【解決手段】包装容器10Aは、加水調理される食品を収容するための包装容器であって、加水調理食品を収容する容器本体11と、容器本体11内に加水調理用の液体を注入するための注入部12と、容器本体11内に食品の保存性を向上させるための機能性向上材14を加水調理食品および液体が収容される領域Aと仕切るための仕切り部材13とを備え、注入部12が外部への液体の流出を防止する封止弁41を備え、仕切り部材13が、食品および液体は透過させず、かつ気体は透過させる、密度1.0g/cm
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
[第1の実施形態]
<包装容器>
本発明の第1の実施形態に係る包装容器について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る包装容器の斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る包装容器の構成を簡略に示す正面図であり、
図3は、
図2中のI−I断面図であり、
図4は、
図2中のII−II断面図であり、
図5は、本発明の第1の実施形態に係る包装容器の分解図である。
図1〜
図5に示すように、包装容器10Aは、容器本体11と、注入部12と、仕切り部材13とを備え、仕切り部材13が、容器本体11の周縁シール部25にまで伸びるように設けられている。包装容器10Aは、その内部が仕切り部材13で仕切られた一方の領域に加水調理される食品(図示せず。以下、加水調理される食品を略して「加水調理食品」という場合がある。)が収容され、他方の領域に機能性向上材14が収容される。また、
図3に示すように、注入部12は、加水調理食品が収容される領域と連通しており、加水用ニードルなどの加水機器などによって外部から包装容器10Aの加水調理食品が収容される領域に液体が注入される。また、本実施形態においては、加水調理食品が収容される一方の領域を領域Aとし、機能性向上材14が収容される他方の領域を領域Bとする。
【0027】
なお、本発明においては、加水調理食品とは、水やお湯を加えることで戻して食べられる食品であり、例えば、フリーズドライ製法やスプレードライ製法などを用いて作られ、スープやご飯類、スクランブルエッグ、シュリンプカクテル、またはスープ、お茶、ジュースなどの粉末飲料などである。
【0028】
(容器本体)
容器本体11は、加水調理食品などの食品を収容できるものであれば特に形状に制限はないが、
図1に示したような、容器本体の両方の側部にガセット部16を有するサイドガセット型のパウチとすることにより、食品および機能性向上材14を収容する空間を確保しやすくすることができる。なお、本実施形態においては、容器本体11は、サイドガセット型のパウチで構成されているが、これに限定されるものではなく、平パウチやスタンディングパウチとすることもできる。
【0029】
容器本体11は、前面フィルム21、後面フィルム22、およぶ一対の側面フィルム23、24で構成されている。
【0030】
容器本体11は、周縁シール部25を有している。周縁シール部25は、上部シール部25A、下部シール部25B、および一対の側部シール部25Cで構成されている。側部シール部25Cは、前面フィルム21と側面フィルム23、24とで形成される第1側部シール部25C1と、後面フィルム22と側面フィルム23、24とで形成される第2側部シール部25C2とで構成されている。
【0031】
また、容器本体11を構成する前面フィルム21、後面フィルム22、およぶ一対の側面フィルム23、24は、包装フィルムで形成されている。包装フィルムは、少なくとも基材層およびシーラント層を備え、複数の層で構成されている。例えば、
図6に示すように、包装フィルム30は、基材層31、中間層32、およびシーラント層33を備えた積層フィルムからなる。また、各層の間には、接着剤、アンカーコート剤、熱接着性樹脂などからなる接着層34A、34Bを設けてもよい。
【0032】
基材層31は、印刷適性、強度、耐熱性などを有する素材から選択され、各種薄紙、あるいは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂を製膜して得られる無延伸または延伸フィルムを用いることができる。基材層31は、上記樹脂を二軸延伸したフィルムであることが好ましい。また、基材層31に、金属単体あるいは珪素やアルミニウムなどの酸化物などを蒸着して、ガスバリヤー性を付与するようにしてもよい。
【0033】
中間層32は、加水調理食品などの内容物を保護のためのガスバリアー性を有するフィルムなどにより形成される。包装容器10Aを構成する包装フィルム30が中間層32を備えることにより、ガスバリアー性や遮光性を包装容器10Aに付与したり、あるいは、包装容器10Aの落下衝撃に耐え得る強度を付与したりすることができる。
【0034】
中間層32としては、例えば、中間層32にバリアー性を付与するため、ポリビニルアルコール樹脂を製膜して形成されるフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物からなる樹脂を製膜して形成されるフィルムなどのバリアーフィルム、アルミニウムなどの金属箔や前記各種のフィルムに塩化ビニリデンなどの防湿コートを施したファイル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネートなどのフィルムからなる支持体に直接に金属単体あるいは珪素やアルミニウムなどの酸化物などを蒸着したフィルムなどを用いることができる。また、中間層32としては、例えば、中間層32に遮光性を付与するため、アルミニウム箔、フィルムにアルミ蒸着したフィルムなどを用いることができる。また、中間層32としては、例えば、中間層32の強度を向上させるためには、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネートなどのフィルムからなる支持体を用いることができる。
【0035】
シーラント層33は、熱によって相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムにより形成される層である。シーラント層33を構成する材料としては、注入部12の接着面への熱接着可能な材料であることが必要であり、注入部12の材料選定の際に相互接着性を有することが必要である。シーラント層33を構成する材料は、加水調理食品の味覚などに支障を及ぼす可能性がなく、パウチとしての必要強度を有する材料であれば特に限定されるものではない。シーラント層33を形成する材料としては、熱によって相互に融着し得る樹脂であれば、特に限定されず、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体樹脂、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン・ビニルアルコール樹脂、または、共重合した樹脂メチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他などの樹脂などが挙げられる。これらは、単独でも二種以上の混合物として使用してもよい。シーラント層は、上記のような樹脂のフィルムないしシート、あるいはそのコーティング膜などとして使用することができる。
【0036】
シーラント層33を形成する材料として、ポリエチレンを用いる場合、その原料として、化石燃料から得られるエチレンの他に、バイオマス由来のエチレンを重合したものを用いてもよい。
【0037】
接着層34A、34Bは、上記した各層間の接着力を高めるためのものであり、接着層34Aは、基材層31と中間層32との接着力を高め、接着層34Bは、中間層32とシーラント層33との接着力を高める機能を有する層である。接着層34A、34Bは、接着剤、熱可塑性樹脂などを用いて形成される。
【0038】
接着層34A、34Bが、接着剤を用いて形成される場合、接着層34A、34Bは、ドライラミネーション法により形成される。接着層34A、34Bは、積層しようとする層(例えば樹脂層)の表面に、ラミネートに用いられる接着剤(ラミネート用接着剤)を塗布して乾燥させることにより形成することができる。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層フィルムを構成する層の塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m
2〜10g/m
2(乾燥状態)が好ましく、1g/m
2〜5g/m
2(乾燥状態)がより好ましい。
【0039】
接着層34A、34Bが、熱可塑性樹脂を用いて形成される場合、接着層34A、34Bは、溶融押出しラミネーション法により形成される。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
包装フィルム30を構成する、基材層31、中間層32、シーラント層33、および接着層34A、34Bなどの各層の厚みは、適宜調整することができる。
【0041】
基材層31、中間層32、シーラント層33、および接着層34A、34Bなどの各層は、それぞれ一層としているが、これに限定されるものではなく、各層はそれぞれ二層以上設けられていてもよい。各層のいずれかの層が二層以上で形成される場合、各層を構成するそれぞれの層が同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0042】
基材層31と中間層32との間、また、中間層32とシーラント層33との間には、さらにPETなどを含む樹脂組成物を製膜してフィルムに加工して得られた樹脂フィルムなどの基材層31とは異なる層を設けてもよい。包装容器10Aに使用される包装フィルムとして、以下のような積層フィルムが挙げられるが、これらはあくまでも例示であって、本発明がこれらに限定されるものではない。
・蒸着層/PET(12μm)/接着剤/ナイロン(25μm)/接着剤/ポリエチレン(80μm)
・ナイロン(25μm)/接着剤/PET(12μm)/接着剤/ポリエチレン(80μm)
・PET(12μm)/接着剤/アルミニウム箔(9μm)/接着剤/ナイロン(15μm)/接着剤/ポリエチレン(80μm)
・PET(12μm)/接着剤/ナイロン(15μm)/接着剤/PET(12μm)/接着剤/ポリエチレン(80μm)
・PET(12μm)/接着剤/ナイロン(25μm)/接着剤/PET(12μm)/接着剤/ポリエチレン(80μm)
・ナイロン(15μm)/接着剤/PET(12μm)/接着剤/ナイロン(15μm)/接着剤/ポリエチレン(80μm)
なお、容器本体11を構成する包装フィルムのシーラント層33は、注入口41の材質と同じにすることが好ましい。例えば、注入口41がポリプロピレンである場合には、容器本体11を構成する包装フィルムのシーラント層33もポリプロピレンとすることが好ましい。
【0043】
(仕切り部材)
仕切り部材13は、容器本体11内に設けられ、容器本体11内を少なくとも2つの領域に仕切るためのものである。仕切り部材13によって、容器本体11は、その内部が加水調理食品および液体が収容される領域Aと機能性向上材14が収容される領域Bとに分けられる。このため、包装本体11の領域Bに収容される機能性向上材14は、領域Aに収容される加水調理食品に直接接触しないため、加水調理用食品が機能性向上材によって汚染されることがなくなる。また、仕切り部材13は、後記するように酸素や水蒸気などの気体を透過させるが、液体などは透過させないポリエチレン系樹脂フィルムからなるため、領域Aに存在する酸素や水蒸気などの気体は仕切り部材13を通して機能性向上材14に吸収されるが、加水調理食品を加水調理する際に領域Aに注入された液体は、機能性向上材14と接触することがない。
【0044】
仕切り部材13は、包装本体11の領域Aに収容される加水調理食品から、領域Bに収容される機能性向上材14を隔離しておく機能を有する。即ち、機能性向上材14が領域Aに収容される加水調理食品に直接接触しないようにできる。また、食品および容器内部10の領域Aに注入される液体が、領域B(機能性向上材14が収容された領域)に透過するのを防止することができる。そのため、容器本体11の領域A内に予め収納しておいた食品を加水して調理する際に、注入部12から容器本体11の領域A内に液体が注入されても、液体が領域Aから仕切り部材13を介して滲出することを防止することができる。
【0045】
更に、仕切り部材13は、気体を透過するものであるため、加水調理食品が収容される領域A内に存在する酸素や水蒸気などの気体を、仕切り部材13を通して容器本体11の領域Bにある機能性向上材14によって吸収させることができる。これにより、容器本体11内全体の乾燥ないし脱酸素状態を高いレベルで維持することができる。その結果、包装容器10Aの領域A内に収容された加水調理食品を長期にわたって品質を維持したまま保存することができる。
【0046】
本実施形態において、仕切り部材13は、シート状に形成された仕切りフィルム26Aから構成され、例えば、
図5に示すように、仕切りフィルム26Aは、前面フィルム21および後面フィルム22と略同形状とすることができる。
図5に示すように、仕切りフィルム26Aが、後面フィルム22と側面フィルム23、24との間に挿入された後、容器本体11の周縁シール部25(
図1参照)が形成されることにより、
図3および
図4に示すように、仕切りフィルム26Aが後面フィルム22と側面フィルム23、24との間に固定される。すなわち、本実施形態においては、周縁シール部25(
図1参照)は、容器本体11を構成する前面フィルム21、後面フィルム22、側面フィルム23、24のシーラント層33(
図6参照)が溶融されるだけでなく、仕切りフィルム26Aも溶融されることにより形成されるものである。なお、仕切りフィルム26Aは、前面フィルム21および後面フィルム22と必ずしも略同じ形状である必要はなく、第2側部シール部25C2にまで伸びるように設けることができる限りにおいて任意の形状とすることができる。
【0047】
仕切り部材13は、上記のように、容器内部10に収容される加水調理食品、および食品の加水調理の際に容器内部10に注入される液体を透過させず、かつ気体は透過させることができるものであり、このような仕切り部材として、本実施形態においては、密度が1.0g/cm
3以下のポリオレフィン系樹脂フィルムを用いるものである。
【0048】
本実施形態において使用するポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテンなどの単体、または、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの共重合体ないし変性物、もしくは上記した樹脂の混合物などを製膜してフィルム状にしたものを使用することができるが、これらの中でも、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)を好適に使用することができる。また、仕切り部材13は、容器本体11を構成する包装フィルム30のシーラント層33と同じ材質にすることが好ましい。
【0049】
仕切り部材13に使用されるポリオレフィン系樹脂フィルムは、その密度が1.0g/cm
3以下である。密度が1.0g/cm
3以下のポリオレフィン系樹脂フィルムであれば、固体は勿論のこと水などの液体を透過させずに、酸素や水蒸気などのガスをある程度透過させることができるため、包装容器10Aの中で機能性向上材14を有効に機能させることができる。好ましい密度は、0.95g/cm
3以下であり、より好ましくは、0.93g/cm
3以下である。なお、仕切り部材13の密度の測定方法は、従来公知の測定方法を用いることができ、例えば、所定厚みのポリオレフィン系樹脂フィルムを所定の大きさに切断した試料の質量を測定し、試料の質量を大きさおよび厚みから算出される試料の体積で除算することにより、密度を算出することができる。
【0050】
また、仕切り部材13は、未延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムからなるものであることが好ましい。本発明において、未延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムとは、引張り弾性率が1000MPa以下のポリオレフィン系樹脂フィルムを指すものであり、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂フィルムの引張り弾性率は、100〜500MPaである。引張り弾性率が上記範囲内であるようなポリオレフィン系樹脂フィルムを使用することにより、食品および液体は透過させずに、酸素や水蒸気などの気体を効率良く透過させることができる。なお、引張り弾性率とは、JIS K 7127に準拠して測定された値を意味し、例えば、テンシロン万能試験機(「RTC−1310A」、ORIENTEC社製)を用いて測定することができる。
【0051】
仕切り部材13は、特に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)などからなる未延伸のポリエチレンフィルムとすることが好ましく、延伸したフィルムと比較して配向結晶化の程度が少なく、酸素や水蒸気をより透過させ易い。また、未延伸フィルムは、延伸したフィルムと比較して弾性率が低く、そのため屈曲などによってクラックが発生するのを抑制することができる。また、本実施形態においては、仕切り部材13を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)などからなる未延伸のポリエチレンフィルムとすることにより、側部シール部25Cを形成するときのヒートシール温度を低くすることもできるため、包装容器10Aの生産性を高めることができる。
【0052】
仕切り部材13の厚みは、好ましくは、50〜80μmである。仕切り部材13の厚みは小さい程(即ち、未延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムの膜厚が薄い程)、酸素や水蒸気などのガスは透過し易いが、仕切り部材13の厚みが50μmより小さいと、機能性向上材14によって仕切り部材13が突き破られ、加水調理用食品が機能性向上材14によって汚染される場合がある。例えば、機能性向上材14が
図1に示すような矩形形状の場合(即ち、機能性向上材14が矩形状の内包材によって包装されているような場合や機能性向上材14自体が矩形状のフィルム形態であるような場合)、機能性向上材14の角部により仕切り部材13が破損し、場合によっては突き破られる場合がある。一方、仕切り部材13の厚みが厚すぎると、ガス透過性が低くなり、機能性向上材14が有効に機能しなくなる場合がある。
【0053】
また、仕切り部材13の一方または両方の面には、意匠性を付与するため、エンボス加工を施し、模様を付与することが好ましい。模様は、周知のエンボス機を用いて、仕切りフィルム26Aの一方または両方の面側からエンボス版で仕切りフィルム26Aに加熱加圧することにより形成することができる。
【0054】
上記した仕切り部材13によって、容器本体11は、加水調理用食品が収容される領域Aと、機能性向上材14が収容される領域Bとに分けられるため、機能性向上材14が加水調理用食品から隔離されて、直接接触しないようにしている。また、仕切り部材13は上記したように、気体を透過させるため、加水調理用食品が収容される領域Aに存在する酸素や水蒸気などの気体が、仕切り部材13を通して機能性向上材14に吸収される。さらに、包装容器11内に注水して加水調理する際にも、液体は加水調理用食品が収容される領域Aにのみに注水され、仕切り部材13は液体を透過させないため、液体が機能性向上材14と接触することはない。
【0055】
機能性向上材14としては、容器本体11内に収容される加水調理食品の衛生性、保存性などを向上させるものであれば、従来公知のものを使用することができ、例えば乾燥剤や脱酸素剤などが挙げられる。乾燥剤としては、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル、活性アルミナなどが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、また複数を組み合わせて使用してもよい。脱酸素剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜二チオン酸塩、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、没食子酸、ロンガリット、アスコルビン酸またはその塩、イソアスコルビン酸またはその塩、ソルボース、グルコース、リグニン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、第一鉄塩、鉄粉などが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、また複数を組み合わせて使用してもよい。また、上記した機能性向上材14の形状は、粉末状、粒状、塊状、シート状など、種々の形状のものを使用することができる。また、機能性向上材14の形態としては、粉末状や粒状などの機能性向上材14がガス透過性を有する内包材によって包装されたような小袋形態であってもよい。
【0056】
(注入部)
注入部12は、上記した領域A(加水調理食品が収納される領域)に液体を注入するためのものであり、外部への液体の流出を防止する封止弁43を備えている。注入部12は、容器本体11の外側に位置する管状の注入口41と、その注入口41に連接して形成されて容器本体11の内面の縁部に溶着されるフランジ部42とを備えている。封止弁43は、注入口41の内側に被嵌されている。注入口41およびフランジ部42は、筒状に形成されている。注入口41およびフランジ部42内には、注液手段が挿入される。注入部12から注液手段を挿入することによって容器本体11内に液体を注入することができる。注入手段は、液体を注入することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、注水ニードル、シリンジなどを用いることができる。
【0057】
フランジ部42は、内部にニードル針誘導用の誘導管44を設けている。注液手段が注水ニードルなどの鋭利な機材である場合には、注液手段を注液中に注水ニードルが折れたり、または曲がったりしないように、フランジ部42内に誘導管44を挿入することができる。また、
図3に示すように、本実施形態において、フランジ部42は、前面フィルム22と仕切り部材13とに固定されている。
【0058】
注入口41およびフランジ部42の管の内径は、特に限定されるものではなく、注液手段により適宜調整されるが、例えば、3〜10mm程度である。
【0059】
封止弁43は、その壁面の形状が注入口41の内側の形状に対応した形状であり、注入口41の内側に嵌合し得るように形成されている。本実施形態では、封止弁43は、注入口41の内部空間に対応して円筒状に形成されている。これにより、注液手段を封止弁43の内部を挿入することができる。
【0060】
図7は、封止弁43の断面図である。
図7に示すように、封止弁43は、内部に円板状のシール部45が設けられている。封止弁43はシール45を有するため、包装容器10Aの内側と外側とを遮蔽することができるため、包装容器10Aの内部を密封することができる。
【0061】
封止弁43は、弾性部材で形成されていることが好ましい。封止弁43が弾性材料によって形成される場合、注液手段を封止弁43のシール部45を貫通させた際、貫通部分からの漏液が抑制されると共に、注入部12から注液手段を抜き取った後でも封止弁43から包装容器10A内の液体が逆流して漏れることを防止することができる。また、封止弁43の外径は、注入部12の内径よりも大きいことが好ましい。封止弁43が弾性部材で形成されている場合、封止弁43の外径を注入部12の内径よりも大きくすることにより、注入部12に封止弁43を嵌合させた場合に封止弁43が圧縮される。封止弁43が圧縮された状態では、封止弁43の変形し易い部分に応力が集中する。例えば、注液手段によってシール部45に貫通孔が形成された場合、シール部45の貫通孔が肉薄となり圧縮応力が集中するため、圧縮応力によって貫通孔が閉塞される。これにより、包装容器10Aは、包装容器10A内へ注水後において、包装容器10A内の加水調理食品が逆流して注入部12から包装容器10Aの外部に漏れることを防止することができる。
【0062】
弾性材料としては、例えば、シリコーンゴム、オレフィンなどのエラストマーなどを好適に使用することができる。
【0063】
シール部45の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば1〜3mmであることが好ましい。
【0064】
注入口41およびフランジ部42は、それぞれ別の部材でもよいが、製造コストの観点から、一体に成形されることが好ましい。
【0065】
注入口41およびフランジ部42は、包装容器10Aの内側と溶着できる必要があることから、包装容器10Aの材料にもよるが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形されたものであることが好ましい。使用できる樹脂としては、これら熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。
【0066】
包装容器10Aは、上記のような構成を有するため、スープやご飯類、スクランブルエッグ、シュリンプカクテル、またはスープ、お茶、お茶、ジュースなどの粉末飲料などの加水調理食品を、注入部12から加水して食品を調理した後、包装容器10Aの一辺を切断して調理された食品を取り出して食したり、包装容器11を開封せずに包装容器10A内の調理された食品を食することができる。
【0067】
包装容器10Aの形状は、特に限定されるものではなく、加水調理食品の種類、容量などにより適宜設計される。
【0068】
包装容器10Aの大きさは、収納する加水調理食品の量に応じて適宜調整することができるが、例えば1〜100g、好ましくは3〜50gに設計される。
【0069】
(包装容器の製造方法)
包装容器10Aは、通常のスタンド型やガセット型のパウチ、平パウチ、またはスタンディングパウチなどと同様にして製造することができる。包装容器の製造方法の一例について説明する。
図5に示すように、包装容器10Aの両面を構成する前面フィルム21、後面フィルム22のヒートシール面が対面する状態にして、前面フィルム21および後面フィルム22の間に包装容器10Aの側面を構成する一対の側面フィルム23、24を挿入する。次いで、後面フィルム22と一対の側面フィルム23、24との間に、仕切りフィルム26Aを挿入する。次いで、注入部12のフランジ部42を、前面フィルム21、後面フィルム22、および仕切りフィルム26Aで狭持する。次いで、前面フィルム21、後面フィルム22、仕切りフィルム26A、一対の側面フィルム23、24の側壁端縁をヒートシールして、上部シール部25A、下部シール部25B、および側部シール部25Cを形成する。このとき、一方の側部シール部25Cを形成しないようにする。そして、包装容器10Aの一方の側部に形成された開口から、領域Aに食品、領域Bに機能性向上材14を収容する。その後、未シール部分をヒートシールすることにより、
図1に示す、包装容器10Aが形成される。
【0070】
ヒートシールの方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどを採用することができる。
【0071】
また、フランジ部42を前面フィルム21と仕切りフィルム26Aとの間に挟んだ状態でヒートシールしているが、これに限定されるものではなく、注入部12のフランジ部42を設ける部分以外の容器周縁部をヒートシールした後、フランジ部42を前面フィルム21と仕切りフィルム26Aとの間に挿入してヒートシールして狭着させるようにしてもよい。
【0072】
以上の通り、包装容器10Aは、容器本体11内に、所定の密度以下のポリオレフィン系樹脂フィルムからなる仕切り部材13を備え、仕切り部材13が容器本体11の周縁シール部25にまで伸びるように設けられていることによって、食品および液体が収容される領域Aと機能性向上材14が収容される領域Bとに仕切られるようにしている。包装容器10Aは、容器本体11内に収容される食品の保存性を高い状態で維持することができ、容器本体11内に液体が注入されても機能性向上材14が液体と接触することを防止することができる。また、容器本体11の周縁シール部25を形成する際に、容器本体11に仕切り部材13を取り付けることができるため、包装容器10Aの生産性に優れる。
【0073】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る包装容器について、図面を参照して説明する。なお、本発明の第1の実施形態と同様の部材については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る包装容器の斜視図であり、
図9は、包装容器の構成を簡略に示す正面図であり、
図10は、
図9中のI−I断面図である。
図8〜
図10に示すように、包装容器10Bは、仕切り部材13の少なくとも一部が、容器本体11の周縁シール部25にまで伸びないように設けられてなる。仕切り部材13は、その一方の側部51と、上部52および下部53の一部とが容器本体11の第2側部シール部25C2にまで伸びるように設けられると共に、仕切り部材13の他方の側部54が容器本体11の周縁シール部25にまで伸びないように設けられている。
【0074】
本実施形態(包装容器10B)において、仕切り部材13は、シート状に形成された仕切りフィルム26Bから構成され、例えば、
図9に示すように、仕切りフィルム26Bは、矩形状とすることができる。仕切りフィルム26Bの上部52および下部53の一部と他方の側部54は、後面フィルム22のヒートシーラント層33とヒートシールされ、シール箇所がコの字型のポケットシール部55が形成される。そして、一方の側部51から機能性向上材を挿入した後、仕切りフィルム26Bの一方の側部51を後面フィルム22のヒートシーラント層33とヒートシールすることにより、ポケットシール部55と第2側部シール部25C2により囲まれた、領域Bが形成される。なお、上述の例では、一方の側部51から機能性向上材14を挿入する例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0075】
包装容器10Bは、上記
図1〜
図5に示す本発明の第1の実施形態に係る包装容器10Aに比べて領域Aの空間を広く取ることができるため、より多くの食品を収容することができる。
【0076】
また、本実施形態においては、仕切り部材13の少なくとも一部が容器本体11の周縁シール部25にまで伸びないように設けられる場合について説明したが、本実施形態の構成はこれに限定されるものではない。包装容器10Bの他の構成の一例を
図11〜
図13に示す。
図11は、包装容器の別の例を簡略に示す斜視図であり、
図12は、包装容器の構成を簡略に示す正面図であり、
図13は、
図12中のI−I断面図である。
図11〜
図13に示すように、包装容器10Cは、仕切り部材13の一方の側部51、上部52、下部53、および他方の側部54が、容器本体11の周縁シール部25にまで伸びないように設けられている。
【0077】
本実施形態(包装容器10C)において、仕切り部材13は、シート状に形成された仕切りフィルム26Cから構成され、例えば、
図12に示すように、仕切りフィルム26Cは、矩形状とすることができる。仕切りフィルム26Cの一方の側部51、上部52、下部53が、後面フィルム22のヒートシーラント層33とヒートシールされ、次いで、他方の側部54から機能性向上材を挿入した後、仕切りフィルム26Cの他方の側部54と後面フィルム22のヒートシーラント層33をヒートシールすることにより、ロの字型のポケットシール部56により囲まれた領域Bが形成される。なお、上述の例では、他方の側部54から機能性向上材14を挿入する例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0078】
包装容器10Cでも、包装容器10Bと同様、上記
図1〜
図5に示す本発明の第1の実施形態に係る包装容器10Aに比べて領域Aの空間を広く取ることができるため、より多くの食品を収容することができる。
【0079】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る包装容器について、図面を参照して説明する。なお、本発明の第1および第2の実施形態と同様の部材については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図14は、本発明の第3の実施形態に係る包装容器の斜視図であり、
図15は、包装容器の構成を簡略に示す正面図であり、
図16は、
図15中のI−I断面図である。
図14〜
図16に示すように、包装容器10Dは、容器本体11内に袋状に形成されてなる仕切り部材13を含むものである。第3の実施形態においては、仕切り部材13が、2つの面13A、13Bを有し、仕切り部材13の内部に機能性向上材14を内包するようにしている。
【0080】
包装容器10Dにおいて、仕切り部材13は、一枚の仕切りフィルム26Dで構成されていてもよいし、二枚以上の仕切りフィルム26Dで構成されていてもよい。ここでは、2枚の仕切りフィルム26Dから仕切り部材13を構成する例について説明する。
【0081】
本実施形態において、仕切り部材13は、周縁シール部61を有している。一方の仕切りフィルム26Dと他方の仕切りフィルム26Dを対向するようにして重ね合わせ、上部62、下部63、一方の側部64がヒートシールされ、次いで、他方の側部65から機能性向上材を挿入した後、他方の側部65をヒートシールすることにより、周縁シール部61により囲まれた領域Bが形成される。本実施形態においては、仕切り部材13のみで領域Bを形成し、機能性向上材14を内包するようにしている。なお、上述の例では、一方の側部65から機能性向上材14を挿入する例を説明したが、これに限定されるものではない。また、一枚の仕切りフィルム26Dを2つ折りして仕切り部材13を形成する場合、折り返し部分に周縁シール部を形成しないようにしてもよい。
【0082】
包装容器10Dにおいても、包装容器10Bと同様、上記
図1〜
図6に示す本発明の第1の実施形態に係る包装容器10Aに比べて領域Aの空間を広く取ることができるため、より多くの食品を収容することができる。
【0083】
また、機能性向上材14は、上記各実施形態のように、内包材に乾燥剤や脱酸素剤などの機能性向上材を収容して用いているが、仕切り部材13が2つの面13A、13Bで袋状に形成されているため、
図17に示すように、内包材に収容することなく、粉末状、粒状などの種々の形状の機能性向上材14を、そのまま仕切り部材13内に内包して用いることができる。
【0084】
包装容器10Dは、機能性向上材を、直接、仕切り部材13内に収容することができるため、機能性向上材を包装する内包材を不要とし、内包材に機能性向上材を内包することなく仕切り部材13に直接入れて用いることができる。
【0085】
なお、本実施形態において、仕切り部材13は、容器本体11に固定してもよいし、固定しなくてもよい。
【0086】
[その他の構成の包装容器]
本発明のその他の構成の包装容器について、図面を参照して説明する。なお、本発明の第1の実施形態と同様の部材については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図18は、本発明のその他の構成の包装容器の斜視図であり、
図19は、本発明のその他の構成の包装容器を簡略に示す正面図であり、
図20は、
図19中のI−I断面図である。
図18〜
図20に示すように、包装容器10Eは、上記
図1〜
図6に示す本発明の第1の実施形態に係る包装容器10Aに注出部71を備えたものである。すなわち、包装容器10Eは、容器本体11と、注入部12と、仕切り部材13と、注出部71とを備えている。
【0087】
(注出部)
注出部71は、包装容器の注入部12と対向する位置に設けられている。注出部71の構成を
図21〜
図23に示す。
図21は、注出口の正面図であり、
図22は、注出口のフランジ部方向から見た断面図であり、
図23は、注出口にキャップを逆転させて嵌合させた状態の正面図である。注出部71は、注出口72、第2フランジ73、およびキャップ74を備えている。なお、本実施形態では、注出部71は、包装容器の注入部12と対向する位置に設けられているが、これに限定されるものではなく、側部シール部25Cなど包装容器11の注入部12と異なる位置に設けられていればよい。
【0088】
注出口72は、包装容器10Eの外側に設けられ、筒状に形成されている。注出口72は、その上端に薄肉部75が形成されている。
【0089】
第2フランジ73は、注出口72に連接して設けられ、包装容器10Eの内面の縁部に溶着されている。第2フランジ73は、
図21に示すように、断面の形状を略菱形とし、内部に円筒状の空洞76を有している。第2フランジ73の断面形状を略菱形とすることにより、容器本体11を構成する包装フィルムに溶着し易くすることができる。なお、本実施形態では、第2フランジ73の断面の形状を略菱形としているが、これに限定されるものではなく、円形、四角形など他の形状としてもよい。
【0090】
キャップ74は、注出口72の上端の薄肉部75に取り付けられている。キャップ74は薄肉部75を介して注出口72に取付けられているため、キャップ74は薄肉部75を介して注出口72に着脱自在とすることができる。また、キャップ74は、外側の側面に一対のつまみ77を有している。つまみ77を一方向に回転させることで、つまみ77の回転に付随して薄肉部75を容易に回転させることができる。つまみ77を一方向に回転させると、それに付随して薄肉部75がつまみ77の回転方向に捻れて破損するため、キャップ74を注出口72から容易に分離することができる。
【0091】
また、キャップ74は、その上端部の周縁に段部78が設けられている。キャップ74は、段部78から半円キャップ状に形成されている。上端部の外径は、注出口72と連接するキャップ74の外径よりも小さくなっており、注出口72の内径と略同一である。キャップ74は注出口72から分離された後、分離したキャップ74を逆向きに回転させて、
図22に示すように、上端部の上端側が注出口72に嵌められる。よって、包装容器10E内の調理済み食品の飲食を途中で中断するような場合であっても、キャップ74により注出部71を密封することができるため、容器本体11内は衛生的に優れた状態を保つことができる。
【0092】
注出口72とキャップ74とは、一体成形して形成されることが好ましい。注出口72とキャップ74とを一体成形とすることにより、製造コストの低減を図ることができると共にキャップ74を注出口72に装着する手間を省略すことができる。
【0093】
注出口72とつまみ77とについても、それぞれ別の部材でもよいが、製造コストの観点から、一体に成形されることが好ましい。
【0094】
円筒注出口72、第2フランジ73、およびキャップ74は、容器本体11の内側に溶着させる必要があるため、容器本体11の材料にもよるが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形されたものであることが好ましい。上記熱可塑性樹脂の中でも、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0095】
このように、包装容器10Eは、更に注入部12と対抗する位置に注出部71を備えているため、包装容器10E内に液体を注入しても機能性向上材14が液体と接触することを防止して高い保存性を維持しつつ、注入部12から加水して加水調理食品を調理した後、包装容器11を開封しなくても包装容器10A内に残存させることなく効率よく消費することができる。また、包装容器10Eは、上記の加水調理食品の他に、加水調理した食品が、例えば、スープ、お茶、ジュース、ゼリーなどの流動性の食品である場合、注出部71に直接口を付けて吸引または包装容器10Eに外圧を加えることにより、加水調理食品を食することができる。
【0096】
なお、上記においては、上記
図1〜
図5に示す本発明の第1の実施形態に係る包装容器10Aが注出部71を備える場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、上記第2および第3の実施形態においても、同様に適用することができる。
【0097】
上記においては、機能性向上材14を容器本体11内に収容される場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、食品の保存性を向上させるための機能性向上材であれば、同様に用いることができる。
【0098】
上記各実施形態においては、容器本体11内に、スープやご飯類、粉末飲料などの加水調理食品を収容する場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、ステーキやチキン、ハムなどの肉料理、魚料理、果物、プリンなどのレトルト食品や缶詰など開封してそのまま食べられる温度安定化食品、ナッツやクッキーなどの菓子類、ドライフルーツ、ビーフジャーキーなどの自然形態食品・半乾燥食品、果物や生野菜などの生鮮食品、放射線照射により殺菌を行なった放射線照射食品、調味料などにも同様に用いることができる。
【0099】
<加水食品用パッケージ>
上記した本発明による包装容器は、その全体を、遮光性フィルムなどの外装材によって包装して加水食品用パッケージとすることができる。遮光性フィルムとしては、例えば、アルミ箔を積層したフィルム、またはアルミ蒸着したフィルムなどを好適に使用することができる。本実施形態に係る包装容器は、上記のように加水調理食品の長期保存のため、容器本体を構成する包装フィルムはバリアー層を備えるようにしてもよいが、加水調理食品が包装容器の外観から視認しにくくなる可能性がある。そのため、容器本体を構成する包装フィルムとして、可視光透過性に優れる包装フィルムを用い、包装容器内の加水調理食品の視認性を向上させるようにしてもよいが、可視光などの影響により、加水調理食品の変成を生じる可能性がある。そこで、本実施形態に係る包装容器を、外装材によって包装して得られる加水食品用パッケージを、宇宙食パッケージとして用いることにより、可視光や宇宙空間に移動させる間までの外的要因などにより、加水調理食品の変成を抑制することができる。
【0100】
また、上記した本発明による包装容器は、宇宙食用の用途として用いること以外に、例えば、非常食用、医療用など衛生性が要求される用途などにも好適に用いることができる。
【実施例】
【0101】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの例によって、何ら限定されるものではない。
【0102】
<実施例1>
[仕切りフィルムの準備]
LLDPE1(「V−941」、アイセロ化学製)を製膜したポリエチレン樹脂フィルムを仕切りフィルムとして用いた。ポリエチレン樹脂フィルムを10cm四方(10cm×10cm)に切断して、5枚重ね合わせたものの質量と、膜厚の実測値を測定した。そして、この仕切りフィルムの厚さの実測値を用いて、仕切りフィルムを5枚重ね合わせたものの体積を求め、測定して得られた質量を算出した体積で除算することにより密度を算出した。得られた密度は、下記の表1に示される通りであった。
【0103】
また、上記のポリエチレン樹脂フィルムを、JIS K 7127に準拠した測定方法により、テンシロン万能試験機(「RTC−1310A」、ORIENTEC社製)を用いて、MD方向およびTD方向における引張り弾性率(単位:MPa)を測定した。MD方向およびTD方向における引張り弾性率は、それぞれ3回測定して、その平均値を求めた。得られた引張り弾性率は、表1に示される通りであった。
【0104】
(包装フィルムの準備)
蒸着層を有する厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(「IB−PET−UB」、DNPテクノパック社製)の一方の面に、ウレタン系2液硬化型接着剤を使用したドライラミネーション法により、厚み25μmの二軸延伸したナイロンフィルム(「N−1202」、東洋紡社製)を積層し、積層したナイロンフィルム上に、さらにウレタン系2液硬化型接着剤を使用したドライラミネーション法により、厚み80μmのポリエチレンフィルム(PEF:「TUX−FCS」、三井化学東セロ社製)を積層することにより、後記する容器本体の前面フィルム、後面フィルム、一対の側面フィルムを構成するための包装フィルムを得た。
【0105】
[包装容器の作製]
前面フィルム、後面フィルム、一対の側面フィルムのシーラント層側の面を対向させ、一方の側部を除いて周縁シール部が形成された容器本体を製造した。また、一対の仕切りフィルムを対向させ、その間に脱酸素剤(「ZP−50」、三菱ガス化学(株)製)を挿入した後、周縁シール部を形成することにより、仕切り部材を製造した。次いで、容器本体の一方の側部に形成された開口から、脱酸素剤を収容した仕切り部材と、食品としてフリーズドライされた白米とを収容した後、容器本体の一方の側部をヒートシールして、包装容器を製造した。なお、該包装容器は、本発明の第3の実施形態に相当するものである。
【0106】
<実施例2>
LLDPE1を、LDPE(「S−201K」、アイセロ化学社製)に変更し、膜厚を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。得られた仕切りフィルムの密度および引張り弾性率を表1に示す。
【0107】
<実施例3>
LLDPE1をLLDPE2(「N−290」、アイセロ化学社製)に変更して仕切りフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして行った。得られた仕切りフィルムの密度および引張り弾性率を表1に示す。
【0108】
<実施例4>
LLDPE1をLLDPE3(「SR−WNシロ」、DNPテクノフィルム社製)に変更して仕切りフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして行った。得られた仕切りフィルムの密度および引張り弾性率を表1に示す。
【0109】
<実施例5>
LLDPE1をLLDPE3(「SR−WNシロ」、DNPテクノフィルム社製)に変更し、膜厚を変更して仕切りフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして行った。得られた仕切りフィルムの密度および引張り弾性率を表1に示す。
【0110】
<実施例6>
LLDPE1を、HDPE(「H−500S」、アイセロ化学社製)に変更し、膜厚を変更して仕切りフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして行った。得られた仕切りフィルムの密度および引張り弾性率を表1に示す。
【0111】
<比較例1、2>
LLDPE1を、PET(「ハイトロンPG」、タマポリ社製)、またはPAN(「ハイトロンBX」、タマポリ社製)に変更し、膜厚を変更して仕切りフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして行った。得られたセパレートフィルムの密度および引張り弾性率を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
<評価>
実施例1〜6、比較例1、2で得られたそれぞれの包装容器の仕切り部材で隔離された脱酸素剤が収容されていない領域(
図16に示す領域Aに相当)内の酸素濃度が時間とともにどのように変化したかを測定した。測定結果は、
図24に示される通りであった。なお、酸素濃度の測定は以下のようにして行った。
【0114】
(酸素濃度の測定)
実施例1〜6、比較例1、2で得られた各包装容器を、非破壊酸素量測定装置(「Fibox3」、PreSens社製)を用い、タイテック製の非破壊測定読取用光ファイバー(POF−L2.5−1SMA)の励起光が出る検出端を、予め容器内面に貼付しておいたセンサーチップに当てることにより、包装容器の仕切り部材で隔離された脱酸素剤が収容されていない領域の酸素濃度を測定した。なお、酸素濃度は、包装容器内の空気を脱気しない状態で測定した。
【0115】
図24に示すように、酸素濃度は、実施例1、2、3、4、5、6、比較例1、2の順に低くなる傾向にあった。比較例1、2では、測定開始から200時間経過後でも酸素濃度が20%以上であったことが確認された。これに対し、実施例1〜6では、測定開始から400時間以内に、酸素濃度が初期の半分以下になることが確認された。また、実施例1〜4では、測定開始から200時間以内に、酸素濃度が初期の半分以下になることが確認された。
【0116】
この試験結果から明らかなように、所定のポリオレフィン系樹脂フィルムからなる仕切りフィルムを使用した包装容器は、PETやPANなど他のフィルムを仕切りフィルムとして使用したものに比べて、包装容器内の残存酸素をより短時間で吸収できることがわかる。