(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-99907(P2015-99907A)
(43)【公開日】2015年5月28日
(54)【発明の名称】プリント回路基板用絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20150501BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20150501BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20150501BHJP
C08K 5/3432 20060101ALI20150501BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20150501BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20150501BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20150501BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20150501BHJP
C08L 77/12 20060101ALI20150501BHJP
【FI】
H05K1/03 610L
C08G59/62
C08L63/00 C
C08K5/3432
C08K3/00
C08K5/29
C08K7/02
C08J5/24CFC
C08L77/12
H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-76476(P2014-76476)
(22)【出願日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0140850
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジン ショック
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,デ フィ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ション ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,グム フィ
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB02
4F072AB08
4F072AB09
4F072AD27
4F072AD28
4F072AD32
4F072AE01
4F072AE03
4F072AE04
4F072AF01
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4F072AJ04
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4F072AK14
4F072AL13
4J002CC072
4J002CD041
4J002CD051
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4J002CL082
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4J036AA01
4J036AA02
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4J036DB11
4J036FB13
4J036HA12
4J036JA05
4J036JA11
4J036KA01
(57)【要約】
【課題】ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE)および剥離強度(peel strength)の特性を向上したプリント回路基板用絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品を提供する。
【解決手段】本発明のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、ビピリジン構造を有する硬化剤と、を含むものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
ビピリジン構造を有する硬化剤と、を含む、プリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して、エポキシ樹脂を25〜75重量部含有し、ビピリジン構造を有する硬化剤を10〜55重量部含有する、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂から選択される一つ以上のものである、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビピリンジン構造が、下記式で表される、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【化1】
(ここで、aは1〜10の整数、bは1〜13の整数、cは1〜13の整数、dは1〜21の整数、eは1〜21の整数、fは1〜10の整数およびgは1〜10の整数である。)
【請求項5】
前記硬化剤が、ビピリジン構造を30〜60重量%含有する、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
無機充填剤と、
シアネートエステルと、
ビスマレイミドと、をさらに含む、請求項1に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して前記無機充填剤を82〜488重量部含有する、請求項6に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機充填剤は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、水酸化アルミニウム(AlOH3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、ホウ酸アルミニウム(AlBO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)およびジルコン酸カルシウム(CaZrO3)から選択される一つ以上のものである、請求項7に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項9】
前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して前記シアネートエステルを10〜65重量部含有する、請求項6に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項10】
前記シアネートエステルは、ビスフェノールA型シアネートエステル、クレゾールノボラック型シアネートエステルおよびフェノールノボラック型シアネートエステルから選択される一つ以上のものである、請求項9に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項11】
前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して前記ビスマレイミドを10〜43重量部含有する、請求項6に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項12】
前記ビスマレイミドは、1,1´−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド(1,1´−(methylenedi−4,1−phenylene)bismaleimide)である、請求項11に記載のプリント回路基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の絶縁樹脂組成物を含むワニス(varnish)に有機繊維または無機繊維を含浸および乾燥して製造される、プリプレグ。
【請求項14】
前記無機繊維または有機繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、サーモトロピック(thermotropic)液晶高分子繊維、リオトロピック液晶高分子繊維、アラミド繊維、ポリピリドビスイミダゾール繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、およびポリアリレート繊維から選択される一つ以上のものである、請求項13に記載のプリプレグ。
【請求項15】
請求項13に記載のプリプレグの片面または両面に銅箔を貼り付けて得た銅張積層板(CCL)上にビルドアップ層を積層して製造される、プリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板用絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の発展に伴い、プリント回路基板の低重量化、薄板化および小型化が日々、進行中である。このような傾向に応えるために、プリント回路の配線がさらに複雑化および高密度化しつつある。このように基板に対して要求される電気的、熱的および機械的特性は、より重要な要素として作用している。プリント回路基板は、主に、回路配線の機能を果たす銅と、層間絶縁の機能を果たす高分子とからなる。絶縁層を構成する高分子は、銅と比較すると、熱膨張係数、ガラス転移温度および厚さ均一性など、様々な特性が要求され、特に、絶縁層の厚さを薄く作製する必要がある。
【0003】
近年、エポキシモールディングコンパウンド(EMC)や基板材料などに用いられる絶縁層の有機材料としてエポキシ樹脂以外の補強材が多く使用されるにつれて、電極として用いられる回路層と絶縁層との界面接着力の低下が問題視されている。
【0004】
従来、絶縁層を構成する有機物のうちエポキシ樹脂は、主に、回路層との接着剤として機能してきた。しかし、絶縁層内のエポキシ樹脂の割合が次第に減少するにつれて回路層と絶縁層との接着強度が次第に減少した。
【0005】
エポキシモールディングコンパウンドや基板材料として広く用いられるエポキシ樹脂の機械的安定性および熱安定性を高めるために、ビスマレイミド(bismaleimide)、シアネートエステル(cyanate ester)などの有機補強材が用いられており、また、材料のガラス転移温度(Tg)を高めるために、全芳香族硬化剤や様々な分子量分布を有する硬化剤などが用いられている。
【0006】
しかし、従来の方式では、絶縁層にエポキシ樹脂を含むことで、回路層との接着強度を向上させることができたが、他の有機補強材を絶縁層の組成物に含むことで、エポキシ樹脂の添加量が減少して、回路層との接着強度が次第に減少するようになった。
【0007】
一方、特許文献1には、エポキシ基含有不飽和化合物を含む感光性樹脂組成物について開示されているが、これにより、ガラス転移温度、熱膨張係数(CTE)および剥離強度(peel strength)の特性を向上させるには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2012−0089947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の一つの目的は、プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、エポキシ樹脂およびビピリジン構造を有する硬化剤により、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE)および剥離強度(peel strength)の特性を向上したプリント回路基板用絶縁樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記絶縁樹脂組成物を含むプリプレグを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記プリプレグを適用して製造された銅張積層板上にビルドアップ層を積層して製造されたプリント回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの目的を達成するためのプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、ビピリジン構造を有する硬化剤と、を含むことができる。
【0013】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して、エポキシ樹脂を25〜75重量部含有し、ビピリジン構造を有する硬化剤を10〜55重量部含有することができる。
【0014】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂から選択される一つ以上のものであってもよい。
【0015】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記ビピリンジン構造が、下記式で表されることができる。
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、aは1〜10の整数、bは1〜13の整数、cは1〜13の整数、dは1〜21の整数、eは1〜21の整数、fは1〜10の整数およびgは1〜10の整数である。
【0018】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記硬化剤が、ビピリジン構造を30〜60重量%含有することができる。
【0019】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記絶縁樹脂組成物は、無機充填剤と、シアネートエステルと、ビスマレイミドと、をさらに含むことができる。
【0020】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して前記無機充填剤を82〜488重量部含有することができる。
【0021】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記無機充填剤は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、水酸化アルミニウム(AlOH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、ホウ酸アルミニウム(AlBO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)およびジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)から選択される一つ以上のものであってもよい。
【0022】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して前記シアネートエステルを10〜65重量部含有することができる。
【0023】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記シアネートエステルは、ビスフェノールA型シアネートエステル、クレゾールノボラック型シアネートエステルおよびフェノールノボラック型シアネートエステルから選択される一つ以上のものであってもよい。
【0024】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して前記ビスマレイミドを10〜43重量部含有することができる。
【0025】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、前記ビスマレイミドは、1,1´−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド(1,1´−(methylenedi−4,1−phenylene)bismaleimide)であってもよい。
【0026】
本発明の他の目的を達成するためのプリプレグは、本発明の一つの目的を達成するための絶縁樹脂組成物を含むワニス(varnish)に有機繊維または無機繊維を含浸および乾燥して製造されることができる。
【0027】
前記プリプレグにおいて、前記無機繊維または有機繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、サーモトロピック(thermotropic)液晶高分子繊維、リオトロピック液晶高分子繊維、アラミド繊維、ポリピリドビスイミダゾール繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、およびポリアリレート繊維から選択される一つ以上のものであってもよい。
【0028】
本発明のさらに他の目的を達成するためのプリント回路基板は、本発明の他の目的を達成するためのプリプレグの片面または両面に銅箔を貼り付けて得た銅張積層板(CCL)上にビルドアップ層を積層して製造されることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るプリント回路基板用絶縁樹脂組成物およびこれを用いたプリプレグ、銅張積層板、並びにプリント回路基板によれば、ガラス転移温度および熱膨張係数の耐熱性の特性を向上させることができる。
【0030】
また、前記絶縁樹脂組成物にビピリジン構造を有する硬化剤を含むことで、金属層との配位結合により金属層と絶縁層との剥離強度の機械的物性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例による絶縁樹脂組成物の構成を説明するために概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の目的、特定の長所および新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明および好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「一面」、「他面」、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施例による絶縁樹脂組成物の構成を説明するために概略的に示した図である。
【0035】
図1を参照すると、本発明では、絶縁樹脂組成物に絶縁層と金属層との配位結合が可能なビピリジン構造を有する硬化剤を含むことで、熱膨張係数、ガラス転移温度および剥離強度の特性を向上させることができる。
【0036】
(エポキシ樹脂)
本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、乾燥した後の樹脂組成物の接着フィルムとしての取り扱い性を高めるためにエポキシ樹脂を含むことができる。前記エポキシ樹脂は、分子内に1個以上のエポキシ官能基を含むものを意味し、4個以上のエポキシ官能基を含むものが、結合力向上のために好ましい。
【0037】
前記エポキシ樹脂は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂から選択される一つ以上のものであってもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0038】
前記絶縁樹脂組成物においてエポキシ樹脂の使用量は、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して25〜75重量部であることができる。前記エポキシ樹脂の使用量が25重量部未満の場合には、金属層との接着力が低下して基板材料としての使用が困難になる恐れがあり、75重量部を超える場合には、硬化していないエポキシ樹脂が組成物内に残存する恐れがある。これにより前記エポキシ樹脂の硬化密度が減少して基板材料の耐熱性が減少し、熱膨張係数が高くなり、ガラス転移温度が低くなりうる。
【0039】
(ビピリジン構造を有する硬化剤)
本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、下記式で表されるビピリジン構造を有する硬化剤を含むことができる。
【0041】
(ここで、aは1〜10の整数、bは1〜13の整数、cは1〜13の整数、dは1〜21の整数、eは1〜21の整数、fは1〜10の整数およびgは1〜10の整数である。)
【0042】
前記硬化剤は、フェノール、アミン、無水酸などの官能基を二つ以上含むことでエポキシ樹脂との架橋反応が可能となる。前記絶縁樹脂組成物において硬化剤の使用量は、絶縁樹脂組成物100重量部に対して10〜55重量部であることができる。前記硬化剤の使用量が10重量部未満の場合には、エポキシ樹脂との硬化度が低下して耐熱性が減少する恐れがあり、55重量部を超える場合には、組成物内のエポキシ樹脂の量が減少して耐化学性が減少する恐れがある。
【0043】
また、前記硬化剤は、分子内に金属層との配位結合が可能なビピリジン構造を有することで金属層と絶縁層との剥離強度を向上させることができる。前記ビピリジン構造は、硬化剤内において30〜60重量%含有することができる。前記ビピリジン構造が硬化剤内の30重量%未満の場合には、金属層との剥離強度向上の効果を得ることができず、60重量%を超える場合には、エポキシ樹脂との架橋密度が減少して熱的強度が減少する恐れがある。
【0044】
(無機充填剤)
本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、熱膨張係数向上のために無機充填剤をさらに含むことができる。
【0045】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、無機充填剤の使用量は、絶縁樹脂組成物100重量部に対して82〜488重量部であることができる。前記無機充填剤の使用量が82重量部未満の場合には、前記樹脂組成物の熱膨張係数が高くなり、耐熱性が低下して基板材料としての使用が困難になる恐れがあり、488重量部を超える場合には、金属層との剥離強度が低下して基板工程への適用が困難になる恐れがある。
【0046】
前記無機充填剤は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、水酸化アルミニウム(AlOH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、ホウ酸アルミニウム(AlBO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)およびジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)から選択される一つ以上のものであってもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0047】
(シアネートエステル)
本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、耐熱性向上のためにシアネートエステルをさらに含むことができる。
【0048】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、シアネートエステルの使用量は、絶縁樹脂組成物100重量部に対して10〜65重量部であることができる。前記シアネートエステルの使用量が10重量部未満の場合には、前記樹脂組成物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性が低下して基板材料としての使用が困難になる恐れがあり、65重量部を超える場合には、金属層との剥離強度が低下して樹脂組成物の基板工程への適用が困難になる恐れがある。
【0049】
前記シアネートエステルは、ビスフェノールA型シアネートエステル、クレゾールノボラック型シアネートエステルおよびフェノールノボラック型シアネートエステルから選択される一つ以上のものであってもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0050】
(ビスマレイミド)
本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物は、耐熱性向上のためにビスマレイミドをさらに含むことができる。
【0051】
前記プリント回路基板用絶縁樹脂組成物において、ビスマレイミドの使用量は、絶縁樹脂組成物100重量部に対して10〜43重量部であることができる。前記ビスマレイミドの使用量が10重量部未満の場合には、前記樹脂組成物のガラス転移温度が高くなり耐熱性が低下して基板材料としての使用が困難になる恐れがあり、43重量部を超える場合には、前記樹脂組成物の吸湿率が増加して材料の信頼性が減少し、樹脂組成物の基板工程への適用が困難になる恐れがある。
【0052】
前記ビスマレイミドは、1,1´−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド(1,1´−(methylenedi−4,1−phenylene)bismaleimide)を使用してもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0053】
本発明の一実施例による絶縁樹脂組成物は、本技術分野において公知のいかなる一般的な方法で半固状のドライフィルムに製造されることができる。例えば、ロールコータ(roll coater)、カーテンコータ(curtain coater)またはコンマコータ(comma coater)などを用いてフィルム状に製造して乾燥した後、これを基板上に適用してビルドアップ方式による多層プリント回路基板の製造の際に、絶縁層(または絶縁フィルム)またはプリプレグとして用いることができる。かかる絶縁フィルムまたはプリプレグは、熱膨張係数およびガラス転移温度の特性を向上させることができる。
【0054】
このように、本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物を含むワニスに無機繊維または有機繊維を含浸および乾燥してプリプレグを製造することができる。
【0055】
前記無機繊維または有機繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、サーモトロピック(thermotropic)液晶高分子繊維、リオトロピック液晶高分子繊維、アラミド繊維、ポリピリドビスイミダゾール繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、およびポリアリレート繊維から選択される一つ以上のものであってもよく、特にこれに限定されるものではない。
【0056】
前記プリプレグの片面または両面に銅箔を貼り付けて銅張積層板(CCL)を製造することができる。これにより、エポキシ樹脂と、ビピリジン構造を有する硬化剤と、を含む絶縁層は、金属層との剥離強度を向上させることができる。
【0057】
また、本発明の一実施例によるプリント回路基板用絶縁樹脂組成物からなる絶縁フィルムまたはプリプレグは、プリント回路基板の製造の際に内層として用いられる銅張積層板上に積層して多層プリント回路基板の製造に用いることができる。例えば、前記絶縁樹脂組成物からなる絶縁フィルムまたはプリプレグをパターン加工した内層回路基板上に積層してから硬化し、デスミア工程を行った後、電気めっき工程により回路層を形成して多層プリント回路基板を製造することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例により本発明についてより具体的に説明するが、下記の例に本発明の範疇が限定されない。
【0059】
(ビピリジン構造を有する硬化剤の製造)
(製造例1)
還流装置が取り付けられた100mlの丸底フラスコに、2,2´−ビピリジン−4,4´−ジカルボン酸7.3g、4−アミノフェノール8.7g、イソフタル酸6.6g、4−ヒドロキシ安息香酸6.4g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸3.1g、酢酸無水物22.4gを添加した。前記フラスコに密閉された機械的攪拌機、窒素注入チューブ、温度計および還流コンデンサを装着した。前記フラスコの内部を窒素ガスで充分置換した後、フラスコ内部の温度を窒素ガス流動下で約140℃の温度に上昇させ、その温度でフラスコ内部の温度を維持しつつ約1時間還流させた。次に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸5.6gをさらに添加した後、反応副生成物である酢酸と未反応の酢酸無水物を除去して約300℃まで温度を上げた後、約30分間反応させてビピリジン構造を有する硬化剤を合成した。
【0060】
(ビピリジン構造を有しない硬化剤の製造)
(製造例2)
還流装置が取り付けられた100mlの丸底フラスコに4−アミノフェノール8.7g、イソフタル酸10.0g、4−ヒドロキシ安息香酸6.4g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸3.1g、酢酸無水物22.4gを添加した。次に、前記製造例1のような条件で反応させてビピリジン構造を有しない硬化剤を合成した。
【0061】
(実施例1)
ビピリジン構造を有する製造例1の硬化剤33.0g、エポキシ樹脂(Araldite MY−721、Huntsmann社製)22.0gおよびジシアンジアミド(DICY)0.22gを45.0gのN,N´−ジメチルアセトアミド(DMAc)に添加して混合溶液をワニス状に製造し、ガラス繊維を前記ワニスに含浸した後、約200℃で5分間乾燥してプリプレグを製造した。また、前記プリプレグを約220℃の温度、30kgf/cm
2の圧力で約60分間硬化させて銅張積層板を作製した。
【0062】
(実施例2)
前記実施例1で製造された混合溶液に粒径が500μmの球状シリカ(アドマテックス社製)312gを添加してワニスを作製し、前記実施例1と同じ方法で銅張積層板を作製した。
【0063】
(比較例1)
ビピリジン構造を有しない製造例2の硬化剤33.0g、エポキシ樹脂(Araldite MY−721、Huntsmann社製)22.0gおよびジシアンジアミド(DICY)0.22gを45.0gのN,N´−ジメチルアセトアミド(DMAc)に添加して混合溶液をワニス状に製造し、ガラス繊維を前記ワニスに含浸した後、約200℃で5分間乾燥してプリプレグを製造した。また、前記プリプレグを約220℃の温度、30kgf/cm
2の圧力で約60分間硬化させて銅張積層板を作製した。
【0064】
(比較例2)
前記比較例1で製造された混合溶液に粒径が500μmの球状シリカ(アドマテックス社製)312gを添加してワニスを作製し、前記比較例1と同じ方法で銅張積層板を作製した。
【0065】
実施例1および実施例2、比較例1および比較例2で製造された銅張積層板の銅箔を除去したサンプルをもって、熱膨張係数およびガラス転移温度を測定した。
【0066】
熱膨張係数を測定するために、TA社製のTMA装備を用いて引張モード(Tensile mode)で測定し、1次に、1分当たり10℃ずつ約300℃まで走査し、冷却後、2次に、1分当たり10℃ずつ約310℃まで走査して、2次に走査した結果値の熱膨張係数を測定した。
【0067】
また、ガラス転移温度は、TA社製のDSC装備を用いて測定し、それぞれ製造されたサンプルの約5mgを前記装備に投入して1分当たり10℃ずつ300℃まで1次測定し、冷却した後、1分当たり10℃ずつ300℃まで2次測定して、2次測定した結果値で、ガラス転移温度を測定した。
【0068】
最後に、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2で製造された銅張積層板の表面から約1cmの銅箔を剥離して引張強度測定器(universal testing machine、UTM)を用いて銅箔と絶縁層との剥離強度を測定した。
【0069】
【表1】
【0070】
前記表1から分かるように、本発明により無機充填剤を含まない絶縁樹脂組成物からなる実施例1のプリプレグは、比較例1で製造されたプリプレグと比較すると、ガラス転移温度、熱膨張係数および剥離強度の特性を向上させる効果がある。
【0071】
【表2】
【0072】
前記表2から分かるように、本発明により無機充填剤を含む絶縁樹脂組成物からなる実施例2のプリプレグは、比較例2で製造されたプリプレグと比較すると、ガラス転移温度、熱膨張係数および剥離強度の特性を向上させる効果がある。
【0073】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0074】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、プリント回路基板用絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品に適用可能である。