【解決手段】通信距離の範囲内に位置する非接触型記憶媒体と通信を行い、機関車20(バッテリーロコ)とともに移動するように設けられる非接触型記憶媒体対応通信部100(タグ対応通信部)と、非接触型記憶媒体対応通信部が非接触型記憶媒体400(RFタグ)と通信を行っている場合に、機関車を含む車両設備10が標準走行速度よりも低い所定の第1速度で走行するように制御する走行制御部とを備えて走行制御装置を構成する。
前記車両設備の進行方向において前記通信距離より短い検出距離の範囲内に存在する物体を電磁波の利用によって検出するように前記車両設備に設けられる物体検出部をさらに備え、
前記走行制御部は、
前記物体検出部により物体が検出された場合に、前記車両設備が前記第1速度よりも低い所定の第2速度で走行するように制御する
請求項1に記載の走行制御装置。
通信距離の範囲内に位置する非接触型記憶媒体と通信を行い、機関車とともに移動するように設けられる非接触型記憶媒体対応通信部が非接触型記憶媒体と通信を行っている場合に、前記機関車を含む車両設備が標準走行速度よりも低い所定の第1速度で走行するように制御する走行制御ステップ
を備える走行制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態における車両設備の利用態様例を示している。
図1は、車両設備が使用されるトンネル坑内の状態例を側面方向により模式的に示す図である。
同図にはトンネル坑内1が示されている。トンネル坑内1は、例えばトンネル工事が行われている現場であり、車両設備10が使用される場所である。
【0014】
同図に示すトンネル坑内1においては、車両設備10が搬入されている。同図の車両設備10は、バッテリーロコ20(機関車の一例)と、2つの台車30−1、30−2とが連結されて構成される。台車は、例えば貨車などとも呼ばれる。
【0015】
車両設備10において、バッテリーロコ20は、蓄電池に蓄積された電力を動力源とする機関車である。バッテリーロコ20は、例えば有害な排気ガスが発生せず、また、引火性のガスなどが発生しても引火を誘発する可能性が非常に低いことから、トンネル坑内1のような狭い作業空間での使用に向いている。バッテリーロコは、バッテリーカーなどとも呼ばれる。
本実施形態におけるバッテリーロコ20は、運転者DRが操縦を行うことによって走行する。ただし、本実施形態のバッテリーロコ20は、作業員との接触事故防止機能を有しており、接触事故防止機能が有効となった場合には、運転者DRの操縦にかかわらず走行速度が制限される。
【0016】
台車30−1、30−2は、それぞれ、資材やセグメントなどの物や作業員などの人を積載する。同図においては、バッテリーロコ20に台車30−2が連結され、さらに台車30−2に台車30−1が連結されている。
台車30−1、30−2自体は動力を有しておらず、同じ車両設備10に含まれるバッテリーロコ20の走行に伴って移動する。
なお、以降において台車30−1、30−2について特に区別しない場合には台車30と記載する。
【0017】
バッテリーロコ20と、2つの台車30−1、30−2の各車輪は、トンネル坑内1に敷設された軌条2の上に置かれる。これにより、車両設備10は、トンネル坑内1において軌条2上を走行しながら移動する。
同図の車両設備10は、軌条2に沿って、矢印FWにより示す前進方向と矢印BKにより示す後退方向とのいずれの方向にも移動することができる。矢印FWにより示す前進方向に車両設備10が移動(前進)するとき、バッテリーロコ20は、連結された台車30−1、30−2を後押しする。一方、矢印BKにより示す後退方向に車両設備10が移動(後退)するとき、バッテリーロコ20は、連結された台車30−1、30−2を牽引する。
同図において、矢印FWにより示す進行方向が車両設備10の前進方向であり、矢印BKにより示す進行方向が車両設備10の後退方向である。この場合、車両設備10の進行方向側が車両設備10の前方に対応し、車両設備10の後退方向側が車両設備10の後方に対応する。
【0018】
トンネル坑内1においては作業員WKが作業を行っている。本実施形態において、作業員WKは、それぞれRF(Radio Frequency)タグ400を所持して入坑する。RFタグ400は、非接触型の通信によってデータの書き込み、読み出しが行われる記憶媒体(非接触型記憶媒体)の1つであり、RFID(Radio Frequency Identification)タグなどとも呼ばれる。
【0019】
本実施形態における車両設備10は、接触事故防止機能のための走行制御装置としての構成を備える。以下、本実施形態における接触事故防止機能の構成について説明する。
本実施形態における接触事故防止機能は、バッテリーロコ20、RFタグ400、RFタグ対応通信部100、物体検出部200F、200B、接触バンパー(接触検出部)300F、300Bを備える構成によって実現される。
【0020】
上記の接触事故防止機能の構成要素のうち、車両設備10が前進方向に走行しているときに対応する接触事故防止機能の構成要素には、バッテリーロコ20、RFタグ対応通信部100、物体検出部200F及び接触バンパー300Fが含まれる。
また、車両設備10が後退方向に走行しているときに対応する接触事故防止機能の構成要素には、バッテリーロコ20、RFタグ対応通信部100、物体検出部200B及び接触バンパー300Bが含まれる。
【0021】
まず、車両設備10が前進方向に走行しているときに対応する接触事故防止機能の構成について説明する。
RFタグ対応通信部100は、バッテリーロコ20に設けられる。RFタグ対応通信部100は、アンテナ101とリーダライタ102とを備える。
アンテナ101は、RFタグ400との間で電波の送受信を行う。リーダライタ102は、アンテナ101によるRFタグ400との電波の送受信を経由して、RFタグ400と通信を行い、RFタグ400に対するデータの読み出しとデータの書込を行うことができる。
【0022】
リーダライタ102は、単体であってもRFタグ400と通信を行うことが可能である。しかし、リーダライタ102自体の通信距離は比較的短い。そこで、本実施形態においては、アンテナ101を備えることで、RFタグ対応通信部100の通信距離を拡大している。
なお、リーダライタ102単体で十分な通信距離が確保できる場合にはアンテナ101は省略されて良い。
【0023】
図2は、
図1に示したトンネル坑内1の状態を平面方向からみた図である。
本実施形態において、アンテナ101は、例えばバッテリーロコ20の進行方向に対応した指向性を有するように構成される。そのうえで、アンテナ101においては、指向性を有する進行方向に対して通信距離L1が得られるようにゲイン等が設定される。このようなアンテナ101が設けられることで、RFタグ対応通信部100は、バッテリーロコ20の進行方向に対して通信距離L1として示す通信距離の範囲内に位置するRFタグ400と通信を行うことができる。
【0024】
RFタグ400は、トンネル坑内1に入坑する作業員WKのそれぞれが所持している。従って、トンネル坑内1において、同図に例示するようにバッテリーロコ20の作業員WKが、RFタグ対応通信部100の通信距離L1の範囲に位置する状態となった場合には、作業員WKが所持するRFタグ400とRFタグ対応通信部100とが通信を行う状態となる。
【0025】
また、物体検出部200Fは、車両設備10における最も前方の先頭車両である台車30−1の前方(車両設備10の前進方向における先頭部分)に設けられ、車両設備10の前方の物体を検出する。
本実施形態における物体検出部200Fは、電磁波を利用して車両設備10の前方の物体を検出する。具体的に、本実施形態の物体検出部200Fは、赤外線を利用して車両設備10の前方の物体を検出する。つまり、物体検出部200Fは、物体が発する赤外線を検出することにより物体検出を行う。物体検出部200Fが赤外線により検出可能な物体の中には人も含まれる。従って、物体検出部200Fは、台車30−1の前方に作業員WKが存在していれば、作業員WKを検出することができる。
【0026】
ここで、赤外線方式による物体検出の場合、感度を高くするのに応じて物体を検出可能な距離は長くなる。しかし、感度が高くなるほど、物体が検出される角度範囲(検出角度範囲)が拡大する。検出角度範囲が拡大するほど、トンネル坑内1において軌条2の脇などに置かれている資材などのように、本来は検出すべきでない物体までが検出されるという誤検出が生じやすくなってしまう。
【0027】
物体検出部200Fについては、上記のような検出角度範囲の拡大によるトンネル坑内1での誤検出を考慮して感度が設定される。このように設定される感度に応じて物体検出部200Fが物体を検出可能な距離は、
図2に示されるように、RFタグ対応通信部100よりも短い検出距離L2として示される。検出距離L2は、具体的には、例えば15m程度である。
【0028】
物体検出部200Fについては、赤外線に代わる電磁波として例えば超音波が利用されてもよい。つまり、物体検出部200Fは、超音波を発し、発せられた超音波の反射状態を検出することによって、前方における物体の有無を検出するようにしてもよい。
【0029】
本実施形態において、先に説明したRFタグ対応通信部100の通信距離L1の通信距離は、物体検出部200Fの検出距離L2よりも長くなるように設定される。一例としてRFタグ対応通信部100の通信距離L1は、30メートル程度に設定される。
【0030】
また、接触バンパー300Fは、
図1及び
図2に示されるように、車両設備10における先頭の台車30−1の前方に取り付けられるバンパーである。
接触バンパー300Fは、例えば
図1及び
図2において矢印Aとして示すように、前方からの物体の接触を検出する。
【0031】
そして、本実施形態のバッテリーロコ20は、車両設備10が前進方向に走行しているとき、RFタグ対応通信部100、物体検出部200F及び接触バンパー300Fを利用して、以下のように接触事故防止の動作を行う。
本実施形態のトンネル坑内1の作業環境では、車両設備10の標準速度(坑内走行速度)が定められている。車両設備10は、定められた標準速度を上限とする速度範囲内でトンネル坑内1を走行することができる。
【0032】
そのうえで、本実施形態のバッテリーロコ20は、軌条2による走行路の勾配や台車の重量などにかかわらず、一定速度を維持した状態で車両設備10が走行するように、定速度走行制御を行うことができる。
定速度走行制御として、バッテリーロコ20は、標準速度により一定で車両設備10を走行させることができる(標準速度走行制御)。一例として、本実施形態における標準速度は、10km/hである。
【0033】
ここで、バッテリーロコ20が前進方向に沿って標準速度走行制御を行っていることで、車両設備10は前進方向に沿って10km/hの標準速度でトンネル坑内1の或る位置を走行している状態にある。このとき、車両設備10の前方において、RFタグ対応通信部100の通信距離L1からさらに離れた位置にて或る一人の作業員WKが存在している。
【0034】
車両設備10が上記の位置からさらにトンネル坑内1を前進方向に走行していくことにより、作業員WKがRFタグ対応通信部100の通信距離L1の範囲内に位置する状態となる。このような状態となると、作業員WKが所持するRFタグ400とRFタグ対応通信部100との通信が開始される。
【0035】
このようにRFタグ400とRFタグ対応通信部100との通信が行われる状態となった場合、バッテリーロコ20は、これまでの標準速度走行制御から、標準速度よりも低い第1速度による定速度走行制御(第1速度走行制御)に切り替える。具体的に、第1速度は、3km/hである。
つまり、この場合のバッテリーロコ20は、10km/hの一定速度で前進方向に車両設備10が走行している状態のもとでRFタグ400とRFタグ対応通信部100との通信が行われることに応じて、3km/hの一定速度で前進方向に車両設備10が走行する状態となるように制御する。
【0036】
このように、本実施形態においては、接触事故防止の動作として、まず、約30mの通信距離L1に対応する範囲にまで作業員WKと車両設備10とが接近した場合には、車両設備10が3km/hにまで減速して走行するように制御される。
車両設備10が3km/hにまで減速されることで、車両設備10の前方にいる作業員WKが車両設備10に気付いて車両設備10から待避するまでの時間に余裕が与えられるため、車両設備10と作業員WKとが接触する可能性は低くなり、安全性が高まる。また、例えばバッテリーロコ20の運転者DRは、車両設備10が3km/hにまで強制的に減速したことによって、車両設備10の前方の約30m以内において作業員WKが存在していることに気付くことができ、前方への注意を高めることになるので、この点でも安全性が高まる。
【0037】
次に、作業員WKがこれまでと同じ位置に存在している状態のもとで、車両設備10が3km/hで前進方向にさらに走行していくことによって、作業員WKが物体検出部200Fの検出距離L2の範囲内に位置する状態となる。このように作業員WKが検出距離L2の範囲内に位置する状態となると、物体検出部200Fが作業員WKを物体として検出する。
【0038】
物体検出部200Fが作業員WKを物体として検出すると、バッテリーロコ20は、これまでの第1速度走行制御から、第1速度よりも低い第2速度による定速度走行制御(第2速度走行制御)に切り替える。具体的に、第2速度は、1km/hである。
つまり、この場合のバッテリーロコ20は、車両設備10が検出距離L2に対応する約15mにまで作業員WKに近づくと、3km/hの一定速度で前進方向に車両設備10が走行する状態から、1km/hの一定速度で前進方向に車両設備10が走行する状態となる。
【0039】
このように車両設備10が1km/hにまで減速されることで、車両設備10に対して検出距離L2以内にまで接近している作業員WKが車両設備10に気付いて待避するまでの時間に余裕が与えられることになる。これにより、車両設備10と作業員WKが接触する可能性が低い状態を維持することができる。また、例えばバッテリーロコ20の運転者DRは、車両設備10がさらに3km/hから1km/hにまで強制的に減速したことにより、車両設備10の前方の約15m以内において作業員WKが存在していることを知ることになり、前方への注意もさらに高めることができる。
【0040】
そして、作業員WKがこれまでと同じ位置に存在している状態のもとで、車両設備10が1km/hで前進方向にさらに走行していった場合、作業員WKは、車両設備10における先頭の台車30−1の前側に設けられた接触バンパー300Fと接触することになる。接触バンパー300Fは、作業員WKの接触に応じて、接触の有ったことを検出する。
接触バンパー300Fにより接触の有ったことが検出されると、バッテリーロコ20は走行を停止する。
具体的に、接触バンパー300Fは、物体の接触に応じて可動であり、物体の接触したことを機械的に検出する。接触バンパー300Fにより物体の接触が検出されると、検出に応じた接触バンパー300Fの動きに応じて、例えば非常ブレーキが作動し、さらに、車輪を駆動するモータへの通電経路に挿入されたスイッチ(例えばリミットスイッチ)がオフとなって通電が遮断される。これにより、バッテリーロコ20が停止する。
【0041】
ここで、接触バンパー300Fが接触の有ったことを検出する前の段階においては、物体検出部200Fにより作業員WKが検出されているために、車両設備10は1km/hによる低速で走行している状態にある。このために、作業員WKと接触バンパー300Fとの接触に応じたバッテリーロコ20の走行停止制御による制動距離は非常に短い。
そのうえで、接触バンパー300Fは、矢印Aの方向から受ける力に応じて後方に押し込まれる可動範囲について、第2速度(1km/h)で走行する車両設備10の制動距離よりも大きくなるように設定されている。
具体的に、第2速度(1km/h)で走行する車両設備10の制動距離が166mmである場合、接触バンパー300Fの可動範囲については、166mmに対してマージンを与えた200mm程度となるように設定される。
このために、作業員WKが車両設備10と接触したとしても、作業員が受ける衝撃はほとんどなく、作業員WKの身体に問題が生じることはない。このようにして、本実施形態においては、車両設備10との接触事故を回避することができる。
【0042】
なお、上記の説明では、本実施形態の接触事故防止機能が3段階であることを説明するために、車両設備10が第1速度で一定で走行する状態のもとで、物体検出部200Fにより物体が検出されるのに応じて、第2速度に減速される場合について説明した。
しかし、例えばRFタグ対応通信部100とRFタグ400との通信が行われておらず標準速度で車両設備10が走行しているような状態であっても、物体検出部200Fにより物体が検出される場合がある。本実施形態では、安全性の確保のため、上記のように標準速度で走行しているような状態であっても物体検出部200Fにより物体が検出されれば、第2速度への減速が行われる。
また、物体検出部200Fにより物体が検出されておらず標準速度あるいは第1速度で車両設備10が走行しているような状態であっても、接触バンパー300Fにより接触が検出された場合には、バッテリーロコ20の走行が停止する。
【0043】
次に、車両設備10が
図1の矢印BKで示す後退方向に走行しているときの接触事故防止の構成について説明する。
RFタグ対応通信部100のアンテナ101は、前述のように、車両設備10の進行方向への指向性を有するようにされている。即ち、車両設備10が後退方向に走行しているときには、アンテナ101は、トンネル坑内1の後退方向に沿った指向性を有する。
従って、本実施形態におけるアンテナ101は、バッテリーロコ20の前進方向と後退方向とのそれぞれに応じた指向性を有する。このように2つの指向性を有する本実施形態のアンテナ101は以下のように構成される。
つまり、本実施形態では、アンテナ101について、ビームフォーミングなどの技術を用いて、バッテリーロコ20の走行方向に応じて指向性を変更するように構成される。具体的には、バッテリーロコ20が前進方向に走行しているときには前進方向に単一指向性を有し、バッテリーロコ20が後退方向に走行しているときには後退方向に単一指向性を有するようにアンテナ101を構成する。
【0044】
あるいは、2つの指向性を有するアンテナ101は以下のように構成することもできる。
つまり、アンテナ101として、バッテリーロコ20の前進方向に沿った単一指向性を有する前進方向対応のアンテナと、バッテリーロコ20の後退方向に沿った単一指向性を有する後退方向対応のアンテナとを備える。そのうえで、バッテリーロコ20が前進方向に走行しているときには、アンテナ101として前進方向対応のアンテナが機能し、バッテリーロコ20が後退方向に走行しているときには、アンテナ101として後退方向対応のアンテナが機能するように切り替えを行えばよい。
あるいは、より簡単なアンテナ101の構成として、バッテリーロコ20の前進方向に沿った指向性とバッテリーロコ20の後退方向に沿った指向性との双方向指向性を与えてもよい。
【0045】
物体検出部200Bは、車両設備10における最後尾の車両であるバッテリーロコ20の後部(車両設備10の後退方向における先頭部分)に設けられ、赤外線方式により車両設備10の後方における検出距離L2の範囲内の物体を検出する。
また、接触バンパー300Bは、例えば
図1及び
図2において矢印Bとして示すように、後方からの物体の接触を検出する。
物体検出部200Bも、物体検出部200Fと同様に赤外線に代わる電磁波として超音波を利用した物体検出の構成が採られてよい。
【0046】
バッテリーロコ20は、車両設備10が
図2の矢印BKで示す後退方向に走行しているとき、RFタグ対応通信部100、物体検出部200B及び接触バンパー300Bを利用して、前進方向に走行しているときと同様に接触事故防止のための走行制御を行う。
つまり、バッテリーロコ20が車両設備10を後退方向に走行させているときに、車両設備10の後方において作業員WKが所持するRFタグ400が通信距離L1の範囲内に位置すると、RFタグ400とRFタグ対応通信部100とが通信を行う。
そこで、RFタグ400とRFタグ対応通信部100とが通信を行うと、バッテリーロコ20は、第1速度走行制御によって、第1速度(3km/h)に減速された状態で車両設備10が走行するように制御する。
【0047】
また、車両設備10を後退方向に走行させているときに、物体検出部200Fの後方の検出距離L2に作業員WKが存在する状態となれば、物体検出部200Fは作業員WKを物体として検出する。このように物体検出部200Fが物体を検出すると、バッテリーロコ20は、第1速度走行制御によって、第1速度(3km/h)からさらに第2速度(1km/h)に減速された状態で車両設備10が走行するように制御する。
【0048】
そして、車両設備10が第2速度(1km/h)で後退方向に走行している状態において、作業員WKがバッテリーロコ20の後方に設けられた接触バンパー300Bが作業員WKと接触した場合には、接触バンパー300Bにより接触が検出される。
このように接触バンパー300Bにて接触が検出されるのに応じて、モータへの通電経路に挿入されたスイッチがオフとなってモータへの通電が停止し、バッテリーロコ20は走行を停止する。
このようにして、車両設備10が後退方向に走行しているときにも、バッテリーロコ20は、前進方向に走行しているときと同様の動作により接触事故防止機能が働く。
【0049】
前述のように、赤外線センサによる物体検出部200F、200Bの検出距離L2を長くしようとして感度を高めるほど検出角度範囲も拡大するために、例えばトンネル坑内1の端に置かれた資材等まで検出してしまうといった誤検出が生じる可能性が高くなる。このために、トンネル坑内1において物体検出部200F、200Bが一定以上の確度で作業員WKを物体として検出できるようにした場合の検出距離L2としては前述のように15m程度までが限度である。安全性をより高めることを考慮すれば、検出距離としては、より長い方が好ましい。
また、赤外線は直進性が高い。このために、トンネル坑内1がカーブしているような場所では、物体検出部200Fの前方あるいは物体検出部200Bの後方においてカーブしている箇所までの物体の検出にとどまり、カーブの先の物体を検出することは難しい。このように、物体検出部200F、200Bでは、現場の状態に応じて物体を検出可能な距離が短くなってしまうという不具合もある。
【0050】
そこで、本実施形態では、トンネル坑内1に入坑している作業員WKにRFタグ400を所持させたうえで、バッテリーロコ20にRFタグ対応通信部100を設けるようにしている。
これまでの説明から理解されるように、RFタグ対応通信部100については、検出距離L2よりも長い30m程度の通信距離L1を得ることが可能である。
また、RFタグ対応通信部100とRFタグ400との通信には電波が用いられる。電波は赤外線と比較して反射性や回折性が高い。このために、RFタグ対応通信部100との前方あるいは後方においてカーブがあるような状態であっても、通信距離L1がほぼ確保される。つまり、RFタグ対応通信部100によっては、通信距離L1に応じた電波の到達範囲内であれば、カーブの向こう側において位置しているRFタグ400とも通信を行うことが可能である。
【0051】
このように、本実施形態においては、作業員WKにRFタグ400を所持させ、バッテリーロコ20にRFタグ対応通信部100を設けることで、物体検出部200F、200Bよりも長い距離の範囲において作業員WKを検出することが可能とされている。
また、このようなRFタグ400との通信により、トンネル坑内1においてカーブのある場所でも作業員WKを検出可能な距離範囲が著しく狭められることがない。
これにより、物体検出部200F、200Bにより検出可能な距離よりも遠い場所に存在する作業員WKを検出して車両設備10を減速させることが可能になり、より高い安全性を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態において、作業員WKが所持するRFタグ400は、従来から作業員WK(人員)の管理に用いられている。ここでの作業員WKの管理とは、トンネル坑内1における作業員WKの状況を記録することである。具体的には、作業員WKの管理として、作業員WKのトンネル坑内1への入坑とトンネル坑内1からの退出についての記録が行われる。したがって、本実施形態の接触事故防止機能の実現のために、新たにRFタグ400を導入する必要がない。
【0053】
図3を参照して、本実施形態におけるバッテリーロコ20の構成例について説明する。なお、同図においては、バッテリーロコ20とともに、作業員WKが所持するRFタグ400が示される。また、同図においては、バッテリーロコ20とともに、台車30−1において備えられる物体検出部200Fと接触バンパー300Fとが示されている。
また、同図において、
図1及び
図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
同図に示すバッテリーロコ20は、RFタグ対応通信部100、物体検出部200B、接触バンパー300B、運転操作部21、車輪駆動部22、速度センサ23及び走行制御部24を備える。
RFタグ対応通信部100は、前述のように、バッテリーロコ20の進行方向に沿った指向性を有し、通信距離L1の範囲内に位置するRFタグ400と通信を行う。
物体検出部200Bは、前述のように、バッテリーロコ20の後方における検出距離L2の範囲内に位置する物体を検出する。
接触バンパー300Bは、前述のように、バッテリーロコ20の後方に設けられるバンパーであり、物体の接触の有無を検出する。
【0055】
運転操作部21は、運転者DRが運転を行うために操作する部位を一括して示している。運転操作部21は、アクセル操作部、ブレーキ操作部、進行方向を前進方向と後退方向とで切り替えを行うための操作部、標準速度走行制御による定速走行を指示するための操作部などを含む。
【0056】
車輪駆動部22は、バッテリーロコ20の車輪の駆動系を備える部位である。具体的に車輪駆動部22は、車輪を駆動するためのモータや車輪の回転を制動させるブレーキの機構なども含む。
【0057】
速度センサ23は、例えば車輪の回転数に基づいてバッテリーロコ20の走行速度を検出する。速度センサ23により検出されるバッテリーロコ20の走行速度は、バッテリーロコ20を含む車両設備10の走行速度である。
【0058】
走行制御部24は、運転操作部21に対して行われた操作に応じた走行が行われるように車輪駆動部22を制御する。一例として、走行制御部24は、アクセル操作部に対する操作によるアクセル開度に応じて車輪を駆動させるためモータの回転数などを制御する。
また、走行制御部24は、定速度走行制御として、速度センサ23により検出される速度が所定値で一定となるようにモータの回転数を制御することもできる。
【0059】
そのうえで、本実施形態の走行制御部24は、前述のように接触事故防止機能に対応する制御を行う。
つまり、走行制御部24は、RFタグ対応通信部100がRFタグ400と通信を行っている場合に、車両設備10が標準走行速度よりも低い所定の第1速度で走行するように制御する。
また、走行制御部24は、物体検出部200F、200Bにより物体が検出された場合に、車両設備10が第1速度よりも低い所定の第2速度で走行するように制御する。
また、走行制御部24は、接触バンパー300F、300Bにより物体の接触が検出された場合に、バッテリーロコ20を停止させる。具体的には、走行制御部24は、物体の接触の検出に応じた、接触バンパー300F、300Bの機械的な動きに応じて、モータへの通電経路に備えられるスイッチをオフとする機構を備える。
【0060】
続いて、
図4のフローチャートを参照して、バッテリーロコ20における走行制御部24が接触事故防止のために実行する処理手順例について説明する。なお、同図に示す手順は、標準速度走行制御または運転者DRによる手動運転に応じてバッテリーロコ20が走行している状態のもとで開始される。
【0061】
走行制御部24は、接触バンパー300F、300Bの少なくともいずれか一方にて接触が検出されたか否かについて判定する(ステップS101)。なお、ステップS101においては、安全性の確保のために、進行方向が前進方向と後退方向のいずれであるのかにかかわらず、接触バンパー300Fと接触バンパー300Bとの両者の接触の検出を判定する。
接触が検出された場合(ステップS101−YES)、走行制御部24は、前述のように、非常ブレーキを作動させるとともに、モータへの通電経路に挿入されるスイッチをオフとすることでバッテリーロコ20の走行を停止させる(ステップS102)。
前述のように、ステップS101とステップS102に対応する走行制御部24の処理は、接触バンパー300F、300Bの機械的な接触の検出に応じた機構による動作として実現される。しかし、例えば、走行制御部24が接触バンパー300F、300Bからの接触の検出に応じた信号を入力して、バッテリーロコ20の走行を停止させるように制御を行うように構成してもよい。
【0062】
接触が検出されない場合(ステップS101−NO)、走行制御部24は、さらに現在の進行方向に応じた物体検出部(物体検出部200Fまたは物体検出部200B)により物体が検出されているか否かについて判定する(ステップS103)。
【0063】
ステップS103として、走行制御部24は、現在の進行方向が前進方向である場合には物体検出部200Fにより物体が検出されたか否かについて判定する。一方、ステップS102として、走行制御部24は、現在の進行方向が後退方向である場合には物体検出部200Bにより物体が検出されたか否かについて判定する。
また、ステップS103の判定にあたり、走行制御部24は、物体検出部200Fまたは物体検出部200Bから出力される検出信号を監視すればよい。この場合、走行制御部24は、現在の進行方向に対して反対側の方向に対応する物体検出部の検出信号については監視しなくともよい。現在の進行方向に対して反対側の方向に位置する作業員WKから車両設備10は離れていくため接触する可能性はないと考えてよいからである。
そして、物体が検出されたことが判定された場合(ステップS103−YES)、走行制御部24は、第2速度走行制御としての定速度走行制御を行う(ステップS104)。
【0064】
一方、物体が検出されていないことが判定された場合(ステップS103−NO)、走行制御部24は、RFタグ対応通信部100がRFタグ400と通信を行っている状態にあるか否かについて判定する(ステップS105)。なお、このときのRFタグ対応通信部100におけるアンテナ101は、前述のように、進行方向に沿った指向性により通信距離L1を有するように設定されている。
RFタグ対応通信部100がRFタグ400と通信を行っている状態にあることが判定された場合(ステップS105−YES)、走行制御部24は、第1速度走行制御としての定速度走行制御を行う(ステップS106)。
【0065】
一方、RFタグ対応通信部100がRFタグ400と通信を行っている状態にない場合(ステップS105−NO)、接触バンパー300F、300B、物体検出部200F、200B及びRFタグ対応通信部100は以下のような状態にある。
つまり、この場合には接触バンパー300F、300Bのいずれもよっても接触が検出されていない。かつ、この場合には、進行方向に応じた物体検出部(物体検出部200Fまたは物体検出部200B)によって物体が検出されていない。さらに、この場合には、RFタグ対応通信部100がRFタグと通信を行っていない。
【0066】
そこで、この場合の走行制御部24は、標準速度走行制御が指示されていれば標準速度走行制御を行う(ステップS107)。あるいは、走行制御部24は、手動運転が行われていれば、手動運転に応じた速度制御を行う(ステップS107)。
ステップS104、S106、S107のいずれかによる処理の終了に応じて、走行制御部24はステップS101に処理を戻す。このようにステップS101に処理が戻されることで、物体検出部により物体が検出されて第2速度で走行していた状態から、物体検出部により物体が検出されない状態に変化した場合には、標準速度または手動運転に応じた速度に復帰することができる。
同様に、RFタグ400との通信が行われて第1速度で走行していた状態から、RFタグ400との通信が行われなくなった状態に変化した場合には、標準速度または手動運転に応じた速度に復帰することができる。
【0067】
このような処理によって、
図1及び
図2にて説明したように、接触事故防止の動作が得られる。つまり、通信距離L1の範囲に作業員WKが位置する状態となると第1速度に減速が行われる。また、検出距離L2の範囲内にまで作業員WKが近づくと、第1速度からさらに第2速度に減速が行われる。そして、接触バンパーにて接触が検出されれば、車両設備10が停止する。
【0068】
なお、本実施形態における車両設備10において備えられる台車30の数については特に限定されない。また、車両設備10としては、台車30が連結されていなくともよい。つまり、車両設備10は、少なくともバッテリーロコ20を備えて構成される移動体である。車両設備10としてバッテリーロコ20のみを備える場合、物体検出部200Fと接触バンパー300Fは、バッテリーロコ20の前方の部位に設けられればよく、物体検出部200Bと接触バンパー300Bは、
図1と同様にバッテリーロコ20の後方の部位に設けられればよい。
【0069】
なお、本実施形態の車両設備10が使用される場所は、トンネル坑内1以外の工事現場などであってもよい。また、車両設備10が使用される場所は、娯楽施設などをはじめ工事現場以外の場所であってもよい。
【0070】
なお、これまでの実施形態の説明においては、車両設備に含まれて台車を牽引または後押しする機関車がバッテリーを動力源とするバッテリーロコである場合を例に挙げている。しかし、本実施形態における機関車としては、バッテリー以外の動力源を用いるものであってもよい。
【0071】
なお、上述のバッテリーロコ20としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述のバッテリーロコ20としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。