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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-103306(P2016-103306A)
(43)【公開日】2016年6月2日
(54)【発明の名称】超格子構造相変化メモリー
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/243 20130101AFI20160502BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20160502BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20160502BHJP
   H01L 29/15 20060101ALI20160502BHJP
   H01L 45/00 20060101ALI20160502BHJP
   G11B 7/24035 20130101ALI20160502BHJP
【FI】
   G11B7/24 511
   H01L27/10 448
   H01L29/06 601S
   H01L45/00 A
   G11B7/24 522D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-241378(P2014-241378)
(22)【出願日】2014年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】514304980
【氏名又は名称】前佛 栄
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(72)【発明者】
【氏名】前佛 栄
【テーマコード(参考)】
5D029
5F083
【Fターム(参考)】
5D029HA01
5D029JA01
5D029JB03
5F083FZ10
5F083GA01
5F083GA05
5F083GA09
5F083GA11
5F083JA36
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA60
5F083PR22
(57)【要約】
【課題】 (S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いアモルファス相内での相変化を利用した低消費電力化、高書換え安定化、高速スイッチ化を図ることができる相変化メモリー(光ディスク及びDRAM)素子を提供する。
【解決手段】 相変化メモリー:溝付きディスク基板100と下部保護層101との上方に設けられた、シーリング(封止)層105と反射層104と上部保護層103との間に挟まれた、(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層102を有する。相変化メモリー:下部電極200と上部電極202との間に挟まれた、(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層201を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝付き透過光型ディスク基板と下部保護層上に作製された相変化メモリー素子であって、
(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層と、
当該超格子記録層上の上部保護層と、
反射層と、
シーリング層と、
を有し、
前記超格子記録層のアモルファス相内での構造変化に伴う光学特性変化を利用することを特徴とする、相変化メモリー素子。
【請求項2】
下部電極上に作製された相変化メモリー素子であって、
(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層と、
当該超格子記録層上の上部電極と、
を有し、当該超格子記録層のアモルファス相内での構造変化に伴う電気特性変化を利用することを特徴とする、相変化メモリー素子。
【請求項3】
溝付き透過光型ディスク基板と下部保護層上に作製された相変化メモリー素子であって、
ガラス安定化組成である、0≦x≦0.1、0.6≦ y≦0.8、0.8≦z≦1、(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Se3層を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層と、
前記超格子記録層上の上部保護層と、
反射層と、
シーリング層とを有し、
前記超格子記録層のアモルファス相内での構造変化に伴う光学特性変化を利用することを特徴とする、相変化メモリー素子。
【請求項4】
下部電極上に作製された相変化メモリー素子であって、
ガラス安定化組成である、0≦x≦0.1、0.1≦ y≦0.3、0≦z≦0.1、(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層と、
前記超格子記録層上の上部電極と、
を有し、前記超格子記録層のアモルファス相内での構造変化に伴う電気特性変化を利用することを特徴とする、相変化メモリー素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射又は電流注入により、記録層の構造変化に起因する相変化によって光学的性質(反射率等)変化又は電気的性質(抵抗値等)変化を利用して、情報を記録し、光学的又は電気的書き換えが可能な相変化メモリーに関する。
【背景技術】
【0002】
光照射による相変化メモリー素子は、主にTe系カルコゲナイド・アモルファスを記録層に用い、光照射による熱効果でアモルファス相と結晶相間の相変化誘起による反射率変化を利用する。従来の当該Te系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリーでは、メモリー素子として以下のような問題点があった。従来のTe系カルコゲナイド・アモルファスを用いた相変化メモリー素子の例として、図3にその素子構成構造図を示す。
図中、100は溝付きディスク基板、101は下部保護層、302はTe系カルコゲナイド・アモルファス記録層、103は上部保護層、104は反射層、105はシーリング層である。このTe系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子は、レーザー光トラッキング用の溝を形成したポリカーボネイト樹脂基板100に下部誘電体保護層101、Te系カルコゲナイド・アモルファス記録層302、上部誘電体保護層103、金属反射層104を順次スパッタ法で成膜し、特殊アクリレート樹脂をシーリング層105としてスピンコートして形成される。
【0003】
上部、下部誘電体保護膜には、Si3N4膜、ZnS膜、ZnS-SiO2混合膜などレーザー光照射に対する透明性、耐熱性の高い材料が用いられる。保護層は、記録層の変形を抑止する外、記録層のアモルファス−結晶状態変化に伴う反射率変化を際立たせ、信号強度の向上をもたらす。
【0004】
金属反射層には、Au, Alなど反射率の高い金属が用いられ、透過光を無くして素子感度の向上に寄与する外、この反射層は急冷時のヒートシンクの役割も担う。
Te系カルコゲナイド・アモルファス記録層には、主として、GeTe-Sb2Te3-Sb擬似二元系膜が用いられる。図7に示すGe-Sb-Teガラス化(範囲)相図の様に、GeTe-Sb2Te3系のガラス化範囲は狭く、図中斜線Group1の範囲組成が用いられる。レーザー光の熱効果によるヒートサイクルを用いてGeTe-Sb2Te3系膜のアモルファス状態と(分相)結晶化状態間の光学的性質変化を利用して、記録の書込み、消去・書換え、読出しを行う。GeTe-Sb2Te3系膜は、可視光領域でアモルファス状態と(分相)結晶化状態間で20%程度の屈折率変化が得られ、従って、これに伴って大きな反射率変化が得られることになり、この反射率変化を記録に利用する。
【0005】
しかし、当該Te系アモルファス相変化メモリー素子は、Te系アモルファス溶融温度(600℃以上)のヒートサイクルを経ねばならず、高レーザーパワーを要する外、アモルファス−結晶間という大きな状態変化のため、記録層としての疲労・劣化現象が書換え回数増加に伴い現れ、素子寿命が短くなる問題がある。更に、アモルファス−結晶状態変化は格子の組換え過程であるため、どうしても純電子的過程に比べ大きな(記録)時間(数10〜数100nsec)を要する欠点を有し、高速記録化に問題がある。
【0006】
また、光照射による相変化メモリー素子として、主に(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファスを記録層に用い、光照射による光効果と溶融温度より低いガラス転移温度でアモルファス相内での相変化誘起による光学的性質変化(反射率変化等)を利用する。従来の当該(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリーでは、メモリー素子として以下のような問題点があった。従来の(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファスを用いた相変化メモリー素子の例として、図4にその素子構成構造図を示す。
【0007】
図中、100は溝付きディスク基板、101は下部保護層、402は(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス記録層、103は上部保護層、104は反射層、105はシーリング層である。この(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子は、図3のTe系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子と同じ多層膜構造を有し、レーザー光トラッキング用の溝を形成したポリカーボネイト樹脂基板100に下部誘電体保護層101、(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス記録層402、上部誘電体保護層103、金属反射層104を順次スパッタ法で成膜し、特殊アクリレート樹脂をシーリング層105としてスピンコートして形成される。
【0008】
上部、下部誘電体保護膜には、Si3N4膜、ZnS膜、ZnS-SiO2混合膜などレーザー光照射に対する透明性、耐熱性の高い材料が用いられる。保護層は、図3のTe系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子の保護層と同じ役割を果たす。金属反射層には、Au, Alなど反射率の高い金属が用いられ、役割は図3のTe系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子の金属反射層と同じである。
【0009】
(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス記録層には、主として、As-(S,Se)-Ge系膜が用いられる。図8に示すAs-Se-Geガラス化(範囲)相図の様に、As-(S,Se)-Ge系のガラス化範囲は広く、図中黒丸で示す様な組成を選択できる。レーザー光の光効果による電子的過程を経た(光)構造変化と、その後のレーザー光の熱効果(ガラス転移温度近傍迄の昇温・急冷)による格子緩和過程を経た元構造への回帰に伴う、As-(S,Se)-Ge系膜のアモルファス相内での光学的性質変化を利用して、記録の書込み、消去・書換え、読出しを行う。As-(S,Se)-Ge系膜は、可視光領域でアモルファス相内で5%程度の屈折率変化が得られ、従って、これに伴う反射率変化を記録に利用する。
【0010】
しかし、当該As-(S,Se)-Ge系アモルファス相変化メモリー素子は、Te系アモルファス相変化メモリー素子に比べ低レーザーパワーで書込めるものの、充分なS/N比の取れる反射光信号を取り難いという問題がある。更に、読出し時に、読出し光による再書込みを避けるため、読出し光の波長を書込み光より長波長側にシフトさせなければならず、一波長での書込み・読出しが困難であるとの問題がある。
【0011】
次に、電気的書き換えが可能な相変化メモリー素子として、Te系カルコゲナイド・アモルファスを記録層に用い、電流注入による(ジュール)熱効果でアモルファス相と結晶相間の相変化誘起による電気抵抗変化を利用する。従来の当該Te系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリーでは、メモリー素子として以下のような問題点があった。従来のTe系カルコゲナイド・アモルファスを用いた電気的書き換えが可能な相変化メモリー素子の例として、図5にその素子構成構造図を示す。
【0012】
図中、200は下部電極、501はTe系カルコゲナイド・アモルファス記録層、202は上部電極である。下部電極には、タングステン(W)や窒化チタン(TiN)及びそれらの複合膜(TiW, TiAlN など)が用いられる。上部電極にはTi, W及びTiWなどの合金膜が用いられる。Te系カルコゲナイド・アモルファス記録層には、図7に示すGe-Te-Sb相図のGeTe-Sb2Te3結線状の組成が主に用いられる。電流注入によるジュール熱のヒートサイクルを用い、アモルファス相(高抵抗状態)と分相結晶相(低抵抗状態)間の抵抗値変化(3桁程度)を利用して、記録の書き込み、消去/書換え、読み出しが行われる。
【0013】
しかし、当該電気的書き換えが可能なTe系カルコゲナイド相変化メモリー素子は、光学的Te系カルコゲナイド相変化メモリー素子の場合と同じように、溶融温度(600℃以上)の高熱履歴を経るため、高消費電力、素子疲労・劣化が問題となる。また、NAND型フラッシュメモリーとの競合が激しくなってきており、低消費電力化、高スイッチ速度化、高書換え安定性が強く求められている。
【0014】
また、最近、Te系カルコゲナイド超格子を記録層に用いた電気的書き換えが可能な相変化メモリー素子がある。当該Te系カルコゲナイド超格子相変化メモリー素子も電流注入による抵抗値変化を利用する。図6にその超格子相変化メモリー素子構成構造図を示す。
【0015】
図中、200は下部電極、601はTe系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層、202は上部電極である。下部電極には、先のTe系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子と同じく、タングステン(W)や窒化チタン(TiN)及びそれらの複合膜(TiW, TiAlN など)が用いられる。上部電極にはTi, W及びTiWなどの合金膜が用いられる。
【0016】
Te系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層は、GeTe層とSb2Te3層を交互に層状に積み重ねた超格子層で形成される。この超格子構造に電流を注入すると、GeTe層のGe価電子移動に伴い、超格子化で構造柔軟性を増したTe層状分子間をGe原子が移動し、超格子層の抵抗が変化(2〜3桁)する。この抵抗変化を使ってメモリー素子とする。
【0017】
この超格子を用いたTe系超格子相変化メモリー素子は、超格子を用いないTe系混晶相変化メモリー素子に比べ分相結晶化を伴わず、溶融温度までの高熱履歴を必要とせず、精々、ガラス転移温度近傍の熱履歴で済むため、消費電力の低下、書換え回数の増加をもたらす。
【0018】
しかし、GeTeの狭いガラス化範囲を使っているため素子安定性が不十分であることや、抵抗値が低いためにリセット電流が大きくなり、低消費電力化が不十分であるとの欠点・問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2014-107528号公報
【特許文献2】特開2014-175528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、以上の問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、低消費電力化、高速記録化、高書換え安定化を達成できる光学的及び電気的な書換え可能相変化メモリー素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の電気的書換え可能相変化メモリー素子は、下部電極上に作製された相変化メモリー素子であって、(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層、当該超格子記録層上の上部電極を有し、当該超格子記録層のアモルファス相内での構造変化に伴う電気特性変化を利用することを特徴とする。従来の電気的書換え可能Te系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子とは、記録層に(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いている点で、また、従来のTe系カルコゲナイド・アモルファス超格子相変化メモリー素子とは、記録層にTeの外S,Seを加えた多元カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いている点で本質的に異なる。
【0022】
本発明の電気的書換え可能相変化メモリー素子は、下部電極上に作製された相変化メモリー素子であって、(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層、当該超格子記録層上の上部電極を有し、当該超格子記録層のアモルファス相内での構造変化に伴う電気特性変化を利用することを特徴とする。従来の電気的書換え可能Te系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子とは、記録層に(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いている点で、また、従来のTe系カルコゲナイド・アモルファス超格子相変化メモリー素子とは、
記録層にTeの外S,Seを加えた多元カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いている点で本質的に異なる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した様に、本発明の光学的書換え可能相変化メモリー素子では、記録層に(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする超格子を用いているため、従来の相変化メモリー素子に比べ、低消費電力化、高書換え安定化、高速記録化を図ることが出来る。更に、従来のTe系に比べ、高密度化を図れる。
【0024】
また、以上説明した様に、本発明の電気的書換え可能相変化メモリー素子では、記録層に(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする超格子を用いているため、従来のTe系超格子相変化メモリー素子に比べても高抵抗化を図ることが出来、より低消費電力化を図れ、また、ガラス安定化により高書換え安定化を図ることが出来る。更に、従来のTe系に比べ、高密度化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の光学的書換え可能相変化メモリー素子の実施例の構造を示す図であって、記録層として(SxSeyTe1-x-y)Ge層/(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)繰返し超格子構造を特徴とする相変化メモリー素子構造を示す。
図2】本発明の電気的書換え可能相変化メモリー素子の実施例の構造を示す図であって、記録層として(SxSeyTe1-x-y)Ge層/(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)繰返し超格子構造を特徴とする相変化メモリー素子構造を示す。
図3】従来の光学的書換え可能相変化メモリー素子の構造を示す図であって、記録層としてTe系混晶カルコゲナイド・アモルファス構造を用いた相変化メモリー素子構造を示す。
図4】従来の光学的書換え可能相変化メモリー素子の構造を示す図であって、記録層として(S,Se)系混晶カルコゲナイド・アモルファス構造を用いた相変化メモリー素子構造を示す。
図5】従来の電気的書換え可能相変化メモリー素子の実施例の構造を示す図であって、記録層としてTe系混晶カルコゲナイド・アモルファス構造を用いた相変化メモリー素子構造を示す。
図6】従来の電気的書換え可能相変化メモリー素子の実施例の構造を示す図であって、記録層としてTe系カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いた相変化メモリー素子構造を示す。
図7】Ge-Sb-Te 三元系の状態相図であって、斜線部がガラス化範囲を示す。
図8】Ge-As-Se 三元系の状態相図であって、黒丸印が実験的ガラス化範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の光学的書換え可能相変化メモリー素子においては、記録層に(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする超格子構造を用いることにより、従来の溶融温度(600℃以上)を経たアモルファス相−結晶相状態変化によらず、ガラス転移温度(〜200℃)を経たアモルファス相−アモルファス相間の状態変化を用いるため、低消費電力化、高書換え安定化の光学的書換え可能相変化メモリー素子を得ることができる。
【0027】
本発明の電気的書換え可能相変化メモリー素子においては、
記録層に(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子構造を用いることにより、従来のTe系電気的相変化メモリーの溶融温度(600℃以上)を経たアモルファス相−結晶相状態変化によらず、ガラス転移温度(〜200℃)を経たアモルファス相−アモルファス相間の状態変化を用いるため、また、従来のTe系超格子電気的相変化メモリーに比べS.Seを加えた当該多元系超格子構造は、高抵抗化、ガラス組成安定化を図れるため、低消費電力化、高書換え安定化の電気的書換え可能相変化メモリー素子を得ることができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明の光学的書換え可能相変化メモリー素子の実施例の構造を示す図であって、レーザー光トラッキング用の溝を形成したポリカーボネイト樹脂基板100に下部誘電体保護層101、(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする超格子記録層102、上部誘電体保護層103、金属反射層104を順次スパッタ法で成膜し、特殊アクリレート樹脂をシーリング層105としてスピンコートして形成される。
上部、下部誘電体保護膜には、Si3N4膜、ZnS膜、ZnS-SiO2混合膜などレーザー光照射に対する透明性、耐熱性の高い材料が用いられる。保護層は、図4の(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子の保護層と同じ役割を果たす。
【0029】
金属反射層には、Au, Alなど反射率の高い金属が用いられ、役割は図4の(S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子の金属反射層と同じである。
【0030】
(SxSeyTe1-x-y)Ge層/(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)繰返し超格子記録層には、主としてAs-Se-Ge系膜をベースとした組成が用いられるが、一実施例として(S0.1Se0.7Te0.2)Ge/As2Se3 (x=0.1, y=0.7, z=1)超格子構造を用いる。図8に示すAs-Se-Geガラス化(範囲)相図を参考にして、光構造変化に伴う光黒化現象を示すAs-Se-Ge 組成(図中、黒丸印)にTe添加による反射率増加及びS添加による光感度増加を図った組成を選択している。
(S0.1Se0.7Te0.2)Ge/As2Se3 (x=0.1, y=0.7, z=1)超格子記録層は、プラズマスパッタ法により、膜組成の(S0.1Se0.7Te0.2)Ge-スパッタターゲットとAs2Se3 スパッタターゲットを用い、交互に適切な時間及び回数、繰返しスパッタすることにより超格子記録層を成膜する。超格子記録層は、数10nm〜数100nmに亘って選択可能である。
【0031】
当該超格子記録層への記録・消去は、(S,Se,Te)カルコゲナイド原子の不対価電子( lone-pair valence electron )の光励起に基づく純電子過程を経たアモルファス相内の別サイト移行による光学的変化(記録)とガラス転移温度(〜200℃)近傍の熱過程を経た元サイトへの復帰(消去)により行われる。当該記録・消去はアモルファス相内で行うことができ、先に述べたTe系混晶カルコゲナイド記録層の記録・消去のような溶融温度(600℃以上)の熱過程を経たアモルファス−結晶変化と言った大きな相変化を伴わないので、当然の帰結として、低消費電力化及び高書換え安定化を図ることが出来る。また、純電子過程に基づく記録過程はピコ秒( pico second )オーダーの高速過程であり、Te系混晶のアモルファス-結晶相変化に基づく記録過程のナノ秒( nano second )〜数10ナノ秒に比べると3桁程度高速の書込みが可能である。また、Te添加による反射率変化は可視光領域で数10%
得られ、実用上、十分な反射率変化が得られる。
【0032】
更に、記録の高密度性(大容量性)に関しては、当該実施例の記録原理は、原子オーダーの構造変化を用いているため、従来のTe系の結晶化と言う複数の原子が集まった粒状オーダーの構造変化に比べ、少なくとも1桁以上の高密度化を図れる。
【0033】
図2は本発明の電気的書換え可能相変化メモリー素子の実施例の構造を示す図であって、200は下部電極、201は(SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)を基本繰返し層とする(S,Se,Te)系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層、202は上部電極である。下部電極には、先のTe系カルコゲナイド・アモルファス相変化メモリー素子と同じく、タングステン(W)や窒化チタン(TiN)及びそれらの複合膜(TiW, TiAlN など)が用いられる。上部電極にはTi, W及びTiWなどの合金膜が用いられる。
【0034】
(SxSeyTe1-x-y)Ge層/(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)繰返し超格子記録層には、主としてGe-Sb-Te系膜をベースとした組成が用いられるが、一実施例として(S0.05Se0.2Te0.75)Ge/Sb2Se3 (x=0.05, y=0.2, z=0)超格子構造を用いる。図7に示すようにGe-Sb-Te系のガラス化範囲(group1、図中斜線部)は狭く、Se添加によるガラス安定化、及びS,Se添加による高抵抗化を図った(S0.05Se0.2Te0.75)Ge/Sb2Se3 (x=0.05, y=0.2, z=0)組成を選択している。
【0035】
当該超格子記録層はプラズマスパッタ法により、膜組成の(S0.05Se0.2Te0.75)Ge-スパッタターゲットとSb2Te3スパッタターゲットを用い、交互に適切な時間及び回数、繰返しスパッタすることにより超格子記録層を成膜する。超格子記録層は、数10nm〜数100nmに亘って選択可能である。
【0036】
当該超格子構造に電流を注入すると、(S0.05Se0.2Te0.75)Ge層のGe原子の価電子移動に伴い、超格子化で構造柔軟性を増した主にTe層状分子間をGe原子が移動し、超格子層の抵抗が変化(2〜3桁)する。この抵抗変化を使ってメモリー素子とする。
【0037】
Se添加によるガラス安定化を図った当該(S0.05Se0.2Te0.75)Ge/Sb2Se3超格子を用いた (S,Se,Te) 系超格子相変化メモリー素子は、超格子を用いないTe系混晶相変化メモリー素子に比べ分相結晶化を伴わず、溶融温度までの高熱履歴を必要とせず、精々、ガラス転移温度近傍の熱履歴で済むため、高書換え安定性を実現できる。
【0038】
更に、S,Se添加した(S,Se,Te) 系超格子記録層は、Te系超格子記録層に比べ高抵抗化を図ることが出来、リセット電流を減少出来るため、Te系超格子相変化メモリーに比べ低消費電力化を図ることが出来る。また、記録の高密度性(大容量性)に関しては、当該実施例の記録原理は、原子オーダーの構造変化を用いているため、従来のTe系の結晶化と言う複数の原子が集まった粒状オーダーの構造変化に比べ、高密度化を図れる。
【符号の説明】
【0039】
100 ポリカーボネイト樹脂基板
101 下部誘電体保護層
102 (SxSeyTe1-x-y)Ge層/(AszSb1-z)2Se3層(0≦x, y, z≦1)繰返し超格子記録層
103 上部誘電体保護層
104 金属反射層
105 シーリング(封止)層
200 下部電極
201 (SxSeyTe1-x-y)Ge層と(AszSb1-z)2Te3層(0≦x, y, z≦1)繰返し超格子記録層
202 上部電極
302 Te系カルコゲナイド・アモルファス記録層
402 (S,Se)系カルコゲナイド・アモルファス記録層
501 Te系カルコゲナイド・アモルファス記録層
601 Te系カルコゲナイド・アモルファス超格子記録層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8