200nm未満の粒径および耐食特性を有する水酸化マグネシウム粒子が開示される。耐食性粒子を含む懸濁液および粉末も開示される。そのコーティング組成物が耐食特性を示すことができるように耐食性粒子を含むコーティング組成物、ならびにそのような組成物から析出するコーティング、および、少なくとも1つのコーティング層がそのようなコーティング組成物から析出する多成分複合コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材も開示される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、200nm未満の平均一次粒径を有する耐食性水酸化マグネシウムナノ粒子を含むコーティング組成物を対象とする。本明細書で用いるように、用語「ナノ粒子」は、数ナノメートルの桁の少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。本明細書で用いるように、用語「耐食性水酸化マグネシウム粒子」は、基材上に析出するコーティング組成物に含まれる場合、例えば化学的または電気化学的酸化過程による基材の変化または分解、例えば鉄含有基材での錆およびアルミニウム基材での分解性酸化物に抵抗するか場合によっては防止さえするコーティングを提供する働きをする粒子を指す。本発明の実施形態のコーティング組成物はクロメート化合物を含有せず、それによって環境への懸
念を引き起こす廃液流の生成を除去する。
【0008】
本発明の実施形態によるコーティング組成物は、コーティング組成物の少なくとも1つの構成成分に耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む。具体的には、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、コーティング組成物の構成成分のいずれかまたは全てに存在してよい。耐食性水酸化マグネシウム粒子に加えて、本発明の実施形態によるコーティング組成物は、フィルム形成樹脂および/または他の構成成分も含む。
【0009】
特定の実施形態では、コーティング組成物は、硬化剤(または活性化剤)がコーティング組成物の他の構成成分と混合されて貯蔵安定性のある組成物を形成する、一成分組成物として調合される。そのような実施形態では、耐食性水酸化マグネシウムナノ粒子は、貯蔵安定性のある組成物に含まれる。あるいは、本発明のコーティング組成物は、適用の直前に他の組成物構成成分の予め形成された混合物に加えられる活性化剤構成成分中に硬化剤(または活性化剤)が含まれる、二成分コーティング組成物として調合することができる。耐食性水酸化マグネシウム粒子は、二成分組成物の活性化剤構成成分または予め形成された混合物の一方または両方に存在することができる。本発明のさらに他の実施形態では、コーティング組成物は、例えば基質構成成分、活性化剤構成成分および希釈剤構成成分の三成分コーティング組成物として調合することができ、そこで、3つの構成成分は適用の前のいつかに混合される。耐食性水酸化マグネシウム粒子は、三成分系の基質構成成分、活性化剤構成成分または希釈剤構成成分の少なくとも1つに存在する。さらに、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、三成分系の基質構成成分、活性化剤構成成分または希釈剤構成成分の少なくとも2つに存在することができる。さらに、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、三成分系の基質構成成分、活性化剤構成成分および希釈剤構成成分の各々に存在することができる。
【0010】
本発明のコーティング組成物は、液状コーティング組成物、例えば水媒性(WB)コーティング組成物、溶媒媒介性(SB)コーティング組成物または電着可能なコーティング組成物の形であってよい。コーティング組成物は、微粒子形の共反応可能な(co−reactable)固体の形であってもよい(すなわち、粉末コーティング組成物)。本発明のコーティング組成物は、様々な適する方法のいずれかによって調製することができる。例えば、特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、それらが安定した分散液を形成する限り、コーティング組成物の調製中の任意のときに加えられる。本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物は、フィルム形成樹脂、耐食性水酸化マグネシウム粒子および希釈液、例えば有機溶媒および/または水を最初にブレンドすることによって調製することができる。水が希釈液として用いられる場合は、コーティング組成物は水媒性コーティング組成物であってよい。特定の実施形態では、水媒性コーティング組成物は、ポリアミンとエポキシ官能性ポリマーとの反応から形成されたフィルム形成樹脂を含むことができる。本発明の実施形態により、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、水媒性コーティング組成物の構成成分のいずれかまたは全てに存在してよい。
【0011】
有機溶媒が希釈液として用いられる場合は、コーティング組成物は溶媒媒介性コーティング組成物であってよい。特定の実施形態では、溶媒媒介性コーティング組成物は、ポリアミンとエポキシ官能性ポリマーとの反応から形成されたフィルム形成樹脂を含むことができる。例えば、溶媒媒介性コーティング組成物は、基質構成成分、例えばエポキシ官能性ポリマー、活性化剤構成成分、例えばポリアミン、および任意選択で希釈剤構成成分、例えば溶媒混合物を含む三成分系であってよい。しかし、基質構成成分、活性化剤構成成分または希釈剤構成成分のいずれも、他の構成成分、例えば顔料または他の添加剤を含むことができると理解するべきである。使用において、コーティング組成物を基材に適用する準備ができているとき、基質構成成分および活性化剤構成成分、および必要であるならば希釈剤構成成分が一緒に混合され、基材に適用され、硬化させられる。本発明の実施形
態により、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、溶媒媒介性コーティング組成物の構成成分のいずれかまたは全てに存在してよい。
【0012】
耐食性水酸化マグネシウム粒子
本発明の実施形態により、水酸化マグネシウムナノ粒子は、硬化したコーティング組成物の総重量に対する重量%で、5〜60重量%、例えば5〜40%、または5〜20%の範囲内の量で、コーティング組成物の少なくとも1つの構成成分に存在する。特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は複合粒子であってよく、水酸化マグネシウム以外の構成成分を含むことができる。例えば、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、粒子の総重量に対して50〜100重量%の水酸化マグネシウムを含むことができる。特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、0〜50重量%の適する無機酸化物、例えば、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,745,010号ならびに米国特許出願第11/956,542号および第11/213,136号に記載のものなどを含むこともできる。例えば、本発明の実施形態の耐食性粒子は、耐食性水酸化マグネシウム粒子の総重量に対して0〜50重量%の酸化マグネシウムを含むことができる。他の実施形態では、コーティング組成物は、水酸化マグネシウムから本質的になる水酸化マグネシウムナノ粒子を含む。本明細書で用いるように、用語「水酸化マグネシウムから本質的になる」は、耐食性粒子が主に水酸化マグネシウムを含有するが、水酸化マグネシウムの耐食特性に影響を及ぼさないもののそれら自身耐食性粒子でない他の物質を含有することができることを意味する。例えば、水酸化マグネシウムから本質的になる粒子は、別の物質の耐食性粒子も含有しない。しかし、一部の実施形態では、水酸化マグネシウムから本質的になる耐食性水酸化マグネシウム粒子は、粒子全体を通じて水酸化マグネシウムを含む。対照的に、特定の実施形態により、粒子の表面でだけ水酸化マグネシウムを含み、粒子のコアには含まない粒子は、水酸化マグネシウムから本質的になる水酸化マグネシウム粒子とみなされない。
【0013】
特定の実施形態では、水酸化マグネシウムナノ粒子に加えて、コーティング組成物は他の耐食性粒子をさらに含むことができる。例えば、コーティング組成物は、水酸化マグネシウムナノ粒子と他の耐食性粒子、例えば無機酸化物を含む耐食性粒子との混合物を含むことができる。耐食性水酸化マグネシウム粒子と耐食性無機酸化物粒子との混合物は、90:10〜10:90の混合比を含むことができる。適する耐食性無機酸化物粒子の例には、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,745,010号ならびに米国特許出願第11/956,542号および第11/213,136号に記載のものを含むことができる。
【0014】
特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、1グラムにつき少なくとも10平方メートル、例えば1グラムにつき30〜500平方メートル、または、場合によっては1グラムにつき80〜250平方メートルのB.E.T.比表面積を有することができる。本明細書で用いるように、用語「B.E.T.比表面積」は、定期刊行物「The
Journal of the American Chemical Society」、60巻、309頁(1938年)に記載されるBrunauer−Emmett−Teller法に基づくASTMD3663−78規格による窒素吸着で求められる比表面積を指す。
【0015】
特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、200nm以下、例えば150nm以下、または特定の実施形態では5〜130nmの計算された等価球直径(すなわち、平均一次粒径)を有する。他の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、100nm以下、例えば50nm以下、または特定の実施形態では20nm以下の計算された等価球直径を有する。当業者によって理解されるように、計算された等価球直径は、以下の式によりB.E.T.比表面積から求めることができる:
直径(ナノメートル)=6000/[BET(m
2/g)×ρ(グラム/cm
3)]
【0016】
粒子の一次粒径は、粒子を完全に囲む最小直径の球を指す。本明細書で用いるように、用語「一次粒径」は、2つ以上の個々の粒子の凝集に対して個々の粒子(すなわち、一次粒子)のサイズを指す。本明細書で用いるように、用語「凝集粒径」は、2つ以上の個々の粒子の凝集のサイズを指す。
【0017】
特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、透過型電子顕微鏡(「TEM」)画像の顕微鏡写真を視覚的に検査し、画像中の粒子の直径を測定し、TEM画像の倍率に基づいて測定された粒子の平均一次粒径を計算することによって求められる、200nm以下、例えば150nm以下、または特定の実施形態では5〜130nmの平均一次粒径を有する。他の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、透過型電子顕微鏡(「TEM」)画像の顕微鏡写真を視覚的に検査し、画像中の粒子の直径を測定し、TEM画像の倍率に基づいて測定された粒子の平均一次粒径を計算することによって求められる、130nm以下、例えば50nm以下、または特定の実施形態では20nm以下の平均一次粒径を有する。当業者はそのようなTEM画像をどのように調製するかを理解し、倍率に基づいて平均一次粒径を求める。
【0018】
当業者は、電気泳動に基づいて平均一次粒径をどのように求めるかも理解する。
【0019】
耐食性水酸化マグネシウム粒子の形状(または形態)は、異なってよい。例えば、一次粒子は一般に球状形態を有することができ、または、それらは立方体、板状もしくは針状(細長いか繊維状)の形態を有することができる。さらに、凝集粒子は一次粒子の凝集であり、したがって、上記の一次粒子の凝集からもたらされる任意の形態を有することができる。
【0020】
フィルム形成樹脂
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、耐食性水酸化マグネシウム粒子に加えてフィルム形成樹脂を含む。本明細書で用いるように、用語「フィルム形成樹脂」は、組成物に存在するあらゆる希釈液もしくは担体の除去の結果、または周囲温度もしくは高温での硬化の結果、少なくとも基材の水平表面に自立型の連続フィルムを形成することができる樹脂を指す。
【0021】
本発明のコーティング組成物で用いることができるフィルム形成樹脂には、それらに限定されずに、航空宇宙用コーティング組成物、自動車OEMコーティング組成物、自動車再仕上げコーティング組成物、工業用コーティング組成物、建築用コーティング組成物およびコイルコーティング組成物で用いられるものがとりわけ含まれる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物に含まれるフィルム形成樹脂には、熱硬化性フィルム形成樹脂が含まれる。本明細書で用いるように、用語「熱硬化性」は、硬化(curing)または架橋の結果として不可逆的に「硬化(set)」する樹脂を指し、そこでは、ポリマー構成成分のポリマー鎖は共有結合で連結される。この特性は、例えば熱または放射線によってしばしば誘導される、組成物構成物の架橋反応と通常関連する。Hawley, Gessner G., The Condensed Chemical Dictionary、第9版、856頁;Surface Coatings、第2巻、Oil and Colour Chemists’ Association、Australia、TAFE Educational Books(1974年)を参照。硬化または架橋反応は、周囲条件の下で実行することもできる。硬化または架橋すると、熱硬化性樹脂は加熱により溶融せず、溶媒に不溶性である。他の実施形態では、本発明のコーティング組成物内に含まれるフィルム形成樹脂には、熱可塑性樹脂が
含まれる。本明細書で用いるように、用語「熱可塑性」は、共有結合によって連結されず、それによって加熱により液体流動を経ることができ、溶媒に可溶性であるポリマー構成成分を含む樹脂を指す。Saunders, K. J.、Organic Polymer Chemistry、41〜42頁、Chapman and Hall、London(1973年)を参照。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、フィルム形成樹脂は、10重量%を超える量、例えば20〜90重量%、または、場合によっては40〜70重量%の量で本発明のコーティング組成物に存在し、重量%はコーティング組成物の総重量に基づく。硬化剤が用いられる場合は、それは、特定の実施形態では70重量%までの量、例えば10〜70重量%の量で存在することができる;この重量%も、コーティング組成物の総重量に基づく。
【0024】
本発明の特定の実施形態により、未硬化の熱硬化性フィルム形成樹脂は、200nm未満の平均一次粒径を有する耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む。本明細書で用いるように、用語「未硬化」は、まだ硬化していないか架橋していない樹脂を指す。したがって、未硬化の熱硬化性フィルム形成樹脂は、別々の構成成分、例えば基質構成成分(例えば、エポキシ官能性ポリマー構成成分)および活性化剤構成成分(例えば、ポリアミン構成成分)を含むことができ、それぞれまたは両方は、200nm未満の平均一次粒径を有する耐食性水酸化マグネシウム粒子を含むことができる。
【0025】
本発明のコーティング組成物で用いるのに適するフィルム形成樹脂には、例えば、少なくとも1種類の反応性基を有するポリマーおよびそのポリマーの反応性基(複数可)と反応性である反応性基を有する硬化剤の反応から形成されるものが含まれる。本明細書で用いるように、用語「ポリマー」はオリゴマーを包含するものとし、限定されずにホモポリマーおよびコポリマーの両方が含まれる。ポリマーは、例えば、アクリルの飽和もしくは不飽和ポリエステル、ポリウレタンまたはポリエーテル、ポリビニル、セルロース、アクリレート、ケイ素をベースとしたポリマー、そのコポリマー、およびそれらの混合物であってよく、とりわけ、それらの混合物を含むエポキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、イソシアネート、アミド、カルバメートおよびカルボキシレート基などの反応性基を含有することができる。
【0026】
本発明の実施形態により、コーティング組成物は液状コーティング組成物の形であり、その例には水媒性(WB)および溶媒媒介性(SB)コーティング組成物、ならびに電着可能なコーティング組成物が含まれる。本発明のコーティング組成物は、微粒子形の共反応可能な固体の形であってもよい(すなわち、粉末コーティング組成物)。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、様々な方法のいずれかによって調製することができる。例えば、特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、それらがフィルム形成樹脂で安定した分散液を形成する限り、フィルム形成樹脂を含むコーティング組成物の調合中の任意のときに加えられる。本発明のコーティング組成物は、フィルム形成樹脂、前に記載の耐食性粒子、顔料、充填剤および希釈液、例えば有機溶媒(複数可)および/または水を最初に混合し、1000〜2000RPMの高速分散機で10〜30分の間混合物を分散させることによって調製することができる。次に、磨砕ゲージで検査して5プラスの磨砕粒度を達成するために、分散液を塗料ミルに通すことができる。
【0028】
水媒性コーティング組成物
水が希釈液として用いられる場合は、コーティング組成物は水媒性コーティング組成物であってよい。特定の実施形態では、水媒性コーティング組成物は、エポキシ官能性ポリマーベースの構成成分とポリアミン活性化剤構成成分との反応から形成されたフィルム形成樹脂を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、本発明は、エポキシ樹脂、例
えばビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセロール、ノボラックなどのジグリシジルエーテルを含むことができる。例示的な適するポリエポキシドは、米国特許第4,681,811号の第5欄、33〜58行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により本明細書に組み込まれる。さらに、特定の実施形態では、本発明はポリアミン硬化剤、例えば脂肪族アミンおよび付加物、脂環式アミン、アミドアミンおよびポリアミドを含むことができる。例示的な適するポリアミンは、米国特許第4,046,729号の第6欄の61行目から第7欄の26行目まで、および米国特許第3,799,854号の第3欄の13〜50行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により本明細書に組み込まれる。さらに、上記の硬化反応は、トリス−(ジメチルアミノメチル)−フェノールなどの三級アミン触媒で補助することができる。
【0029】
特定の実施形態では、水媒性コーティング組成物は、基質構成成分、例えばエポキシ官能性ポリマー、活性化剤構成成分、例えばポリアミン、および希釈剤構成成分、例えば水または水性溶液を含む三成分系である。用語「三成分系」は当技術分野で公知であり、適用前の基質構成成分および活性化剤の別々の貯蔵を指す。混合物の3つの構成成分は、基材への適用の直前に組み合わせることができる。例えば、エポキシ官能性ポリマーの基質構成成分およびポリアミン活性化剤構成成分は、別々に貯蔵して、適用直前に混合することができる。
【0030】
溶媒媒介性コーティング組成物
有機溶媒が希釈液として用いられる場合は、コーティング組成物は溶媒媒介性コーティング組成物であってよい。例えば、特定の実施形態では、本発明は溶媒、例えばケトン、アセテート、グリコール、アルコールおよび芳香族溶媒を含むことができる。例示的な適する溶媒は、米国特許第6,774,168号の第3欄、28〜41行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により組み込まれる。
【0031】
特定の実施形態では、溶媒媒介性コーティング組成物は、基質構成成分(例えば、エポキシ官能性ポリマー)と活性化剤構成成分(例えば、ポリアミン)との反応から形成されたフィルム形成樹脂を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、本発明は、エポキシ樹脂、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセロール、ノボラックなどのジグリシジルエーテルを含むことができる。例示的な適するポリエポキシドは、米国特許第4,681,811号の第5欄、33〜58行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により本明細書に組み込まれる。さらに、特定の実施形態では、本発明はポリアミン硬化剤、例えば脂肪族アミンおよび付加物、脂環式アミン、アミドアミンおよびポリアミドを含むことができる。例示的な適するポリアミンは、米国特許第4,046,729号の第6欄の61行目から第7欄の26行目まで、および米国特許第3,799,854号の第3欄の13〜50行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により本明細書に組み込まれる。さらに、上記の硬化反応は、トリス−(ジメチルアミノメチル)−フェノールなどの三級アミン触媒で補助することができる。
【0032】
例えば、溶媒媒介性コーティング組成物は、基質構成成分、例えばエポキシ官能性ポリマー、活性化剤構成成分、例えばポリアミン、および任意選択で希釈剤構成成分、例えば溶媒または溶媒混合物を含む三成分系であってよい。しかし、基質構成成分または活性化剤構成成分のいずれも、他の構成成分、例えば顔料または他の添加剤を含むことができると理解される。使用において、コーティング組成物を基材に適用する準備ができているとき、基質構成成分、活性化剤構成成分および希釈剤構成成分が一緒に混合され、基材に適用され、硬化させられる。上記のように、コーティング組成物は、基質構成成分か活性化剤構成成分のいずれかに任意数の適する添加剤をさらに含むことができる。
【0033】
基材
本発明は、本発明のコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされた金属基材などの基材、ならびに本発明の多成分複合コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた金属基材などの基材も対象とする。
【0034】
多くの場合、本発明のコーティング組成物は、冷圧延鋼、電気亜鉛めっき鋼およびアルミニウムから選択される1つの金属基材の少なくとも一部に析出させ、硬化させたとき、前に記載される耐食性水酸化マグネシウム粒子を含まない類似したコーティング組成物によって同じ条件の下で少なくとも部分的にコーティングされたときに同じ基材が示す耐食特性より大きい耐食特性を示す基材を生成する。場合によっては、本発明のコーティング組成物は、冷圧延鋼、電気亜鉛めっき鋼およびアルミニウムから選択される2つの金属基材の少なくとも一部に析出させ、硬化させたとき、前に記載される耐食性水酸化マグネシウム粒子を含まない類似したコーティング組成物によって同じ条件の下で少なくとも部分的にコーティングされたときに同じ2つの基材が示す耐食特性より大きい耐食特性を示す基材を生成する。場合によっては、本発明のコーティング組成物は、冷圧延鋼、電気亜鉛めっき鋼およびアルミニウム基材の少なくとも一部に析出させ、硬化させたとき、前に記載される耐食性水酸化マグネシウム粒子を含まない類似したコーティング組成物によって同じ条件の下で少なくとも部分的にコーティングされたときに同じ3つの基材が示す耐食特性より大きい耐食特性を示す基材を生成する。
【0035】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は液状コーティング組成物の形であり、その例には水性および溶媒ベースのコーティング組成物、水媒性コーティング組成物ならびに電着可能なコーティング組成物が含まれる。本発明のコーティング組成物は、微粒子形の共反応可能な固体の形、すなわち粉末コーティング組成物であってもよい。形に関係なく、本発明のコーティング組成物は、プライマー、ベースコートまたはトップコートとして単独で、または組み合わせて用いることができる。本発明の特定の実施形態は、下でより詳細に議論されるように、耐食性プライマーコーティング組成物を対象とする。本明細書で用いるように、用語「プライマーコーティング組成物」は、保護または装飾コーティング系の適用のために表面を調整するために、そこからアンダーコーティングを基材上に析出させることができるコーティング組成物を指す。そのような組成物でコーティングすることができる金属基材には、例えば、鋼(とりわけ、電気亜鉛めっき鋼、冷圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼を含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛アルミニウム合金およびアルミニウムめっき鋼を含む基材が含まれる。そのような組成物でコーティングすることができる基材は、基材が、一緒にされた2つ以上の金属基材の組合せ、例えばアルミニウム基材と一緒にされた溶融亜鉛めっき鋼であってよいという点で、1つを超える金属または金属合金を含むこともできる。
【0036】
本発明の金属基材用プライマーコーティング組成物は、むきだしの金属に適用することができる。「むきだし」とは、いかなる前処理組成物、例えば従来のリン酸処理浴、重金属リンス剤、化成処理コーティング、クロメート陽極処理などによっても処理されていない未使用材料を意味する。プライマーコーティングへの接着を向上させるために、むきだしの金属は機械的力によってサンドブラストまたは研磨されてもよい。さらに、本発明のプライマーコーティング組成物でコーティングされるむきだしの金属基材は、さもなければその残りの表面が処理および/またはコーティングされる基材のカットエッジであってよい。
【0037】
本発明の金属基材用プライマーコーティング組成物は、処理された金属に適用することができる。「処理された」とは、前処理組成物、例えば従来のリン酸処理浴、重金属リンス剤、化成処理コーティング、クロメート陽極処理、非クロメート表面処理、例えばBoegelおよびPreKoteなどによって処理された未使用物質を意味する。さらに、本発明のプライマーコーティング組成物でコーティングされる処理された金属基材は、さ
もなければその残りの表面が処理および/またはコーティングされる基材のカットエッジであってよい。
【0038】
本発明のプライマーコーティング組成物を適用する前に、油脂、ほこりまたは他の異物を除去するために、コーティングされる金属基材をまず清浄にすることができる。従来の清浄手法および物質が使用されてよい。これらの物質には、例えば、市販されているものなどの弱または強アルカリ性の清浄剤が含まれてもよい。例には、ALK−660、ED−500が含まれ、その両方はPPG Industries、Aerospace Coatings Productsから入手可能である。そのような清浄剤の適用の後および/または前に、水洗されてよい。
【0039】
次に、アルカリ性清浄剤による清浄の後および本発明の金属基材用プライマーコーティング組成物との接触の前に、金属表面を水性酸性溶液で洗い落とすことができる。適するリンス溶液の例には、市販の希リン酸溶液などの弱または強酸性の清浄剤が含まれる。例には、AC−5、AC−12が含まれ、その両方はPPG Industries、Aerospace Coatings Productsから入手可能である。
【0040】
追加の添加剤
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、表面コーティングの調合技術分野で周知である成分などの、追加の任意選択の成分を含むこともできる。そのような任意選択の成分には、例えば、顔料、染料、界面活性剤、流量調整剤(flow control agent)、チキソトロピー剤、充填剤、ガス発生防止剤(anti−gassing agent)、有機共溶媒、触媒、抗酸化剤、光安定剤、UV吸収剤および他の慣例の補助剤を含めることができる。適合性の問題がない場合は、当技術分野で公知である任意のそのような添加剤を用いることができる。これらの物質および適する量の非限定例には、米国特許第4,220,679号;第4,403,003号;第4,147,769号;および第5,071,904号に記載されるものが含まれ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、二酸化チタン、カーボンブラック、タルク、硫酸バリウムおよびシリカなどの顔料および充填剤を含むことができる。例示的な適する顔料および充填剤は、米国特許第4,220,679号の第11欄、5〜16行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
特定の実施形態では、本発明は、アルコキシシラン接着促進剤、例えばアクリロキシアルコキシシラン、例えばγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびメタクリラトアルコキシシラン、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ならびにエポキシ官能性シラン、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含むこともできる。例示的な適するアルコキシシランは、米国特許第6,774,168号の第2欄、23〜65行目に記載され、その引用部分は本明細書で参照により組み込まれる。
【0042】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、前に記載の耐食性水酸化マグネシウム粒子に加えて、従来の非クロム耐食性粒子も含む。適する従来の非クロム耐食性粒子には、リン酸鉄、リン酸亜鉛、カルシウムイオン交換シリカ、コロイダルシリカ、合成非晶質シリカおよびモリブデート、例えばモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウムおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。適するカルシウムイオン交換シリカは、SHIELDEX(登録商標)AC3および/またはSHIELDEX(登録商標)C303としてW.R.Grace & Co.から市販されている。適する非晶質シリカは、商品名SYLOID(登録商標)でW.R.Grace & Co.から入手可能である。適するリン酸ヒドロキシル亜鉛(zinc hydroxyl phosphate)は、商品名NALZ
IN(登録商標)2でElementis Specialties,Inc.から市販されている。
【0043】
特定の実施形態では、これらの粒子は、5〜40重量%、例えば10〜25%の範囲内の量で本発明のコーティング組成物に存在し、重量%は組成物の全固形物重量に基づく。
【0044】
多層コーティング
示すように、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、プライマー組成物を対象とする。場合によっては、そのような組成物は、保護および装飾コーティング系、例えばモノコートトップコートまたは着色ベースコーティング組成物とクリアコート組成物との組合せ、すなわち、カラー−プラス−クリア系でしばしばトップコートされる。その結果、本発明は、本発明のコーティング組成物から析出したた少なくとも1つのコーティング層を含む多成分複合コーティングも対象とする。特定の実施形態では、本発明の多成分複合コーティング組成物は、ベースコート(しばしば着色コート)の役割をするベースコートフィルム形成組成物およびトップコート(しばしば透明かクリアなコート)の役割をする、ベースコート上に適用されるフィルム形成組成物を含む。
【0045】
本発明のこれらの実施形態では、そこからベースコートおよび/またはトップコートが析出されるコーティング組成物は、例えば、とりわけ自動車OEMコーティング組成物、自動車再仕上げコーティング組成物、工業用コーティング組成物、建築用コーティング組成物、コイルコーティング組成物および航空宇宙用コーティング組成物を調合する分野の技術者に公知である、従来のベースコートまたはトップコートコーティング組成物のいずれかを例えば含むことができる。そのような組成物は、例えば、アクリルポリマー、ポリエステルおよび/またはポリウレタンを含むことができるフィルム形成樹脂を一般的に含む。例示的なフィルム形成樹脂は、米国特許第4,220,679号の第2欄の24行目から第4欄の40行目まで;ならびに米国特許第4,403,003号、米国特許第4,147,679号および米国特許第5,071,904号に開示され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
コーティング方法
本発明のコーティング組成物は、様々な方法のいずれかによって調製することができる。例えば、特定の実施形態では、前に記載の耐食性水酸化マグネシウム粒子は、それらがフィルム形成樹脂で安定した分散液を形成する限り、フィルム形成樹脂を含むコーティング組成物の調合中の任意のときに加えられる。本発明のコーティング組成物は、フィルム形成樹脂、前に記載の耐食性粒子、顔料、充填剤および希釈液、例えば有機溶媒および/または水を最初に混合し、1000〜2000RPMの高速分散機で10〜30分の間混合物を分散させ、次に、磨砕ゲージで検査して5プラスの磨砕粒度を達成するために、分散液を塗料ミルに通すことによって調製することができる。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、公知の適用技術、例えば浸漬もしくは液浸、噴霧、間欠噴霧、浸漬と続く噴霧、噴霧と続く浸漬、ブラッシング、またはロール塗りによって、基材に適用することができる。手動または自動方法のいずれかのエアスプレーおよび静電噴霧のための通常の噴霧技術および設備を用いることができる。本発明のコーティング組成物は、エラストマー基材を含む様々な基材、例えば木材、ガラス、布、プラスチック、フォームなどに適用することができるが、多くの場合、基材は金属を含む。
【0048】
本発明のコーティング組成物の特定の実施形態では、基材への組成物の適用の後、加熱によって、または風乾期間によってフィルムから溶媒、すなわち有機溶媒および/または水を追い出すことによって、基材の表面にフィルムが形成される。適する乾燥条件は特定の組成物および/または適用によって決まるが、一部の例では、約80〜250°F(2
7〜121℃)の温度で約1〜5分の乾燥時間で十分である。所望により1つを超えるコーティング層を適用することができる。通常、コートの間では、前に適用されるコートはフラッシュされる;すなわち、5〜30分の間、周囲条件に曝露される。特定の実施形態では、コーティングの厚さは、0.1〜3mil(2.5〜75ミクロン)、例えば0.2〜2.0mil(5.0〜50ミクロン)である。次に、コーティング組成物を加熱することができる。硬化操作では、溶媒は追い出され、あるならば組成物の架橋性構成成分は架橋される。加熱および硬化操作は、時には80〜250°F(27〜121℃)の範囲内の温度で実行されるが、必要であれば、より低いかより高い温度が用いられてよい。
【0049】
本発明のコーティング組成物の特定の実施形態では、基材への組成物の適用の後、多層コーティング系の場合、所望によりプライマーコーティング組成物上にトップコートが適用される。通常、コートの間では、前に適用されるコートはフラッシュされる;すなわち、1〜72時間、例えば2〜24時間、周囲条件に曝露される。特定の実施形態では、トップコートコーティングの厚さは、0.5〜4mil(12.5〜100ミクロン)、例えば1.0〜3.0mil(25〜75ミクロン)である。次に、コーティング組成物を加熱することができる。硬化操作では、溶媒は追い出され、あるならば組成物の架橋性構成成分は架橋される。加熱および硬化操作は、時には80〜250°F(27〜121℃)の範囲内の温度で実行されるが、必要であれば、より低いかより高い温度が用いられてよい。
【0050】
耐食性
本明細書で用いるように、用語「耐食特性」は、ASTM B−117(塩水噴霧試験)に記載される試験を利用する金属基材での防食の測定を指す。この試験では、表面がコーティングされた後、各パネルは「X」と刻印された。「X」は、あらゆる表面コーティングを貫通して、下にある金属を露出させるのに十分な深さまで、パネルの表面に刻まれた。次に、パネルを5%塩化ナトリウム溶液にさらし、一定の間隔で評価し、刻印部での腐食、ブリスタリング、かぶりおよび他の表面欠陥について検査した。
【0051】
本出願では、コーティング組成物が別のコーティングより「大きな耐食特性を示す」ことが明記されている場合、それは、そのコーティング組成物が他のコーティングと比較して刻印線でより少ない暗部、プライマーコーティングの下でより少ないブリスター、プライマーまたはトップコートのより少ないリフト、ならびにより少ない他のフィルム欠陥を示すことを意味する。特定の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、耐食性水酸化マグネシウム粒子を含まない別のコーティングによって示される耐食特性より良好な耐食特性の提示をもたらすのに十分な量で、本発明のコーティング組成物に存在する。一部の実施形態では、耐食性水酸化マグネシウムナノ粒子は、同じ条件の下でコーティングしたときに、水酸化マグネシウムを含まないが酸化マグネシウムナノ粒子(対照として)を含む類似のコーティング組成物を有する別のコーティングによって示される耐食特性と同等以上の耐食特性の提示をもたらすのに十分な量で、本発明のコーティング組成物に存在する。
【0052】
本明細書で用いるように、用語「同じ条件」は、コーティング組成物が、(i)それが比較される組成物と同じか類似したフィルム厚で基材上に析出され、(ii)それが比較される組成物と同じか類似した硬化条件、例えば硬化温度、湿度および時間の下で硬化されることを意味する。本明細書で用いるように、用語「耐食性水酸化マグネシウム粒子を含まない類似したコーティング組成物」は、本発明のコーティング組成物に含まれる、本明細書に記載される耐食性水酸化マグネシウム粒子が存在しないことを除いて、コーティング組成物が、それが比較される組成物と同じか類似した量で同じ構成成分を含有することを意味する。
【0053】
多くの場合、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,745,010号および米国特許出願第11/956,542号に開示されるように、本発明のコーティング組成物は、冷圧延鋼、電気亜鉛めっき鋼およびアルミニウムから選択される2つの金属基材の少なくとも一部に析出させ、硬化させたとき、酸化マグネシウムナノ粒子ベースの耐食性プライマーコーティング組成物によって同じ条件の下で少なくとも部分的にコーティングされたときに同じ2つの基材が示す耐食特性に類似するか、場合によってはそれより大きい耐食特性を示す基材を生成する。
【0054】
耐食性水酸化マグネシウム粒子
以下の懸濁液の例および粉末の例は、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態で用いるのに適する耐食性水酸化マグネシウム粒子の調製を記載する。耐食性水酸化マグネシウム粒子は、有機溶媒ベースの系または水性ベースの系を用いて合成することができる。例えば、本発明の実施形態により、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、アセトン懸濁液の形で調製することができる。さらに、耐食性水酸化マグネシウム粒子の粉末を、そのアセトン懸濁液から得ることができる。
【0055】
本発明の別の実施形態により、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、水性懸濁液の形で調製することができる。さらに、耐食性水酸化マグネシウム粒子の粉末を、その水性懸濁液から得ることができる。あるいは、耐食性水酸化マグネシウム粒子の粉末を、アセトン懸濁液と水性懸濁液の両方から得ることができる。
【0056】
以下の例は例示目的だけのために提示され、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。特に明記しない限り、以下の例、ならびに明細書全体を通じて、全ての部および百分率は重量による。
【0057】
以下の懸濁液の例および粉末の例は、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態で用いるのに適する耐食性水酸化マグネシウムナノ粒子の調製を例示する。表1は、懸濁された耐食性水酸化マグネシウムナノ粒子の溶媒および水性の系の例を例示する。詳細には、表1は、本発明の実施形態による耐食性水酸化マグネシウムナノ粒子を含むアセトンおよび水性懸濁液の例示的な実施形態を例示する。
【表1】
*懸濁液はBrno University of Technology、Czech
Republicによって調製され、Allison Park Coatings Innovation Center、PPG Industriesによって供給された。
**粒径は、蒸留水に分散させて測定された粉末を用いて、供給業者によってMalvern Zetasizer 3000 HSで測定された。
***この懸濁液の粒径は供給業者によって測定されず、この懸濁液は独立して試験されなかった。
【0058】
本発明の実施形態により、上記の懸濁液の例は、コーティング組成物の希釈剤構成成分
として用いることができる。懸濁液の例のそのような使用は、下でさらに詳細に記載される。
【0059】
表2は、表1に記載した懸濁液の例A〜Dから得られる耐食性水酸化マグネシウム粉末の例を例示する。詳細には、表2は、耐食性水酸化マグネシウム粒子の溶媒または水性懸濁液から得られた耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む粉末の例示的な実施形態を例示する。
【表2】
*粒径は、蒸留水に分散させて測定された粉末を用いて、供給業者によってMalvern Zetasizer 3000 HSで測定された。
【0060】
本発明の実施形態により、上記の粉末の例は、コーティング組成物の基質、活性化剤または希釈剤構成成分のいずれかまたは全てにその粉末を加えることによって、コーティング組成物で用いることができる。粉末の例のそのような使用は、下でさらに詳細に記載される。
【0061】
上記の耐食性水酸化マグネシウム粒子は、水媒性および溶媒媒介性のコーティング組成物で用いることができる。耐食性水酸化マグネシウム粒子は望ましい耐食特性を示し、コーティング組成物の耐食特性を向上させるために用いることができる。例えば、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、非クロムコーティング組成物の耐食特性を向上させるために用いることができる。
【実施例】
【0062】
水媒性非クロメート腐食防止プライマー
一部の実施形態では、コーティング組成物は、水媒性(WB)コーティング組成物である。WBプライマーコーティング組成物は、基質構成成分、活性化剤構成成分および希釈剤構成成分を含むことができる。様々な水媒性プライマーコーティングの組成物は、表3に掲載される。対照のプライマーコーティングを、水媒性対照として酸化マグネシウムナノ粒子で調合した。表3に記載されるコーティングの耐食性および接着特性を、ベースラインとして水媒性対照と比較した。さらに下で記載されるように、比較例1をいかなる腐食防止剤なしで調合し、比較例2を、微小粒径粉末水酸化マグネシウム(MagChem(登録商標)MH10)で調合し、比較例3を、微小粒径スラリー水酸化マグネシウム(FloMag(登録商標)HUS)で調合し、実施例1を、本発明の例示的な実施形態を調製するために希釈剤構成成分として直接用いた、水酸化マグネシウムナノ粒子の懸濁液で調合した。
【表3】
注:
1Nanostructured & Amorphous Materialsから受け取ったナノ酸化マグネシウム、100%固形分、平均粒径は20nmである。
2MagChem(登録商標)MH10、平均粒径は4ミクロンである。
3FloMag(登録商標)HUS(61%固形分)、平均粒径は3ミクロンである。
4懸濁液D(85%固形分)、平均粒径は15nmであり、一部の凝集体は300nm、670nmおよび1300nmである。
上記のコーティングの構成成分は、以下の供給源から得られた:
【表1-1】
【0063】
水媒性対照(ナノMgO):
基質構成成分、酸化マグネシウムを含む活性化剤構成成分、および希釈剤構成成分を含むプライマーコーティング組成物を組み合わせた。基質構成成分は、エポキシ樹脂、分散剤、顔料および水で調合した。活性化剤構成成分は、20nmの平均粒径のコーティング組成物の全固形物重量に対して10.0重量%の酸化マグネシウム粒子で調合した(Nanostructured & Amorphous Materialsから市販されている)。希釈剤構成成分は、水である。希釈剤構成成分は、基質構成成分および活性化剤構成成分を手動で混合した後に加えた。
【0064】
比較例1
いかなる耐食性粒子(例えば、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム)も含まないコーティング組成物を調合した。希釈剤構成成分は、基質構成成分および活性化剤構成
成分を手動で混合した後に加えた。
【0065】
比較例2
微小粉末水酸化マグネシウム(MagChem(登録商標)MH10、Martin Marietta Magnesia Specialties、LLCから入手可能である)を含むコーティング組成物を調合した。MagChem(登録商標)MH10の平均粒径は、4ミクロンであった。微小水酸化マグネシウム粒子の重量%は、コーティング組成物の総重量に対してコーティング組成物中に10.07であった。希釈剤構成成分は、基質構成成分および活性化剤構成成分を手動で混合した後に加えた。
【0066】
比較例3
微小スラリー水酸化マグネシウム(FloMag(登録商標)HUS、Martin Marietta Magnesia Specialties、LLCから入手可能である)を含むコーティング組成物を調合した。MagChem(登録商標)MH10の平均粒径は、3ミクロンであった。微小水酸化マグネシウム粒子の重量%は、コーティング組成物の総重量に対してコーティング組成物中に36.87であった。スラリーを希釈剤構成成分として用い、基質構成成分および活性化剤構成成分を手動で混合した後に加えた。
【0067】
(実施例1)
基質構成成分、活性化剤構成成分および希釈剤構成成分を組み合わせることによって、本発明の実施形態によるプライマーコーティング組成物の例を調製した。希釈剤構成成分は、懸濁液例Dの本発明の耐食性水酸化マグネシウム粒子を含んでいた。懸濁液例Dの平均粒径は15nmであり、一部の凝集体は300nm、670nmおよび1300nmであった。微小水酸化マグネシウム粒子の重量%は、コーティング組成物の総重量に対してコーティング組成物中に57.38であった。懸濁液例Dを希釈剤構成成分として用い、基質構成成分および活性化剤構成成分を手動で混合した後に加えた。
【0068】
全ての水媒性プライマーコーティングを、scotch−brite(商標)研磨されたクラッドアルミニウムパネル(クラッド:AMS2024−T3、250/5)に適用した。各クラッドアルミニウムパネルを3Mのscotch−brite(商標)で研磨し、メチルエチルケトンで清浄にして無水表面を形式した。0.8mil〜1.5mil(20〜37.5ミクロン)の乾燥フィルム厚さまで、プライマーコーティング組成物をHVLPスプレーガンで噴霧した。別のセットのパネルに、光沢ポリウレタントップコート(PPG Industries、PPG Aerospace Productsから入手可能なCA8201/F17925トップコート)をトップコートした。プライマーを周囲温度条件で2時間乾燥させた後に、トップコートを適用した。ポリウレタントップコートの乾燥フィルム厚さは、1.5mil〜2.5mil(37.5〜62.5ミクロン)であった。下塗りされたパネルおよびトップコートされたパネルの両方を周囲条件で1週間完全に硬化させ、次にBoeing Specification Standard(BSS)7225、クラス5に従って乾燥接着について試験した。周囲温度で脱イオン水に7日間液浸した後に、同じ方法で湿式接着を試験した。1〜10の評価スケールで接着を評価したが、10は最良の接着を示し、0は最悪の接着を示す。耐食性試験のために、あらゆる表面コーティングを貫通して、下にある金属を露出させるのに十分な深さまでパネルの表面に刻まれた「X」で、下塗りおよびトップコートされたパネルを刻印した。次に、ASTM B−117に従ってパネルを5%塩化ナトリウム溶液にさらし、刻印部での腐食、ブリスタリング、かぶりおよび他の表面欠陥について500時間、1000時間、2,000時間および3,000時間の後に評価した。クラッドアルミニウム基材上でのプライマーコーティングおよびポリウレタントップコートを有するプライマーコーティングの接着および耐食性の結果を、表4に示す。
【表4】
*最初の数字は乾燥接着評価を表し、第2の数字は湿式接着評価を表す。
**クリーページ評価:A
***クリーページ評価:C。このパネルだけがCのクリーページ評価を示し、残りの試験パネルはAの評価を示した。
****NA:比較例1、2および3のための塩水噴霧試験は、2,000時間の時点で中止された。
【0069】
耐食性凡例:1a:刻印線は明るい;1b:刻印線は暗くなり始める;2:刻印線の>50%は暗い;3:刻印線は暗い;4:刻印線にいくつかの白塩限局性部位;5:刻印線に多くの白塩限局性部位;6:白塩に満たされた刻印線;7:刻印線に暗色の腐食部位;8:刻印線に沿ってプライマーの下にわずかなブリスター(12個未満のブリスター);9:刻印線に沿ってプライマーの下に多数のブリスター;10:刻印線に沿ってかすかなリフト;11:刻印に沿ってコーティングの巻き上がり;12:有機コーティング面に腐食のピンポイントの部位/ピット;13:刻印から離れた表面に1つまたは複数のブリスター;14:刻印から離れたプライマーの下に多くのブリスター;15:表面が膨らみ始める;クリーページ評価:A:クリーページはない;B:0〜1/64;C:1/64〜1/32;D:1/32〜1/16;E:1/16〜1/8;F:1/8〜3/16;G
3/16〜1/4;H:1/4〜3/8インチ。
【0070】
表4の結果は、プライマーコーティングの全てがクラッドアルミニウム基材への優れた乾燥および湿式接着を示したことを示す。さらに、トップコートはプライマーコーティングの全てに適合し、プライマーへの優れた接着を示す。
【0071】
表4の結果から分かり得るように、いかなる腐食防止剤も含有しない比較例1は、500時間の塩水噴霧曝露の後、有意により多くの腐食を示した。ミクロンサイズの水酸化マ
グネシウム粒子を含む比較例2および3は、1000時間の塩水噴霧曝露の後、優れた耐食性を示した。しかし、2,000時間の時点で検査されたように、塩水噴霧へのさらなる曝露は、水媒性対照および本発明のプライマーコーティングの実施例1と比較して、比較例2および3が劣る耐食性を有することを明らかにした。3,000時間の時点では、本発明の実施例1は、プライマーのみ、またはプライマーとトップコートでコーティングされたときに、水媒性対照と同じ耐食性を示した。
【0072】
このように、200nm未満の平均一次粒径を有する、本発明の耐食性水酸化マグネシウム粒子は、ミクロンサイズ範囲内の平均一次粒径を有する水酸化マグネシウム粒子に勝る、予想外で望ましい結果を提供する。さらに、驚くべきことに、本発明の水酸化マグネシウム粒子を有するプライマーコーティング組成物が、酸化マグネシウムナノ粒子で調合されたプライマーに同じ耐食性を示すことを本発明者は発見した。したがって、本発明の水酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウムナノ粒子のための腐食防止剤代替物として利用することができる。耐食性水酸化マグネシウム粒子は、非クロメート腐食防止剤としてクロメート、セリウムおよび他の重金属化合物に代わることにおいて、ナノ酸化マグネシウムへの新規の非毒性代替手段である。
【0073】
耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む溶媒媒介性非クロメート腐食防止(NCCI)プライマー
溶媒媒介性プライマーコーティング組成物は、基質構成成分、活性化剤構成成分および希釈剤構成成分を含む。基質構成成分は、ポリアミン樹脂、溶媒、顔料および充填剤、および腐食防止剤を含む。活性化剤構成成分はエポキシ樹脂および溶媒を含み、希釈剤構成成分は溶媒または溶媒の混合物を含む。
【0074】
その全内容は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,745,010号および米国特許出願第11/956,542号に開示されるように、酸化マグネシウムナノ粒子は、クロメート顔料と同等の耐食性を示した。したがって、ナノ酸化マグネシウム粒子を含むコーティング組成物を、対照として利用した。表2に記載の本発明の水酸化マグネシウム粒子を含む4つのプライマーコーティング組成物を調合した。表5に掲載されるデータから分かり得るように、全てのプライマーコーティング組成物のために同じ量の腐食防止剤を用いた。腐食防止剤の重量%は、コーティング組成物の総重量に対して8.67であった。比較のために、同じ量の活性化剤および希釈剤を基質構成成分に加えた。
【0075】
溶媒媒介性対照
対照実施例は、基質構成成分に、20nmの平均粒径を有する酸化マグネシウムナノ粒子(Nanostructured & Amorphous Materialsから市販されている)で調合した。
【0076】
(実施例2)
基質構成成分に本発明の水酸化マグネシウム粒子(表2でA
dry粉末として調製されたもの)を含ませることによって、本発明の例示的な実施形態によるプライマーコーティング組成物の例を調製した。A
dry粉末の水酸化マグネシウム粒子の粒径は、10nmおよび120nmの二峰性分布であり、一部の凝集体は230nmおよび6,000nmであった。
【0077】
(実施例3)
基質構成成分に本発明の水酸化マグネシウム粒子(表2でB
dry粉末として調製されたのもの)を含ませることによって、本発明の例示的な実施形態によるプライマーコーティング組成物の例を調製した。B
dry粉末の水酸化マグネシウム粒子の粒径は、7nmおよび130nmの二峰性分布であり、一部の凝集体は280nmであった。
【0078】
(実施例4)
基質構成成分に本発明の水酸化マグネシウム粒子(表2でC
dry粉末として調製されたもの)を含ませることによって、本発明の例示的な実施形態によるプライマーコーティング組成物の例を調製した。C
dry粉末の水酸化マグネシウム粒子の粒径は、5nmおよび68nmの二峰性分布であり、一部の凝集体は330nmであった。
【0079】
(実施例5)
基質構成成分に本発明の水酸化マグネシウム粒子(表2でD
dry粉末として調製されたもの)を含ませることによって、本発明の例示的な実施形態によるプライマーコーティング組成物の例を調製した。D
dry粉末の水酸化マグネシウム粒子の粒径は、5nmおよび100nmの二峰性分布であり、一部の凝集体は400nmであった。
【表5】
注:
1Nanostructured & Amorphous Materialsから受け取ったナノ酸化マグネシウム、100%固形分、平均粒径は20nmである。
上記のコーティングの構成成分は、以下の供給源から得られた:
【表1-2】
【0080】
全ての溶媒媒介性プライマーコーティングを、scotch−brite(商標)研磨されたクラッドおよびむきだしのアルミニウムパネル(クラッド:AMS2024−T3、250/5;むきだし:AMS 2024−T3、250/4)に適用した。クラッドおよびむきだしのアルミニウムパネルを3Mのscotch−brite(商標)で研磨し、メチルエチルケトンで清浄にして無水表面を形式した。0.8mil〜1.5mil(20〜37.5ミクロン)の乾燥フィルム厚さまで、プライマーコーティング組成物をHVLPスプレーガンで噴霧した。別のセットのパネルに、光沢ポリウレタントップコート(PPG Industries、PPG Aerospace Productsから入手可能なCA8201/F17925トップコート)をトップコートした。プライマーを周囲温度条件で2時間乾燥させた後に、トップコートを適用した。ポリウレタントップコートの乾燥フィルム厚さは、1.5mil〜2.5mil(37.5〜62.5ミクロン)であった。下塗りされたパネルおよびトップコートされたパネルの両方を周囲条件で1週間完全に硬化させ、次にBoeing Specification Standard(BSS)7225、クラス5に従って乾燥接着について試験した。周囲温度で脱イオン水に7日間液浸した後に、同じ方法で湿式接着を試験した。1〜10の評価スケールで接着を評価したが、10は最良の接着を示し、0は最悪の接着を示す。耐食性試験のために、あらゆる表面コーティングを貫通して、下にある金属を露出させるのに十分な深さまでパネルの表面に刻まれた「X」で、下塗りおよびトップコートされたパネルを刻印した。次に、ASTM B−117に従ってパネルを5%塩化ナトリウム溶液にさらし、
刻印部での腐食、ブリスタリング、かぶりおよび他の表面欠陥について500時間、1000時間、2,000時間および3,000時間の後に評価した。クラッドアルミニウム基材上でのプライマーコーティングおよびポリウレタントップコートを有するプライマーコーティングの接着および耐食性の結果を、表6に示す。むきだしのアルミニウム基材上でのプライマーコーティングおよびポリウレタントップコートを有するプライマーコーティングの接着および耐食性の結果を、表7に示す。
【表6】
*最初の数字は乾燥接着の評価を表し、第2の数字は湿式接着についてである。
**クリーページ評価:全ての実施例についてA。
【表7】
*最初の数字は乾燥接着の評価を表し、第2の数字は湿式接着についてである。
**クリーページ評価:全ての実施例についてA。
【0081】
表6および7に提示される接着の結果から分かり得るように、本発明の試料および溶媒媒介性対照の全ては、むきだしおよびクラッドのアルミニウム基材への優れた乾燥および湿式接着を示した。トップコートされた場合は、本発明の試料および溶媒媒介性対照の両方は、プライマーのみのパネルと比較して接着のわずかな悪化を示した。表6および7の接着データの全てから、本発明のプライマーコーティング組成物の全体的な接着が、溶媒媒介性対照のそれと同じことが分かる。
【0082】
表6および7に提示される耐食性の結果から分かり得るように、むきだしおよびクラッドのアルミニウム基材の両方で、本発明のプライマー試料は、500時間、1,000時間、2,000時間および3,000時間の塩水噴霧曝露の後に、溶媒媒介性対照と同じ耐食性を示した。ポリウレタンコーティングでトップコートされた場合は、本発明のプライマーコーティング組成物は溶媒媒介性対照と同じ耐食性を示した。
【0083】
上記の耐食性粒子は、水媒性および溶媒媒介性のコーティング組成物で用いることができる。耐食性水酸化マグネシウム粒子は望ましい耐食特性を示し、コーティング組成物の耐食特性を向上させるために用いることができる。例えば、耐食性水酸化マグネシウム粒子は、非クロムコーティング組成物の耐食特性を向上させるために用いることができる。
【0084】
驚くべきことに、水酸化マグネシウムが吸湿性でないとしても、上記の耐食性水酸化マ
グネシウム粒子を含むコーティング組成物が、望ましい耐食特性を示すことを本発明者は発見した。本発明と対照的に、特定の以前の非クロムコーティング組成物は、それらの耐食特性を、水排除性(例えば、吸湿性)の無機酸化物の存在から誘導すると理解された。それらの以前の水排除性の無機酸化物は、水の取り込み、それによって基材に接触する水の量を低減することを通して、基材を腐食から保護すると理解された。水酸化マグネシウムは吸湿性でないので、本発明がなされた時点で、当業者は、基材に接触する水の量を低減するいかなる機構も水酸化マグネシウムが有すると予想せず、したがって、水酸化マグネシウムが以前の水排除性無機酸化物の適する代替物であると予想しない。したがって、本発明がなされた時点で、当業者は、上記の水酸化マグネシウム粒子を含むコーティング組成物が望ましい耐食性を示すと予想せず、上記の水酸化マグネシウム粒子を含むコーティング組成物を試みる理由がなかったのである。
【0085】
より具体的には、驚くべきことに、3000時間の塩水噴霧曝露の後でさえ、200nm未満の本発明の水酸化マグネシウム粒子を含むコーティング組成物が、アルミニウム基材などの金属基材で良好な接着および良好な耐食性を示すことが発見された。この新規の本発明のコーティング組成物は、酸化マグネシウムナノ粒子のそれらと同じ特性を実証し、本コーティング組成物は環境に安全であるので、クロメート、セリウムおよび他の重金属を含むコーティング組成物への別の代替手段を提供した。
【0086】
前の詳細な記載の目的上、それとは反対に明記される場合を除き、本発明は様々な代替の変形体を仮定することができることを理解すべきである。さらに、いかなる実施例以外、または特記されている場合以外は、例えば明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の量を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されると理解すべきである。したがって、特に明記しない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で示される数字パラメータは、本発明によって得られる所望の特性によって異なることができる近似値である。少なくとも、および均等論の適用を特許請求の範囲の範囲に限定しようとするものではないが、各数字パラメータは、少なくとも報告される有効桁数に照らし、および通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0087】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に示す数値はできるだけ正確に報告される。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値で見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本来的に有する。
【0088】
さらに、本明細書に挙げられるいかなる数値範囲も、その中に包含される全ての部分範囲を含むものと理解すべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、それらを含む挙げられた最小値1と挙げられた最大値10の間(1と10とを含む)の全ての部分範囲を、すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する部分範囲を含むものとする。
【0089】
本出願では、特に明記されなければ単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。例えば、限定されずに、本出願は、特定の実施形態では「フィルム形成樹脂」を含むコーティング組成物を指す。「フィルム形成樹脂」へのそのような言及は、1つのフィルム形成樹脂を含むコーティング組成物ならびに2つ以上のフィルム形成樹脂の混合物を含むコーティング組成物を包含するものとする。さらに、本出願では、特定の場合には「および/または」を明示的に用いることができるとしても、特に明記されなければ「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0090】
特定の実施形態では、本発明は、クロム含有物質を実質的に含有しないコーティング組成物を対象とする。他の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、そのような物質を完全に含有しない。本明細書で用いるように、用語「実質的に含有しない」は、あると
しても当の物質が偶発的な不純物として組成物に存在することを意味する。言い換えると、その物質は組成物の特性に影響を及ぼさない。このことは、本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物が2重量%未満のクロム含有物質、または、場合によっては0.05重量%未満のクロム含有物質を含有することを意味し、そのような重量%は、組成物の総重量に基づく。本明細書で用いるように、用語「完全に含有しない」は、その物質が組成物に全く存在しないことを意味する。したがって、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、クロム含有物質を含有しない。本明細書で用いるように、用語「クロム含有物質」は、三酸化クロム基CrO
3を含む物質を指す。そのような物質の非限定例には、クロム酸、三酸化クロム、無水クロム酸、重クロム酸塩、例えば重クロム酸アンモニウム、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、ならびに重クロム酸カルシウム、重クロム酸バリウム、重クロム酸マグネシウム、重クロム酸亜鉛、重クロム酸カドミウムおよび重クロム酸ストロンチウムが含まれる。
【0091】
本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、重金属、例えば鉛およびニッケルを含む他の望ましくない物質を実質的に含有しない。特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、そのような物質を完全に含有しない。
【0092】
本発明は例示的な実施形態および態様に関して記載されたが、それらに限定されない。当分野の技術者は、本発明から有意に逸脱することなく、他の改変および適用ができることを理解する。例えば、コーティング組成物は、航空宇宙または航空燃料タンク用途のために有益であると記載されるが、それらは他の適用のためにも有益であり得る。したがって、上記の記載は記載される正確な実施形態および態様に限定されると解釈するべきでなく、それらの最も完全で公正な範囲を有する以下の特許請求の範囲と一貫して、およびその裏づけとして解釈するべきである。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
200nm未満の平均粒径を有するナノ水酸化マグネシウム粒子を含むコーティング組成物。
(項2)
ポリアミンとエポキシ官能性ポリマーとの反応から形成された熱硬化性フィルム形成樹脂をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
(項3)
前記ポリアミンがポリアミド樹脂を含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
(項4)
150nm未満の平均一次粒径を有する耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
(項5)
接着促進構成成分をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
(項6)
水酸化マグネシウム粒子から本質的になる耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
(項7)
前記熱硬化性フィルム形成樹脂が硬化の前に耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
(項8)
200nm未満の平均粒径を有するナノ水酸化マグネシウム粒子を含むコーティング組成物を含む基材。
(項9)
前記コーティング組成物が、ポリアミンとエポキシ官能性ポリマーとの反応生成物である熱硬化性フィルム形成樹脂をさらに含む、請求項8に記載の基材。
(項10)
前記コーティング組成物が、150nm未満の平均一次粒径を有する耐食性水酸化マグネシウム粒子を含む、請求項8に記載の基材。
(項11)
純粋なアルミニウムでクラッディングされるか、クロメート変換コーティングをさらに含む、請求項8に記載の基材。