【解決手段】ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換油脂を30〜100質量%含み、さらにパーム系油脂及び液状油脂から選択された少なくとも一種の非ラウリン系油脂を含んでもよく、ラウリン系油脂の含有量が、20質量%以上であるプリン用油脂組成物。該プリン用油脂組成物と水とを含むプリン用水中油型乳化物、および該プリン用水中油型乳化物を含むプリン。
【背景技術】
【0002】
プリンは、卵の熱凝固作用により固める「蒸しプリン(焼きプリン、カスタードプリン等ともいう)」と、ゲル化剤により固める「ゲルプリン」とに大別できる。いずれのタイプのプリンも、未だ十分な食感が得られておらず、プリンに所定の油脂を配合することにより、食感を改善する試みがなされている。
【0003】
例えば、特開2003−134998号公報(特許文献1)には、冷感のあるやわらかい食感のプリンの製造に使用するプリン練込み用水中油型乳化物を提供すること、該水中油型乳化物は、油脂中にSUS型トリグリセリドに富む油脂及びラウリン系油脂を含有することが記載されている。この文献には、ラウリン系油脂として、ヤシ油、パーム核油、またはその硬化、分別、エステル交換を実施した油脂などが例示できることが記載され、実施例では、ヤシ油、硬化ヤシ油、硬化パーム核油が使用されている。
【0004】
また、特開2009−240257号公報(特許文献2)には、ソフトで且つなめらかな食感を有し、口溶けが良好であると共に、油性感を感じないプリンを製造可能なプリン練込み用水中油型乳化油脂組成物を提供すること、該組成物は、油相中に、パーム油及び/又はパーム分別軟部油を40〜90質量%(油相基準)、及び液状油を10〜50質量%(油相基準)含有することが記載されている。
【0005】
さらに、特開2013−128481号公報(特許文献3)には、油性感を抑えながらも濃厚なコク味を感じられ、食感がなめらかなプリンが得られ、且つ保存時の乳化安定性に優れ増粘(ボテ)しにくいプリン用水中油型乳化物を提供すること、該乳化物は、乳脂を5〜40質量%(油相基準)含有し、乳脂100質量部に対し、ラウリン系油脂を50〜250質量部含有し、所定のパーム分別軟部油を含有する配合油のランダムエステル交換油脂を5〜50質量%(油相基準)含有することが記載されている。この文献には、ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、これらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の1種又は2種以上の処理を施した油脂が例示できることが記載され、実施例では、パーム核油のみが使用されている。
【0006】
しかし、いずれの文献にも、ラウリン系油脂のエステル交換油脂を実際にプリンに配合した具体例は記載されていない。また、プリンの経時変化についての報告もない。上記水中油型乳化物を使用してプリンを製造すると、経時変化したり、経時変化を抑制するものの、風味、口どけ感、光劣化抑制能のいずれかが劣るという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[プリン用油脂組成物]
本発明のプリン用油脂組成物は、ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換油脂を含んでいる。本発明において、「ラウリン系油脂」とは、油脂を構成する全脂肪酸に対するラウリン酸の割合が30質量%以上である油脂の総称であり、天然油脂[例えば、ヤシ油、パーム核油(アブラヤシの種子由来の油)、ババス油などの植物油脂]及びその加工油脂[例えば、硬化油又は水素添加油(極度硬化油、部分水素添加油など)、分別油、エステル交換油脂]を含む概念で用いる。
【0012】
ラウリン系エステル交換油脂は、ラウリン系油脂を含む原料油脂をエステル交換することにより得られる油脂である限り、特に制限されない。原料油脂に含まれるラウリン系油脂は、通常、ラウリン系エステル交換油脂以外のラウリン系油脂(以下、「ラウリン系非エステル交換油脂」と称する場合がある)であり、例えば、ヤシ油、パーム核油、これらの硬化油(極度硬化油など)、分別油などが例示できる。これらの油脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの油脂のうち、ヤシ油、パーム核油が好ましい。
【0013】
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂は、少なくともラウリン系油脂を含んでいればよく、さらにラウリン系油脂以外の油脂(非ラウリン系油脂)を含んでいてもよい。非ラウリン系油脂としては、パーム系油脂、液状油脂(パーム系油脂以外の液状油脂)、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0014】
本発明において、「パーム系油脂」とは、パーム油(アブラヤシの果実由来の油)及びその加工油脂[例えば、硬化油又は水素添加油(極度硬化油、部分水素添加油など)、分別油、エステル交換油脂]を含む概念で用いる。なお、パーム油の加工油脂のうち、パーム分別油は、パームステアリン(高融点画分)、パームミッドフラクション(中融点画分)、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームトリプルオレイン(低融点画分)に分類できる。
【0015】
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂に任意に含有されるパーム系油脂は、例えば、パーム油、パーム分別油などが例示できる。これらの油脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの油脂のうち、パーム油が好ましい。
【0016】
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂に任意に含有される液状油脂としては、室温(15〜25℃程度)で液体の油脂であればよく、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、紅花油(サフラワー油)、ヒマワリ油、亜麻仁油、胡麻油、これらの加工油脂(硬化油、分別油など)などが例示できる。これらの液状油脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0017】
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中のラウリン系油脂の含有量は特に制限されない。ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂は、例えば、ラウリン系油脂を30〜100質量%(例えば、30〜99質量%)、好ましくは35〜100質量%(例えば、35〜95質量%)、さらに好ましくは40〜100質量%含んでいてもよい。
【0018】
ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換反応は、常法に従って行うことができ、酵素によるエステル交換反応であってもよいが、ランダムエステル交換反応であってもよい。ランダムエステル交換反応は、通常、アルカリ触媒(水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラートなど)の存在下で行う。アルカリ触媒の使用量は、特に制限されず、原料油脂100質量部に対して、通常、0.1〜1質量部である。反応温度は、特に制限されず、通常、50〜150℃である。
【0019】
ラウリン系エステル交換油脂の含有量は特に制限されないが、例えば、プリン用油脂組成物の全質量に対して、50質量%以上(例えば、55〜99質量%)、好ましくは60質量%以上(例えば、65〜95質量%)、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0020】
本発明のプリン用油脂組成物は、さらにラウリン系エステル交換油脂以外の油脂を含んでいてもよい。このような油脂としては、ラウリン系非エステル交換油脂、非ラウリン系油脂[パーム系油脂、液状油脂(パーム系油脂以外の液状油脂)など]、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0021】
具体的には、本発明のプリン用油脂組成物は、プリンの風味などの点から、さらにラウリン系非エステル交換油脂を含んでいてもよい。ラウリン系非エステル交換油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、これらの硬化油(極度硬化油など)、分別油などが例示できる。これらのラウリン系非エステル交換油脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのラウリン系非エステル交換油脂のうち、ヤシ油、パーム核油が好ましい。
【0022】
ラウリン系非エステル交換油脂の割合は、ラウリン系油脂100質量部に対して、例えば、70質量部以下、好ましくは65質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下(例えば、1〜55質量部)であってもよい。ラウリン系非エステル交換油脂の含有量が多すぎると、プリンの硬度が経時変化する恐れがある。
【0023】
ラウリン系油脂の含有量(ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中のラウリン系油脂と、ラウリン系エステル交換油脂以外の油脂中のラウリン系油脂との総量)は、プリン用油脂組成物の全質量に対して、例えば、20〜100質量%(例えば、20〜99質量%)、好ましくは25〜100質量%(例えば、25〜95質量%)、さらに好ましくは30〜100質量%であってもよい。
【0024】
本発明のプリン用油脂組成物は、プリンの食感調整などの点から、さらにパーム系油脂を含んでいてもよい。パーム系油脂としては、例えば、パーム油、パーム分別油、これらの組み合わせなどが例示できる。パーム分別油の中では、融点が34℃未満(好ましくは30℃以下)のパーム分別油が好ましく、例えば、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームトリプルオレイン、パームミッドフラクションが好ましい。また、乳感を付与する点から、パームダブルオレイン、パームトリプルオレインが好ましい。
【0025】
パーム系油脂の含有量(ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中のパーム系油脂と、ラウリン系エステル交換油脂以外の油脂中のパーム系油脂との総量)は、プリン用油脂組成物の全質量に対して、例えば、80質量%以下(例えば、75質量%以下)、好ましくは70質量%以下(例えば、1〜65質量%)、さらに好ましくは60質量%以下(例えば、5〜55質量%)、特に50質量%以下であってもよい。特に、パーム分別油の割合は、パーム系油脂100質量部に対して、例えば、40質量部以下、好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下(例えば、1〜30質量部)であってもよい。パーム系油脂(特に、パーム分別油)の含有量が多すぎると、プリンの風味が低下する恐れがある。
【0026】
本発明のプリン用油脂組成物は、プリンの風味、食感調整、乳感などの点から、さらに液状油脂を含んでいてもよい。液状油脂としては、室温(15〜25℃程度)で液体の油脂であれば特に制限されず、例えば、大豆油、菜種油(ハイオレイック菜種油など)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、紅花油(ハイオレイック紅花油など)、ヒマワリ油(ハイオレイックヒマワリ油など)、亜麻仁油、胡麻油、これらの加工油脂(硬化油、分別油、エステル交換油脂など)などが例示できる。これらの液状油脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
液状油脂の含有量(ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中の液状油脂と、ラウリン系エステル交換油脂以外の油脂中の液状油脂との総量)は、プリン用油脂組成物の全質量に対して、例えば、80質量%以下(例えば、1〜70質量%)、好ましくは60質量%以下(例えば、5〜50質量%)、さらに好ましくは40質量%以下(例えば、10〜30質量%)であってもよい。液状油脂の含有量が多すぎると、プリンの口溶け感が低下する恐れがある。
【0028】
本発明のプリン用油脂組成物のSFCは、特に制限されず、プリンの食感(例えば、口溶け感)などに応じて適宜選択できる。例えば、上記のSFCは、5℃で、20%以上(例えば、30%以上)であってもよく、40%以上(例えば、45〜80%)、更には45%を超える範囲(例えば、46〜75%)であってもよい。上記のSFCは、10℃で、35%以上(例えば、40〜70%)であってもよく、45%を超える範囲(例えば、46〜68%)であってもよい。また、上記のSFCは、15℃で、55%以下(例えば、20〜50%)であってもよく、40%未満(例えば、25〜35%)であってもよい。さらに、上記のSFCは、30℃(又は35℃)で、10%以下、好ましくは8%以下(例えば、7%以下)、さらに好ましくは6%以下(例えば、5%以下)であってもよい。なお、SFCは、固体脂肪含量を意味する。SFCは、慣用の測定方法、例えば、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」(2013年)に記載の「2.2.9固体脂含量(NMR法)」に準拠して測定することができる。
【0029】
本発明のプリン用油脂組成物は、種々の添加剤、例えば、乳化剤、安定剤、糖類、保存料、着色料、香料、酸化防止剤、pH調整剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
本発明のプリン用油脂組成物は、プリンの経時変化(例えば、硬度の経時変化、特に硬化)を抑制するために好適に用いられる。例えば、本発明のプリン用油脂組成物は、所定の温度でプリンを保存したとき、保存日数の経過に伴って、プリンが硬化するのを抑制する用途に適している。保存温度は、プリンが硬化しやすい温度、例えば、5℃を超える温度(例えば、6〜10℃)である。例えば、冷蔵陳列棚(冷蔵ショーケース)にプリンを陳列する場合、冷蔵温度を5℃に設定しても、蛍光灯の付近などでは上記の温度範囲になり、プリンが硬化しやすい。このような場合であっても、本発明のプリン用油脂組成物を配合すると、プリンの硬化を有効に抑制することができる。また、本発明のプリン用油脂組成物は、少なくともプリンの賞味期限まで(例えば、プリンの製造日から2〜3週間まで)硬度変化を抑制することができる。
【0031】
[プリン用水中油型乳化物]
本発明は、上記のプリン用油脂組成物(油相)と水(水相)とを含むプリン用水中油型乳化物も包含する。このプリン用水中油型乳化物は、各種添加剤、例えば、乳化剤、安定剤、糖類、乳成分、保存料、着色料、香料、酸化防止剤、pH調整剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤のうち、乳化剤、糖類、乳成分が汎用される。すなわち、プリン用油脂組成物及び乳化剤を含む油相と、水、糖類及び乳成分を含む水相とを含む、プリン用水中油型乳化物が汎用される。
【0032】
乳化剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリド;酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン)、酵素分解レシチンなどが例示できる。これらの乳化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
乳化剤の割合は、水相に対する油相の分散性に応じて適宜選択でき、例えば、プリン用油脂組成物100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部であってもよい。
【0034】
糖類としては、単糖(例えば、ブドウ糖、果糖)、二糖類(例えば、麦芽糖、乳糖、ショ糖、砂糖(上白糖、グラニュー糖など)、トレハロース)、オリゴ糖、澱粉分解物(例えば、水飴、粉飴)、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール)などが例示できる。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
糖類の割合は、プリンの風味などに応じて適宜選択され、例えば、プリン用油脂組成物100質量部に対して、10〜80質量部、好ましくは20〜70質量部、さらに好ましくは30〜60質量部であってもよい。
【0036】
乳成分としては、乳蛋白、例えば、牛乳、脱脂乳(スキムミルク)、全脂粉乳(全粉乳)、脱脂粉乳、無糖練乳、加糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖脱脂練乳、ホエー(乳清)、ホエーパウダー、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、カゼインナトリウムなどが例示できる。これらの乳成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
乳成分の割合は、乳成分の種類にもよるが、例えば、プリン用油脂組成物100質量部に対して、100〜500質量部、好ましくは150〜300質量部、さらに好ましくは200〜250質量部であってもよい。
【0038】
油相と水相との割合(質量比)は、例えば、1/99〜50/50、好ましくは5/95〜40/60、さらに好ましくは10/90〜30/70であってもよい。
【0039】
プリン用水中油型乳化物は、慣用の方法、例えば、プリン用油脂組成物を含む油相と水相とを混合する工程(予備乳化工程)と、前記工程で得られた混合物(予備乳化物)を均質化する工程(均質化工程)とを含む方法により、調製できる。
【0040】
予備乳化工程において、油相と水相の混合温度は、通常、50〜80℃である。混合温度及び混合時間が上記の範囲にあると、次の均質化工程において、油相(油滴)の分散性を向上させることができる。
【0041】
均質化工程において、予備乳化物の均質化は、慣用の均質化装置、例えば、低速撹拌機、高速ブレンダー、ホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波式装置、静止型混合器を用いて行うことができる。均質化圧力は、通常、50〜350kg/cm
2である。均質化工程は、油滴のサイズや分散性に応じて、1回又は複数回行ってもよい。均質化工程を複数回行う場合、各回の均質化圧力は、同一であってもよく、異なってもよい。
【0042】
プリン用水中油型乳化物の調製方法は、さらに、必要に応じて、殺菌(滅菌)工程、冷却工程及びエージング(熟成)工程の少なくとも1つの工程を含んでいてもよい。
【0043】
殺菌工程において、殺菌方法は、特に限定されないが、通常、加熱殺菌である。加熱温度は、通常、75〜150℃である。殺菌工程は、均質化工程の前又は後に行ってもよい。
【0044】
冷却工程において、冷却到達温度は、特に限定されず、エージング工程に供する場合はエージング温度に応じて、エージング工程に供することなくプリンを調製する場合には卵成分の凝固温度に応じて、例えば、50℃以下である。
【0045】
エージング工程において、エージング温度は、通常、5℃〜10℃で6〜24時間行う。
【0046】
[プリン]
本発明は、プリン用油脂組成物(又はプリン用水中油型乳化物)を含むプリンも包含する。前記プリンは、蒸しプリン(焼きプリン又はカスタードプリン)であってもよく、ゲルプリンであってもよい。
【0047】
蒸しプリンは、プリン用水中油型乳化物と卵成分とを含んでいる。卵成分としては、全卵、卵黄、卵白、これらの加工物(例えば、加温物、加糖物、乾燥物、凍結物、酵素処理物)などが例示できる。これらの卵成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
卵成分の割合は、プリン用水中油型乳化物100質量部に対して、通常、10〜30質量部である。
【0049】
蒸しプリンは、慣用の方法、例えば、プリン用水中油型乳化物と卵成分との混合物(又はその均質化物)を加熱する方法(直焼き、蒸し、蒸し焼きなど)により調製できる。加熱温度は、通常、80〜200℃である。
【0050】
ゲルプリンは、プリン用水中油型乳化物とゲル化剤とを含んでいる。ゲル化剤としては、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ペクチンなどが例示できる。これらのゲル化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、ゲルプリンは、慣用の方法、例えば、プリン用水中油型乳化物とゲル化剤との混合物を冷却する方法により調製できる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、「部」は質量基準である。
【0052】
実施例1〜6及び比較例1〜6のプリン(又はプリン用油脂組成物)の評価方法は、以下のとおりである。
[硬度変化]
プリンを製造した日の翌日の硬度(初期硬度)、10℃で1週間又は2週間保存したときの硬度は、レオメータ((株)島津製作所製、EZTest)を用いて直径15mmの円柱プランジャーで300mm/分の速度で15mm押した時の応力(gf)を測定することにより算出した。硬度変化は、10℃で2週間保存したときの硬度から初期硬度を減算することにより算出し、硬度変化に優れるか否かは、以下の基準により判定した。
◎:硬度変化の絶対値が3.5gf未満
○:硬度変化の絶対値が3.5gf以上7.0gf未満
△:硬度変化の絶対値が7.0gf以上10.5gf未満
×:硬度変化の絶対値が10.5gf以上
[風味]
パネラー5名により、プリンの風味を以下の基準で3段評価を行い、その評価点数の平均値を示した。また、評価点数の平均値が1〜1.5であれば「×」、1.5を超えて2以下であれば「△」、2を超えて2.5以下であれば「○」、2.5を超えて3以下であれば「◎」と評価した。
3:油脂臭さがなく良好
2:油脂臭さがややある
1:油脂臭さがあり悪い
[口溶け感]
パネラー5名により、プリンの口溶け感を以下の基準で3段階評価を行い、その評価点数の平均値を示した。また、評価点数の平均値が1〜1.5であれば「×」、1.5を超えて2以下であれば「△」、2を超えて2.5以下であれば「○」、2.5を超えて3以下であれば「◎」と評価した。
3:口に入れたら固体を感じ、すぐに溶ける
2:口に入れたら固体の感じが弱いが溶けるか、または、固体を感じるがやや溶け残る 1:口に入れると固体の感じがなくべたっとするか、または、固体を感じるが溶け残る[SFC]
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」(2013年)に記載の「2.2.9固体脂含量(NMR法)」に準拠して、油脂組成物のSFCを、温度5〜40℃の範囲において5℃刻みで測定した。
[光劣化抑制能]
光劣化抑制能は、油脂組成物の脂肪酸組成を測定し、該脂肪酸組成から算出した酸化難易度を指標として評価した。
具体的には、脂肪酸組成は、基準油脂分析法(2.4.2.3-2013 脂肪酸組成 キャピラリーガスクロマトグラフ法)に準拠し、ガスクロマトグラフィー装置(島津製作所(株)製「GC-2010型」、カラム:SUPELCO社製、SP-2560)を用いて測定した。
また、酸化難易度は、油脂組成物の不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)含量にそれぞれ特定の係数(オレイン酸…0.89、リノール酸…21、リノレン酸…39)を掛けた数値の和をその油脂組成物の酸化難易度とした(参考文献:福沢健治、寺尾純二、脂質過酸化実験法、廣川書店)。
光劣化抑制能は、油脂組成物の酸化難易度を指標として、以下の基準により判定した。
◎:酸化難易度が100未満である
○:酸化難易度が100以上200未満である
△:酸化難易度が200以上300未満である
×:酸化難易度が300以上である
【0053】
実施例1〜6及び比較例1〜6のプリンは、以下の方法により調製した。
(エステル交換油脂の調製)
表1に示す原料油脂を表1に示す割合でエステル交換反応容器に仕込み、0.05MPaまで減圧し、110℃まで加熱し、油脂に残存する水分を除去した。その後、90℃まで冷却し、減圧解除と同時に窒素を吹き込み、油脂と空気とが触れないようにしながらアルカリ触媒(ナトリウムメトキシド)を油脂に対して0.12質量%添加してエステル交換反応を開始した。反応開始から30分後、油脂と同量の水を加えてエステル交換反応を停止した。水洗後、反応生成物から減圧乾燥により水分を除去し、エステル交換油脂を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
(油脂組成物の調製)
表2及び表3に示す油脂を表2及び表3に示す割合で配合することにより、プリン用油脂組成物を得た。
【0056】
(水中油型乳化物の調製)
油脂組成物19.93部と乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)0.07部とを混合し、油相を調製した。
牛乳45.0部、水22.7部、砂糖10.0部、脱脂粉乳2.25部、及びカスタードフレーバー0.025部を混合し、水相を調製した。
上記油相20部と上記水相80部とを合わせて、65℃で予備乳化を行い、ホモジナイザーを用いて150kg/cm
2の圧力で均質化した。均質化後、85℃で加熱殺菌を行い、45℃に冷却し、水中油型乳化物を得た。
【0057】
(プリンの調製)
上記水中油型乳化物と全卵とを前者/後者(質量比)=90/10の割合で混合し、プリンカップに分注し、水を張ったトレイに置き、130℃で30分間湯煎焼きし、5℃の冷蔵庫で1晩冷却し、プリンを得た。
【0058】
実施例及び比較例の結果を表2及び表3に示す。なお、実施例及び比較例で使用した油脂は、以下に示す。
【0059】
【表2】
【表3】
【0060】
表2及び表3の結果から明らかなように、実施例のプリンは、比較例のプリンよりも、10℃で1〜2週間保存した後の硬度と初期硬度との差が著しく小さく、プリンの硬度の経時変化が有意に抑制された。なお、実施例のプリンは、10℃で3週間保存した場合であっても、硬度の経時変化が有意に抑制された。また、実施例のプリンは、硬度変化が抑制されただけでなく、風味、口溶け感のいずれの点も優れていた。さらに、実施例のプリン用油脂組成物は、酸化難易度が低い(酸化安定性に優れる)ことから、光劣化抑制能にも優れている。実施例9及び10のプリンは、実施例3のプリンと比較して、強い乳感を示し、乳感の点で優れている。