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▶ ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-105721(P2016-105721A)
(43)【公開日】2016年6月16日
(54)【発明の名称】セルロース系材料
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/32 20060101AFI20160520BHJP
【FI】
   A24B15/32
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-20408(P2016-20408)
(22)【出願日】2016年2月5日
(62)【分割の表示】特願2013-520213(P2013-520213)の分割
【原出願日】2011年7月19日
(31)【優先権主張番号】1012090.5
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】GB
(71)【出願人】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ディートリッヒ、デビッド ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、エドワード デニス
(72)【発明者】
【氏名】マカダム、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】コールマン、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ウィフィーン、ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウッドコック、ドミニク コンラッド
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BA80
4B043BC20
4B043BC22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】材料およびそれが使用される製品に悪影響を与えることのない増量された煙希釈剤を含むセルロース系材料を提供する。
【解決手段】煙希釈剤が添加されたセルロース系材料を提供し、少なくともある程度の煙希釈剤がセルロース系材料の細胞構造内に保持され、煙希釈剤がセルロース系材料中、選択的にセルロース系材料上にセルロース系材料の乾式重量基準で5%以上の量で保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の煙希釈剤を細胞構造内にそして選択的にその表面に有するセルロース系材料であって、前記煙希釈剤の重量がセルロース系材料の乾式重量基準で5%以上であることを特徴とするセルロース系材料。
【請求項2】
前記セルロース系材料は喫煙品処理装置での使用に際して好適な水分量を有することを特徴とする請求項1記載のセルロース系材料。
【請求項3】
前記セルロース系材料がタバコ材であることを特徴とする請求項1または2記載のセルロース系材料。
【請求項4】
煙希釈剤が、タバコ製品に使用される際にタバコ材の細胞構造内に保持されることを特徴とする請求項3記載のセルロース系材料。
【請求項5】
煙希釈剤が、タバコ製品に使用される際にタバコ材の表面に保持されることを特徴とする請求項3記載のセルロース系材料。
【請求項6】
前記タバコ材が、固体葉柄、刻み乾燥葉柄、蒸気で処理された葉柄、刻み葉身、茎、DIET、再生タバコ、刻みブレンドおよびこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項3乃至5いずれか1項記載のセルロース系材料。
【請求項7】
前記タバコ材が刻み乾燥葉柄であることを特徴とする請求項6記載のセルロース系材料。
【請求項8】
前記煙希釈剤の融点が約95°C未満であることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のセルロース系材料。
【請求項9】
煙希釈剤が水不溶性または水難溶性の液体であることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載のセルロース系材料。
【請求項10】
煙希釈剤が グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、およびミリスチン酸
イソプロピルからなる群のいずれか1つ以上の化合物であることを特徴とする請求項9記載のセルロース系材料。
【請求項11】
煙希釈剤を細胞構造内にそして選択的にその表面に有するセルロース系材料の製造方法。
【請求項12】
煙希釈剤供給システムの使用を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
煙希釈剤供給システムが、煙希釈剤をセルロース系材料に加える前および/または加える際に、熱処理、真空処理、液体含浸処理、水蒸気処理または真空フリーズドライからなる群から選択される1つ以上の処理をセルロース系材料に対して行うことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
煙希釈剤供給システムがセルロース系材料を実質的にその水分量が減少するように処理することを特徴とする請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
煙希釈剤がビヒクルに含まれるまたは混合されることを特徴とする請求項11乃至14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ビヒクルが水、アルコールもしくは液体または気体の二酸化炭素であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
煙希釈剤がセルロース系材料に保持される前は水溶液またはエマルジョンの形体であることを特徴とする請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
水溶液またはエマルジョンが高せん断混合を含む方法によって製造されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
煙希釈剤が連続噴霧法を使用して細胞構造に添加されることを特徴とする請求項11乃至18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
煙希釈剤がバッチ式混合法を使用して細胞構造に添加されることを特徴とする請求項11乃至18いずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1乃至10いずれか1項記載のセルロース系材料を含む喫煙品。
【請求項22】
紙巻きタバコであることを特徴とする請求項21記載の喫煙品。
【請求項23】
請求項1乃至10いずれか1項記載のセルロース系材料または請求項11乃至20いずれか1項記載の方法で製造されたセルロース系材料を他のセルロース系材料または喫煙品構成成分と混合することを含む喫煙品の製造方法。
【請求項24】
喫煙品製造における請求項1乃至10いずれか1項記載のセルロース系材料または請求項11乃至20いずれか1項記載の方法で製造されたセルロース系材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の煙希釈剤を含むセルロース系材料(タバコなどの)、このようなセルロース系材料の調製方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼系タバコ製品または紙巻きタバコなどの喫煙品は、使用の際にタバコおよび/または他の充填材の不完全燃焼から発せられる煙を発生する。「主流煙」なる用語は、喫煙材ロッドを通過し、フィルター端部を介して生じる気体および粒状物の混交物(エアロゾル)を言う。主流煙は、喫煙品の着火された領域を介して吸引される煙を含み、通常、「タール」、ニコチンおよび一酸化炭素(CO)などの成分を含む。このような成分は、当業界では「煙送出物」として知られている。
【0003】
紙巻きタバコ煙の選択ろ過を向上させるなどの煙送出物を減少させるために多くの方策が取られてきた。
【0004】
また例えば、紙巻きタバコなどの喫煙品の喫煙材に充填材、特に非燃焼性充填材を含有させることが知られている。そのような充填材としては、白雲石、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、およびアルミナなどの無機材およびスターチ、セルロース類、ペクチン類およびアルギン酸塩類などの有機充填材または充填材のバインダーとして作用すると当業界で知られている他の材料などがある。
【0005】
しかしながら、このような充填材には、喫煙者に受け入れられないような喫煙品の煙の味および風味を変えてしまうという欠点がある。
【0006】
紙巻きタバコなどの喫煙品に希釈剤を含有させることが知られている。希釈剤は、喫煙中に気化し、エアロゾル形態の主流煙に移行する化合物である。希釈剤は、一般には実質的にそのままの状態で煙に移行する。従って煙の他の成分(タバコ含有喫煙品の場合、タバコ由来の成分)は、この希釈剤によって「希釈される」。
【0007】
このような煙希釈剤は、粉などの固体形体で含有させることができ、セルロース系材料または充填材と簡単に混合される。しかしながら、このような粉は、喫煙品を作製するためのその後の処理において失われやすい。
【0008】
これとは別に、煙希釈剤を液体またはゲルの形体で加えてもよく、これはセルロース系材料または充填材に噴霧される、もしくは混合される、またはセルロース系材料または充填材にコートされ、これにより乾燥後もこれら材料の希釈剤の量は、変わらなくなる。煙希釈剤は、適当な溶媒などの揮発性の液体と組み合わせて、充填材またはタバコ材に噴霧される。溶媒は蒸発し、タバコ材または充填材の表面に煙希釈剤が残る。
【0009】
しかしながら、これらの方法では、目的とする材料の表面だけを希釈剤が覆うことになってしまう。結果としてセルロース系材料または充填材の表面に存在する煙希釈剤は、喫煙品を作製するためのその後の処理中に悪影響を受ける可能性が高い。このように希釈剤を含有させることに関して、希釈剤がセルロース系材料の表面特性に影響を与え、例えば表面が粘着質になって、材料の処理に重大な悪影響を及ぼし、凝集しやすくなり、自由に流れなくなってしまうという問題がある。
【0010】
喫煙品に組み込まれる喫煙材に混入される煙希釈剤の量は可能な限り多い方が望ましい
。また煙希釈剤が喫煙材の処理において問題とならないように添加するのが望ましい。
【0011】
「処理」なる用語は、燃焼系タバコ製品の製造に使用される当業者に知られているあらゆる方法の態様を意味する。例えば、セルロース系材料のブレンドおよび切断並びに喫煙品の製造などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の同等のセルロース系材料と比較して、材料およびそれが使用される製品に悪影響を与えることのない増量された煙希釈剤を含むセルロース系材料を提供することが望まれている。例えば、喫煙品の喫煙材の構成材料は、最小限の粘着性を有し、自由流動性であるのが理想的である。これにより材料を扱いそして処理しやすくなる。これに加えて、セルロース系材料中または上に煙希釈剤を加えるおよび煙希釈剤が存在することによって、喫煙品の風味および味に重大は影響を与えないようにすることが望ましい。
【0013】
本発明の1つの利点は、煙希釈剤を含有するセルロース系材料を含み、喫煙材の所望の特性を維持する喫煙品を提供することである。
【0014】
本発明には煙の希釈を最適化する際の適応性を向上させる含有量の範囲で煙希釈剤を含むセルロース系材料を提供する方法を提供するという別の利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様では、煙希釈剤が添加されたセルロース系材料を提供し、少なくともある程度の煙希釈剤がセルロース系材料の細胞構造内に保持され、煙希釈剤がセルロース系材料中、そして選択的にセルロース系材料上にセルロース系材料の乾式重量基準で5%以上の量で保持される。
【0016】
第2の態様では、本発明の第1の態様によるセルロース系材料の調製方法を提供する。
【0017】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様によるおよび/または本発明の第2の態様による方法で調製されたセルロース系材料を含む喫煙品が提供される。
【0018】
本発明の第4の態様では、第1の態様によるセルロース系材料を1つ以上の他のセルロース系材料、および/または他の喫煙品構成成分と混合することを含む喫煙品の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第5の態様では、喫煙品の製造において本発明の第1の態様によるセルロース系材料の使用を提供する。
【0020】
当業者にとっては当然のことながら、煙送出物の所望の減少を達成するために充分な量の煙希釈剤をセルロース系材料に含有させることと、特に喫煙品製造装置に問題を生じずに使用できるセルロース系材料、即ち紙巻きタバコ製造装置に接着しない、または製造装置の邪魔にならないように充分な自由流動性を有するセルロース系材料を提供することを両立させなければならない。このような両立は、本発明は、セルロース系材料の表面が影響を受けずに望ましくない粘着性および凝集を生じさせない程度に多くの希釈剤で処理されたセルロース系材料を含有させることができるので、本発明によって簡単に行なわれる。
【0021】
本明細書中で使用する「セルロース系材料」なる表現は、セルロースを含むあらゆる材料を意味する。その材料は、タバコ材、例えば、葉柄、葉身、ダスト、再生タバコ、また
はこれらの混合物であってもよい。好適なタバコ材料として次の種が挙げられる、バージニアまたは熱風乾燥タバコ、バーレータバコ、オリエンタルタバコ、またはタバコ材をブレンドしたもの。タバコは、ドライアイス膨張タバコ(DIET)などの膨張させたものでもよく、押し出しなどの他の手段で処理されたものであってもよい。葉柄タバコを予備処理してもよく、未処理であってもよく、また例えば、固体葉柄(SS)、刻み乾燥葉柄(SDS)、蒸気で処理された葉柄(STS)またはこれらのあらゆる組あわせであってもよい。好ましくは開孔構造を有するタバコを希釈剤担体として使用する。
【0022】
本明細書中で使用する「細胞構造内」なる用語は、煙希釈剤がセルロース系材料の細胞の細胞壁中もしくは細胞壁内にまたはセルロース系材料の隣接する細胞間に位置することを意味する。「保持される」なる用語は、少なくともある程度の煙希釈剤がセルロース系材料の細胞構造内に保持されるおよびブレンドおよび喫煙材ロッド内へ組み込むなどの喫煙品に含有されるセルロース系材料が受ける通常の処理条件を経てセルロース系材料の表面に接着することを意味する。理論に拘束されることなく、セルロース系材料細胞構造中に煙希釈剤があることによって、希釈剤が含浸した材料の「自由流動性」を促進し、材料が低凝集性になりやすくなる。
【0023】
特定の実施態様において、セルロース系材料の細胞構造内にそして選択的にセルロース系材料の表面に保持される煙希釈剤の重量は、セルロース系材料の乾式重量基準で5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上または50%以上である。
【0024】
特定の実施態様では、セルロース系材料はSDSである。
【0025】
これとは別の実施態様では、セルロース系材料は裁断された葉身またはDIETである。DIETはタバコ細胞構造を膨張させる処理を受ける。このことはDIETがその細胞構造内により多くの希釈剤保持されるおよび/または細胞構造内に希釈剤が浸透しやすくなるという利点を有する。
【0026】
セルロース系材料は、従来の喫煙品処理装置で使用するために好適な量の水分を含むのが好ましい。さらにセルロース系材料は、好ましくは通常の喫煙品製造装置に使用する際に好適な稠度を有する。例えば、好ましくはセルロース系材料は、自由流動性であり、紙巻きタバコ製造装置に付着せず、よって製造を妨害するようなことはない。
【0027】
このような装置で使用されるセルロース系材料の好適な水分量は、約20%未満である。従って、好ましくは本発明のセルロース系材料は、20%を超えない水分を含み、より好ましくはセルロース系材料の水分量は、18%を超えない、約15%を超えない、または約12%を超えない。
【0028】
本明細書中で使用する「煙希釈剤」および「希釈剤」は、喫煙材が燃焼し、喫煙品が消費される際に煙送出物を減少させる役割を果たす喫煙品内に混入される材料を意味する。煙希釈剤は、喫煙材の喫煙品に混入させるには好適である。
【0029】
希釈剤は、少なくとも1種のエアロゾル形成剤であり、これは例えば、ポリオールエアロゾル発生剤、または非ポリオールエアロゾル発生剤であってもよく、好ましくは非ポリオールエアロゾル発生剤である。これは室温で固体でも液体でもあってもよいが、室温で液体であることが好ましい。好適なポリオールは、ソルビトール、グリセロール、およびプロピレングリコールなどのグリコール類またはトリエチエレングリコールなどである。好適な非ポリオールは、一価アルコール、高沸点炭化水素、乳酸などの酸類およびジアセチン、トリアセチン、クエン酸トリエチルまたはミリスチン酸イソプロピルなどのエステ
ル類である。
【0030】
好ましくは煙希釈剤は、約110℃未満、105℃未満、100℃未満、95℃未満、90℃未満または85°C未満の融点を有する。
【0031】
本発明において煙希釈剤は、好ましくはグリセロール、トリアセチン、クエン酸トリエチルまたはミリスチン酸イソプロピルである。
【0032】
同じまたは異なる割合で希釈剤を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
これらの物質のいくつかは、煙希釈剤として以外の目的で可燃性タバコ製品に含有されることが知られており、例えば、トリアセチンおよびジアセチンは、非ポリオールエアロゾル発生剤として喫煙品に従来使用されており(下記特許文献1)、TEGDA、トリアセチンおよびグリセロールは、可塑剤として知られている。グリセロールは、タバコの吸湿性および機械的特徴を向上させることができるので、タバコに湿潤剤として一般に使用されている。下記特許文献2には、タバコに4から15%の範囲でグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはジエチレングリコールなどの湿潤剤が充填され、グリセロールは、シート材の重量で5−20%の範囲で喫煙品のエアロゾル発生剤として使用されており(例えば、下記特許文献3参照)、またグリセロールも煙のろ過を向上させるために使用されている(下記特許文献4、5および6)。
【0034】
煙希釈剤は、本発明によるセルロース系材料内に室温で固体または液体の形体で存在してもよい。
【0035】
いくつかの実施態様では、煙希釈剤は実質的に水溶性の材料である。別の実施態様では煙希釈剤は水不溶性または水難溶性材料である。また別の実施態様では、希釈剤は非水性溶媒に可溶であってもよい。
【0036】
セルロース系材料に希釈剤を加える従来の方法では、セルロース系材料の表面に希釈剤がコートされてしまう。一方、本発明は、少なくともある程度の煙希釈剤をセルロース系材料の細胞構造に浸潤させる方法を提供する。
【0037】
好ましい実施態様では、煙希釈剤は、好ましくは細胞構造内に希釈剤を浸透させやすい含浸法によってセルロース系材料の細胞構造内そして選択的にセルロース系材料の表面に配置される。
【0038】
本発明による方法は、セルロース系材料に煙希釈剤を加える前、加える際または加えた後に特定の条件を使用することおよび/またはセルロース系材料に希釈剤と共に加えられる1つ以上のビヒクルを使用することを含む。
【0039】
いくつかの実施態様では本発明の方法は、煙希釈剤を加える前または加える際にセルロース系材料に1つ以上の処理工程を行うことを含む。これらの処理工程は、希釈剤が加えられる際に希釈剤のセルロース系材料への浸透を高めるためのものである。例えば、セルロース系材料に乾燥処理および/またはその中に存在する空気を放出する1つ以上の処理を行ってもよい。セルロース系材料に少なくともいくつかの細胞を破裂させる処理を施して、塞がれてしまう可能性のある細胞内部に希釈剤が加えられた際に希釈剤が入り込めるようにする手段を提供してもよい。
【0040】
乾燥処理および/またはセルロース系材料から空気を取り除く処理工程は、熱処理、真空処理、液体含浸、水蒸気処理、加圧された液体含浸、真空フリーズドライおよび超臨界
流体の使用などがある。
【0041】
熱処理は、セルロース系材料を加熱して絶対乾燥させることを含む。この処理工程によって膨張を利用して空気が放出される。
【0042】
真空処理は、真空を利用してセルロース系材料から空気を放出することを含む。
【0043】
液体含浸は、冷たいセルロース系材料に熱い液体を加える、または熱いセルロース系材料に冷たい液体を加えて、細胞壁を軟化させ、液体の注入によって細胞内の空気を除去しやすくする。液体と材料の温度差は、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100°C、またはそれ以上であってもよい。
【0044】
加圧された液体含浸では、加圧下で冷たいセルロース系材料に熱い液体が加えられる、または熱いセルロース系材料に冷たい液体が加えられる。またこの処理は、加圧含浸前に真空での予備処理を行い、その後所望の水分量に到達するまで、含浸された材料を真空乾燥することを含んでもよい。細胞内の空気は、強制的な液体注入によって取り除いてもよい。
【0045】
水蒸気処理は、セルロース系材料の細胞壁を軟化させるために蒸気を加えること、および蒸気の注入によって空気を取り除くことを含む。
【0046】
真空フリーズドライは、セルロース系材料を絶対乾燥させ、細胞から空気を除去するために使用してもよい。
【0047】
また空気は、超臨界流体(例えば、CO)を注入して、その後膨張させてセルロース系材料の細胞から取り除いてもよい。
【0048】
好ましい実施態様では本発明の方法では、少なくとも2つの処理工程を使用してもよい。
【0049】
好ましい実施態様では本発明の方法は、セルロース系材料の乾燥および細胞空気を一部放出する機能を併せ持った処理工程でセルロース系材料を処理することを含む。
【0050】
セルロース系材料を処理することによって、セルロース系材料の乾燥および乾燥工程による細胞空気の一部放出の効果の組み合わせの結果として煙希釈剤がセルロース系材料の細胞構造に浸透しやすくなる。煙希釈剤を溶液または懸濁液の状態で加えることによって、煙希釈剤が乾燥したセルロース系材料の細胞内に細胞壁の毛細湿潤の結果として入り込むようになる。
【0051】
セルロース系材料を加熱を含む処理工程で処理することは、本発明のいくつかの実施態様では好ましい。細胞内の空気が熱処理後の冷却中に収縮するので、熱処理された細胞内に煙希釈剤が引き込まれることになる。
【0052】
本発明の方法は、刻まれた葉身、刻まれたブレンド、SDS、STSまたはDIETなどの予備処理されたセルロース系材料であるセルロース系出発材料に利用してもよい。このようなセルロース系材料を使用する場合、本発明の方法は、好ましくは予備処理されたセルロース系材料の加熱を含む処理工程を含み、これによりセルロース系材料の細胞構造内に煙希釈剤が浸透また含浸しやすくなる。
【0053】
熱処理を含む本発明の実施態様において、セルロース系材料は、好ましくは少なくとも
約5分、好ましくは少なくとも約10分、好ましくは少なくとも約20分、好ましくは少なくとも約30分、および最も好ましくは約30〜45分処理される。
【0054】
熱処理を含む本発明の実施態様において熱処理工程は、加圧下で行われる。また材料に蒸気および/または真空処理を施してもよい。熱、水蒸気、真空および/または圧力は、個別にまたは連続して加えてもよい。最も好適な処理の組あわせは、使用される特定の出発材料によって変わり、実験的相互アプローチを伴う。
【0055】
熱処理が加圧下で行われない場合、その際の温度は、少なくとも約90°C、好ましくは約100°C、より好ましくは約105〜110°Cである。
【0056】
本発明による方法は、煙希釈剤をセルロース系材料を加える工程さらに含む。場合によって液体煙希釈剤をセルロース系材料に直接加えてもよい。
【0057】
いくつかの実施態様では煙希釈剤は、溶液、エマルジョンまたは懸濁液の形で加えられる。これらを調製するために煙希釈剤は、1つ以上のビヒクルに混合される。好適なビヒクルは、水;アルコール類、炭化水素類または他の好適な有機系溶媒などの有機溶媒;二酸化炭素(超臨界であってもよい)などの液体または気体;煙希釈剤の溶液、エマルジョン、または懸濁液を形成することが可能な他の好適な化学物質またはビヒクルなどである。好適なビヒクルとしては水;メタノールおよびエタノールなどのアルコール類;液体または気体の二酸化炭素などが挙げられる。ビヒクルは、タバコ処理技術に相性のよいものが選択されるのが好ましい。水性ビヒクルは、多量の可燃性の溶媒を使用しなくてすむので、特に好ましい。
【0058】
ビヒクルは、1つ以上の煙希釈剤がビヒクルに溶けている溶媒であってもよい。2つ以上の煙希釈剤を使用した場合、ビヒクルは1つ以上の希釈剤の溶媒であってもよい。
【0059】
いくつかの実施態様ではビヒクルは、セルロース系材料の細胞壁に浸透することができる。
【0060】
ビヒクルは、煙希釈剤がセルロース系材料に加えられる際の温度以下またはその周囲の温度で揮発性となる乾燥特性を有する化学物質であってもよい。
【0061】
ビヒクルを使用してセルロース系材料の細胞構造内への煙希釈剤の浸透を促進させる1つの方法は、セルロース系材料の細胞壁からの残留水分の除去を補助するすることおよび/または細胞内への煙希釈剤を進入を促進させることによる。
【0062】
ビヒクルが液体の場合、煙希釈剤は溶液、懸濁液中にあってもよく、またはビヒクルを含むエマルジョンとして提供されてもよい。好ましい実施態様では煙希釈剤は、溶液またはエマルジョンの形体である。いくつかの実施態様では煙希釈剤は、水溶液または水性エマルジョンの形体である。
【0063】
いくつかの実施態様では煙希釈剤は、懸濁液ではなく、溶液の形体である。このことは、懸濁液を加えると煙希釈剤が細胞構造内に入り込むのではなく、セルロース系材料上の煙希釈剤の表面堆積が大きくなるので好ましい。
【0064】
高せん断ミキサーを使用して、セルロース系材料に加えるための煙希釈剤および/またはあらゆるビヒクルを調製してもよい。このような処理は、通常、希釈剤および/またはビヒクルの非常に小さい液滴を発生させる。
【0065】
このような処理は、希釈剤の小さい液滴径によって、セルロース系材料の細胞構造内への希釈剤の浸透効率を高めることが可能である。このことは煙希釈剤が水性エマルジョンを得るために水と混合される水に溶けにくいまたは水に溶けない液体である場合に特に当てはまる。
【0066】
本発明による煙希釈剤のエマルジョンは、エマルジョンの調製中またはセルロース系材料に加える際に希釈剤が化学的変化を受けないという意味で安定している方がよい。いくつかの実施態様ではこのことは、エマルジョンを加える前または加える際に連続的な高せん断混合を行う、および/または選択された乳化剤を添加することによって行ってもよい。
【0067】
本発明によるエマルジョンの溶解度を例えば、従来の加熱されたエマルジョンを利用した技術などの従来の手段によって高めてもよい。
【0068】
1つ以上のビヒクルに組み込まれるまたは1つ以上のビヒクルが付与される煙希釈剤の組成は、セルロース系材料にエマルジョンを加えたことによるセルロース系材料が、所望の量の希釈剤(出発セルロース系材料の乾燥重量基準で)および水分量を含むように計算することができる。
【0069】
煙希釈剤はセルロース系材料にセルロース系材料を過剰な煙希釈剤に浸すおよび/またはこれと混合し、その後、過剰の希釈剤をろ過する、セルロース系材料を必要量の煙希釈剤で飽和させる、セルロース系材料に煙希釈剤を噴霧する、および/またはセルロース系材料に煙希釈剤を加圧噴霧して加えられる。材料をビヒクル中の希釈剤で環流し、その後例えば真空蒸発法などの蒸発法を利用してもよい。
【0070】
セルロース系材料を加熱する本発明の第2の態様による実施態様では、煙希釈剤をセルロース系材料が熱いうちにセルロース系材料と接触させるのが好ましい。
【0071】
煙希釈剤はセルロース系材料に高温、例えば例えば、約60°C超、70°C超、80°C超、90°C超、100°C超、105°C超または110°C超の温度で加えてもよい。
【0072】
セルロース系材料および煙希釈剤を混合する実施態様では、好ましくは混合はセルロース系材料が細かくならないように静かに行われる。例えば、軌道ミキサーを使用してもよい。
【0073】
セルロース系材料に煙希釈剤が噴霧される実施態様において、本発明の方法は、カーテン状に流れるセルロース系材料に希釈剤が一定に噴霧されるように最適化することを含む。その際の添加速度は、目的とする希釈剤の充填量を一定にし、セルロース系材料に一定の水分量を供するために一定にしてもよい。さらに、セルロース系材料の表面積を最適にする(例えばセルロース系材料の小さなフラグメントを個々にタンブリングすることによって)、セルロース系材料の流れを一定にする、および噴霧段階および/または噴霧段階後の膨化時の後の冷却段階の内の1つ以上を行うことは有利である。従来の噴霧および/またはポンプ技術を使用して、ここで説明した噴霧を行ってもよい。
【0074】
いくつかの実施態様では、セルロース系材料(好ましくは熱いうちに)は、過剰な煙希釈剤(好ましくは水溶液またはエマルジョンの形体で)に浸すまたはこれと混合される。
【0075】
好ましい実施態様では、本発明の第2の態様による希釈剤供給システムは、セルロース系材料を煙希釈剤で処理する前および/または処理している際にセルロース系材料に対し
て熱処理、真空処理、液体含浸、水蒸気処理または真空フリーズドライなどの処理を行うことを含む。好ましくは希釈剤供給システムは、セルロース系材料を熱処理した後、セルロース系材料を煙希釈剤に浸すおよび/またはセルロース系材料に煙希釈剤を噴霧する。
【0076】
セルロース系材料は、その後好適な量の水分を含むように乾燥させ、そして選択的に篩い分けしてもよい。
【0077】
その後本発明によるセルロース系材料は、喫煙品の調製に使用される。
【0078】
本発明では本発明の第1の態様によるセルロース系材料を含むおよび/または発明の第2の態様による方法で調製された喫煙品を提供する。
【0079】
好ましい実施態様では、煙希釈剤を含むセルロース系材料は、喫煙品に組み込まれる前に最小限の処理を受ける。
【0080】
「処理」なる用語は、例えば、セルロース系材料のブレンドおよび裁断などの可燃性タバコ製品の製造および喫煙品の製造において使用される当業者に知られている方法のあらゆる段階を意味する。
【0081】
好ましくは喫煙品は紙巻きタバコである。
【0082】
好ましい実施態様では喫煙品は、煙希釈剤の重量で少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%の喫煙可能な充填材を含む。
【0083】
本発明よる方法は、本発明のセルロース系材料を1つ以上の他のセルロース系材料、および/または他の喫煙品成分と混合することを含む喫煙品の製造方法である。
【0084】
また別の態様では喫煙品の製造に本発明のセルロース系材料を使用することが提供される。
【0085】
本発明を以下の図面を参照した例示によって以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】傾斜式回転円筒状ドラム乾燥機方法による連続した噴霧流の1つの実施態様を示す略図である。
図2】バッチ混合法でセルロース系材料を撹拌しながら、熱、蒸気、真空および/または圧力を好適に組み合わせまたは順序で加える際の略図を示す。
図3A】セルロース系材料の細胞構造を示す凍結走査電子顕微鏡(Cryo−SEM)画像である。
図3B】希釈剤を含浸させた後の本発明によるセルロース系材料の細胞構造を示すCryo−SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
連続した噴霧流入法を例示する図1は、煙希釈剤の水溶液またはエマルジョンを収容するために使用される収容容器1を示す。収容容器は、接続ライン3によってシルバーソンインラインミキサーなどの高せん断ミキサー2と流体連通させて、水溶液および/またはエマルジョンを高せん断ミキサー2を介して収容容器の内容物をリサイクルすることによって維持するようにしてもよい。
【0088】
乾燥させたセルロース系材料(水分量が6から7%のSDSなどの)は、細胞内の空気を膨張させる乾燥機4(通気傾斜式回転円筒状ドラム乾燥機などの)を通過する際に加熱される。乾燥機4は、接続ライン5、ポンプ6、安全逃し弁7、ピンチ弁8、噴霧手段9、および圧力ゲージ10を含む噴霧システムによって収容容器と流体連通させてもよい。好ましくは噴霧手段(ノズルまたはスプレーヘッドなどの)は、乾燥機の出口近くに位置する。
【0089】
シリンダー乾燥機4が回転すると、煙希釈剤の水溶液またはエマルジョンが、セルロース系材料が乾燥機4を出てコンベアー11上に排出される直前に熱いセルロース系材料のカーテン状の下向きの流れに噴霧手段9によって適当な、好ましくは一定の速度で噴霧される。
【0090】
搬送されるセルロース系材料は、セルロース系材料が冷まされる間(例えば、約少なくとも12時間)膨化させてもよい。冷まされたセルロース系材料は、選択的にブレンドおよび紙巻きタバコ製造に許容される水分量まで乾燥させてもよい。
【0091】
本明細書中で使用する「膨化させる」なる用語は、喫煙品製造の業界で一般的な用語であり、セルロース系材料中の水分量を増加させる工程を意味する。
【0092】
図2は、バッチ混合法を示し、これによってエマルジョンが高せん断ミキサーによって乳化または混合される。
【0093】
煙希釈剤水溶液またはエマルジョンを含む収容容器および噴霧システムへの流体供給は、図1で説明したものと類似している。特に部材1、2、3、5、6、7、8、および10は、図1で示したものと同じである。
【0094】
さらに装置は、噴霧システム14によって混合容器12と流体連通している。容器12は、例えばスチーム加熱されたジャケット13によって加熱してもよい。容器12内のセルロース系材料は、例えば撹拌手段15および/または壁部掻き取り操作部16で撹拌され、これらの撹拌手段は、個別に作動してもよい。
【0095】
煙希釈剤の水溶液またはエマルジョンは、撹拌手段によって撹拌されているセルロース系材料に噴霧される。混合容器12は、蒸気を容器内に注入する手段17を含み、これにより容器は、加圧18されたり、または減圧19される。混合容器に圧力ゲージ20および安全逃し弁21を備えてもよい。
【実施例】
【0096】
実施例1:軌道ミキサーを使用した希釈剤の含浸
刻み乾燥葉柄タバコ(SDS)に以下の手順に従い種々の希釈剤を含浸させ、およびその含浸量を評価した。
【0097】
SDSをタバコが「干からびる」までオーブンで105から110°C、約30から45分乾燥させた。
【0098】
煙希釈剤の水溶液(またはエマルジョン)をシルバーソン高せん断ミキサーを使用して調製し、この溶液またはエマルジョンを熱せられた熱いSDSに加えた。SDSおよび煙希釈剤溶液(またはエマルジョン)を軌道ミキサーで混合し、その後冷ました。
【0099】
この混合物をその後箔で覆ったトレイで22°Cおよび60%の相対湿度で約12時間乾燥させた。場合によって必要に応じて、混合物をさらに空気中、室温でさらに乾燥させ
た。
【0100】
また必要に応じて、セルロース系材料を粗い篩いを使用して静かに篩い分けした。
【0101】
得られた材料は、自由流動性であり、粘着質ではなかった。
【0102】
種々の煙希釈剤を含むSDSの含浸量を表1に示す。目的とする含浸量を示し、さらに比較のために実際の希釈剤の含浸量を括弧内に示した。
【0103】
乾燥したSDSは、過剰に液が流れ出ずまたは「溜まらず」に最大で70重量%の液を吸収することが分かった。
【0104】
【表1】
【0105】
この含浸させたSDS材料および葉身を同量含むブレンドを調製した。
【0106】
これら種々のブレンドは、広い範囲の量の希釈剤を含むことが分かった。その結果を表2にまとめた。
【0107】
これらのブレンドは、自由流動性であり、粘着質ではなく、従来の紙巻きタバコ製造機に好適に使用できることが分かった。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例2:傾斜式回転円筒状ドラム乾燥機法による連続噴霧流を使用した希釈剤の含浸
刻み乾燥葉柄タバコ(SDS)に図1に示す次の手順に従ってトリアセチンを含浸させ、および含浸させたタバコを含む紙巻きタバコ中の希釈剤の量を評価した。
【0110】
SDSをタバコの乾燥に採用されている従来からの手順に従って傾斜式回転ドラム乾燥機を介した流れを利用して約6%の水分量になるまで乾燥させた。
【0111】
第2の処理において、連続して噴霧するシステムを材料出口の近くに含むように変えられた傾斜式回転ドラム乾燥機を介した流れを利用して予め乾燥させて熱せられたSDSの
落下するカーテン状の流れにトリアセチン/水エマルジョンを噴霧した。
【0112】
所望の希釈剤含浸量および水分量(通常18%)を有する排出された材料を収集し、膨化させた。
【0113】
さらに材料を回転式ドラム乾燥によって、要求される最終水分量(通常13%)に乾燥させた。得られた材料は、自由流動性であり、粘着質ではなく、他のタバコと従来のタバコ処理によって所望の割合で良好にブレンドすることができた。
【0114】
紙巻きタバコを葉身50%および含浸SDS50%のブレンドを使用して製造した(表3−試験紙巻きタバコ)。
【0115】
測定したSDSの含浸量は、トリアセチン20%であった。最終ブレンド品で測定したトリアセチン量は、7%であった(希釈剤量の減少は、処理中に消失したものと考えられる)。
【0116】
紙巻きタバコの煙の化学的特性を表3(TPM、総粒状物およびNFDPM、ニコチンを除いた乾燥粒状物)に示す。紙巻きタバコを従来の紙巻きタバコ製造方法および装置を
使用して製造した。対照紙巻きタバコを葉身ブレンドを使用して製造した。すべての紙巻きタバコは、同じ紙およびフィルター仕様を使用して製造された。
【0117】
【表3】
【0118】
煙の希釈は、次のように算出した。
[煙中のトリアセチン(mg/紙巻きタバコ)/NFDPM(mg/紙巻きタバコ)]×100
【0119】
紙巻きタバコフィルターには共通してフィルターの堅さを増すために「可塑剤」としてトリアセチンを加えた。対照紙巻きタバコで観察された希釈は、フィルターのトリアセチンが煙に移行したことによるものであると考えられる。
【0120】
表3に示したデータは、タバコブレンドに含有させたトリアセチンを含浸させたSDSがかなりの量のトリアセチンを煙に移行させるのに有効な煙希釈剤として機能することを明らかに示している。
【0121】
実施例3:バッチ混合法を使用した希釈剤の含浸
刻み乾燥葉柄タバコ(SDS)に図2に示す次の手順に従ってトリアセチンを含浸させ、希釈剤を含浸させた後の材料の低温走査電子顕微鏡写真を撮影した。含浸タバコを含む紙巻きタバコ中の希釈剤の量も評価した。
【0122】
SDS2kgを壁掻き取り混合そらせ板、攪拌機、加熱ジャケット、スチーム注入器、圧力および真空機能を備えた混合容器に入れた。混合そらせ板を作動させ、処理中、作動させ続けた。SDSの水分をスチームを注入することによって約35%にまで上げた。同時にミキサージャケットの温度を70°Cまで上げた。
【0123】
トリアセチン860gを別の容器中で400gの水に少なくとも90秒乳化させた。
【0124】
トリアセチンエマルジョンを70秒掛けてミキサーに加えた。その後SDSを3分間混合し、混合容器のジャケットの温度を94°Cに上げ、真空ポンプと450ミリバールで37分間接続して好適な水分量になるように乾燥させた。
【0125】
目標とするトリアセチン含浸量は、30%であり、測定量は、33%であった。
【0126】
得られた材料は、自由流動性であり、粘着性ではなかった。
【0127】
トリアセチンを混入させる前後のタバコ材の低温走査電子顕微鏡画像を図3Aおよび3Bに示す。図3Aは、未処理の対称SDSを示し、細胞構造が材料から欠落していることが分かる。一方、図3Bは細胞構造内にトリアセチンが存在していることをはっきりと示している。
【0128】
上述の方法によりトリアセチンが含浸したSDS材料の煙希釈能を評価した。
【0129】
紙巻きタバコを葉身50%および含浸SDS50%のブレンドを利用して製造した。目的とするSDSのトリアセチン含浸量は、20%であり、測定された含浸量は、21%で
あった。最終的なブレンドの測定したトリアセチン量は、8%であった(希釈剤量の減少は、処理中に消失したものと考えられる)。
【0130】
紙巻きタバコの煙の化学的特性を表4に示す。紙巻きタバコを従来の紙巻きタバコ製造方法および装置を使用して製造した。参照紙巻きタバコを葉身ブレンドを使用して製造し、SDSブレンド対照紙巻きタバコは、葉身50%および非含浸SDS50%を含み、試験紙巻きタバコを葉身50% および上述したように含浸させたSDS50%のブレンド
を使用して製造した。すべての紙巻きタバコは、同じ紙およびフィルター仕様を使用して製造された。
【0131】
【表4】
【0132】
表4に示すデータは、タバコブレンドに含有させたトリアセチンを含浸させたSDSがかなりの量のトリアセチンを煙に移行させるのに有効な煙希釈剤として機能することを明らかに示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】国際公開第98/57556号公報
【特許文献2】米国特許第6,571,801号明細書
【特許文献3】国際公開第03/092416号公報
【特許文献4】米国特許第3,674,540号明細書
【特許文献5】米国特許第5,860,428号明細書
【特許文献6】米国特許第6,397,852号明細書
図1
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2016年2月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の煙希釈剤を細胞構造内にそして選択的にその表面に有するセルロース系材料であって、前記煙希釈剤の重量がセルロース系材料の乾式重量基準で5%以上であり、セルロース系材料の細胞構造内に含浸する前記煙希釈剤の重量が3%以上であるセルロース系材料。
【請求項2】
前記セルロース系材料は喫煙品処理装置での使用に際して好適な水分量を有することを特徴とする請求項1記載のセルロース系材料。
【請求項3】
前記セルロース系材料がタバコ材であることを特徴とする請求項1または2記載のセルロース系材料。
【請求項4】
煙希釈剤が、タバコ製品に使用される際にタバコ材の細胞構造内に保持されることを特徴とする請求項3記載のセルロース系材料。
【請求項5】
煙希釈剤が、タバコ製品に使用される際にタバコ材の表面に保持されることを特徴とする請求項3記載のセルロース系材料。
【請求項6】
前記タバコ材が、固体葉柄、刻み乾燥葉柄、蒸気で処理された葉柄、刻み葉身、茎、DIET、再生タバコ、刻みブレンドおよびこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項3乃至5いずれか1項記載のセルロース系材料。
【請求項7】
前記タバコ材が刻み乾燥葉柄であることを特徴とする請求項6記載のセルロース系材料。
【請求項8】
前記煙希釈剤の融点が約95℃未満であることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のセルロース系材料。
【請求項9】
煙希釈剤が水不溶性または水難溶性の液体であることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載のセルロース系材料。
【請求項10】
煙希釈剤が グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、およびミリスチン酸イソプロピルからなる群のいずれか1つ以上の化合物であることを特徴とする請求項9記載のセルロース系材料。
【請求項11】
煙希釈剤を細胞構造内にそして選択的にその表面に有するセルロース系材料の製造方法であって、煙希釈剤をセルロース系材料に加える前および/または加える際に、熱処理、真空処理、液体含浸処理、水蒸気処理または真空フリーズドライからなる群から選択される1つ以上の処理をセルロース系材料に対して行う煙希釈剤供給システムの使用を含み、セルロース系材料の細胞構造内に含浸する前記煙希釈剤の重量が3%以上の方法。
【請求項12】
煙希釈剤供給システムがセルロース系材料を実質的にその水分量が減少するように処理することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
煙希釈剤がビヒクルに含まれるまたは混合されることを特徴とする請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
ビヒクルが水、アルコールもしくは液体または気体の二酸化炭素であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
煙希釈剤がセルロース系材料に保持される前は水溶液またはエマルジョンの形体であることを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
水溶液またはエマルジョンが高せん断混合を含む方法によって製造されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
煙希釈剤が連続噴霧法を使用して細胞構造に添加されることを特徴とする請求項11乃至16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
煙希釈剤がバッチ式混合法を使用して細胞構造に添加されることを特徴とする請求項1
1乃至16いずれか1項記載の方法。
【請求項19】
請求項1乃至10いずれか1項記載のセルロース系材料を含む喫煙品。
【請求項20】
紙巻きタバコであることを特徴とする請求項19記載の喫煙品。
【請求項21】
請求項1乃至10いずれか1項記載のセルロース系材料または請求項11乃至18いずれか1項記載の方法で製造されたセルロース系材料を他のセルロース系材料または喫煙品構成成分と混合することを含む喫煙品の製造方法。
【請求項22】
喫煙品製造における請求項1乃至10いずれか1項記載のセルロース系材料または請求項11乃至18いずれか1項記載の方法で製造されたセルロース系材料の使用。
【外国語明細書】
2016105721000001.pdf