特開2016-1047(P2016-1047A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-1047(P2016-1047A)
(43)【公開日】2016年1月7日
(54)【発明の名称】2点間距離調整装置
(51)【国際特許分類】
   F16G 11/12 20060101AFI20151204BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20151204BHJP
【FI】
   F16G11/12 C
   F16B45/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-121714(P2014-121714)
(22)【出願日】2014年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】514149808
【氏名又は名称】株式会社テクノミル
(74)【代理人】
【識別番号】100167081
【弁理士】
【氏名又は名称】本谷 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 創一
【テーマコード(参考)】
3J038
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BA15
(57)【要約】
【課題】
本発明の基本的目的は、装着位置に拘わらず被調整体における2点間距離を調整することができる2点間距離調整装置を提供することである。
【解決手段】
ねじ棒上にスライド及び回転可能に第1フック体と第2フック体とを装着し、当該第1フック体と第2フック体に対しねじ棒の端部側に第1ナット又は第2ナットをそれぞれ螺合し、当該第1ナット又は第2ナットをねじ棒に対しねじ込むことにより、第1フック体と第2フック体との距離を調整することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調整体(102)に一対のフックを係止し、前記一対のフックをそれらが近づく方向に移動させることで前記被調整体(102)の実質的長さを短縮させる2点間距離調整装置であって、
直状のねじ棒(104)と、
前記ねじ棒(104)が貫通する第1貫通孔(124-1)が形成された第1筒体(106)、及び、第1フック(108)が形成された第1フック体(110)と、
前記ねじ棒(104)が貫通する第2貫通孔(124-2)が形成された第2筒体(112)、及び、前記第1フック(108)に対し向かい合う第2フック(114)が形成された第2フック体(116)と、
前記第1フック(108)の開放側に対する反対側への前記第1筒体(106)の移動を阻止するため、前記ねじ棒(104)に螺合された第1ナット(118)と、
前記第2フック(114)の開放側に対する反対側への前記第2筒体(112)の移動を阻止するため、前記ねじ棒(104)に螺合された第2ナット(120)と、を含み、
前記第1ナット(118)又は第2ナット(120)の内、少なくとも一方を前記ねじ棒(104)に対し回転させることによって、
前記第1フック体(110)と前記第2フック体(116)とを近づけて前記被調整体(102)の2点間の実質的距離を調整することを特徴とする2点間距離調整装置。
【請求項2】
前記ねじ棒(104)の両端部にナット脱落防止手段(164,168)を配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の2点間距離調整装置。
【請求項3】
前記ナット脱落防止手段(164、168)は、前記ねじ棒(104)の両端部のねじ山が潰された平坦部(166、168)である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2点間距離調整装置。
【請求項4】
前記第1フック体(110)に対する前記第2フック体(116)側の前記ねじ棒(104)に第3ナット(202)を螺合し、
前記第1ナット(118)と前記第3ナット(202)とによって前記第1筒体(106)を狭持して前記第1フック体(110)を前記ねじ棒(104)に固定した
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の2点間距離調整装置。
【請求項5】
前記第1フック(108)又は前記第2フック(114)の少なくとも一方は、返し突起(304-1、304-2)を有する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の2点間距離調整装置。
【請求項6】
前記第1フック体(110)及び前記第2フック体(116)はそれぞれ一体に鍛造成型されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の2点間距離調整装置。
【請求項7】
前記第1フック体(110)及び前記第2フック体(116)は同一物を互いに向かい合うように配置したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の2点間距離調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材等を縛った、又は、建材を吊り下げたチェーン等の被調整体の2点間の距離を調整し、当該建材の縛り力又は建材の吊り下げ位置等を調整するための2点間距離調整装置に関する。
さらには、建材等を縛った、又は、建材を吊り下げたチェーン等の被調整体の2点間の距離を電動工具を用いて当該建材の縛り力、又は、建材の吊り下げ位置等を調整することができる2点間距離調整装置に関する。
詳しくは、建材等を縛った、又は、建材を吊り下げたチェーン等の被調整体を、その位置に拘わらず電動工具を用いて被調整体の2点間の実質的な距離を調整できる2点間距離調整装置に関する。
さらに詳しくは、建材等を縛った、又は、建材を吊り下げたチェーン等の被調整体をその位置に拘わらず電動工具を用いて付加的に緊張させることができ、かつ、安価な2点間距離調整装置に関する。
なお、本明細書において説明の便宜上、第1・・、第2・・の名称を用いているが、特に区別の必要がない場合、第1・第2を省略して用いる場合がある。
【背景技術】
【0002】
以下代表的な従来技術を説明する。
第1の従来技術として、軸体と、筒体と、ナットとを含んだ緊張具において、前記軸体には、一方の端部に第1部位に係止する第1係止部が形成されると共に、他端部から前記第1係止部に向けてねじ部が形成され、前記筒体は、前記ねじ部の外周に嵌められると共に、前記筒体の外面には第2部位に係止する第2係止部が形成され、前記ナットは、前記筒体が前記軸体の外周に嵌め込まれた状態で、前記ねじ部に装着されており、前記ナットの締め込みにより離間された前記第1部位と前記第2部位とを接近させる緊張具であって、前記筒体が、前記ねじ部の外周に隙間をあけてスライド可能な遊嵌状態に嵌められ、前記第1係止部において前記第1部位が接する第1受部と前記第2係止部において前記第2部位が接する第2受部とを結ぶ仮想線と、前記軸体の軸心がなす軸線とが傾斜されていることを特徴とする緊張具が知られている(特許文献1)。
【0003】
第2の従来技術として、張設したチェーンの途中に、このチェーンに並列に配置して使用されるチェーン弛み矯正装置であって、前記チェーンの長さ方向に間隔をあけて係合する一対の係合体と、保持部及び支持部を備え、一方の前記係合体を連設する固定体と、他方の前記係合体を連設するとともに、前記固定体の前記保持部に移動可能に保持されつつ、前記固定体の前記支持部に対して遠近移動可能な可動体と、前記固定体の前記支持部と前記可動体との間隔を可変可能とする調節体と、を備え、前記調節体を調整ボルトで構成して、調整ボルトにおけるボルト軸部の一方の端部を支持部または可動体の一方に回転自在に係止し、ボルト軸部の他方の端部を支持部、又は、可動体の他方に螺嵌するとともに、固定体と係合体との連結位置と、可動体と係合体との連結位置の少なくとも一方を、調整ボルトに対してその軸心直交方向に一定間隔をあけて配置し、前記固定体の前記支持部が、支柱状の前記保持部の基端と先端との間の側部に突出して設けられ、
一方の前記係合体が、前記保持部の基端外側方向へ突出するように前記保持部または前記支持部に遊動自在に連設され、前記可動体が、前記保持部の先端と前記支持部との間の前記保持部を自在にスライドするとともに、他方の前記係合体が前記保持部の先端外側方向に突出するように前記可動体に遊動自在に連設され、ボルト状の前記調節体が、前記保持部と略平行に配設されてなる、ことを特徴とするチェーン弛み矯正装置が知られている(特許文献2)。
【0004】
第3の従来技術として、ボルトと、当該ボルトの頭部側の係合部材と、当該ボルトの先端側の係合部材とから成り、ボルト頭部側係合部材は、ボルト軸部に自転及び軸方向移動自在に遊嵌するもので、フック先端が当該ボルトの先端側に向いたフック部がボルト軸部の横側方に位置するように固着連設され、ボルト先端側係合部材は、ボルト軸部に螺嵌する雌ねじ孔を備えると共に、フック先端が当該ボルトの頭部側に向いたフック部がボルト軸部の横側方に位置するように固着連設されている、チェーン長さ調節用具が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5004144号(段落0010,図1図10
【特許文献2】特許第391094号(段落0005,図1図27
【特許文献3】特開2006-70572(段落0060,図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の符合は、特許文献1における参照符合である。
第1の従来技術においては、ねじ山13を有する軸部12の先端部に形成された第1係止部たる鉤爪部11を被調整体たるチェーンに係止し、当該軸部12にスライド可能に嵌合した筒体20に形成された第2係止部たる係止片30に形成された爪部33を締め上げようとするチェーンに係止し、それら鉤爪部11と爪部33とが近づくように、ねじ山13に螺合したナット40を電動工具等で回すことにより、チェーンを締め上げることができる利点がある。この構造において、チェーンを締め上げるためにはナットを回転させねばならず、当該ナットは1つのみであることから、当該ナットが工具によって回転出来る位置に無い場合、当該ナットを回すことができず、チェーンを緊張させること(2点間距離を縮めること)ができない問題がある。また、軸部12の端部にはナット脱落防止手段が配置されておらず、ナットが軸部12から脱落する恐れがある。さらに、軸部12はチェーンに対し傾斜することから、湾曲変形を防止するため鍛造品等の高強度材を使用せねばならず、高価である問題がある。更には、係止片に形成される係止溝は、開放端に向かって拡大するV字状に形成されているため、被調整体であるチェーンが外れ易いという問題もあった。さらにまた、緊張具は主に建築現場で用いられるので、後発的に工事用のセメント(ポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメント)がねじ山13に付着することが多い。この場合、次回の使用前に付着したセメントをねじ山13から除去する必要があり、この作業は通常、第1段階として、ナット40を電動工具で回転させることにより行い、第1段階で除去出来なかったセメントは、手作業で除去していた。第1の従来技術においては、ナット40のみであったので、最終的に筒体20にカバーされるねじ山13の部分はナット40によって除去することができず、手作業によって除去せざるを得ず、セメント除去作業を効率良く行えない問題がある。さらには、係止片は筒体20に溶接によって固定されており、比較的強度が低いという問題があった。
【0007】
以下の符合は、特許文献2における参照符合である。
第2の従来技術においては、調整ボルト7にセメントが付着した場合、調整ボルト7を電動工具で端から端まで回転できるのでセメント除去が容易である利点を有する。しかし、円筒状のベース4にスライド片6がスライド可能に装着され、当該スライド片6がベース4上に固定された螺合部5bに螺合された調整ボルト7の先端が貫通されて調整ボルト先端7aによって係止されることにより、ベース4に連結されたフック2と、スライド片6に連結されたフック3との距離を調整することにより、フック2及びフック3を係止したチェーンを緊張させるようにした緩み矯正装置であるので、調整ボルト7の回転は頭部の一カ所のみでしか行えないので、その装着された位置によっては、第1の従来技術同様に工具によって調整ボルト7を回転させることができず、被調整体たるチェーンを緊張させることができない問題がある。また、調整ボルト先端7aには螺合部5bの脱落阻止手段を備えていないので、注意しつつ調整ボルト7を回転させないと螺合部5bから脱落させてしまい、回復に時間を要する問題がある。さらに、ベース4が必須の構成になり、コスト低減には限界がある問題がある。さらにまた、フック2、3に形成される係止溝は、開放端に向かって拡大するV字状に形成されているため、被調整体たるチェーンが外れ易いという問題もあった。さらには、ねじ棒に付着したセメントの除去についても第1の従来技術と同一の問題がある。
【0008】
以下の符合は、特許文献3における参照符合である。
第3の従来技術においては、ボルト1に嵌合した係合部材2が内蔵されるフック部6と、当該ボルト1の先端部に螺合した係合部材3が内蔵されるフック部6とをそれぞれチェーンに係止し、ボルト1を電動工具等によって回動させることで係合部材3、従って先端側のフック6を他方のフック部6側に移動させることによって、実質的に当該チェーンの2点間距離を調整するものである。この第3の従来技術も、ボルト1の頭部を工具によって回転させることにより、他方のフック部を移動させることができるので、その装着された位置によっては、第1の従来技術同様に、工具によってボルト1を回転させることができず、被調整体たるチェーンの2点間距離を調整することができない問題がある。また、ボルト1の先端部には係合部材3の脱落防止手段が配置されていないので、注意してボルト1を回転させないと係合部材3が脱落し、回復に時間を要する問題がある。さらに、フック部6は係合部材3を内蔵する必要があるため、最中構造等、構造が複雑になり、高価である問題がある。さらに、フック部6に形成される溝は、開放端に向かって拡大するV字状に形成されているため、被調整体であるチェーンが外れ易いという問題もあった。さらにまた、ねじ棒に付着したセメントの除去についても第1の従来技術と同一の問題がある。さらにまた、フック部6は係合部材3を内蔵するため、プレス加工によって製造されることから、強度には限界がある問題がある。
【0009】
本発明の基本的目的である第1の目的は、2点間距離調整装置の位置に拘わらず、被調整体における2点間距離を調整することができる2点間距離調整装置を提供することである。したがって、第1の目的が本発明の基本的目的であるので、少なくとも本目的を達成できれば本発明の技術的範囲に属するものであり、以下に記載する従的な目的を達成出来る必要性はない。
本発明の従的な目的である第2の目的は、2点間距離を調整するためのナットが脱落しないようにした2点間距離調整装置を提供することである。
本発明の従的な目的である第3の目的は、2点間距離を調整するためのナットが脱落しない構成を安価に形成できる2点間距離調整装置を提供することである。
本発明の従的な目的である第4の目的は、安価な2点間距離調整装置を提供することである。
本発明の従的な目的である第5の目的は、フック部が被調整体から外れ難い2点間距離調整装置を提供することである。
本発明の従的な目的である第6の目的は、フック部の強度が高い2点間距離調整装置を提供することである。
本発明の従的な目的である第7の目的は、2点間距離を調整するためのナットが脱落しない構成を安価に達成できる2点間距離調整装置を提供することである。
本発明の従的な目的である第8の目的は、ねじ部にセメントが付着した場合であっても、容易に除去可能な2点間距離調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、請求項1にかかる第1の発明は以下のように構成されている。
被調整体に一対のフックを係止し、前記一対のフックをそれらが近づく方向に移動させることで前記被調整体の実質的長さを短縮させる2点間距離調整装置であって、直状のねじ棒と、前記ねじ棒が貫通する第1貫通孔が形成された第1筒体、及び、第1フックが形成された第1フック体と、前記ねじ棒が貫通する第2貫通孔が形成された第2筒体、及び、前記第1フックに対し向かい合う第2フックが形成された第2フック体と、前記第1フックの開放側に対する反対側への前記第1筒体の移動を阻止するため、前記ねじ棒に螺合された第1ナットと、
前記第2フックの開放側に対する反対側への前記第2筒体の移動を阻止するため、前記ねじ棒に螺合された第2ナットを含み、前記第1ナット又は第2ナットの内、少なくとも一方を前記ねじ棒に対し回転させることによって、前記第1フック体と前記第2フック体とを近づけて被調整体の2点間の実質的距離を調整することを特徴とする2点間距離調整装置である。
【0011】
請求項2に係る第2の発明は、第1の発明において、前記ねじ棒の両端部にナット脱落防止手段を配置したことを特徴とする2点間距離調整装置である。
【0012】
請求項3に係る第3の発明は、第2の発明において、前記ナット脱落防止手段は、前記ねじ棒の両端部のねじ山が潰された平坦部であることを特徴とする2点間距離調整装置である。
【0013】
請求項4に係る第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明において、前記第1フック体に対する前記第2フック体側の前記ねじ棒に第3ナットを螺合し、前記第1ナットと前記第3ナットとによって前記第1筒体を狭持して前記第1フック体を前記ねじ棒に固定したことを特徴とする2点間距離調整装置である。
【0014】
請求項5に係る第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明において、前記第1フック又は前記第2フックの少なくとも一方は、返し突起を有することを特徴とする2点間距離調整装置である。
【0015】
請求項6に係る第6の発明は、第1〜第5の何れかの発明において、前記第1フック体及び前記第2フック体はそれぞれ一体に鍛造成型されることを特徴とする2点間距離調整装置である。
【0016】
請求項7に係る第7の発明は、第1〜第6の何れかの発明において、前記第1フック体及び前記第2フック体は同一物を互いに向かい合うように配置したことを特徴とする2点間距離調整装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る第1の発明において、第1フック体の第1フックと第2フック体の第2フックとを被調整体に係止する。次いで、第1フック体又は第2フック体よりもねじ棒の端部側に位置する第1ナット又は第2ナットを回転させて、それら第1ナット又は第2ナットが近づく方向に移動させることによって、第1フックと第2フックとの間隔を狭めることにより、被調整体の2点間距離を実質的に調整(短縮)する。したがって、例えば、第1ナットが他の部材の邪魔になって回転させることができない場合であっても、第2ナットを回転させて第1フック体と第2フック体との間隔を調整できる利点がある。第2ナットを回転させることができない場合は、第1ナットを回転させることにより同一の効果が得られる。したがって、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
また、ねじ棒、第1ナット、及び、第2ナットは所謂市販品を使用することができ、独自に製造するのは第1フック体と第2フック体であるので、市販品を採用する場合には安価に構成でき、本発明の従的目的たる第7の目的を達成できる利点がある。
さらに、ねじ棒にセメントが付着した場合、第1ナット又は第2ナットを回転させることによる第1筒体又は第2筒体の進行によって、ねじ棒のねじ山を越えて付着しているセメントを掻き落とし、さらに、第1ナット又は第2ナットの回転によってねじ山の間に堆積するセメントを掻き落とすことができ、本発明の従的な目的である第8の目的を達成することができる。
【0018】
請求項2に係る第2の発明において、基本的構成は第1の発明と同一であるので、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、ねじ棒の両端部にナット脱落防止手段が配置されているので、第1ナット及び第2ナットはナット脱落防止手段によって回転されることができず、第1フック体及び第2フック体の脱落を防止できるので、本発明の従的目的である第2の目的を達成できる利点がある。また、ねじ棒に螺合されている第1ナット又は第2ナットは、電動工具で回転させることができるので、作業員の手作業よりも大きなトルクで高速度で回転させることで、前記のように第1筒体又は第2筒体の進行によってねじ棒のねじ山を越えて付着しているセメントを掻き落とし、さらに、第1ナット又は第2ナットの回転によってねじ山の間に堆積するセメントを掻き落とすことが出来、セメント除去作業を効率的に行えるから、本発明の従的な目的である第8の目的を達成することができる利点がある。
【0019】
請求項3に係る第3の発明において、基本的構成は第1の発明と同一であるので、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、ねじ棒のねじ山の両端部が潰されて(第1・第2)ナット脱落防止手段が形成されている。これによって、第1ナット及び第2ナットはねじ山の潰れによって回転されることができず第1フック部及び第2フック部の脱落を防止できるので、本発明の従的な目的である第2の目的を達成できる利点がある。また、ねじ棒の一部のねじ山を潰すという簡単な作業によって、第1ナット及び第2ナットが回転出来ないようにしたので、より安価に製造でき、本発明の従的な目的である第3の目的を達成できる利点がある。さらにまた、ねじ棒に螺合されている第1ナット又は第2ナットは、電動工具によって回転させることができるので、作業員の手作業よりも大きなトルク、及び、高速度で回転させることができ、前記のように第1筒体又は第2筒体の進行によってねじ棒のねじ山を越えて付着しているセメントを掻き落とし、さらに、第1ナット、又は、第2ナットの回転によってねじ山の間に堆積するセメントを掻き落とすことが出来、セメント除去作業を効率的に行えるから、本発明の従的な目的である第8の目的を達成することができる利点がある。
【0020】
請求項4に係る第4の発明において、第1筒体は第1ナットと第3ナットとの間に挟まれているので、第1フックを移動させる場合、2つのナットを回転させなければならないが、第1フック又は第2フックを第3ナット及び第1ナットとを選択的に回転させることで移動させることが可能であり、本発明の主たる目的である第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、第1フック及び第2フック以外は市販品を採用出来るので安価に構成できることから、これらに市販品を採用した場合には、従的目的たる第4の目的を達成できる利点がある。
さらまた、第1フックと第2フックとの間のねじ棒に第3ナットが螺合されているので、第3ナットをねじ棒に対して回動させることができ、第1フックと第2フックとの間のねじ棒に付着したセメントを除去することができ、本発明の従的な目的である第8の目的を達成できる利点がある。
【0021】
請求項5に係る第5の発明において、基本的構成は第1の発明又は第2の発明と同一であるので、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、第1フックと第2フックには返し突起が形成されているので、フックが被調整体から外れにくく安全性が高いことから、本発明の第4の目的を達成できる利点がある。
【0022】
請求項6に係る第6の発明において、基本的構成は第1の発明と同一であるので、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、第1フック体は第1筒体と第1フックが、第2フック体は第2筒体と第2フックとが一体に鍛造成型されているので、強度が極めて高いことから、本発明の第6の目的を達成できる利点がある。
【0023】
請求項7に係る第7の発明において、基本的構成は第1の発明と同一であるので、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
さらに、第1フック体と第2フック体は同一形状であるので鍛造型は1種類で良いことから、さらに安価に作ることができ、本発明の従的目的たる第4の目的を達成できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施例1の2点間距離調整装置の前方左側上方から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の実施例1の2点間距離調整装置の後方右側下方から見た斜視図である。
図3図3は、本発明の実施例1の2点間距離調整装置の正面図である。
図4図4は、本発明の実施例1の2点間距離調整装置の各部品の正面図であり、(A)はねじ棒、(B)は第1フック体、(C)は第2フック体、(D)は第1ナット、(E)は第2ナット、(F)は第1ワッシャ、(G)は第2ワッシャである。
図5図5は、本発明の実施例1の2点間距離調整装置の使用状態を表した正面図である。
図6図6は、本発明の実施例1の2点間距離調整装置においてねじ棒に付着したセメントを除去する際の説明図である。
図7図7は、本発明の実施例2の2点間距離調整装置の前方左側上方から見た斜視図である。
図8図8は、本発明の実施例2の2点間距離調整装置の後方右側下方から見た斜視図である。
図9図9は、本発明の実施例2の2点間距離調整装置の正面図である。
図10図10は、本発明の実施例3の2点間距離調整装置の上左側上方から見た斜視図である。
図11図11は、本発明の実施例の2点間距離調整装置の第1ナット及び/又は第2ナットの異なる例及び回動用の工具である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明における2点間距離調整装置の最良の形態は、被調整体に一対のフックを係止し、前記一対のフックをそれらが近づく方向に移動させることで前記被調整体を緊張させる2点間距離調整装置であって、直状のねじ棒と、前記ねじ棒が貫通する第1貫通孔が形成された第1筒体、及び、第1フックが形成された第1フック体と、前記ねじ棒が貫通する第2貫通孔が形成された第2筒体、及び、前記第1フックに対し向かい合う第2フックが形成された第2フック体と、前記第1フックの開放側に対する反対側への前記第1筒体の移動を阻止するため、前記ねじ棒に螺合された第1ナットと、前記第2フックの開放側に対する反対側への前記第2筒体の移動を阻止するため、前記ねじ棒に螺合された第2ナットを含み、前記ねじ棒の両端部のねじ山が潰されてナット脱落防止手段が形成され、前記第1フック体及び前記第2フック体はそれぞれ一体に鍛造成型され、前記第1フック体及び前記第2フック体は同一物を対称に配置され、前記第1ナット又は第2ナットの内、少なくとも一方を回転させることによって前記第1フック体と前記第2フック体とを近づけて被調整体の2点間の実質的距離を調整することを特徴とする2点間距離調整装置である。
【実施例1】
【0026】
まず実施例1を図1図4を参照して説明する。
本実施例1における2点間距離調整装置100は、被調整体102をより一層緊張させる機能を有し、少なくとも、ねじ棒104、第1筒体106、第1フック108、第1フック体110、第2筒体112、第2フック114、第2フック体116、第1ナット118、及び、第2ナット120を含んでいる。
【0027】
まず、ねじ棒104を説明する。
ねじ棒104は、第1フック体110及び第2フック体116をスライド可能に、第1ナット118及び第2ナット120が螺合されると共に、第1フック体110及び第2フック体116に加わる引っ張り力を受け止める機能を有し、本実施例1においては直状であって、周面に螺旋状にねじ山122が形成されている長ねじである。ねじ棒104の材質は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、樹脂等適宜選択できるが、第1フック体110及び第2フック体116から大きな引っ張り力を受けること、及び、低コスト化を考慮すると、鋼製丸棒材を用いた転造ねじが好ましいが、切削によってねじ山を形成しても良い。また、ねじ山形成後、焼き入れ、焼き戻し、焼き鈍し等によってねじ棒104の表面又は内部の硬さ調整をすることもできる。
ねじはメートルねじ、インチねじ、ユニファイねじ又はIBロック(登録商標)ねじ等、用途に応じ採用することができる。要すれば、コストを考慮すると、一般的に市販されている鋼製の規格品を採用することが好ましい。また、後述する付着セメントを効率よく除去可能にするため、特殊形状のねじ山形状を採用することもできるが、価格が高くなる。セメントが固着し難いようにねじ棒104の表面に油を塗布して用いても良い。
【0028】
次ぎに第1フック体110を説明する。
第1フック体110は、ねじ棒104に対しスライド可能、かつ、回転可能であると共に、被調整体102に係止できる機能を有し、本実施例1においては、少なくとも第1筒体106及び第1フック108を含んでいる。
まず第1筒体106を説明する。
第1筒体106はねじ棒104が貫通することによって、当該ねじ棒104上にスライド可能、かつ、回転可能であると共に、付加的に、ねじ棒104上に付着したセメントCEを書き落とす機能を有し、本実施例1においては、ねじ棒104の直径よりも大きい孔を形成した所定の長さを有する筒状体である。詳述すれば、中心部に所定直径、例えば、ねじ棒104の直径よりも約1ミリメートル大きな直径を有する第1貫通孔124-1が形成された所定の直径を有する円筒体であるが、所定の強度を有すれば外形及び第1貫通孔124-1の断面形状は真円に限定されないが、強度上及び製造のし易さを考慮した場合、円筒形が好ましい。
【0029】
次ぎに第1フック108を説明する。
第1フック108は、被調整体102を係止する機能を有し、大凡平板状のフック形状をしている。具体的には、直線平板状の第1フック基部126-1、及び、当該第1フック基部126-1の一端部から当該第1フック基部126-1対し所定の角度をなす直状(三角形状)の第1フック部128-1によってV字形に形成されている。具体的には、第1フック基部126-1の第1フック部128-1に対する反対側の直状縁が第1筒体106の軸線に沿うようその周面に固定され、第1フック基部126-1と第1フック部128-1とによって囲われた三角形の凹部が第1フック溝130-1である。第1フック108は、第1筒体106と第1フック108とが一体に鍛造成形されることが好ましい。第1フック体110の強度を確保するためである。すなわち、第1筒体106から第1フック部128-1を斜めに突出する場合に比し、第1筒体106と第1フック基部126-1との接合長を長く取れるので、第1筒体106と第1フック基部126-1との締結強度を向上させることが出来るからである。
【0030】
次ぎに第2フック体116を説明する。
第2フック体116は第1フック体110と同一構造・同一形状であって、第1フック体110と反対向きに配置されている。すなわち、第2フック体116は第1フック体110と同一物であり、第2筒体112及び第2フック114を含んでいる。
最初に第2筒体112を説明する。
第2筒体112は、ねじ棒104が貫通することによって、当該ねじ棒104上にスライド可能、かつ、回転可能であると共に、付加的に、ねじ棒104上に付着したセメントCEを掻き落とす機能を有し、第1筒体106同様にねじ棒104の直径よりも大きい孔を形成した所定の長さを有する筒状体である。詳述すれば、中心部に所定直径、例えば、ねじ棒104の直径よりも約1ミリメートル大きな直径を有する第2貫通孔124-2が形成された所定の直径を有する円筒体であるが、所定の強度を有すれば外形及び第2貫通孔124-2の断面形状は真円に限定されないが、強度上及び製造のし易さを考慮した場合、円筒形が好ましい。
【0031】
次ぎに第2フック114を説明する。
第2フック114は、被調整体102を係止する機能を有し、大凡平板状のフック形状をしている。具体的には、直線平板状の第2フック基部126-2、及び、当該第2フック基部126-2の一端部から当該第2フック基部126-2対し所定の角度をなす直状(三角形状)の第2フック部128-2によってV字形に形成されている。具体的には、第2フック基部126-2の第2フック部128-2に対する反対側の直状縁が第2筒体112の軸線に沿うようその周面に固定され、第2フック基部126-2と第2フック部128-2によって囲われた三角形の凹部が第2フック溝130-2である。第2フック体116は、第2筒体112と第2フック114とが一体に鍛造成形されることが好ましい。第2フック114の強度を確保するためである。換言すれば、第2フック体116は第1フック体110と同一品を使用しているが、ねじ棒104に対しては反対向きに装着されている。具体的には、第1フック溝130-1と第2フック溝130-2とが向かい合うように対照に配置されている。対照とは、完璧な対照ではないが、対照に準じて配置される状態をも含んでいる。
【0032】
次ぎに第1ナット118を説明する。
第1ナット118は、第1フック体110のねじ棒104からの脱落を防止すると共に、ねじ棒104の他方の側へ推し進める機能を有し、本実施例1においては、第1フック体110に対し、第1フック溝130-1の開放側の反対側においてねじ棒104に螺合した六角ナット132である。六角ナット132は、少なくとも、ねじ孔134、及び、操作部136が形成され、ねじ孔134にねじ棒104がねじ込まれ、操作部136に六角スパナ等の工具を係止し、又は、手で握って回転させることにより、強固に締め付けることができる。したがって、第1ナット118はねじ孔134と操作部136を有すれば、六角ナット132に限定されない。例えば、四角ナット、蝶ナットを用いることができる。また、図11に示すように、係止孔付円筒ナット138を使用することができる。
【0033】
次ぎに係止孔付円筒ナット138を説明する。
係止孔付円筒ナット138は、所定の厚みを有する円盤140の中央にねじ孔142が形成され、操作部136として周面146に1カ所以上のフック穴144が形成されている。係止孔付円筒ナット138を、単にねじ棒104回りに回転させる場合、指先又は手で円盤140の周面146をつかんで回転させることができ、強力に締め付けた場合、図11に示すような、円盤140の周面146の大凡半周を外側から抱くように位置される弧状部148の先端に、円盤140の中心側へ突出し、かつ、フック穴144に係止可能な係止ピン150を有し、当該係止ピン150に対し、弧状部148の大凡反対側から円盤140に対し法線方向へ延在する梃子棒152を有する特殊工具154を用い、係止ピン150をフック穴144に係止した後、弧状部148を円盤140の周面146を囲うように宛って梃子棒152を矢印方向(時計回り方向)に押動することによって、梃子の原理で係止孔付円筒ナット138を大きな力で回すことができる。しかし、第1ナット118は、ねじ棒104に対し工具(手動工具又は電動工具)によって回転させることができる構成であることが好ましく、電動工具によって回転できることが最も好ましい。手で回すよりも大きな回転速度で回転させることができると共に、大きな回転トルクを作用させることができるからである。例えば、第1ナット118が六角ナットである場合、電動工具に六角ソケットを装着した後、当該六角ソケットを第1ナット118に係止して回転させる。
【0034】
次ぎに第1ワッシャ156を説明する。
第1ワッシャ156は、第1ナット118が第1筒体106の端面をこじらないようにする機能を有し、所定の厚みを有する円板体158の中央にねじ棒104が貫通する円形の透孔160が形成されている。円板体158、透孔160の形状は円形に限らず、矩形、楕円形、三角形状であってもよい。
第1ワッシャ156は、第1筒体106と第1ナット118との間に介設され、第1ナット118のねじ棒104に対する回転によって生じるねじ棒104の軸線方向の移動による押力は第1ワッシャ156を介して第1筒体106に伝達され、第1ナット118と第1筒体106の端面とは直接摺動しないので、第1ナット118によって第1筒体106の端面をかじることはない。しかし、第1ワッシャ156は必須の構成ではなく、第1ナット118によって直に第1筒体106の端面を押動することができる。
【0035】
次ぎに第2ナット120を説明する。
第2ナット120は、第1ナット118と同一の機能を有し、構成も同一である。
したがって、第1ナット118と同一部には同一符合を付し、説明は省略する。
【0036】
次ぎに第2ワッシャ162を説明する。
第2ワッシャ162も第1ワッシャ156と同一機能を有し、構成も同一である。
したがって、第1ナット118と同一部とは同一の符合を付し、説明は省略する。
【0037】
次ぎに第1ナット脱落防止手段164を説明する。
第1ナット脱落防止手段164は、第1ナット118がねじ棒104から脱落するのを防止する機能を有し、本実施例1においては、ねじ棒104の先端部のねじ山を潰して第1平坦部166が形成されている。しかし、第1ナット脱落防止手段164は、第1平坦部166に限らず、ロックナットを用いること、ねじ棒104の先端部のねじ谷に接着剤を固着させること、ねじ棒104の先端に径方向に貫通する貫通孔を設け、係止ピンを係止すること等、上記機能を発揮する構造を採用することができる。
第1平坦部166が形成されているため、第1ナット118をねじ棒104の脱落方向へ回転させた場合、ねじ棒104の先端部において、第1平坦部166のために第1ナット118はねじ棒104に対し回転できず、第1ナット118はねじ棒104から脱落出来ない。
【0038】
次ぎに第2ナット脱落防止手段168を説明する。
第2ナット脱落防止手段168は、第1ナット脱落阻止体164と同一の機能を有し、本実施例1においては第1ナット脱落防止手段164と同様に、ねじ棒104の他端部のねじ山を潰した第2平坦部170が形成されている。第2平坦部170によって、第2ナット120もねじ棒104の端部から脱落出来ない。
【0039】
以上の説明から明らかなように、実施例1の2点間距離調整装置100は、ねじ棒104上に第1フック体110の第1筒体106及び第2フック体116の第2筒体112が、第1フック溝130-1と第2フック溝130-2が互いに向かい合うと共に、ねじ棒104に対しスライドかつ回転可能に嵌合される。第1筒体106に対しねじ棒104の端部側、換言すれば、第1フック溝130-1の開放部に対し反対側において第1ワッシャ156が配置され、第1ワッシャ156に対し反第1フック溝130-1側に第1ナット118が螺合され、同様に、第2筒体112に対しねじ棒104の他端部側、換言すれば、第2フック溝130-2の解放部に対し反対側において第2ワッシャ162が配置され、第2ワッシャ162に対し反第2フック溝130-2側に第2ナット120が螺合され、その後、ねじ棒104の両端部が潰されて、第1平坦部166、第2平坦部170が形成される。そして、これらが組み立てられた状態で1個の2点間距離調整装置100として取引される。
【0040】
次ぎに、実施例1の2点間距離調整装置100の用法を図5をも参照して説明する。
2点間距離調整装置100は、通常、第1ナット118、第2ナット120がそれぞれねじ棒104に対し端部に位置するように第1ナット118、又は、第2ナット120を内包した六角ナットソケット(図示せず)を電動工具で回転させて位置させる。第1フック体110及び第2フック体116による被調整体102の2点間距離の調整範囲を最大にするためである。
本例において、被調整体102は楕円形リング172が連鎖されたチェーン174である。チェーン174の楕円形リング172の1つに、例えば、第1フック108を係止する。次いで第2フック114を下方の楕円形リング172に係止し、第1フック108と第2フック114との間のチェーン174が弛んだ状態にセットする。この状態において、例えば、便宜的に第1フック108を係止したA点と、第2フック114を係止したB点間の距離Lに依存し、換言すれば、ねじ棒104上の第1筒体106と第2筒体112との間の第1距離L1に依存している。A点とB点の2点間の距離Lを調整する場合、例えば、短縮するためには、第1ナット118又は第2ナット120の何れかを、第1フック108と第2フック114とが近づくように回転させることによって行う。例えば、第1ナット118を電動工具によって回転させ、ねじ棒104に対し下方へ移動させて鎖線位置へ移動させた場合、第1ワッシャ156を介して第1筒体106が下方へ移動されることから、第1筒体106と第2筒体112の間の距離が第1距離L1から第2距離L2に変更されるので、A点とB点との二点間の距離Lは、第3距離L3分、実質的に短縮(調整)される。本明細書において、「被調整体における2点間の距離が実質的に調整される」とは、被調整体102の全長は変更されないが、第1フック108と第2フック114が係止された被調整体102の間の距離が調整される結果、実質的に被調整体102の長さが変更されることを意味する。係止された第1ナット118が他の物体の影になって、回転させることができない場合、第2ナット120を回転させることでA点とB点の2点間の距離を調整できる。なお、2点間の距離を増加するように調整する場合、第1筒体106と第2筒体112とはねじ棒104の中央に寄せた状態でチェーン174に係止し、第1フック108と第2フック114とが離れる方向に第1ナット118又は第2ナット120を回転させて被調整体102のA点とB点の2点間距離を調整する。なお、被調整体102は、チェーン174の他、複数のリング状の係止輪を一体化したロープ、所定間隔(ランダム間隔を含む)でリング状の係止孔を配置したロープ等採用することができる。
【0041】
次ぎにねじ棒104に固着したセメントCEの除去について図6を参照して説明する。
ねじ棒104にセメントCEが固着した場合、第1ナット118又は第2ナット120を回転させて第1筒体106又は第2筒体112をねじ棒104に沿って進行させる。これによって、ねじ棒104と第1貫通孔124-1又は第2貫通孔124-2との隙間は極めて小さいので、第1筒体106又は第2筒体112の進行によって、当該固着したセメントCEは横方向から押される。この押力は、第1ナット118又は第2ナット120に加わる回転トルク、及び、ねじ棒104のねじの角度によって定まるため、電動工具程度の回転トルクであっても極めて大きな力になるため、固着セメントは横方向へ押圧力を受け、強固に固着している場合であっても、横方向へずらされてねじ棒104から脱落される。ねじ山間(谷部)にセメントが残った場合であっても、第1ナット118又は第2ナット120の進行によって谷間から押し出されて除去される。谷部のセメントが第1ナット118又は第2ナット120によって除去出来ずに、第1ナット118又は第2ナット120の回転がロックした場合、一度第1ナット118又は第2ナット120を逆回転させて回転可能にした後、再度除去方向に回転させて除去する。また、谷部に残ったセメントは、固着力が小さいので、ブラシ掛け等で除去することができる。
【実施例2】
【0042】
次ぎに実施例2を図7図9を参照して説明する。
本実施例2における2点間距離調整装置200は、実施例1の2点間距離調整装置100に対し第3ナット202及び第3ワッシャ204を追加した構成であるので、実施例1と同一部分には同一符合を付して説明を省略し、異なる構成を説明する。
【0043】
まず第3ナット202を説明する。
第3ナット202は、第2ナット120と共に、第2筒体112をねじ棒104に対し所定位置に固定する機能を有し、本実施例2においては、中央部に第1筒体106と第2筒体112との間のねじ棒104に螺合される第3ねじ孔206を有し、周面に工具係止部208が形成された第3六角ナット210である。第3六角ナット210も前述したナット同様に種々のナットを選択することができる。
【0044】
次ぎに第3ワッシャ204を説明する。
第3ワッシャ204は、第2筒体112の端面を第3ナット202(第3六角ナット210)がこじらないようにする機能を有し、本実施例2においては、第1ワッシャ156及び第2ワッシャ162と同一構成であって、円板212の中央に透孔(図示せず)が形成された平ワッシャが用いられている。第3ワッシャ204は、第2筒体112の端面と第3ナット202との間に介設されるため、第3ナット202の押圧力は、第3ワッシャ204を介して第2筒体112に伝達される。したがって、通常、第3ナット202を回転させた場合、第3ナット202と第3ワッシャ204とが滑って第3ワッシャ204と第2筒体112の端面との間では滑らない。
【0045】
実施例2に係る2点間距離調整装置200を用いる場合、第2フック体116はねじ棒104の端部に対し固定状態にされる。すなわち、第2筒体112が第2ナット120(第2ワッシャ162)と第3ナット202(第3ワッシャ204)とによって狭持されてねじ棒104に対し固定状態にされる。
通常の使用法は、実施例1における2点間距離調整装置100と同一であり、2点間距離を調整する場合、通常は、第1ナット118をねじ込んで第1フック体110を第2フック体116側へ近づけることにより行う。
第1ナット118が他の部材に邪魔されて回転することが出来ない場合、第2ナット120を締め込んで2点間距離を調整する。この場合、第2ナット120を締め込む前に、第3ナット202を回転させて第1フック体110側へ移動させた後、第2ナット120を締め込む。
付着セメントを除去する際は、第1ナット118を締め込んで第1筒体106をねじ棒104に沿って移動させることにより、付着セメントを実施例1と同様に除去することができる。また、第3ナット202をねじ棒104に対し回転させることにより、付着セメント除去することもできる。
【実施例3】
【0046】
次ぎに実施例3を図10を参照して説明する。
実施例3における2点間距離調整装置300は、実施例2の2点間距離調整装置200の第1フック108及び第2フック114がそれぞれ第1返部302-1又は第2返部302-2を形成した構成である。すなわち、第1フック部128-1及び第2フック部128-2の先端部において、第1フック基部126-1側へ突出する三角形状の第1返し突起304-1、第2返し突起304-2がそれぞれ形成され、第1フック部128-1又は第2フック部128-2に沿って開放側へ移動するチェーン174の移動を阻止する機能を有する。したがって、実施例3における2点間距離調整装置300は、被調整体102から脱落し難い利点を有する。
第1返部302-1又は第2返部302-2は、実施例1の2点間距離調整装置100の第1フック部128-1及び第2フック部128-2に形成することもできる。
さらに、第1返部302-1又は第2返部302-2は、第1フック部128-1及び第2フック部128-2の両方でなく、一方の第1フック部128-1又は第2フック部128-2に形成しても良い。
【符号の説明】
【0047】
102 被調整体
104 ねじ棒
106 第1筒体
108 第1フック
110 第1フック体
112 第2筒体
114 第2フック
116 第2フック体
118 第1ナット
120 第2ナット
124-1 第1貫通孔
124-2 第2貫通孔
164,168 ナット脱落防止手段
166、168 平坦部
202 第3ナット
304-1、304-2 返し突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11