(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-104944(P2016-104944A)
(43)【公開日】2016年6月9日
(54)【発明の名称】地盤撹拌装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20160513BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-243196(P2014-243196)
(22)【出願日】2014年12月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040BA13
2D040EA01
2D040EA14
2D040EA15
2D040EA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地盤に円滑に挿入することができ、しかも構造が複雑にならない地盤撹拌装置を提供する。
【解決手段】地盤に挿入される支持体1と、この支持体下端部1aにおいて両側面から延出する回転軸2と、この回転軸2に取り付けられた一対の撹拌体30と、が備わる地盤撹拌装置であって、支持体下端部1aは両側面間の距離が狭まっており、撹拌体30は、回転軸2に取り付けられた基材3を介して取り付けられた撹拌爪取付台座とこの撹拌爪取付台座に取り付けられた撹拌爪34とを有し、撹拌爪取付台座は、回転方向一方において基材3より支持体1側に延在する一方横片31と、回転方向他方において基材3より支持体1とは反対側に延在する他方横片32と、これらの横片に跨る斜め縦片33とを有し、撹拌爪34は、横片31,32と斜め縦片33との交差部、及び斜め縦片33に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に挿入される支持体と、
この支持体の下端部において両側面から延出する回転軸と、
この回転軸の一端側及び他端側に取り付けられた一対の撹拌体と、
が備わる地盤撹拌装置であって、
前記支持体は、前記下端部において両側面間の距離が狭まっており、
前記撹拌体は、それぞれ
前記回転軸に取り付けられた基材と、
この基材に取り付けられた複数の単位撹拌体とを有し、
この複数の単位撹拌体は、回転方向に並び、
各単位撹拌体は、前記基材に取り付けられた撹拌爪取付台座とこの撹拌爪取付台座に取り付けられた撹拌爪とを有し、
前記撹拌爪取付台座は、
回転方向一方において、前記基材より前記支持体側に延在する一方横片と、
回転方向他方において、前記基材より前記支持体とは反対側に延在する他方横片と、
これら一方横片及び他方横片に跨る斜め縦片と、を有し、
前記撹拌爪は、
前記一方横片及び前記斜め縦片の交差部、
前記他方横片及び前記斜め縦片の交差部、
及び前記斜め縦片にそれぞれ取り付けられている、
ことを特徴とする地盤撹拌装置。
【請求項2】
前記一方横片は、前記基材より前記支持体とは反対側にも延在し、
前記他方横片は、前記基材より前記支持体側にも延在し、
相互に隣接する単位撹拌体の一方横片及び他方横片が、回転方向に並べられ、かつ一体化されて回転面が形成されている、
請求項1記載の地盤撹拌装置。
【請求項3】
支持体の下端面に、下方に向かって突出する掘削ビットが固定されている、
請求項1又は請求項2記載の地盤撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤撹拌装置に関するものである。特に、浅層や中層に位置する地盤を改良するのに好適な地盤撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の地盤撹拌装置としては、
図5や
図6に示すような、地盤撹拌装置Nが存在する。この地盤撹拌装置Nは、支持体101と、この支持体101の下端部に取り付けられた一対の撹拌体104とを有する。この一対の撹拌体104は、一方が支持体101の一方側方に、他方が支持体101の他方側方に配置されている。一対の撹拌体104は、通常、同一の回転軸回りに回転する構成とされている。また、一対の撹拌体104は、
図6に示すように、上下方向に適宜の間隔をおいて二段となるように取り付けられることもある。
【0003】
この地盤撹拌装置Nを使用して地盤を改良するにあたっては、例えば、撹拌体104が上下二段となるように取り付けられた場合を例に説明すると、まず、
図6の(A)に示すように、移動体たる自走式車輌XのブームXbの先端部に、支持体101の上端部を取り付け、ブームXbの先端部から地盤撹拌装置Nが吊り下げられた状態にする。次に、ブームXbを動かして自走式車輌Xから遠い位置で地盤撹拌装置Nを保持する。そして、
図6の(B)に示すように、撹拌体104を回転させつつ、ブームXbを下降させて地盤撹拌装置Nを地盤Gに挿入する。このとき、必要に応じて支持体101の先端部から下方へグラウト材等の改良材を噴射する。次に、
図6の(C)に示すように、ブームXbを動かして地盤撹拌装置Nを、垂直状態を保持したまま自走式車輌X側に引き寄せる。この過程でも、撹拌体104を回転させ、必要に応じて支持体101の先端部等から改良材を噴射する。撹拌体104の回転及び改良材の噴射により、地盤G及び改良材が撹拌・混合される。次に、地盤撹拌装置Nが自走式車輌Xの近くまで引き寄せられたら、
図6の(D)に示すように、ブームXbを動かして地盤撹拌装置Nを上方に引き上げる。そして、以上の操作を繰り返し行うことで、所望とする範囲の地盤Gを改良する。なお、本例では、地盤撹拌装置Nが自走式車両XのブームXbに取り付けられた形態を示したが、自走式車両XのブームXb以外の移動体に支持体101が取り付けられることもある。
【0004】
以上の地盤撹拌装置Nやこの装置Nを使用した地盤改良工法は、既に実施工の段階に入っており、良好な評価を得ている。しかるに、
図5中の拡大図(正面図)から明らかにように、この従来の地盤撹拌装置Nにおいては、支持体101が一対の撹拌体104の間に位置することになる。したがって、地盤撹拌装置Nを地盤Gに挿入するにあたっては、支持体101の下端部が地盤Gに対する抵抗となり、施工の円滑性を阻害しているとの指摘がある。この点、自走式車両XのブームXb等は、地盤撹拌装置Nを下方に強く押し付けることに適する装置というわけではないため、支持体101の下端部の抵抗も施工の円滑性に大きな影響がある。
【0005】
そこで、現在提案されている様々な地盤撹拌装置を検討すると、例えば、支持体に対して撹拌体が斜めに取り付けられた装置が存在する(例えば、特許文献1等参照。)。当初、このような装置であれば、支持体の下方の地盤が撹拌されるため、支持体の下端部の地盤に対する抵抗が大きな問題とならず、地盤撹拌装置の挿入を円滑に行うことができると思えた。しかるに、この地盤撹拌装置によると、斜めに取り付けられた撹拌体が地盤Gに対する抵抗となってしまい、結局、地盤撹拌装置の挿入を円滑に行うことができない。
【0006】
また、本出願人は、支持体の下端面に、下方に向かって突出し、かつこの突出方向を回転軸とする掘削ビットを備えた地盤撹拌装置を提案している(特許文献2参照)。この装置は、撹拌体を斜めに取り付けるものではないため、撹拌体が地盤に対する抵抗となることはなく、また、支持体の下方の地盤が掘削ビットによって撹拌されるため、支持体下端部の地盤に対する抵抗が大きな問題とならず、地盤撹拌装置の挿入を円滑に行うことができる。しかしながら、この地盤撹拌装置は、支持体の下端面という限られたスペースに掘削ビットを備えるものであり、また、掘削ビットを回転駆動するための部材・スペース等も必要になるため、装置の構造が複雑になるとの問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−227028号公報
【特許文献2】特開2005−171653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする主たる課題は、地盤に円滑に挿入することができ、しかも構造が複雑にならない地盤撹拌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、次の通りである。
(請求項1記載の発明)
地盤に挿入される支持体と、
この支持体の下端部において両側面から延出する回転軸と、
この回転軸の一端側及び他端側に取り付けられた一対の撹拌体と、
が備わる地盤撹拌装置であって、
前記支持体は、前記下端部において両側面間の距離が狭まっており、
前記撹拌体は、それぞれ
前記回転軸に取り付けられた基材と、
この基材に取り付けられた複数の単位撹拌体とを有し、
この複数の単位撹拌体は、回転方向に並び、
各単位撹拌体は、前記基材に取り付けられた撹拌爪取付台座とこの撹拌爪取付台座に取り付けられた撹拌爪とを有し、
前記撹拌爪取付台座は、
回転方向一方において、前記基材より前記支持体側に延在する一方横片と、
回転方向他方において、前記基材より前記支持体とは反対側に延在する他方横片と、
これら一方横片及び他方横片に跨る斜め縦片と、を有し、
前記撹拌爪は、
前記一方横片及び前記斜め縦片の交差部、
前記他方横片及び前記斜め縦片の交差部、
及び前記斜め縦片にそれぞれ取り付けられている、
ことを特徴とする地盤撹拌装置。
【0010】
(請求項2記載の発明)
前記一方横片は、前記基材より前記支持体とは反対側にも延在し、
前記他方横片は、前記基材より前記支持体側にも延在し、
相互に隣接する単位撹拌体の一方横片及び他方横片が、回転方向に並べられ、かつ一体化されて回転面が形成されている、
請求項1記載の地盤撹拌装置。
【0011】
(請求項3記載の発明)
支持体の下端面に、下方に向かって突出する掘削ビットが固定されている、
請求項1又は請求項2記載の地盤撹拌装置。
【0012】
(主な作用効果)
地盤に挿入される支持体が、下端部において両側面間の距離が狭まっていると、地盤に円滑に挿入することができる。また、両側面間の距離が狭まっていると、強度の不足が問題となるが、回転軸の一端側及び他端側に取り付けられた一対の撹拌体を上記本発明のように構成すると、支持体の下端部に加わる負荷が減り、強度の不足が問題とならなくなる。特に、請求項2記載の発明のように回転面が形成されていると、回転軸がぶれ難くなるため、強度の不足がよりいっそう問題とならなくなる。そして、本発明は、撹拌体の構成を工夫するに過ぎず、支持体の下端面に回転する掘削ビット等を備えるものではないため、構造が複雑にならない。つまり、支持体の下端面に備わる掘削ビットは、撹拌を期待するものではなく、挿入をより円滑にするためのものに過ぎないため、請求項3記載の発明のように、単に固定するのみで足り、構造が複雑にならない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、地盤に円滑に挿入することができ、しかも構造が複雑にならない地盤撹拌装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】単位撹拌体が回転方向に並んだ状態を示す展開図である。
【
図4】撹拌爪取付台座の一部で形成される回転面の説明図である。
【
図6】従来の地盤撹拌装置による地盤改良工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、本形態の地盤撹拌装置は、地盤Gに挿入される支持体1と、この支持体1の下端部1aにおいて両側面から延出する回転軸2と、この回転軸2の一端側及び他端側に取り付けられた一対の撹拌体30と、を有する。
【0016】
支持体1の下端部1aには、図示しない油圧モータ等の駆動源が備えられている。この駆動源によって回転軸2が軸心回りに回転し、この回転に伴って一対の撹拌体30が回転する。この点、駆動源を支持体1の上端部側に配置し、スプロケットや無端チェーン等の伝達手段を介して回転軸2を回転させることもできる。ただし、駆動源を支持体1の下端部1aに備えた方が、支持体1の下端部1aに加わる撹拌体30からの微振動が抑制され、支持体1の下端部1aに、瞬間的に大きな負荷が加わるおそれが低減される。なお、微振動それ自体は、支持体1に対して大きな負荷とならないが、他の振動と共鳴して大きな負荷となることがある。
【0017】
支持体1は、内部が空間となっている。この空間は、例えば、駆動源の制御経路、油圧モータの送油経路、上記伝達手段の収納空間、改良材の搬送路、等として利用することができる。ただし、図示はしないが、本形態では、改良材の搬送路を支持体1の外部に、当該支持体1に沿うように備えている。なお、支持体1は、内部に土砂等の異物が入り込まないように液密化されている。
【0018】
支持体1の下端部1aは、両側面間の距離L2が、他の部位における両側面間の距離よりも狭まっている。したがって、本形態の地盤撹拌装置は、地盤Gに円滑に挿入することができる。
【0019】
両側面間の距離L2は、例えば、60〜80mm、好ましくは70mmである。また、支持体1の他の部位における側面と、支持体1の下端部1aにおける側面と、の幅方向に関する離間距離L1は、好ましくは80〜100mm、より好ましくは85〜95mmである。この範囲であれば、支持体1の他の部位の地盤Gに突き当たる部位が、当該地盤Gに対して大きな抵抗となるおそれがない。したがって、改良する地盤の深度が深くなり、支持体1の幅を太くする必要がある場合は、支持体1を2段、3段と繋ぎ合せ、徐々に幅が変化する構造とするのが好ましい。この際、変化する幅は、上記離間距離L1と同じにすればよい。
【0020】
また、地盤Gに対する挿入をより円滑にするために、
図1及び
図2に示すように、支持体1の下端面に掘削ビット1xを固定することができる。この掘削ビット1xは、撹拌を期待するものではないため、回転させず、溶接等によって固定するのみでも足りる。したがって、地盤撹拌装置の構造を複雑にするものではない。
【0021】
次に、撹拌体30の形態例について、詳説する。
【0022】
(第1の形態)
第1の形態の撹拌体30は、
図1に示すように、回転軸2に取り付けられた基材3と、この基材3に取り付けられた複数の単位撹拌体とを有する。
【0023】
各単位撹拌体は、
図1に示すように、基材3に取り付けられた撹拌爪取付台座(31,32,33)と、この撹拌爪取付台座(31,32,33)に取り付けられた複数の撹拌爪34とを有する。
【0024】
撹拌爪取付台座(31,32,33)は、一方横片31、他方横片32、及び斜め縦片33で構成されている。一方横片31は、回転方向一方において基板3よりも支持体1側に、本形態では基板3から(基板3を起点に)支持体1側に延在する。また、他方横片32は、回転方向他方において基板3よりも支持体1とは反対側に、本形態では基板3から(基板3を起点に)、支持体1とは反対側に延在する。さらに、斜め縦片33は、一方横片31及び他方横片32に跨り、回転方向に対して斜めに配置されている。一方横片31、他方横片32及び斜め縦片33は、いずれも板状かつ帯状とされており、溶接等によって接合されている。
【0025】
撹拌爪34は、一方横片31及び斜め縦片33の交差部31A、他方横片32及び斜め縦片33の交差部32A、及び斜め縦片33にそれぞれ取り付けられている。一方横片31、他方横片32及び斜め縦片33に取り付けられる撹拌爪34は、それぞれ1つであっても、複数であってもよい。図示例では、一方横片31及び他方横片32に取り付けられた撹拌爪34が、それぞれ1つ、斜め縦片33に取り付けられた撹拌爪34が3つとされている。
【0026】
複数の単位撹拌体は、回転方向に並ぶ。この点については、後述する第2の形態を説明する際に、詳しく述べる。
【0027】
本形態によると、一対の撹拌体30から、それぞれ支持体1の下端部1aに対して、均等に、回転軸2を介して撹拌体30の回転に応じた弱い力が加わる。この弱い力によって支持体1の下端部1aに加わる微振動が抑制され、支持体1の下端部1aに、瞬間的に大きな負荷が加わるおそれが低減される。この点、撹拌体30の回転方向を逆方向とすると、一対の撹拌体30からは、それぞれ支持体1の下端部1aに対して、均等に、かつ回転軸2を介して引張る力が加わることになる。このような力によっても支持体1の下端部1aに加わる微振動が抑制される。ただし、支持体1に対して引張る力を加えるよりも押す力を加える方が、微振動の抑制には好ましいと考えられる。
【0028】
一方横材31の長さX及び他方横材32の長さYは、異なるものとすることもできるが、回転軸2の軸方向に不均衡な力が加わるのを防止するために、同一の長さとするのが好ましい。
【0029】
(第2の形態)
次に、第2の形態の撹拌体30について、詳説する。
第2の形態の撹拌体30も、基本構造は第1の形態の撹拌体30と同様である。
すなわち、
図2に示すように、回転軸2に取り付けられた基材3と、この基材3に取り付けられた複数の単位撹拌体とを有する。また、各単位撹拌体は、基材3に取り付けられた撹拌爪取付台座(31,32,33)とこの撹拌爪取付台座(31,32,33)に取り付けられた複数の撹拌爪34とを有する。さらに、撹拌爪取付台座(31,32,33)は、一方横片31、他方横片32及び斜め縦片33で構成されている。また、斜め縦片33は、一方横片31及び他方横片32に跨り、回転方向に対して斜めに配置されている。そして、撹拌爪34の配置、数等も第1の形態と同様である。
【0030】
複数の単位撹拌体は、展開状態を
図3に示すように、回転方向に並ぶ。特に本形態では、3つの単位撹拌体30X,30Y,30Zが並ぶ構造とされている。具体的には、第1の単位撹拌体30Xは、第1の一方横片31X、第1の他方横片32X及び第1の斜め縦片33Xで構成される。また、第2の単位撹拌体30Yは、第2の一方横片31Y、第2の他方横片32Y及び第2の斜め縦片33Yで構成される。さらに、第3の単位撹拌体30Zは、第3の一方横片31Z、第3の他方横片32Z及び第3の斜め縦片33Zで構成される。
【0031】
撹拌体30は、基材3及び1つの単位撹拌体のみで構成することもできるが、基材3及び複数の単位撹拌体で構成する方が好ましい。単位撹拌体は撹拌爪34が備わる部材であり、補修の必要が生じ易い部位である。したがって、単位撹拌体を複数とすることで補修を容易化することができる。また、単位撹拌体を複数としておけば、現場への搬送も容易になる。
【0032】
以上のように第2の形態の撹拌体30は、第1の形態の撹拌体30と基本構造は同じである。しかるに、以下の点が大きく異なる。
すなわち、一方横片31は、回転方向一方において基材3から支持体1側に延在すると共に、基材3から支持体1とは反対側にも延在する。また、他方横片32は、回転方向他方において基材3から支持体1とは反対側に延在すると共に、基材3から支持体1側にも延在する。つまり、一方横片31の長さ及び他方横片32の長さが、第2の形態における方が第1の形態におけるよりも長いものとなっている。そして、相互に隣接する単位撹拌体30X,30Y,30Zの一方横片31及び他方横片32は、
図4に示すように、回転方向に並べられ、かつ一体化されて回転面35が形成されている。この回転面35の存在により、回転軸がぶれ難くなるため、このぶれが他の振動と共鳴して支持体1の下端部1aに、瞬間的に大きな負荷が加わるおそれが低減される。
【0033】
(その他)
回転軸2は、通常、地盤Gの表面とほぼ平行(水平)となるように、支持体1の下端部1aにおいて支持体1の両側面から延出する状態となっている。
【0034】
回転軸2に取り付けられる基材3は、例えば、円盤状、十字形状、あるいは
図4に示すように、円盤部とこの円盤部から撹拌爪取付台座(31,32,33)に向かう延出部とを有する特殊形状等とすることができる。
【0035】
また、基材3は、一の部材から形成されていても、
図4に示すように、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。ただし、上記特殊形状とする場合は、基材3の延出部が、
図4中の(A)に示すように、基材3の円盤部からそのまま延出する状態とするよりも、切断、捻り等を適宜加えることによって、
図4中の(B)に示すように、方向が変えられて延出する状態とし、基材3の延出部及び斜め縦片33の接合部が、当該斜め縦片33の延在方向に沿う状態となるようにするのが好ましい。この形態によると、前述した支持材1の下端部1aに向かう力、あるいは撹拌体30を逆回転とした場合は引張る力が、支持体1の下端部1aに対して確実に加わり、微振動が確実に防止される。
【0036】
基材3は、各撹拌体30それぞれに対して、回転軸2の軸方向に異なる複数の箇所に備えることもできる。ただし、
図1や
図2に示すように、一箇所のみに備える方が好ましい。この点、基材3は、地盤G中の硬い石等とぶつかると、回転軸2に対して軸方向への力を及ぼすことになる。しかるに、この軸方向への力は、支持材1の下端部1aに対しても及び、しかも当該力の方向は、支持体1の強度が弱まっている方向である。したがって、基材3は、特に板状とする場合は、可及的に一箇所とするのが好ましい。
【0037】
撹拌爪取付台座に取り付けられた複数の撹拌爪34は、それぞれ撹拌体30の回転方向と直交する方向(径方向)に突出する。
【0038】
本形態の撹拌体30は、撹拌爪34が回転軸2から離れた位置にあり、また、回転軸2と撹拌爪取付台座との間が空間となっているので、撹拌範囲が広いにも関わらず、回転抵抗が少ないとの利点を有する。したがって、本形態の撹拌体30によると、支持体1の下端部1aに対して大きな負荷がかかり難い。
【0039】
図6中に(参考)として示すように、撹拌体30は、上下方向に適宜の間隔をおいて備えられた下段撹拌体30X及び上段撹拌体30Yで構成することもできる。なお、この場合、前述した撹拌体30は、下段撹拌体30Xに対応する。
【0040】
この点、従来の形態においても撹拌体が上下二段に備えられた形態は存在したが、その主な趣旨は、撹拌をより十分に進めるためであった。しかるに、本形態においては、上段撹拌体30Yによって撹拌を進める分、下段撹拌体30Xによる撹拌を弱める趣旨である。つまり、下段撹拌体30Xによる撹拌を弱めて支持体1の下端部1aに加わる負荷を低減する趣旨である。したがって、上段撹拌体30Yは、支持体1の側面間距離が狭まっていない部位に備えるのが好ましい。なお、当然、下段撹拌体30Xによる撹拌を弱めることなく、撹拌をより十分に進める趣旨で上段撹拌体30Yを備えることもできる。また、撹拌体30は、上下方向に三段以上の複数段備えることもできる。さらに、本形態の地盤撹拌装置を使用して地盤を改良する方法は、従来の地盤撹拌装置Nについて、
図6を参照しつつ説明したのと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、特に、浅層に位置する地盤を改良するのに好適な地盤撹拌装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…支持体、1a…支持体の下端部、2…回転軸、3…基材、30…撹拌体、31…一方横片、32…他方横片、33…斜め縦片、34…撹拌爪、35…回転面、G…地盤。