【解決手段】ワイヤは、基板上の3次元構造の中に機械的に付着される。本発明は、また、基板に付着された形状記憶合金ワイヤを備えたデバイスに関するものであり、ワイヤは基板上の3次元構造の中に機械的に付着されている。
ワイヤを基板に付着させる方法において、前記ワイヤは前記基板の一部である3次元構造に対し機械的に付着され、前記3次元構造は1つ以上のクランプ構造を含み、前記方法は、
前記ワイヤの一部と前記3次元構造との間に摩擦力又はアンカを生じさせる工程と、
力を加えることによって前記ワイヤを断ち切る工程と、を備え、
前記ワイヤはアンカによって第1の付着点においてアンカ構造に対し機械的に付着され、前記ワイヤと前記基板上の前記3次元構造との間に摩擦力を生じさせることによって第2の付着点において1つ以上のクランプ構造に対し付着される、方法。
前記フリー・エア・ボールは、前記3次元構造の中にスクイズ・フィットされ、ワイヤの一端に付着された別のフリー・エア・ボールに結合され、それによって断ち切られる、請求項9に記載の方法。
基板に付着されたワイヤを備えたデバイスにおいて、前記ワイヤは前記基板上の3次元構造に対し機械的に付着されるように構成されており、前記基板は1つ以上のクランプ構造を含む固定対を備え、前記ワイヤは少なくとも前記固定対によって前記基板に対し機械的に固定されワイヤ・ボンダのボンド・キャピラリと加えられる力とによって断ち切られるように構成されており、前記ワイヤは第1の付着点においてアンカ構造に対しアンカされ、前記基板上に生じる摩擦力によって第2の付着点において1つ以上のクランプ構造に対し付着される、デバイス。
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたワイヤ・ボンダであって、基板の一部である3次元構造に対し機械的に付着されるワイヤを供給するためのボンド・キャピラリを備え、1つ以上のクランプ構造を備える、ワイヤ・ボンダ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】3つのステップでの非等方性と等方性とが組み合わされた深堀反応性イオン・エッチングによって製造されたアンカ構造のSEM画像。
【
図4】あるクランプ形状についての拡大図を伴うクランプ固定のSEM画像。
【
図6】SMAワイヤの位置合わせ精度のための白色光干渉測定データを伴うグラフ。
【
図7】(a)提示されたワイヤ固定アプローチの機械的安定性の検証を示した、赤い破線の輪郭線が高温状態にあるチップを表す断面図、(b)提示されたワイヤ固定アプローチの機械的安定性の検証を示した、摂氏70度のホットプレート上で僅かに付勢されたデバイスの画像、(c)提示されたワイヤ固定アプローチの機械的安定性の検証を示した、摂氏90度でのさらなる付勢状態にあるデバイスの画像。
【
図8】基板における、SMAワイヤをフックインするためのフックイン構造を準備する概念の概略的な図。
【
図9】SMAワイヤの先端のスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図10】非等方性エッチングによって製造されたシリコン基板におけるV溝の中へのSMAワイヤの先端のスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図11】弾性変形可能な構造の中へのSMAワイヤの先端のスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図12】機械的および電気的相互接続のために基板上に金属ライナを伴うSMAワイヤの先端のスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図13】機械的および電気的相互接続のために基板上に金属ライナを伴うV溝の中へのSMAワイヤの先端のスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図14】機械的および電気的相互接続のために基板上に金属ライナを伴う弾性変形可能な構造の中へのSMAワイヤの先端のスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図15】フリー・エア・ボールの接着固定の概略的で単純化された図。
【
図16】V溝の中へのフリー・エア・ボールの接着固定の概略的で単純化された図。
【
図17】フリー・エア・ボールのスナップ固定の概略的で単純化された図。
【
図18】バネ荷重を伴うフリー・エア・ボールのスナップ固定の概略的で単純化された図。
【
図19】SMAワイヤのスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図20】非等方性エッチングによって製造されたシリコン基板におけるV溝の中へのSMAワイヤのスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図21】弾性変形可能な構造の中へのSMAワイヤのスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図22】機械的および電気的相互接続のために基板上に金属ライナを伴うSMAワイヤのスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図23】機械的および電気的相互接続のために基板上に金属ライナを伴うV溝の中へのSMAワイヤのスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図24】機械的および電気的相互接続のために基板上に金属ライナを伴う弾性変形可能な構造の中へのSMAワイヤのスクイズ・フィットの概略的で単純化された図。
【
図25】金属ライナを伴うスクイズ・フィット構造とSMAワイヤとの上にボール・ボンドを備えた追加的な固定の概略的で単純化された図。
【
図26】直線的なトレンチにおけるSMEワイヤの接着固定の概略的で単純化された図。
【
図27】Vの形状の溝におけるSMEワイヤの接着固定の概略的で単純化された図。
【
図28】クランプ・サポートとして第2の基板を備えた(a)直線的および(b)Vの形状のトレンチにおけるSMEワイヤの接着固定の概略的で単純化された図。
【
図29】クランプ・サポートとしての第2の基板の金属ベースのボンディングを伴うスクイズ・フィット構造の概略的で単純化された図。
【
図30】ワイヤのスナップ固定の概略的で単純化された図。
【
図31】バネ荷重を伴うワイヤのスナップ固定の概略的で単純化された図。
【
図32】ワイヤ・ボンダを用いてSMAワイヤを組み込むための方法スキーム。
【
図33】ワイヤ・ボンダを用いてSMAワイヤを組み込み、ピストンによりワイヤをスクイズするための方法スキーム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、ウエハ・レベルでの組込概念を図解している
図1を参照して、本発明について説明する。SMAワイヤは、アンカ構造とクランプ構造との補助によって、機械的に固定される。それぞれの固定対は、ウエハ・エッジの両側に配置される。
【0013】
基本的な組込概念が、
図1に示されている。SMAワイヤの組込は、ウエハ・レベルの組込とチップ・レベルの組込とに分けられる。ウエハ・レベルの組込は、シリコン・ウエハ上におけるSMAワイヤの位置合わせと固定とを組み合わせたものである。次いで、最終的な機械的および電気的組込は、アクチュエータ自体を形成するために、チップ・レベルで実行することができる。
【0014】
図2は、組込フローの断面図を示している。第1に、フリー・エア・ボールが、電気放電によって形成される(a)。次に、このボールが、そのアンカ構造の中にアンカされる。SMAワイヤ(直径37.5μm)が与えられ、全体のウエハ領域を跨いでその第2の固定構造まで導かれる(b)。SMAワイヤは、複数のシリコン・カンチレバーの間にクランプされ、ボンド・キャピラリと大きなボンド力とによって断ち切られることによって、最終的に切断される(c)。
【0015】
ウエハ・レベルでは、SMAワイヤは、ウエハ全体における高度な配置精度をもって、画定された位置に2つの異なる機械的構造を用いて付着される。ボールウェッジ・ワイヤ・ボンディング工程に基づき、
図1aに示されているように、フリー・エア・ボールが形成され、その次に第1の組込構造にアンカされる。SMAワイヤは、SMAワイヤが機械的に付着されている様子を示す
図1bに示されているように、固定され、クランプ構造の方向にウエハをわたって導くことができる。このウエハ・レベルの組込によって、第2のステップにおいて、チップ・レベルでのさらなる付着も可能になる。しかし、本発明の焦点は、ウエハ・レベルの組込の設計および開発に存在する。
【0016】
この組込概念を用いて、ウエハの全体に、高い配置精度でSMAワイヤを設置することができる。さらに、ワイヤ・ボンダを用いると、この組込工程の高いスループットおよび高い再現性が得られる。SMAワイヤの完全な組込が室温で行われるので、典型的には摂氏90度という高い温度で生じるSMAの変態を引き起こすことが回避できる。従って、このようにして、予め歪んだSMAワイヤの組込が可能になる。さらに、この組込概念はCMOS互換であるから、微小電気デバイスとマイクロアクチュエータとの組込に対する可能性も提供する。
【0017】
例えば、ワイヤ・フックおよびクランプ構造を100mmのシリコン基板上に製造することができることが示される。ロクスヘッドら(N. Roxhed et al.)による出版物である“A method for tapered deep react
ive ion etching using a modified Bosch process”, JMM, vol. 17, pp. 1087−1092, (2007)には、両方のタイプの構造を、一連の非等方性および等方性のDRIEのステップによって実現可能であることが示されている。両方の組込構造のエッチングは、STS
ICPエッチング反応器の中で実行された。
【0018】
この例では、両方の固定構造の製造には、リソグラフィおよびDRIEの一工程がそれぞれ要求される。第1のリソグラフィは、スピン・コーティングによって塗布される標準的なフォトレジストを用いて実行された。第2のフォトレジストの塗布は、第1のDRIE工程によって作成された深堀のエッチング構造が完全に保護されることを確実にするために、希釈されたレジストのスプレイ・コーティングによって実行された。最終ステップとして、フォトレジストの残留分はすべて、プラズマ・アッシングによって除去された。
【0019】
本発明は、
図1aおよび
図3に示されているように、ワイヤの始点を固定するアンカ構造を提案している。このアンカ構造は、ランド領域とアンカ部分という2つの機能部分から構成される。ランド領域により、SMAボールをアンカ構造の中に下ろし、それに続いて、隣接するアンカ部分の中に固定することが可能になる。エッチングの幾何学的形状が、SMAボールの適切なアンカリングのためには重要である。SMAボールのアンカリングは、アンカ構造自体の特定のアンダーカット・エッチ・プロファイルによって、達成される。第1に、非等方性トレンチがエッチングされ、それに、垂直方向の側壁のパッシベーションが続く。次に、等方性エッチングにより、非等方性エッチ・プロファイルの下側にアンダーカットが作成される。
【0020】
ワイヤ端部のためのシリコン構造によって、2つの機能部分、すなわち、クランプ構造とカットオフ領域とが組み合わされる。
図1bおよび
図4には、1対の対向する垂直カンチレバーを有するクランプ構造が示されている。2対の対向する垂直カンチレバーが、SMAワイヤを、それらの間でクランプする。第1の対は、SMAワイヤを固定して位置合わせする。第2の対は、断ち切るために、SMAワイヤを安定化させる。クランプ構造の非等方性エッチ・プロファイルは、短い等方性エッチングによって実現するカンチレバーの上方部分における小さなチャンファを含む。このチャンファにより、
図4に示されているように、クランプにおけるSMAワイヤの高さが一定になることが保証される。
【0021】
ワイヤを組み込むために、デルボテック(Delvotec)5410などの半自動のワイヤ・ボンダを用いることが可能である。これは、直径が37.5μmであり変態温度が摂氏90度であるフレキシノール(Flexinol(登録商標))などの、市販されている予め歪んだNiTiのSMAワイヤと共に用いることができる。このワイヤは既に予め歪んでいるために、ワイヤに予め歪みを与える特別のツールは必要でなかった。
図2に示されているワイヤの組込は、ボンド・キャピラリの先端において局所的にワイヤを融解させる電気放電によって生じるフリー・エア・ボールを形成することで開始する。SMAワイヤの端部における液体の金属が丸くなり、フリー・エア・ボールが形成される。ヘリウム雰囲気においてエレクトリカル・フレーム・オフ(EFO)が実行されるが、これは、TiNi合金は、グロー放電による急速な融解の間に、空気中で酸化する傾向を有するからである。これについては、ゴリクズカら(T. Goryczka et al.)による“Characterization of nitrided/oxidized layers covering NiTi shape memory alloy”, Solid State Phenomena, vol. 54, pp.
151−154, (2007)を参照のこと。次に、フリー・エア・ボールはランド領域の中に下げられ、それに続いて、その隣接するアンカ部分の中に引っかけられる。ワイヤ・ボンダを用いることによって、SMAワイヤは、ウエハをわたってクランピング構造に配置され、そこで対向するカンチレバーの対間に押し込まれる。最後に、SMAワイ
ヤは、ボンド・キャピラリと大きなボンド力を用いてワイヤを断ち切ることによって、切断される。
【0022】
SMAワイヤのためのこの組込アプローチは、チップ・レベルでの広範囲で異なる組込方法を開き、この場合、それらの方法を使用して、例えばまた、SMAワイヤを個々のチップに固定するために、ポリマ固定を用いて、またはクランプ構造を用いることによって、高性能のアクチュエータを製造することができる。
【0023】
図3は、3つの後続のステップにおいて非等方性および等方性の深堀反応性イオン・エッチングを組み合わせることによって製造されたアンカ構造を示している。アンダーエッチングされた(面外)側壁構造とテーパ状(面内)の設計との両方によって、SMAワイヤが安全にそのアンカに固定される。この設計は、不均一に形成されたおよび/または不均一なサイズを有するフリー・エア・ボールに対して非常に寛容性の度合いが高く、従って、SMAワイヤの信頼性の高いアンカリングが保証される。
【0024】
図4は、1つのクランプの外観についての拡大図によるクランプ固定のSEM画像である。ワイヤが、ワイヤ・ボンダの補助によって、カンチレバーの対向する対の間に押し込まれることが提示されている。4つの同様のクランプを、それぞれのワイヤの固定に用いることができる。
【0025】
図4に示されている50×500×220μmというカンチレバーの寸法を備えたクランプ構造がSMAワイヤを機械的に最も安定的に固定することが発見された。ワイヤをクランプ構造の中にスナップするには、xxx mNの力が必要であった。
【0026】
ワイヤ組込の最後のステップはワイヤの断ち切りであり、これは、ステッチ・ボンドと同様に行うことができる。しかし、xxx mNという非常に大きなボンド力と超音波とを用いることの結果としてワイヤの直線的な切断が生じ、また、従来型のワイヤ・ボンディングとは対照的に、
図5に示されているように、変形やワイヤの表面へのマイクロ溶接は生じない。このことはまた、従来のワイヤ・ボンディングによってSMAワイヤを固定することは適切でないことを示している。
【0027】
大きなボンド力と超音波とを用いることの結果として、ワイヤの直線的な切断が生じ、また、従来型のワイヤ・ボンディングとは対照的に、
図5に示されているように、変形やワイヤの表面へのマイクロ溶接は生じない。
【0028】
提示されているウエハ・レベルの組込方法は、また、チップ・レベルでのSMAワイヤの位置合わせを含む。この組込方法の配置精度は、光学プロファイルメータであるWyko NT9300を用いて分析された。
図6に示されているように、理想的な幾何学的なアンカからクランプへの中心線からの面内のワイヤ配置のズレと、ワイヤから基板すなわちチップ・レベルの距離との両方が、決定された。サンプルである、直径が37.5μmで長さが75mmであるSMAワイヤが、100mmのシリコン基板において組み込まれた。面内の平均偏差は4.19±4.22(σ)μmであり、最大で13.9μmである。
図6に示されているように、基板までのSMAワイヤの面外の距離は、平均で、15.6±4.5(σ)μmであり、最大で23.2μmである。これは、例えば後続のステップで、Ni電気メッキを用いて実行されうるSMAワイヤのチップ・レベルでの固定の設計にとって重要な測定値である。クラウジら(D. Clausi et al.)による“Wafer−level mechanical and electrical integration of SMA wires to silicon MEMS
using electroplating”, MEMS Proc. (2011)を参照のこと。
【0029】
さらに、アンカおよびクランプ構造の機械的堅牢性の基本的な評価が、単純なアクチュエータを実装することによって実行された。このアクチュエータは、冷温状態にリセットされたときには長さが100mmで幅が2mmであり、付勢時には2つの平行な組み込まれた75mmの長さのSMAワイヤを備えている、厚さが300μmのシリコン・カンチレバーに基づく。エネルギ入力は、熱的な接触を強化するためにアクチュエータの一方の側がその上に固定されているホットプレートによってもたらされる。
【0030】
図7aは、付勢状態とアイドル状態との両方におけるアクチュエータの断面図を図解している。
図7bは半付勢状態における、
図7cは完全付勢状態におけるアクチュエータを示している。どのSMAワイヤ固定要素でも、ワイヤ・データ・シートによると200mNであるSMAワイヤによって生成される力に耐えることが判明している。例えば、ダイナロイ社(DYNALLOY, Inc.)による“Technical characteristics of flexinol actuator wires”, Datasheet, F1140Rev H, pp. 6を参照のこと。なお、付勢は、失敗なく数百回実行された。
【0031】
図6は、また、長さが75mmで直径が37.5μmのSMAワイヤの位置合わせの精度のための白色光干渉計の測定データを示している。この図面に示されているように、面外の測定値(青色の直線グラフ)が、ワイヤと基板との間の距離を決定し、面内の測定値(赤色の破線グラフ)が、理想的な幾何学的なアンカからクランプへの中央線からの横方向のワイヤの配置ズレを決定する。
【0032】
提示されているワイヤ固定アプローチの機械的安定性を検証するため、
図7に図解されているように、2本の長さ75mmのSMAワイヤが、3×100mmのサイズを有するシリコン・チップの上に平行に組み込まれている。
図7aは、断面図であり、赤色の破線の輪郭線が高温状態にあるチップを表している。
図7bは、温度が摂氏70度のホットプレートの上の僅かに付勢されたデバイスの画像を示し、
図7cは、摂氏90度でのさらなる付勢状態にあるデバイスを示している。
【0033】
標準的なワイヤ・ボンダを用いた形状記憶合金ワイヤのウエハ・レベルでの組込が、以上で、成功裏の内に示された。半自動式のワイヤ・ボンダを用いてSMAワイヤの組込が行われたが、この作業では、優れた配置精度を達成することができた。光学的なパターン認識および位置合わせシステムを用いた全自動式のワイヤ・ボンダを用いることにより、潜在的には、これらの結果をさらに改善することができ、大量生産のために本技術を実装することが可能になる。SMAワイヤのアンカおよびクランプ操作は優れた堅牢性を示し、これは、この組込概念をチップ/アクチュエータ・レベルに応用可能であることを示している。
【0034】
次に、形状記憶合金ワイヤの電気的接続に関するものだけではなく、機械的固定のための異なる複数の実施形態を示す。
ワイヤは、ワイヤ・ボンダのボンド・キャピラリを通過して与えられる。ワイヤを引っ張ることを可能にするためには、ワイヤの先端を基板上に固定しなければならない。この概念では、ワイヤの先端を変形させることにより、ワイヤの先端の直径が、残りのワイヤおよびボンド・キャピラリの直径よりも大きくなるようにする。これにより、ワイヤの先端をフックインすること、または、ワイヤを基板における押込嵌合(スクイズ・フィット)構造の中に押し込むこと(スクイズ)が可能になる。
【0035】
図8には、
図1、2および3との関係で既に示した1つの概念が図解されている。
図8aではフックイン構造が基板に形成され、次に
図8bでフリー・エア・ボールが形成され
て、
図8cで基板の構造の中にフックインされ、
図8dでは、SMAワイヤを、ボンド・キャピラリを通過して引っ張ることが可能になる。
【0036】
別の概念は、
図9に概略的に図解されているように、基板上のスクイズ・フィット構造の中へのフリー・エア・ボールのスクイズ・フィットを用いたアンカ動作である。SMAワイヤ(901)がボンド・キャピラリ(902)を通過して与えられ、フリー・エア・ボール(903)が形成される。基板(904)では、その直径がフリー・エア・ボールの直径よりも小さくなるように、トレンチ(905)が形成される(
図9a)。フリー・エア・ボールの直径は、ボンド・キャピラリの直径よりも大きく、それにより、フリー・エア・ボールを基板のトレンチの中にスクイズすることが可能になる(
図9b)。SMAワイヤの先端は、基板のトレンチの中へのフリー・エア・ボールのスクイズ・フィットによってアンカされる(
図9c)。
【0037】
図10に概略的に図解されているように、例えば特別の工程でシリコン基板をエッチングするときに得られるようなV形状のトレンチの中にフリー・エア・ボールをスクイズ・フィットするのにも、同じ概念が適している。SMAワイヤ(1001)は、ボンド・キャピラリ(1002)を通過して与えられて、フリー・エア・ボール(1003)が形成される。基板(1004)では、V形状のトレンチ(1005)が形成される(
図10a)。フリー・エア・ボールの直径は、ボンド・キャピラリの直径よりも大きく、それにより、基板のトレンチの中にフリー・エア・ボールをスクイズすることが可能になる(
図10b)。SMAワイヤの先端は、基板のトレンチの中へのフリー・エア・ボールのスクイズ・フィットによって、アンカされる(
図10c)。
【0038】
図11には、スクイズ・フィット概念の別の変形が概略的に図解されており、この場合は、SMAワイヤの直径の変動を許容する変形可能なクランプ構造が基板に形成される。SMAワイヤ(1101)が、ボンド・キャピラリ(1102)を通過して与えられ、フリー・エア・ボール(1103)が形成される。基板(1104)では、変形可能なクランプ構造(1105)が形成される(
図11a)。フリー・エア・ボールの直径はボンド・キャピラリの直径よりも大きく、それにより、基板における変形可能な構造の中にフリー・エア・ボールをスクイズすることが可能になる(
図11b)。クランプ構造は、フリー・エア・ボールのスクイズの間に弾性変形し(
図11b)、それにより、SMAワイヤの直径の変動に適応し、それらをしかるべき位置に保持することになる(
図11c)。
【0039】
図9〜
図11に概略的に図解されているすべての概念は、機械的固定が実行されるのと同時に、SMAワイヤの電気的接触を可能にするように適応させることができる。これにより、単純な接触と、変換温度を超える温度までSMAワイヤをジュール加熱することとが可能になる。
図12〜
図14に、この概念が概略的に図解されている。SMAワイヤ(1201、1301、1401)は、ボンド・キャピラリ(1202、1302、1402)を通過して与えられ、フリー・エア・ボール(1203、1303、1403)が形成される。基板(1204、1304、1404)上では、トレンチ(1205、1305)または変形可能なクランプ構造(1405)が形成される。最後に、金属膜(1206、1306、1406)が基板の上に積層される(
図12a、13a、14a)。フリー・エア・ボールの直径はボンド・キャピラリの直径よりも大きく、それにより、基板のトレンチの中にフリー・エア・ボールをスクイズすることが可能になる(
図12b、13b、14b)。スクイズ動作をする間、SMA上の自然酸化物が破壊され、SMAは基板上の金属と直接に接触する。従って、SMAに、金属膜を介して電気的に接触すること(1207、1307、1407)が可能になる(
図12c、13c、14c)。
【0040】
図9〜
図14に図解されているように、金属ライナと共におよび/または金属ライナを伴わずにスクイズ・フィットを用いる代わりに、フリー・エア・ボールとワイヤとをトレ
ンチの中に接着的にアンカするために、基板におけるトレンチを接着剤で充填することができる。
図15および
図16には、
図9と類似の直線的なトレンチについては
図15を用いて、
図10に類似のV形状のトレンチについては
図16を用いて、この概念が図解されている。SMAワイヤ(1501、1601)がボンド・キャピラリ(1502、1602)を通過して与えられ、フリー・エア・ボール(1503、1603)が形成される。基板(1504、1604)には、直線的な(1505)またはV形状の(1605)トレンチが形成され、次に、これらは、接着剤(1506、1606)で部分的に充填される(
図15a、
図16a)。フリー・エア・ボールの直径はボンド・キャピラリの直径よりも大きく、これにより、基板のトレンチにおける接着剤の中にフリー・エア・ボールをスクイズすることが可能になる(
図15b、
図16b)。フリー・エア・ボールは接着剤に埋め込まれ、接着剤が硬化され(1507、1607)、それによりフリー・エア・ボールをアンカする(
図15c、
図16c)。
【0041】
スクイズ・フィットおよび接着剤によるアンカリングとは別に、フリー・エア・ボールを内部にスナップするために、スナップイン構造を製造することができる。
図17には、この概念が図解されている。SMAワイヤ(1701)がボンド・キャピラリ(1702)を通過して与えられて、フリー・エア・ボール(1703)が形成される。基板(1704)においてトレンチ(1705)が形成され、基板の上により薄い層が形成されて(1706)、これがトレンチ(1705)を部分的に被覆するが、トレンチの中央に開口を有しており、このことにより、スナップイン構造(1707)が作成される(
図17a)。フリー・エア・ボールの直径は、ボンド・キャピラリの直径よりも大きく、それにより、トップ層(1705)の開口を通過してフリー・エア・ボールを基板におけるトレンチの中に押し込むことが可能になる(
図17b)。トップ層は、フリー・エア・ボールをしかるべき位置にスナップ・バックし(1707)保持する(
図17c)。
【0042】
図17に概略的に図解されている概念の変形として、トップ層におけるスナップ構造に対してフリー・エア・ボールを押しつけるバネをトレンチの中に提供することがある。
図18には、この概念が概略的に図解されている。SMAワイヤ(1701)がボンド・キャピラリ(1702)を通過して与えられ、フリー・エア・ボール(1703)が形成される。基板(1704)においては、トレンチ(1705)が形成され、基板の上により薄い層が形成されて(1706)、これがトレンチ(1705)を部分的に被覆するが、トレンチの中央に開口を有しており、このことにより、スナップイン構造(1707)が作成される(
図18a)。トレンチ(1705)の底部には、弾性変形可能な層(1808)が形成される。フリー・エア・ボールを、スナップイン構造を通過してスクイズした後で、フリー・エア・ボールが変形可能な層(1808)を圧縮する(
図18b)。ボンド・キャピラリを除去すると、弾性変形した層が、フリー・エア・ボールをスナップイン構造の中に押し込むのであるが、スナップイン構造は、弾性変形した層によって生成される力に耐えることができるだけの十分な強度がある(
図18c)。
【0043】
フリー・エア・ボールを用いてワイヤの先端を固定した後で、ワイヤはボンド・キャピラリを通過して引っ張られ、基板をわたって次のクランプ構造までスパンされる。このクランプ構造において、ワイヤはクランプされ、従って、
図9〜
図18に示されている概念はすべて適応可能である。
【0044】
図19〜
図21には、SMAワイヤのスクイズ・フィッティングに適応されたスクイズ・フィット方式が概略的に図解されている。ワイヤ・ボンダを用いて、SMAワイヤ(1901、2001、2101)が、基板(1903、2003、2103)に形成されているトレンチ(1902、2002、2102)の上方に配置される。ここで、トレンチの直径は、SMAワイヤの直径よりも小さい(
図19a、
図20a、
図21a)。
図19および20には、直線的なトレンチとV形状のトレンチとのそれぞれとのスクイズ・フィ
ッティングが図解されている。
図21は、
図11に示されている概念に基づいていて、SMAワイヤの様々な直径を許容する、基板における変形可能なクランプ構造(2105)という特徴を示している。ワイヤは、ピストン(1904、2004、2104)を用いて、トレンチおよび/または変形可能なクランプ構造の中にスクイズされる。ここで、ピストンは、例えば、ウエハ・ボンダにおけるワイヤおよび第2の基板の上に押しつけられる第2の基板でありうる(
図19b、
図20b、
図21b)。次にピストンが取り除かれるが、
図9、
図10および
図11に示されている概念と同じ原理に従い、ワイヤはトレンチの中に残る(
図19c、
図20c、
図21c)。
【0045】
図19〜
図21に概略的に図解されている概念は、機械的固定が実行されるのと同時にSMAワイヤの電気的接触を可能にするように適応可能である。これにより、SMAワイヤの単純な接触と変換温度よりも高くジュール加熱することとが可能になる。
図22〜
図24には、この概念が概略的に図解されている。SMAワイヤ(2201、2301、2401)は、基板(2203、2303、2403)に形成され金属ライナ(2204、2304、2404)で被覆されているトレンチ(2202、2302、2402)の上に配置されている。トレンチの直径は、SMAワイヤの直径よりも小さい(
図22a、
図23a、
図24a)。
図22および
図23には、それぞれ、直線的およびV形状のトレンチとのスクイズ・フィッティングが図解されている。
図24は、
図11および
図21に示されている概念に基づいていて、SMAワイヤの様々な直径を許容する基板における変形可能なクランプ構造(2407)という特徴を示している。ワイヤは、ピストン(2205、2305、2405)を用いて、トレンチおよび/または変形可能なクランプ構造の中にスクイズされる。ここで、ピストンは、例えば、ウエハ・ボンダにおけるワイヤと第2の基板との上に押しつけられる第2の基板でありうる(
図22b、
図23b、
図24b)。スクイズの間に、SMA上の自然酸化物が破壊され、SMAは基板上の金属と直接に接触する。これにより、SMAは、金属膜を介して電気的に接触されうる(2206、2306、2406)(
図22c、
図23c、
図24c)。
【0046】
図22から
図24に示されているクランプ構造上に金属ライナを用いる概念は、
図25に図解されているように、ボール・ボンドにより改善することができる。
図22〜24の最終構造の上の金属に、複数のフリー・エア・ボールが結合され、クランプ構造の中へのワイヤのクランピングを機械的にサポートする。SMAワイヤ(2501)は、ボンド・キャピラリ(2502)を通過して与えられ、フリー・エア・ボール(2503)が形成される(
図25のa、b、cの左側)。フリー・エア・ボールがクランプされたワイヤ(2504)と基板(2506)上の隣接する金属ライナ(2505)との上に結合される(
図25b)。次いで、ワイヤは、高いボンドエネルギ(2507)を用いて切断される(
図25c)。
【0047】
図15〜
図16に図解されていた概念と同様に、基板におけるトレンチは、ワイヤをトレンチに接着的にアンカする接着剤を用いて充填することができる。
図26および
図27にはこの概念が概略的に図解されているが、
図26は直線的なトレンチの場合であり、
図27はV形状のトレンチの場合である。SMAワイヤ(2601、2701)は、基板(2603、2703)に形成され接着剤(2604、2704)を用いて部分的に充填されているトレンチ/溝(2602、2702)の上方に配置されている(
図26a、
図27a)。ワイヤは、ピストン(2605、2705)を用いて、トレンチにおける接着剤の中にスクイズされる。ここで、ピストンは、例えば、ウエハ・ボンダにおけるワイヤと第2の基板との上に押しつけられる第2の基板でありうる(
図26b、27b)。次いで、ワイヤは、接着剤の中に埋め込まれ、接着剤は硬化され(2606、2706)、それにより、ワイヤをアンカする(
図26c、27c)。
【0048】
図26および
図27に図解されている接着アンカの概念は、ワイヤのクランプをサポー
トする接着ウエハ・ボンディングと組み合わせることができる。
図28に、直線的およびV形状のトレンチのいずれに対しても同様であるこの概念が図解されている。SMAワイヤ(2801)は、基板(2804)に形成され接着剤(2804)を用いて部分的に充填されているトレンチ/溝(2802、2803)の上方に配置される。ワイヤは、接着剤(2806)で被覆されワイヤと第1の基板(2803)との上に押しつけられる第2の基板(2805)を用いて、トレンチにおける接着剤の中にスクイズされる。次に、すべての接着剤が硬化され、ワイヤは接着剤とその上にある第2の基板との両方によってアンカされる。このようなアプローチは、金属ライナを有するクランプ構造を用いるスクイズ・フィットにも適している。
図29には、この概念が図解されている。ワイヤ(2901)は、第1の基板(2904)における金属ライナ(2902)を有するトレンチ(2903)の上方に配置される。ワイヤは、金属(2906)で被覆されワイヤと第1の基板(2904)との上に押しつけられる第2の基板(2905)を用いて、金属ライナを有するトレンチ中にスクイズされる。次いで、第2の基板が、その金属を用いて、第1の基板上の金属に結合される。これにより、SMAは、金属膜を介して電気的に接触されることが可能であり、クランプは結合された第2の基板によってサポートされる。
【0049】
図17および
図18に図解されている概念と同様に、ワイヤを中にスナップするために、スナップイン構造を製造することができる。
図30は、この概念を概略的に図解している。基板(3001)にトレンチ(3002)が形成され、基板上には、トレンチを部分的に被覆するがトレンチの中央に開口を有するより薄い層が形成され(3003)、それにより、スナップイン構造(3004)が作成される。SMAワイヤ(3005)は、スナップイン構造の上方に配置される(
図30a)。ワイヤは、ピストン(3006)を用いて、トップ層の開口を通過し基板のトレンチの中へスクイズされる。なお、ピストンは、例えば、ワイヤとウエハ・ボンダの第2の基板とに押しつけられる第2の基板でありうる(
図30b)。トップ層は、ワイヤをスナップ・バックし(3007)、しかるべき位置に保持する(
図30c)。
【0050】
図30に概略的に図解されている概念の変形として、トップ層におけるスナップ構造に対してワイヤを押しつけるバネをトレンチの中に提供することがある。
図31には、この概念が概略的に図解されている。基板(3101)において、トレンチ(3102)が形成され、基板の上により薄い層が形成されて(3103)、これがトレンチを部分的に被覆するが、トレンチの中央に開口を有していることにより、スナップイン構造(3104)が作成される。トレンチの底部には、弾性変形可能な層(3105)が形成される(
図31a)。ワイヤ(3106)を、ピストン(3107)を用いてスナップイン構造を通過させてスクイズした後では、ワイヤが変形可能な層(3108)を圧縮する(
図31b)。ピストンを除去すると、弾性変形した層が、ワイヤをスナップイン構造の中に押し込むのであるが、スナップイン構造は、弾性変形した層によって生成される力に耐えることができるだけの十分な強度がある(
図31c)。
【0051】
図32および
図33は、ワイヤ・ボンダを用いたSMAワイヤの組込の処理スキームを示している。
図32におけるフローは、第1の固定がフリー・エア・ボールをアンカすることによって提供される方法を図解している。次に、それ以後に要求される固定は、すべて、ワイヤ・ボンダを用いてワイヤをクランプ構造の中にクランプすることによって、実行される。あるラインにおける最後のクランプ構造の後では、ワイヤは、基板の表面への高エネルギのウェッジ/ステッチ・ボンドによって切断される。必要な場合には、これらのステップは、さらに多くのワイヤを組み込むために反復することができる。そうでない場合には、ワイヤは組み込まれ、さらに処理されうる。
【0052】
図33のフローは、第1の固定がフリー・エア・ボールをアンカすることによって提供される方法を図解している。次に、ワイヤがラインにおけるすべてのクランプ構造をわた
ってスパンされ、最終的には、ワイヤは、基板の表面への高エネルギのウェッジ/ステッチ・ボンドによって切断される。必要な場合には、これらのステップは、さらに多くのワイヤを配置するために反復することができる。すべてのワイヤがしかるべき位置にある場合には、ピストンを用いて、これらすべてのワイヤは、下位にあるクランプ構造の中にスクイズされる。クランピングの強度が十分である場合には、基板をさらに処理することができる。そうでない場合には、クランプ構造のワイヤの上に追加的なボール・ボンドを配置することができるし、または、スクイズの間に、第2の基板をワイヤおよび第1の基板の上に、結合することができる。
【0053】
本発明は、上述したおよび図解されている例示的な実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で修正が可能であることを理解すべきである。
ワイヤを基板に付着させる方法において、前記ワイヤは前記基板の一部である3次元構造に対し機械的に付着され、前記3次元構造は1つ以上のクランプ構造を含み、前記方法は、
前記ワイヤの一部と前記3次元構造との間に摩擦力又はアンカを生じさせる工程と、
力を加えることによって前記ワイヤを断ち切る工程と、を備える、方法。
前記フリー・エア・ボールは、前記3次元構造の中にスクイズ・フィットされ、ワイヤの一端に付着された別のフリー・エア・ボールに結合され、それによって断ち切られる、請求項7に記載の方法。
基板に付着されたワイヤを備えたデバイスにおいて、前記ワイヤは前記基板上の3次元構造に対し機械的に付着されるように構成されており、前記基板は1つ以上のクランプ構造を含む固定対を備え、前記ワイヤは少なくとも前記固定対によって前記基板に対し機械的に固定されワイヤ・ボンダのボンド・キャピラリと加えられる力とによって断ち切られるように構成されている、デバイス。