に基づいてフィードバック制御によりモータ2の駆動電流を制御する電流ベクトル制御部25とを備える。少なくとも電流センサによって得られた駆動電流と位置速度推定部13から得られる回転角度ω
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでモータでは、回転子磁束強度のばらつきにより発生トルクが変化し、この回転子磁束強度がモータ間でばらつく欠点がある。その結果、例えば送風装置では、モータ毎に風量が変化し、設定風量に対する誤差がモータ間で大きくなる問題があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ベクトル制御によりモータを駆動するファンモータ駆動装置において、回転子磁束強度に基づいて制御量を可変するとの着想により、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1) ファンをモータにより駆動するファンモータ制御装置であって、
前記モータの回転角度と回転速度との推定値を算出する位置速度推定部と、
前記位置速度推定部で算出された前記回転速度を流量係数で乗算して制御目標値を計算する乗算部と、
前記制御目標値に基づいてフィードバック制御により前記モータの駆動電流を制御する電流ベクトル制御部とを備え、
少なくとも電流センサによって得られた駆動電流と前記位置速度推定部から得られる前記回転角度とに基いて、前記モータの回転子磁束強度を算出し、該算出した回転子磁束強度により前記モータの駆動に供する制御値を可変する。
【0009】
(1)によれば、回転速度を流量係数で乗算して制御目標値を設定することにより、流量一定制御によるベクトル制御によりモータを駆動することができ、その結果、従来に比して一段と簡易な処理により流量を一定に維持するようにモータを駆動することができる。またこのときモータの回転子磁束強度を算出し、該算出した回転子磁束強度により前記モータの駆動に供する制御値を可変することにより、モータ間における回転子磁束強度のばらつきに対応した制御値によりモータを駆動し、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することができる。
【0010】
(2) (1)において、前記回転子磁束強度による前記乗算部による乗算値の演算処理により、前記制御値を可変する。
【0011】
(2)によれば、制御目標値の操作により、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することができる。
【0012】
(3) (1)において、前記フィードバック制御に供するフィードバック値を前記回転子磁束強度により可変ことにより、前記制御値を可変する。
【0013】
(3)によれば、フィードバック制御に係るフィードバック値の操作により、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することができる。
【0014】
(4) (1)、(2)、(3)の何れかにおいて、
前記電流ベクトル制御部は、
前記モータの駆動電流をクラーク変換するクラーク変換部と、
前記クラーク変換部の出力を前記位置速度推定部で取得した回転角度に基づいてパーク変換して前記フィードバック値を出力するパーク変換部と、
前記制御目標値と前記フィードバック値の出力との差分値を計算する減算部と、
前記減算部の出力により前記制御値を生成するコントローラと、
前記制御値を前記位置速度推定部で取得した回転角度に基づいて逆パーク変換する逆パーク変換部と、
前記逆パーク変換部の出力を逆クラーク変換する逆クラーク変換部とを備える。
【0015】
(4)によれば、より具体的に電流ベクトル制御部を構成して、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することができる。
【0016】
(5) (1)、(2)、(3)、(4)の何れかに記載のファンモータ駆動装置により前記ファンのモータを駆動するブロア。
【0017】
(5)によれば、サージングを有効に回避してなるブロアを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
〔風量一定制御の原理〕
この実施形態では、制御目標値により指示される一定値に風量を保持するようにモータを駆動して、モータ間のばらつきによるこの制御目標値に対する風量のばらつきを補正する。このため始めにこの実施形態に係る送風装置に関して、風量を一定値に保持するモータ制御の原理を説明する。ここで送風に係る風量(流量)をQ、送風に供するモータの回転数をN[r/min]、このモータの出力をP[W]とおくと、風量Q及び回転数Nと、出力Pとは比例関係により表され、次式の関係式により表される。
【0023】
これにより風量Qを一定に保持するためには、P/N
2が一定値となるように制御すれば良いことが判る。ここで風量Qに比例する係数(K
Q∝Q)を定義すると、(1)式は次式により示すように変形することができる。
【0025】
この回転数Nと出力Pとをベクトル制御で使用される物理量に変換する。ここで回転数Nは、電気角速度ω
e[rad/sec]、モータの極対数P
Pを使用して次式により表すことができる。
【0027】
またモータ出力Pは、モータが発生するトルクτと機械角速度ω
m[rad/sec]とにより、次式により表すことができる。
【0029】
またこのトルクτは、一般的なブラシレスDCモータ(表面磁石型の永久磁石型同期モータ)では、次式により示すように、極対数P
P、回転子磁束強度Φ[Vs/rad]、q軸駆動電流i
qの積により表すことができる。
【0031】
また機械角速度ω
mと電気角速度ω
eとの関係は、次式により表すことができる。
【0033】
ここで(5)式及び(6)式を(4)式に代入すると、次式の関係式を得ることができる。
【0035】
この(7)式と(3)式とを(2)式に代入すると、次式の関係式を得ることができ、風量Qを一定に保持するための電気角速度ω
eとq軸駆動電流i
qとの関係式を得ることができる。
【0037】
ここで(8)式は、流量係数K´
Qを使用して次式により表すことができる。
【0039】
但し、流量係数K´
Qは、次式により表される。
【0041】
これにより電気角速度ω
eとq軸駆動電流i
qとが比例関係を維持するように保持すれば、風量一定によりモータを駆動することができる。
【0042】
〔ファンモータ駆動装置の基本構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るファンモータ駆動装置の基本的な構成を示すブロック図である。ファンモータ駆動装置1は、3相のブラシレス直流モータ2により遠心ファンを駆動して送風する送風装置(ブロワ)に適用される。ファンモータ駆動装置1は、ダイオードD1〜D4を使用した全波整流回路による整流回路3により交流電源4を整流した後、平滑コンデンサCにより平滑化し、これにより直流電源(バス電圧)V
BUSを生成してインバータ5に供給する。ここでインバータ5は、トランジスタ、FET(Field effect transistor)等の駆動素子7U、7V、7W、8U、8V、8Wによる3組の直列回路が、電流センサ11により駆動電流をそれぞれ検出可能に設定されて、直流電源V
BUS及び電流センサ11間に配置され、各直列回路の接続中点がそれぞれモータ2のU相、V相、W相の巻き線に接続される。なお電流センサ11は、アースラインに接続される。またインバータ5は、各駆動素子7U、7V、7W、8U、8V、8Wのベース(ゲート)が図示しない駆動回路により駆動され、これにより駆動素子7U、7V、7W、8U、8V、8Wの出力電圧によりモータ2を駆動する。しかして電流センサ11はインバータ5及びアースライン間に設置され、モータ2の各相の駆動電流を検出する。なお各駆動素子7U、7V、7W、8U、8V、8Wには、それぞれ保護用のダイオードが設けられている。
【0043】
またファンモータ駆動装置1は、図示しない電源回路により交流電源から低電圧の直流電源を生成してマイクロコンピュータ(マイコン)による制御回路9に入力する。制御回路9は、電流センサ11を介して、モータ2の駆動電流等を取得し、この電流情報に基づくベクトル制御計算によりモータ2の駆動電圧を決定し、インバータ5の動作を制御する。
【0044】
図2は、この制御回路9の処理手順の実行により構成される機能ブロックを、周辺構成と共に示すブロック図である。なおこの
図2に示す構成は、本願の前提の構成を示すブロック図である。制御回路9は、この機能ブロックの構成によりセンサレスベクトル制御の手法を適用してモータ2を駆動する。
【0045】
すなわちファンモータ駆動装置1は、電流センサ11により検出される各相の駆動電流i
uvをクラーク変換部12に入力し、クラーク変換部12は、この電流センサ11による検出結果をクラーク変換することにより、2相固定座標系の駆動電流ベクトルi
αβを出力する。位置速度推定部13は、この2相固定座標系の駆動電流ベクトルi
αβと対応する2相固定座標系の駆動電圧ベクトルV
αβとから、回転子の回転角度θ
e、電気角速度ω
eを推定算出して出力することにより、モータの現在の回転角度と回転速度とを取得する。演算部(sin/cos)15は、この位置速度推定部13で算出された回転角度θ
eの正弦値及び余弦値を算出して出力し、パーク変換部14は、この演算部15の算出結果を使用して2相固定座標系の駆動電流ベクトルi
αβをパーク変換することにより、駆動電流ベクトルi
αβを回転座標系のq軸駆動電流i
q、d軸駆動電流i
dに変換して出力する。
【0046】
ファンモータ駆動装置1は、上位のコントローラ等から(9)式に係る流量係数K´
Qを風量の制御目標値として入力し、乗算部16は、この流量係数K´
Qと位置速度推定部13で算出された電気角速度ω
eとを乗算する。これによりファンモータ駆動装置1は、(9)式の左辺の乗算処理を実行して制御目標の駆動電流である風量一定目標駆動電流値i
qをスイッチ部17を介して減算回路18に出力する。減算回路18は、パーク変換部14で算出されたq軸駆動電流i
qをスイッチ部17の出力値から減算して出力し、PIコントローラ(PI)19は、この減算回路18の出力値を所定利得により増幅すると共に、この減算回路18の出力値の移動積分値を算出した後、所定利得により増幅して加算し、これにより比例積分制御に係る制御値となるq軸駆動電圧V
qを計算する。減算回路20は、パーク変換部14で算出されたd軸駆動電流i
dと対応する制御目標値i1
d(この例では値0である)の減算値を算出して出力し、PIコントローラ(PI)21は、この減算回路20に係る比例積分制御に係る制御値となるd軸駆動電圧V
dを計算して出力する。
【0047】
逆パーク変換部22は、演算部15の計算結果を利用して、PIコントローラ19、21より出力されるq軸駆動電圧V
qとd軸駆動電圧V
dとを逆パーク変換処理して2相固定座標系の駆動電圧ベクトルV
αβを出力し、逆クラーク変換部23は、この逆パーク変換部22から出力される2相固定座標系の駆動電圧ベクトルV
αβを逆クラーク変換処理し、3相固定座標系の駆動電圧ベクトルV
UVWを出力する。ファンモータ駆動装置1は、この逆クラーク変換部23から出力される3相固定座標系の駆動電圧ベクトルV
UVWをパルス幅変調してモータ2のコイルに印加し、モータ2を駆動する。
【0048】
これによりファンモータ駆動装置1は、
図3により
図2の構成を簡略化して示すように、上位のコントローラ等から入力される流量係数K´
Qと電気角速度ω
eとの乗算値が、風量一定q軸目標駆動電流i1
qとなり、この風量一定q軸目標駆動電流i1
qに駆動電流i
qが一致するようにフィードバック制御し、(9)式の関係式を保持するように、モータ2を駆動し、これにより風量一定制御によりモータを駆動する。
【0049】
これらによりクラーク変換部12、演算部15、パーク変換部14、減算回路18、20、PIコントローラ19、21、逆パーク変換部22、逆クラーク変換部23は、制御目標によるモータ2の駆動電流を制御する電流ベクトル制御部25を構成する。
【0050】
ところでモータ2の駆動においては、回転速度の下限値及び上限値を設定することが必要である。すなわち低速回転時、軽負荷時、モータ2では、駆動電流及び駆動電圧が低いことにより位置、速度の推定精度が劣化し、安定な駆動が困難になる。これにより下限値を設定することが必要になる。また高速回転時のモータ発熱や振動から回路やモータを保護するために、上限値を設定することが必要である。
【0051】
そこでファンモータ駆動装置1では(
図2)、速度上限値ω
maxと速度下限値ω
minとを切り替えて速度制御目標値を減算回路26に入力し、ここで位置速度推定部13で推定される電気角速度ω
eとの減算値を計算する。またこの計算した減算値をPIコントローラ27に入力して比例積分制御に係る速度一定q軸目標駆動電流i1
qを計算し、計算結果をスイッチ部17に出力する。ファンモータ駆動装置1は、図示しない判定部により位置速度推定部13で推定される電気角速度ωeを判定し、この判定結果によりスイッチ部17の動作、速度制御目標値を切り替え、これにより風量一定制御と速度一定制御の間とでモータ2の制御を切り替え、モータ2の回転速度が上限値、下限値を超えないようにモータ2を駆動する。
【0052】
具体的に、判定部は、スイッチ部17を介して乗算部16からの乗算値を減算回路18に出力して風量一定制御によりモータ2を駆動している状態で、位置速度推定部13で推定される電気角速度ω
eが上限値ω
maxを超えると、速度制御目標値を上限値ω
maxに設定すると共に、スイッチ部17の動作を切り替えてPIコントローラ27の出力値を減算回路18に出力する。これにより風量一定制御から速度一定制御にモータ2の制御を切り替え、モータ2の回転速度を上限値ω
maxに保持する。
【0053】
またこのように速度一定制御によりモータ2の回転速度を上限値ω
maxに保持するように駆動している状態で、PIコントローラ27から出力される速度一定q軸目標電流i1
qが、位置速度推定部13で推定される電気角速度ω
eと流量係数K´
Qとの乗算値K´
Q・ω
e以上に立ち上がると、スイッチ部17を介して乗算部16からの乗算値を減算回路18に出力して風量一定制御によりモータ2を駆動する。すなわちスイッチ部17により速度一定制御から風量一定制御にモータ2の制御に切り替える。
【0054】
また風量一定制御によりモータ2を駆動している状態で、位置速度推定部13で推定される電気角速度ω
eが下限値ω
minを下回ると、速度制御目標値を下限値ω
minに設定すると共に、スイッチ部17の動作を切り替えてPIコントローラ27の出力値を減算回路18に出力する。これにより風量一定制御から速度一定制御にモータ2の制御を切り替え、モータ2の回転速度を下限値ω
minに保持する。
【0055】
またこのように速度一定制御によりモータ2の回転速度を下限値ω
minに保持するようにして、PIコントローラ27から出力される速度一定q軸目標電流i1
qが、位置速度推定部13で推定される電気角速度ω
eと流量係数K´
Qとの乗算値K´
Q・ω
e未満に立ち下がると、スイッチ部17を介して乗算部16からの乗算値を減算回路18に出力して風量一定制御によりモータ2を駆動する。すなわちスイッチ部17により速度一定制御から風量一定制御にモータの制御を切り替える。
【0056】
なおこのように風量一定制御による駆動と、回転速度の上限値及び下限値による速度一定制御による駆動との切り替えにおいて、ヒステリシス特性を設けるようにしてもよい。
【0057】
図4は、このような駆動の切り替えに係るファンモータ駆動装置1の特性を示す特性曲線図である。風量一定制御によりモータ2を駆動している状態では、流量係数K´
Qに応じた比例係数による駆動電流及び回転速度の特性によりモータ2を駆動し(実線により示す範囲である)、この状態で例えば流路の静圧が大きくなると風量一定を維持するためにモータ2の回転速度が上昇する。ここでモータ2の回転速度が上限値を超えると、速度一定制御による駆動に切り替わり、上限値でモータ2を駆動する(破線により示す範囲である)。また速度一定制御により回転速度の上限値によりモータ2を駆動している状態で流路の静圧が小さくなるとモータ2の負荷が大きくなり駆動電流が上昇する。ここで駆動電流の大きさが流量係数と回転速度の乗算値を超えると、元の風量一定制御による駆動に切り替える。
【0058】
また風量一定制御による駆動において、流路の静圧が小さくなると風量一定を維持するためにモータ2の回転速度が低下する。ここでモータ2の回転速度が下限値を下回ると、速度一定制御による駆動に切り替わり、この下限値によりモータ2を駆動する。また速度一定制御により回転速度の下限値でモータ2を駆動している状態で、流路の静圧が大きくなると、モータ2の負荷が小さくなり駆動電流が低下する。ここで駆動電流の大きさが流量係数と回転速度の乗算値を下回ると、元の風量一定制御による駆動に切り替える(破線により示す範囲である)。
【0059】
これにより
図4との対比により
図5に示すように、このファンモータ駆動装置1では、風圧一定制御によりモータ2を駆動する区間(風圧一定制御区間)と、高速度及び低速度側によりモータ2を駆動する区間(高速制御区間、低速度制御区間)とによりモータ2を駆動する。
【0060】
この
図2の構成によれば、ベクトル制御によりモータを駆動するようにして、現在の回転速度を流量係数で乗算して目標駆動電流を計算し、この目標駆動電流と実際の駆動電流を一致させるようにフィードバック制御することにより、従来に比して一段と簡易な処理により風量を一定に維持するようにモータを駆動することができる。特にブロア等の遠心ファンで風量を制御するのに有効である。
【0061】
また流量係数の調整により、風量を所望の大きさに設定することができる。なお流量係数を調整する方法は、例えばファンモータ駆動装置内にボリウム等を設置して、それらを操作することで調整する方法でも良いし、上位コントローラ等から風量の大きさを指示する方法でも良い。
【0062】
また判定部により回転速度の上限値及び下限値を判定してモータの制御を切り替えることにより、回転速度が上限値、下限値を超えないようにモータを駆動することができる。
【0063】
〔位置速度推定部〕
図6は、位置速度推定部13の構成を詳細に示すブロック図である。位置速度推定部13は、回転子磁束推定部13Aにおいて、2相固定座標系の駆動電流ベクトルi
αβ、駆動電圧ベクトルV
αβ、電気角速度ω
eから回転子磁束強度の推定値φ
mαβを計算する。ここで回転子磁束推定部13Aでは、回転子磁束推定部13Aにおける内部パラメータ(抵抗やインダクタンスのノミナル値)が実際値と多少異なっていても、推定値φ
mαβが実際値に漸近するようにフィードバック計算されるため,推定値φ
mαβは実際値を反映する。演算部13Bは、次式の演算処理により、回転子の回転角度θ
eを計算して出力する。
【0065】
速度推定部13Cは、この演算部13Bで求められた回転角度θ
eにより電気角速度ω
eを計算する。位置速度推定部13は、演算部13Bで求められた回転角度θ
e、速度推定部13Cで求められた電気角速度ω
eを演算部15に出力する。これによりファンモータ駆動装置1は、センサレスにより回転子の回転位置を検出してモータ2を駆動するように構成される。
【0066】
〔第1実施形態の具体的構成〕
図7は、
図2との対比により本発明の第1実施形態に係るファンモータ駆動装置の具体的構成を示すブロック図である。(9)式により示すように、
図2に開示のファンモータ駆動装置1では、電気角速度ωeとq軸駆動電流iqとが比例関係を維持するように制御することにより、風量一定制御によりモータ2を駆動する。ここで(5)式により示すように、トルクτは、極対数P
P、回転子磁束強度Φ[Vs/rad]、q軸駆動電流i
qの積により表され、極対数P
P、回転子磁束強度Φ[Vs/rad]は、モータのトルク定数に相当する値である。これにより駆動電流i
qに比例してトルクτが変化し、(9)式よりトルクτと回転速度(電気角速度)ω
eが比例するように制御して、風量一定制御によりモータ2を駆動することができる。
【0067】
しかしながら回転子磁束強度Φは、着磁のばらつき、エアギャップのばらつき等により、量産のモータではばらつくことになる。なおこのばらつきは、±10%程度とも言われる。これにより駆動電流i
qを精度良く制御できたとしても、ファンモータ駆動装置1では、発生トルクがモータ毎にばらついてしまい、その結果、流量係数K´Qにより指示される制御目標値に対して、風量一定制御により実際に一定値に保持される風量が、モータ毎に大きくばらつくことになる。
【0068】
このようなばらつきを補正するためには、駆動電流に代えてトルクを制御することが必要であり、このトルクの制御には、回転子磁束強度を取得することが必要である。そこでこの
図7の構成においては、位置速度推定部13において、回転子磁束強度の推定値が検出されていることにより、この位置速度推定部13で取得する推定値を有効利用してトルクを制御する。
【0069】
このため
図7のファンモータ駆動装置30では、乗算部16、PIコントローラ27に代えて乗算部16A、PIコントローラ27Aが設けられ、また指令変換部31、パーク変換部32が追加される。ここでファンモータ駆動装置30において、位置速度推定部13で取得される回転子磁束強度の推定値φ
mαβは固定直交座標系(β座標系)上のベクトル量で表されることにより、パーク変換し、次式により表される磁束の大きさ(d軸成分)φ
mdを検出することが必要である。
【0071】
この実施形態において、ファンモータ駆動装置40は、演算部15から出力される回転角度θ
eの正弦値及び余弦値をパーク変換部32に入力し、ここで(12)式の演算処理により、回転子磁束強度推定値φ
mdを取得する。
【0072】
また乗算部16Aは、流量係数K´Qと位置速度推定部13で算出された電気角速度ωeとを使用した次式の演算処理により、q軸電流による制御目標値である流量係数K´
Qをトルク指令値τ
qに変換して出力する。またこれに対応するようにPIコントローラ27Aは、トルク指令値により制御目標値を出力する。
【0074】
ファンモータ駆動装置1は、指令変換部31において、スイッチ部17から出力されるトルク指令値τ
qによる制御目標値に対して、次式の演算処理を実行することにより、回転子磁束強度推定値φ
mdによりスイッチ部17の出力値を可変する。これによりファンモータ駆動装置1は、回転子磁束強度のバラツキによる発生トルクのばらつきを有効に回避することができ、制御指示値である流量係数K´
Qに対応する風量による風量一定制御によりモータ2を駆動する。
【0076】
なおこれによりこのファンモータ駆動装置30では、
図3との対比により
図8に示すフィードバック制御によりモータ2の駆動電流を制御する。
【0077】
以上の構成によれば、ベクトル制御によるモータの駆動において、位置速度推定部で取得される回転子磁束強度の推定値に基づいて、制御目標値の可変により制御量を可変することにより、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を充分に低減することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
図9は、
図7との対比により本発明の第2実施形態に係るファンモータ駆動装置を示すブロック図である。このファンモータ駆動装置40では、制御目標値の可変に代えて、フィードバック制御に係るフィードバック値を可変することにより制御量を可変し、回転子磁束強度のばらつきによる発生トルクの変化を低減する。このファンモータ駆動装置40は、このフィードバック値の可変に係る構成が異なる点を除いて、第1実施形態のファンモータ駆動装置1と同一に構成される。
【0079】
すなわちファンモータ駆動装置40は、パーク変換部41において、(12)式の演算処理により、回転子磁束強度推定値φ
mdを取得する。またフィードバック変換部42において、次式の演算処理を実行することにより、電流値によるフィードバック値i
d、i
qをトルク値によるフィードバック値τ
d、τ
qに変換すると共に、このフィードバック値τ
d、τ
qを回転子磁束強度推定値φ
mdにより可変して減算回路18、20に出力する。
【0081】
なおこれによりPIコントローラ19A、21Aは、減算回路18、20から出力されるトルク値による制御値から駆動電圧による制御値を生成して出力する。
【0082】
以上の構成によれば、制御目標値の可変に代えて、フィードバック制御に係るフィードバック値を可変することにより制御量を可変するようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【0084】
すなわち上述の実施形態では、位置速度推定部で求められる回転子磁束強度により制御目標値、フィードバック値を操作する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、別途、回転子磁束強度を検出して制御目標値、フィードバック値を操作してもよい。
【0085】
また上述の実施形態では、モータの回転角度及び回転速度を取得する手段として位置速度推定部を設け、駆動電流と駆動電圧からの推定計算により回転角度及び回転速度を取得する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、回転角度及び回転速度を取得する手段としてエンコーダ、レゾルバ等の位置センサを設けるようにし、これら位置センサの検出結果を処理して回転角度及び回転速度を取得しても良い。
【0086】
また上述の実施形態では、1つのモータを制御目標値により駆動する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、複数のモータを駆動する場合にも広く適用することができ、この場合には、この複数のモータ間の回転子磁束強度のばらつきによるこれら複数のモータ間のトルクのばらつきを防止することができる。
【0087】
また上述の実施形態では、クラーク変換部12、演算部15、パーク変換部14、減算回路18、20、PIコントローラ19、21、逆パーク変換部22、逆クラーク変換部23Bによりベクトル制御に供する電流ベクトル制御部25を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、近似演算処理によりクラーク変換処理結果、パーク変換処理結果を算出して電流ベクトル制御部を構成する場合にも広く適用することができる。
【0088】
また上述の実施形態では、ファンを駆動して気体を搬送する送風装置に本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ファン(羽根車)を駆動して液体を搬送する場合にも広く適用して流量一定制御により駆動することができる。
【0089】
さらに上述の実施形態では、3相のブラシレスモータによるファンモータを駆動する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、各種のモータを駆動する場合に広く適用することができる。