(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-110712(P2016-110712A)
(43)【公開日】2016年6月20日
(54)【発明の名称】イオナイザ
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20160523BHJP
H01T 23/00 20060101ALN20160523BHJP
【FI】
H05F3/04 J
H01T23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-244225(P2014-244225)
(22)【出願日】2014年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】笹田 直人
(72)【発明者】
【氏名】今野 優
(72)【発明者】
【氏名】安岡 孝
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067DA19
5G067DA21
(57)【要約】
【課題】正極側の高電圧出力回路による正極高電圧の発生効率を向上させると共に、負極側の高電圧出力回路で発生するリップル電圧を低下させて負極高電圧の出力低下を防止する。
【解決手段】一次側が交流電源5,6に交互に接続される正極側トランス8及び負極側トランス9と、前記正極側トランス8の二次側の接地端子8a及び電源端子8bに第1入力端子13及び第2入力端子14が接続され、第1出力端子15から直流の正極高電圧を出力する正極側の高電圧出力回路10と、負極側トランス9の二次側の接地端子9a及び電源端子9bに第3入力端子20及び第4入力端子21が接続され、第2出力端子22から直流の負極高電圧を出力する負極側の高電圧出力回路11と、前記第1出力端子15に接続された放電電極3とを有し、前記正極側トランス8の接地端子8aと、前記正極側の高電圧出力回路10の第1入力端子13とが、コンデンサ16を介して接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側と二次側とを有し、一次側が交流電源にスイッチ機構により交互に接続され、二次側に接地端子と電源端子とを有する正極側トランス及び負極側トランスと、
第1入力端子及び第2入力端子と、第1出力端子とを有し、前記第1入力端子及び第2入力端子は、前記正極側トランスの前記接地端子及び電源端子に接続され、前記第1出力端子から直流の正極高電圧を出力する正極側の高電圧出力回路と、
第3入力端子及び第4入力端子と、第2出力端子とを有し、前記第3入力端子及び第4入力端子は、前記負極側トランスの前記接地端子及び電源端子に接続され、前記第2出力端子から直流の負極高電圧を出力する負極側の高電圧出力回路と、
前記正極側の高電圧出力回路の前記第1出力端子に接続された放電電極と、
前記正極側トランスの前記接地端子と、前記正極側の高電圧出力回路の前記第1入力端子とを接続する、リップル電圧減衰用のコンデンサと、
前記負極側の高電圧出力回路の第2出力端子と、前記正極側の高電圧出力回路の第1入力端子とを接続する接続ラインと、
を有することを特徴とするイオナイザ。
【請求項2】
前記正極側の高電圧出力回路の第1出力端子と第1入力端子とは、第1抵抗を介して接続され、また、前記負極側の高電圧出力回路の第2出力端子と第3入力端子とは、第2抵抗を介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のイオナイザ。
【請求項3】
前記正極側及び負極側の高電圧出力回路は、ダイオードとコンデンサとからなるコッククロフト・ウォルトン回路で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオナイザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正、負共通の放電電極から正極性及び負極性のイオンを交互に発生させて帯電体の電荷を除去(除電)する、パルスAC方式のイオナイザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
正、負共通の放電電極から正極性及び負極性のイオンを交互に発生させて帯電体の電荷を除去するパルスAC方式のイオナイザは、例えば特許文献1によって公知である。この公知のイオナイザは、
図3に示すような高電圧発生回路を有している。この高電圧発生回路は、一次側が交流電源30a,30bにスイッチ31a,31bで交互に接続される正極側及び負極側のトランス32a,32bと、該正極側及び負極側のトランス32a,32bの二次側に接続された正極側及び負極側の高電圧出力回路33a,33bと、両回路に共通に接続された放電電極34とを有していて、前記正極側及び負極側の高電圧出力回路33a,33bを前記トランス32a,32bを介して交流電源30a,30bに交互に接続することにより、該正極側及び負極側の高電圧出力回路33a,33bで正極性及び負極性の高電圧を交互に発生させて前記放電電極34に出力し、該放電電極34から正極性及び負極性のイオンを交互に発生させるものである。
前記正極側及び負極側の高電圧出力回路33a,33bは、複数のコンデンサCと複数のダイオードDとからなるコッククロフト・ウォルトン回路で構成されている。
また、同様の高電圧発生回路は、特許文献2にも開示されている。
【0003】
前記イオナイザにおいて、前記正極側の高電圧出力回路33aと負極側の高電圧出力回路33bとを接続する場合、負極側の高電圧出力回路33bの出力が正極側の高電圧出力回路33aの基準電位となるように、該負極側の高電圧出力回路33bの出力端子35と正極側の高電圧出力回路33aの入力端子36とを、接続ライン37で互いに接続している。その際、前記正極側のトランス32aの接地端子38と前記入力端子36とを、互いに分断することによって絶縁している。このように、前記接地端子38と入力端子36とを互いに絶縁することにより、前記正極側のトランス32aの耐電圧を低くすることができるというメリットがある。
【0004】
しかしながら、前記接地端子38と入力端子36とを互いに絶縁すると、
図3に示すように、正極側の高電圧出力回路33aの昇圧動作時に、正極側のトランス32aの二次電圧により発生する交流電流I1,I2が、正極側の高電圧出力回路33aと負極側の高電圧出力回路33bとの両方を流れるため、その流通経路が長くなり、その結果、正極高電圧の発生効率が低下し、放電電極34に印加される正極高電圧が低下するという問題が生じる。
なお、前記交流電流I1は、前記トランス32aの二次側の電圧が図で上向きになった時の電流であり、交流電流I2は、前記トランス32aの二次側の電圧が図で下向きになった時の電流である。
【0005】
また、前記コッククロフト・ウォルトン回路は、ダイオードDによる整流作用とコンデンサCによる平滑作用とを組み合わせることにより、昇圧した直流高電圧を出力する回路である。この回路においては、前記コンデンサCが平滑動作時に充電と放電とを繰り返すため、前記高電圧出力回路33a,33bから出力される直流高電圧Voの波形は、
図4に示すように、交流成分が重畳されることによってリップル状になり、そのリップル電圧はVpである。図中の符号Vtは、前記トランス32a,32bの二次電圧である。
【0006】
このため、前記負極側の高電圧出力回路33bの動作時に、その出力端子35から正極側の高電圧出力回路33aの入力端子36に入力された負極高電圧が該正極側の高電圧出力回路33aを通るとき、前記リップル電圧Vpが該正極側の高電圧出力回路33aで昇圧され、その結果、前記放電電極34に出力される負極高電圧が低下するという問題も生じる。このような出力低下は、前記コッククロフト・ウォルトン回路の接続段数分だけ生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5508302号公報
【特許文献2】特許第4687716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術的課題は、パルスAC式のイオナイザにおいて、正極側のトランスを高耐圧にすることなく、正極側の高電圧出力回路による正極高電圧の発生効率を向上させると共に、負極側の高電圧出力回路の出力端子で発生するリップル電圧を低下させて放電電極における負極高電圧の出力低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のイオナイザは、一次側と二次側とを有し、一次側が交流電源にスイッチ機構により交互に接続され、二次側に接地端子と電源端子とを有する正極側トランス及び負極側トランスと、第1入力端子及び第2入力端子と、第1出力端子とを有し、前記第1入力端子及び第2入力端子は、前記正極側トランスの前記接地端子及び電源端子に接続され、前記第1出力端子から直流の正極高電圧を出力する正極側の高電圧出力回路と、第3入力端子及び第4入力端子と、第2出力端子とを有し、前記第3入力端子及び第4入力端子は、前記負極側トランスの前記接地端子及び電源端子に接続され、前記第2出力端子から直流の負極高電圧を出力する負極側の高電圧出力回路と、前記正極側の高電圧出力回路の第1出力端子に接続された放電電極と、前記正極側トランスの前記接地端子と、前記正極側の高電圧出力回路の前記第1入力端子とを接続する、リップル電圧減衰用のコンデンサと、前記負極側の高電圧出力回路の第2出力端子と、前記正極側の高電圧出力回路の第1入力端子とを接続する接続ラインとを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、前記正極側の高電圧出力回路の第1出力端子と第1入力端子とは、第1抵抗を介して接続され、また、前記負極側の高電圧出力回路の第2出力端子と第3入力端子とは、第2抵抗を介して接続されていることが望ましい。
また、本発明において、前記正極側及び負極側の高電圧出力回路は、ダイオードとコンデンサとからなるコッククロフト・ウォルトン回路で構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正極側トランスの接地端子と、正極側の高電圧出力回路の第1入力端子とを、リップル電圧減衰用のコンデンサを介して接続したことにより、前記正極側のトランスを高耐圧にすることなく、正極側の高電圧出力回路による正極高電圧の発生効率を向上させることができると共に、負極側の高電圧出力回路の出力端子で発生するリップル電圧を減衰させて、放電電極における負極高電圧の出力低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るイオナイザの一実施形態の回路図である。
【
図2】減衰用コンデンサによるリップル電圧の減衰効果を示す線図である。
【
図4】公知のイオナイザの高電圧出力回路の出力端子から出力されるリップル電圧を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係るパルスAC式イオナイザの一実施形態を示す回路図である。このイオナイザは、正極側の高電圧発生部1と、負極側の高電圧発生部2と、これら正極側及び負極側の高電圧発生部1,2に共通に接続された放電電極3とを有し、スイッチ機構4で前記正極側の高電圧発生部1と負極側の高電圧発生部2とを交流電源5,6に交互に接続することにより、前記高電圧発生部1,2で正極性及び負極性の高電圧を交互に発生させて前記放電電極3に出力し、該放電電極3から正極性及び負極性のイオンを交互に放出させるものである。
【0014】
前記正極側の高電圧発生部1は、一次側と二次側とを有する正極側トランス8と、該正極側トランス8の一次側に第1のスイッチ4aを介して接続された第1の交流電源5と、前記正極側トランス8の二次側の接地端子8aと電源端子8bとに接続された正極側の高電圧出力回路10とを有している。
【0015】
前記正極側の高電圧出力回路10は、4つのダイオードD1−D4と4つのコンデンサC1−C4とからなる2段接続のコッククロフト・ウォルトン回路で構成されていて、第1入力端子13及び第2入力端子14と、第1出力端子15とを有している。前記第1入力端子13は、前記正極側トランス8の前記接地端子8aに、リップル電圧減衰用のコンデンサ16(以下、「減衰用コンデンサ」という)を介して接続され、前記第2入力端子14は、前記正極側トランス8の前記電源端子8bに接続され、前記第1出力端子15に前記放電電極3が接続されている。また、前記第1出力端子15と前記第1入力端子13とが、第1抵抗R1を介して相互に接続されている。
【0016】
前記4つのダイオードD1−D4のうち、2つのダイオードD1,D3は、前記正極側トランス8の接地端子8aに連なる接地ラインL1と、電源端子8bに連なる電源ラインL2との間に、前記接地ラインL1から電源ラインL2に向かう電流に対して順方向となるように接続され、残りの2つのダイオードD2,D4は、その逆に、前記電源ラインL2から接地ラインL1に向かう電流に対して順方向となるように接続されている。また、4つのコンデンサC1−C4のうち、2つのコンデンサC1,C3は、前記電源ラインL2上に直列に接続され、残りの2つのコンデンサC2,C4は、前記接地ラインL1上に直列に接続されている。
【0017】
一方、前記負極側の高電圧発生部2は、一次側と二次側とを有する負極側トランス9と、該負極側トランス9の一次側に第2のスイッチ4bを介して接続された第2の交流電源6と、前記負極側トランス9の二次側の接地端子9aと電源端子9bとに接続された負極側の高電圧出力回路11とを有している。
【0018】
前記負極側の高電圧出力回路11は、4つのダイオードD5−D8と4つのコンデンサC5−C8とからなる2段接続のコッククロフト・ウォルトン回路で構成されていて、第3入力端子20及び第4入力端子21と、第2出力端子22とを有している。前記第3入力端子20は、前記負極側トランス9の前記接地端子9aに接続され、前記第4入力端子21は、前記負極側トランス9の前記電源端子9bに接続されている。前記第2出力端子22は、接続ライン23によって前記正極側の高電圧出力回路10の第1入力端子13に接続されている。また、前記第2出力端子22と前記第3入力端子20とが、第2抵抗R2を介して相互に接続されている。
【0019】
また、前記4つのダイオードD5−D8のうち、2つのダイオードD5,D7は、前記負極側トランス9の接地端子9aに連なる接地ラインL3と、前記電源端子9bに連なる電源ラインL4との間に、該電源ラインL4から前記接地ラインL3に向かう電流に対して順方向となるように接続され、残りの2つのダイオードD6,D8は、その逆に、前記接地ラインL3から電源ラインL4に向かう電流に対して順方向となるように接続されている。また、4つのコンデンサC5−C8のうち、2つのコンデンサC5,C7は、前記電源ラインL4上に直列に接続され、残りの2つのコンデンサC6,C8は、前記接地ラインL3上に直列に接続されている。
【0020】
なお、本実施形態では、前記正極側及び負極側の高電圧出力回路10,11の前記ダイオードD1−D8とコンデンサC1−C8とが2段に接続されているが、それらは3段以上接続することもできる。
【0021】
前記第1のスイッチ4aと第2のスイッチ4bとは、制御回路4cと共に前記スイッチ機構4を構成するもので、前記制御回路4cで前記第1のスイッチ4aと第2のスイッチ4bとを交互に開閉することにより、前記正極側トランス8と負極側トランス9とが交流電源5,6に交互に接続されるようになっている。
【0022】
前記構成を有するイオナイザにおいて、前記スイッチ機構4の制御回路4cで、前記第1のスイッチ4aが閉鎖されると共に前記第2のスイッチ4bが開放されると、正極側トランス8の一次側が交流電源5に接続され、該正極側トランス8の二次側に発生した交流の二次電圧が、前記電源端子8bと接地端子8aとを通じて前記正極側の高電圧出力回路10に印加される。
そうすると、前記高電圧出力回路10において、前記二次電圧の極性が反転する毎に、各ダイオードD1−D4が順次導通状態になって各コンデンサC1−C4が順次充電され、最終的に、前記第1出力端子15から、整流及び平滑されて昇圧された直流の正極高電圧が出力される。この正極高電圧は前記放電電極3に印加され、該放電電極3から正極性のイオンが放出される。
【0023】
このとき、前記正極側トランス8の二次電圧により発生する交流電流I1,I2が流れる経路は、
図1に示すように正極側の高電圧出力回路10内だけとなり、それらの経路長は、
図3に示す公知のイオナイザに比べて非常に短い。このため、正極高電圧の発生効率が、前記公知のイオナイザに比べて向上する。
なお、前記交流電流I1は、前記正極側トランス8の二次側の電圧が図で上向きになった時の電流であり、交流電流I2は、前記正極側トランス8の二次側の電圧が図で下向きになった時の電流である。
【0024】
図1に示すように減衰用コンデンサ16を有する本発明のイオナイザと、減衰用コンデンサ16を取り外して前記接地端子8aと第1入力端子13とを絶縁した回路構成(
図3参照)を有する比較用のイオナイザとを使用し、各イオナイザのコッククロフト・ウォルトン回路の接続段数を4段、同回路のコンデンサの容量を100pF、前記減衰用コンデンサの容量を68pFにし、正極側トランス8の入力電圧を8Vにして実験を行ったところ、本発明のイオナイザにおいては、前記放電電極3に印加される正極高電圧が6.0kVであったのに対し、比較用のイオナイザの場合には、放電電極3に印加される正極高電圧は5.8kVであり、前記減衰用コンデンサ16を設けることによって出力電圧が200Vも高くなることが確認された。
【0025】
なお、前記第1のスイッチ4aが開放されると、前記正極側の高電圧出力回路10の各コンデンサC1−C4にチャージされた電荷は、前記第1抵抗R1を通じて放電される。
【0026】
次に、前記スイッチ機構4の制御回路4cで、前記第2のスイッチ4bが閉鎖されると共に前記第1のスイッチ4aが開放されると、負極側トランス9の一次側が交流電源6に接続され、該負極側トランス9の二次側に発生した交流の二次電圧が、前記電源端子9bと接地端子9aとから前記負極側の高電圧出力回路11に印加される。
そうすると、前記高電圧出力回路11において、前記二次電圧の極性が反転する毎に、各ダイオードD5−D8が順次導通状態になって各コンデンサC5−C8が順次充電され、最終的に、前記第2出力端子22から、整流及び平滑されて昇圧された直流の負極高電圧が出力される。この負極高電圧は、前記接続ライン23を通じて前記正極側の高電圧出力回路10の第1入力端子13に入力され、この正極側の高電圧出力回路10を通じて前記放電電極3に印加されることにより、該放電電極3から負極性のイオンが放出される。
【0027】
このとき、
図2に示すように、前記高電圧出力回路11から出力される直流の負極高電圧Voの波形は、交流成分が重畳されることによってリップル状になるが、前記減衰用コンデンサ16が設けられていない場合、その波形の一部は点線のようになり、その時のリップル電圧はVp1である。
しかし、前記減衰用コンデンサ16が、前記正極側トランス8の接地端子8aと正極側の高電圧出力回路10の第1入力端子13との間に接続されていることにより、前記リップル状の負極高電圧Voは、
図2に実線で示すように平滑化され、そのリップル電圧はVp2まで減衰される。
【0028】
即ち、前記減衰用コンデンサ16の配置は、
図1に鎖線で示すように、この減衰用コンデンサ16を、前記第2出力端子22と第3入力端子20との間に前記コンデンサC5,C6と並列に接続したことと同じことであるため、これら減衰用コンデンサ16とコンデンサC5,C6とによって接地ラインL3に沿った静電容量が増加する。このように静電容量が増加すると、平滑動作時の放電時間が長くなるため、前記第2出力端子22における負極高電圧のリップル電圧が小さくなる。
【0029】
そして、その結果、前記負極高電圧が正極側の高電圧出力回路10を通る際に、前記リップル電圧が該正極側の高電圧出力回路10で昇圧される割合が小さくなるため、前記放電電極3に印加される負極高電圧の低下が防止されることになる。
なお、
図2中の符号Vtは、前記トランス9の二次電圧である。
【0030】
また、前記負極側の高電圧出力回路11の第2出力端子22から前記正極側の高電圧出力回路10の第1入力端子13に入力された直流の負極高電圧は、前記減衰用コンデンサ16により遮断され、正極側トランス8の接地端子8aに入力されないため、該正極側トランス8を高耐圧にする必要はない。
【0031】
図1に示すように減衰用コンデンサ16を有する本発明のイオナイザと、減衰用コンデンサ16を取り外して前記接地端子8aと第1入力端子13とを絶縁した回路構成(
図3参照)を有する比較用のイオナイザとを使用し、各イオナイザのコッククロフト・ウォルトン回路の接続段数を4段、同回路のコンデンサの容量を100pF、前記減衰用コンデンサの容量を68pFにし、正極側トランス8の入力電圧を8Vにした状態で、前記放電電極3に印加される負極高電圧を測定したところ、本発明に係るイオナイザの負極高電圧は−5.7kVであったのに対し、比較用のイオナイザの負極高電圧は−5.4kVであった。この結果から、前記減衰用コンデンサ16によってリップル電圧が減衰されることにより、前記放電電極3に印加される負極高電圧の低下が大幅に抑制されることが確認された。
【0032】
なお、前記第2のスイッチ4bが開放されると、前記負極側の高電圧出力回路11の各コンデンサC5−C8にチャージされた電荷は、前記第2抵抗R2を通じて放電される。
【0033】
以上に詳述したように、本実施形態においては、前記正極側トランス8の前記接地端子8aと、前記正極側の高電圧出力回路10の前記第1入力端子13とを、前記減衰用コンデンサ16を介して接続したことにより、前記正極側の高電圧発生部1の動作時には、正極側トランス8の二次電圧により発生する交流電流が流れる経路が短くなって正極高電圧の発生効率が向上し、一方、前記負極側の高電圧発生部2の動作時には、負極側の高電圧出力回路11の第2出力端子22から出力される負極高電圧に重畳される前記リップル電圧が、前記減衰用コンデンサ16により平滑化されて減衰される結果、前記放電電極3に出力される負極高電圧の出力低下が防止されるという利点がある。
【符号の説明】
【0034】
3 放電電極
4 スイッチ機構
5,6 交流電源
8 正極側トランス
9 負極側トランス
8a,9a 接地端子
8b,9b 電源端子
10 正極側の高電圧出力回路
11 負極側の高電圧出力回路
13 第1入力端子
14 第2入力端子
15 第1出力端子
16 減衰用コンデンサ
20 第3入力端子
21 第4入力端子
22 第2出力端子
23 接続ライン
D1−D8 ダイオード
C1−C8 コンデンサ
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗