒状に形成されフック部31が係合するものであればよい。
【0020】
フック部材30は金属製の平板状部材を屈曲して成り、該平板状部材の一端側を使って平板部32が形成され、該平板状部材の他端側を車椅子の固定時における下側に向かって屈曲することによりフック部31が形成されている。フック部材30の平板部32は段付きリベットである締結部材40によってリトラクタ本体22のステー25の下面に連結され、これにより、フック部材30が締結部材40の中心軸と一致する揺動軸線30a回りに揺動するようになっている。本実施形態では、締結部材40の中心軸は、リトラクタ20の巻芯21の長手軸21aに対し略90°異なる方向に延びている。
尚、本実施形態では、締結部材40は段付きリベットから成るが、段付きボルトとナットを締結部材40として用いることも可能であり、その他フック部材30を揺動軸線30a回りに揺動可能に連結できるものを締結部材40として用いることも可能である。
【0021】
フック部材30は、前記フック部31の開口部を開閉可能な抜止部材33と、前記開口部を閉じる方向に前記抜止部材33を付勢する付勢部材34とを備えている。抜止部材33は金属製の平板状部材から成り、平板部32に揺動可能に支持されている。また、付勢部材34によって付勢されることにより、抜止部材33の他端がフック部31の先端に内側から当接する。
【0022】
本実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造は、リトラクタ本体22に取り付けられた押下防止部材50を有している。押下防止部材50は金属製の板状部材から成り、一端側がリトラクタ本体22のステー25の上面に固定されると共に、他端側が解除レバー24の基端側を覆うように形成されている。押下防止部材50を形成する板状部材の一端側はリベット等の締結部材50aによってステー50に連結され、これにより、押下防止部材50がステー25に固定されている。本実施形態では、押下防止部材50の他端側はリトラクタ本体22に固定されていない。なお、押下防止部材50を強化プラスチック等のプラスチックから形成することも可能である。
【0023】
押下防止部材50を構成する板状部材は、ステー25に連結される一端側平面部51と、一端側平面部51の端から上方に延びる左側壁部52と、左側壁部52の上端から延びて一端側平面部51と対向すると共に解除レバー24の基端側を覆うカバー部53と、カバー部53の端から下方に延びる右側面部54とを有する。右側面部54の下端は無負荷時に一端側平面部51やステー25に接触していない。しかし、押下防止部材50に下方に向かう大きな力が加わり、押下防止部材50が下方に向かって変形する際は、カバー部53が解除レバー24に接触する前に、右側面部54の下端が一端側平面部51やステー25に接触する。このため、押下防止部材50に下方に向かう大きな力が加わる場合も、解除レバー24が意図せず押し下げられることが防止される。
【0024】
図2に示すように、押下防止部材50の板状部材の他端側であるカバー部53において、リトラクタ上面視で解除レバー24に対応した位置には、ベルト巻出方向に窪む凹部55が形成されている。また、
図3に示すように、押下防止部材50の右側面部54の下端側にもベルト巻出方向に窪む凹部56が形成されている。
図3に示すように、リトラクタ側面視において、凹部56は無負荷状態の解除レバー24に重なる位置に形成されている。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造を備える車椅子固定装置の作用について以下に説明する。
車椅子固定装置を用いて車椅子を固定するには、例えば、最初にフック部材30のフック部31を床面1の被固定部2に係合させた後、解除レバー24を操作してベルト10の長さを調節しながら、ベルト10の一端の係合部材11の係合フック部11aを車椅子に係合させ、ベルト10に張力が加わる状態で回転規制機構によって巻芯21の回転規制がされることにより、車椅子の床面1への固定を行う。
【0026】
この際、車椅子の大きさ、形状、位置等が一定ではないことから、ベルト10の長さや係合部材11の角度を変えながら、係合部材11の係合フック部11aを車椅子に係合する。
ここで、フック部材30のフック部31は板状部材をその板厚方向に屈曲して形成されているので、床面1の線状又は棒状の被固定部2にフック部31を係合させると、フック部31の内周面が被固定部2に線接触するか、フック部31の内周面におけるフック幅方向の両側が被固定部2に当接する。これにより、線状又は棒状の被固定部2の軸回りの動きを除いて、被固定部2に対するフック部材30の動きが規制される。
【0027】
また、リトラクタ本体22に締結部材40によって連結されたフック部材30を被固定部2に係合させるので、リトラクタ本体22と被固定部2との間に布等から成る可撓性を有する部材や同様の働きをするリング部材が介在せず、前記フック部材30の動きの規制と協働してリトラクタ本体22をその下面が床面を臨む姿勢に安定して維持することができる。従って、リトラクタ本体22を持ち上げる等して支持せずとも、リトラクタ本体22からベルト10を巻出すことが可能となる。
【0028】
さらに、リトラクタ20に対してフック部材30を揺動軸線30a回りに揺動させることにより、リトラクタ20の巻芯21の長手軸21aの方向を車椅子の位置や大きさに合わせて変化させ、ベルトの無理な巻出しを防止することができる。
【0029】
また、フック部31は、フック部材30を構成する平板状部材の端部をその厚さ方向一方に向かって屈曲して形成されている。このため、フック部材30の平面部を床1と平行にすることで、フック部31を被固定部2に対し係合可能な姿勢にすることができ、被固定部2への係合を容易に行うことができる。
【0030】
さらに、前記リトラクタ本体22の姿勢が安定する構成に加え、リトラクタ本体22は、巻芯21をベルト巻取方向に付勢する巻芯付勢機構と、巻芯21のベルト巻出方向の回転規制を行う回転規制機構と、前記回転規制機構の回転規制を解除する解除レバー24とを備えている。このため、例えば左手で解除レバー24を操作しながら右手でベルト10の係合部材11を扱うことができ、車椅子への係合を容易かつ確実に行うことができる。
【0031】
上記のように車椅子を床面1に固定すると、リトラクタ本体22は床面の上又は床面近傍に配置される。このため、床面1に連結されたリトラクタ本体22が車椅子の周りの乗客から見え難い場合があり、また、乗り物が混んでおり車椅子の周りに多くの乗客が立っている場合は、車椅子の周りの乗客がリトラクタ本体22を視認することができない。
【0032】
本実施形態では、解除レバー24の基端側を上方から覆う押下防止部材50がリトラクタ本体22に取付けられているので、乗客の靴や荷物等の押下力付与体がリトラクタ本体22上に置かれる場合でも、該押下力付与体と解除レバー24との接触が防がれ、該押下力付与体によって解除レバー24が押下げられることが防止される。なお、押下防止部材50を解除レバー24の全体を覆うように形成しても、同様の作用効果を奏する。
【0033】
また、押下防止部材50は、一端側がリトラクタ本体22のステー25に固定されると共に他端側がリトラクタ本体22に固定されずに解除レバー24を上方から覆うように形成されている。このように、板状部材の他端がリトラクタ本体22に固定されずに片側支持状態になっているので、板状部材の他端側がリトラクタ本体22に固定される両端支持等の場合と異なり、板状部材の有する弾性によって他端側に撓む余地がある。リトラクタ本体22は金属材料を用いて形成されており決して軽いものではなく、取扱時に誤って乗り物の床面1等に落下させる場合もあるが、他端側に上記撓む余地があるので、リトラクタ本体22の落下時に乗り物の床面1が受ける損傷を低減することができる。
【0034】
また、押下防止部材50の板状部材の他端側のカバー部53における、リトラクタ上面視で解除レバー24に対応した位置に、ベルト巻出方向に窪む凹部55が形成されている。このため、押下防止部材50の板状部材の他端側が解除レバー24を上方から覆うように配置されているが、凹部55があることにより解除レバー24を容易に視認することができ、解除レバー24の操作性を向上することができる。
さらに、押下防止部材50の板状部材の右側面部54における、リトラクタ側面視で解除レバー24に重なる位置に、ベルト巻出方向に窪む凹部56が形成されている。このため、押下防止部材50の板状部材の右側面部54が解除レバー24を覆うように配置されているが、凹部56があることにより解除レバー24を容易に視認することができ、解除レバー24の操作性を向上することができる。
【0035】
さらに、フック部材30がリトラクタ22に揺動軸線30a回りに揺動可能に連結されることにより、前記リトラクタ本体22の姿勢が安定する構成に加え、カバー部53におけるリトラクタ上面視で解除レバー24に対応した位置に凹部56が形成されている。つまり、リトラクタ本体22の姿勢が安定しているので、カバー部53も常に上方を臨む位置に配置されることになり、解除レバー24の視認性及び操作性を向上する上で極めて有利である。
【0036】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造を
図5及び
図6を参照しながら以下説明する。本実施形態の解除レバー誤操作防止構造は押下防止部材50の代わりに押下防止部材60を用いることを除き、第1の実施形態の解除レバー誤操作防止構造と同等の構成を有する。
【0037】
本実施形態における押下防止部材60は金属やプラスチック製の板状部材から成り、一端側がリトラクタ本体22のステー25の上面に固定されると共に、他端側が解除レバー24の基端側を覆うように形成されている。押下防止部材60も第1の実施形態の押下防止部材50と同様にステー25に固定されている。
【0038】
押下防止部材60を構成する板状部材は、ステー25に連結される一端側平面部61と、一端側平面部61の端から上方に延びる左側面部62と、左側面部52の上端から延びて一端側平面部61と対向すると共に解除レバー24の基端側を上方から覆うカバー部63と、カバー部53の端から下方に延びる右側面部64とを有する。右側面部64の下端は一端側平面部61やステー25に接触していない。
【0039】
本実施形態では、解除レバー24の基端側を上方から覆う押下防止部材50がリトラクタ本体22に取付けられているので、乗客の靴や荷物等の押下力付与体がリトラクタ本体22に置かれる場合であっても、該押下力付与体と解除レバー24との接触が防がれる。
【0040】
また、押下防止部材60は、一端側がリトラクタ本体22のステー25に固定されると共に他端側がリトラクタ本体22に固定されずに解除レバー24を上方から覆うように形成され、板状部材の有する弾性によって他端側に撓む余地がある。リトラクタ本体22は決して軽いものではなく、取扱時に誤って乗り物の床面1等に落下させる場合もあるが、他端側に撓む余地があるので、リトラクタ本体22の落下時に乗り物の床面1が受ける損傷を低減することができる。
【0041】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造を
図7を参照しながら以下説明する。本実施形態の解除レバー誤操作防止構造は押下防止部材50の代わりに押下防止部材70を用いることを除き、第1の実施形態の解除レバー誤操作防止構造と同等の構成を有する。
【0042】
本実施形態における押下防止部材70は金属やプラスチック製の板状部材から成り、一端側がリトラクタ本体22のステー25の上面に固定されると共に、他端側が解除レバー24の基端側を上方から覆うように形成されている。押下防止部材70も第1の実施形態の押下防止部材50と同様にステー25に固定されている。
【0043】
押下防止部材70を構成する板状部材は、ステー25に連結される平面部71と、平面部71の一端から上方に延びる左側面部72と、左側面部72の上端から延びて平面部71と対向すると共に解除レバー24の基端側を上方から覆うカバー部73と、カバー部73の端から下方に延びて平面部71の他端に繋がる右側面部74とを有する。
【0044】
図7に示すように、押下防止部材70の板状部材のカバー部73における、リトラクタ上面視で解除レバー24に対応した位置には、ベルト巻出方向に窪む凹部75が形成されている。また、
図7に示すように、押下防止部材70の左側面部72及び右側面部74の下端側にもベルト巻出方向に窪む凹部76が形成されている。リトラクタ側面視において、凹部76は無負荷状態の解除レバー24に重なる位置に形成されている。
【0045】
本実施形態では、解除レバー24の基端側を上方から覆う押下防止部材70がリトラクタ本体22に取付けられているので、乗客の靴や荷物等の押下力付与体がリトラクタ本体22に置かれる場合であっても、該押下力付与体と解除レバー24との接触が防がれる。
【0046】
また、押下防止部材70の板状部材のカバー部73における、リトラクタ上面視で解除レバー24に対応した位置に、ベルト巻出方向に窪む凹部75が形成されている。このため、押下防止部材50の板状部材の他端側が解除レバー24を上方から覆うように配置されているが、凹部75があることにより解除レバー24を容易に視認することができ、解除レバーの操作性を向上することができる。
さらに、押下防止部材70の板状部材の右側面部74における、リトラクタ側面視で解除レバー24に重なる位置に、ベルト巻出方向に窪む凹部76が形成されている。このため、押下防止部材50の板状部材の右側面部74が解除レバー24を覆うように配置されているが、凹部76があることにより解除レバー24を容易に視認することができ、解除レバー24の操作性を向上することができる。
【0047】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造を
図8を参照しながら以下説明する。本実施形態の解除レバー誤操作防止構造は押下防止部材50の代わりに押下防止部材80を用いることを除き、第1の実施形態の解除レバー誤操作防止構造と同等の構成を有する。
【0048】
本実施形態における押下防止部材80は金属やプラスチック製の板状部材から成り、ステー25に連結される平面部81と、平面部81の両端からそれぞれ上方に延びる左側面部82及び右側面部83とを有する。平面部81は第1の実施形態と同様にステー25に固定されている。各側面部82,83は解除レバー24よりも高い位置まで延び、各側面部82,83の間に解除レバー24が配置される。
【0049】
本実施形態では、押下防止部材80の両側面部82,83の上端が解除レバー24よりも高い位置に配置され、各側面部82,83の間に解除レバー24が配置されているので、乗客の靴や荷物等の押下力付与体がリトラクタ本体22に置かれる場合であっても、該押下力付与体による解除レバー24の押下が防がれる。
【0050】
また、解除レバー24が上方から覆われていないので、解除レバー24を視認し易く、上方から覆われている場合に比べて解除レバー24の操作性も良い。
【0051】
なお、本実施形態では、押下防止部材80の各側面部82,83の間に解除レバー24が配置されるものを示したが、板状部材から成る押下防止部材80の代わりに、ステー25の上面側から上方に延びる一対の上方延設部を設け、該一対の上方延設部の間に解除レバー24を配置しても良い。この場合、各上方延設部は板状部材とすることも可能であり、柱状部材とすることも可能である。また、各上方延設部の上端が解除レバー24よりも高い位置に配置されることが好ましい。
【0052】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造を
図9を参照しながら以下説明する。本実施形態の解除レバー誤操作防止構造は押下防止部材50の代わりに押下防止部材90を用いることを除き、第1の実施形態の解除レバー誤操作防止構造と同等の構成を有する。
【0053】
本実施形態における押下防止部材90は金属やプラスチック製の棒状部材から成り、両端側がリトラクタ本体22のステー25の上面に固定されると共に、中央部が解除レバー24の長手方向中間部を上方から覆うように形成されている。
【0054】
本実施形態では、解除レバー24の長手方向中間部を上方から覆う押下防止部材90がリトラクタ本体22に取付けられているので、乗客の靴や荷物等の押下力付与体がリトラクタ本体22に置かれる場合であっても、該押下力付与体と解除レバー24との接触が防がれる。
【0055】
また、解除レバー24の基端部と先端部が上方から覆われていないので、解除レバー24を視認し易く、解除レバー24の操作性が良い。
【0056】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る解除レバー誤操作防止構造を
図10〜
図12を参照しながら以下説明する。本実施形態の解除レバー誤操作防止構造は押下防止部材50の代わりに押下防止部材として揺動部材100を用いることを除き、第1の実施形態の解除レバー誤操作防止構造と同等の構成を有する。
【0057】
本実施形態における押下防止部材は、一端側が解除レバー24にその長手軸回りに揺動可能に取付けられた揺動部材100から成る。揺動部材100は強化プラスチック等のプラスチックや金属から成る。揺動部材100は、解除レバー24に対してその押下げ方向に配置されると揺動部材100の他端がリトラクタ本体22のステー25に当接して解除レバー24の押下げ方向への移動を妨げ、解除レバー24を揺動させて押下げ方向の位置と異なる位置に配置されると解除レバー24の押下げ方向への移動を許容するように構成されている。解除レバー24の一端側に孔を設け、該孔に解除レバー24を挿通させることにより、解除レバー24の一端を解除レバー24に揺動可能に取付けることができる。
【0058】
ここで、解除レバー24をプラスチック材料から形成すると共に、一端側の孔の内径を解除レバー24の外径よりも僅かに小さくし、該孔と解除レバー24とが軽い締りばめになるようにすると、解除レバー24の傾動位置を安定させることができる。つまり、揺動部材100の孔と解除レバー24とが自由ばめになっていると、揺動部材100の他端が常に下方に向かう位置に配置されるので、解除レバー24を操作する際に毎回揺動部材100を手で揺動させなければならないが、軽い締りばめになっていると、揺動部材100を毎回傾動させる手間が省ける。揺動部材100を金属製とし、揺動部材100の孔の内径にゴム等の弾性部材を配置し、弾性部材の内径が解除レバー24の外径よりも僅かに小さくなるように構成しても、同様の結果が得られる。
逆に自由ばめになっていれば、重力により誤操作を防止する位置に自動的に配置されるので、解除レバー24の操作後にその都度、誤操作防止状態に切り替える操作を行わなくても済む。
【0059】
本実施形態では、レバーの押下げ方向に配置された揺動部材100がつっかえ棒として機能して解除レバー24の押下げを確実に防止することができ、一方、揺動部材100を傾動させることで解除レバー押下げが可能になり、車椅子への取付け作業および取外し作業を容易に行うことができるので、作業性と安全性の両立を図る上で極めて有利な構造である。
【0060】
前記第1〜5の実施形態では、リトラクタ本体22のステー25に押下防止部材を取付けたものを示した。これに対し、リトラクタ本体22の背面(解除レバー24が突出している面)や上面などに押下防止部材を取付け、押下防止部材が解除レバー24の少なくとも一部を上方から覆うように構成することも可能である。この場合でも前述と同様の作用効果を奏する。
【0061】
また、前記第1〜6の実施形態では、リトラクタ本体22がフック部材30によって床1に連結されるものを示した。これに対し、特開2001−212179号公報に示されているように、リトラクタ本体22のステー25にワイヤーロープを介してフック等の床連結具を取付け、ワイヤーロープを介してリトラクタ本体22を床面1に連結する構成とすることも可能である。ワイヤーロープの代わりに布ベルトやチェーン等を用いることも可能である。これらの場合でも上記と同様の作用効果を奏する。