【実施例1】
【0026】
まず実施例1を
図1〜
図4を参照して説明する。
本実施例1における2点間距離調整装置100は、被調整体102をより一層緊張させる機能を有し、少なくとも、ねじ棒104、第1筒体106、第1フック108、第1フック体110、第2筒体112、第2フック114、第2フック体116、第1ナット118、及び、第2ナット120を含んでいる。
【0027】
まず、ねじ棒104を説明する。
ねじ棒104は、第1フック体110及び第2フック体116をスライド可能に、第1ナット118及び第2ナット120が螺合されると共に、第1フック体110及び第2フック体116に加わる引っ張り力を受け止める機能を有し、本実施例1においては直状であって、周面に螺旋状にねじ山122が形成されている長ねじである。ねじ棒104の材質は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、樹脂等適宜選択できるが、第1フック体110及び第2フック体116から大きな引っ張り力を受けること、及び、低コスト化を考慮すると、鋼製丸棒材を用いた転造ねじが好ましいが、切削によってねじ山を形成しても良い。また、ねじ山形成後、焼き入れ、焼き戻し、焼き鈍し等によってねじ棒104の表面又は内部の硬さ調整をすることもできる。
ねじはメートルねじ、インチねじ、ユニファイねじ又はIBロック(登録商標)ねじ等、用途に応じ採用することができる。要すれば、コストを考慮すると、一般的に市販されている鋼製の規格品を採用することが好ましい。また、後述する付着セメントを効率よく除去可能にするため、特殊形状のねじ山形状を採用することもできるが、価格が高くなる。セメントが固着し難いようにねじ棒104の表面に油を塗布して用いても良い。
【0028】
次ぎに第1フック体110を説明する。
第1フック体110は、ねじ棒104に対しスライド可能、かつ、回転可能であると共に、被調整体102に係止できる機能を有し、本実施例1においては、少なくとも第1筒体106及び第1フック108を含んでいる。
まず第1筒体106を説明する。
第1筒体106はねじ棒104が貫通することによって、当該ねじ棒104上にスライド可能、かつ、回転可能であると共に、付加的に、ねじ棒104上に付着したセメントCEを書き落とす機能を有し、本実施例1においては、ねじ棒104の直径よりも大きい孔を形成した所定の長さを有する筒状体である。詳述すれば、中心部に所定直径、例えば、ねじ棒104の直径よりも約1ミリメートル大きな直径を有する第1貫通孔124-1が形成された所定の直径を有する円筒体であるが、所定の強度を有すれば外形及び第1貫通孔124-1の断面形状は真円に限定されないが、強度上及び製造のし易さを考慮した場合、円筒形が好ましい。
【0029】
次ぎに第1フック108を説明する。
第1フック108は、被調整体102を係止する機能を有し、大凡平板状のフック形状をしている。具体的には、直線平板状の第1フック基部126-1、及び、当該第1フック基部126-1の一端部から当該第1フック基部126-1対し所定の角度をなす直状(三角形状)の第1フック部128-1によってV字形に形成されている。具体的には、第1フック基部126-1の第1フック部128-1に対する反対側の直状縁が第1筒体106の軸線に沿うようその周面に固定され、第1フック基部126-1と第1フック部128-1とによって囲われた三角形の凹部が第1フック溝130-1である。第1フック108は、第1筒体106と第1フック108とが一体に鍛造成形されることが好ましい。第1フック体110の強度を確保するためである。すなわち、第1筒体106から第1フック部128-1を斜めに突出する場合に比し、第1筒体106と第1フック基部126-1との接合長を長く取れるので、第1筒体106と第1フック基部126-1との締結強度を向上させることが出来るからである。
【0030】
次ぎに第2フック体116を説明する。
第2フック体116は第1フック体110と同一構造・同一形状であって、第1フック体110と反対向きに配置されている。すなわち、第2フック体116は第1フック体110と同一物であり、第2筒体112及び第2フック114を含んでいる。
最初に第2筒体112を説明する。
第2筒体112は、ねじ棒104が貫通することによって、当該ねじ棒104上にスライド可能、かつ、回転可能であると共に、付加的に、ねじ棒104上に付着したセメントCEを掻き落とす機能を有し、第1筒体106同様にねじ棒104の直径よりも大きい孔を形成した所定の長さを有する筒状体である。詳述すれば、中心部に所定直径、例えば、ねじ棒104の直径よりも約1ミリメートル大きな直径を有する第2貫通孔124-2が形成された所定の直径を有する円筒体であるが、所定の強度を有すれば外形及び第2貫通孔124-2の断面形状は真円に限定されないが、強度上及び製造のし易さを考慮した場合、円筒形が好ましい。
【0031】
次ぎに第2フック114を説明する。
第2フック114は、被調整体102を係止する機能を有し、大凡平板状のフック形状をしている。具体的には、直線平板状の第2フック基部126-2、及び、当該第2フック基部126-2の一端部から当該第2フック基部126-2対し所定の角度をなす直状(三角形状)の第2フック部128-2によってV字形に形成されている。具体的には、第2フック基部126-2の第2フック部128-2に対する反対側の直状縁が第2筒体112の軸線に沿うようその周面に固定され、第2フック基部126-2と第2フック部128-2によって囲われた三角形の凹部が第2フック溝130-2である。第2フック体116は、第2筒体112と第2フック114とが一体に鍛造成形されることが好ましい。第2フック114の強度を確保するためである。換言すれば、第2フック体116は第1フック体110と同一品を使用しているが、ねじ棒104に対しては反対向きに装着されている。具体的には、第1フック溝130-1と第2フック溝130-2とが向かい合うように対照に配置されている。対照とは、完璧な対照ではないが、対照に準じて配置される状態をも含んでいる。
【0032】
次ぎに第1ナット118を説明する。
第1ナット118は、第1フック体110のねじ棒104からの脱落を防止すると共に、ねじ棒104の他方の側へ推し進める機能を有し、本実施例1においては、第1フック体110に対し、第1フック溝130-1の開放側の反対側においてねじ棒104に螺合した六角ナット132である。六角ナット132は、少なくとも、ねじ孔134、及び、操作部136が形成され、ねじ孔134にねじ棒104がねじ込まれ、操作部136に六角スパナ等の工具を係止し、又は、手で握って回転させることにより、強固に締め付けることができる。したがって、第1ナット118はねじ孔134と操作部136を有すれば、六角ナット132に限定されない。例えば、四角ナット、蝶ナットを用いることができる。また、
図11に示すように、係止孔付円筒ナット138を使用することができる。
【0033】
次ぎに係止孔付円筒ナット138を説明する。
係止孔付円筒ナット138は、所定の厚みを有する円盤140の中央にねじ孔142が形成され、操作部136として周面146に1カ所以上のフック穴144が形成されている。係止孔付円筒ナット138を、単にねじ棒104回りに回転させる場合、指先又は手で円盤140の周面146をつかんで回転させることができ、強力に締め付けた場合、
図11に示すような、円盤140の周面146の大凡半周を外側から抱くように位置される弧状部148の先端に、円盤140の中心側へ突出し、かつ、フック穴144に係止可能な係止ピン150を有し、当該係止ピン150に対し、弧状部148の大凡反対側から円盤140に対し法線方向へ延在する梃子棒152を有する特殊工具154を用い、係止ピン150をフック穴144に係止した後、弧状部148を円盤140の周面146を囲うように宛って梃子棒152を矢印方向(時計回り方向)に押動することによって、梃子の原理で係止孔付円筒ナット138を大きな力で回すことができる。しかし、第1ナット118は、ねじ棒104に対し工具(手動工具又は電動工具)によって回転させることができる構成であることが好ましく、電動工具によって回転できることが最も好ましい。手で回すよりも大きな回転速度で回転させることができると共に、大きな回転トルクを作用させることができるからである。例えば、第1ナット118が六角ナットである場合、電動工具に六角ソケットを装着した後、当該六角ソケットを第1ナット118に係止して回転させる。
【0034】
次ぎに第1ワッシャ156を説明する。
第1ワッシャ156は、第1ナット118が第1筒体106の端面をこじらないようにする機能を有し、所定の厚みを有する円板体158の中央にねじ棒104が貫通する円形の透孔160が形成されている。円板体158、透孔160の形状は円形に限らず、矩形、楕円形、三角形状であってもよい。
第1ワッシャ156は、第1筒体106と第1ナット118との間に介設され、第1ナット118のねじ棒104に対する回転によって生じるねじ棒104の軸線方向の移動による押力は第1ワッシャ156を介して第1筒体106に伝達され、第1ナット118と第1筒体106の端面とは直接摺動しないので、第1ナット118によって第1筒体106の端面をかじることはない。しかし、第1ワッシャ156は必須の構成ではなく、第1ナット118によって直に第1筒体106の端面を押動することができる。
【0035】
次ぎに第2ナット120を説明する。
第2ナット120は、第1ナット118と同一の機能を有し、構成も同一である。
したがって、第1ナット118と同一部には同一符合を付し、説明は省略する。
【0036】
次ぎに第2ワッシャ162を説明する。
第2ワッシャ162も第1ワッシャ156と同一機能を有し、構成も同一である。
したがって、第1ナット118と同一部とは同一の符合を付し、説明は省略する。
【0037】
次ぎに第1ナット脱落防止手段164を説明する。
第1ナット脱落防止手段164は、第1ナット118がねじ棒104から脱落するのを防止する機能を有し、本実施例1においては、ねじ棒104の先端部のねじ山を潰して第1平坦部166が形成されている。しかし、第1ナット脱落防止手段164は、第1平坦部166に限らず、ロックナットを用いること、ねじ棒104の先端部のねじ谷に接着剤を固着させること、ねじ棒104の先端に径方向に貫通する貫通孔を設け、係止ピンを係止すること等、上記機能を発揮する構造を採用することができる。
第1平坦部166が形成されているため、第1ナット118をねじ棒104の脱落方向へ回転させた場合、ねじ棒104の先端部において、第1平坦部166のために第1ナット118はねじ棒104に対し回転できず、第1ナット118はねじ棒104から脱落出来ない。
【0038】
次ぎに第2ナット脱落防止手段168を説明する。
第2ナット脱落防止手段168は、第1ナット脱落阻止体164と同一の機能を有し、本実施例1においては第1ナット脱落防止手段164と同様に、ねじ棒104の他端部のねじ山を潰した第2平坦部170が形成されている。第2平坦部170によって、第2ナット120もねじ棒104の端部から脱落出来ない。
【0039】
以上の説明から明らかなように、実施例1の2点間距離調整装置100は、ねじ棒104上に第1フック体110の第1筒体106及び第2フック体116の第2筒体112が、第1フック溝130-1と第2フック溝130-2が互いに向かい合うと共に、ねじ棒104に対しスライドかつ回転可能に嵌合される。第1筒体106に対しねじ棒104の端部側、換言すれば、第1フック溝130-1の開放部に対し反対側において第1ワッシャ156が配置され、第1ワッシャ156に対し反第1フック溝130-1側に第1ナット118が螺合され、同様に、第2筒体112に対しねじ棒104の他端部側、換言すれば、第2フック溝130-2の解放部に対し反対側において第2ワッシャ162が配置され、第2ワッシャ162に対し反第2フック溝130-2側に第2ナット120が螺合され、その後、ねじ棒104の両端部が潰されて、第1平坦部166、第2平坦部170が形成される。そして、これらが組み立てられた状態で1個の2点間距離調整装置100として取引される。
【0040】
次ぎに、実施例1の2点間距離調整装置100の用法を
図5をも参照して説明する。
2点間距離調整装置100は、通常、第1ナット118、第2ナット120がそれぞれねじ棒104に対し端部に位置するように第1ナット118、又は、第2ナット120を内包した六角ナットソケット(図示せず)を電動工具で回転させて位置させる。第1フック体110及び第2フック体116による被調整体102の2点間距離の調整範囲を最大にするためである。
本例において、被調整体102は楕円形リング172が連鎖されたチェーン174である。チェーン174の楕円形リング172の1つに、例えば、第1フック108を係止する。次いで第2フック114を下方の楕円形リング172に係止し、第1フック108と第2フック114との間のチェーン174が弛んだ状態にセットする。この状態において、例えば、便宜的に第1フック108を係止したA点と、第2フック114を係止したB点間の距離Lに依存し、換言すれば、ねじ棒104上の第1筒体106と第2筒体112との間の第1距離L1に依存している。A点とB点の2点間の距離Lを調整する場合、例えば、短縮するためには、第1ナット118又は第2ナット120の何れかを、第1フック108と第2フック114とが近づくように回転させることによって行う。例えば、第1ナット118を電動工具によって回転させ、ねじ棒104に対し下方へ移動させて鎖線位置へ移動させた場合、第1ワッシャ156を介して第1筒体106が下方へ移動されることから、第1筒体106と第2筒体112の間の距離が第1距離L1から第2距離L2に変更されるので、A点とB点との二点間の距離Lは、第3距離L3分、実質的に短縮(調整)される。本明細書において、「被調整体における2点間の距離が実質的に調整される」とは、被調整体102の全長は変更されないが、第1フック108と第2フック114が係止された被調整体102の間の距離が調整される結果、実質的に被調整体102の長さが変更されることを意味する。係止された第1ナット118が他の物体の影になって、回転させることができない場合、第2ナット120を回転させることでA点とB点の2点間の距離を調整できる。なお、2点間の距離を増加するように調整する場合、第1筒体106と第2筒体112とはねじ棒104の中央に寄せた状態でチェーン174に係止し、第1フック108と第2フック114とが離れる方向に第1ナット118又は第2ナット120を回転させて被調整体102のA点とB点の2点間距離を調整する。なお、被調整体102は、チェーン174の他、複数のリング状の係止輪を一体化したロープ、所定間隔(ランダム間隔を含む)でリング状の係止孔を配置したロープ等採用することができる。
【0041】
次ぎにねじ棒104に固着したセメントCEの除去について
図6を参照して説明する。
ねじ棒104にセメントCEが固着した場合、第1ナット118又は第2ナット120を回転させて第1筒体106又は第2筒体112をねじ棒104に沿って進行させる。これによって、ねじ棒104と第1貫通孔124-1又は第2貫通孔124-2との隙間は極めて小さいので、第1筒体106又は第2筒体112の進行によって、当該固着したセメントCEは横方向から押される。この押力は、第1ナット118又は第2ナット120に加わる回転トルク、及び、ねじ棒104のねじの角度によって定まるため、電動工具程度の回転トルクであっても極めて大きな力になるため、固着セメントは横方向へ押圧力を受け、強固に固着している場合であっても、横方向へずらされてねじ棒104から脱落される。ねじ山間(谷部)にセメントが残った場合であっても、第1ナット118又は第2ナット120の進行によって谷間から押し出されて除去される。谷部のセメントが第1ナット118又は第2ナット120によって除去出来ずに、第1ナット118又は第2ナット120の回転がロックした場合、一度第1ナット118又は第2ナット120を逆回転させて回転可能にした後、再度除去方向に回転させて除去する。また、谷部に残ったセメントは、固着力が小さいので、ブラシ掛け等で除去することができる。
【実施例2】
【0042】
次ぎに実施例2を
図7〜
図9を参照して説明する。
本実施例2における2点間距離調整装置200は、実施例1の2点間距離調整装置100に対し第3ナット202及び第3ワッシャ204を追加した構成であるので、実施例1と同一部分には同一符合を付して説明を省略し、異なる構成を説明する。
【0043】
まず第3ナット202を説明する。
第3ナット202は、第2ナット120と共に、第2筒体112をねじ棒104に対し所定位置に固定する機能を有し、本実施例2においては、中央部に第1筒体106と第2筒体112との間のねじ棒104に螺合される第3ねじ孔206を有し、周面に工具係止部208が形成された第3六角ナット210である。第3六角ナット210も前述したナット同様に種々のナットを選択することができる。
【0044】
次ぎに第3ワッシャ204を説明する。
第3ワッシャ204は、第2筒体112の端面を第3ナット202(第3六角ナット210)がこじらないようにする機能を有し、本実施例2においては、第1ワッシャ156及び第2ワッシャ162と同一構成であって、円板212の中央に透孔(図示せず)が形成された平ワッシャが用いられている。第3ワッシャ204は、第2筒体112の端面と第3ナット202との間に介設されるため、第3ナット202の押圧力は、第3ワッシャ204を介して第2筒体112に伝達される。したがって、通常、第3ナット202を回転させた場合、第3ナット202と第3ワッシャ204とが滑って第3ワッシャ204と第2筒体112の端面との間では滑らない。
【0045】
実施例2に係る2点間距離調整装置200を用いる場合、第2フック体116はねじ棒104の端部に対し固定状態にされる。すなわち、第2筒体112が第2ナット120(第2ワッシャ162)と第3ナット202(第3ワッシャ204)とによって狭持されてねじ棒104に対し固定状態にされる。
通常の使用法は、実施例1における2点間距離調整装置100と同一であり、2点間距離を調整する場合、通常は、第1ナット118をねじ込んで第1フック体110を第2フック体116側へ近づけることにより行う。
第1ナット118が他の部材に邪魔されて回転することが出来ない場合、第2ナット120を締め込んで2点間距離を調整する。この場合、第2ナット120を締め込む前に、第3ナット202を回転させて第1フック体110側へ移動させた後、第2ナット120を締め込む。
付着セメントを除去する際は、第1ナット118を締め込んで第1筒体106をねじ棒104に沿って移動させることにより、付着セメントを実施例1と同様に除去することができる。また、第3ナット202をねじ棒104に対し回転させることにより、付着セメント除去することもできる。