【解決手段】サセプタの上方に設けられ、第1流路と、該第1流路とは独立した第2流路とが形成されたシャワーヘッドを備え、該第1流路は、第1上壁と第1下壁に囲まれた水平方向に広がる第1キャビティと、該第1上壁に形成された第1細孔と、該第1下壁に形成された複数の第2細孔と、を有することで該シャワーヘッドを貫通し、該第1上壁は該第1細孔から離れるほど鉛直方向高さが低くなり、該第2流路は、第2上壁と第2下壁に囲まれた水平方向に広がる第2キャビティと、該第2上壁に形成された第3細孔と、該第2下壁に形成された複数の第4細孔と、を有することで該シャワーヘッドを貫通し、該第2上壁は該第3細孔から離れるほど鉛直方向高さが低くなる。
前記第3細孔は、前記第4細孔が形成された領域の中央直上と、前記第4細孔が形成された領域の外縁直上との間に複数形成されたことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
前記第1細孔、前記第1キャビティ、及び複数の前記第2細孔、又は前記第3細孔、前記第2キャビティ、及び複数の前記第4細孔を経由して前記サセプタの上に提供され、前記サセプタの外縁の外側に広がったガスを排気する、前記シャワーヘッドと前記サセプタを囲む形状の排気ダクトを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る成膜装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る成膜装置の一部の断面斜視図である。この成膜装置はシャワーヘッド10を備えている。シャワーヘッド10は、基板の表面に均等な密度のガスを供給するために設けられている。シャワーヘッド10は、ベースプレート12、ミドルプレート14及びアッパープレート16を備えている。ベースプレート12とミドルプレート14は間隙を設けて配置されている。ベースプレート12とミドルプレート14の上にアッパープレート16がのせられている。アッパープレート16は、ベースプレート12上のOリング18を圧縮変形させている。なお、ミドルプレート14とアッパープレート16は例えばセラミック等で一体的に形成してもよい。
【0012】
シャワーヘッド10には、第1流路20と、第1流路20とは独立した第2流路30とが形成されている。したがって、このシャワーヘッド10はいわゆるダブルシャワーヘッドを構成している。第1流路20は、第1細孔20aと、第1キャビティ20bと、複数の第2細孔20cを有している。第1細孔20aはミドルプレート14とアッパープレート16に形成された鉛直方向に伸びる細孔である。第1細孔20aはシャワーヘッド10の上面中央から第1キャビティ20bに至る流路を提供している。第1キャビティ20bは水平方向に広がっている。第1キャビティ20bは、ミドルプレート14の下面である第1上壁22と、ベースプレート12の上面である第1下壁24に囲まれた領域である。
【0013】
第2細孔20cは、ベースプレート12に形成された鉛直方向に伸びる細孔である。第2細孔20cは第1キャビティ20bからベースプレート12の下方へとガスを導く。第2細孔20cは第1下壁24に等間隔で複数形成されている。このように、第1流路20は、第1キャビティ20bと、第1上壁22に形成された第1細孔20aと、第1下壁24に形成された複数の第2細孔20cとを有することでシャワーヘッド10を貫通するものである。
【0014】
第2流路30は、第3細孔30aと、第2キャビティ30bと、複数の第4細孔30cを有している。第3細孔30aは、シャワーヘッド10の上面12aの外縁側からシャワーヘッド10の中央(一点鎖線が引かれた部分)につながるようにベースプレート12に形成された細孔である。第3細孔30aは、ベースプレート12の上面12a側から第2キャビティ30bに至る流路を提供する。第2キャビティ30bは水平方向に広がっている。第2キャビティ30bは、ベースプレート12の中に形成された第2上壁32と第2下壁34に囲まれた領域である。
【0015】
このように、第2流路30は、第2キャビティ30bと、第2上壁32に形成された第3細孔30aと、第2下壁34に形成された複数の第4細孔30cと、を有することでシャワーヘッド10を貫通するものである。
【0016】
ところで、第1キャビティ20bと第2キャビティ30bは、平面視でアッパープレート16の直下全体に広がる空間である。そして、第1キャビティ20bの直下に一定密度で第2細孔20cが形成され、第2キャビティ30bの直下に一定密度で第4細孔30cが形成されている。第2細孔20cは、
図1の一点鎖線左側だけでなく、一点鎖線右側にも形成されている。
【0017】
シャワーヘッド10は、シャワーヘッド10を囲む環状の排気ダクト40の上にのせられている。排気ダクト40の上に設けられたOリング42の上にシャワーヘッド10がのせられることでOリング42が弾性変形している。排気ダクト40はベースプレート12の側面に接する凸部40aを有している。この凸部40aにより、シャワーヘッド10の外側に環状排気路40bが形成されている。
【0018】
シャワーヘッド10の上方にはガス供給システムがある。第1細孔20aには、バルブ51を介してN
2ガス源が接続され、バルブ52を介して第1ガスのガス源が接続されている。第3細孔30aには、バルブ53を介してN
2ガス源が接続され、バルブ54を介して第2ガスのガス源が接続されている。4つのバルブ51、52、53、54の開閉はコントローラ50によって制御される。
【0019】
図2は、ベースプレート12の底面図である。ベースプレート12の底面には、第2細孔20cと第4細孔30cが一定密度で形成されている。第2細孔20cと第4細孔30cは、シャワーヘッド10の底面全体に形成されている。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態1に係る成膜装置の断面図である。第1上壁22は第1細孔20aから離れるほど鉛直方向高さが低くなっている。言い換えれば、第1上壁22は、シャワーヘッド10の中央から外側に向かうほど鉛直方向高さが低下する斜面となっている。第1下壁24の鉛直方向高さは一定である。
【0021】
第2上壁32は第3細孔30a(第3細孔30aと第2キャビティ30bの接続点)から離れるほど鉛直方向高さが低くなっている。言い換えれば、第2上壁32は、シャワーヘッド10の中央から外側に向かうほど鉛直方向高さが低下する斜面となっている。第2下壁34の鉛直方向高さは一定である。
【0022】
排気ダクト40には、環状排気路40bのガスを外部へ排気する排気管60が取り付けられている。排気ダクト40は環状板64を介してチャンバ62にのせられている。チャンバ62の中のシャワーヘッド10の下方にはサセプタ70が設けられている。サセプタ70は、例えば直径300mm以上のウエハを搭載する大きさである。
サセプタ70の上には基板72が搭載される。なお、基板72は被成膜物であれば特に限定されないが、例えば直径0.3mのウエハである。
【0023】
図4は、
図3の一点鎖線より左側のベースプレート12の拡大図である。第2キャビティ30bの中に柱12pが形成されている。第2細孔20cは、この柱12pを縦方向に貫く。
図5は、
図4のV−V線における断面図である。第2キャビティ30bの中に一定密度で柱12pが設けられている。柱12pの中央に第2細孔20cが形成されている。
【0024】
次に、実施の形態1に係る成膜装置を用いた成膜方法を説明する。
図6は、実施の形態1に係る成膜装置による成膜方法を説明する図である。まず、コントローラ50によってバルブ51、52を開き、第1細孔20aに第1ガスとN
2ガスを供給する。これらのガスは、第1キャビティ20bにて左右方向(水平方向)に広がった後に、複数の第2細孔20cからサセプタ70の上に供給される。これにより、第1ガスが基板72と反応し基板72に膜が形成される。バルブ51、52を開放する期間を第1成膜期間という。
【0025】
次いで、バルブ52を閉めることで、第1細孔20aに不活性ガス(N
2ガス)だけを供給する。これにより、第1流路20の第1ガスをパージする。つまり、第1流路20から第1ガスが除去され、不活性ガスだけが存在する状態となる。バルブ51だけを開放する期間を第1パージ期間という。
【0026】
第1成膜期間と第1パージ期間においては、第1細孔20a、第1キャビティ20b、及び複数の第2細孔20cを経由してサセプタ70の上にガスが提供され、サセプタ70の外縁の外側に広がったガスは、サセプタ70を囲む形状の排気ダクト40によって外部に排気される。
【0027】
次いで、バルブ51を閉じ、バルブ53、54を開ける。これにより、第3細孔30aに第2ガスとN
2ガスを供給する。第2ガスとN
2ガスは、第2キャビティ30bにて左右方向(水平方向)に広がった後に、複数の第4細孔30cからサセプタ70の上に供給される。これにより、第2ガスが基板72と反応し膜が形成される。バルブ53、54を開放する期間を第2成膜期間という。
【0028】
次いで、バルブ54を閉めることで、第3細孔30aに不活性ガス(N
2ガス)だけを供給する。これにより、第2流路30の第2ガスをパージする。つまり、第2流路30から第2ガスが除去され、不活性ガスだけが存在する状態となる。バルブ53だけを開放する期間を第2パージ期間という。
【0029】
第2成膜期間と第2パージ期間においては、第3細孔30a、第2キャビティ30b、及び複数の第4細孔30cを経由してサセプタ70の上にガスが提供され、サセプタ70の外縁の外側に広がったガスは、排気ダクト40によって外部に排気される。これらの一連の処理を繰り返すことで、第1ガスと第2ガスを交互に基板72に供給する。なお、第1ガスと第2ガスの種類は特に限定されないが、第1ガスは例えばprecursorであり、第2ガスは例えばreactive gasである。
【0030】
ここで、本発明の特徴の理解を容易にするために比較例について説明する。
図7は、比較例に係る成膜装置の断面図である。比較例の成膜装置は第2上壁32の鉛直方向高さが一定である点で、実施の形態1に係る成膜装置と異なる。
【0031】
図8は、比較例に係る成膜装置の第2パージ期間における第2ガスの濃度を示すシミュレーション結果である。時刻0において第2パージ期間が開始する。r(second cavity)とは、
図7における第2キャビティ30dの中央(破線部分)からの距離である。r(second cavity)が0.00mの点は第2キャビティ30dのうち基板72の中央直上の地点を指す。r(second cavity)が0.15mの点は第2キャビティ30dのうち基板72の最外周の直上の地点を指す。
図7にはr(second cavity)が0.00、0.05、0.10、0.15[m]の場所が示されている。
図8から分かるように、r(second cavity)の値が大きい場所ほど第2ガスが排気されずらい。すなわち、第2キャビティ30dの外側の領域で第2ガスのパージが困難となっている。
【0032】
r(substrate)は基板の直上における、中央(破線部分)からの距離である。r(substrate)は
図7に示されている。r(substrate)が0.00mの点は基板72の中央直上の地点を指す。r(substrate)=0.15mの点は基板72の外縁直上の地点を指す。
図8から分かるように、r(substarate)の値が0.15mの地点で第2ガスのパージが遅い。r(substrate)が0.15mの地点におけるパージが遅いのは、r(second cavity)の値が0.15mの地点におけるパージが遅いことに起因すると考えられる。このように、比較例に係る成膜装置では、ガスの流路を迅速にパージできない問題があった。
【0033】
ところが、本発明の実施の形態1に係る成膜装置によれば、第2パージ期間において第2流路30を迅速にパージできる。このことについて、
図9、10を参照して説明する。
図9は、第2ガスの濃度をシミュレーションした地点を示す図である。
図10は、
図9で示す地点における第2ガスの濃度変化を示すシミュレーション結果である。
【0034】
図10から分かるように、第2キャビティ30bの外周側(r(second cavity)が0.15mとなる地点)で、0.2秒程度で第2ガスがパージされている。また、基板の直上ではr(substrate)の値によらず迅速なパージができている。したがって、第2上壁32の鉛直方向高さを第3細孔30aから離れるほど低くすることで、第2流路30のパージを迅速に行うことができる。なお、第1キャビティ20bは第2キャビティ30bと同じ形状を有しているので、第1流路20も迅速にパージできる。
【0035】
第1細孔20aは、第1上壁22のうち、サセプタ70の中央直上に形成されている。そのため、第1細孔20aから供給された第1ガスは第1キャビティ20b内を放射状に広がる。第1上壁22の鉛直方向高さを第1細孔20aから離れるほど低くすることで、第1ガスは第1キャビティ20b内を放射状に広がりやすくなっている。このため、第1キャビティ20bの外周側の部分までガスが到達しやすくなっているので、第1流路20を迅速にパージできる。
【0036】
第3細孔30aは、第2上壁32のうち、サセプタ70の中央直上に形成されている。そのため、第3細孔30aから供給された第2ガスは第2キャビティ30b内を放射状に広がる。第2上壁32の鉛直方向高さを第3細孔30aから離れるほど低くすることで、第2ガスは第2キャビティ30b内を放射状に広がりやすくなっている。このため、第2キャビティ30bの外周側の部分までガスが到達しやすくなっているので、第2流路30を迅速にパージできる。
【0037】
サセプタ70の上方に設けられたシャワーヘッド10については様々な変形が可能である。例えば、第2細孔20cと第4細孔30cは丸穴に限らず、スリットにしてもよい。不活性ガスはN
2ガスに限定されず例えばArガスでもよい。
【0038】
これらの変形は以下の実施の形態に係る成膜装置に適宜応用できる。また、以下の実施の形態に係る成膜装置は、実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0039】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2に係る成膜装置の断面図である。第1流路については実施の形態1の第1流路と同様である。第2流路100は、第3細孔100aと、第2キャビティ100bと、複数の第4細孔100cを備えている。第3細孔100aはミドルプレート14とアッパープレート16に形成された鉛直方向にまっすぐ伸びる細孔である。また、第3細孔100aは第1キャビティ20bの中に設けられた柱を貫通する。第3細孔100aは、第4細孔100cが形成された領域の中央直上と、第4細孔100cが形成された領域の外縁直上との間に複数形成されている。
図11には、2つの第3細孔100aが示されている。
【0040】
第2キャビティ100bは第2上壁102と第2下壁104に囲まれた領域である。第2上壁102は第3細孔100aから離れるほど鉛直方向高さが低くなっている。その結果、第2上壁102は、基板72の中央直上と基板72の外縁直上で鉛直方向高さが最低となっている。第2下壁104の鉛直方向高さは一定である。
【0041】
実施の形態2の構成によれば、実施の形態1の成膜装置と同様に、ガス流路の迅速なパージが可能となる。第3細孔100aは、ミドルプレート14とアッパープレート16に形成された直線的な穴だけで構成される。したがって、実施の形態1の第3細孔30aのように複雑な穴を形成する必要がない。なお、第3細孔100aの数は複数であれば特に限定されない。
【0042】
実施の形態3.
図12は、本発明の実施の形態3に係る成膜装置の断面図である。第1流路については実施の形態1の第1流路と同様である。第2流路150は、第3細孔150aと、第2キャビティ150bと、複数の第4細孔150cを備えている。第3細孔150aはベースプレート12に形成された細孔である。
【0043】
第2キャビティ150bは第2上壁152と第2下壁154に囲まれた領域である。
第2上壁152の外縁部に第3細孔150aが形成されている。第3細孔150aは、シャワーヘッドの上面の外縁側から第2キャビティ150bに至る流路を提供する。
図12には、2つの第3細孔150aが示されている。
【0044】
第2上壁152は第3細孔150aから離れるほど鉛直方向高さが低くなっている。その結果、第2上壁152は、基板72の中央直上で鉛直方向高さが最低となっている。第2下壁154の鉛直方向高さは一定である。
【0045】
実施の形態3の構成によれば、実施の形態1の成膜装置と同様に、ガス流路の迅速なパージが可能となる。また、第3細孔150aは外部と第2キャビティ150bをつなぐ直線的な穴だけで構成される。したがって、実施の形態1の第3細孔30aのように複雑な穴を形成する必要がない。なお、第3細孔150aの数は複数であれば特に限定されない。