特開2015-99123(P2015-99123A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-99123(P2015-99123A)
(43)【公開日】2015年5月28日
(54)【発明の名称】炭素粒子の空間分布同定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20150501BHJP
【FI】
   G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-239814(P2013-239814)
(22)【出願日】2013年11月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、平成25年度、独立行政法人科学技術振興「地域卓越研究者戦略的結集プログラム(エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 秀志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】薄井 雄企
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】表 和彦
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001GA06
2G001GA08
2G001GA09
2G001HA14
2G001KA01
2G001LA01
2G001LA02
2G001LA05
2G001LA06
2G001MA10
2G001NA03
2G001NA05
2G001NA06
2G001NA07
2G001NA08
2G001NA09
2G001NA10
2G001NA11
2G001NA12
2G001NA13
2G001NA14
2G001NA17
2G001PA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基材中に分散した微細炭素粒子の基材中の空間分布同定を行う新たな方法を提案する。
【解決手段】炭素粒子の空間分布同定方法は、炭素以外の元素を含む物質からなる粒子を内包またはドープした炭素粒子を基材中に含有する試料を、前記物質と基材との間のX線吸収率に差が出やすい波長成分を含むX線を選択して、三次元イメージング可能なX線顕微鏡を用いてX線透視撮影をし、あるいは該試料を回転させながら複数回のX線撮影を行い、Computed Tomography(CT)像を再構成することにより、前記物質の試料内部における三次元像を形成して炭素粒子の空間分布を測定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素以外の元素を含む物質からなる粒子を内包またはドープした炭素粒子を基材中に含有する試料を、前記物質と基材との間のX線吸収率に差が出やすい波長成分を含むX線を選択して、三次元イメージング可能なX線顕微鏡を用いてX線透視撮影をし、あるいは前記試料を回転させながら複数回のX線撮影を行い、Computed Tomography(CT)により、前記物質の試料内部における三次元像を形成して炭素粒子の空間分布を測定することを特徴とする炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項2】
炭素粒子の空間分布量も測定することを特徴とする請求項1記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項3】
炭素粒子が微細炭素粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項4】
微細炭素粒子がカーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンド、またはこれらの混合物である請求項3記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項5】
炭素粒子に内包される粒子が、炭素より原子番号の大きな元素の単体、塩類、もしくは酸化物からなる粒子であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項6】
ドープされた元素が炭素より原子番号の大きな元素であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項7】
基材が樹脂、セラミック、金属、生体、生体材料、もしくは細胞からなることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項8】
X線透視撮影あるいはComputed Tomography撮影から微細炭素粒子の個数、または数密度を計算することを特徴とする請求項3〜7いずれか1項記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項9】
炭素微粒子の個数または数密度計算をするために、エネルギー幅が狭く、感度の高い低エネルギーX線を使用することを特徴とする請求項8記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【請求項10】
ドープする元素に応じてエネルギーを変えたX線を使用することを特徴とする請求項7〜9いずれか1項記載の炭素粒子の空間分布同定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な炭素粒子の空間分布同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細炭素粒子、具体的にはカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、ナノ炭素繊維、ナノダイヤモンド、ナノ黒鉛粒子、ナノカーボンブラック粒子、フラーレン及びこれらをハイブリッドさせた混合粒子は様々な特異性を示し、今後の産業を支える基礎材料として期待されている。CNTはグラフェンシートを円筒状にまるめた高アスペクト比を有する中空状のナノサイズ直径炭素繊維である。グラフェンは炭素sp2結合からなる結晶平面を持つシート状物質で、積層したものはグラファイト(黒鉛)である。ナノダイヤモンドはsp3の三次元結合からなる構造を持つ。近年、これらのハイブリッド構造を持つ粒子の合成研究が報告されている。
【0003】
特にCNT及びCNT複合材料は比表面積が大きい、機械的安定性が高い、電気伝導性及び熱伝導性が高い等、今までの材料に無い優れた物性を示すことが予想されている。例としてスーパーキャパシタ、炭素電極、太陽電池部品、エネルギー貯蔵、センサー、樹脂複合材、セラミック複合材、金属複合材による機械部品材料、電線、ケーブルなどへの応用が予想されている。
【0004】
ところで、CNTのような微細炭素の空間分布の同定は、炭素複合材料を応用した高度な複合物を開発する際に重要である。また、毒性評価におけるCNTの生体内分布計測における臓器内空間分布及び濃度分布計測も重要な課題である。しかし、CNTより形状の大きな炭素繊維プリプレグ中の炭素繊維配向を計測することは可能であったが、より細いCNTの表面物性をほとんど変化させることなくCNTの空間分布の測定を行う方法はなかった。CNT 以外の微細炭素材料の空間分布も同様に良い測定方法は提案されていない。
【0005】
また、非破壊分析方法により物質(基材)の内部を分析するためにX線が使用されている。
しかしながら、炭素は、X線に対して、X線質量吸収係数がX線波長0.7107 Åで0.625 cm2/g (1) と小さく、より大きなX線質量吸収係数を持つ元素からなる基材中ではX線による同定が容易ではない。同条件の酸素のX線質量吸収係数 1.31 に比べても小さく、炭素そのものの撮像は容易ではない。従って、基材中に分散されたCNTの三次元空間分布を同定することは基材の特性評価や物性向上に必須であるにもかかわらず混練条件等の操作手順で規定する以外に有効な手段が無かった。
【0006】
特に混合物中のCNTの分布を観測するには走査型電子顕微鏡で破断面を観察する方法しかなかった(例えば特許文献1)。他の微細炭素材料もCNTと同様であり、例えばカーボンブラックを樹脂基材中に混練する場合の分布度は、電気伝導度の計測や混錬樹脂の密度差、樹脂基材のスライス片の顕微鏡観察を行う事等で三次元空間分布を推定している。また、毒性評価におけるCNT生体内分布は、標的臓器のスライス片観察または臓器を溶解または燃焼して、CNTの量を秤量する方法が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−215977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、基材中に分散した微細炭素粒子の基材中の空間分布同定を行う新たな方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る炭素粒子の空間分布同定方法は、炭素以外の元素を含む物質からなる粒子を内包またはドープした炭素粒子を基材中に含有する試料を、前記物質と基材との間のX線吸収率に差が出やすい波長成分を含むX線を選択して、三次元イメージング可能なX線顕微鏡を用いてX線透視撮影をし、あるいは該試料を回転させながら複数回のX線撮影を行い、Computed Tomography(CT)により、前記物質の試料内部における三次元像を形成して炭素粒子の空間分布を測定することを特徴とする。
【0010】
また、炭素粒子の空間分布の同定と共に、炭素粒子の空間分布量も測定することが可能である。
炭素粒子は、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンド、またはこれらの混合物などの微細炭素粒子の同定が行える。
【0011】
炭素粒子に内包される粒子は、炭素より原子番号の大きな元素の単体、塩類、もしくは酸化物からなる粒子とすることができる。CNTの中心中空部分に微細な粒子を内包させたものをピーポッドと言う。これら微細な粒子を、炭素より原子番号の大きな元素の単体、塩類、もしくは酸化物からなる粒子とすることによって、これら粒子をX線によって投影でき、これにより炭素粒子の空間分布の同定を好適に行える。
【0012】
ドープされた元素が炭素より原子番号の大きな元素とすることができる。微細炭素粒子の炭素を他の元素で置き換えたドープ炭素(ホウ素ドープ、窒素ドープ、金ドープ、他)の研究報告も数多くされている。これらドープ炭素のドープ元素を炭素より原子番号の大きな元素とすると共に、より波長の短いX線を用いることによって、これらドープ炭素を分析でき、これにより炭素粒子の空間分布の同定を好適に行える。
【0013】
前記基材を樹脂、セラミック、金属、生体、生体材料、もしくは細胞とすることができる。
X線透視撮影あるいはComputed Tomography像から微細炭素粒子の個数、または数密度を計算することが可能となる。
炭素微粒子の個数または数密度計算をするために、エネルギー幅が狭く、感度の高い低エネルギーX線を使用するとよい。これはX線源のターゲット物質として例えばCrやCuを選択することによって実現できる。
また、ドープする元素に応じてターゲット物質を交換することによりその特性X線のエネルギーを変えたX線を使用するようにすると好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材中に分散した微細炭素粒子の基材中の空間分布の同定を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】三塩化ガドリニウム内包DWCNT(ピーポッド)の透過型電子顕微鏡写真である。
図2】三塩化ガドリニウム内包DWCNT(ピーポッド)のEDX蛍光X線分析を示すグラフである。
図3】リガクnano3DXで撮影したパラフィン中に分散固定した三塩化ガドリニウム内包DWCNT(ピーポッド)に対して感度が高いCuターゲットを用いて測定した透視画像である。
図4図3のサンプルの三次元画像のコンピューターグラフィック出力画像である。
図5】リガクnano3DXで撮影したパラフィン中に分散固定した二塩化白金内包DWCNT(ピーポッド)に対して感度が高いCuターゲットを用いて測定した透視画像である。
図6】リガクnano3DXで撮影したパラフィン中に分散固定した三塩化ガドリニウム内包DWCNT(ピーポッド)のコンピューターグラフィック出力画像である。
図7】リガクnano3DXで撮影したパラフィン中に分散固定したDWCNTのコンピューターグラフィック出力画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態に係る炭素粒子の空間分布同定方法は、前記のように、炭素以外の元素を含む物質からなる粒子を内包またはドープした炭素粒子を基材中に含有する試料を、前記物質と基材との間のX線吸収率に差が出やすい波長成分を含むX線を選択して、三次元イメージング可能なX線顕微鏡を用いてX線透視撮影をし、あるいは該試料を回転させながら複数回のComputed Tomography撮影を行い、前記物質の試料内部における三次元像を測定して炭素粒子の空間分布を測定することを特徴とする。
【0017】
本実施の形態において、微細炭素粒子は、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンド、またはこれらの混合物などを言う。
以下、微細炭素粒子として、CNTを例として説明する。
CNTの中空内に内包する原子、分子、化合物を粒子と総称する。CNTにはさまざまな種類の粒子を内包させることができるから、内包した粒子の種類によって多種の粒子内包CNTを作成することができる。CNTに粒子を内包させる際には、同一の粒子に限らず異種粒子を内包させることも可能である。以下、CNTに上記粒子を内包したものをピーポッドと言うことがある。ピーポッドは既に開示されている方法(例えば特開2013−57577号公報)により作製することができる。
【0018】
本実施の形態で使用するCNTは、最外径が0.4nm以上200nm以下であればよいが、特に1nm以上であり100nm以下であることが望ましい。
また、本実施の形態で使用するCNTは単層CNT、2層以上の多層CNTの種類によらず使用が可能である。本実施の形態に使用するCNTに内包する粒子は、原子、分子のいずれでも良く、有機金属、有機物などの化合物でも良い。また、この粒子は、常温常圧下において、固体、液体、気体のいずれであっても使用が可能であり、固体、液体であると好適である。
【0019】
本実施の形態に係るCNTに内包する粒子は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銀、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ウランのいずれか1つまたは、いずれかの化合物を含む構成とすることができる。
【0020】
上記のように、特に、CNTに内包する粒子は、炭素よりも原子番号の大きな元素の単体、塩類もしくは酸化物からなる粒子が好適である。
粒子内包CNTによる放射線吸収作用は、CNTに内包された粒子の放射線吸収作用の寄与による。したがって、CNTの設計と、内包する粒子の種類、濃度等を選択することにより、効果的な撮像を得るために適した内包粒子とX線波長を選択するようにする。
【0021】
本実施の形態は、CNTに元素を内包した粒子内包CNT(ピーポッド)にすることにより、質量吸収係数が炭素あるいはCNTのX線質量吸収係数の値に比べて大きいという知見に基づく。すなわち、炭素よりも原子番号の大きな元素の単体、塩類もしくは酸化物は、炭素あるいはCNTよりも大きなX線質量吸収係数を有することから、X線により検出することができる。特に、内包する粒子はX線波長及び検出器の特性合わせて選択すればよいが、重粒子金属である金あるいは白金、及びそれらの塩類は大きなX線質量吸収係数を持つのでより望ましい。
そして、これらピーポッドを含有する基材との間にX線吸収率に差が出やすい波長成分を含むX線を選択して、X線透視撮影をすることによって、基材と異なるコントラストからなる、粒子のX線透視像を得ることができる。そのためには例えばCrやCuのX線源のターゲット物質を用いてそれらの特性X線を使うことが有効である。
基材は、樹脂、セラミック、金属、生体、生体材料、もしくは細胞とすることができる。
【0022】
ピーポッドのX線透視撮影は、三次元イメージング可能なX線顕微鏡(三次元X線顕微鏡:例えばリガク製nano3DX(登録商標))を用いてX線透視撮影をし、あるいは該試料を回転させながら複数回のX線撮影を行い、Computed Tomographyを再構成する。
このようにして、ピーポッド(前記粒子)の基材内部における三次元像を測定して、炭素粒子の空間分布を測定することができる。
そして、ピーポッドの空間位置と体積分布を測定することにより、CNTの空間位置と体積分布を同定、定量計測を行う。CNT以外の微細炭素粒子はドープによって炭素原子を置き換えるまたは炭素間に粒子を包含させることによりCNTと同様の手法で計測を行うことができる。
【0023】
本実施の形態によれば、三次元空間分布の同定が困難であった、基材中に混錬された、または分布した炭素粒子を容易に同定および定量計測可能である。基材中のCNT分散状況あるいは生体内のCNT 粒子の空間分布を定量的に捉えることにより今まで分らなかったCNTと他の元素、分子、粒子との結合、反応や機械力(圧力、応力、加熱による変性など)付与前後の状態変化、変性などの物性を把握することが可能になる。ピーポッドの表面物性は元のCNTとほぼ同一なのでCNTをピーポッドに交換することによる差異はほとんどない。ピーポッドに内包された粒子はCNTの軸方向中心位置と長さと幾何的に相似なのであり、CNTの平均直径及び長さは計測可能であるのでピーポッド内包粒子を計測することによりCNTの空間位置と体積分布を同定、定量することは容易である。
【0024】
また、X線透視撮影あるいはComputed Tomography像から微細炭素粒子の個数、または数密度を計算することが可能となる。この場合、炭素微粒子の個数または数密度計算を容易にするために、エネルギー幅が狭く、感度の高い低エネルギーX線を使用するとよい。
また、ドープする元素に応じてエネルギーを変えたX線を使用するようにするとよい。これはX線源のターゲット物質として例えばCrやCuを用いることにより実現される。
【0025】
CNT空間分布同定と定量を行うには、CNTを解像できる数μmの空間分解能で、数mm〜10mmにおよぶサンプル全体を観察する必要がある。そこで、平行ビーム光学系のX線撮像装置を利用し、測定画像をつなぎ合わせることで高分解能大視野計測を行う。また、ドープする物質の種類、サンプル(試料)の大きさに応じて適切な感度のX線画像を得るため、ターゲット材を交換し、特性X線のエネルギーを変更できるX線撮像装置が望ましい。さらにX線吸収係数を定量的に測定するため、エネルギー幅の狭い準単色・単色X線を利用するX線撮像装置がより望ましい。
【0026】
サンプルとしては、炭素粒子の空間分布を確実に測定できるように、8×8×8(mm)等の比較的に大きなサンプルを用いるとよい。そのため、1回で撮影できる像を多数つなぎ合わせ(例えば、つなぎ合わせる画像の数が3以上)、カメラの視野を超える大面積を測定することのできるX線投影像撮像装置あるいはX線CT撮像装置を用いるようにする。
また、解像度は、2μm以下、好ましくは0.5μm以下のX線投影像撮像装置あるいはX線CT撮像装置が好ましい。
【0027】
また、測定対象に応じてX線のエネルギーを変える手段として、X線ターゲット材が交換可能なX線撮像装置あるいはX線CT撮像装置が好ましい。交換可能なX線ターゲット材としては、例えば、Cr、Cu、Mo、Rh、Ag、あるいはWがある。
また、例えば、多層膜ミラーを用いて単色化したX線を利用することが好ましい。
【実施例】
【0028】
実施例1:三塩化ガドリニウム内包ピーポッドの生成
特開2013−57577号公報に示される方法により、 二層CNT(DWCNT)に三塩化ガドリニウムを内包させたピーポッドを作成した。このピーポッドの透過型電子顕微鏡写真を図1に、蛍光X線分析図を図2に示す。図1および図2より、DWCNTのほぼすべての空間に三塩化ガドリニウムが内包されていることが判る。分析結果よりGd質量比は3wt%でDWCNT中空空間をほぼ埋め尽くしている。
【0029】
実施例2:三塩化ガドリニウム内包ピーポッドを用いた三次元空間分布撮像
実施例1で作成したピーポッドをパラフィンに混練固定して、株式会社リガク製造の高分解能3DX線顕微鏡「nano3DX」で撮像した。
すなわち、X線源と二次元X線検出器の間に自動回転ステージを備えたサンプルステージを設置し、サンプルステージ上にパラフィン包埋されたサンプルを取り付けた。
X線源はCuターゲット、加速電圧40kV、管電流30mAとし、X線カメラは1.62μm/pixel、視野およそ1mm、露光時間5秒とし、サンプルを180度回転させながら500枚のX線投影像を測定、CT再構成を行った。
図3にX線透視画像の二次元写真、図4に三次元コンピューター解析グラフを示す。
【0030】
実施例3:
上記と同様にして、二層CNTに二塩化白金を内包させたピーポッドを作成した。図5にこのピーポッドの蛍光X線分析図を示す。このピーポッドも有効に使用し得た。
【0031】
比較:DWCNTとピーポッドの比較
実施例1で作成したピーポッドとその元のDWCNTをnano3DX(R)で撮像した二次元写真をそれぞれ図6図7に示す。図7より、DWCNTだけではDWCNTの分布が明瞭に同定できないことが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7