特開2016-101154(P2016-101154A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタル工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-101154(P2016-101154A)
(43)【公開日】2016年6月2日
(54)【発明の名称】草刈鋏
(51)【国際特許分類】
   A01B 1/22 20060101AFI20160502BHJP
   B26B 13/26 20060101ALI20160502BHJP
【FI】
   A01B1/22
   B26B13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-37289(P2015-37289)
(22)【出願日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-233006(P2014-233006)
(32)【優先日】2014年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597027833
【氏名又は名称】オリエンタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】金子 光一郎
【テーマコード(参考)】
3C065
【Fターム(参考)】
3C065AA07
3C065AA21
3C065CA07
3C065FA03
(57)【要約】
【課題】柄部の長さを容易に変更させることができるとともに、軽さと剛性を備えた柄部の草刈鋏を提供する。
【解決手段】交差する部分で第1の軸3を介して回動自在に連結した一対の第1,2の柄部1,2の先端に一対の第1,2の鋏刃体7,8の基端を夫々連結し、かつ該第1,2の鋏刃体7,8の略中央を交差させると共に該交差する部分を第2の軸9を介して回動自在に連結した草刈鋏において、前記第1,2の柄部1,2の長さを調節する調節手段15を備えるとともに、前記第1,2の柄部1,2の前記第1の軸3を含む先端側は、前記第1,2の柄部1,2の基端側に比して剛性を有する素材で構成し、一方前記第1,2の柄部1,2の握り部4のある基端側を前記第1の先端側に比して比重の小さな素材で構成し、前記第1,2の柄部1,2の重心位置を、前記第1,2の柄部1,2の中間位置より前記先端寄りに設けている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する部分で第1の軸を介して回動自在に連結した一対の第1,2の柄部の先端に一対の第1,2の鋏刃体の基端を夫々連結し、かつ該第1,2の鋏刃体の略中央を交差させると共に該交差する部分を第2の軸を介して回動自在に連結した草刈鋏において、前記第1,2の柄部の長さを調節する調節手段を備えるとともに、前記第1,2の柄部の前記第1の軸を含む先端側は、前記第1,2の柄部の基端側に比して剛性を有する素材で構成し、一方前記第1,2の柄部の握り部のある基端側を前記第1の先端側に比して比重の小さな素材で構成したことを特徴とする草刈鋏。
【請求項2】
前記第1,2の柄部の重心位置を、前記第1,2の柄部の中間位置より前記先端寄りに設けたことを特徴とする請求項1記載の草刈鋏。
【請求項3】
前記第1,2の柄部は、前記第1,2の柄部の先端側に設けた第1の管部材に、前記第1,2の柄部の基端側に設けた第2の管部材をスライド可能に嵌合するとともに、
前記調節手段は、前記第2の管部材に揺動自在に設けた操作部と、前記第2の管部材に設けた貫通部と、前記貫通部を介して前記操作部の揺動操作によって前記第1の管部材に押圧可能な板状の弾性部材とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の草刈鋏。
【請求項4】
前記第1,2の柄部は、前記第1,2の柄部の先端側に設けた第1の管部材に、前記第1,2の柄部の基端側に設けた第2の管部材をスライド可能に嵌合するとともに、
前記第1の管部材と前記第2の管部材は互いに異なる曲率半径の円弧面を有し、
前記調節手段は、前記第1の管部材と前記第2の管部材を径方向に貫通して固定する締付手段を備え、前記締付手段を締め付けて前記第2の管部材の円弧面を前記第1の管部材の円弧面に沿って弾性変形させて、前記第1の管部材の円弧面を前記第2の管部材の円弧面に面接触状態で押圧可能に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の草刈鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り作業やそれに付随する作業を立った姿勢で行える草刈鋏である。
【背景技術】
【0002】
従来、除草する場合においては、草刈り鎌でしゃがんで刈ったり、エンジンやモーターの付いた草刈り機でカッター等を回転して刈り払ったり、除草剤等で草を枯らせたりしていたが、草刈り鎌等でしゃがんで刈る方法では疲れ易く、手も汚れがちで、作業能率も悪かったし、エンジン等の付いた草刈り機では、刈った草は飛散するし、ガソリンや電気のエネルギー源を必要とし、騒音の発生する虞があり、ある程度の重量物を取り扱わなければならないために疲れ易く、起伏のある場所や庭石のある場合には使いにくいし、樹木の根元や隅の部分などでも作業が非常に困難であった。
【0003】
このような問題点を解決するものとして同一発明者は特許文献1にある草刈鋏を提案している。この草刈鋏は交差する部分で第1の軸を介して回動自在に連結した一対の第1,2の柄部の先端に第1,2の自在継手を介して一対の第1,2の鋏刃体の基端を夫々連結し、かつ該第1,2の鋏刃体の略中央を交差させると共に該交差する部分を第2の軸を介して回動自在に連結したものであり、立った姿勢のままで、柄部での手や腕の開閉回転操作が、自在継手を介して、地面に水平に接している鋏刃体の開閉回転運動としてスムーズに伝わるようにしたことにより、柄部での作業の力は梃子の作用により、大きくなって鋏刃体に伝わり楽に作業を行うことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−116787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の草刈鋏では、柄部の長さが一定であるため、作業に応じて柄部の長い草刈鋏と柄部の短い草刈鋏を用意する必要があるという問題があった。
【0006】
また、柄部の全長を扱い易い軽いアルミニウム等の素材のみで構成した場合、硬い草を刈る時には柄部が大きく撓んでしまい、特に柄部が交差する軸部分で破損に至ってしまう場合があった。
【0007】
一方柄部の全長を剛性のある鉄等で構成した場合、比重が大きいために柄部が重くなって草刈りは負担のかかる作業となるという問題もあった。
【0008】
更に、柄部の素材をチタンやグラスファイバーを使った樹脂などの軽くて剛性のある素材とすれば、高価な商品となってしまうことになるという問題もあった。
【0009】
また、スライド伸縮自在に構成した柄部のスライド伸縮をロックする手段として外管と内管を貫通する穴を通して螺子部材を固定する場合、外管、内管と螺子の間の隙間が限られた接触部位での締め付けであるために、作業動作でガタつきが生じ、柄部の基端側で背面側に曲がっている握り部を握って行う草刈り作業において、内管と外管間の捻じれの要素も加わって、使い心地に違和感を生じるものであった。
【0010】
このガタつきを無くすために螺子部材を強く締めると、外管と内管に塑性変形が生じ、スライド伸縮がスムーズに行われなくなる虞があった。
【0011】
また、柄部のスライド伸縮をロックする手段として操作レバーを起伏させてロックを開閉させる機構も提案されているが(特開2000−157753など)、ロック状態において、内外の管の扁平率がほぼ同一であるために、内外管の接触面が寄り合っている極狭い部位に限定されるために、草刈作業における捻じれやガタつきが生じるものであった。
【0012】
そこで、本発明は、柄部の長さを容易に変更させることができるとともに、軽さと剛性を備えた柄部の草刈鋏を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、草刈作業における柄部の内外管間のガタつきや捻じれを防止して草刈りを安定して行うことができる草刈鋏を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の本発明の草刈鋏は、交差する部分で第1の軸を介して回動自在に連結した一対の第1,2の柄部の先端に一対の第1,2の鋏刃体の基端を夫々連結し、かつ該第1,2の鋏刃体の略中央を交差させると共に該交差する部分を第2の軸を介して回動自在に連結した草刈鋏において、前記第1,2の柄部の長さを調節する調節手段を備えるとともに、前記第1,2の柄部の前記第1の軸を含む先端側は、前記第1,2の柄部の基端側に比して剛性を有する素材で構成し、一方前記第1,2の柄部の握り部のある基端側を前記第1の先端側に比して比重の小さな素材で構成したことを特徴とするものであり、柄部の長さを調節するために柄部の中間部で分割して、柄部に力を加えた時に撓みの影響の大きい交差部を含む先端側に剛性を持たせる一方、握り部のある柄部の基端側は比重の小さい素材で構成し、草刈鋏の柄部の重量を軽くして、素材の持つ特性をそれぞれの部位で分担させることにより、課題を解決するための手段としたものである。
【0015】
請求項2記載の本発明の草刈鋏によれば、前記第1,2の柄部の重心位置を、前記第1,2の柄部の中間位置より前記先端寄りに設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の本発明の草刈鋏によれば、前記第1,2の柄部は、前記第1,2の柄部の先端側に設けた第1の管部材に、前記第1,2の柄部の基端側に設けた第2の管部材をスライド可能に嵌合するとともに、前記調節手段は、前記第2の管部材に揺動自在に設けた操作部と、前記第2の管部材に設けた貫通部と、前記貫通部を介して前記操作部の揺動操作によって前記第1の管部材に押圧可能な板状の弾性部材とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の本発明の草刈鋏によれば、前記第1,2の柄部は、前記第1,2の柄部の先端側に設けた第1の管部材に、前記第1,2の柄部の基端側に設けた第2の管部材をスライド可能に嵌合するとともに、前記第1の管部材と前記第2の管部材は互いに異なる曲率半径の円弧面を有し、前記調節手段は、前記第1の管部材と前記第2の管部材を径方向に貫通して固定する締付手段を備え、前記締付手段を締め付けて前記第2の管部材の円弧面を前記第1の管部材の円弧面に沿って弾性変形させて、前記第1の管部材の円弧面を前記第2の管部材の円弧面に面接触状態で押圧可能に備えたことを特徴とするものであるので、剛性を有する素材で構成された第1の管部材の円弧面と軽量さを有する素材で構成された第2の管部材の円弧面との接触部分が、弾性変形範囲内での第1の管部材及び第2の管部材のそれぞれの管の特性による変形を伴って前記第1の管部材の円弧面に沿って広範囲な部位において接触押圧されて、ガタつきがなくしっかりとロックできるものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、2の本発明によれば、作業に応じて柄部の長さの異なる草刈鋏を用意する必要がなくなり、草刈鋏の汎用性が向上する。また、柄部全体を同一素材で構成するよりも、柄部が剛性と軽さを兼備できて、握り部に加えられた力は下部にある鋏の働きとして確実に伝わり、操作性が向上するとともに、鋏刃体を下向きとした草刈鋏の重心位置が低くなり、草刈鋏のふらつきが抑えられるので草刈りを安定して行うことができる。
【0019】
また、請求項3記載の本発明の草刈鋏によれば、柄部の長さを任意で無段階に調整することが可能となり、板状の弾性部材の寸法や形状の設計によって第1の管部材と第2の管部材との締め付け押圧を適度に設定することができる。
【0020】
また、請求項4記載の本発明の草刈鋏によれば、柄部を第1の管部材と第2の管部材をスライド可能に嵌合し、長さを調節して固定した場合に、第1の管部材と第2の管部材の互いの円弧面に沿って広い部位で接触押圧されることによって、草刈作業における柄部の内外管間のガタつきや捻れを防止して、草刈りを安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1を示す草刈鋏の斜視図である。
図2】同上、草刈鋏の側面図である。
図3】同上、草刈鋏の分解斜視図である。
図4】同上、固定手段の分解斜視図である。
図5】同上、固定手段の分解斜視図である。
図6】同上、固定手段の断面図である。
図7】本発明の実施例2を示す第1の管部材の斜視図である。
図8】本発明の実施例3を示す第1の管部材の斜視図である。
図9】本発明の実施例4を示す柄部の分解斜視図である。
図10】同上、柄部の断面図である。
図11】本発明の実施例5を示す柄部の断面図である。
図12】本発明の実施例7における調節手段の分解斜視図である。
図13】同上、柄部の調節手段付近の断面図である。
図14図13において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
図15】本発明の実施例8における調節手段の分解斜視図である。
図16】同上、柄部の調節手段付近の断面図である。
図17図16において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
図18】本発明の実施例9における調節手段の分解斜視図である。
図19】同上、柄部の調節手段付近の断面図である。
図20図19において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
図21】本発明の本実施例10における柄部の調節手段付近の断面図である。
図22図21において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
図23】同上、供回り防止機構の分解斜視図である。
図24】同上、図23とは異なる構造の供回り防止構造を採用した柄部の調節手段付近の断面図である。
図25】同上、図24における供回り防止機構の分解斜視図である。
図26】本発明の本実施例11における柄部の調節手段付近の断面図である。
図27図26において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
図28】本発明の本実施例12における柄部の調節手段付近の断面図である。
図29図28において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
図30】本発明の本実施例13における柄部の調節手段付近の断面図である。
図31図30において第1,2の柄部の長さを固定した状態を示す柄部の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の第1実施例を図1図6を参照して説明する。一対の第1,2の柄部1,2はそれらの先端側で交差すると共に該部分で第1の軸3を介して回動自在に連結している。第1,2の柄部1,2の基端は背面側に横向きに折曲げられると共に、握り部4を夫々設けている。第1,2の柄部1,2の先端には第1,2の自在継手5,6を介して一対の第1,2の鋏刃体7,8の基端7A,8Aを夫々連結する。尚、第1,2の柄部1,2における先端と第1の軸3の間はやや外側に膨らむように湾曲している。そして第1,2の鋏刃体7,8の略中央を交差させると共に該交差する部分を第2の軸9を介して回動自在に連結している。
【0024】
前記第1,2の鋏刃体7,8を回動可能に連結する第2の軸9は、頭部9Aを下側にして螺子部9Bを第1,2の鋏刃体7,8の交差部に貫通すると共に、上部に雌螺子体9Cを螺着し得るようにしたものである。
【0025】
そして、第1の鋏刃体7と雌螺子体9Cとの間に一対のワッシャー10,10に挟持されたバネ座金11を介在し、また、頭部9Aと第2の鋏刃体8との間に断面略半円弧状の環状部材からなる合成樹脂製の緩み止めの座金12を介在させ、雌螺子体9Cを所定の強度で締め付けることにより、第1,2の鋏刃体7,8相互が所定の接触圧で摺動し得るようになっている。
【0026】
ここで本実施例の第1,2の柄部1,2は、第1の軸3を含む交差部分から先端をステンレス製の円筒状のパイプからなる第1の管部材13とし、それ以外の基端側を軽量なアルミニウム製の円筒状のパイプからなる第2の管部材14とする2分割に構成されている。
【0027】
第1の管部材13の外径D1は、第2の管部材14の内径D2より小さく形成されており(D1<D2)、第1の管部材13の基端側を第2の管部材14の先端側に挿入され、第1の管部材13を第2の管部材14に対して相対的に摺動させて移動させることにより、第1,2の柄部1,2を伸縮自在に備えている。
【0028】
第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定する調節手段15として、第1の管部材13の基端側において第1の管部材13の径方向に貫通する一対の貫通孔からなる固定側調節孔16を設けるとともに、第2の管部材14の先端側に第2の管部材14の径方向に貫通する一対の貫通孔を第2の管部材14の軸方向に複数並設した第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19を備え、固定側調節孔16と第1〜3のスライド側調節孔17,18,19のいずれか1つに連通する螺子部材20とこの螺子部材20に螺着される雌螺子部材21からなる固定手段22とを備えている。
【0029】
図4及び図5に示すように、雌螺子部材21を締め付ける際に螺子部材20が供回りするのを防止するために、螺子部材20の螺子部20Aに凸部23又は凹部24を形成するとともに、固定側調節孔16、又は固定側調節孔16及び第1〜3のスライド側調節孔17,18,19の両方に前記凸部23又は凹部24に係合する凹部25又は凸部26を形成して、固定側調節孔16と第1〜3のスライド側調節孔17,18,19のいずれか1つに連通する螺子部材20を固定側調節孔16、又は固定側調節孔16及び第1〜3のスライド側調節孔17,18,19の両方に対して回動不能に設けている。これにより、締め付けすぎによる第1の管部材13及び第2の管部材14の変形を防ぐことができる。
【0030】
また、図6に示すように調節手段15の別な一例として、第1の管部材13の基端側にスプリング等の弾性部材(図示せず)によって出し入れ自在に備えた突起27を設け、この突起27を第1〜3のスライド側調節孔17,18,19のいずれか1つに係合させるものとしてもよい。
【0031】
第2の管部材14の表面にアルマイト加工や合成樹脂製の被膜等による電気化学腐食を防止する被膜を形成しており、鉄系金属のステンレス製の第1の管部材13と非鉄金属のアルミニウム製の第2の管部材14との間で電位差が生じることによる電気化学的腐食を防止している。
【0032】
次に前記構成についてその作用を説明する。使用時においては、握り部4を握って第1,2の柄部1,2を開閉すると、該開閉運動は第1の自在継手5、第2の自在継手6を介し、さらに継手15を介して第1,2の鋏刃体7,8に伝達され、この結果第1,2の鋏刃体7,8は開閉運動し、草刈りを行うことができる。また、草刈りに限らず握り部4を握って第1,2の柄部1,2を開閉することにより、枝切り等も行うことができる。
【0033】
また、第1,2の柄部1,2は、第1の軸付近の交差部を含む先端側を比重が大きく強度を有するステンレス製の第1の管部材13とし、それ以外のハンドル等の基端側を第1の管部材13より比重が小さいアルミニウム製の第2の管部材14とする分割構造とすることで、強度を保ちつつ軽量化を図ることができ、取り回しのよい草刈鋏を提供することができる。また、第1,2の柄部1,2を前述の構成とすることで、握り部4を上向きとした第1,2の柄部1,2の重心G位置が調節手段15より低くなるため、握り部4を上向き、鋏刃体7,8を下向きとした草刈鋏の重心位置が低くなり、草刈鋏のふらつきが抑えられるので草刈りを安定して行うことができる。
【0034】
しかも、上記実施例では第1の軸3を回転中心として第1,2の柄部1,2の開閉運動が、第1,2の自在継手5,6を介して、第2の軸9を回転中心とした第1,2の鋏刃体7,8に開閉運動として伝わるので、腕の開閉動作という簡単な操作で草刈りを行うことができる。
【0035】
以上のように本実施例は、交差する部分で第1の軸3を介して回動自在に連結した一対の第1,2の柄部1,2の先端に一対の第1,2の鋏刃体7,8の基端を夫々連結し、かつ該第1,2の鋏刃体7、8の略中央を交差させると共に該交差する部分を第2の軸9を介して回動自在に連結した草刈鋏において、前記第1,2の柄部1,2の長さを調節する調節手段15を備えるとともに、前記第1,2の柄部1,2の前記第1の軸3を含む先端側は、前記第1,2の柄部1,2の基端側に比して剛性を有する素材であるステンレス鋼で構成し、一方前記第1,2の柄部1,2の握り部4のある基端側を前記第1の先端側に比して比重の小さな素材であるアルミニウム製で構成し、前記第1,2の柄部1,2の重心G位置を、前記第1,2の柄部1,2の中間位置より前記先端寄りに設けている。
【0036】
この場合、作業に応じて柄部の長さの異なる草刈鋏を用意する必要がなくなり、草刈鋏の汎用性が向上する。また、第1,2の柄部1,2全体を同一素材で構成するよりも、第1,2の柄部1,2の撓みが握り部4で変位する影響度合が大きい第1の軸3部位でのステンレス製の第1の管部材13の剛性が強いことにより、握り部4での変位は少なくなり、握り部4に加えられた力は鋏の働きとして確実に第1,2の鋏刃体7,8に伝わる。そして、第1,2の柄部1,2の撓みが握り部4で変位する影響度合が小さい第2の管部材14はアルミニウム製の軽い素材で構成されており、軽量化によって操作性が向上し、第1,2の鋏刃体7,8を下部とした草刈鋏の重心G位置が低くなり、草刈鋏のふらつきが抑えられて草刈りを楽に、かつ安定して行うことができる。
【0037】
この実施例1に限らず、以下に述べる各実施例において、交差部分を含む第1の管部材13と握り部4側の第2の管部材14をアルミニウム等の同一素材とし、第1の管部材13の肉厚を厚くして剛性を増加させた部材とすることもできる。さらに、第1の管部材13を第2の管部材14と同一素材、異種素材とすることに関わりなく中実材の棒材とすることによる剛性の強化を図ることも可能である。また、実施例1では、第1の管部材13の外径D1が第2の管部材14の内径D2よりも小(D1<D2)であるが、第1の管部材13の内径d1を第2の管部材14の外径d2よりも大きく(d1>d2)して、第1の管部材13に第2の管部材14よりも大きな剛性を与えて、第1の管部材13内で第2の管部材14が摺動して第1,2の柄部1,2の長さを調節するようにしても同様な効果を得ることができる。そして、実施例に示す第1,2の柄部1,2を構成する材料は金属素材に限らず、鉄よりも軽く、強度が数倍以上もある炭素繊維などの高機能繊維材やグラスファイバー材を一部、もしくは全部に使用することもできる。
【0038】
また、前記第1,2の柄部1,2の先端側を、握り部4を備えアルミニウム製の基端側より比重の大きい材料であるステンレス鋼で構成したことにより、第1,2の鋏刃体7,8を下向きとした草刈鋏の重心位置を低くすることが容易となり、草刈鋏のふらつきが抑えられるので草刈りを安定して行うことができる。
【実施例2】
【0039】
次に実施例2について図7を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
本実施例では、第1の管部材13は交差部分から先端にかけての外部に第2の管部材14と同様のアルミニウム製の管部材28を備えた2重管構造としている。
【0041】
これにより、第1の管部材13の強度を更に向上させるとともに、第1の管部材13と第2の管部材14の外観はともにアルミニウム製となり、第1,2の柄部1,2は伸縮自在の分割構造を有しながら、アルミニウム製の一体的な管部材のような外観を有するため、草刈鋏の美観が向上する。
【実施例3】
【0042】
次に実施例3について図8を参照して説明する。尚、前記実施例1及び2と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施例では、第1の管部材13は第2の管部材14と同様のアルミニウム製の管部材とし、その交差部分から先端にかけての内部に補強用のステンレス製の管部材29を備えた2重管構造としている。
【0044】
これにより、第1の管部材13の強度を更に向上させるとともに、第1の管部材13と第2の管部材14の外観はともにアルミニウム製となり、第1,2の柄部1,2は伸縮自在の分割構造を有しながら、アルミニウム製の一体的な管部材のような外観を有するため、草刈鋏の美観が向上する。
【実施例4】
【0045】
次に実施例4について図9及び図10を参照して説明する。尚、前記実施例1〜3と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施例では、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定する調節手段15に対応する、第1の管部材13の基端側と第2の管部材14の先端側を楕円形状に形成している。
【0047】
第1の管部材13に第2の管部材14をスライドさせて、第1の管部材13の基端側の固定側調節孔16を、第2の管部材14の先端側の第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19のいずれかに位置決めする際、第1の管部材13に対して第2の管部材14が回転してしまうことを防止するので、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定する作業を容易に行うことができる。
【0048】
第1,2の柄部1,2の基端で背面側に曲がっている握り部4を握って行う草刈り作業の際にも、第1の管部材13に対して第2の管部材14が回転してしまうことを螺子部材20とともに防止することができる。
【0049】
また第1,2の柄部1,2の全長、もしくは第1,2の管部材13,14の一方の全長に亘って、楕円形状とすることで作業時において第1,2の柄部1,2に掛かる力の方向への剛性を更に向上させることができる。
【0050】
更に、この楕円形状に変えて、第1,2の管部材13,14の断面形状を波形や星形などにすることによって、第1,2の管部材13,14間での回転を防止することができるとともに、作業時において第1,2の柄部1,2に掛かる剛性を更に向上させることができる。
【0051】
また、第1の管部材13の基端側と第2の管部材14の先端側の楕円形状は、その長軸方向を第1,2の柄部1,2の回動方向と平行に形成しており、第1,2の柄部1,2の回動動作時にかかる荷重に対して剛性を有する形状となっている。
【実施例5】
【0052】
次に実施例5について図11を参照して説明する。尚、前記実施例1〜4と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施例では、第1の実施例において、第1の管部材13の基端側内部の固定側調節孔16を連通する箇所に円筒状の支持管30を設けている。支持管30を設けることによって、固定手段22である螺子部材20を強く締めすぎたとしても、支持管30が第1の管部材13を内側から支持しているため、第1の管部材13と第2の管部材14が潰れるおそれがなくなり、第1の管部材13と第2の管部材14を両側からしっかりと止めることができる。
【0054】
また、支持杆30は、第1の管部材13の固定側調節孔16が形成される箇所を連通するように第1の管部材13内部に第1の管部材13の軸方向と直交するように配置される。そして、第1の管部材13に固定側調節孔16をプレス加工する際に、この支持管30をダイスの代用として固定側調節孔16を第1の管部材13内側に向けてバーリング加工を施すことによって、一対の固定側調節孔16を同時に加工できるとともに、第1の管部材13の外面にはプレス加工の穴あけによるカエリが生じないので、第1の管部材13と第2の管部材14がスムーズに摺動できる。
【実施例6】
【0055】
次に実施例6について説明する。尚、前記実施例1〜5と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
本実施例では、第1の管部材13は第2の管部材14と同様のアルミニウム製の管部材とし、その管の厚みを第2の管部材14より厚くすることにより第2の管部材14より高い強度を備え、第2の管部材14の先端側の内側、もしくは外側をスライド自在としている。
【0057】
これにより、第1の管部材13と第2の管部材14の外観はともにアルミニウム製となり、第1,2の柄部1,2は伸縮自在の分割構造を有しながら、アルミニウム製の一体的な管部材のような外観を有するため、草刈鋏の美観が向上する。
【実施例7】
【0058】
次に実施例7について図12図14を参照して説明する。尚、前記実施例1〜6と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施例における第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定する伸縮スライドロック機構としての調節手段40は、第1,2の柄部1,2の基端側の第2の管部材14に設けられた貫通部41と、貫通部41付近の第1,2の柄部1,2の基端側の第2の管部材14に設けられた軸受部42と、軸受部42に揺動自在に軸支された操作レバー43と、操作レバー43に設けられ、貫通部41を介して第1の管部材13の表面に押圧可能なレバー係止部44とを備えている。
【0060】
操作レバー43には、その先端側を上向きに折り曲げた折り曲げ部43Aが設けられており、この折り曲げ部43Aには左右一対の軸受部43Bが立設されている。
【0061】
そして、軸受部42に設けた軸穴42Aと、操作レバー43に設けた軸穴43Cとに軸部材42Bを挿通して、操作レバー43を軸受部42に揺動自在に軸支している。
【0062】
このレバー係止部44は、円弧状に形成された略弓形状の押圧部44Aと、押圧部44Aの一端から延設された取付部44Bとを備えた帯状の弾性部材であり、弾性及び可撓性を有するバネ鋼等の金属材料や合成樹脂材料からなる。
【0063】
レバー係止部44をバネ状に押圧してロックする操作レバー43の材質を炭素鋼等を使用して、焼入れ、焼戻し等の熱処理を施すことによって、材料を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度の向上を図り、バネによるロック機能を確実にして、かつ、耐久性の向上を図ることができる。
【0064】
また、操作レバー43は、図14に示すような倒した状態で第1,2の柄部1,2に対してひっかかりの無い形状として、第2の管部材14の表面形状に沿うような形状である鞍型形状を有することが好ましい。
【0065】
以上の調節手段40は、操作レバー43を倒して、レバー係止部44を第1の管部材13の表面に押圧して、第2の管部材14を第1の管部材13に対して固定して、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定するものである。
【0066】
以上のように本実施例は、第1,2の柄部1,2は、第1,2の柄部1,2の先端側に設けた第1の管部材13に、前記第1,2の柄部1,2の基端側に設けた第2の管部材14をスライド可能に嵌合するとともに、前記調節手段40は、前記第2の管部材14に揺動自在に設けた操作部としての操作レバー43と、前記第2の管部材14に設けた貫通部41と、前記貫通部41を介して前記操作レバー43の揺動操作によって前記第1の管部材13に押圧可能な板状の弾性部材としてのレバー係止部44とを備えたことにより、第1,2の柄部1,2の長さを任意で無段階に調整することが可能となり、レバー係止部44の寸法や形状の設計によって第1の管部材13と第2の管部材14との締め付け押圧を適度に設定することができる。
【0067】
また図13に示すように、操作レバー43を起こして、レバー係止部44と第1の管部材13の接触状態を解除すると、第1,2の柄部1,2の伸縮時のスライド操作を容易に行うことができる。
【0068】
また、レバー係止部44の取付部44Bは、操作レバー43にボルト・ナット等の固定手段44Cによって着脱自在に固定されており、保守点検等による交換作業が容易となっている。
【0069】
尚、操作レバー43は、図13に示す起こした状態から図14に示すように倒していく途中で、レバー係止部44の押圧部44Aにおける第1の管部材13との接触部44Dが、操作レバー43を軸受部42に固定する軸部材42Bの真下(図中、P線上)を通過した状態で第1の管部材13に押圧されたレバー係止部44が最も弾性変形を生じるように構成されており、そこから図14に示すように操作レバー43を倒すと、レバー係止部44の弾性変形はわずかに復元するものの、レバー係止部44を第1の管部材13の表面に押圧したままの状態で保持される。
【0070】
そのため、操作レバー43を図14に示す倒した状態から図13に示すような起こした状態にするためには、接触部44Dが軸部材42Bの真下を通過させる際にレバー係止部44を最も弾性変形させる必要があるため、操作レバー43が不用意に起き上がり、レバー係止部44と第1の管部材13の接触状態が解除されるのを防止することができる。
【実施例8】
【0071】
次に実施例8について図15図17を参照して説明する。尚、前記実施例1〜7と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施例の操作レバー45は、第2の管部材14の表面形状に沿うような鞍型形状に形成された板状の操作部45Aと、操作部45Aの長手方向の辺の中央部分から一端側へ向けて漸次立ち上げて形成された一対の立壁部45Bと、立壁部45Bに形成された軸穴45Cと、操作部45Aの一端側を立壁部45Bから下方に切り離して形成されたレバー係止部46とを備え、実施例7における操作レバー43とレバー係止部44とが一体となった構造としている。そして、レバー係止部46には円弧状に形成された略弓形状の押圧部46Aを備えている。
【0073】
そして、軸受部42に設けた軸穴42Aと、操作レバー45に設けた軸穴45Cとに軸部材42Bを挿通して、操作レバー45を軸受部42に揺動自在に軸支している。
【0074】
操作レバー45の材質を炭素鋼等を使用して、焼入れ、焼戻し等の熱処理を施すことによって、材料を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度の向上を図り、レバー係止部46のバネによるロック機能を確実にして、かつ、耐久性の向上を図ることができる。
【0075】
また、操作部45Aは、図17に示すような倒した状態で第1,2の柄部1,2に対してひっかかりの無い形状として、第2の管部材14の表面形状に沿うような形状である鞍型形状を有することが好ましい。
【0076】
以上の調節手段40は、操作レバー45を倒して、レバー係止部46を第1の管部材13の表面に押圧して、第2の管部材14を第1の管部材13に対して固定して、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定するものである。
【0077】
以上のように本実施例は、第1,2の柄部1,2は、第1,2の柄部1,2の先端側に設けた第1の管部材13に、前記第1,2の柄部1,2の基端側に設けた第2の管部材14をスライド可能に嵌合するとともに、前記調節手段40は、前記第2の管部材14に揺動自在に設けた操作部としての操作レバー45と、前記第2の管部材14に設けた貫通部41と、前記貫通部41を介して前記操作レバー45の揺動操作によって前記第1の管部材13に押圧可能な板状の弾性部材としてのレバー係止部46とを一体的に備えたことにより、第1,2の柄部1,2の長さを任意で無段階に調整することが可能となり、レバー係止部46の寸法や形状の設計によって第1の管部材13と第2の管部材14との締め付け押圧を適度に設定することができる。
【0078】
また図16に示すように、操作レバー45を起こして、レバー係止部46と第1の管部材13の接触状態を解除すると、第1,2の柄部1,2の伸縮時のスライド操作を容易に行うことができる。
【0079】
本実施例の調節手段40では、操作レバー45とレバー係止部46とを一体的に備えているため、部品点数を削減して、コスト削減及び取付作業等の作業性の向上を図ることができる。
【0080】
尚、操作レバー45は、図16に示す起こした状態から図17に示すように倒していく途中で、レバー係止部46の押圧部46Aにおける第1の管部材13との接触部46Bが、操作レバー45を軸受部42に固定する軸部材42Bの真下(図中、P線上)を通過した状態で第1の管部材13に押圧されたレバー係止部46が最も弾性変形を生じるように構成されており、そこから図17に示すように操作レバー45を倒すと、レバー係止部46の弾性変形はわずかに復元するものの、レバー係止部46を第1の管部材13の表面に押圧したままの状態で保持される。
【0081】
そのため、操作レバー45を、図17に示す倒した状態から図16に示すような起こした状態にするためには、接触部46Bが軸部材42Bの真下を通過する際にレバー係止部46を最も弾性変形させる必要があるため、操作レバー45が不用意に起き上がり、レバー係止部46と第1の管部材13の接触状態が解除されるのを防止することができる。
【実施例9】
【0082】
次に実施例9について図18図20を参照して説明する。尚、前記実施例1〜7と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0083】
本実施例の操作レバー47は、第2の管部材14の表面形状に沿うような鞍型形状に形成された板状の操作部47Aと、操作部47Aの長手方向の辺から下方に立ち上げて形成された一対の立壁部47Bと、立壁部47Bの先端側に形成された軸穴47Cと、操作部45Aの先端側に延長して形成されたレバー係止部48とを備え、実施例7における操作レバー43とレバー係止部44とが一体となった構造としている。そして、レバー係止部48には円弧状に下方に巻き込んで形成された押圧部48Aを備えている。
【0084】
そして、軸受部42に設けた軸穴42Aと、操作レバー47に設けた軸穴47Cとに軸部材42Bを挿通して、操作レバー47を軸受部42に揺動自在に軸支している。
【0085】
操作レバー47の材質を炭素鋼等を使用して、焼入れ、焼戻し等の熱処理を施すことによって、材料を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度の向上を図り、レバー係止部48のバネによるロック機能を確実にして、かつ、耐久性の向上を図ることができる。
【0086】
また、操作部47Aは、図20に示すような倒した状態で第1,2の柄部1,2に対してひっかかりの無い形状として、第2の管部材14の表面形状に沿うような形状である鞍型形状を有することが好ましい。
【0087】
以上の調節手段40は、操作レバー47を倒して、レバー係止部48を第1の管部材13の表面に押圧して、第2の管部材14を第1の管部材13に対して固定して、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定するものである。
【0088】
以上のように本実施例は、第1,2の柄部1,2は、第1,2の柄部1,2の先端側に設けた第1の管部材13に、前記第1,2の柄部1,2の基端側に設けた第2の管部材14をスライド可能に嵌合するとともに、前記調節手段40は、前記第2の管部材14に揺動自在に設けた操作部としての操作レバー47と、前記第2の管部材14に設けた貫通部41と、前記貫通部41を介して前記操作レバー47の揺動操作によって前記第1の管部材13に押圧可能な板状の弾性部材としてのレバー係止部48とを一体的に備えたことにより、第1,2の柄部1,2の長さを任意で無段階に調整することが可能となり、レバー係止部48の寸法や形状の設計によって第1の管部材13と第2の管部材14との締め付け押圧を適度に設定することができる。
【0089】
また図19に示すように、操作レバー47を起こして、レバー係止部48と第1の管部材13の接触状態を解除すると、第1,2の柄部1,2の伸縮時のスライド操作を容易に行うことができる。
【0090】
本実施例の調節手段40では、操作レバー47とレバー係止部48とを一体的に備えているため、部品点数を削減して、コスト削減及び取付作業等の作業性の向上を図ることができる。
【0091】
尚、操作レバー47は、図19に示す起こした状態から図20に示すように倒していく途中で、レバー係止部48の押圧部48Aにおける第1の管部材13との接触部48Bが、操作レバー47を軸受部42に固定する軸部材42Bの真下(図中、P線上)を通過した状態で第1の管部材13に押圧されたレバー係止部48が最も弾性変形を生じるように構成されており、そこから図20に示すように操作レバー47を倒すと、レバー係止部48の弾性変形はわずかに復元するものの、レバー係止部48を第1の管部材13の表面に押圧したままの状態で保持される。
【0092】
そのため、操作レバー47を、図20に示す倒した状態から図19に示すような起こした状態にするためには、接触部48Bが軸部材42Bの真下を通過する際にレバー係止部48を最も弾性変形させる必要があるため、操作レバー47が不用意に起き上がり、レバー係止部48と第1の管部材13の接触状態が解除されるのを防止することができる。
【実施例10】
【0093】
次に実施例10について図21図25を参照して説明する。尚、前記実施例1〜9と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0094】
本実施例では、第1の管部材13の基端側の断面形状を楕円形状とし、第2の管部材14の断面形状を略円形状とし、第1の管部材13の基端側に第2の管部材14が遊嵌状態で外嵌可能な構成となっている。尚、第1の管部材13の基端側の断面形状は楕円形状以外に略円形状や、少なくとも一部に円弧面を有する環状形状等としてもよく、また第2の管部材14の断面形状についても略円形状以外に楕円形状や、少なくとも一部に円弧面を有する環状形状等としてもよいものとする。
【0095】
楕円形状の第1の管部材13の長軸方向(図中、X方向)の外径D1及び短軸方向(図中、Y方向)の外径D2はともに、第2の管部材14の内径D3より小さく形成されており(D2<D1<D3)、第1の管部材13の長軸方向に沿った一対の円弧面13Aの曲率半径R1及び第1の管部材13の短軸方向に沿った一対の円弧面13Bの曲率半径R2は、第1の管部材13の円弧面13Aが内接する第2の管部材14の円弧面14Aの曲率半径R3と異なる寸法に形成されている(R2<R3<R1)。
【0096】
本実施例では、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定する伸縮スライドロック機構としての調節手段として締付手段50を備えている。締付手段50は、円弧面14Aに形成された固定側調節孔16と、円弧面13Aに形成された第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19のいずれかに連通可能な雄螺子部材51と、雄螺子部材51に装着可能な円筒状のスペーサ部材52と、雄螺子部材51に螺着可能な雌螺子部材53とを備えている。
【0097】
このスペーサ部材52の外径は、第1、第2、第3のスライド側調節孔17、18、19の径よりも小さく、かつ、固定側調節孔16の径よりも大きいものである。
【0098】
雌螺子部材53には角筒状に形成された回り止め部53Aが形成されており、第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19の一方を回り止め部が嵌合可能な角穴状に形成し、この回り止め部53を角穴状の第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19の一方に嵌合させて、雌螺子部材53が雄螺子部材51と供回りするのを防止している。
【0099】
尚、雄螺子部材51と雌螺子部材53の供回りを防止する構造としては、図24図25に示すような雄螺子部材51の頭部側に角柱状の回り止め部51Aを設け、回り止め部53を角穴状の第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19の一方に嵌合させて、雄螺子部材51が雌螺子部材53と供回りするのを防止する構造としてもよい。
【0100】
以上の締付手段50は、スペーサ部材52を装着した雄螺子部材51を、固定側調節孔16と、第1のスライド側調節孔17、第2のスライド側調節孔18、第3のスライド側調節孔19のいずれかに連通させて、雄螺子部材51に雌螺子部材53を螺着して、第1,2の柄部1,2の長さを所定の長さに固定する。
【0101】
そして、雄螺子部材51を雌螺子部材53に締め付けていくと、第1,2の柄部1,2内部のスペーサ部材52を備えた側ではスペーサ部材52は第2の管部材14のスライド側調節孔17,18,19の何れかに挿通して、スペーサ部材52の一端が第1の管部材13の一方の円弧面13Aの外周面と、スペーサ部材52の他端が雄螺子部材51の頭部底面にそれぞれ当接するとともに、スペーサ部材52を備えていない側では第1の管部材13の他方の円弧面13Aの外周面を第2の管部材14の他方の円弧面14Aの内周面に面接触状態で押圧させる。
【0102】
そして、雄螺子部材51を雌螺子部材53に更に締め付けていくと、第2の管部材14の他方の円弧面14Aからこの円弧面14Aと第2の管部材14の径方向に直交する一対の円弧面14Bにかけて、第1の管部材13の他方の円弧面13Aから円弧面13Bにかけての外周面に沿って、第2の管部材14の断面形状が雄螺子部材51の軸方向に短くなるように弾性変形していき、第1の管部材13の外周面と第2の管部材14との内周面の接触面積が増大していき、第1,2の柄部1,2のガタつきが防止される。
【0103】
以上のように本実施例は、前記第1,2の柄部1,2は、前記第1,2の柄部1,2の先端側に設けた第1の管部材13に、前記第1,2の柄部1,2の基端側に設けた第2の管部材14をスライド可能に嵌合するとともに、前記第1の管部材13と前記第2の管部材14は互いに異なる曲率半径の円弧面13A,14Aを有し、前記調節手段40は、前記第1の管部材13と前記第2の管部材14を径方向に貫通して固定する締付手段50を備え、前記締付手段50を締め付けて前記第2の管部材14の円弧面14Aを前記第1の管部材13の円弧面13Aに沿って弾性変形させて、前記第1の管部材13の円弧面13Aを前記第2の管部材14の円弧面14Aに面接触状態で押圧可能に備えたことを特徴とするものであるので、剛性を有する素材で構成された第1の管部材13の円弧面13Aと軽量さを有する素材で構成された第2の管部材14の円弧面14Aとの接触部分が、弾性変形範囲内での第1の管部材13及び第2の管部材14のそれぞれの管の特性による変形を伴って前記第1の管部材13の円弧面13Aに沿って広範囲な部位において接触押圧されて、ガタつきがなくしっかりとロックできるため、草刈作業における第1の管部材13及び第2の管部材14間のガタつきや捻れを防止して、草刈りを安定して行うことができる。
【実施例11】
【0104】
次に実施例11について図26及び図27を参照して説明する。尚、前記実施例1〜10と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0105】
本実施例では、第2の管部材14の他方の円弧面14Aと円弧面14Bとの間に内向きの凸条部60を複数設けている。
【0106】
そして、雄螺子部材51を雌螺子部材53に締め付けていくと、第1,2の柄部1,2内部のスペーサ部材52を備えた側ではスペーサ部材52は第2の管部材14のスライド側調節孔17,18,19の何れかに挿通して、スペーサ部材52の一端が第1の管部材13の一方の円弧面13Aの外周面と、スペーサ部材52の他端が雄螺子部材51の頭部底面にそれぞれ当接するとともに、スペーサ部材52を備えていない側では第1の管部材13の他方の円弧面13Aの外周面を第2の管部材14の他方の円弧面14Aの内周面に面接触状態で押圧させる。
【0107】
そして、雄螺子部材51を雌螺子部材53に更に締め付けていくと、第2の管部材14の他方の円弧面14Aからこの円弧面14Aと第2の管部材14の径方向に直交する一対の円弧面14Bにかけて、第1の管部材13の他方の円弧面13Aから円弧面13Bにかけての外周面に沿って、第2の管部材14の断面形状が雄螺子部材51の軸方向に短くなるように弾性変形していき、第1の管部材13の外周面と第2の管部材14の内周面との接触面積が増大していくとともに、凸条部60が第1の管部材13の外周面に接触して、第1,2の柄部1,2のガタつきが防止される。
【実施例12】
【0108】
次に実施例12について図28及び図29を参照して説明する。尚、前記実施例1〜11と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0109】
本実施例では、第1の管部材13の固定側調節孔16はスペーサ部材52を備えた側でスペーサ部材52の外径よりも大きくしたものであり、スペーサ部材52は第2の管部材14のスライド側調節孔17,18,19の何れかと第1の管部材13の径を大きくした側の固定側調節孔16Aに挿通して、第1の管部材13のスペーサ部材の外径より小さい側の固定側調節孔16B側の円弧面13Aの内面を支持可能に設けられている。
【0110】
このように、スペーサ部材52によって第1の管部材13を内面から支持することで、雄螺子部材51を雌螺子部材53に締め付けていく際の第1の管部材13の潰れによる変形を防止して、第1の管部材13の材料に剛性の低いアルミニウム等の軽金属等を採用することができる。
【実施例13】
【0111】
次に実施例13について図30及び図31を参照して説明する。尚、前記実施例1〜12と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0112】
本実施例では、実施例7〜9において、実施例10〜12と同様に第1の管部材13と第2の管部材14が互いに異なる曲率半径の円弧面13A,14Aを有する断面形状となるように構成することによって、実施例7〜9のように第1の管部材13と第2の管部材14の間で板状の弾性部材であるレバー係止部44による締め付けで、第1の管部材13の円弧面13Aと第2の管部材14の円弧面14Aがそれぞれ弾性変形を伴って、広範囲な部位で接触押圧されて、連結部位でのガタつきがなく、しっかりとロックされた草刈鋏の柄部として機能することになる。
【0113】
本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、実施例10〜12において、第1の管部材13の基端側に第2の管部材14が遊嵌状態で外嵌する構成以外に、第2の管部材14に第1の管部材13の基端側が遊嵌状態で外嵌する構成としてもよいものとする。
【符号の説明】
【0114】
1 第1の柄部
2 第2の柄部
3 第1の軸
4 握り部
7 第1の鋏刃体
8 第2の鋏刃体
9 第2の軸
13 第1の管部材
13A 円弧面(第1の管部材)
14 第2の管部材
14A 円弧面(第2の管部材)
15 調節手段
50 締付手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31