前記活性結合組成物が、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、およびそれらの組み合わせからなる金属元素の群から選択される金属元素を含む、請求項10に記載の研磨物品。
前記本体が、少なくとも5体積%の気孔を含み、前記気孔の過半量が、前記本体の前記体積を通過して延在する相互接続された孔隙の網目構造を画定する相互接続された気孔である、請求項1に記載の研磨物品。
前記結合剤が、銅、スズ、銀、モリブデン、亜鉛、タングステン、鉄、ニッケル、アンチモン、およびそれらの組み合わせからなる金属の群から選択される金属を含む、請求項14に記載の研磨物品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下は、一般に、材料の三次元マトリックス中に砥粒を含む結合研磨物品に関する。結合研磨物品は、結合剤の三次元マトリックス中に固定された多量の砥粒を利用する。さらに、以下は、そのような結合研磨物品の形成方法、およびそのような結合研磨物品の用途に関する説明を含んでいる。
【0017】
一実施形態によると、研磨物品の形成方法は、砥粒および結合剤を含有する混合物を形成することによって開始することができる。砥粒は硬質材料を含むことができる。たとえば、砥粒は、少なくとも約7のモース硬度を有することができる。別の研磨本体においては、砥粒は、少なくとも8、またはさらには少なくとも9のモース硬度を有することができる。
【0018】
特定の場合においては、砥粒は、無機材料でできていてよい。好適な無機材料としては、炭化物、酸化物、窒化物、ホウ化物、酸炭化物、酸ホウ化物、酸窒化物、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特に、砥粒の例としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア複合粒子、窒化ケイ素、SiAlON、およびホウ化チタンが挙げられる。ある場合においては、砥粒は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、およびそれらの組み合わせなどの超砥粒材料を含むことができる。特定の場合においては、砥粒はダイヤモンドから本質的になることができる。別の実施形態においては、砥粒は立方晶窒化ホウ素から本質的になることができる。
【0019】
砥粒は、約1000ミクロン以下の平均グリットサイズを有することができる。別の実施形態においては、砥粒は、約750ミクロン以下、たとえば約500ミクロン以下、約250ミクロン以下、約200ミクロン以下、またはさらには約150ミクロン以下の平均グリットサイズを有することができる。特定の場合においては、本発明の実施形態の砥粒は、約1ミクロン〜約1000ミクロンの間の範囲内、たとえば約1ミクロン〜500ミクロンの間の範囲内、またはさらには約1ミクロン〜200ミクロンの間の範囲内の平均グリットサイズを有することができる。
【0020】
さらに砥粒に言及すると、砥粒の形態は、長さ対幅の寸法の間の比であるアスペクト比で表すことができる。長さは、研磨グリットの最長寸法であり、幅は、特定の研磨グリットの二番目に長い寸法であることは理解されよう。本発明の実施形態によると、砥粒は、約3:1以下、さらには約2:1以下のアスペクト比(長さ:幅)を有することができる。特定の場合においては、砥粒は、本質的に等軸であってよく、約1:1のアスペクト比を有する。
【0021】
砥粒は、たとえばコーティングなどの他の特徴を含むことができる。砥粒は、無機材料であってよいコーティング材料でコーティングすることができる。好適な無機材料としては、セラミック、ガラス、金属、金属合金、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の場合においては、砥粒に金属材料、特に遷移金属組成物を電気めっきすることができる。このようにコーティングされた砥粒は、砥粒と結合剤との間の改善された結合(たとえば化学結合)が容易となりうる。
【0022】
ある場合においては、混合物は、砥粒の特定の分布を含むことができる。たとえば、混合物は、砥粒のグリットサイズの多峰型分布を含むことができ、そのため、微細な、中間、および粗いグリットサイズの特定の分布が混合物中に存在する。1つの特定の場合においては、混合物は、微細な平均グリットサイズを有する微細なグレインと、粗い平均グリットサイズを有する粗い砥粒とを含む砥粒の双峰型分布を含むことができ、粗い平均グリットサイズは、微細な平均グリットサイズよりも有意に大きい。たとえば、粗い平均グリットサイズは、微細な平均グリットサイズよりも少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、またはさらには少なくとも約50%大きくてよい(微細な研磨グリットサイズを基準とする)。混合物は、たとえば三峰型分布または四峰型分布などの別の多峰型分布を含むことができることを理解されよう。
【0023】
同じ組成の砥粒が、たとえば破砕性などの種々の機械的性質を有しうることも理解されよう。混合物、および最終的に形成された結合研磨本体は、同じ組成物を有するが、種々の機械的性質または結合度を有することができる砥粒混合物を含むことができる。たとえば、混合物は、混合物がダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素のみを含むように、1つの組成の砥粒を含むことができる。しかし、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素は、異なる結合度のダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素の混合物を含むことができ、それによって砥粒は種々の結合度および種々の機械的性質を有することができる。
【0024】
最終的に形成される研磨物品が特定の量の砥粒を含有するような量で、砥粒を混合物中に提供することができる。たとえば、混合物は、過半量の含有量(たとえば、50体積%を超える)の砥粒を含むことができる。
【0025】
一実施形態によると、結合剤は金属または金属合金材料であってよい。たとえば、結合剤は、少なくとも1種類の遷移金属元素を含む粉末組成物を含むことができる。特定の場合においては、結合剤は、銅、スズ、銀、モリブデン、亜鉛、タングステン、鉄、ニッケル、アンチモン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される金属を含むことができる。特定の一実施形態においては、結合剤は、銅およびスズを含む金属合金であってよい。銅およびスズの金属合金は、銅およびスズのそれぞれの重量組成が60:40で構成されてよい真鍮材料であってよい。
【0026】
特定の一実施形態によると、銅およびスズの金属合金は、最終的に形成される結合研磨物品が好適な機械的特性および研削性能を有するように特定の銅含有率を有することができる。たとえば、銅およびスズの金属合金は、約70%以下の銅、たとえば約65%以下の銅、約60%以下の銅、約50%以下の銅、約45%以下の銅、またはさらには約40%以下の銅を含むことができる。特定の場合においては、銅の量は約30%〜約65%の間の範囲内、特に、約40%〜約65%の間の範囲内である。
【0027】
銅およびスズのある金属合金は、最小量のスズを有することができる。たとえば、金属合金は、組成物の総量の少なくとも約30%のスズを含むことができる。別の場合においては、スズの量は、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、またはさらには少なくとも約75%などのより多い量であってよい。ある結合剤は、約30%〜約80%の間の範囲内、約30%〜約70%の間の範囲内、またはさらには約35%〜約65%の間の範囲内のスズの量を有する銅およびスズの金属合金を含むことができる。
【0028】
別の一実施形態においては、結合剤はスズ系材料であってよく、このスズ系材料はとしては、過半量のスズと材料中に存在する他の化合物とを含む金属および金属合金が挙げられる。たとえば、結合剤は、スズから本質的になることができる。さらに、約10%以下の他の合金材料、特に金属を含むあるスズ系結合剤を使用することができる。
【0029】
混合物は、砥粒と結合剤とを同じ比率で含有することができる。しかし、ある実施形態においては、混合物中の結合剤量が砥粒量よりも少なくなってもよいように、混合物を形成することができる。このような混合物は、本明細書においてより詳細に記載される特定の性質を有する結合研磨物品に役立つ。
【0030】
砥粒および結合剤に加えて、混合物は、活性結合組成物前駆体をさらに含むことができる。活性結合組成物前駆体としては、たとえば粒子状材料(たとえば、砥粒および/またはフィラー)および結合剤などの結合研磨本体の特定の成分の間の化学反応を後で促進する、混合物に加えることが可能な材料が挙げられる。活性結合組成物前駆体は、混合物に少量で加えることができ、特に、混合物中に存在する砥粒の量未満の量で加えることができる。
【0031】
一実施形態によると、活性結合組成物前駆体は、金属または金属合金を含む組成物を含むことができる。特に、活性結合組成物前駆体は、水素を含む組成物または錯体を含むことができる。たとえば、活性結合組成物前駆体は水素化金属を含むことができ、特に、水素化チタンなどの材料を含むことができる。一実施形態においては、活性結合組成物前駆体は水素化チタンから本質的になる。
【0032】
混合物は、一般に、少量の活性結合組成物前駆体を含む。たとえば、混合物は、混合物の全重量の約40重量%以下の活性結合組成物前駆体を含むことができる。別の実施形態においては、混合物中の活性結合組成物前駆体の量は、より少なくてよく、たとえば約35重量%以下、約30重量%以下、約28重量%以下、約26重量%以下、約23重量%以下、約18重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、またはさらには約10重量%以下であってよい。特定の場合においては、混合物中の活性結合組成物前駆体の量は、約2重量%〜約40重量%の間の範囲内、たとえば約4重量%〜約35重量%の間の範囲内、約8重量%〜約28重量%の間の範囲内、約10重量%〜約28重量%の間の範囲内、またはさらに約12重量%〜約26重量%の範囲内であってよい。
【0033】
混合物は、バインダー材料をさらに含むことができる。バインダー材料は、結合研磨物品の形成中に好適な強度を付与するために使用することができる。ある好適なバインダー材料は有機材料を含むことができる。たとえば、有機材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、接着剤、およびそれらの組み合わせなどの材料であってよい。1つの特定の場合においては、バインダー材料の有機材料としては、ポリイミド類、ポリアミド類、樹脂類、アラミド類、エポキシ類、ポリエステル類、ポリウレタン類、アセテート類、セルロース類、およびそれらの組み合わせなどの材料が挙げられる。一実施形態においては、混合物は、特定の温度で硬化するように構成された熱可塑性材料の組み合わせを利用したバインダー材料を含むことができる。別の一実施形態においては、バインダー材料は、混合物の成分間の付着を促進するのに好適な接着材料を含むことができる。バインダーは、たとえば水性または非水性化合物などの液体の形態であってよい。
【0034】
一般に、バインダー材料は、混合物中に少量(重量基準)で存在することができる。たとえば、バインダーは、砥粒、結合剤、または活性結合組成物前駆体の量よりも有意に少ない量で存在することができる。たとえば、混合物は、混合物の全重量に対して約40重量%以下のバインダー材料を含むことができる。別の実施形態においては、混合物中のバインダー材料の量は、より少ない量であってよく、たとえば約35重量%以下、約30重量%以下、約28重量%以下、約26重量%以下、約23重量%以下、約18重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、またはさらには約10重量%以下であってよい。特定の場合においては、混合物中のバインダー材料の量は、約2重量%〜約40重量%の間の範囲内、たとえば約4重量%〜約35重量%の間の範囲内、約8重量%〜約28重量%の間の範囲内、約10重量%〜約28重量%の間の範囲内、またはさらには約12重
量%〜約26重量%の間の範囲内であってよい。
【0035】
混合物は、ある量のフィラーをさらに含むことができる。フィラーは、たとえば砥粒などの混合物中のある成分の代わりに使用できる粒子状材料であってよい。特に、フィラーは、混合物中に混入できる粒子状材料であってよく、その場合フィラーは、最終的に形成された結合研磨本体中で元の大きさおよび形状を実質的に維持する。好適なフィラーの例としては、酸化物、炭化物、ホウ化物、ケイ化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物、ケイ酸塩、黒鉛、ケイ素、金属間化合物、セラミック、中空セラミック、溶融石英、ガラス、ガラスセラミック、中空ガラス球、貝殻などの天然材料、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0036】
特に、あるフィラーは、砥粒の硬度より低い硬度を有することができる。さらに、混合物の全体積の約90体積%以下の量でフィラーが存在するように、混合物を形成することができる。体積パーセントは、中空球と重い粒子などの粒子の種類に依存してフィラーの密度が変動しうる場合に、フィラーの含有率を表すために使用される。別の実施形態においては、混合物中のフィラーの量は約80体積%以下、たとえば約70体積%以下、約60体積%以下、約50体積%以下、約40体積%以下、約30体積%以下、またはさらには約20体積%以下であってよい。
【0037】
ある形成方法では、砥粒の量よりも多い量のフィラー材料を使用することができる。たとえば、ほぼすべての砥粒を、1種類以上のフィラー材料で置き換えることができる。別の場合においては、砥粒の過半量をフィラー材料で置き換えることができる。別の実施形態においては、少量の砥粒をフィラー材料で置き換えることができる。
【0038】
さらに、フィラーは、砥粒の平均グリットサイズよりも有意に小さい平均粒度を有することができる。たとえば、砥粒の平均グリットサイズの平均グリットサイズを基準として砥粒の平均グリットサイズよりもフィラーの平均粒度は、少なくとも約5%小さくてよく、たとえば少なくとも約10%小さくてよく、たとえば少なくとも約15%小さくてよく、少なくとも約20%小さくてよく、またはさらには少なくとも約25%小さくてよい。
【0039】
ある別の実施形態においては、特に本体が中空であるフィラーの場合には、フィラーは砥粒より大きい平均粒度を有することができる。
【0040】
特定の場合においては、フィラー材料は、CSM Indentation Testers,Inc.,Switzerlandまたは同様の企業より入手可能なダイヤモンドプローブを使用してISO 14577の標準試験によるナノ押し込み試験によって測定される破壊靱性(K
1c)が約10MPa・m
0.5以下であってよい。別の実施形態においては、フィラーの破壊靱性(K
1c)は約9MPa・m
0.5以下、たとえば約8MPa・m
0.5以下、またはさらには約7MPa・m
0.5以下であってよい。さらには、フィラーの平均破壊靱性は、約0.5MPa・m
0.5〜約10MPa・m
0.5の間の範囲内、たとえば約1MPa・m
0.5〜約9MPa・m
0.5の間の範囲内、またはさらには約1MPa・m
0.5〜約7MPa・m
0.5の間の範囲内であってよい。
【0041】
混合物を形成した後、結合研磨物品の形成方法は、適切なレオロジー特性を有するように混合物を剪断することによって続けられる。たとえば、混合物は、少なくとも約100センチポアズなどの特定の粘土となるまで剪断することができ、半流動体のコンステンシー(たとえば、泥状のコンシステンシー)を有することができる。別の場合においては、ペーストなどのはるかに低い粘度であってもよい。
【0042】
混合物を剪断した後、本発明の方法は、次に、混合物からの凝集物の形成を行うことができる。凝集物の形成プロセスは、最初に混合物を乾燥させるプロセスを含むことができる。特に、乾燥プロセスは、混合物中に含まれるバインダー中の有機成分(たとえば、熱硬化性樹脂)を硬化させ、混合物中のある種の揮発分(たとえば水分)の一部を除去するのに好適な温度で行うことができる。したがって、バインダー材料中の有機材料の好適な硬化によって、混合物は、硬化または半硬化形態を有することができる。特に好適な乾燥温度は、約250℃以下、特に約0℃〜約250℃の間の範囲内であってよい。
【0043】
混合物を好適な温度で乾燥させた後、凝集物の形成プロセスは、次に、硬化形態の粉砕を行うことができる。硬化形態を粉砕した後、粉砕された粒子は、砥粒および結合剤などの混合物中に含まれる成分の凝集物を含む。次に凝集物を形成するプロセスは、凝集物の好適なサイズ分布を得るために、粉砕された粒子をふるい分けするステップを含むことができる。
【0044】
凝集物を形成した後、本発明の方法は、次に、最終的に形成される結合研磨物品の所望の形状への凝集物の成形を行うことができる。好適な成形方法の1つは、凝集粒子を金型に満たすステップを含む。金型を満たした後、凝集物をプレスして、金型の寸法を有する未加工(すなわち、未焼結)本体を形成することができる。一実施形態によると、プレスは、結合研磨物品の面積に対して少なくとも約0.01トン/in
2の圧力で行うことができる。別の実施形態においては、圧力は、より大きくてよく、たとえば、少なくとも約0.1トン/in
2、少なくとも約0.5トン/in
2、少なくとも約1トン/in
2、またはさらには少なくとも約2トン/in
2程度であってよい。特定の一実施形態においては、プレスは、約0.01トン/in
2〜約5トン/in
2の間の範囲内、特に約0.5トン/in
2〜約3トン/in
2の間の範囲内の圧力で行われる。
【0045】
混合物を成形して未加工物品を形成した後、本発明の方法は、次に、未加工物品の処理を行うことができる。処理は、未加工物品の熱処理、特に未加工物品の焼結を含むことができる。特定の一実施形態においては、処理は、液相焼結によって結合研磨本体を形成することを含む。特に、液相焼結は、未加工物品の特定の成分、特に結合剤の液相を形成するステップを含み、そのため焼結温度において、結合剤の少なくとも一部が液相中に存在し、流動性となる。特に、液相焼結は、金属結合剤を使用する結合研磨材の形成に一般に使用される方法ではない。
【0046】
一実施形態によると、未加工物品の処理は、少なくとも400℃の液相焼結温度まで未加工物品を加熱するステップを含む。別の実施形態においては、液相焼結温度はより高くてもよく、たとえば少なくとも500℃、少なくとも約650℃、少なくとも約800℃、またはさらには少なくとも約900℃であってよい。特定の場合においては、液相焼結温度は、約400℃〜約1100℃の間の範囲内、たとえば約800℃〜約1100℃の間の範囲内、特に約800℃〜1050℃の間の範囲内であってよい。
【0047】
処理、特に焼結は、特定の時間で行うことができる。液相焼結温度における焼結は、少なくとも約10分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、またはさらには少なくとも約40分の時間で行うことができる。特定の実施形態においては、液相焼結温度における焼結は、約10分〜約90分の間の範囲内、たとえば約10分〜60分の間の範囲内、またはさらには約15分〜約45分の間の範囲内の時間続けることができる。
【0048】
未加工物品の処理は、特定の雰囲気下で液晶焼結プロセスを行うステップをさらに含むことができる。たとえば、その雰囲気は、約10
−2Torr以下の圧力を有する減圧雰囲気であってよい。別の実施形態においては、減圧雰囲気は、約10
−3Torr以下、約10
−4Torr以下、たとえば約10
−5Torr以下、またはさらには約10
−6Torr以下の圧力を有することができる。特定の場合においては、減圧雰囲気は、約10
−2Torr〜約10
−6Torrの間の範囲内であってよい。
【0049】
さらに、未加工物品の処理中、特に液相焼結プロセス中、雰囲気は、非酸化性(すなわち還元性)雰囲気であってよい。還元性雰囲気を形成するのに好適な気体種としては、水素、窒素、希ガス、一酸化炭素、解離アンモニア、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。別の実施形態においては、金属および金属合金成分の酸化を制限するために、未加工物品の処理中に不活性雰囲気を使用することができる。
【0050】
処理プロセスの終了後、金属結合剤中に砥粒を含む結合研磨物品が形成される。一実施形態によると、研磨物品は、特定の特徴を有する本体を有することができる。たとえば、一実施形態によると、結合研磨本体は、本体中の結合剤の体積よりも有意に大きい砥粒の体積を有することができる。結合研磨本体は、V
AG/V
BMの比が少なくとも約1.3であってよく、ここでV
AGは、結合研磨本体の全体積中の砥粒の体積パーセントを表し、V
BMは、結合研磨本体の全体積中の結合剤の体積パーセントを表す。別の一実施形態によると、V
AG/V
BMの比は、少なくとも約1.5、たとえば少なくとも約1.7、少なくとも約2.0、少なくとも約2.1、少なくとも約2.2、またはさらには少なくとも約2.5であってよい。別の実施形態においては、V
AG/V
BMの比が、約1.3〜約9.0の間の範囲内、たとえば約1.3〜約8.0の間の範囲内、たとえば約1.5〜約7.0の間の範囲内、たとえば約1.5〜約6.0の間の範囲内、約2.0〜約5.0の間の範囲内、約2.0〜約4.0の間の範囲内、約2.1〜約3.8の間の範囲内、またはさらには約2.2〜約3.5の間の範囲内となるように、結合研磨本体を形成することができる。
【0051】
より具体的には、結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対して少なくとも約30体積%の砥粒を含むことができる。別の場合においては、砥粒の含有量はより多く、たとえば少なくとも約45体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、またはさらには少なくとも約75体積%である。特定の実施形態においては、結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対して約30体積%〜約90体積%の間、たとえば約45体積%〜約90体積%の間、約50体積%〜約85体積%の間、またはさらには約60体積%〜約80体積%の間の砥粒を含む。
【0052】
結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対して約45体積%以下の結合剤を含むことができる。ある実施形態によると、結合剤の含有量はより少なく、たとえば約40体積%以下、約30体積%以下、約25体積%以下、約20体積%以下、またはさらには約15体積%以下である。特定の実施形態においては、結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対して約5体積%〜約45体積%の間、たとえば約5体積%〜約40体積%の間、約5体積%〜約30体積%の間、またはさらには約10体積%〜約30体積%の間の結合剤を含む。
【0053】
別の一実施形態によると、本発明の結合研磨本体は、ある量の気孔を含むことができる。たとえば、結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対して少なくとも5体積%の気孔を有することができる。別の実施形態においては、結合研磨本体は、本体の全体積に対して少なくとも約10体積%、たとえば少なくとも約12体積%、少なくとも約18体積%、少なくとも約20体積%、少なくとも約25体積%、少なくとも約30体積%、またはさらには少なくとも約35体積%の気孔を有することができる。さらに、別の実施形態においては、結合研磨本体は、本体の全体積に対して約80体積%以下の気孔を含むことができる。別の物品においては、結合研磨本体は、本体の全体積に対して約70体積%以下、約60体積%以下、55体積%の気孔、たとえば約50体積%以下の気孔、約48体積%以下の気孔、約44体積%以下の気孔、約40体積%以下の気孔、またはさらには約35体積%以下の気孔を有することができる。気孔は、本明細書に列挙される任意の最小値および最大値の間の範囲内となりうることは理解されよう。
【0054】
結合研磨本体中のある含有量の気孔が相互接続された気孔となるように、結合研磨本体を形成することができる。相互接続された気孔によって、結合研磨本体の体積を通過して延在する相互接続されたチャネル(すなわち、孔隙)の網目構造が画定される。たとえば、本体の気泡の過半量が相互接続された気孔であってよい。実際、特定の場合においては、結合研磨本体中に存在する気孔の少なくとも60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはさらには少なくとも約95%が相互接続された気孔となるように、結合研磨本体を形成することができる。ある場合においては、本体中に存在する実質的にすべての気孔が相互接続された気孔である。したがって、結合研磨本体は、結合剤および砥粒によって画定される固相と、結合研磨本体全体にわたって固相の間に延在する気孔によって画定される第2の連続相との2つの相の連続網目構造によって画定されうる。
【0055】
別の一実施形態によると、結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対する結合剤(V
BM)と比較して、砥粒およびフィラーを含む粒子状材料(V
P)の特定の比を有することができる。粒子状材料および結合剤の量が、本体の全体積の一部としての成分の体積パーセントの単位で測定されることが理解されよう。たとえば、本発明の実施形態の結合研磨本体は、比(V
P/V
BM)が少なくとも約1.5であってよい。別の実施形態においては、比(V
P/V
BM)は、少なくとも約1.7、少なくとも約2.0、少なくとも約2.2、少なくとも約2.5、またはさらには少なくとも約2.8であってよい。特定の場合においては、比(V
P/V
BM)は、1.5〜約9.0の間の範囲内、約1.5〜8.0の間の範囲内、たとえば約1.5〜約7.0の間の範囲内、約1.7〜約7.0の間の範囲内、約1.7〜約6.0の間の範囲内、約1.7〜約5.5の間の範囲内、またはさらには約2.0〜約5.5の間の範囲内であってよい。したがって、結合研磨本体は、フィラーと砥粒とを含む粒子状材料を結合剤よりも高い含有率で含むことができる。
【0056】
一実施形態によると、研磨本体は、結合研磨本体の全体積中に存在する砥粒の量(体積%)よりも少ない量、同じ量、またはさらには多い量(体積%)のフィラーを含むことができる。ある研磨物品は、結合研磨本体全体積に対して約75体積%以下のフィラーを使用することができる。ある実施形態によると、本体中のフィラーの含有量は、約50体積%以下、約40体積%以下、約30体積%以下、約20体積%以下、またはさらには約15体積%以下であってよい。特定の実施形態においては、結合研磨本体は、結合研磨本体の全体積に対して約1体積%〜約75体積%の間、たとえば約1体積%〜約50体積%の間、約1体積%〜約20体積%の間、またはさらには約1体積%〜約15体積%の間のフィラーを含む。ある場合においては、結合研磨本体は、フィラーを実質的に含まなくてよい。
【0057】
本発明の実施形態の結合研磨本体は、特定の含有量の活性結合組成物を有することができる。理解されるように、活性結合組成物は、活性結合組成物前駆体と、たとえば砥粒、フィラー、および結合剤などの結合研磨本体の特定の成分との間の反応によって形成される反応生成物であってよい。活性結合組成物は、本体中の粒子(たとえば、砥粒またはフィラー)と結合剤との間の化学結合を促進することができ、それによって結合剤中での粒子の保持を促進することができる。
【0058】
特に、活性結合組成物は、別個の相を含むことができ、それらの相は、結合研磨本体の別個の領域中に配置することができる。さらに、活性結合組成物は、組成物の位置に依存した特定の組成を有することができる。たとえば、活性結合組成物は、析出相および界面相を含むことができる。析出相は、結合剤中に存在することができ、結合剤の体積全体にわたって別個の相として分散することができる。界面相は、粒子状材料(すなわち、砥粒および/またはフィラー)と結合剤との間の界面に配置することができる。界面相は、本体の粒子状材料の表面積の過半量の周囲に延在することができる。完全には理解されていないが、活性結合組成物の別個の相および組成の差は、形成プロセス、特に液相焼結に起因するものと理論づけられている。
【0059】
したがって、結合剤は、別個の相である結合相および析出相を含む複合材料であってよい。析出相は、活性結合組成物の少なくとも1つの元素と結合剤の少なくとも1つの元素とを含む組成物でできていてよい。特に、析出相は、結合剤として混合物中に本来提供された少なくとも1つの金属元素を含むことができる。析出相は、金属または金属合金の化合物または錯体であってよい。特定の実施形態においては、析出相は、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、およびそれらの組み合わせからなる材料の群から選択される材料を含むことができる。さらなる特定の場合においては、析出相はチタンを含み、チタンおよびスズから本質的になることができる。
【0060】
結合剤の結合相は、遷移金属元素を含むことができ、特に混合物の形成に使用される元の結合剤中に含まれる金属元素を含むことができる。したがって、結合相は、銅、スズ、銀、モリブデン、亜鉛、タングステン、鉄、ニッケル、アンチモン、およびそれらの組み合わせからなる金属の群から選択される材料から形成されてよい。特定の場合においては、結合相は銅を含むことができ、銅を主成分とする化合物または錯体であってよい。ある実施形態においては、結合相は銅から本質的になる。
【0061】
界面相は、活性結合組成物の少なくとも1つの元素を含むことができる。さらに、界面相は、粒子状材料の少なくとも1つの元素を含むことができる。したがって、界面相は、活性結合組成物と粒子との間の化学反応によって形成された化合物または錯体であってよい。ある界面相材料としては、炭化物、酸化物、窒化物、ホウ化物、酸窒化物、酸ホウ化物、酸炭化物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。界面相は、金属を含むことができ、特に、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属酸窒化物、金属酸ホウ化物、または金属酸炭化物などの金属を含む化合物であってよい。一実施形態によると、界面相は、炭化チタン、窒化チタン、ホウ窒化チタン、酸化チタンアルミニウム、およびそれらの組み合わせの群からの材料から本質的になる。
【0062】
さらに、界面相は、少なくとも約0.1ミクロンの平均厚さを有することができる。しかし特に、界面相を上に有する粒子状材料の大きさに依存して、界面相は種々の厚さを有することができる。たとえば、10ミクロン未満の平均サイズの砥粒および/またはフィラーに関しては、界面相は、粒子の平均サイズの約1%〜205%の間の範囲内の厚さを有することができる。約10ミクロン〜約50ミクロンの間の範囲内の平均サイズを有する粒子状材料の場合、界面相は、粒子の平均サイズの約1%〜約10%の間の範囲内の厚さを有することができる。約50ミクロン〜約500ミクロンの間の範囲内の平均サイズを有する粒子状材料の場合、界面相は、粒子の平均サイズの約0.5%〜約10%の間の範囲内の厚さを有することができる。約500ミクロンを超える平均サイズを有する粒子状材料の場合、界面相は、粒子の平均サイズの約0.1%〜約0.5%の間の範囲内の厚さを有することができる。
【0063】
図8〜11は、一実施形態による結合研磨本体の微細構造の拡大画像である。
図8は、砥粒801と、砥粒801の間に延在する結合剤803とを含む結合研磨本体の一部の断面の走査型電子顕微鏡画像(後方散乱モードで操作)である。図示されるように、結合剤803は、より薄い色で表され結合剤803の体積を通過して延在する析出相805と、より暗い色で表され結合剤803の体積を通過して延在する結合相806との2つの別個の材料相を含む。
【0064】
図9〜11は、
図8の結合研磨本体の同じ領域の拡大画像であり、本体の特定の領域中に存在する選択元素を同定するためのマイクロプローブ分析を使用している。
図9は、銅の多い領域を同定するために設定されたモードにおける
図8の領域のマイクロプローブ画像であり、そのため、より明るい色の領域は銅が存在する領域を示している。一実施形態によると、結合剤803は、銅およびスズの金属合金を含むことができる。さらなる特定の一実施形態によると、結合剤803の結合相806は、結合剤803の少なくとも2つの別個の相の1つであり、析出相805よりも多くの量の銅が存在しうる。
【0065】
図10は、
図8および9の領域の拡大画像であり、結合研磨本体の特定の領域中に存在する選択元素を同定するためのマイクロプローブ分析を使用している。
図10は、スズが存在する領域を同定するために設定されたモードでマイクロプローブを使用しており、そのため、より明るい色の領域は、スズがより多い領域を示している。図示されるように、結合剤803の析出相805は、結合相806よりもスズ含有量が多い。
【0066】
図11は、
図8〜10の領域の拡大画像であり、マイクロプローブ分析を使用している。特に、
図11は、チタンが存在する領域を同定するために設定されたモードでマイクロプローブを使用しており、そのため、より明るい色の領域は、チタンがより多い領域を示している。図示されるように、結合剤803の析出相805は、結合相806よりもチタン含有量が多い。
図11は、砥粒801および結合剤803の界面における界面相1101をも示している。
図11から明らかなように、界面相1101は、特に高含有率のチタンを含み、これは、活性結合組成物前駆体のチタンが、粒子(すなわち砥粒801)の界面に優先的に移動して、砥粒と化学的に反応して、本発明に記載されるように界面相化合物を形成できることを示している。
【0067】
図8〜11は、予期せぬ現象の証拠となっている。完全には理解されていないが、銅およびスズを含む元の結合剤はプロセス中に分離され、これは液相焼結プロセスによるものと理論的に分析されている。スズおよび銅は別個の相となり;それぞれ析出相805および結合相806となる。さらに、スズは優先的に、活性結合組成物前駆体材料中に存在するチタンと結合して、析出相805を形成する。
【0068】
一実施形態によると、結合研磨本体は、結合剤の全体積に対して少なくとも約1体積%の活性結合組成物を含むことができ、これは、界面相および析出相などの活性結合組成物のすべての相を含む。別の場合においては、結合剤中の活性結合組成物の量は、より多くてもよく、そのような少なくとも約4体積%、少なくとも約6体積%、少なくとも約10体積%、少なくとも約12体積%、少なくとも約14体積%、少なくとも約15体積%、またはさらには少なくとも約18体積%であってよい。特定の場合においては、結合剤は、約1体積%〜約40体積%の間の範囲内、たとえば約1体積%〜30体積%の間の範囲内、約1体積%〜約25体積%の間の範囲内、約4体積%〜約25体積%の間の範囲内、または約6体積%〜約25体積%の間の範囲内の量の活性結合組成物を含有する。場合によっては、活性結合組成物の量は、結合剤の全体積の約10体積%〜約30体積%の間の範囲内、約10体積%〜約25体積%の間の範囲内、またはさらには約12体積%〜約20体積%の間の範囲内である。
【0069】
結合研磨本体は、結合剤が特定の破壊靱性(K
1c)を有するように形成することができる。結合剤の靭性はマイクロ押し込み試験またはナノ押し込み試験によって測定することができる。マイクロ押し込み試験は、たとえばこの場合では結合剤などの材料の特定の位置でインデンターに負荷をかけることで研磨したサンプル上に亀裂を発生させる原理によって破壊靭性を測定する。たとえば、好適なマイクロ押し込み試験は、“Indentation of Brittle materials”,Microindentation Techniques in Materials Science and Engineering,ASTM STP 889,D.B.Marshall and B.R. Lawn pp 26−46に開示される方法により行われる。一実施形態によると、結合研磨本体は、約4.0MPa・m
0.5以下の平均破壊靱性(K
1c)を有する結合剤を有する。別の実施形態においては、結合剤の平均破壊靱性(K
1c)は、約3.75MPa・m
0.5以下、たとえば約3.5MPa・m
0.5以下、約3.25MPa・m
0.5以下、約3.0MPa・m
0.5以下、約2.8MPa・m
0.5以下、またはさらには約2.5MPa・m
0.5以下であってよい。結合剤の平均破壊靱性は、約0.6MPa・m
0.5〜約4.0MPa・m
0.5の間の範囲内、たとえば約0.6MPa・m
0.5〜約3.5MPa・m
0.5の間の範囲内、またはさらには約0.6MPa・m
0.5〜約3.0MPa・m
0.5の間の範囲内であってよい。
【0070】
本発明の実施形態の研磨物品は、独特の性質を有することができる。たとえば、結合研磨本体は、少なくとも約2000psi、たとえば少なくとも約4000psi、特に少なくとも約6000psiの破壊係数(MOR)を有することができる。
【0071】
本発明の実施形態の結合研磨本体は、ある研削作業に使用する場合に特定の性質を示す。特に、結合研磨ホイールは、非ドレッシング研削作業に使用することができ、この場合、結合研磨本体は、ツルーイング作業を行った後にドレッシング作業を行う必要がない。従来、ツルーイング作業は、研磨本体を所望の輪郭および形状にするために行われる。ツルーイング後、通常は同等以上の硬度の研磨要素を使用して研磨本体のドレッシングが行われることで、摩耗したグリットが除去され、新しい砥粒が露出する。ドレッシングは、研磨物品の適切な作用を得るための、時間がかかるが従来の研磨物品に必要な方法である。本発明の実施形態の結合研磨本体は、使用中のドレッシングの必要性がはるかに少ないことが分かっており、従来の研磨物品よりも大幅に改善された性能パラメータを有する。
【0072】
たとえば、一実施形態においては、非ドレッシング研削作業中、一実施形態の結合研磨本体は、約40%以下の動力変動を有することができ、動力変動は式[(Po−Pn)/Po]×100%で表される。Poは、初回研削サイクルにおける結合研磨本体で工作物を研削するための研削動力(HpまたはHp/in)を表し、Pnは、n回目の研削サイクルで工作物を研削するための研削動力(HpまたはHp/in)を表し、ここでn≧4である。したがって、動力変動は、初回研削サイクルから引き続く研削サイクルでの研削動力の変化を測定するものであり、少なくとも4回の研削サイクルが行われる。
【0073】
特に、研削サイクルは、連続した方法で行うことができ、これは、結合研磨物品のツルーイングおよびドレッシング作業が研削サイクル間で行われないことを意味する。本発明の実施形態の結合研磨本体は、特定の研削作業中に約25%以下の動力変動を有することができる。さらに別の実施形態においては、結合研磨本体の動力変動は、約20%以下、たとえば約15%以下、またはさらには約12%以下となることができる。ある研磨本体の動力変動は、約1%〜約40%の間の範囲内、たとえば約1%〜約20%の間の範囲内、またはさらには約1%〜約12%の間の範囲内となることができる。
【0074】
さらに動力変動に言及すると、初回研削サイクル(Po)と、n回目の研削サイクルにおける工作物を研削するために使用される研削動力(Pn)との間の研削動力の変化は、研削サイクル数にわたって測定できることに注目すべきであり、ここで「n」は4以上である。別の場合においては、「n」は6以上(すなわち、少なくとも6回の研削サイクル)、10以上、またはさらには12以上であってよい。さらに、n回目の研削サイクルは、研削サイクル間に研磨物品のドレッシングが行われない連続研削サイクルを表すことができることが理解されよう。
【0075】
一実施形態によると、結合研磨本体は、材料除去速度(MRR’)が少なくとも約1.0in
3/分/in[10mm
3/秒/mm]である研削作業に使用することができる。別の実施形態においては、本発明の実施形態の結合研磨本体を使用した研削作業は、少なくとも約4.0in
3/分/in[40mm
3/秒/mm]、たとえば少なくとも約6.0in
3/分/in[60mm
3/秒/mm]、少なくとも約7.0in
3/分/in[70mm
3/秒/mm]、またはさらには少なくとも約8.0in
3/分/in[80mm
3/秒/mm]の材料除去速度で行うことができる。本発明の実施形態の結合研磨本体を使用するある研削作業は、約1.0in
3/分/in[10mm
3/秒/mm]〜約20in
3/分/in[200mm
3/秒/mm]の間の範囲内、約5.0in
3/分/in[50mm
3/秒/mm]〜約18in
3/分/in[180mm
3/秒/mm]の間の範囲内、約6.0in
3/分/in[60mm
3/秒/mm]〜約16in
3/分/in[160mm
3/秒/mm]の間の範囲内、またはさらには約7.0in
3/分/in[70mm
3/秒/mm]〜約14in
3/分/in[140mm
3/秒/mm]の間の範囲内の材料除去速度(MRR’)で行うことができる。
【0076】
さらに、本発明の結合研磨本体は、結合研磨本体を特定の表面速度で回転させる研削作業に使用することができる。表面速度は、工作物と接触する点におけるホイールの速度を意味する。たとえば、結合研磨本体は、少なくとも1500表面フィート毎分(sfpm)、たとえば少なくとも約1800sfpm、たとえば少なくとも約2000sfpm、少なくとも約2500sfpm、少なくとも約5000sfpm、またはさらには少なくとも10000sfpmの速度で回転させることができる。特定の場合においては、結合研磨本体は、約2000sfpm〜約15000sfpmの間の範囲内、たとえば約2000sfpm〜12000sfpmの間の範囲内の速度で回転させることができる。
【0077】
本発明の結合研磨本体は、たとえばプランジ研削作業、クリープフィード研削作業、剥離研削作業、フルート研削作業などの種々の研削作業における使用に好適となりうる。1つの特定の場合においては、結合研磨本体は、エンドミル研削用途での使用に好適である。別の場合においては、結合研磨本体は、たとえばサファイアおよび石英材料などの硬く脆い工作物の薄化に有用となりうる。
【0078】
さらに、本発明の実施形態の結合研磨本体は、研削後に、工作物の平均表面粗さ(Ra)が約50マイクロインチ(約1.25ミクロン)以下となる研削作業に有用となりうる。別の場合においては、工作物の平均表面粗さは、約40マイクロインチ(約1ミクロン)以下、またはさらには約30マイクロインチ(約0.75ミクロン)以下となることができる。
【0079】
別の実施形態においては、本発明の実施形態の結合研磨物品を用いた研削中、少なくとも3回の連続する研削作業での平均表面粗さの変動が約35%以下となりうる。連続する研削作業は、それぞれの研削作業の間でツルーイング作業が行われない作業であることに留意されたい。平均表面粗さの変動は、それぞれ独立した研削作業が行われる場合に工作物のそれぞれの位置における工作物の測定平均表面粗さ(Ra)の標準偏差として計算することができる。ある実施形態によると、少なくとも3回の連続する研削作業の平均表面粗さの変動は、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、またはさらには約5%以下となることができる。
【0080】
別の実施形態によると、結合研磨物品は少なくとも約1200のG比を有することができる。G比は、工作物から除去される材料の体積を、摩耗によって結合研磨本体から失われた材料の体積で割ったものである。別の一実施形態によると、結合研磨本体は、少なくとも約1300、たとえば少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、またはさらには少なくとも約1800のG比を有することができる。ある場合においては、結合研磨本体のG比は、約1200〜約2500の間の範囲内、たとえば約1200〜約2300の間の範囲内、またはさらには約1400〜約2300の間の範囲内であってよい。本明細書に記載のG比の値は、本明細書に記載の材料除去速度で実現することができる。さらに、記載のG比の値は、本明細書に記載の種々の工作物材料の種類に対して実現することができる。
【0081】
言い換えると、本発明の結合研磨物品は、従来の研磨物品、特にメタルボンド研磨物品よりも有意に改善されたG比を有することができる。たとえば、本発明の実施形態による結合研磨本体のG比は、従来の研磨物品のG比よりも少なくとも約5%大きくなることができる。別の場合においては、G比の改善はより大きい場合もあり、たとえば少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、またはさらには少なくとも約30%となりうる。特定の実施形態の結合研磨物品は、従来の結合研磨材と比較して、約5%〜約200%の間の範囲内、約5%〜約150%の間の範囲内、約5%〜約125%の間の範囲内、約5%〜約100%の間の範囲内、約10%〜約75%の間の範囲内、またはさらには約10%〜約60%の間の範囲内でG比の増加が示される。
【0082】
ある種の結合研磨本体は、定常状態の研削動力に十分近い初期研削動力を示す。一般に、定常状態の研削動力は、従来のメタルボンド研磨物品の初期研削動力とは大きく異なる。したがって、初期研削動力からの研削動力の増加は、従来のメタルボンド研磨物品と比較すると本発明の実施形態の結合研磨本体の場合では特に小さい。たとえば、本発明の実施形態の結合研磨本体は、式[(Pn−Po)/Po]×100%で定義される初期研削動力の増加が約40%以下となりうる。式中、Poは、初回研削サイクルにおける結合研磨本体で工作物を研磨するための初期研削動力(HpまたはHp/in)を表し、Pnは、n回目の研削サイクルにおける結合研磨本体で工作物を研削するための研削動力(HpまたはHp/in)を表し、ここでn≧16である。研削サイクルは、結合研磨本体のツルーイングおよびドレッシングが行われない連続研削サイクルであってよいことは理解されよう。
【0083】
一実施形態によると、本発明の実施形態による結合研磨物品を用いた研削作業中、初期研削動力の増加は、約35%以下、たとえば約30%以下、約25%以下、約20%以下、約18%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、またはさらには約8%以下である。特定の場合においては、本発明の結合研磨本体は、初期研削動力の増加が約0.1%〜約40%の間の範囲内、たとえば約0.1%〜約30%の間の範囲内、約1%〜約15%の間の範囲内、約1%〜約12%の間の範囲内、またはさらには約1%〜約8%の間の範囲内となりうる連続研削作業が可能である。
【0084】
別の実施形態においては、結合研磨本体は、約3インチ/分の最小送り速度において少なくとも400秒の研削時間で、約10%以下の初期研削動力の増加を示す。初期研削動力の増加は式[(P400−Po)/Po]×100%により定義することができ、ここで、Poは、最初の研削サイクルにおける結合研磨本体を使用して最初に工作物を研削するための初期研削動力(HpまたはHp/in)を表し、P400は、400秒の研削の後に結合研磨本体を使用して工作物を研削するための研削動力(HpまたはHp/in)を表す。別の特定の研削作業においては、結合研磨本体は、約3インチ/分の最小送り速度で少なくも400秒の研削時間での初期研削動力の増加が、約8%以下、たとえば約6%以下、たとえば約4%以下、またはさらには約2%以下となりうる。特定の研削用途においては、本発明の結合研磨本体は、約3インチ/分の最小送り速度において少なくとも400秒の研削時間で、約0.1%〜約10%の間の範囲内、たとえば約0.1%〜約8%の間の範囲内、たとえば約0.1%〜約6%の間の範囲内、またはさらには約0.1%〜約4%の間の範囲内の初期研削動力の増加を示す。
【0085】
本発明の実施形態の結合研磨本体は、特有の研削性能を有することができ、約3インチ/分の最小送り速度において少なくとも800秒の研削時間で、約20%以下の初期研削動力の増加を示す。このような用途における初期研削動力の増加は、式[(P800−Po)/Po]×100%により定義することができ、ここで、Poは、最初の研削サイクルにおける結合研磨本体を使用して最初に工作物を研削するための初期研削動力(HpまたはHp/in)を表し、P800は、800秒の研削の後に結合研磨本体を使用して工作物を研削するための研削動力(HpまたはHp/in)を表す。さらに、本発明の実施形態の特定の結合研磨物品では、約3インチ/分の最小送り速度において少なくとも800秒の研削時間での初期研削動力の増加がより小さくなることがあり、たとえば約15%以下、約10%以下、またはさらには約8%以下となることができる。本発明の結合研磨本体は、約3インチ/分の最小送り速度において少なくとも800秒の研削時間で、約0.1%〜約20%の間の範囲内、たとえば約0.1%〜約18%の間の範囲内、たとえば約0.1%〜約15%の間の範囲内、またはさらには約0.1%〜約8%の間の範囲内の初期研削動力の増加を示すことができる。このような性質は、硬質または超硬質の工作物を研削する場合に結合研磨本体を機能させるのに特に好適となりうる。
【0086】
別の一実施形態によると、結合研磨本体は、少なくとも約6インチ/分の最小送り速度において少なくとも800秒の研削時間で限定された初期研削動力の増加を示すことができる。たとえば、初期研削動力の増加は、少なくとも約6インチ/分の最小送り速度において少なくとも800秒の研削時間で、約20%以下、たとえば約15%以下、約12%以下、またはさらには約10%以下となることができる。このような性質は、硬質または超硬質の工作物を研削する場合に結合研磨本体を機能させるのに特に好適となりうる。
【0087】
本発明の実施形態の結合研磨本体は、特に硬質工作物などのある種の工作物の研削に好適となりうる。たとえば、工作物は、少なくとも5GPaの平均ビッカース硬度を有することができる。別の場合においては、工作物の平均ビッカース硬度は、少なくとも約10GPa、またはさらには少なくとも約15GPaであってよい。
【0088】
工作物は、金属、金属合金、窒化物、ホウ化物、炭化物、酸化物、酸窒化物、酸ホウ化物、酸炭化物、それらの組み合わせの中でできていてよい。特定の場合においては、工作物は、たとえば炭化タングステンなどの金属炭化物であってよい。炭化タングステンでできた工作物に対して件背悪が行われる例示的な条件においては、炭化タングステン工作物中のコバルトの量は、約5重量%〜約12重量%の間の範囲内であってよい。
【0089】
たとえば特に硬質材料に対してある研削作業を実施する場合、結合研磨本体は少なくとも1800sfpmの速度で操作することができる。別の場合においては、結合研磨本体は、少なくとも1900sfpm、少なくとも約2200sfpm、またはさらには少なくとも2350sfpmの速度で回転させることができる。特定の場合においては、結合研磨本体は、研削作業中に約1800sfpm〜約3100sfpmの間の範囲内、特に約1900sfpm〜約2350sfpmの間の範囲内の速度で回転させることができる。
【0090】
さらに、本発明の実施形態の結合研磨物品は、たとえば、ある送り速度での特に工作物などに対する特定の研削作業に好適となる。たとえば、送り速度は少なくとも約2インチ/分であってよい。別の場合においては、送り速度はより速くてもよく、たとえば少なくとも約3インチ/分、少なくとも約3.5インチ/分、または少なくとも約4インチ/分であってよい。特定の実施形態では、約2インチ/分〜約10インチ/分の間の範囲内、たとえば約3インチ/分〜約8インチ/分の間の範囲内である研削作業において結合研磨本体を使用することができる。
【0091】
さらに別の一実施形態においては、ツルーイング砥石で結合研磨本体のツルーイングを行った後、研削盤の最大主軸動力を超えずに、少なくとも17回の連続研削サイクルで、少なくとも5GPaの平均ビッカース硬度を有する工作物を結合研磨本体が研削可能となる研削作業に結合研磨本体を使用することができる。このように、本発明の結合研磨本体は、特に硬質材料の工作物の研削の場合に改善された実用寿命を示す。実際、ツルーイング作業を行う前に、結合研磨本体は少なくとも約20回の連続研削サイクル、少なくとも約25回の連続研削サイクル、または少なくとも約30回の連続研削サイクルを行うことができる。連続研削サイクルに言及する場合、研削サイクルの間に結合研磨本体ツルーイングおよびドレッシングを行わない連続した方法で研削サイクルが行われることを意味することは理解されよう。
【0092】
本発明の実施形態の結合研磨本体を従来の結合研磨本体と比較すると、一般に、従来の結合研磨物品では、再シャープニングおよび再表面仕上げのためのツルーイング作業が必要となる前に、比較的硬質の工作物に対して約16回以下の連続研削サイクルが行われる。このように、ツルーイング作業が必要となる前、または研削動力が研削盤の出力能力を超える前に行われる連続研削サイクル数によって測定されるように、本発明の実施形態の結合研磨本体が、従来のメタルボンド結合研磨材よりも運転可能な研削時間の改善が示される。
【0093】
当産業において測定される研削性能の別の顕著な改善は、部品数/ドレスであり、これは、性能を維持するために研磨物品のドレッシングが必要となる前に、特定の研磨物品によって機械加工可能な部品数の尺度の1つである。一実施形態によると、本発明の実施形態の結合研磨本体は、部品数/ドレスで測定される工作物の研削効率を、従来のメタルボンド研磨物品と比較して少なくとも約10%増加させることができる。別の一実施形態によると、従来のメタルボンド研磨物品と比較した研削効率の増加は、少なくとも約20%、たとえば少なくとも約30%、少なくとも約40%、またはさらには少なくとも約50%である。特に、このような従来のメタルボンド研磨物品としては、Saint−Gobain Corporationより入手可能なG−ForceおよびSpectorブランドの研磨物品などの最先端の物品をあげることができる。特定の場合においては、部品数/ドレスで測定される研削効率の増加は、約10%〜約200%の間の範囲内、たとえば約20%〜約200%の間の範囲内、約50%〜約200%の間の範囲内、またはさらには約50%〜約150%の間の範囲内の程度であってよい。このような改善が、本明細書に記載の研削条件下で本明細書に記載の工作物に対して実現可能であることは理解されよう。
【0094】
さらに、本発明の実施形態の結合研磨物品は、当産業において摩耗率によって測定される研削性能の改善を示すこともでき、摩耗率は、研削中に研磨物品に生じる摩耗の尺度の1つである。一実施形態によると、従来のメタルボンド研磨物品の摩耗率の少なくとも5%小さい摩耗率で研磨物品が摩耗するように、本発明の実施形態の結合研磨本体が摩耗率の改善を示すことができる。別の一実施形態によると、従来のメタルボンド研磨物品と比較して摩耗率が少なくとも約8%小さくなり、たとえば少なくとも約10%、少なくとも約12%、またはさらには少なくとも約15%小さい。特定の場合においては、摩耗率の改善は約5%〜約100%の間の範囲内、たとえば約5%〜約75%の間の範囲内、約5%〜約0%の間の範囲内、またはさらには約5%〜約50%の間の範囲内の程度となることができる。このような改善が、本明細書に記載の研削条件下で本明細書に記載の工作物に対して実現可能であることは理解されよう。
【0095】
当産業において測定される研削性能の別の顕著な改善は摩耗率であり、これは、研削中に研磨物品に生じる摩耗の尺度の1つである。一実施形態によると、従来のメタルボンド研磨物品の摩耗率の少なくとも5%小さい摩耗率で研磨物品が摩耗するように、本発明の実施形態の結合研磨本体が摩耗率の改善を示すことができる。別の一実施形態によると、従来のメタルボンド研磨物品と比較して摩耗率が少なくとも約8%小さくなり、たとえば少なくとも約10%、少なくとも約12%、またはさらには少なくとも約15%小さい。特定の場合においては、摩耗率の改善は約5%〜約100%の間の範囲内、たとえば約5%〜約75%の間の範囲内、約5%〜約60%の間の範囲内、またはさらには約5%〜約50%の間の範囲内の程度となることができる。このような改善が、本明細書に記載の研削条件下で本明細書に記載の工作物に対して実現可能であることは理解されよう。
【0096】
本発明の実施形態の研磨物品によって示される別の顕著な研削性能の改善としては、使用可能な研削速度の増加が挙げられる。研削速度は、表面仕上げを犠牲にしたり、機械または結合研磨物品の研削動力を超えたりすることなく、工作物を成形できる速度である。一実施形態によると、従来のメタルボンド研磨物品よりも少なくとも5%速い速度で研磨物品が研削可能となるように、本発明の実施形態の結合研磨本体が研削速度の改善を示すことができる。別の場合においては、研削速度は、従来のメタルボンド研磨物品と比較して、より速くなることができ、少なくとも約8%小さい、たとえば少なくとも約10%、少なくとも約12%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、またはさらには少なくとも約25%となることができる。本発明のある結合研磨物品では、研削速度の改善は約5%〜約100%の間の範囲内、たとえば約5%〜約75%の間の範囲内、約5%〜約60%の間の範囲内、またはさらには約5%〜約50%の間の範囲内の程度となることができる。このような改善が、本明細書に記載の研削条件下で本明細書に記載の工作物に対して実現可能であることは理解されよう。
【0097】
特に、研削速度のこのような改善は、本明細書に記載の他の研削パラメータを維持しながら実現することができる。たとえば、本明細書に記載のように限定された初期研削動力の増加、本明細書に記載のように限定された表面仕上げの変動、および本明細書に記載のように限定された摩耗率をも示しながら、研削速度の改善を実現することができる。
【0098】
図12は、一実施形態による結合研磨本体の拡大画像である。図示されるように、結合研磨本体は、金属または金属合金材料を含む結合剤1202の中に含まれ、それらによって取り囲まれた砥粒1201を含む。さらに図示されるように、結合研磨本体は、砥粒1201と結合剤1202との間に延在する孔隙1203を含む実質的に解放された組織を有する。
図12から明らかなように、結合研磨本体は、多量(体積%)の砥粒1201を含み、そのため組織は、結合剤1202によって互いに結合した砥粒1201を主として含有する。さらに、砥粒1201は、互いに近接しており、わずかな結合剤1202が砥粒1201を分離しており、砥粒1201対結合剤1202の比が大きいことを示している。
【実施例】
【0099】
実施例1
最初の結合研磨材サンプルでは、当産業において知られている1A1形状を有する直径4インチのホイールを作製する。サンプルの形成は、27 Philo Curtis Road,Sandy Hook,CT 06482,USAに所在するConnecticut Engineering Associate Corporationより入手したU.S.メッシュ325の大きさの45.96グラムの真鍮粉末(すなわち、銅:スズの重量比が60:40)を含む混合物を形成するステップを含む。この真鍮粉末を、Chemetall Chemical Products,New Providence New Jersey,USAより購入した同じ大きさの5.11グラムの水素化チタンと乾式ブレンドする。USメッシュサイズ−120/+140の立方晶窒化ホウ素の砥粒も真鍮粉末および水素化チタンと混合する。この砥粒は、Saint−Gobain Ceramics and Plastics,Worcester,MAのものであり、CBN−Vとして市販されている。
【0100】
砥粒を加えた後、8.15グラムの有機バインダーを混合物に加え、泥のコンシステンシーとなるまで混合物を剪断する。この有機バインダーは、Wall Colmonoy Co.のS−バインダーのブランド名の熱可塑性樹脂固体、およびVitta CorporationのK424バインダーを含む。次に、混合物をオーブン乾燥して水分を除去する。乾燥させた混合物を粉砕し、ふるい分けして凝集物を得る。この凝集物を、環状形態を有し公称外径4インチおよび内径3.2インチを画定する鋼製金型中に入れる。凝集物を2.4トン/in
2でプレスして未加工物品を形成する。未加工物品を、約10
−4Torrの圧力を有する還元性雰囲気950℃で30分間焼結させる。最終的に形成される結合研磨材は、比(V
AG/V
BM)が3.0であり、気孔(100%相互接続された気孔)の量は本体の全体積の34体積パーセントである。
【0101】
エポキシを使用して鋼製のコアを結合研磨本体に取り付け、さらなる仕上げ、バランシング、および速度試験が行われ、ホイール製造プロセスが終了する。このホイールは、識別のためサンプル1と名付けた。
【0102】
Bryant OD/IDグラインダーの外周円筒プランジ研削方式でサンプル1を使用して、最初から58〜62HRCまで硬化させた52100軸受鋼の工作物を研削する。工作物は、直径4インチの52100鋼ディスクの形態であり、研削作業は外周円筒プランジ研削である。最初に、研削前に、サンプル1を、機械の主軸上に搭載し、Saint−Gobain Abrasives,Arden,NCよりBPRロールとして市販されるBPRダイヤモンドロールを用いてツルーイングする。ツルーイングのパラメータを表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
非ドレッシング研削作業の研磨本体から判断すると研磨グリッドが十分露出しているため、サンプル1は、ツルーイング後にスティック砥石によるドレッシングは行わない。研削パラメータを表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
図1は、2つの異なる材料除去速度(MRR’)(すなわち、1in
3/分/inおよび2in
3/分/in)における、表2に示される研削条件下での、サンプル1の研削動力(HP/in)対研削サイクル数のプロットである。実証されているように、プロット101は、サンプル1が、11Hp/inの初期研削動力および10Hp/inの5回の連続研削サイクル後の研削動力で、1in
3/分/inのMRR’において工作物を研削可能であることを示している。プロット102は、サンプル1が、19Hp/inの初期研削動力および16Hp/inの5回の連続研削サイクル後の研削動力で、2in
3/分/inのMRR’において工作物を研削可能であることを示している。1in
3/分/inのMRR’での工作物の研削におけるサンプル1の動力変動は9%であり、2in
3/分/inのMRR’での工作物の研削におけるサンプル1の動力変動は16%であった。
したがって、サンプル1は、初期研削動力と、5回の連続の研削作業後の定常状態の研削動力との間の変動がわずかであることを示している。工作物は幅が約0.25インチであり、研磨ホイールサンプルは幅が0.5インチとなるように形成した。MRR’を計算するために使用した幅は工作物の幅の0.25インチであった。
【0107】
図1は、Saint−Gobain CorporationよりG−ForceホイールB181−75UP061として市販される従来のメタルボンド研磨物品(サンプルMBS1)の研削動力(HP/in)対研削サイクル数の2つのプロットをさらに含んでいる。実証されているように、プロット103は、サンプルMBS1が、1in
3/分/inのMRR’において40Hp/inの初期研削動力で工作物を研削可能であることを示している。5回連研削サイクル後、サンプルMBS1は、1in
3/分/inのMRR’では10Hp/inの動力で研削する。サンプルMBS1は、非ドレッシング研削作業における動力変動が75%であることを示している。
【0108】
プロット104は、サンプルMBS1は、2in
3/分/inのMRR’において50Hp/inの初期研削動力で工作物を研削可能であることを示している。5回の連続研削サイクル後、サンプルMBS1は、2in
3/分/inのMRR’では10Hp/inの動力で研削する。サンプルMBS1は、非ドレッシング研削作業における動力変動が84%であることを示している。明らかに、非ドレッシング研削作業においては本発明の実施形態の結合研磨物品は、最先端の研磨ホイールよりも研削動力変動に関して大きく改善された性能を示す。
【0109】
図2は、2つの異なる材料除去速度(MRR’)(すなわち、1in
3/分/inおよび2in
3/分/in)における、表2に示される研削条件下での、サンプル1の表面仕上げまたは表面粗さ(Ra)対研削サイクル数のプロットを含んでいる。実証されているように、プロット201および202で表されるサンプルは、連続研削サイクル後に、両方の材料除去速度において、約30マイクロインチ以下の表面仕上げ(Ra)が工作物に対して得られる。さらに、初回研削作業および5回目の研削サイクルとの間のすべての測定表面仕上げ値の変動(すなわち、全測定の標準偏差)は、2以下の変動となる。
【0110】
図2は、2つの異なる材料除去速度(MRR’)(すなわち、1in
3/分/inおよび2in
3/分/in)における、表2に示される研削条件下での、サンプルBMS1の表面仕上げ(Ra)対研削サイクル数をさらに含んでいる。プロット203および204によって実証されているように、両方の材料除去速度においてサンプルMBS1で実現される表面仕上げは、両方の材料除去速度において最初は30マイクロインチであり、さらなる連続研削によって、1in
3/分/inおよび2in
3/分/inのそれぞれの材料除去速度において50マイクロインチおよび約60マイクロインチまで大きく増加することが示されている。両方の材料除去速度におけるサンプルMBS1の平均表面仕上げは約40マイクロインチであり、両方の材料除去速度における表面仕上げの変動(標準偏差)は約10であった。明らかに、サンプル1は、サンプルMBS1よりも、連続研削サイクル後に工作物に対して優れた表面仕上げを得ることができる。
【0111】
実施例2
本明細書に記載のサンプル1と同じ方法を使用してサンプル2を作製する。サンプル2は、砥粒材料の25%を置換する量の溶融石英フィラー材料を含んだ。この溶融石英は、U.S.メッシュ−120/+140の大きさであり、Washington Millsより入手した。最終的に形成された結合研磨材は、比(V
P/V
BM)が2.3であり、気孔(100%相互接続された気孔)の量が本体の全体積の29%体積パーセントである。
【0112】
比較のため、仕様B126−M160VT2BのビトリファイドCBNホイールもサンプルC1として試験に含めた。このような研削ホイールはSaint−Gobain CorporationよりB126−M160VT2B研磨ホイールとして市販されている。
【0113】
図3は、表2に示す研削条件下でのプロット301としてサンプル1、プロット303としてサンプル2、およびプロット305としてサンプルC1の研削動力(HP/in)対研削サイクル数のプロットを含んでいる。2in
3/分/inの材料除去速度を研削中に使用する。プロット301で実証されているように、サンプル1は、18Hp/inの初期研削動力および16Hp/inの5連続研削サイクル後の研削動力で工作物の研削が可能であり、動力変動は約16%である。プロット303は、サンプル2が、17Hp/inの初期研削動力および15Hp/inの5回の連続研削サイクルの研削動力で工作物の研削が可能であり、動力変動が約12%出会ったことを示している。比較によると、プロット305から分かるように、従来のビトリファイド結合研磨材サンプルは、サンプル2と動力の変化が同じであり、動力変動は約12%であった。このように、非常に予期せぬことに、サンプル1および2は、メタルボンド研磨物品であるにもかかわらず、脆い結合剤成分および低い動力変動を有するビトリファイド結合研磨物品により近い挙動を示す。
【0114】
実施例3
サンプル1と同じ形成方法を使用して第3のサンプル(サンプル3)を作製した。最初の混合物は、372グラムの60/40銅/スズの金属結合組成物、41グラムの水素化チタンの活性結合組成物前駆体、359グラムのサイズB181のCBN−Vの砥粒、サイズ100メッシュの38AアルミナとしてSaint−Gobain Grains and Powdersより入手可能な131グラムのフィラー、および58グラムの実施例1で使用したバインダーを使用して形成される。サンプル3は、比(V
P/V
BM)が2.5であり、気孔率は約29体積%である。
【0115】
サンプル3は、直径5インチおよび長さ11インチの丸棒の形状の4140鋼でできた工作物の外径に対する剥離研削作業に使用される。工作物は40〜45HRCまで硬化させている。サンプル3を、Gobain AbrasivesよりB150−M150−VT2Bとして市販されている従来のビトリファイドCBNホイール(サンプルC2)と比較する。
【0116】
直径20インチのホイールを形成するための鋼製ディスクの周辺部に搭載された大型結合研磨ホイールをサンプル3から作製する。サンプル3は、ダイヤモンドロールでツルーイングを行い、後にグリットを露出するためのドレッシングを全く行うことなく工作物の研削に使用される。ツルーイング条件を以下の表3に示す。研削条件を表4に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
結果を
図4および5にまとめている。
図4は、研削動力(Hp)対2つの異なる材料除去速度(すなわち、9.6in
3/分/inおよび12in
3/分/in)の棒グラフである。棒401は、9.6in
3/分/inの材料除去速度における初回のパスの後にサンプル3による工作物の研削中に使用される研削動力を表している。棒402は、9.6in
3/分/inの材料除去速度における工作物の25回の連続研削サイクル(すなわち複数回のパス)の後の工作物の研削中のサンプル3の研削動力を表している。図示されるように、サンプル3は、ツルーイング作業を行わない25回の連続研削サイクルにわたる研削動力の変化が非常に小さいことを示している。実際、研削動力の変化は約12%未満であると概算される。
【0120】
棒403および404は、9.6in
3/分/inの材料除去速度における、工作物のサンプルC2による研削中、および工作物の25回の連続研削サイクル(すなわち複数回のパス)後に使用される研削動力を示している。サンプル3をサンプルC2と比較すると、サンプル3は、従来のメタルボンド研磨物品よりもビトリファイド結合研磨物品により近い挙動を示すことに注目されたい。
【0121】
棒405は、12in
3/分/inの材料除去速度における初回パスの後にサンプル3による工作物の研削中に使用される研削動力を表している。棒406は、12in
3/分/inの材料除去速度における工作物の25回の連続研削サイクル(すなわち複数回のパス)の後の工作物の研削中のサンプル3の研削動力を表している。この場合も、サンプル3は、ツルーイング作業を行わない25回の連続研削サイクルにわたる研削動力の変化が非常に小さいことを示している。実際、研削動力の変化は約10%未満であると概算される。
【0122】
棒407および408は、12in
3/分/inの材料除去速度における、工作物のサンプルC2による研削中、工作物の初回パスにおいて、および25回の連続研削サイクル(すなわち複数回のパス)後に使用される研削動力を示している。サンプル3をサンプルC2と比較すると、サンプル3は、従来のメタルボンド研磨物品よりもビトリファイド結合研磨物品により近い挙動を示すことに注目されたい。
【0123】
図5は、サンプル3およびサンプルC2の研削比(G比)対2つの異なる材料除去速度(すなわち、9.6in
3/分/inおよび12in
3/分/in)の棒グラフである。
図示されるように、両方の材料除去速度においては、サンプル3は、サンプルC2よりもかなり大きなG比を有する。実際、主軸動力および表面仕上げに関してサンプル3はサンプルC2と比較して実質的に同じであるが、両方の材料除去速度において、サンプル3のG比は、サンプルC1のG比よりも35%〜50%大きい。
【0124】
実施例4
実施例1に記載の方法に従って第4のサンプル(サンプル4)を作製する。最初の混合物は、138グラムの60/40の銅−スズの金属結合組成物、活性結合成分前駆体としての15グラムの水素化チタン、20グラムの実施例1の有機バインダー、およびSaint−Gobain Ceramics and PlasticsよりRB 270/325 U.S.メッシュのダイヤモンドグリットとして入手可能な164グラムのダイヤモンドから形成される。サンプル4は、比(V
AG/V
BM)が2.3であり、気孔率は約36体積%である。
【0125】
研削作業は、直径1インチであり10重量%のコバルトをバインダーとして有する炭化タングステン工作物の溝削りを含む。サンプル4の研削性能を、18.75体積%の砥粒、71.25体積%の結合剤、タイプRB 270/325 U.S.メッシュのダイヤモンド砥粒を有する最先端のメタルボンドホイール(Saint−Gobain Corporationより入手可能なG−Force Abrasive)に対して試験した。
【0126】
両方のサンプルについて、使用前にオフラインでツルーイングおよびドレッシングを行った。サンプルを鋼製アーバ上に搭載し、バランシングを行った。このような方法で一般に使用される100グリット、Hグレード、およびビトリファイドボンドの炭化ケイ素ホイールでサンプルのツルーイングを行う。サンプルを、約5000sfpmで動く炭化ケイ素ホイールの表面速度の約1/10の速度で回転させる。サンプルホイールを回転させながら、ホイールが正確な状態であると見なされるまで、0.001インチの切り込み深さおよび10インチ/秒の横送り速度でツルーイングする。各サンプルは、研削のためにグリットを露出させるために200メッシュの炭化ケイ素ホイールでドレッシングも行う。スティックを用いたドレッシングは、同じ基準点からすべての研削を開始するときに完了する。
【0127】
研削試験の結果を
図6に示す。
図6は、3つの異なる条件下でのサンプル1、および1つの条件でのサンプルC2の主軸動力(Hp)対研削時間(秒)のプロットである。サンプルC2はプロット601で表され、3000rpmのホイール速度および3.75インチ/分の研削速度で研削を行った。図示されるように、サンプルC2は、連続研削サイクルに必要な研削動力が大きく増加した。初期研削動力は約1.8Hpであり、約1200秒の時間の16回の研削サイクルで3Hpまで大幅に増加している。サンプルC2は、閾値研削動力から少なくとも40%の研削動力の増加を示した。
【0128】
対照的に、サンプル4は、種々の研削条件での初期研削動力の増加が非常にわずかであることが示された。プロット602は、3000rpmおよび3.75インチ/分の研削速度における工作物に対するサンプル4の研削動力を示している。これらの条件は、サンプルC2の試験に使用した研削条件と同じである。プロット602で示されるように、サンプル4は、初期研削動力が約1.5Hpであり、ほぼ1200秒における16回の連続研削サイクルの後の最終研削動力は2Hpである。サンプル4は、閾値動力の増加がわずか25%であることを示している。サンプル4は、サンプルC2と比較して大きく改善された実用研削寿命を示している。
【0129】
プロット603は、2500rpmおよび3.75インチ/分の研削速度における工作物に対するサンプル4の研削動力を示している。プロット603で示されるように、サンプル4は、初期研削動力が約1.8Hpであり、1200秒にわたる16回の連続研削サイクル後の最終研削動力が1.8Hpである。サンプル4は、研削サイクル全体で域値出力が事実上全く増加していないことを示しており、サンプルC2と比較して非常に改善された実用研削寿命を示している。
【0130】
プロット604は、2500rpmおよび6.5インチ/分の研削速度における工作物に対するサンプル4の研削動力を示している。プロット604で示されるように、サンプル4は、初期研削動力が約2.8Hpであり、約800秒における16回の連続研削サイクル後の最終研削動力が1.9Hpである。サンプル4は、研削サイクル全体で域値出力が事実上全く増加していないことを示しており、サンプルC2と比較して非常に改善された実用研削寿命を示している。
【0131】
上述の研削性能に加えて、サンプル4の結合研磨本体(プロット602および603)は、ドレッシングする前に、10個の部品に対応する合計40個の溝をし続けることができた。対照的に、サンプルC2は、ドレッシングを必要とするまでに、4個の部品に対応する合計16個の溝を研削することができた。このように、サンプル4は、部品数/ドレスで測定して、従来のサンプルC2よりも約125%の研削効率の改善を示している。
【0132】
さらに、プロット601および604を比較すると、サンプル4は、従来のサンプルC2よりも改善された研削速度が可能であることを示している。プロット604の研削条件下で、サンプル4は、約1100秒を要したサンプルC2と比較して、約700秒で同じ数の部品(合計4個)を研削可能であることを示している。したがって、サンプル4は、従来のサンプルC2に対して300秒の研削時間の改善を示しており、約36%の改善に相当する。さらに、プロット601および604の送り速度条件に基づくと、サンプル4は、従来のサンプルC2と比較して73%の研削速度(インチ/分を使用)の改善を示した。さらに、サンプル4は、実質的に同じ研削動力を維持しながら改善された献策速度を達成したが、サンプルC2は研削動力の急速で不満足な増加を示した。
【0133】
実施例5
6%のコバルトを有する直径0.5インチの炭化タングステンの工作物に対するフルート研削に、サンプル4およびサンプルC2を使用する。この種の被削材は、プロット701および702の間の差で示されるように、炭化タングステン含有量が多い(94%対90%)ために実施例4の項作物よりも研削が困難である。プロット701は、10%のコバルトバインダーを有する炭化タングステンの工作物に対する、3000rpmおよび6インチ/分の研削速度で800秒の研削時間でのサンプルC2の研削動力を表している。実際、プロット701は
図6のプロット601と同じである。プロット702は、6%のコバルトバインダーを有する炭化タングステンの工作物に対する、3000rpmおよび6インチ/分の研削速度で800秒の研削時間でのサンプルC2の研削動力を表している。図示されるように、サンプルC2の場合、10%のコバルトを有する工作物の研削に必要な動力は、わずか6%のコバルトを有する炭化タングステンでできた工作物の研削に必要な動力よりもはるかに少ない。
【0134】
比較すると、プロット703は、わずか6%のコバルトを有する炭化タングステンの項作物に対して、2500rpmの速度、8インチ/分の研削速度において600秒未満の研削時間で研削作業を行うサンプル4の研削動力を示している。図示されるように、プロット703および702を比較すると、サンプル4は、より速い速度およびより高い効率でより多くの量の炭化タングステン工作物を研削できる。すなわち、サンプル4は、サンプルC2と比較すると、連続研削サイクル全体にわたって研削動力の変化がはるかに少ない。
【0135】
サンプル4およびサンプルC2のそれぞれの研削性能を表すプロット702および703をさらに比較すると、サンプル4は研削速度の改善をも示したことに注目されたい。特に、研削動力がほとんどまたは全く増加することなく、約800秒を必要とするサンプルC2が必要とする部品数と同じ部品数を研削するのに、サンプル4はわずか約500秒しか必要としなかった。したがって、サンプル4は、従来のサンプルC2と比較して約31%の研削速度の増加を達成した。さらに、サンプルC2が同じ部品数を研削するのに要する時間よりも速い。
【0136】
本明細書に記載の結合研磨本体は、従来のメタルボンド研磨物品とは別個の組成および研削特性を示す。本発明の実施形態の研磨物品の研削特性は、最先端のメタルボンド研磨物品よりもガラス結合研磨物品に近い。本発明の実施形態の結合研磨本体は、効率的な研削の改善された寿命を示し、他の従来のメタルボンド研磨本体よりも必要なドレッシングが大幅に少なく、最先端のメタルボンド研磨本体と比較して改善された摩耗特性を有する。特に、本発明の結合研磨本体は、ツルーイング作業を行った後に別のドレッシング作業を必要としない場合があり、これは従来のメタルボンド結合研磨物品のコンディショニング作業とは異なる。すなわち、金属結合剤を使用する結合研磨本体の再表面仕上げおよびシャープニングを行うために、ツルーイング砥石とドレッシングスティックとを併用することが当産業において典型的な手順である。したがって、本発明の実施形態の結合研磨本体は、ドレッシング1回当たりにより多くの数の部品を研削可能であり、そのため、最先端のメタルボンド研磨物品よりも高い効率および長い寿命が得られる。
【0137】
さらに、本明細書に記載の結合研磨本体の形成方法の特定の態様は、特定の組成物および微細構造的特徴と関連があると考えられる。本発明の実施形態の結合研磨本体は、形成方法に起因し改善された研削性能に有用となりうる複数の特徴の組み合わせ、たとえば、活性結合組成物、活性結合組成物の特定の相、およびそのような相の特定の位置、気孔の種類および量、砥粒の種類および量、フィラーの種類および量、粒子対結合剤の比、研磨材対結合剤の比、ならびに特定の成分の機械的性質(たとえば、破壊靱性)などを含む。
【0138】
以上において、特定の実施形態、および特定の構成要素の関係に対する言及は説明的なものである。複数の構成要素が結合または関連付けられるとの言及は、本明細書に記載の方法を実施するための前記構成要素の間の直接的な関係、または1つ以上の介在する構成要素を介した間接的な関係のいずれかを開示することを意図していることは理解されよう。したがって、上記開の主題は、説明的なものと見なすべきであり、限定的なものと見なすべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内となるこのようなすべての修正、向上、およびその他の実施形態を含むことを意図している。したがって、法律によって許容される最大限において、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの同等物の最も広い許容されうる解釈によって定められるべきであり、以上の詳細な説明によって限定および制限されるべきではない。
【0139】
本開示は、請求項の範囲および意味を解釈または限定するために使用すべきではない。さらに、以上の説明は、本開示を簡素化する目的で、互いにまとめられたり、1つの実施形態で説明されたりする場合がある種々の特徴を含んでいる。請求される実施形態が、各請求項に明確に記載されるよりも多くの特徴を必要する意図を反映するものと、本開示が解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲を反映して、本発明の主題は、開示される実施形態のいずれかのすべての特徴よりも少なくなるように誘導することができる。
金属を含む結合剤中に含まれる砥粒を含む本体を備える研磨物品であって、前記本体は、前記結合剤の全体積の少なくとも約1体積%の活性結合組成物を含み、前記本体はさらに少なくとも約5体積%の気孔を含み、前記結合剤の平均破壊靱性(K1c)は約4.0MPa・m0.5以下である、研磨物品。