(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-101740(P2016-101740A)
(43)【公開日】2016年6月2日
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20160502BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-242545(P2014-242545)
(22)【出願日】2014年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】村上 和広
(57)【要約】
【課題】
転写ヘッドが転写対象物に対してスライドする方向を案内するガイドを備えると共に左右どちらの手で操作しても同じ操作感で使用可能な転写具を提供することを課題とする。
【解決手段】
ケース本体3の前方にケース本体3に収容した転写テープ4を折り返す転写ヘッド2を設け、ケース本体3の両側にガイド体7を配設し、ケース本体3の両側面に設けた係止凸部3bを設け、係止凸部3bとガイド体7の側面に設けた係止凹部7aと回動可能に係止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体の前方に該ケース本体に収容した転写テープを折り返す転写ヘッドを設け、前記転写ヘッドを介して前記転写テープの基材上の転写物を被転写面へ転写する転写具であって、前記ケース本体の両側にガイド体を配設し、前記ガイド体の前記ケース本体側に係止部を設け、前記ケース本体の両側面に被係止部を形成して該被係止部と前記係止部とを回動可能に係止し、前記ガイド体を回動することで該ガイド体の外縁を前記ケース本体の底面の下方へ突出させることを特徴とした転写具。
【請求項2】
前記ガイド体を前記ケース本体の側方から視て、外縁が円形や楕円形などの曲線形状で形成し、転写動作時に前記ケース本体の両側に配設した2つの前記ガイド体のうち、一方のガイド体の外縁を被転写面に対して当接させたことを特徴とした請求項1に記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写テープの基材に塗着した糊等の粘着材、修正剤や着色剤等の転写物を紙等の転写対象物に転写するための転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転写テープの基材に塗着した糊等の粘着剤、修正剤や着色剤等の転写物を紙等の転写対象物に転写するための、転写ヘッドを外方に突出させて備えたケース本体内に配設し、転写ヘッドにより転写テープを転写対象物に押し当てた状態で転写具又は転写対象物をスライドさせることで、転写テープが順次繰出されて転写物を転写対象物へ転写する転写具が知られている。
【0003】
これらの転写具は、転写ヘッドが常に転写対象物に押圧された状態を保つよう転写具を支えながらスライドさせる必要があり、スライド時に転写ヘッドの動きが不安定になり易く、例えば封筒等の端部に粘着剤等を塗布する際に、ずれないよう一直線に転写することが困難であった。
【0004】
この問題を解消するために、転写動作時に転写対象物の端部に当接し、端部に沿って転写ヘッドを案内しうるヘッド部案内用のガイドを設けるという技術が特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された転写具では転写対象物の端部を当接させるガイドの位置を転写方向に対して左右どちらか一方にのみ設けているため、右手で転写具を保持して転写動作を行った場合と、左手で保持して行った場合では、転写対象物の置き方や転写具を手で保持する位置を変える必要があり扱い方が異なるものであった。
また、特許文献1については、転写ヘッドを案内するガイドを転写具の底面に配設するとともにガイドを転写具の底面に対して垂直方向及び水平方向に延びる鉤形状に形成し、転写対象物の端部にガイドの垂直部を当接させているが、転写対象物の厚みがガイドの垂直方向の長さを超えると、ヘッド部案内手段として使用できなくなるため、転写対象物の厚みに制限が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−105194号公報
【特許文献2】特許4352984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題を鑑みて、転写ヘッドが転写対象物に対してスライドする方向を案内するガイドを有すると共に左右どちらの手で操作しても同じ操作感で使用可能とし、更に転写対象物の厚みに制約されずに転写ヘッドを案内可能な転写具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「1.ケース本体の前方に該ケース本体に収容した転写テープを折り返す転写ヘッドを設け、前記転写ヘッドを介して前記転写テープの基材上の転写物を被転写面へ転写する転写具であって、前記ケース本体の両側にガイド体を配設し、前記ガイド体の前記ケース本体側に係止部を設け、前記ケース本体の両側面に被係止部を形成して該被係止部と前記係止部とを回動可能に係止し、前記ガイド体を回動することで該ガイド体の外縁を前記ケース本体の底面の下方へ突出させることを特徴とした転写具。
2.前記ガイド体を前記ケース本体の側方から視て、外縁が円形や楕円形などの曲線形状で形成し、転写動作時に前記ケース本体の両側に配設した2つの前記ガイド体のうち、一方のガイド体の外縁を被転写面に対して当接させたことを特徴とした1項に記載の転写具。」である。
【0009】
本発明の転写具は、ケース本体の両側面にガイド体を配設し、転写ヘッドにより転写テープを被転写面に押圧した状態で前記ケース本体または転写対象物を転写対象物の端部にガイド体を当接させながらスライドすることで、転写対象物の端部に沿って転写物を転写対象物に転写することができる。また、ガイド体の係止部をケース本体の両側面に設けた被係止部に回動可能に係着し、ガイド体を回動した際にガイド体の一部をケース本体の底面から下方に突出可能に構成し、ガイド体の回転量でケース本体からガイド体が突出する量を調整可能とした。更にガイド体をケース本体の底面から任意に突出可能なため、転写対象物の厚みに影響されることなく転写対象物の端部や作業台の端部にガイド体の内側面を当接させながら転写動作を行うことができる。また、ガイド体をケース本体の両側面に設けることで、転写動作時に転写対象物の端部に当接させるガイド体を両側面から任意に選択でき、転写具を保持する手が右手でも左手でも同様の操作感で使用することが可能となる。
【0010】
更に、転写動作時にケース本体の両側面に係着されている一方のガイド体で転写対象物の端部をガイドしながら他方のガイド体を被転写面に当接させることで、転写ヘッドと他方のガイド体の2か所で支えながら転写対象物の端部に沿っての転写動作を行うことができ、転写ヘッドが傾くのを防止して安定した転写動作を行うことができる。
【0011】
また、転写動作時にガイド体を必要としない場合、一方と他方の2つのガイド体を回動させてガイド体を同じ量だけケース本体の底面の下方へ突出させ、被転写面に2つのガイドを同時に当接させることで転写ヘッドと2つのガイド体の3点で支えつつ転写動作を行うことができ、転写ヘッドの傾きを防止してより安定した転写動作が可能となる。このとき、一方のガイド体と他方のガイド体はケース本体に対して対象の形状に形成することで、転写ヘッドと2つのガイド体とが被転写面に当接している位置を直線で結ぶと二等辺三角形を形成するため、転写動作時の安定性が更に向上するためより好ましい。
【0012】
更に、ガイド体の外周を円形や楕円などの曲線形状に形成することで、被転写面に当接したガイド体の外縁は常に曲率面で当接されるため、転写動作時に被転写面を滑らせても抵抗が少なく、スムーズな移動ができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、転写対象物の厚みに影響されずに転写対象物の端部に沿って転写ヘッドをスライドする方向を案内可能とすると共に右利きでの左利きでも同様に使用可能とする転写具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図2における転写具を左側から視た図である。
【
図4】
図2におけるA−A断面を示す断面図である。
【
図5】一方のガイド体を用いて転写動作を行っている状態を示す側面図である。
【
図6】他方のガイド体を用いて転写動作を行っている状態を示す側面図である。
【
図7】ガイド体を用いて転写動作を行っている状態を示す側面図である。
【
図8】一方と他方のガイドの縁部を同時に被転写面に当接して転写動作を行っている状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
実施例の転写具1は、いわゆる「テープのり」の形態であり、
図1において、転写具1の底面方向を下方とし、縦軸の反対方向を上方と表現する。また、
図1の転写具1の左側を前方と表現し、右側を後方と表現する。更に、転写具の厚み方向を幅方向と表現する。
【0016】
図1に示すように転写具1は従来の「テープのり」と同様に、転写ヘッド2を外方へ突出させて形成したケース本体3内に、テープ状の基材4aに転写物(糊)4bを塗着した転写テープ4を巻き付けた供給リール5と、転写テープ4を巻き取る巻き取りリール6とを回転可能に配設した構造のものであり、転写テープ4を転写ヘッド2によって折り返してある。また
図2に示すように、転写ヘッド2により転写テープ4を転写対象物100に押し当てた状態で転写具1または転写対象物100を転写方向へスライドさせることで、転写テープ4が供給リール5により順次繰り出され、転写テープ4に塗着した塗着物(糊)を転写対象物100へ転写する。転写し終わった転写テープ4の基材4aは、巻き取りリール6により巻き取られる。
【0017】
次に、
図3〜
図4を用いて、転写具1に形成する転写ヘッド2を案内する手段についての構成を説明する。
図3〜
図4に示すように、ケース本体3の両側面に幅方向に回転軸を有する係止凸部3aを設け、ケース本体3の両側面にガイド体7を配設し、係止凸部3aとガイド体7の側面に形成した係止凹部7aとを回動可能に係着してある。また、ガイド体7の外周を略円形に形成し、係止凹部7aをガイド体7の中心からずらして偏芯した位置に形成してある。更に係止凹部7aはゴムやエラストマーなどの弾性体で成形することで係止凹部7aと係着したガイド体7を回動する際に一定の抵抗を持たせてあり、ガイド体7を任意の回転位置で止めたときに簡単には動かないよう構成してある。更にガイド体7の外周面を滑らかに形成し、被転写面に当接した際に滑りやすくしてある。
【0018】
次に、
図5から
図8用いて、本実施例の転写具を用いて転写対象物に転写動作を行う状態を説明する。
【0019】
実施例の転写具は、
図5のように作業台200の端部や段部に合わせてセットされた紙製の転写対象物100に、両側面にある一方のガイド体7bを回動し、ケース本体3の底面3aから下方へ向かって一部を突出させる。突出した一方のガイド体7bのガイド部7cを作業台200の端面に当接させつつ転写ヘッド2を転写対象の端部表面に押圧し、転写物を動かないよう押さえつけながら転写ヘッド2を転写方向にスライドさせることで、転写物(糊)100bが転写対象物100の端面に沿って被転写面100cに塗着される。このとき、
図5のように他方のガイド体7を回動してケース本体の底面3aより下方へ突出させることで他方のガイド体7dを転写対象物100の表面に当接させ、一方のガイド体7bで転写対象物100の端部100aを案内しつつ他方のガイド体7dを転写対象物100や作業台表面200aに当接させて転写具1を支えることができる。これにより転写動作時に転写ヘッド2が傾くのを防ぎ、転写具の姿勢を安定させた状態を維持することが可能となる。
【0020】
また、
図6のように一方のガイド体7bと他方のガイド体7dの役割を交替させることで、転写具1を保持する手を替えても同じ転写動作を実施することが可能となり、利き手に影響されない転写具の使用が可能となる。更に、転写対象物100のどの端部に転写するかの状況に合わせて任意に当接させるガイド体を選べるため、利便性がよく使い勝手が向上する。
【0021】
更に、
図7のように転写対象物に厚みがある場合でも、ガイド体7のケース本体の底面3aからの突出量をガイド体7の回転量により調整することができ、転写対象物110の厚みに影響されずに転写対象物110の端部に沿って転写物を転写させることができる。
【0022】
また、ガイド体を用いずに転写動作を行う際には、ガイド体7をケース本体の底面3aから突出させなければ従来通りの使い方もでき、
図8のように両側面のガイド体7をケース本体3の底面3aより同じ量だけ突出させて転写対象物100の表面に同時に当接させることで、転写ヘッド2と一方のガイド体7bと他方のガイド体7dとの3点で支えながら転写動作を行うことができ、より転写ヘッド2を安定した状態で使用可能となる。このとき、一方のガイド体7bと他方のガイド体7dはケース本体3に対して対象の形状に形成することで、転写ヘッド2と2つのガイド体とが被転写面に当接している位置を直線で結ぶと二等辺三角形を形成するため(図示せず)、転写動作時の安定性が更に向上するためより好ましい。また、転写ヘッドを転写対象物に押圧する角度もガイド体7の突出量で任意に設定可能なため、使用者にとって最も使い易い角度を選んで安定した転写動作を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による転写具の構造は、糊などを塗着させるテープのりほか、間違った部分などを上塗りするための修正剤や着色剤を塗着させる修正テープなどに使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…転写具、
2…転写ヘッド、
3…ケース本体、3a…底面、3b…係止凸部、3c…カバー受部、
4…転写テープ、4a…基材、4b…転写物、
5…供給リール、
6…巻取リール、
7…ガイド体、7a…係止凹部、7b…一方のガイド体、7c…ガイド部、7d…他方のガイド体、
100…転写対象物、100a…端部、100b…被転写面。
110…転写対象物
200…作業台、200a…作業台の表面。