【課題】操作体や継手部材を連結する筆記具レフィルのインキ収容管として、熱可塑性樹脂を用いた場合であっても、経時や温度変化等の環境負荷によってレフィル交換時に生じる操作体や継手部材の分離を確実に抑制できる経時安定性に優れた筆記具レフィルとそれを用いた筆記具を提供する。
【解決手段】インキ組成物6を収容するインキ収容管4の前端にペン先2を備え後端に操作体5又は継手部材を連結してなる筆記具レフィル1であって、前記インキ収容管4が熱可塑性樹脂からなり、少なくとも操作体5又は継手部材を連結する端部が樹脂コート層又は無機蒸着層により二層以上に積層される。筆記具レフィル1を単数本又は複数本収容した筆記具。
前記樹脂コート層がエチレンビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる樹脂のいずれかである請求項1記載の筆記具レフィル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の筆記具レフィルは、インキ収容管内にインキ組成物を収容し、インキ収容管の先端部に直接又は接続部材を介してペン先(筆記先端部)を連通して設けてなり、インキ収容管の後端部に操作体又は継手部材を連結したものである。
前記ペン先としては、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペンチップやボールペンチップが適用できる。マーキングペンチップの先端は、砲弾型、チゼル型、筆ペン型等いずれであってもよい。
【0010】
前記ボールペンチップとしては、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持する構造、金属材料をドリル等による切削加工によりボール抱持部を形成して、該ボール抱持部にボールを抱持する構造、バネ体によりボールを前方に付勢させた構造、或いは、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けた構造を例示できる。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜1.5mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.3〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.7mmのものが用いられる。
【0011】
前記インキ収容管は熱可塑性樹脂からなり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等からなる成形体が生産性の面で好適に用いられ、成形性と耐溶剤性が高く、樹脂コート層や無機蒸着層が積層し易い点からポリプロピレンが特に好適である。
【0012】
前記インキ収容管のうち、少なくとも操作体や継手部材が連結される端部には、樹脂コート層又は無機蒸着層が積層され、二層以上の積層体となる。
前記樹脂コート層としては、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリエステル樹脂等が耐劣化性が高い点から好ましく、このうちの一種以上をインキ収容管の熱可塑性樹脂に対して少なくとも一層(二層以上の何層構造であってもよい)を積層することで形成される。
前記エチレンビニルアルコール共重合体樹脂としては株式会社クラレ製、商品名:エバールが挙げられる。前記塩化ビニリデン樹脂は、塩化ビニリデン共重合体樹脂を用いることもでき、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、塩化ビニリデン−メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体等を例示できる。
【0013】
前記樹脂コート層を形成する位置は、一番内側(内面層)、一番外側(外面層)あるいは中間層等、特に特定されるものではないが、インキ収容管を構成する熱可塑性樹脂の中間層(即ち、内面層及び外面層を除く層)であることが好ましい。ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の中間層(即ち、三層以上の樹脂層)として内側から支持することで、熱可塑性樹脂層の芯体として作用するので、積層部分の湾曲等の変形や経時収縮等をより確実に抑制することができる。
また、前記インキ収容管に樹脂コート層を形成する方法としては、熱可塑性樹脂で成形加工された成形体に、二色成形等の複合成形や、塗布、印刷等の手段により直接樹脂コート層を形成してもよいし、間接的に接着層を設けた方法であってもよい。尚、樹脂コート層と熱可塑性樹脂の間には、接着材を用いることができ、特に樹脂材料からなるものが好適である。
【0014】
前記無機蒸着層としては、金属酸化物を用いた層が好ましく、具体的には、酸化アルミ、酸化珪素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化スズ等が例示できる。
前記無機蒸着層は、インキ収容管の外面や内面の他、中間層(即ち、金属酸化物が露出した部分を更に熱可塑性樹脂でコーティングした状態)として設けることができる。好ましくは、作業性に優れると共に、熱可塑性樹脂に無機蒸着層を確実に密着できることから、プラズマを利用したプラズマ製膜法、化学的気相法(CVD法)、真空蒸着法、蒸発源内の分子に電子ビームを照射して加熱・蒸発させて膜を形成するイオンプレーティング法、スパッタリング法が用いられる。そのため、インキ収容管の一番内側(内面層)や一番外側(外面層)に形成したものが好ましい。尚、中間層とする場合には、樹脂フィルム表面に前記方法で無機蒸着層を形成した後、熱可塑性樹脂表面に貼着する方法が好ましい。この方法をとる場合、無機蒸着層が内面になるように貼着する他、外面になるように貼着してもかまわない。尚、貼着用の接着材としては汎用のものが適用できる。
【0015】
前記樹脂コート層や無機蒸着層は、インキ収容管のなかで少なくとも操作体や継手部材が連結される端部に積層されるが、インキ収容管の方向性を無くして組立性を向上すために両端に形成することが好ましく、更には、積層体の成形性や蒸着性を考慮して、インキ収容管の全体に積層することが好ましい。全体に積層した場合、生産性が向上する他、インキ収容管が応力変形し難いものとなる。そのため、特許文献1のような操作体付レフィルを筆記具本体の後端部から挿入する構造であっても、挿入時や引き抜き時の変形が抑制できるため、摺動操作における引っかかり等を生じることがなく、ペン先がスムーズに出没できるようになる。
また、熱可塑性樹脂単独で用いた場合に比べ、酸素透過を低減できるため、外側からインキ収容管内(インキ側)への酸素難透過性を付与できる。
【0016】
前記インキ収容管の肉厚は特に限定されるものではないが、筆記具レフィルを構成するインキ収容管の外径は大凡決まっており、各層を厚くすればインキ収容管の内径が小さくなり、内蔵されるインキ量が少なくなるため、インキ収容管の肉厚は0.1〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.0mm、より好ましくは0.5〜0.8mmであることが好ましい。
特に軸筒内に複数の筆記具レフィルを収容し、出没機構の作動によっていずれかの筆記具レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合筆記具の場合、軸筒の外径を小さくして握持し易くするため、インキ収容管の外径を小さく設計する必要がある。更に、インキ量が少なくなることを防止するため、インキ収容管の肉厚を極力薄くする必要があるため、変形し易いものとなる。この点からも本発明の積層部分を全体に備えたインキ収容管の適用は特に有用な要件となる。
尚、前記インキ収容管は、インキ残量を視認できるように透明性を有することが好ましいため、前述の樹脂コート層や無機蒸着層は透明性を有するものが好適である。
【0017】
前記インキ収容管の後端に連結される操作体や継手部材は、樹脂や金属から構成される。特に、少なくとも一部をレフィル内に収容するインキの色相に着色することで、筆記具レフィル単体において、加飾性や色表示機能を発現することが可能となる。また、ボールペンレフィルにおいてはボール径を表示することもできる。これらのインキ収容管との連結方法としては、被覆、挿入等での嵌合、係止、挟持、螺合等、どのような方法であってもよいが、連結強度や組立性が高いことから嵌合が好適であり、特に、インキ収容管内に操作体や継手部材の端部を挿入嵌合する構造が好ましい。
【0018】
前記操作体は、インキ収容管の後端に連結されており、筆記具本体の軸筒内に収容した状態では、軸筒の側壁より突出する。前記突出した操作体をスライド操作することにより軸筒先端の開口部から筆記先端部が出没する。
前記継手部材は、インキ収容管の後端に連結されており、筆記具本体の軸筒内に収容した状態では、軸筒後端や回転摺動体、スライドレバー等に嵌合等の方法で接続保持される。その際、筆記具本体側の接続力は、継手部材とインキ収容管との連結力よりも小さく設定され、レフィル交換時にインキ収容管を引き抜いた際に継手部材も一緒に外れるように構成される。
【0019】
前記インキ収容管には、インキ組成物を直接収容するものの他、繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させたものや、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材や弁機構を介在させたものを用いてもよい。
【0020】
前記インキ収容管に収容されるインキ組成物は、ペン先の種類やレフィル構造に応じて汎用の水性インキ、油性インキ、エマルションインキ等が限定されることなく適用できる。特に、水性インキはレフィル外側から溶媒中に酸素を吸収し易いため、経時によってインキ安定性が失われ易く、更に、水分蒸発によるエア発生が生じ易いため、本発明のレフィル構成が有用である。これは、インキ収容管に樹脂コート層や無機蒸着層を形成した筆記具レフィルでは、その積層部分から酸素が侵入し難くなるためであり、この点からもより好ましくはインキ収容管全体に積層されたものが有効である。
【0021】
前記水性インキ組成物は、水、着色剤、更に水溶性有機溶剤、樹脂等の添加剤等により構成される。
前記着色剤としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0022】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤等を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、C.I. Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉を例示できる。
更に、熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等や、これらをマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
【0023】
前記熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適であり、好ましくはマイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として適用される。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示すものや、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報、特開2008−45062号公報、特開2008−280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、筆記具インキに適用される、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0024】
また、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることもでき、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0025】
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を使用してもよい。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、N−アシルアミノ酸系界面活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α−リポ酸、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
更に、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を一種又は二種以上添加することもできる。
【0026】
また、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を一種又は二種以上添加することができる。
【0027】
前記水性インキには、剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ポリN−ビニル−カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加してもよい。
【0028】
前記油性インキ組成物は、着色剤、有機溶剤、更に樹脂等の添加剤等により構成される。
前記着色剤としては、有機溶剤に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、従来公知の油溶性染料を用いることができ、具体的には、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株))、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株))、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.社製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、独国、BASF社製)、バリファーストイエロー♯3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー♯3105(C.I.18690A)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック♯3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー♯1109、バリファーストオレンジ♯2210、バリファーストレッド♯1320、バリファーストブルー♯1605、バリファーストバイオレット♯1701(以上、オリエント化学工業(株)社製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーC−RH、スピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6,S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)などが例示できる。更に、C.I.ベーシックブルー1、同7、同8、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、C.I.ベーシックレッド1等の塩基染料とC.I.アシッドイエロー23、同36等から選ばれる酸性染料との造塩染料等が例示できる。
【0029】
前記顔料としては、従来公知の顔料を使用することができ、具体的には、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同8、同17、同22、同31、同38、同41、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、同61、同64、同71、同73、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同37、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同22、同25、同28、同29、同36、同60、同68、同76、C.I.PIGMENT BROWN 23、同25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同83、同93、同94、同95、同97、同99、同128、同139、同153、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36、C.I.PIGMENT BLACK 7等の有機顔料や、黒色酸化鉄、ファーネストブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
更に、その他の顔料として、蛍光顔料、パール顔料、蓄光顔料、金属顔料、複合金属顔料、金属酸化物顔料、熱変色性顔料等を使用することもできる。
【0030】
前記有機溶剤としては、従来公知のボールペン用溶剤を使用することができ、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルグリコール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールノルマルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶剤、酢酸−2−エチルへキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等のエステル系溶剤、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリドデシルアルコール、等のアルコール系溶剤等が挙げられる。
【0031】
前記樹脂としては、通常筆記具インキ組成物に定着剤や分散剤として使用されている樹脂が適宜用いられ、例えば、ケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。
【0032】
更に、ベントナイト、合成微粉シリカ、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス等の粘性調節剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、潤滑剤、分散剤、カスレ防止剤、洩れ防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を油性インキ中に添加することもできる。
【0033】
エマルションインキとしては、水性成分と油性成分が、いずれかをベースとして分散状態となっているW/O型、O/W型のいずれを用いることもできる。
例えば、W/O型としては、極性溶剤とポリビニルピロリドン等の曳糸性付与剤を含む油性成分中に、水と多価アルコールと剪断減粘性付与剤と着色剤とを含む水性成分が分散されてなるものが例示でき、O/W型としては、着色剤と有機溶剤とショ糖脂肪酸エステルとアシル乳酸ナトリウムとを含む油性成分を、水中に乳化分散したものが例示できる。
尚、前記エマルションインキを構成する組成は、前述の水性インキと油性インキで例示した組成物から適宜組み合わせて適用できる。
【0034】
更に、インキ収容管内にインキ組成物を充填した際、該インキ組成物の後端部にインキ逆流防止体(液栓)を配することもできる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
【0035】
前記筆記具レフィルは、筆記具の外装となる筆記具本体(軸筒)内に収納され、出没機構の作動によってレフィルの筆記先端部が軸筒先端開口部から出没する筆記具やキャップ式筆記具を構成できる。また、前記軸筒としては樹脂製、金属製、セラミック製等、汎用の筆記具外装として適用可能なものが挙げられる。また、軸筒後端には、操作体付レフィルの交換用に開閉蓋を設けてもよい。
尚、前記筆記具は、軸筒内に一本の筆記具レフィルを収容したもの以外に、複数の筆記具レフィルを収容してなる複合タイプの出没式筆記具であってもよい。その場合、シャープペンシルユニット、消しゴムユニット、タッチペンユニット、摩擦体ユニット等、各レフィルの後端に操作体や継手部材が接続されたユニットを併用することもできる。
【0036】
前記出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、筆記具レフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、筆記具レフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒に回転部(後軸等)を有し、該回転部を回すことにより筆記具レフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することにより筆記具レフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、筆記具レフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。尚、操作体付レフィルを用いる場合、前記スライド部がレフィルの操作体として機能する構造となる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例中の部は質量部であり、樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 6921−2に準じて測定された値である。
実施例1
黒色水性インキ組成物の調製
黒色染料5.0部、キサンタンガム0.5部、N-ビニル−2−ピロリドンオリゴマー10.0部、防黴剤0.3部、潤滑剤0.5部、トリエタノールアミン1.0部、水82.7部からなる黒色水性インキ組成物6を調製した。
【0038】
インキ収容管の作製
第一層(内層)として、熱可塑性樹脂部41であるポリプロピレン〔MFR:1〜10〕、第二層(中間層)として樹脂コート層42であるエチレンビニルアルコール共重合樹脂、第三層(外層)としてポリプロピレン〔MFR:1〜10〕を用いて、押し出し成形機(多層押し出し金型、3種3層)により内径1.7mm、外径3.1mm厚の形で筒状に押し出し成形し、長さを85mmに切断してインキ収容管4を作製した。
尚、前記インキ収容管4の第一層の肉厚は、0.48mm、第二層の肉厚は0.05mm、第三層の肉厚は0.17mmであった。
【0039】
ボールペンレフィルの作製(
図1参照)
前記インキ収容管4の先端に、金属パイプの先端近傍を押圧変形させて形成したボール抱持部に0.3mm超硬ボールを抱持したボールペンチップ2を接続部材3を介して固着した後、前記水性インキ組成物6を充填し、次いで、ポリブテンを主成分とするインキ追従体(液栓61)をインキ6と接触するように充填した。更に、インキ収容管4の後端部内側に、黒色不透明の樹脂成形体からなる操作体5の前端が挿入嵌合することで操作体付ボールペンレフィル(筆記具レフィル1)を得た。尚、図面に記載はないが、ペン先にはボールを前方に押圧するスプリングが内蔵されている。
【0040】
更に、前記操作体付ボールペンレフィル1の構成において、インキの着色剤と操作体の色相を変更することで、それぞれ赤色、青色及び緑色の3色の水性インキ組成物6及び操作体5を有する操作体付ボールペンレフィル1を得た。
【0041】
ボールペンの作製(
図2参照)
後端開口部に開閉自在な蓋体95を有するとともに、後端から軸方向に連接するように軸筒9の側壁に4本の窓孔94が等間隔に設けられたクリップ97付筆記具本体8(各窓孔94の軸方向前方の内部にはスプリングが配設されている)に対し、前記窓孔94から操作体5が突出するように、軸筒9の後端開口部から各レフィル1を挿入し、蓋体95を閉鎖することで、操作体5のスライド操作により各レフィル1の筆記先端部2を選択的に出没させる複合式ボールペン(筆記具7)を得た。尚、各レフィル1は、蓋体95を開放して操作体5を把持した後、軸方向後方に引き抜くことで容易に取り出すことができるため、交換性が高いものとなる。
【0042】
比較例1
前記実施例1のボールペンのうち、インキ収容管4をポリプロピレン単独で構成した以外は同様にして複合式ボールペン7を得た。
得られたボールペンと、実施例1で作製したボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に90日間放置した後、各複合ボールペンの筆記具本体8から操作体5を把持してレフィル1を引き抜き、再び収納するという動作を繰り返したところ、実施例の操作体付ボールペンレフィル1は問題なく繰り返すことができた。これに対して比較例の操作体付ボールペンレフィル1では操作体5がインキ収容管4から外れてしまうものや、連結箇所が曲がってしまうものや、インキ収容管4が湾曲してしまうものがあった。
また、実施例の操作体付ボールペンレフィル1内は初期と変化がないのに対して、比較例の操作体付ボールペンレフィル1内にはエアが発生しており、インキ6と液栓61との界面が分離していた。
前記各筆記具7を用いて、室温にてJIS P3201筆記用紙Aに螺旋状の丸を連続筆記した。その際、実施例の操作体付ボールペンレフィル1はインキ6を最後まで書き切ることができたのに対して、比較例の操作体付ボールペンレフィル1は途中で書けなくなるものや筆記不能なものがあった。
【0043】
実施例2
インキ収容管の作製
第一層(内層)として、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン〔MFR:1〜10〕、第二層としてポリオレフィン系接着樹脂、第三層として樹脂コート層であるエチレンビニルアルコール共重合樹脂、第四層としてポリオレフィン系接着樹脂、第五層(外層)としてポリプロピレン〔MFR:1〜10〕を用いて、押し出し成形機(多層押し出し金型、5種5層)により内径1.7mm、外径3.1mm厚の形で筒状に押し出し成形し、長さを85mmに切断してインキ収容管を作製した。
尚、前記インキ収容管の第一層の肉厚は、0.45mm、第二層の肉厚は0.03mm、第三層の肉厚は0.05mm、第四層の肉厚は、0.03mm、第五層の肉厚は0.14mmであった。
【0044】
前記インキ収容管を用いた以外は実施例1と同様の方法により黒色操作体付ボールペンレフィル1を得た。
また、実施例1と同様にして、赤色、青色及び緑色の3色の水性インキ組成物及び操作体を有する操作体付ボールペンレフィルを得た。
【0045】
ボールペンの作製(
図2参照)
更に、実施例1で用いた筆記具本体8に対し、軸筒9の後端開口部から各レフィル1を挿入して蓋体95を閉鎖することで複合式ボールペン(筆記具7)を得た。
【0046】
比較例2
前記実施例2のボールペンのうち、インキ収容管をポリプロピレン単独で構成した以外は同様にして複合式ボールペンを得た。
得られたボールペンと、実施例2で作製したボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に90日間放置した後、各複合ボールペンの筆記具本体から操作体を把持してレフィルを引き抜き、再び収納するという動作を繰り返したところ、実施例の操作体付ボールペンレフィルは問題なく繰り返すことができた。これに対して比較例の操作体付ボールペンレフィルでは操作体がインキ収容管から外れてしまうものや、連結箇所が曲がってしまうものや、インキ収容管が湾曲してしまうものがあった。
また、実施例の操作体付ボールペンレフィル内は初期と変化がないのに対して、比較例の操作体付ボールペンレフィル内にはエアが発生しており、インキと液栓との界面が分離していた。
前記各筆記具を用いて、室温にてJIS P3201筆記用紙Aに螺旋状の丸を連続筆記した。その際、実施例の操作体付ボールペンレフィルはインキを最後まで書き切ることができたのに対して、比較例の操作体付ボールペンレフィルは途中で書けなくなるものや筆記不能なものがあった。
【0047】
実施例3
インキ収容管の作製
熱可塑性樹脂であるポリプロピレン〔MFR:1〜10〕を用いて、押し出し成形機により内径1.7mm、外径3.1mm厚の形で筒状に押し出し成形し、長さを85mmに切断してインキ収容管を作製した。
更に、前記インキ収容管の外側に、プラズマCVD製膜法で0.1μmのSiOx膜層を積層することで無機蒸着層を形成してインキ収容管を得た。
【0048】
前記インキ収容管を用いた以外は実施例1と同様の方法により黒色操作体付ボールペンレフィル1を得た。
また、実施例1と同様にして、赤色、青色及び緑色の3色の水性インキ組成物及び操作体を有する操作体付ボールペンレフィル1を得た。
【0049】
ボールペンの作製(
図2参照)
更に、実施例1で用いた筆記具本体8に対し、軸筒9の後端開口部から各レフィル1を挿入して蓋体95を閉鎖することで複合式ボールペン(筆記具7)を得た。
【0050】
比較例3
前記実施例3のボールペンのうち、インキ収容管をポリプロピレン単独で構成した以外は同様にして複合式ボールペンを得た。
得られたボールペンと、実施例3で作製したボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に90日間放置した後、各複合ボールペンの筆記具本体から操作体を把持してレフィルを引き抜き、再び収納するという動作を繰り返したところ、実施例の操作体付ボールペンレフィルは問題なく繰り返すことができた。これに対して比較例の操作体付ボールペンレフィルでは操作体がインキ収容管から外れてしまうものや、連結箇所が曲がってしまうものや、インキ収容管が湾曲してしまうものがあった。
また、実施例の操作体付ボールペンレフィル内は初期と変化がないのに対して、比較例の操作体付ボールペンレフィル内にはエアが発生しており、インキと液栓との界面が分離していた。
前記各筆記具を用いて、室温にてJIS P3201筆記用紙Aに螺旋状の丸を連続筆記した。その際、実施例の操作体付ボールペンレフィルはインキを最後まで書き切ることができたのに対して、比較例の操作体付ボールペンレフィルは途中で書けなくなるものや筆記不能なものがあった。
【0051】
実施例4
インキ収容管の作製
実施例3で作製したポリプロピレン製のインキ収容管41の外面に、凸版印刷(株)製のGL−AUフィルム(厚み10μmPETを基材に1μmのAl
2O
3層(無機蒸着層43)とホットメルト接着剤層を有した多層複合フィルム)を接合溶着することで、熱可塑性樹脂部41の外面に無機蒸着層43を積層した構造のインキ収容管4を得た。
【0052】
ボールペンレフィルの作製(
図3参照)
前記インキ収容管4の先端に、金属柱を切削して形成したボール抱持部に0.5mm超硬ボールを抱持したボールペンチップ2を接続部材3を介して固着した後、前記実施例1の水性インキ組成物6を充填し、次いで、ポリブテンを主成分とするインキ追従体(液栓61)をインキと接触するように充填した。更に、インキ収容管4の後端部内側に、黒色不透明の樹脂成形体からなる継手部材5′の前端を挿入嵌合することで継手部材付ボールペンレフィル1を得た。
【0053】
更に、前記継手部材付ボールペンレフィル1の構成において、インキ6の着色剤と継手部材5′の色相を変更することで、それぞれ赤色及び青色の2色の水性インキ組成物6及び継手部材5′を有する継手部材付ボールペンレフィル1を得た。
【0054】
ボールペンの作製(
図4参照)
前後方向に分割可能に螺合された筆記具本体の後軸92に、後軸側壁に3本の窓孔94が等間隔に設けられ、前記窓孔94からスライドレバー96が突出するように設けられるとともに、各スライドレバー96の軸方向前方にスプリングが配設されてなる筆記具本体8を外装として用いた。尚、前記スライドレバー96は透明樹脂からなり、その前端には、継手部材5′の後端が挿入嵌合できる孔部が設けられている。そのため、嵌合時には嵌合部分が色表示機能を発現する。前記スライドレバー96のうち1本はクリップ97形状に成形されている。
前記筆記具本体8の軸筒9を分割した後、各レフィル1をスライドレバー96の前端に挿入し、前軸91を螺合することで、スライドレバー96の操作により各レフィル1の筆記先端部2を選択的に出没させる複合式ボールペン(筆記具7)を得た。尚、各レフィル1は、軸筒9を分割してインキ収容管4を把持した後、軸方向前方に引き抜くことで容易に取り外すことができるため、交換性が高いものである。
【0055】
比較例4
前記実施例4のボールペン7のうち、インキ収容管4をポリプロピレン単独で構成した以外は同様にして複合式ボールペンを得た。
得られたボールペンと、実施例4で作製したボールペン7を、横置き状態で50℃の環境下に90日間放置した後、各複合ボールペン7の筆記具本体8からインキ収容管4を把持してレフィル1を引き抜き、再び収納するという動作を繰り返したところ、実施例の継手部材付ボールペンレフィル1は問題なく繰り返すことができた。これに対して比較例の継手部材付ボールペンレフィルでは継手部材5′がインキ収容管4から外れてしまいスライドレバー96に嵌合したままとなった。
また、実施例の継手部材付ボールペンレフィル1内は初期と変化がないのに対して、比較例の継手部材付ボールペンレフィル内にはエアが発生しており、インキ6と液栓61との界面が分離していた。