【解決手段】ハウジングと、後カバーと、ハウジングに対して進退することにより車両用灯具の光軸を調整するシャフトと、シャフトに係合されハウジングの外側から回転工具により回転されることでシャフトを進退させる、クラウンギア部を備えたギア部材と、ギア部材のクラウンギア部と噛合い、一端の前端にクラウンギア部と噛合う歯部が形成され、他端に回転工具の前端部に形成された先端形状部が挿入されて連結し得るソケット部が形成され、後カバーの外壁に回転可能に支持された中継部材と、を備えた。
前記中継部材が、一端の前端に前記クラウンギア部と噛合う歯部が形成され、他端に前記回転工具の前端部に形成された先端形状部が挿入されて連結し得るソケット部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具のレベリング装置。
前記クラウンギア部と噛合う前記歯部が、平面視十字形状の歯を有する公知の十字ねじ回しの前端部に形成された歯部形状を有し、前記クラウンギア部の歯形が、前記十字ねじ回しの前端部に形成された前記歯部形状の断面側壁部を前記十字ねじ回しの軸心回りに回転送りした軌跡で形成された、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具のレベリング装置。
前記ソケット部に公知のねじ回しの前端部に形成された十字ビットが挿入される溝形状及び/又は公知のねじ回しの前端部に形成された多角形軸ビットが挿入される多角凹形状が形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用灯具のレベリング装置。
前記中継部材の前記クラウンギア部と噛合う前記歯部と前記ソケット部との間に凹状溝部が環状に形成され、前記後カバーの外壁に前記凹状溝部が嵌挿されるU字溝部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用灯具のレベリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、容易に、かつ、安定して光軸調整を行うことができる車両用灯具のレベリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用灯具のレベリング装置は、
ハウジングと、
後カバーと、
前記ハウジングに対して進退することにより車両用灯具の光軸を調整するシャフトと、
前記シャフトに係合され前記ハウジングの外側から回転工具により回転されることで前記シャフトを進退させる、クラウンギア部を備えたギア部材と、
前記ギア部材の前記クラウンギア部と噛合い、前記後カバーの外壁に回転可能に支持された中継部材と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具のレベリング装置において、
前記中継部材が、一端の前端に前記クラウンギア部と噛合う歯部が形成され、他端に前記回転工具の前端部に形成された先端形状部が挿入されて連結し得るソケット部が形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の車両用灯具のレベリング装置において、
前記クラウンギア部と噛合う前記歯部が、平面視十字形状の歯を有する公知の十字ねじ回しの前端部に形成された歯部形状を有し、前記クラウンギア部の歯形が、前記十字ねじ回しの前端部に形成された前記歯部形状の断面側壁部を前記十字ねじ回しの軸心回りに回転送りした軌跡で形成された、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用灯具のレベリング装置において、
前記ソケット部に公知のねじ回しの前端部に形成された十字ビットが挿入される溝形状及び/又は公知のねじ回しの前端部に形成された多角形軸ビットが挿入される多角凹形状が形成されている、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用灯具のレベリング装置において、
前記ソケット部の外周面に公知のねじ回しのソケット部が挿入される多角形状が形成されている、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用灯具のレベリング装置において、
前記中継部材の前記クラウンギア部と噛合う前記歯部と前記ソケット部との間に凹状溝部が環状に形成され、前記後カバーの外壁に前記凹状溝部が嵌挿されるU字溝部が形成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、容易に、かつ、安定して光軸調整を行うことができる。
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、公知の回転工具の種類の制約を受けることなく容易に光軸調整を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、ギア部材が滑らかに回転送りされ伝達ロスを抑制することができる。
請求項4及び5に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、公知の回転工具の種類の制約を受けることなく光軸調整を行うことができる。
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、中継部材を介して又は回転工具で直接、光軸調整を多方向から行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0015】
図示した実施形態は、車両用灯具のレベリング装置1を車両用灯具の光軸調整機構に適用したものである。従って、車両用灯具100の概略構成を説明しながら、本実施形態に係る車両用灯具のレベリング装置1(以下、レベリング装置1と記載する)について説明する。
尚、以下の説明及び図面において、車両用灯具100から光が照射される方向を前方側とする。
【0016】
(1)車両用灯具の概略構成
図13は本実施形態に係るレベリング装置1を光軸調整機構に適用した車両用灯具100の前後方向の縦断面図である。以下、図面を参照しながら、車両用灯具100の概略構成を説明する。
【0017】
車両用灯具100は前面に開口された凹部を有するランプハウジング110と、ランプハウジング110の前面開口面を閉塞する透光性を有するレンズ120を備え、これらランプハウジング110とレンズ120とによって画成された内部空間が灯室150として形成されている。尚、ランプハウジング110の開口部とレンズ120の周縁部との接合部分は、シール部材(不図示)によって密閉されている。
【0018】
灯室150内には、光源バルブ130が挿着されたリフレクター140が設けられており、光源バルブ130から出射した光がリフレクター140によって反射されてレンズ120を透して前方へ照射される。
【0019】
リフレクター140の背面下部には、後方側に突出された回動支点部160が設けられている。回動支点部160には、球形状のピボット171が形成されたピボットピン170が取り付けられている。また、ランプハウジング110の後壁の内面下部には、リフレクター140の回動支点部160と対面して軸受部175が形成され、ピボットピン170のピボット171が軸受部175の凹部176に挿入されている。
その結果、リフレクター140は、回動支点部160を支点として上下方向に傾動可能とされている。
【0020】
リフレクター140の背面上部には、後方側に突出した球受け部材180が形成されており、リフレクター140とランプハウジング110との間は、後述するレベリング装置1に進退可能に備えられたシャフト30の球部31とシャフト30とクラウンギア51を介して連結されている。
【0021】
(2)レベリング装置の構成及び動作
(2.1)レベリング装置の全体構成
図1(a)はレベリング装置1の前面側に視点をおいた全体構成を示す斜視図、
図1(b)は後面側に視点をおいた全体構成を示す斜視図、
図2はレベリング装置1の縦断面図である。
レベリング装置1は、ハウジング10と、後カバー20と、シャフト30と、車両用灯具100の光軸調整を遠隔操作で行う第1の駆動伝達機構40と、車両用灯具100の光軸調整を手動で行う第2の駆動伝達機構50と、モータ60と、基板70と、を備えて構成される。
【0022】
(2.2)筐体の構成
図3(a)はハウジング10の前面側(外面側)の斜視図、
図3(b)は後面側(内面側)の斜視図である。
ハウジング10は、内部にシャフト30、第1の駆動伝達機構40、モータ60、基板70等を収容して後カバー20とシール部材S(Oリング)を介して係止されることで、レベリング装置1の筐体を形成する。
【0023】
ハウジング10の前面側(外面側)の上側のほぼ中央には、円筒部11が一体に設けられ、円筒部11の内周面には、後述する第3ギア43の台形ねじ部43bと螺合するねじ孔12が設けられている。円筒部11の先端の内周面には、複数個の回り止め用の凸部13が一体に設けられている。
【0024】
ハウジング10の後面側(内面側)の内側には、モータ60を保持するモータ保持部14a、14bが一体に設けられている。
また、ハウジング10の後面側(内面側)の円筒部11の一方の側方には、軸受部15a、15bが設けられ、後述する第2ギア42の軸を支持する。さらに、ハウジング10の後面側(内面側)の円筒部11の水平中心線に対応する箇所には、後述するロッド44の回り止め用の二股形状のアーム部16a、16bが一体に設けられている。
ハウジング10の後面側(内面側)の円筒部11の他の側方には、基板支持部17a、17bが設けられ、基板70の端面を後カバー20と挟み込んで固定する。
【0025】
図4(a)は後カバー20の後面側(外面側)の斜視図、
図4(b)は前面側(内面側)の斜視図である。
後カバー20の後面側(外面側)の上側のほぼ中央には、円筒部21がハウジング10の円筒部11と同軸上に一体に設けられ、後述するクラウンギア51を支持する。
円筒部21の外面側には、後述する中継部材55を回転支持するU字溝部22が形成されている。U字溝部22の配置数に関しては、特に限定されないが、本実施形態においては、後カバー20の上側を基準として、周方向に45度ごとに配置されている。
また、後カバー20の後面側(外面側)の下側の側方には、外部から接続されるコネクタ(図示せず)とのコネクタ接続部25が設けられている。
【0026】
後カバー20の前面側(内面側)の円筒部21の側方には、基板70の端面をハウジング10と挟み込んで固定する基板支持部23a、23bが設けられている。
また、後カバー20の前面側(内面側)の円筒部21の下方には、ハウジング10のモータ保持部14a、14bにスナップフィットされたモータ60を保持する保持部24a、24bが一体に形成されている。
【0027】
(2.3)第1の駆動伝達機構の構成と動作
図5はレベリング装置1を構成する第1の駆動伝達機構40の構成斜視図である。
第1の駆動伝達機構40は、モータ60の出力軸61に嵌挿された第1ウォーム41と、第2ギア42に形成されたウォームホイール部としてのはす歯ギア部42aと、第2ギア42のはす歯ギア部42aと同一軸上に一体として形成された第2ウォーム42bと、第3ギア43に形成されたウォームホイール部としてのはす歯ギア部43aと、第3ギア43のはす歯ギア部43aと同一軸上に一体として形成された台形ねじ部43bと、ロッド44と、から構成されている。
【0028】
第1の駆動伝達機構40は、ハウジング10及び後カバー20内であって、モータ60とシャフト30との間に配置されていて、モータ60の回転駆動によりシャフト30をハウジング10及び後カバー20に対して
図5中の実線矢印方向(シャフト30の軸方向)に進退させる。
【0029】
モータ60の出力軸61には、第1の駆動伝達機構40の入力端になる第1ウォーム41が嵌入され、ハウジング10のモータ保持部14a、14bに形成された半円形の凹部にスナップフィットされた後、後カバー20の保持部24a、24bに保持されて、ハウジング10と後カバー20とで形成される筐体内に配置されている。
【0030】
シャフト30は、ハウジング10の円筒部11及び後カバー20の円筒部21内に、第1の駆動伝達機構40及びクラウンギア51を介して、ハウジング10及び後カバー20に対して前後方向すなわちシャフト30の軸方向に進退可能にかつ回転可能に取り付けられている。
【0031】
シャフト30は、丸棒形状をなし、一端部(前端部)には、球部31が一体に設けられている。また、シャフト30の中間部には、台形ねじ32が設けられている。
台形ねじ32は、後述するハウジング10に回転不可能に配置されたロッド44のねじ孔45と螺合することにより、シャフト30が、ハウジング10及び後カバー20に対して回転しながらに軸方向に進退する。
【0032】
シャフト30の球部31には、球受け部材180が、球部31の中心を中心として回転可能に取り付けられる。球受け部材180は、リフレクター140に取り付けられている。これにより、シャフト30は、球受け部材180を介してリフレクター140に取り付けられている。また、ハウジング10の円筒部11はシール部材S1(Oリング)を介して、ランプハウジング110に取り付けられている。
【0033】
第3ギア43は、全体が円筒形状をなし、第3ギア43の一端部(後端部)の外周面には、はす歯ギア部43aが設けられていると共に、第3ギア43の他端部(前端部)の外周面には、台形ねじ部43bが設けられている。第3ギア43の台形ねじ部43bはハウジング10の円筒部11の内周面に形成されたねじ孔12と、シャフト30の進退方向と同方向にねじ送り可能に螺合されている(
図2参照)。
また、第3ギア43のはす歯ギア部43aがウォームホイール部として第2ギア42の第2ウォーム42bと噛合っている。
【0034】
この結果、第3ギア43は、モータ60の回転駆動により、第1ウォーム41と、第2ギア42のはす歯ギア部42aと、第2ギア42の第2ウォーム42bと、第3ギア43のはす歯ギア部43aとを介して、ねじ送り作用でハウジング10及び後カバー20に対して回転しながらシャフト30及びロッド44と共に進退する。
【0035】
ロッド44は、前端に開口し前端に向かって複数の切欠き部が形成された第1の円筒部44aと内面にシャフト30の台形ねじ32と螺合するねじ孔45が設けられた第2の円筒部44bとからなる。
第1の円筒部44aの先端の外周面には、二組の回り止め用の溝部46がハウジング10の円筒部11の先端の内周面に設けられた二個の回り止め用の凸部13に対応して設けられている。
また、第1の円筒部44aの先端の外周面には、円環状に突起部47が形成され、後述するように第3ギア43が嵌挿されたときに、ロッド44と第3ギア43とが回転可能にかつ軸方向に移動不可能に固定される。
【0036】
ロッド44の第2の円筒部44bの一端(後端側)の外周面には、回り止め用の突起部48がロッド44の径方向にかつハウジング10の二股形状のアーム部16a、16bに対応して一体に設けられている。
また、ロッド44の第2の円筒部44bの一端(後端側)の外周面には、連結部49がロッド44の径方向に一体に設けられ(
図7(a)参照)、基板70上に配置された位置センサ(不図示)と連結され、ロッド44及びシャフト30の進退位置が位置センサへ伝達される。
【0037】
ロッド44の第1の円筒部44aの回り止め用の溝部46とハウジング10の円筒部11の回り止め用の凸部13が係合し、かつ、ロッド44の第2の円筒部44bの回り止め用の突起部48がハウジング10の二股形状のアーム部16a、16bに係合する。
これにより、ロッド44はハウジング10に回転不可能にかつシャフト30の進退方向(軸方向)に進退可能に取り付けられる。
【0038】
また、ロッド44に第3ギア43が嵌挿されて、かつ、ロッド44の第1の円筒部44aの円環状の突起部47とロッド44の第2の円筒部44bの前端部とが第3ギア43の両端部を押えている。これにより、ロッド44は、第3ギア43に回転可能にかつシャフト30の進退方向に進退可能に、第3ギア43と一体化されてなる。
この結果、ロッド44は、モータ60の回転駆動によりハウジング10及び後カバー20に対して回転せずに第3ギア43およびシャフト30と共に進退し、リフレクター140が水平線回りに
図13中の二点鎖線矢印方向に傾動して、車両用灯具100の光軸が車両の姿勢の変化に対応して調整される。
【0039】
(2.4)第2の駆動伝達機構の構成と動作
図6はレベリング装置1を構成する第2の駆動伝達機構50の構成斜視図、
図7(a)は第2の駆動伝達機構50の縦断面図、
図7(b)はシャフト30の被案内突起33とクラウンギア51の案内凹条溝54との係合部の拡大断面図である。
第2の駆動伝達機構50は、シャフト30が、ロッド44と後カバー20を介して一端側(後端側)がクラウンギア51と連結されて構成されている。
シャフト30の中間部には、台形ねじ32が設けられ、ロッド44の第2の円筒部44bの内周面には、ねじ孔45が設けられている。そして、ロッド44とシャフト30は、その軸心上で互いのねじ孔45と台形ねじ32が螺合されて挿入されている。
【0040】
クラウンギア51は、前端に開口した連結穴と連結穴の内面に前端に向かって複数の案内凹条溝54が形成された円筒部52とクラウンギア部53とからなる。
そして、クラウンギア51は、円筒部52が、後カバー20の円筒部21に嵌挿され、回転可能にかつ円筒部52の軸方向に移動不可能に取り付けられている。
【0041】
シャフト30の一端(後端)に設けられた被案内突起33が、クラウンギア51の円筒部52に設けられた案内凹条溝54と係合し、シャフト30は、クラウンギア51に対してシャフト30の軸方向に移動可能でかつ回転不能に取り付けられている。
これにより、シャフト30は、クラウンギア51が回転されると、ハウジング10に回転不可能に取り付けられているロッド44のねじ孔45とシャフト30の台形ねじ32とが噛合うねじ送り作用で、軸方向に進退する(
図7(a)中の実線矢印参照)。
【0042】
後カバー20の後面側(外面側)に形成された複数のU字溝部22の一には中継部材55が回転自在に嵌挿されている。具体的には、中継部材55(
図8参照)は、一端の前端にクラウンギア部53と噛合う歯部56が形成され、他端に回転工具200(
図13参照)の前端部に形成された先端形状部が挿入されて連結し得るソケット部57が形成され、歯部56とソケット部57との間に形成された凹状溝部55aがU字溝部22に回転可能に嵌挿されている。
【0043】
そして、中継部材55のソケット部57に、回転工具200の十字ビット210又は多角形軸ビット220が挿入された状態で、
図13に示すように回転工具200を回転することでクラウンギア51が回転され、シャフト30が軸方向に進退する。その結果、リフレクター140はピボット171を回動支点として上下方向に傾動し、車両用灯具100の上下方向の光軸の初期設定が行われる。
【0044】
(2.5)中継部材の構成
図8(a)は中継部材55の平面図、
図8(b)は正面図、
図8(c)は底面図、
図8(d)は断面図(A−A)である。以下、図面を参照しながら中継部材55の詳細について説明する。
【0045】
図8(a)及び(b)に示すように、ソケット部57には、回転工具200の前端部に形成された十字ビット210が挿入される十字溝形状57a、及び回転工具200の前端部に形成された公知の多角形軸ビット(不図示;四角形又は六角形)が挿入される多角凹形状57bが形成されている。
尚、多角凹形状57b(
図8(a)、(b)参照)は、一例として六角形状を示しているが、他の形状、例えば十二角形状としても良い。
【0046】
ソケット部57の外周面には、回転工具200の公知の多角形ソケット部(不図示;六角形又は十二角形)が挿入される六角形状57cが形成されている。
尚、十字ビット210が挿入される十字溝形状57a、及び多角形軸ビットが挿入される多角凹形状57bはその一方が形成されていても両方が形成されていても良い。
【0047】
図8(a)及び
図8(c)に示すように、歯部56は、平面視十字形状の歯を有する公知の十字ねじ回し300の前端部に形成された歯部形状(十字ビット)を有している。そして歯部56と噛合うクラウンギア部53の歯形が、十字ねじ回し300の前端部に形成された歯部形状の断面側壁部を十字ねじ回し300の軸心回りに回転送りした軌跡で形成されている。
【0048】
(2.5.1)クラウンギア部の歯形の創成方法
図9ないし
図12を参照しながら、クラウンギア部53の歯部の歯形について説明する。
図9(a)は、十字ねじ回し300の歯部310の拡大図、
図9(b)は軸線と直角視した断面拡大図である。尚、本実施形態の説明においては、十字ねじ回し300は呼び番号2番の先端部(ビット)の形状・寸法をもとに説明するが、クラウンギア部53の歯形創成は、呼び番号2番のビットに限定されるものではない。
【0049】
十字ねじ回し300は、その先端に向けてテーパ状に先細り形状に形成された平面視十字形状の4歯から構成された軸端部を有する(
図9(a)参照)。断面形状は、その各々の位置において相似形の十字形状となっている(
図9(b)参照)。
具体的には、十字ねじ回し300の軸端部は、放射状に突出する四枚の歯部310、310、・・・をそれぞれ備えるとともに、テーパ状の延長歯部311、311、・・・を形成して構成されている。また、各歯部310、310、・・・及びテーパ状の延長歯部311、311、・・・の両側面は側壁部312、312、・・・を有する。この側壁部312、312、・・・が、相手側歯面と噛合うことにより、クラウンギア部53は一歯ずつ回転送りされる。
尚、軸端部の具体的な形状及び寸法は日本工業規格(JIS B 4633)に規定されているが、その一例を
図10に示す。
【0050】
次に、係る歯部の断面形状が十字ねじ回し300を回転させながら、十字形状断面のX軸方向の中心線であるX−X線上をX軸方向に1ピッチ、すなわち90度回転移動させた場合の歯部310の側壁部312、312の軌跡を
図11に示す。
図11に示す歯部310の側壁部312、312の軌跡320が、十字ねじ回し300と噛合うクラウンギア部53の歯部の歯形となる。
【0051】
以下、この十字ねじ回し300を仮想創成ギアとして、クラウンギア部53の歯形を創成する方法の一例を、
図12を参照しながら具体的に説明する。尚、
図12(b)は
図12(a)におけるA部の部分拡大図、
図12(d)は
図12(c)におけるB部の部分拡大図である。
【0052】
十字ねじ回し300を仮想創成ギアとして、その十字形状断面の角部Qを回転中心として、例えば反時計回り(
図12の矢印R参照)に5度回転させると、十字ねじ回し300の中心CはX−X線上から下方(−Y方向)にずれてX方向に移動しC2の位置にくる(
図12(b)参照)。
一方、十字ねじ回し300をクラウンギア51の回転工具として回転させながら、クラウンギア部53の各歯を回転送りする場合は、十字ねじ回し300の中心Cは、X−X線上を移動することになる。
従って、X−X線上から下方(−Y方向)にずれた量h(
図12(b)参照)だけ上方(+Y方向)に修正し、X−X線上に再設定する(
図12(c)参照)。このときの十字ねじ回し300の中心CのX−X線上のX方向の移動距離を1Pとする(
図12(c)、(d)参照)。
【0053】
次に、十字ねじ回し300の中心C1をX−X線上に更に1P移動させるとともに、仮想創成ギアとしての十字ねじ回し300を反時計回りに5度回転させる(
図12(e)参照)。
以下、同様に、十字ねじ回し300の中心CをX−X線上に1P移動させるとともに、仮想創成ギアとしての十字ねじ回し300を反時計回りに5度回転させ、この回転角が90度になるまで、以上の操作を繰り返す。
その結果、歯部310、310の側壁部312、312の軌跡が仮想され、十字ねじ回し300と噛合うクラウンギア部53の1歯の歯形320が創成される。
【0054】
図12(f)は、このようにして形成された軌跡を歯形320として、反時計回りに回転された経過として10度ごとに示している。尚、上述した方法で創成される歯形320は、一般的な3次元CAD等を利用して作成することができるが、仮想創成ギアの回転送り角度は、5度ごとには限定されない。回転送りを連続的に実施すれば、滑らかな歯形形状が創成される。
【0055】
(3)レベリング装置及びレベリング装置を備えた車両用灯具の作用・効果
本実施形態におけるレベリング装置1及びレベリング装置1を備えた車両用灯具100の手動で行う光軸調整について説明する。
回転工具200を中継部材55のソケット部57に挿入して回転工具200を介して手動により回転させる(
図13参照)と、中継部材55の歯部56に噛合ったクラウンギア部53が回転送りされ、シャフト30が回転される。
【0056】
シャフト30が回転されると、シャフト30の台形ねじ32はロッド44のねじ孔45と螺合されて、ロッド44は回り止め用の突起部48がハウジング10の二股形状のアーム部16a、16bに係合しているために、シャフト30のみがハウジング10及び後カバー20に対して進退する。
その結果、リフレクター140はピボット171を回動支点として上下方向に傾動し、車両用灯具100の上下方向の光軸調整が行われる。
【0057】
中継部材55は、後カバー20の後面側(外面側)に複数配置されたU字溝部22のいずれか一に嵌挿することができる。そのために、回転工具200の操作位置を適宜選択して回転操作を多方向から行うことができ、光軸調整が容易化される。
【0058】
回転工具200として公知の十字ねじ回しを用いる場合には、十字ねじ回しの前端部に形成された十字ビット210が中継部材55のソケット部57に形成された十字溝形状57aに嵌合して中継部材55を回転させる(
図13参照)。
又、前端部に多角形軸ビットが形成されているねじ回しを用いる場合には、多角形軸ビットがソケット部57に形成された多角凹形状57bに嵌合して中継部材55を回転させる。
そして、中継部材55は後カバー20の後面側(外面側)に形成された複数のU字溝部22の一に嵌挿されて、歯部56がクラウンギア部53と予め定められた位置関係を保持して噛合っている。そのために、車両用灯具100の外部から回転操作される回転工具200の回転が、中継部材55を介してクラウンギア51へ安定して確実に伝達される。
【0059】
中継部材55の歯部56は、平面視十字形状の歯を有する公知の十字ねじ回しの前端部に形成された歯部形状(十字ビット)を有し、歯部56と噛合っているクラウンギア部53の歯形が、十字ねじ回し300の軸端部に形成された平面視十字形状の歯部310を創成マスターと仮想して歯形創成されている。
そのために、クラウンギア部53の歯部と中継部材55の歯部56とはガタツキなく正確に噛合い、瞬間的な空転を生ずることなく正確に回転送りされ、伝達ロスが発生することがない。
【0060】
また、クラウンギア部53が合成樹脂等で形成されている場合には、歯部の削れや磨耗の発生を抑制し、クラウンギア51を回転支持する後カバー20の円筒部21への削れ粉や摩耗粉の侵入が防止される。
その結果、長期に亘って車両用灯具100の光軸を安定して調整することができ、かつ、正確に光軸調整するのに多くの時間を要しない。
【0061】
更に、中継部材55を介することなく、クラウンギア部53を十字ねじ回しで直接回転操作した場合においても、クラウンギア部53の歯部と十字ねじ回しの十字ビット210とはガタツキなく正確に噛合い、瞬間的な空転を生ずることなく正確に回転送りされ、伝達ロスが発生することがない。又、歯部の削れや磨耗の発生も抑制される。
【0062】
以上、本発明の実施形態として具体例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。