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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-9979(P2015-9979A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】巻取りロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/28 20060101AFI20141216BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   B65H75/28
   B65H75/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-138549(P2013-138549)
(22)【出願日】2013年7月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】草場 英朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 修司
(72)【発明者】
【氏名】大蔵 智幸
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA01
3F058AA02
3F058AA03
3F058AB01
3F058AC00
3F058BB08
3F058CA00
3F058DA04
3F058DB03
3F058DB05
3F058DB12
3F058HA02
3F058HB02
3F058HB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シートに段差が付くことを抑えることが可能な巻取りロールを提供する。
【解決手段】巻取りロール10は、外周面11から斜め内側に切り込んでシート90の巻き始め部分90Aを受容するシート受容部20を備えている。具体的には、シート受容部20は、巻取りロール10の周方向における一位置P1に形成された段差部11Dから内側に切り込んだ湾曲面21,22を備え、それら湾曲面21,22の間にシート90を受容する受容空間を有している。湾曲面21,22は、周方向の一方側に向かうにつれて外周面11から離れるように湾曲し、内側の湾曲面22は、段差部11Dの中心側の端部で外周面11と連続している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを巻き取る巻取りロールであって、
外周面から斜め内側に切り込んで前記シートの巻き始め部分を受容するシート受容部を備えたことを特徴とする巻取りロール。
【請求項2】
前記巻取りロールの周方向における一位置には、前記一位置から周方向の一方側に1周して戻るまでの間に中心から外周面までの距離が小さくなることで、前記外周面が径方向にずれた段差部が形成され、
前記シート受容部は、前記段差部で中心側に配置された前記外周面と連続しかつ前記段差部から内側に切り込んで周方向の前記一方側に向かうにつれて前記外周面から徐々に離れるように湾曲した第1湾曲面と、前記第1湾曲面との間に前記シートを受容する受容空間を有しかつ前記段差部の中心から離れた側の端部から内側に切り込んで周方向の前記一方側に向かうにつれて前記外周面から徐々に離れるように湾曲した第2湾曲面とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の巻取りロール。
【請求項3】
発泡体で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻取りロール。
【請求項4】
中心部を貫通して芯材が挿入される芯材挿通孔と、
前記シート受容部と前記芯材挿通孔とを軸方向全体に亘って連絡する芯材用切込みとを備えたことを特徴とする請求項3に記載の巻取りロール。
【請求項5】
前記芯材用切込みを、周方向の一方側に向かうにつれて前記芯材挿通孔に近づく曲線状に形成したことを特徴とする請求項4に記載の巻取りロール。
【請求項6】
シートを巻き取る巻取りロールであって、
外周面から周方向に張り出して、シートの巻き始め部分の上に重ねられるシート支持片を備えたことを特徴とする巻取りロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを巻き取る巻取りロールに関する。特には、車両用内装材、建材、建築内装材等として加工される中間材料である長尺シートの巻取りにふさわしいロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シートを巻き取る方法として、円筒状の巻取りロールにシートを巻き付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−239533号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した巻取りロールでは、シートの巻き始め部分がシートの厚さ分だけ巻取りロールの外周面から突出した段差となり、その上に重ねられるシートに段差が付くという問題があった。
【0005】
本発明は、シートに段差が付くことを抑えることが可能な巻取りロールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る巻取りロールは、シートを巻き取る巻取りロールであって、外周面から斜め内側に入り込んでシートの巻き始め部分を受容するシート受容部を備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の巻取りロールにおいて、巻取りロールの周方向における一位置には、上記一位置から周方向の一方側に1周して戻るまでの間に中心から外周面までの距離が小さくなることで、外周面が径方向にずれた段差部が形成され、シート受容部は、段差部で中心側に配置された外周面と連続しかつ段差部から内側に切り込んで周方向の上記一方側に向かうにつれて外周面から徐々に離れるように湾曲した第1湾曲面と、第1湾曲面との間にシートを受容する受容空間を有しかつ段差部の中心から離れた側の端部から内側に切り込んで周方向の上記一方側に向かうにつれて外周面から徐々に離れるように湾曲した第2湾曲面とを備えたところに特徴を有する。
【0008】
なお、ここで、「段差部」とは、周方向の一位置で径方向に延びて巻取りロールの中心軸を通る面のうち、外側に配置された外周面と中心側に配置された外周面とで挟まれた部分をいい、周方向の一位置で第1湾曲面と第2湾曲面との間に形成されるシート受容部の開口部分を含むものとする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の巻取りロールにおいて、発泡体で構成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の巻取りロールにおいて、中心部に設けられた芯材挿通孔と、シート受容部と芯材挿通孔とを軸方向全体にわたって連絡する芯材用切込みとを備えたところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の巻取りロールにおいて、芯材用切込みを、周方向の一方側に向かうにつれて芯材挿通孔に近づく曲線状に形成したところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明に係る巻取りロールは、シートを巻き取る巻取りロールであって、外周面から周方向に張り出して、シートの巻き始め部分の上に重ねられるシート支持片を備えたところに特徴を有する。
【0013】
ここで、本発明の「シート」とは、巻取り可能な可撓性を有する長尺素材をいい、具体的には、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等の樹脂発泡体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の合成樹脂シート、編物、織物等の生地、不織布、ガラスクロス、ガラスマット等の各種素材や、上記樹脂発泡体や上記合成樹脂シート、上記生地やガラス素材を複合した積層体、例えばポリウレタンフォームと編生地、織生地を積層した長尺材料を指す。
【発明の効果】
【0014】
[請求項1,6の発明]
請求項1の発明によれば、外周面から内側に切り込んだシート受容部にシートの巻き始め部分を受容することができるので、シートの巻き始め部分が巻取りロールの外周面から突出した段差となることが抑えられる。これにより、巻き始め部分に起因する折れジワがシートに歪みとして残ることが抑えられる。また、シート受容部は外周面から斜め内側に切り込んでいるので、シート受容部から外側に出る部分に折り目が付くことが抑えられる。
【0015】
ここで、シート受容部は、曲線状であっても直線状であってもよい。また、シート受容部は、径方向で対向する湾曲面同士が、シートを受容しないときに互いに密着する切込みであってもよいし、間隔をあけて配置されるスリットであってもよい。後者の構成によれば、シート受容部の外側部分が外側に大きく膨らむことが抑えられ、巻き取ったシートに段差や凹凸が付くことが抑えられる。
【0016】
また、請求項6の巻取りロールでは、外周面から周方向に張り出してシートの巻き始め部分の上に重ねられるシート支持片を備えたので、シートを巻き取るときに、巻取りロールを1周したシートを、シート支持片によって外周面から徐々に外側に離してシートの巻き始め部分に重ねることができる。これにより、巻き始め部分に起因する段差がシートに付くことが抑えられる。
【0017】
[請求項2の発明]
請求項2の発明では、巻取りロールの周方向の一位置には、上記一位置から1周して戻るまでの間に中心から外周面までの距離が小さくなることで、外周面が径方向にずれた段差部が形成されているので、巻取りロールを1周して一位置に到達したシートは、シート受容部に受容されたシートの巻き始め部分よりも段差部の高さ分だけ外側にずらされる。ここで、シート受容部のうち第1湾曲面との間にシートを受容する受容空間を有した第2湾曲面は、段差部の中心から離れた側の端部から内側に切り込んでいるので、シート受容部から出てきたシートの上に重ねられるシートに段差が付くことが抑えられる。しかも、第2湾曲面は、段差部から周方向の一方側に向かうにつれて外周面から徐々に離れるように湾曲しているので、シート受容部の外側に位置する部分の肉厚を、段差部から離れるにつれて徐々に厚くすることができる。また、第1湾曲面は、段差部で中心側に配置された外周面と連続しているので、シート受容部から外側に出る部分でシートに折り目が付くことが抑えられる。
【0018】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、巻き取りロール自身の凹凸やシート厚によってシートに段差や凹凸が付くことを抑えることができる。
【0019】
[請求項4の発明]
請求項4の発明では、芯材挿通孔に芯材を挿通させることで、巻取りロールを既存の芯材に取り付けることが可能となる。しかも、シート受容部と芯材挿通孔とを連絡する芯材用切込みを備えたので、巻取りロールの外側から、シート受容部、芯材用切込みの順に芯材を通して、芯材を芯材挿通孔に導入することが可能となる。また、発泡体により構成された円柱体をヒートワイヤーやワイヤーソー等でカットして巻取りロールを製造する場合には、一筆書きの要領で円柱体をカットすることで、シート受容部、芯材挿通孔及び芯材用切込みを一度に形成することができる。
【0020】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、芯材用切込みを周方向で挟む部分を芯材挿通孔を拡げるようにずらしたときに、芯材用切込みに対して周方向の一方側に位置する部分が芯材挿通孔側を向いて露出するので、芯材挿通孔よりも大径の芯材にも巻取りロールを嵌合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る巻取りロールの斜視図
図2】巻取りロールを軸方向から見た図
図3】芯材と嵌合する前の巻取りロールを軸方向から見た図
図4】巻取りロールとなる前の円柱体を軸方向から見た図
図5】シートを巻き取った巻取りロールを軸方向から見た図
図6図5におけるシートの巻き始め部分周辺の拡大図
図7】シートを巻き取った従来の巻取りロールを軸方向から見た図
図8図7におけるシートの巻き始め部分周辺の拡大図
図9】厚いシートを巻き取った巻取りロールを軸方向から見た図
図10】第2実施形態に係る巻取りロールの斜視図
図11】巻取りロールを軸方向から見た図
図12】シートを巻き取った巻取りロールの軸方向から見た図
図13】第3実施形態に係る巻取りロールを軸方向から見た図
図14】(A)変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図、(B)変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図、(C)変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図
図15】(A)変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図、(B)変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図
図16】変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図
図17】変形例に係る巻取りロールを軸方向から見た図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1図9に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の巻取りロール10は、全体が円筒状をなし、シート90の送り方向の下流側に、シート90の幅方向と中心軸が平行となるように配置される。そして、シート90を送りながら巻取りロール10を中心軸回りに回転させることで、巻取りロール10の外周面11にシート90が巻き付けられる。
【0023】
ここで、巻取りロール10の外径は、60〜250mmであることが好ましい。この範囲であると、所定の設備内での扱いが容易である。また、外径の小さいものには芯材を挿入して使用し、外径の大きいものには芯材を用いることなく、直接巻取り機に装着できる。同様に、巻取りロール10の内径は、50〜100mmであることが好ましい。内径の小さいものは、芯材を挿入することなく、直接巻取り機に挿入して使用することができ、内径の大きいものは、芯材を挿入して巻取り機に装着して使用できる。芯材の有無は、巻取り速度や、巻きなおし、巻き替え等の使用条件に応じて、随時選択される。なお、本実施形態では、巻取りロール10の外径は、150mm、内径は、75mmとなっている。
【0024】
また、本実施形態では、シート90は、図6に示すように、中層部91の表裏の両面に表地92と裏地93が貼り合わされた積層構造をなし、シート厚が10mmとなっている。中層部91は、ポリウレタンフォームであり、表地92には、トリコット生地、裏地93には、ポリエステル製スパンボンド不織布が用いられている。なお、シート90の別の例として、塩化ビニル樹脂の合成皮革、レザー長尺や、パイル織モケット生地等を用いることも可能である。この場合、表地92は塩化ビニルで、中間層91は、ポリエチレンフォームで、裏地93は、ナイロン製トリコット編み生地で構成され、シート厚が5mmとなっている。
【0025】
巻取りロール10は、発泡体で構成され、径方向、周方向ともに弾性変形可能となっている。発泡体の例としては、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム、発泡ゴムスポンジ等が挙げられる。発泡倍率は、特に制限されないが、発泡ポリエチレンの場合、20倍程度、発泡ポリウレタンの場合、25〜80倍であることが、成形性、加工性の点から好ましい。本実施形態のポリウレタンフォームは、イノアックコーポレーション製、密度(JIS K7222:2005、見掛け密度)30kg/m、硬さ(JIS K6401)約200N、ポリエーテルポリオールを主成分とする発泡体である。ポリウレタンフォームは、軟質スラブ発泡体から切出した素材が、円筒形等に加工するうえで好ましい。
【0026】
図2に示すように、巻取りロール10の外周面11には、周方向の一位置P1から周方向の一方側(図2の反時計方向)へ1周して戻るまでの間に、中心からの距離が徐々に小さくなった縮径部11Aが設けられ、一位置P1にシート90の厚さ分よりも高さが若干大きな段差部11Dを有している。なお、本実施形態では、縮径部11Aは、一位置P1から時計方向へ約4分の1周分の範囲に形成されている。また、段差部11Dは、周方向の一位置P1で径方向に延びて巻取りロール10の中心軸を通る架空の面(図2では、二点鎖線で表されている。)のうち縮径部11Aより外側の部分を指す。
【0027】
また、巻取りロール10には、外周面11から斜め内側に切り込んでシート90を受容するシート受容部20が設けられている。具体的には、シート受容部20は、段差部11Dから内側に切り込んだ湾曲面21,22を備え、それら湾曲面21,22の間にシート90を受容する受容空間20Sを有している。周方向の一位置P1で湾曲面21、22の間に形成されるシート受容部20の開口部分は、段差部11Dの一部を構成している。なお、湾曲面21,22は、シート90の厚さ分だけ間隔をあけて配置されている。
【0028】
ここで、本実施形態では、湾曲面21,22のうち内側の湾曲面22(本発明の「第1湾曲面」に相当する。以下、内側湾曲面22という。)は、外周面11の縮径部11Aと連続し、周方向の一方側に向かうにつれて外周面11から離れるように湾曲している。詳細には、内側湾曲面22は、縮径部11Aを周方向の一方側に延長した延長面上に配置されている。
【0029】
また、湾曲面21,22のうち外側の湾曲面21(本発明の「第2湾曲面」に相当する。以下、「外側湾曲面21」という。)は、段差部11Dの中心から離れた側の端部から内側に切り込んで、周方向の一方側に向かうに従って外周面11から徐々に離れるように湾曲している。そして、シート受容部20の外側には、周方向の他方側(図2の時計方向)に延びて、周方向の他方側に向かうにつれて徐々に肉厚が薄くなる突片部25が形成されている。なお、突片部25の先端の厚さは、シート90の厚さより小さくなっている。
【0030】
詳細には、図2に示すように、シート受容部20は、軸方向からみたときに、外側湾曲面21が、巻取りロール10の内径よりも小径の仮想円C1を基礎円とした伸開線であるインボリュート曲線L1上に配置されるように形成されている。ここで、仮想円C1の中心は、巻取りロール10の中心軸上に位置する。
【0031】
なお、本実施形態では、受容空間20Sの幅は、周方向全体に亘ってほぼ一定であり、その具体的な長さは、10mm以下となっている。また、突片部25は、基端部25Aの厚さ、即ち、外側湾曲面21の奥側の端部21Aから外周面11までの長さdが10mm以上となっている。
【0032】
図1に示すように、巻取りロール10は、中心部に芯材挿通孔12を有して、既存の芯材40に取り付け可能となっている。また、図2に示すように、シート受容部20と芯材挿通孔12との間には、軸方向全体に亘って両者を連絡する芯材用切込み13が設けられている。芯材用切込み13は、シート受容部20の先端部(最も中心に近い側の端部)から芯材挿通孔12に向かって直線状に延び、芯材挿通孔12に近づくにつれて周方向の位置が一方側(図2の反時計方向)へずれるようになっている。
【0033】
ところで、本実施形態の巻取りロール10は、図4に示すように、発泡体で構成された円柱体50を、ヒートワイヤーやワイヤーソー等のワイヤーでカットして得られる。上記カットには、コンターマシーンが使用される。ここで、上述の如く、本実施形態では、芯材切込み13が、シート受容部20と芯材挿通孔12とを連絡するように配置されているので、同図の矢印で示すように、ワイヤーを一筆書きの要領で移動させることで、円柱体50にシート受容部20、芯材挿通孔12及び芯材用切込み13を一度に形成することができる。
【0034】
巻取りロール10の構成に関する説明は以上である。次に、巻取りロール10の作用効果について説明する。
【0035】
巻取りロール10を用いてシート90を巻き取るには、まず、巻取りロール10を芯材40に嵌合させる。具体的には、図3に示すように、芯材用切込み13を周方向に挟む部分13A,13Bを離して巻取りロール10を開環した状態にする。そして、同図の二点鎖線で示すように、芯材40をシート受容部20、芯材用切込み13に通して芯材挿通孔12へ導入する。
【0036】
なお、上述の如く、巻取りロール10は、発泡体で構成されているので、周方向に弾性変形可能となっている。これにより、芯材40の径が芯材挿通孔12の径よりも若干大きい場合であっても、巻取りロール10を芯材40に嵌合させることができる(図5参照)。
【0037】
巻取りロール10を芯材40に嵌合させたら、図1に示すように、巻取りロール10のシート受容部20に、シート90の巻き始め部分90Aを受容させて、芯材40(巻取りロール10)を回転させる。すると、図5に示すように、巻取りロール10にシート90が巻き取られる。なお、詳細には、芯材40は、公知のシート巻取り機に装着され、芯材40と駆動軸を固定した状態で、駆動軸を回転させることでシート90を巻き取ってゆく。本実施形態の巻取りロール10および芯材40は、1軸巻取機、2軸反転式巻取機、巻替機等の各種巻取り機に応用できる。
【0038】
ここで、図7及び図8には、比較として、従来の巻取りロール1に巻き取られたシート90の様子が示されている。図8に示すように、従来の巻取りロール1を用いた場合、シート90の巻き始め部分90Aが巻取りロール1の外周面1Mから突出して段差となり、巻き始め部分90Aの上に重ねられる部分に段差90Dが形成されている。
【0039】
一方、本実施形態の巻取りロール10を用いた場合、図5に示すように、シート90の巻き始め部分90Aは、シート受容部20に受容されて、巻取りロール10の外周面11から突出することがない。これにより、シート90の巻き始め部分90Aに起因する段差がシート90に付くことがなくなる。
【0040】
また、図6に拡大して示すように、巻取りロール10を1周したシート90は、既に巻き取られたシート90よりも段差部11Dの高さ分だけ外側に配置される。ここで、上述の如く、突片部25の肉厚は先端に向かうにつれて徐々に薄くなり、先端部の厚さは、シート90の厚さより薄くなっているので、突片部25の先端部が段差となることが抑えられ、突片部25の先端部に重ねられるシート90に段差が生じることが抑えられる。また、シート受容部20の外側湾曲面21は、周方向の一方側に向かうにつれて外周面11から徐々に離れることにより、突片部25の外側に巻かれるシート90とシート受容部20に受容されたシート90の巻き始め部分90Aとは、周方向の他方側に向かうにつれて徐々に近づく。そして、巻取りロール10を1周したシート90は、外周面11を突片部25の先端から周方向の他方側に延長した位置で既に巻き取られたシート90の上に重ねられている。
【0041】
ところで、本実施形態の巻取りロール10は、発泡体で構成されているので、シート受容部20の幅を広げることが可能である。これにより、シート受容部20の幅よりも厚いシートをシート受容部20に受容して巻き取ることが可能である。また、巻取りロール10が発泡体で構成されていることで、シート90の間に挟まれる突片部25が押し潰され、突片部25の先端を薄くすることができる。これにより、突片部25の先端部が段差となることが抑えられる。図9には、シート厚が段差部11Dよりも大きなシート90Vを巻き取った後の巻取りロール10が示されている。
【0042】
次に、本実施形態の巻取りロール10の作用効果について説明する。本実施形態の巻取りロール10によれば、外周面11から内側に入り込んでシート90の巻き始め部分90Aを受容するシート受容部20を備えたので、シート90の巻き始め部分90Aが巻取りロール10の外周面11から突出した段差となることが抑えられる。これにより、シート90に段差が付くことが抑えられる。
【0043】
また、巻取りロール10には、外周面11に位置する突片部25の先端部P1から反時計方向に1周して戻るまでの間に中心側にずらされて、先端部P1との間に生じる段差部11Dが形成されているので、巻取りロール10を1周して先端部P1に到達したシート90は、既に巻き取られたシート90よりも段差部11Dの高さ分だけ外側にずらされる。そして、シート受容部20の外側湾曲面21は、段差部11Dの中心から離れた側の端部から内側に切り込んでいるので、シート受容部20から出てきたシート90の上に重ねられるシート90に段差が付くことが抑えられる。しかも、外側湾曲面21は、周方向の一方側に向かうにつれて外周面11から徐々に離れるように湾曲しているので、シート受容部20の外側に位置する部分、即ち、突片部25の肉厚を、薄肉の先端部から徐々に厚くすることができ、突片部25の強度アップが図られる。
【0044】
また、シート受容部20の内側湾曲面22は、段差部11Dの中心側の端部で外周面11(縮径部11A)と連続しているので、シート受容部20から外側に出る部分でシート90に折り目が付くことが抑えられる。さらに、巻取りロール10は、発泡体により構成されているので、巻取りロール10自身の凹凸やシート厚によって、シート90に段差や凹凸が付くことを抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態では、巻取りロール10を芯材40に嵌合させて用いるので、芯材40にシート90を直接巻き付けるより場合と比較して、シート90の巻き取り径を大きくすることができる。これにより、巻き取ったシート90の内側部分(裏地93)と外側部分(表地92)との曲率の差を小さくすることができ、シート90の皺の発生を抑える事ができる。特に、本実施施態のように、シート90が積層構造となっている場合には、シート90の内側部分(裏地93)と外側部分(表地92)の曲げ変形特性が異なっていることが多いので、有効である。
【0046】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図10図12に基づいて説明する。図10に示すように、本実施形態の巻取りロール110は、上記第1実施形態の巻取りロール10のようにシート受容部20を備える代わりに、外周面11から周方向に張り出したシート支持片30を備えている。シート支持片30は、図12に示すように、シート90の巻き取りの際、シート90の巻き始め部分90Aの上に重ねられる。
【0047】
詳細には、図11に示すように、シート支持片30の外側を向いた面30Mは、先端側に向かうにつれて外周面11からの距離が大きくなって、先端部で外周面から距離Xだけ離れている。この距離Xは、シート90の厚さより大きくなっている。そして、シート支持片30と外周面11との間に、シート90を受容可能な隙間120Sが形成されている。
【0048】
また、図10に示すように、巻取りロール110には、上記第1実施形態で説明した芯材用切込み13を備えていない。なお、巻取りロール110は、紙で構成されてもよいし、上記第1実施形態と同様に、発泡体で構成されてもよい。
【0049】
本実施形態の巻取りロール110では、外周面11から周方向に張り出してシート90の巻き始め部分90Aの上に重ねられるシート支持片30を備えたので、シート90を巻き取るときに、巻取りロール110を1周したシート90を、シート支持片30によって外周面11から徐々に外側に離してシート90の巻き始め部分90Aに重ねることができる(図12参照)。これにより、シート90の巻き始め部分90Aの外側に巻かれるシート90に段差が付くことが抑えられる。即ち、巻き始め部分90Aに起因する段差がシート90に付くことが抑えられる。
【0050】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を図13に基づいて説明する。図13に示すように、本実施形態の巻取りロール10Vは、周方向の一位置P1から周方向の一方側(図13の時計方向)へ1周して戻るまでの間に中心と外周面との距離が徐々に大きくなった拡径部11Bが設けられ、一位置P1にシート90の厚さ分より高い段差部11Dを有している。なお、本実施形態では、拡径部11Bは、一位置P1から反時計方向へ約4分の1周分の範囲に形成されている。
【0051】
また、巻取りロール10Vには、外周面11から斜め内側に切り込んでシート90を受容するシート受容部20Vが設けられている。具体的には、シート受容部20Vは、段差部11Dから内側に切り込んだ外側湾曲面21V、内側湾曲面22Vを備え、それら湾曲面21V,22Vの間に受容空間20SVを備えている。
【0052】
内側湾曲面22Vは、段差部11Dの中心側の端部で外周面11と連続し、周方向の一方側に向かうにつれて外周面11から離れるように湾曲している。また、外側湾曲面21Vは、段差部11Dの中心から離れた側の端部から内側に切り込んで、周方向の一方側に向かうにつれて外周面11から離れるように湾曲している。そして、シート受容部20Vの外側には、周方向の他方側に向かうにつれて徐々に肉厚が薄くなる突片部25Vが形成されている。なお、突片部25Vの先端部の厚さは、シート90の厚さより小さくなっている。
【0053】
巻取りロール10Vのその他の構成については、上記第1実施形態と同じになっているので、同一符号を付すことで説明を省略する。本実施形態の巻取ロール10Vによれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0055】
(1)上記第1実施形態では、巻取りロール10の使用例として、芯材挿通孔12に芯材40を挿通して用いる例を示したが、芯材40を挿通せずに用いてもよい。
【0056】
(2)図14(A)に示すように、上記第1実施形態において、シート受容部20を、シート90を受容しないときに外側湾曲面21と内側湾曲面22が互いに密着する切込みとしてもよい。なお、上記第1実施形態のようにシート受容部20を、シート90を受容しないときに外側湾曲面21と内側湾曲面22とが間隔をあけて配置されるスリットで構成すれば、厚いシート90を巻き取るときに、巻取りロール10のうちシート90の巻き始め部分90の上に重ねられる部分、即ち、突片部25が外側に膨らむことが抑えられ、巻き取ったシート90に段差や凹凸が付くことが抑えられる。
【0057】
(3)上記第1実施形態では、シート受容部20の外側湾曲面21がインボリュート曲線L1上に配置された例を示したが、例えば、図14(B)に示すような曲線上に配置されてもよい。なお、同図の2点鎖線は、巻取りロール10の外径と内径を、長軸と短軸の長さとした楕円である。
【0058】
(4)図14(C)に示すように、シート受容部20を、外周面11を斜めに横切る方向に延びた直線状としてもよい。
【0059】
(5)外周面11の縮径部11Aは、周方向全体に亘って形成されてもよいし、例えば、半周に亘って形成されてもよい。具体的には、前者の場合、図15(A)に示すように、シート90の厚さをd、巻取りロール10の外周面11の一位置P1から周方向の一方側へθだけ移動したときの中心からの距離をr(θ)としたときに、r(θ)=r(0)−(d・θ)/2πとなる。また、後者の場合、図15(B)に示すように、θがπ未満の場合には、r(θ)=r(0)、θがπ以上の場合には、r(θ)=r(0)−(d・θ)/πとなる。なお、上記第1実施形態及び図15(B)の例では、縮径部11Aは、一位置P1から周方向の他方側(図2及び図15(B)の時計方向)へ向けて配置されていたが、周方向の任意の位置に配置されてもよい。
【0060】
(6)芯材用切込み13は、シート受容部20の中間部から内側に延びて芯材挿通孔12と連絡するように構成されてもよい。
【0061】
(7)図16に示す巻取りロール10Wのように、芯材用切込み13Wが、周方向の一方側に向かうにつれて芯材挿通孔12に近づく曲線状としてもよい。本構成によれば、芯材用切込み13Wの内側部分13Aと外側部分13Bとを芯材挿通孔12を拡げるようにずらしたときに、芯材用切込み13Wの外側部分13Bが芯材挿通孔12側を向いて露出する。芯材挿通孔12よりも大径の芯材40にも巻取りロール10Wを嵌合させることができる。なお、同図の例では、芯材用切込み13Wは、シート受容部20の内側湾曲面22を周方向の一方側に延長した延長面上に形成されている。即ち、縮径部11Aと内側湾曲面22と芯材用切込み13Wとが、同一曲面上に配置されている。
【0062】
(8)上記第1実施形態では、芯材用切込み13は、シート受容部20の先端部から巻取りロール10の中心に近づくにつれて周方向で受容空間20Sの開口から離れる形状であったが、中心に近づくにつれて周方向で受容空間20Sの開口に近づく形状としてもよい。
【0063】
(9)上記第1実施形態では、シート受容部20の周方向の長さは、1周未満であったが、図17に示すように、1周以上としてもよい。
【0064】
(10)上記第1,第3実施形態において、段差部11Dをシート90の厚さと同じにしてもよい。この場合、段差部11Dは、シート受容部20の開口部分で構成される。
【符号の説明】
【0065】
10,10V,10W,110 巻取りロール
11 外周面
11D 段差部
12 芯材挿通孔
13,13W 芯材用切込み
20,20V シート受容部
20S,20SV 受容空間
21 外側の湾曲面(第2湾曲面)
22 内側の湾曲面(第1湾曲面)
30 シート支持片
40 芯材
90,90V シート
90A 巻き始め部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17