特開2016-104915(P2016-104915A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-104915(P2016-104915A)
(43)【公開日】2016年6月9日
(54)【発明の名称】ストレッチ織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/08 20060101AFI20160513BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20160513BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20160513BHJP
【FI】
   D03D15/08
   D03D15/00 H
   D03D15/00 D
   D01F8/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2014-242799(P2014-242799)
(22)【出願日】2014年12月1日
(71)【出願人】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104950
【弁理士】
【氏名又は名称】岩見 知典
(72)【発明者】
【氏名】合田 大祐
【テーマコード(参考)】
4L041
4L048
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041BA09
4L041BA22
4L041BC20
4L041BD20
4L041CA06
4L041CA13
4L048AA20
4L048AA22
4L048AA27
4L048AA28
4L048AA30
4L048AB08
4L048AB11
4L048AC19
4L048BA02
4L048CA04
4L048CA11
4L048DA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルカリ溶解性の異なる2種類の繊維を用いて、布帛を得た後アルカリ処理により通気口を設けて、生地の劣化の少ない、通気性に優れたストレッチ織物の提供。
【解決手段】交絡数を20〜120個/m有する33〜330dtexのポリエステル系複合繊維を含む織物であって、生地の表裏へ貫通した穴が10〜30個/cmであるストレッチ織物。前記織物の通気量が16〜40cm/cm・secであるストレッチ織物。前記ポリエステル系複合繊維の一方の構成成分が、ポリトリメチレンテレフタレートであるストレッチ織物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交絡数を20〜120個/m有する33dtex以上、330dtex以下のポリエステル系複合繊維を含む織物であって、生地の表裏へ貫通した穴が10個/cm以上、30個/cm以下であるストレッチ織物。
【請求項2】
該ストレッチ織物の通気量が16cm/cm・sec以上、40cm/cm・sec以下である請求項1記載のストレッチ織物。
【請求項3】
前記ポリエステル系複合繊維の1方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2記載のストレッチ織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通気性に優れる織物の製造方法として、アルカリ溶解性が互いに異なる2種の繊維を用いて布帛を得た後、アルカリ減量加工を施し通気口を設け通気性を得る手段がとられていた(特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−89231号公報
【特許文献2】特開2013−79464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルカリ溶解性が互いに異なる2種の繊維を用いて布帛を得た後、アルカリ減量加工を施し通気口を設け通気性を得る手段においては、目ズレやアルカリによる生地の強度劣化を引き起こす可能性があった。
【0005】
本発明は衣服や資材において、通気性に優れたストレッチ織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に対して、糸加工、具体的には、糸条に交絡を付与し、その交絡された収束点が製織した後、タテ糸及びヨコ糸で隣接する糸−糸間に生地の表裏へ貫通した穴を形成せしめ、得られた織物に通気性を付与できるのではないかとの仮説の下、鋭意検討を行い、通気性且つストレッチ性に優れた織物を得られることを見いだしたものである。すなわち、交絡数を20〜120個/m有する33dtex以上、330dtex以下のポリエステル系複合繊維を含む織物であって、生地の表裏へ貫通した穴が10個/cm以上、30個/cm以下であるストレッチ織物である。
【発明の効果】
【0007】
通気性に優れたストレッチ織物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、交絡数を20〜120個/m有する33dtex以上、330dtex以下のポリエステル系複合繊維を含む織物であって、生地の表裏へ貫通した穴が10個/cm以上、30個/cm以下であるストレッチ織物である。
【0009】
本発明に用いるポリエステル系複合繊維は、一方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましく、他方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であることがより好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリエステル系複合繊維の繊度は、33dtex以上、330dtex以下である。かかる範囲であると、一般衣料向けだけでなく産業資材向けへ使用できるためである。
【0011】
本発明に用いるポリエステル系複合繊維の交絡数は、20〜120個/mであり、より高い通気性を得るためには60〜120個/mであることが好ましい。 本発明において用いられるポリエステル系複合繊維に交絡付与する手法としては、市販のエアー加工機もしくは仮撚り加工機を用いて、糸条を交絡ノズルまたは流体乱流ノズルにオーバーフィードさせながら圧縮空気を吹き付けることで交絡付与させることが好ましい。また、必要に応じ交絡付与後に糸染め加工してもかまわない。
【0012】
前記ポリエステル系複合繊維に用いられるポリトリメチレンテレフタレートとは、トリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルが好ましい。ここで主たるとは、前記以外のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよいことを表し、かかる割合は10モル%以下であることが好ましい。共重合可能な化合物として、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を用いることができる。
【0013】
前記ポリエステル系複合繊維に用いられるポリエチレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルが好ましい。ここで主たるとは、前記以外のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよいことを表し、かかる割合は10モル%以下であることが好ましい。共重合可能な化合物としては、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてのヒンダードフェノール誘導体などを添加してもよい。
【0014】
本発明のストレッチ織物のストレッチ方向は、製織のタテ糸方向もしくはヨコ糸方向のどちらか一方向の1wayストレッチでもよく、もしくはタテ糸/ヨコ糸の二方向の2wayストレッチでもよく、伸び方向、ストレッチ率に限定されるものではない。
【0015】
本発明のストレッチ織物の織物組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織など限定されるものではないが、高い通気性の効果が得るには平織が好ましい。
【0016】
本発明のストレッチ織物は、ポリエステル系複合繊維の交絡させた部分が収束点となり織物にした際に生地の表裏へ貫通した穴(以降、通気口と記すこともある)を形成する。ここで生地の表裏へ貫通した穴とは、織物のタテ糸及びヨコ糸の糸-糸間で交絡された収束点が隣接した部分、もしくは隣接した糸-糸のどちらかが交絡された収束点を有する際に生じる空域を指し、その空域の投影面における面積が0.01mm以上であるものを言う。本発明のストレッチ織物の通気量は16cm/cm・sec以上、40cm/cm・sec以下であることが好ましい。ここで通気量とはJIS L 1096:2010(A法フラジール法)で測定した通気量である。この通気性は、ポリエステル系複合繊維の繊度、交絡数、織物設計、織物組織で通気口の大きさや通気口数を適宜調整することにより調整することができる。
【0017】
本発明のストレッチ織物は、スポーツウェア、ホームウェア、コート、ブルゾン、ブラウス、シャツ、スカート、スラックス、裏地、室内運動着、パジャマ、寝間着、肌着、ユニフォーム、オフィスウェア、白衣などの衣料品や衣料資材や、カーテン、ブラインドなどの産業用資材としてもよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0019】
実施例中における品質評価方法は以下の方法を用いた。
【0020】
(通気性)
JIS L 1096:2010(A法フラジール法)に規定される方法で、フラジール試験器を用いて試験片を通過する空気の通気量(cm/cm・sec)を求めた。
【0021】
[実施例1]
ポリエステル系複合繊維として東レ・オペロンテックス株式会社製の“ライクラ(登録商標)”T400ファイバー167T−72fを用い、これに(株)AIKIリオテック社製エアーカバリング機にて該糸に80個/mの交絡を付与した。
【0022】
タテ糸にポリエチレンテレフタレート繊維56T−18f、ヨコ糸に前記“ライクラ(登録商標)”T400ファイバー167T−72f交絡数80個/mを配した平織物を製織し、タテ密度134本/2.54cm、ヨコ密度76本/cm、ストレッチ率35%のストレッチ織物を得た。
【0023】
得られたストレッチ織物は前記ヨコ糸に糸加工機を用いて交絡付与したところが収束されて織物の生地の表裏へ貫通した穴が26個/cm発現し、通気量31cm/cm・secの通気性に優れたものであった。
【0024】
[比較例1]
東レ・オペロンテックス株式会社製の“ライクラ(登録商標)”T400167T−72fに(株)AIKIリオテック社製エアーカバリング機による交絡付与しなかった以外は実施例1と同様に平織物を製織し、タテ密度122本/2.54cm、ヨコ密度74本/cm、ストレッチ率18%のストレッチ織物を得た。
【0025】
得られたストレッチ織物は実施例1よりタテ密度、ヨコ密度が少ないにも関わらず、15cm/cm・secで通気性が劣るものであった。