【課題】操舵装置などの部材が帯電すると、部材間の潤滑剤の粘性の上昇に起因して操舵、制動などの運転操作が影響を受ける。この影響を低減して車両の操縦性及び走行安定性を向上させる。
【解決手段】操舵操作装置14と、操舵アクチュエータ54、58Lなどと、操舵操作装置の変位を操舵アクチュエータへ伝達する変位伝達系18とを有し、操舵操作装置、操舵アクチュエータ及び変位伝達系の少なくとも一つは、操舵操作装置が操作されると相対運動するように粘性潤滑剤を介して互いに係合する二つの部材を含む。変位伝達系などを構成する特定の部材の表面には自己放電式除電器74A〜74Cが固定され、除電器は自己放電により除電して特定の部材の帯電量を低下させることにより、二つの部材の間の帯電量の差を低下させる。
運転者によって操作される操作装置と、車両の走行状態を変化させるアクチュエータと、前記操作装置の変位を前記アクチュエータへ伝達することにより前記アクチュエータを駆動する変位伝達系とを有し、前記操作装置、前記アクチュエータ及び前記変位伝達系の少なくとも一つは、前記操作装置が操作されると相対的に運動するように粘性潤滑剤を介して互いに係合する二つの部材を含む車両に適用された車両用帯電電荷低減装置であって、前記操作装置、前記アクチュエータ及び前記変位伝達系の少なくとも一つを構成する特定の部材の表面には自己放電式除電器が固定され、前記自己放電式除電器は、車体が路面に対して電気絶縁された状態にて車両が走行すること、及び他の要因により、前記特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、前記自己放電式除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、前記空気イオンを前記特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、前記特定の部材の帯電量を低下させることにより、前記二つの部材の間の帯電量の差を低下させるよう構成されている、車両用帯電電荷低減装置。
請求項1に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記自己放電式除電器が固定された前記特定の部材は、前記二つの部材の少なくとも一方である、車両用帯電電荷低減装置。
請求項1に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記自己放電式除電器が固定された前記特定の部材は、前記二つの部材の少なくとも一方と導電可能に接続された他の部材である、車両用帯電電荷低減装置。
請求項3に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記他の部材は導電性材料にて形成された部分と樹脂にて形成された部分とを含み、前記導電性材料にて形成された部分と前記樹脂にて形成された部分との境界のうち、前記自己放電式除電器に最も近い部位は、前記中和による除電が行われる範囲内に位置している、車両用帯電電荷低減装置。
請求項4に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置はステアリングホイール装置であり、前記アクチュエータは操舵輪を転舵するアクチュエータであり、前記変位伝達系は、上端にてクロスジョイントを介してアッパステアリングシャフトに連結され、下端にてクロスジョイントを介して前記アクチュエータに連結されたインターミディエットシャフトを含み、前記二つの部材は、前記インターミディエットシャフトの互いにスプライン接続されたアッパシャフト部及びロアシャフト部を含み、前記粘性潤滑剤は前記アッパシャフト部と前記ロアシャフト部との間に介在し、前記自己放電式除電器は、前記特定の部材としての前記ステアリングホイール装置の運転者により操作される部位以外の部位の表面に固定されている、車両用帯電電荷低減装置。
請求項4に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置はステアリングホイール装置であり、前記アクチュエータは操舵輪を転舵するアクチュエータであり、前記変位伝達系はステアリングコラム及びインターミディエットシャフトを含み、前記ステアリングコラムはアッパステアリングシャフト及びこれを回転可能に支持する導電性材料製のケーシングを含み、前記インターミディエットシャフトは、上端にてクロスジョイントを介してアッパステアリングシャフトに連結され、下端にてクロスジョイントを介して前記アクチュエータに連結されており、前記二つの部材は、前記インターミディエットシャフトの互いにスプライン接続されたアッパシャフト部及びロアシャフト部を含み、前記粘性潤滑剤は前記アッパシャフト部と前記ロアシャフト部との間に介在し、前記特定の部材は前記ケーシングに固定され前記ステアリングコラムの上端部を収容する樹脂製のカバーであり、前記自己放電式除電器は、前記カバーの表面に固定されている、車両用帯電電荷低減装置。
請求項4に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置はステアリングホイール装置であり、前記アクチュエータは操舵輪を転舵するアクチュエータであり、前記変位伝達系はアッパステアリングシャフトを含むステアリングコラムを含み、前記ステアリングコラムはアッパステアリングシャフト及びこれを回転可能に支持する導電性材料製のケーシングを含み、前記ステアリングコラムには電動式パワーステアリング装置が固定され、前記電動式パワーステアリング装置は電動機により駆動される第一の歯車部材と、該第一の歯車部材と噛合し前記アッパステアリングシャフトと一体的に回転する第二の歯車部材と、前記第一及び第二の歯車部材を収容するハウジングとを含み、前記粘性潤滑剤は前記第一及び第二の歯車部材と前記ハウジングとの間に介在し、前記二つの部材は前記ハウジング及び前記第二の歯車部材を含み、前記特定の部材は前記ケーシングに固定され前記ステアリングコラムの上端部を収容する樹脂製のカバーであり、前記自己放電式除電器は、前記カバーの表面に固定されている、車両用帯電電荷低減装置。
請求項7に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置はステアリングホイールであり、前記アクチュエータは操舵輪を転舵するアクチュエータであり、前記変位伝達系は、上端にてクロスジョイントを介してアッパステアリングシャフトに連結され、下端にてクロスジョイントを介して前記アクチュエータに連結されたインターミディエットシャフトを含み、前記二つの部材は、前記インターミディエットシャフトの互いにスプライン接続されたアッパシャフト部及びロアシャフト部を含み、前記自己放電式除電器は前記アッパシャフト部の表面に固定されている、車両用帯電電荷低減装置。
請求項2に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置はステアリングホイールであり、前記アクチュエータは操舵輪を転舵するアクチュエータであり、前記変位伝達系はアッパステアリングシャフトを含むステアリングコラムを含み、前記ステアリングコラムには電動式パワーステアリング装置が固定され、前記電動式パワーステアリング装置は電動機により駆動される第一の歯車部材と、該第一の歯車部材と噛合し前記アッパステアリングシャフトと一体的に回転する第二の歯車部材と、前記第一及び第二の歯車部材を収容するハウジングとを含み、前記粘性潤滑剤は前記第一及び第二の歯車部材と前記ハウジングとの間に介在し、前記二つの部材は前記ハウジング及び前記第二の歯車部材を含み、前記自己放電式除電器は前記ハウジングの表面に固定されている、車両用帯電電荷低減装置。
請求項2に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置は車体に固定されたブラケットにより枢軸を介して枢支されたブレーキペダルを含み、前記アクチュエータはマスタシリンダ装置及びブレーキブースタを含み、前記変位伝達系は前記ブレーキブースタのプッシュロッドを含み、前記二つの部材は、前記枢軸と前記ブレーキペダル及び前記ブラケットの少なくとも一方とを含み、前記粘性潤滑剤は前記枢軸と前記ブレーキペダル及び前記ブラケットの少なくとも一方との間に介在し、前記自己放電式除電器は前記ブレーキペダル、前記ブラケット及び前記プッシュロッドの少なくとも一つの表面に固定されている、車両の帯電電荷除去装置。
請求項2に記載の車両用帯電電荷低減装置において、前記操作装置は車体に固定されたブラケットにより枢軸を介して枢支されたクラッチペダルを含み、前記アクチュエータはクラッチ装置を含み、前記変位伝達系は前記クラッチ装置の駆動ロッドを含み、前記二つの部材は、前記枢軸と前記クラッチペダル及び前記ブラケットの少なくとも一方とを含み、前記粘性潤滑剤は前記枢軸と前記クラッチペダル及び前記ブラケットの少なくとも一方との間に介在し、前記自己放電式除電器は前記クラッチペダル、前記ブラケット及び前記駆動ロッドの少なくとも一つの表面に固定されている、車両の帯電電荷除去装置。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による車両用帯電電荷低減装置の第一の実施形態の概略を示す平面図である。
【
図2】本発明による車両用帯電電荷低減装置の第一の実施形態の概略を示す側面図である。
【
図3】第一の実施形態のステアリングホイール装置及びステアリングコラムを示す拡大部分断面図である。
【
図4】インターミディエットシャフトのスプライン接続部を示す拡大部分断面図である。
【
図5】第一の実施形態において車両が後進する際の最初の制動開始時における制動圧の増大抑制制御の例を示す拡大部分断面図である。
【
図6】インターミディエットシャフト、アッパステアリングシャフト及びステアリングホイール装置の正の電荷の帯電に起因する電位の関係を示す図である。
【
図7】車両用帯電電荷低減装置の自己放電式除電器による除電のメカニズムを示す模式的な説明図であリ、(A)及び(B)はそれぞれ断面図及び平面図である。
【
図8】本発明による車両用帯電電荷低減装置の第一の実施形態の概略を示す側面図である。
【
図9】第二の実施形態におけるコラムアシスト型の電動式パワーステアリング装置を示す断面図である。
【
図10】第二の実施形態のステアリングホイール装置及びステアリングコラムを示す拡大部分断面図である。
【
図11】アッパステアリングシャフト、ケーシング、電動式パワーステアリング装置のハウジング及び樹脂製のコラムカバーの正の電荷の帯電に起因する電位の関係を示す図である。
【
図12】本発明による車両用帯電電荷低減装置の第三の実施形態の概略を示す断面図である。
【
図13】発明による車両用帯電電荷低減装置の第四の実施形態の概略を示す断面図である。
【
図14】本発明による車両用帯電電荷低減装置の第五の実施形態の概略を示す断面図である。
【
図15】本発明による車両用帯電電荷低減装置の第六の実施形態の概略を示す断面図である。
【0038】
[第一の実施形態]
図1及び
図2は、それぞれ本発明による車両用帯電電荷低減装置10の第一の実施形態の概略を示す平面図及び側面図である。
【0039】
図1に於いて、帯電電荷低減装置10は車両12に搭載されており、車両12は運転者によって操作される操作装置としてのステアリングホイール装置14を有している。また、車両12は、車両の進行方向を変化させる操舵アクチュエータ16と、ステアリングホイール装置14の回転変位を操舵アクチュエータ16へ伝達することにより操舵アクチュエータ16を駆動する変位伝達系18とを有している。なお、以下の説明に於いて、構成材料が樹脂又は他の材料であることが明記されない部材は、鋼、アルミニウム合金のような導電性を有する材料にて形成されている。
【0040】
ステアリングホイール装置14は、運転者によって把持され回転操作されるホイール部14Aと、連結部14Bと、ホイール部14Aと連結部14Bとを接続するフレーム部14Cとを有している。フレーム部14Cは連結部14Bと一体的に接続されている。連結部14Bは、アッパステアリングシャフト20の上端に設けられた連結部20Aに連結され、これによりステアリングホイール装置14はアッパステアリングシャフト20と一体的に連結されている。
【0041】
図3に示されているように、フレーム部14C及びホイール部14A内のフレーム部14Dは、樹脂製のハウジング22により埋設された状態にて収容されている。なお、ハウジング22を構成する樹脂は、ソリッドな樹脂であってもよく、また発泡樹脂であってもよい。ハウジング22内の空間は密閉空間ではなく、
図3において矢印14Eにて示されているように、例えば間隙14Fなどを経て空気の流入及び流出が可能である。
【0042】
変位伝達系18は、アッパステアリングシャフト20を含むステアリングコラム24と、インターミディエットシャフト28とを含んでいる。インターミディエットシャフト28は、上端にてクロスジョイント26Uを介してアッパステアリングシャフト20の下端に連結され、下端にてクロスジョイント26Lを介して操舵アクチュエータ16に連結されている。ステアリングコラム24は、図には示されていないブラケットにより、車両12の車体12Aにより支持されている。
【0043】
図3に示されているように、アッパステアリングシャフト20は、ステアリングコラム22のケーシング32により軸受34を介して回転軸線36の周りに回転可能に支持されている。アッパステアリングシャフト20の上端部、即ち連結部20Aに近接した部分には、トーションバー38が設けられている。このトーションバー38は、アッパステアリングシャフト20の上端と下端とが、回転軸線36の周りに限られた範囲にて相対回転することを許すことにより操舵トルクを検出するために設けられている。
【0044】
ステアリングコラム22の上端部は樹脂製のコラムカバー40により覆われている。コラムカバー40は、互いに共働してステアリングコラム22を囲繞する上半体40U及び下半体40Lを有している。上半体40U及び下半体40Lの上端は、それぞれビス42U及び42Lにより、ケーシング32のフランジ部32Fに固定されている。上半体40U及び下半体40Lの下端は、樹脂製のインストルメントパネル44により支持されている。
【0045】
インターミディエットシャフト28は、回転軸線36に対し傾斜した回転軸線46の周りに回転可能である。インターミディエットシャフト28はアッパシャフト部28U及びロアシャフト部28Lを有し、これらのシャフト部はスプライン接続部28Aにより回転軸線46に沿って相対変位可能に且つ回転軸線46の周りに相対回転不能にスプライン接続している。よって、インターミディエットシャフト28は、回転軸線46に沿って伸縮自在である。
【0046】
図4に示されているように、アッパシャフト部28U及びロアシャフト部28Lの互いに嵌合する部分には、スプライン軸受28B及びスプライン軸28Sが設けられている。スプライン軸受28B及びスプライン軸28Sは、回転軸線46の周りに均等に隔置され回転軸線46に沿って延在する複数のスプライン溝及びスプライン歯を有している。各スプライン歯は対応するスプライン溝に嵌入し、スプライン溝及びスプライン歯の噛み合い部には、粘性潤滑剤としてのグリース48が充填されている。
【0047】
更に、インターミディエットシャフト28の下端は、クロスジョイント26Lを介して操舵アクチュエータ16のギヤボックス50のピニオンシャフト52に連結されている。従って、ステアリングホイール装置14の回転は、変位伝達系18のアッパステアリングシャフト20及びインターミディエットシャフト28を経てピニオンシャフト52へ伝達される。その場合、インターミディエットシャフト28には繰り返し伸縮の応力が作用するが、その応力はスプライン接続部28Aによるインターミディエットシャフト28の伸縮により吸収される。
【0048】
図1に示されているように、操舵アクチュエータ16は、ラック・アンド・ピニオン型のステアリング装置54を含み、ステアリング装置54はピニオンシャフト52の回転をラックバー56の車両横方向の直線運動に変換する。ラックバー56の両端にはタイロッド58L及び58Rの内端が枢着されており、タイロッド58L及び58Rの外端は左右の前輪60L及び60Rのキャリア62L及び62Rに設けられたナックルアーム64L及び64Rに枢着されている。
【0049】
よって、ラックバー56の車両横方向の直線運動は、タイロッド58L、58R及びナックルアーム64L、64Rにより、前輪60L及び60Rのキングピン軸(図示せず)の周りの揺動運動に変換されてキャリア62L及び62Rへ伝達される。従って、操舵アクチュエータ16は、ステアリングホイール装置14の回転に応じて前輪60L及び60Rを転舵し、車両12の走行状態の一つである車両の進行方向を変化させる。
【0050】
図示の実施形態においては、ステアリング装置54はラック同軸型の電動式のパワーステアリング装置であり、電動機66と、電動機66の回転トルクをラックバー56の往復動方向の力に変換する例えばボールねじ式の変換機構68とを有している。パワーステアリング装置54は、ハウジング70に対し相対的にラックバー56を駆動し、運転者の操舵負担を軽減する操舵アシスト力を発生する。
【0051】
以上の説明から解るように、ステアリングホイール装置14の回転は、変位伝達系18及び操舵アクチュエータ16により左右の前輪60L及び60Rへ舵角変化の揺動として伝達される。逆に、前輪60L及び60Rが路面から舵角を変化させる応力を受けて揺動すると、その揺動は操舵アクチュエータ16及び変位伝達系18によりステアリングホイール装置14へ回転として伝達される。
【0052】
図3に示されているように、帯電電荷低減装置10は、短冊状の自己放電式除電器74を有している。除電器74は、ステアリングホイール装置14のフレーム部14Cを収容する樹脂製のハウジング22の内面に貼着により固定されている。
図5に示されているように、除電器74は、導電性の金属箔76に導電性の粘着剤78が付着され、粘着剤78を覆う剥離紙80が粘着剤78に取り付けられた複合シートが所定の大きさ及び形状に剪断されることにより形成されてよい。
【0053】
後に詳細に説明するように、金属箔76の主として側面76A、即ち金属箔の厚さ方向に沿う面が、後述の除電現象における放電面として機能する。よって、金属箔76の側面76Aは、除電現象が効率的に行われるよう、微小な突起、角部のような凸部76Bを有することが好ましい。また、金属箔76の表面76C(
図5の上面)に表面粗さを増大させる加工が施されることにより、金属箔76の表面に微小な突起、角部のような凸部が形成されてもよい。
【0054】
後に詳細に説明するように、金属箔76は導電性を有する任意の金属にて形成されてよいが、アルミニウム、金、銀、銅又はそれらの合金にて形成されることが好ましい。特に、後述の実施形態のように、除電器が金属部材に固定される場合には、除電器の金属箔は、金属部材を構成する金属材料よりも高い導電性を有することが好ましい。更に、金属箔76の側面が十分に放電面として機能するに足る厚さを有すると共に、曲面にも柔軟に対応するよう変形させて固定することができるよう、金属箔の厚さは約50〜200μm程度であることが好ましい。
【0055】
なお、除電器74の平面形状は、短冊状の長方形に限定されず、長方形以外の多角形、円形、楕円形のような任意の形状であってよいが、廃棄される部分がないよう剪断することができる形状、例えば長方形、正方形、ひし形、六角形などであることが好ましい。また、除電器74の大きさは、それが適用される部位に応じて適宜設定されてよいが、除電器74が例えば長方形である場合には、短辺が数mm〜十数mm程度であり、長辺が数十mm〜100mm程度であってよい。
【0056】
前述のように、車両12が走行すると、車両12には正の電荷が帯電する。電荷の帯電量は金属部材よりも樹脂部材において高く、金属部材の帯電量はタイヤを介して大地にアーシングされ難いほど高い。上記操舵系の場合には、操舵アクチュエータ16は、車体12Aに接続されている部位が多いので、ステアリングホイール装置14の帯電量は変位伝達系18の帯電量よりも高い。
【0057】
図6は、インターミディエットシャフト28、アッパステアリングシャフト20及びステアリングホイール装置14の正の電荷の帯電に起因する電位の関係を示している。操舵アクチュエータ16を構成する種々の部材には、車体12Aと通電可能に接続された部位が多いので、インターミディエットシャフト28のロアシャフト部28Lにおける正の電荷の帯電量は比較的少ない。よって、
図6において実線にて示されているように、ロアシャフト部28Lの電位は比較的低い。
【0058】
これに対し、ステアリングホイール装置14のハウジング22は他の部材を構成する金属に比して電気抵抗が高く正の電荷が帯電し易い樹脂にて形成されている。よって、ハウジング22における正の電荷の帯電量が非常に多くなり、これに起因してハウジング22の電位が非常に高くなることがある。そのため、ステアリングホイール装置14の電位が非常に高くなり、これに連結されたアッパステアリングシャフト20及びインターミディエットシャフト28のアッパシャフト部28Uの電位も非常に高くなる。
【0059】
その結果、アッパシャフト部28Uとロアシャフト部28Lとの間の電位差ΔVが非常に高い値ΔV1になり、スプライン接続部28A内のスプライン溝及びスプライン歯の噛み合い部に充填されたグリース48に強い電界が作用する。この強い電界はグリース48の粘性を上昇させるので、インターミディエットシャフト28が回転軸線46に沿って伸縮することが阻害される。そのため、インターミディエットシャフト28を介して行われるアッパステアリングシャフト20とピニオンシャフト52との間の回転の伝達性が低下する。
【0060】
例えば、ステアリングホイール装置14が回転操作され、アッパステアリングシャフト20に回転軸線36の周りに回転されても、その回転はクロスジョイント26Uを介して円滑にアッパシャフト部28Uへ伝達されない。即ち、クロスジョイント26Uのクロスピースとヨークとの間にがたつきの相対変位が生じる。そのため、ステアリングホイール装置14に与えられる回転トルクが低いときには、インターミディエットシャフト28が回転することなくステアリングホイール装置14が回転軸線36の周りにがたつきの回転をする。よって、運転者は、ステアリングホイール装置14の操作による前輪60L及び60Rの舵角の制御性が低下したと感じる。このことは、トーションバー38のねじれ弾性変形量が増大することによって悪化される。
【0061】
同様に、前輪60L又は60Rが路面から応力を受け、操舵アクチュエータ16のステアリング装置54のピニオンシャフト52が回転されても、その回転はクロスジョイント26Lを介して円滑にロアシャフト部28Lへ伝達されない。即ち、クロスジョイント26Lのクロスピースとヨークとの間にがたつきの相対変位が生じる。そのため、ピニオンシャフト52に与えられる回転トルクが低いときには、インターミディエットシャフト28が回転することなくピニオンシャフト52がその軸線の周りにがたつきの回転をする。よって、運転者は、前輪60L又は60Rが路面から応力を受けることに起因してその舵角が変化することを、ステアリングホイール装置14の保舵又は回転操作により抑制する際の制御性が低下したと感じる。
【0062】
図7は、除電器74による除電のメカニズムを示す模式的な説明図であり、除電器74による除電は、
図7に示されたメカニズムにより行われると推定される。なお、
図7において、「+」及び「−」はそれぞれ正及び負の電荷又はイオンを示し、「0」は電荷が0であること、即ち電気的に中和された状態にあることを示している。また、実線の矢印は空気の流動を示し、破線の矢印は電荷又はイオンの移動を示している。
【0063】
空気は正の電荷を帯びているが、樹脂製のハウジング22における正の電荷の帯電量が非常に多くなると、空気が所謂コロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される。正の空気イオンは、ハウジング22に帯電する正の電荷との間に作用する斥力により、ハウジング22から遠ざかるよう移動する。これに対し、負の空気イオンは、ハウジング22に帯電する正の電荷との間に作用するクーロン力によって引き寄せられることにより、ハウジング22に近づくよう移動し、ハウジング22に帯電する正の電荷は負の空気イオンに近づくよう移動する。
【0064】
その結果、負の空気イオンと正の電荷との間において電気的中和が生じ、負の空気イオン及び正の電荷が消滅し、空気の電荷が0になる。以上の現象は繰り返し連続的に生じるので、ハウジング22に帯電する正の電荷が低減されることによりハウジング22が除電される。なお、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される事象などは、ハウジング22の帯電量が高いほど活発になり、よって、除電の作用は帯電量が高いほど活発になると推定される。また、除電器74による除電は、
図7に示されているように、一方向に空気が流動する状況に限られない。
【0065】
本願発明者が行った実験的研究の結果によれば、除電器74の金属箔76(厚さ200μmのアルミ箔)が前述の寸法の長方形又はこれと同程度の大きさの他の形状である場合には、上記除電の効果が及ぶ面方向の範囲は、金属箔76の中央Pcから半径50mm程度の範囲である。また、上記除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲は、上記平面方向の除電の効果が及ぶ範囲内にて金属箔76の貼着面から数mm〜十数mm程度の範囲である。なお、除電の効果が及ぶ範囲は、正の電荷の帯電量などの状況に応じて変化する。
【0066】
図示の実施形態においては、ハウジング22に一般的な量の正の電荷が帯電している状況について見て、ステアリングホイール装置14のフレーム部14Cのうち、アルミ箔76の貼着面に最も近い部位は、除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲内にある。また、ステアリングホイール装置14の連結部14Bのうち、アルミ箔76の中央Pcに最も近い部位は、ハウジング22の内面に沿って除電の効果が及ぶ面方向の範囲内にある。
【0067】
従って、
図6において二点鎖線にて示されているように、除電器74による除電により、ハウジング22の電位がアッパステアリングシャフト20に近接する領域において低下される。よって、アッパステアリングシャフト20の電位が低下し、これに伴ってアッパシャフト部28Uの電位も低下する。
【0068】
その結果、アッパシャフト部28Uとロアシャフト部28Lとの間の電位差ΔVが小さい値ΔV2になり、スプライン接続部28A内に充填されたグリース48に作用する電界の強度が低下する。よって、電界の作用に起因してグリース48の粘性が上昇することを防止し、インターミディエットシャフト28が回転軸線46に沿って円滑に伸縮し得る状況を確保することができる。従って、インターミディエットシャフト28を介して行われるアッパステアリングシャフト20とピニオンシャフト52との間の回転の伝達を円滑に行わせることができる。
【0069】
なお、除電器74の除電による粘性低下の効果、即ち、ステアリング系に於ける変位の円滑な伝達に与える好影響は、上述のインターミディエットシャフト28のスプライン接続部28A内のスプライン溝及びスプライン歯の噛み合い部に充填されたグリース48において最も顕著に現れる。しかし、除電器74の除電は、他の軸受などにおける相対運動する部材の間に介在するグリースの粘性も低下させる。よって、このことによっても、ステアリング系に於ける変位の伝達が円滑に行われるようになる。
【0070】
従って、第一の実施形態の帯電電荷低減装置10によれば、走行などにより車両12に正の電荷が帯電する状況においても、変位伝達系18及び操舵アクチュエータ16を介して、ステアリングホイール装置14と前輪60L及び60Rとの間にて良好に変位の伝達を行わせることができる。よって、ステアリングホイール装置14の操作による前輪の舵角の制御をし難くなる虞れ、及び前輪が路面から受ける応力に起因してその舵角が変化することを、保舵又は操舵操作により抑制することができなくなる虞れを効果的に低減することができる。
【0071】
特に、第一の実施形態によれば、
図1に示されているように、短冊状の自己放電式除電器74A〜74Cがラック同軸型の電動式のパワーステアリング装置54に取り付けられている。除電器74Aは、ボールねじ式の変換機構68のハウジングの外面に固定され、
図1には示されていないが、電動機66により回転されるナットと、ラックバー56に形成され複数のボールを介してナットに嵌合するねじ軸との間に充填されたグリースの粘性を低下させる。除電器74Bは、ギヤボックス50のハウジングの外面に固定され、ピニオンシャフト52と一体的に形成されたピニオンギヤとラックバー56に形成されたラック歯との間に介在するグリースの粘性を低下させる。更に、除電器74Aは、変換機構68とギヤボックス50との間のハウジング70の外面に固定され、ハウジング70とラックバー56との間に介在するグリースの粘性を低下させる。
【0072】
よって、除電器74A〜74Cが設けられていない場合に比して、操舵アクチュエータ16に於ける変位の伝達も円滑に行わせることができる。換言すれば、自己放電式除電器が操作装置としてのステアリングホイール装置14のみに設けられ、操舵アクチュエータ16の部材に設けられてない場合に比して、自己放電式除電器による除電によって達成される上記作用効果を一層好ましく達成することができる。なお、除電器74A〜74Cの何れかが省略されてもよく、また、それらの全てが省略されてもよい。
【0073】
[第二の実施形態]
図8は、本発明による車両用帯電電荷低減装置10の第二の実施形態の概略を示す側面図である。この実施形態の帯電電荷低減装置10は、変位伝達系18のステアリングコラム24に適用されており、ステアリングコラム24の下端近傍にはコラムアシスト型の電動式パワーステアリング装置82が設けられている。よって、この実施形態においては、第一の実施形態におけるラック同軸型の電動式パワーステアリング装置は設けられておらず、ステアリング装置54はアシスト機能を有しないラック・アンド・ピニオン型のステアリング装置である。
【0074】
図9に示されているように、電動式パワーステアリング装置82は、ウオームギヤ84を回転軸線86の周りに回転駆動する電動機88を有している。回転軸線86は、アッパステアリングシャフト20の回転軸線36から隔置されて回転軸線36に垂直に延在している。ウオームギヤ84はアッパステアリングシャフト20に一体的に設けられたウオームホイール90と噛合している。なお、ウオームギヤ84は樹脂にて形成され、電動機88の回転軸に固定されてもよい。
【0075】
ウオームギヤ84及びウオームホイール90は、ハウジング92内に収容されており、ハウジング92はステアリングコラム24のケーシング32と一体的に連結されている。ハウジング92内にはウオームギヤ84とウオームホイール90との間の摩擦を軽減するグリース94が充填されている。ウオームギヤ84及びウオームホイール90は、互いに共働して電動機88の回転トルクを回転軸線86の周りのアシストトルクに変換してアッパステアリングシャフト20へ伝達する。
【0076】
図10に示されているように、帯電電荷低減装置10の自己放電式除電器は、樹脂製のコラムカバー40の上半体40U及び下半体40Lの内面にそれらの上端に近接して貼着により固定されており、それぞれ符号74U及び74Lにて示されている。除電器74U及び74Lは第一の実施形態の除電器74と同様に構成されており、何れの除電器についても、ケーシング32のフランジ部32Fのうち、除電器のアルミ箔の中央に最も近い部位は、上半体40U及び下半体40Lの内面に沿って除電の効果が及ぶ面方向の範囲内にある。
【0077】
特に、図示の第二の実施形態においては、第一の実施形態の除電器74と同様の自己放電式除電器74Cが、軸受34に近接した位置にてケーシング32の外面に貼着により固定されている。
【0078】
なお、この第二の実施形態においても、ステアリングホイール装置14のフレーム部14Cを収容する樹脂製のハウジング22の内面には、自己放電式除電器74が貼着により固定されている。よって、第一の実施形態の場合と同様に、除電器74による除電によってハウジング22の電位が低下され、これに対応してアッパステアリングシャフト20などの電位が低下される。
【0079】
図11は、アッパステアリングシャフト20、ケーシング32、電動式パワーステアリング装置82のハウジング92及び樹脂製のコラムカバー40の正の電荷の帯電に起因する電位の関係を示している。上述のように、アッパステアリングシャフト20の電位が低下されるので、その電位は比較的低い。
【0080】
これに対し、コラムカバー40は金属に比して電気抵抗が高く正の電荷が帯電し易い樹脂にて形成されている。よって、コラムカバー40における正の電荷の帯電量が非常に多くなり、これに起因してコラムカバー40の電位が非常に高くなることがある。そのため、ステアリングホイール装置14の電位が非常に高くなり、これに連結されたケーシング32及びハウジング92の電位も非常に高くなる。
【0081】
その結果、ハウジング92とアッパステアリングシャフト20及びウオームホイール90などとの間の電位差ΔVが非常に高い値ΔV3になり、ハウジング92内に充填されたグリース94に強い電界が作用する。この強い電界はグリース94の粘性を上昇させるので、ウオームギヤ84とウオームホイール90との間の摩擦が高くなる。そのため、操舵操作によりアッパステアリングシャフト20が回転される場合に、ウオームギヤ84とウオームホイール90との間における回転運動及び回転トルクの伝達が円滑に行われなくなる。また、電動式パワーステアリング装置82がアッパステアリングシャフト20の回転に対する抵抗となる。
【0082】
これに対し、第二の実施形態の帯電電荷低減装置10によれば、
図11において二点鎖線にて示されているように、除電器74U、74L及び74Cによる除電により、ケーシング32の電位がハウジング92に近接する領域において低下される。よってハウジング92の電位が低下する。
【0083】
その結果、ハウジング92とアッパステアリングシャフト20及びウオームホイール90などとの間の電位差ΔVが小さい値ΔV4になり、ハウジング92内に充填されたグリース94に作用する電界の強度が低下する。よって、電界の作用に起因してグリース94の粘性が上昇することを防止することができる。従って、ウオームギヤ84とウオームホイール90との間における回転運動及び回転トルクの伝達を円滑に行わせることができ、また電動式パワーステアリング装置82がアッパステアリングシャフト20の回転に対する抵抗となる虞れを低減することができる。
【0084】
また、第二の実施形態によれば、ステアリングホイール装置14のハウジング22の内面に、自己放電式除電器74が貼着により固定されており、除電器74による除電も行われる。従って、スプライン接続部28A内のスプライン溝及びスプライン歯の噛み合い部に充填されたグリース48の粘性が上昇することを防止することができるので、このことにより第一の実施形態の場合と同様の作用効果を達成することができる。
【0085】
なお、自己放電式除電器74U及び74Lが、樹脂製のコラムカバー40の上半体40U及び下半体40Lの内面に固定されているが、何れか一方又は両者の除電器が省略されてもよい。また、自己放電式除電器74Cが、軸受34に近接した位置にてケーシング32の外面に貼着により固定されているが、この除電器が省略されてもよい。
【0086】
また、第一及び第二の実施形態における除電器74は、ステアリングホイール装置14のハウジング22の内面に固定され、第二の実施形態における除電器74U及び74Lは、それぞれコラムカバー40の上半体40U及び下半体40Lの内面に固定されている。よって、除電器が対応する樹脂製の部材の外面に固定される場合に比して、除電器の経時劣化の進行を遅くすることができ、また剥がれたりする虞れを低減することができる。ただし、除電器が対応する樹脂製の部材の外面に固定されてもよい。
【0087】
[第三の実施形態]
図12は、本発明による車両用帯電電荷低減装置10の第三の実施形態の概略を示す断面図である。この実施形態の帯電電荷低減装置10は、インターミディエットシャフト28のスプライン接続部28Aに適用されている。
【0088】
図12に示されているように、帯電電荷低減装置10の自己放電式除電器98は、インターミディエットシャフト28のアッパシャフト部28Uと一体をなすスプライン軸受28Bの表面に貼着により固定されている。換言すれば、除電器98は、インターミディエットシャフト28のアッパシャフト部28U及びロアシャフト部28Lのうち、電位が高い側、即ちステアリングホイール装置14に近い側の部材に固定される。よって、インターミディエットシャフト28が仮に
図1及び
図8とは上下が逆転して組み付けられる場合には、スプライン軸28Sがアッパシャフト部と一体をなすので、除電器98はスプライン接続部28Aに近接してアッパシャフト部の表面に固定される。
【0089】
第三の実施形態によれば、スプライン接続部28A内のスプライン溝及びスプライン歯の噛み合い部に充填されたグリース48の粘性が上昇することを防止し、インターミディエットシャフト28が回転軸線46に沿って円滑に伸縮し得る状況を確保することができる。従って、上述の第一の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0090】
[第四の実施形態]
図13は、本発明による車両用帯電電荷低減装置10の第四の実施形態の概略を示す断面図である。この実施形態の帯電電荷低減装置10は、第二の実施形態と同様にステアリングコラム24の下端近傍にコラムアシスト型の電動式パワーステアリング装置82が設けられた車両において、電動式パワーステアリング装置82に適用されている。
【0091】
図13に示されているように、帯電電荷低減装置10の自己放電式除電器100は、電動式パワーステアリング装置82のハウジング92の表面に貼着により固定されている。よって、除電器100は除電によってハウジング92の電位を低下させることにより、ハウジング92内に充填されたグリース94に作用する電界の強度を低下させる。従って、上述の第二の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
[第五の実施形態]
図14は、本発明による車両用帯電電荷低減装置10の第五の実施形態の概略を示す断面図である。この実施形態の帯電電荷低減装置10は、制動に関する操作装置であるブレーキペダル装置102に適用されている。
【0093】
図14に示されているように、ブレーキペダル装置102はブレーキペダル104とブラケット106とを有している。ブラケット106は、車体12Aに固定されたベース部106Aと、ベース部106Aと一体に形成され車両の横方向へ隔置された一対の板状の支持部106Bとを有している。ブレーキペダル104及びブラケット106は、導電性を有する金属にて形成されているが、これらの少なくとも一方が樹脂にて形成されてもよい。
【0094】
ブレーキペダル104の上端部にはボス部104Aが設けられており、ボス部104Aには車両の横方向に沿って延在する枢軸108が挿通されている。枢軸108は両端にて一対の支持部106Bにより支持されており、これによりブレーキペダル104は枢軸108の軸線110の周りに枢動可能に支持されている。ボス部104Aと枢軸108との間には、ブレーキペダル104が軸線110の周りに円滑に枢動し得るよう、グリース112が介装されている。
【0095】
ブレーキペダル104の下端部には、運転者の足を受けるパッド114が一体的に形成されている。ブレーキペダル104の上端部と下端部との間の部分には、リターンスプリング116の下端が取り付けられ、リターンスプリング116の上端は車体12Aに取り付けられている。よって、ブレーキペダル104は、リターンスプリング116のばね力により、ブレーキペダル104の踏み込みストロークSbが減少する方向へ付勢されている。なお、図には示されていないが、ブレーキペダル104は踏み込みストロークSbが0に対応する位置以上
図14で見て反時計回り方向へ枢動しないよう、ストッパにより戻り方向の枢動範囲が制限されるようになっている。
【0096】
リターンスプリング116の側とは反対の側(車両前方側)にてブレーキペダル104の上端部と下端部との間の部分には、制動に関する変位伝達系を構成するプッシュロッド118の後端が連結されている。図示の実施形態においては、プッシュロッド118の後端にはヨーク118Aが一体的に形成されており、ヨーク118Aの一対のアーム部はブレーキペダル104の車両横方向の両側に位置している。一対のアーム部は連結ピン120を支持しており、連結ピン120はブレーキペダル104に設けられた
図14には示されていない孔を貫通して延在している。よって、プッシュロッド118は連結ピン120の軸線の周りにブレーキペダル104に対し枢動可能である。
【0097】
図示の実施形態においては、プッシュロッド118はマスタシリンダ122と一体的に連結されたブレーキブースタ124のプッシュロッドであり、ブレーキブースタ124により軸線126に沿って往復動可能に支持されている。ブレーキペダル104が軸線110の周りに枢動されると、その枢動はプッシュロッド118の軸線126に沿う直線運動に変換されて、マスタシリンダ122及びブレーキブースタ124へ伝達される。
【0098】
ブレーキブースタ124及びマスタシリンダ122は、プッシュロッド118の直線運動が伝達されることにより駆動される。そして、ブレーキペダル104に対する踏力がプッシュロッド118を介してブレーキブースタ124及びマスタシリンダ122へ伝達されることにより、マスタシリンダ122が発生する制動圧は、ブレーキペダル104に対する踏力に応じた値に制御される。マスタシリンダ122が発生する制動圧は、図には示されていない車輪のホイールシリンダへ供給され、ブレーキペダル104に対する踏力に応じた制動力が発生される。
【0099】
以上の説明から明らかであるように、ブレーキペダル104、ブラケット106、枢軸108及びリターンスプリング116などは、制動の操作に関する操作装置を構成している。マスタシリンダ122及びブレーキブースタ124は、制動力を発生するアクチュエータの一部として機能する。プッシュロッド118及び連結ピン120は、操作装置の変位をマスタシリンダ122及びブレーキブースタ124へ伝達する制動用の変位伝達系を構成している。
【0100】
この実施形態の帯電電荷低減装置10においては、自己放電式除電器128Aが、枢軸108に近接してブレーキペダル104の一方の表面に貼着により固定されている。また、自己放電式除電器128Bが、枢軸108に近接してブラケット106の一方の支持部106Bの内面に貼着により固定されている。更に、自己放電式除電器128Cが、プッシュロッド118の一方のヨーク118Aの表面に貼着により固定されている。
【0101】
よって、除電器128A〜128Cは、除電によってブレーキペダル104及びブラケット106の電位を低下させることにより、枢軸108の周りに適用されたグリース112に作用する電界の強度を低下させる。従って、この実施形態によれば、ブレーキペダル104などに電荷が帯電することに起因してグリース112の粘性が高くなることを抑制し、ブレーキペダル104の円滑な枢動を確保することができるので、従来に比してブレーキペダル装置102の操作性を向上させることができる。
【0102】
[第六の実施形態]
図15は、本発明による車両用帯電電荷低減装置10の第六の実施形態の概略を示す断面図である。なお、
図15において
図14に示された部材と同一の部材には
図14において付された符号と同一の符号が付されている。この実施形態の帯電電荷低減装置10は、クラッチペダル装置132に適用されている。
【0103】
図15と
図14との比較から解るように、クラッチペダル装置132は第五の実施形態のブレーキペダル装置102と実質的に同様に構成されている。クラッチペダル装置132は、それぞれブレーキペダル104、ブラケット106、枢軸108、パッド114及びリターンスプリング146に対応するクラッチペダル134、ブラケット136、枢軸138、パッド144及びリターンスプリング146を有している。
【0104】
クラッチペダル134に設けられたボス部134Aと枢軸138との間には、クラッチペダル134が軸線140の周りに円滑に枢動し得るよう、グリース142が介装されている。クラッチペダル134及びブラケット136は、導電性を有する金属にて形成されているが、これらの少なくとも一方が樹脂にて形成されてもよい。
【0105】
クラッチペダル134の上端部と下端部との間の部分には、クラッチ操作に関する変位伝達系を構成する駆動ロッド148の後端が連結されている。駆動ロッド148の後端にはヨーク148Aが一体的に形成されており、ヨーク148Aの一対のアーム部は連結ピン150を支持している。連結ピン150はクラッチペダル134に設けられた
図15には示されていない孔を貫通して延在している。よって、駆動ロッド148は連結ピン150の軸線の周りにクラッチペダル134に対し枢動可能である。
【0106】
図示の実施形態においては、駆動ロッド148はクラッチマスタシリンダ152の駆動ロッドであり、クラッチマスタシリンダ152により軸線156に沿って往復動可能に支持されている。クラッチペダル134が軸線130の周りに枢動されると、その枢動は駆動ロッド148の軸線156に沿う直線運動に変換されて、クラッチマスタシリンダ152へ伝達される。
【0107】
クラッチマスタシリンダ152は、駆動ロッド148の直線運動が伝達されることにより駆動される。そして、クラッチペダル134に対する踏み込みストロークが駆動ロッド148を介してクラッチマスタシリンダ152へ直線変位として伝達されることにより、クラッチマスタシリンダ152は直線変位に対応する駆動圧を発生する。クラッチマスタシリンダ152が発生する駆動圧は、クラッチ装置160の図には示されていない駆動シリンダへ供給され、駆動シリンダのピストンに連結された駆動ヨーク部材によってクラッチ板の係合及び離脱、従って駆動力伝達経路の開閉が行われる。
【0108】
以上の説明から明らかであるように、クラッチペダル134、ブラケット136、枢軸138及びリターンスプリング146などは、クラッチの操作に関する操作装置を構成している。クラッチマスタシリンダ152は、駆動力伝達経路を開閉するアクチュエータの一部として機能する。駆動ロッド148及び連結ピン150は、操作装置の変位をクラッチマスタシリンダ152へ伝達するクラッチ用の変位伝達系を構成している。
【0109】
この実施形態の帯電電荷低減装置10においては、自己放電式除電器158Aが、枢軸138に近接してクラッチペダル134の一方の表面に貼着により固定されている。また、自己放電式除電器158Bが、枢軸138に近接してブラケット136の一方の支持部136Bの内面に貼着により固定されている。更に、自己放電式除電器158Cが、駆動ロッド148の一方のヨーク148Aの表面に貼着により固定されている。
【0110】
よって、除電器158A〜158Cは、除電によってクラッチペダル134及びブラケット136の電位を低下させることにより、枢軸138の周りに適用されたグリース142に作用する電界の強度を低下させる。従って、この実施形態によれば、クラッチペダル134などに電荷が帯電することに起因してグリース142の粘性が高くなることを抑制し、クラッチペダル134の円滑な枢動を確保することができるので、従来に比してクラッチペダル134の操作性を向上させることができる。
【0111】
以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0112】
例えば、上述の各実施形態においては、自己放電式除電器74などの除電器は貼着により部材に固定されているが、蒸着、吹付、その他の手段により固定されてもよい。
【0113】
また、上述の各実施形態においては、自己放電式除電器74などが貼着される部材が金属製の部材である場合にも、除電器は貼着により直接部材に固定されている。前述のように、自己放電式除電器による除電の作用は帯電量が高いほど活発になるが、金属製の部材における電荷の帯電量は、樹脂製の部材における電荷の帯電量よりも低い。よって、自己放電式除電器が金属製の部材に適用される場合には、金属製の部材に樹脂板などの樹脂製の介在物が固定され、その介在物に除電器が固定されてもよい。
【0114】
また、上述の各実施形態においては、アクチュエータは操作装置から変位伝達系によって変位が伝達されることにより、車輪の舵角の変化などによって車両の走行状態を直接的に変化させるようになっている。しかし、アクチュエータは、変位伝達系によって伝達される変位に基づいて操舵操作量、制動操作量などを検出するセンサを含み、検出された操作量に基づいて車両の進行方向、車輪の制動力などを制御するようになっていてもよい。
【0115】
また、上述の各実施形態においては、自己放電式除電器74などの除電器が特定の位置に固定されている。しかし、これらの位置は例示であり、上述の各実施形態の除電による作用効果と同様の作用効果が得られる限り、除電器は例示の位置以外の位置に固定されてもよい。
【0116】
更に、上述の二つ又はそれ以上の実施形態が組合せられて車両に適用され、これにより各実施形態が単独で車両に適用される場合に比して、車両の操縦性及び安定性の一層の向上が図られてもよい。