(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-110766(P2016-110766A)
(43)【公開日】2016年6月20日
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/18 20060101AFI20160523BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20160523BHJP
H01B 7/17 20060101ALI20160523BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20160523BHJP
【FI】
H01B7/18 B
G02B6/44 346
G02B6/44 336
G02B6/44 341
G02B6/44 366
H01B7/18 H
H01B7/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-245540(P2014-245540)
(22)【出願日】2014年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】SEIオプティフロンティア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514310615
【氏名又は名称】株式会社エス・アイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100131037
【弁理士】
【氏名又は名称】坪井 健児
(74)【代理人】
【識別番号】100099069
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨田 明生
(72)【発明者】
【氏名】岡部 圭寿
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晴彦
【テーマコード(参考)】
2H001
2H150
5G309
5G313
【Fターム(参考)】
2H001BB02
2H001BB07
2H001BB15
2H001BB16
2H001DD07
2H001DD10
2H001DD14
2H001DD23
2H001FF02
2H001KK07
2H001KK17
2H001PP01
2H150BB09
2H150BC03
2H150BC04
2H150BC11
2H150BC12
2H150BC17
2H150BD00
2H150BD06
2H150BD16
5G309KA04
5G313AA05
5G313AB01
5G313AB03
5G313AB10
5G313AD06
5G313AE02
5G313AE05
(57)【要約】
【課題】長手方向の引っ張り強度を高め、用途の広いケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線または電線を有するケーブルコア10と、ケーブルコアを被覆するシース20とを備えたケーブル1である。シースは、所定の繊維で編組されてケーブルコアの外周を覆う内層21と、該内層とは異なる繊維で編組されて前記内層の外周を覆う外層22とを有する。より好ましくは、前記内層が高張力繊維であり、前記外層が滑り性を有した繊維である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線または電線を有するケーブルコアと、該ケーブルコアを被覆するシースとを備えたケーブルであって、
前記シースは、所定の繊維で編組されて前記ケーブルコアの外周を覆う内層と、該内層とは異なる繊維で編組されて前記内層の外周を覆う外層とを有する、ケーブル。
【請求項2】
前記内層が高張力繊維である、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記高張力繊維の引っ張り破断強度が250kgf/mm2以上である、請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記外層が滑り性を有した繊維である、請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記滑り性を有した繊維は、ポリエチレン板に対する滑り摩擦係数が0.2〜0.4である、請求項4に記載のケーブル。
【請求項6】
前記外層の吸水率が0.1%以下である、請求項4または5に記載のケーブル。
【請求項7】
前記シースは、樹脂で形成されて前記外層の外周を覆う最外層を有し、前記樹脂が耐候性を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記耐候性を有する樹脂は、150mW/cm2の紫外線を240時間当てたときに引っ張り破断強度の残率が80%以上であるものである、請求項7に記載のケーブル。
【請求項9】
前記ケーブルコアと前記シースとの間に、液体または気体を輸送させるパイプを収容する、請求項1から8のいずれか1項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに関し、詳しくは、光ファイバ心線または電線を収容するケーブルコアと、ケーブルコアを被覆するシースとを備えたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
競技場等では、被写体が広範囲に亘って動くため、カメラを走行させながら被写体を撮影するシステムが導入されている。例えば、複数本の柱が配置され、柱間にはワイヤが張られており、カメラがワイヤ上を走行しながら、動く被写体を撮影する。
カメラと伝送装置等とは例えば通信用のケーブルで接続され、撮影された映像はケーブルを介してカメラから伝送装置に伝送される。
【0003】
特許文献1には、電線とロープを一体化させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3077418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラの駆動電力が仮に内蔵したバッテリから供給される場合、カメラの重量が増加する。特許文献1に開示されたような電線とロープを一体化させた技術を利用すれば、カメラから離れた位置の電源装置とカメラとを給電用のケーブルで接続し、駆動電力を、当該ケーブルを介して電源装置からカメラに供給可能になる。ところで、上記カメラに接続される通信用や給電用のケーブルは、カメラの走行により引っ張られるので、長手方向の引っ張り強度が要求される。しかしながら、上記特許文献1では、被覆材(ロープ材)にポリエステル繊維等の合成繊維が用いられ、摩耗に対する強度を高めているが、引っ張り強度を高めることについては示唆されておらず、ケーブルをロープのように利用し難いという問題がある。
【0006】
これに対し、ケーブルをロープのように利用するために、ケーブルの内部にテンションメンバ(抗張力線ともいう)を配置すると、ケーブルの軽量化を図れないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、軽量化を図りつつ、ロープのように利用できるケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るケーブルは、光ファイバ心線または電線を有するケーブルコアと、該ケーブルコアを被覆するシースとを備えたケーブルであって、前記シースは、所定の繊維で編組されて前記ケーブルコアの外周を覆う内層と、該内層とは異なる繊維で編組されて前記内層の外周を覆う外層とを有する。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、軽量化を図りつつ、ロープのように利用できる用途の広いケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるケーブルの一例を示す図である。
【
図2】本発明によるケーブルの他の例を示す図である。
【
図4】本発明によるケーブルの他の例を示す図である。
【
図5】本発明によるケーブルの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一態様に係るケーブルは、(1)光ファイバ心線または電線を有するケーブルコアと、該ケーブルコアを被覆するシースとを備えたケーブルであって、前記シースは、所定の繊維で編組されて前記ケーブルコアの外周を覆う内層と、該内層とは異なる繊維で編組されて前記内層の外周を覆う外層とを有する。シースが少なくとも二重構造の編組で構成されているため、テンションメンバを用いる場合に比べてケーブルの軽量化を図ることができると共に、内層を構成する繊維の長所と外層を構成する繊維の長所の双方を備えることが可能になる。よって、ケーブルをロープのように利用可能になり、用途の広いケーブルを提供できる。
【0012】
(2)前記内層が高張力繊維である。内層を高張力繊維で形成すれば、長手方向の引っ張り強度が高いので、ケーブルをロープのように利用できる。(3)前記高張力繊維の引っ張り破断強度が250kgf/mm
2以上である。
(4)前記外層が滑り性を有した繊維である。外層を滑り性のある繊維で形成すれば、例えば滑車に掛け回すことも可能になる。(5)前記滑り性を有した繊維は、ポリエチレン板に対する滑り摩擦係数が0.2〜0.4である。(6)前記外層の吸水率が0.1%以下である。
【0013】
(7)前記シースは、樹脂で形成されて前記外層の外周を覆う最外層を有し、前記樹脂が耐候性を有する。シースの最外層を耐候性のある樹脂で形成すれば、例えば屋外常設が可能になる。(8)前記耐候性を有する樹脂は、150mW/cm
2の紫外線を240時間当てたときに引っ張り破断強度の残率が80%以上であるものである。
(9)前記ケーブルコアと前記シースとの間に、液体または気体を輸送させるパイプを収容する。液体輸送用または気体輸送用のパイプをケーブルに収容すれば、この点も用途の広いケーブルの提供に寄与する。
【0014】
[本発明の実施形態の詳細]
図により本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1,2は、本発明によるケーブルの一例を示す図であり、
図1は通信用のケーブルの概略を示す断面図、
図2は給電用のケーブルの概略を示す断面図である。
図1,2に示すように、ケーブル1は、ケーブルコア(カーンともいう)10の外周がシース(マントルともいう)20で被覆されている。
【0015】
ケーブルコア10は、
図1に示すように、単心の光ファイバ心線11を例えばチューブ13や押え巻きテープ等で保持したもの、または、
図2に示すように、導体線15を絶縁層16で被覆した絶縁電線などが該当する。本発明の電線はシールド電線や同軸電線であってもよい。光ファイバ心線や電線は直径が1.5mm〜5mmのものが好ましい。
なお、
図1では、光ファイバ心線11とチューブ13との間には空間(図中にAで示す)が形成されているが、光ファイバ心線11を緩衝材と共にチューブ13に収容してもよい。
図2で説明した絶縁層16には、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等が用いられる。また、ケーブルコアに、光ファイバ心線および導体線の双方を収容することも可能である。
【0016】
ケーブルコア10とシース20はルース構造になっていて、ケーブル1に生じた外力はシース20で吸収され、ケーブルコア10に伝わり難くなるので、
図1で説明した光ファイバ心線11の場合、その損失を低減できる。
【0017】
図3は、
図1に示した通信用のケーブルの側面図である。シース20は、少なくとも二重構造の編組で構成され、互いに異なる繊維で形成された第1層21および第2層22を有している。なお、
図3では通信用のケーブルの例を挙げて説明するが、シース20は
図2で説明した給電用のケーブルも同じ構造である。
詳しくは、シース20の第1層21は、ケーブル1の長手方向の引っ張り強度に優れた繊維、例えばアラミド繊維(ケブラー(登録商標))のような高張力繊維で筒状に編組されており、ケーブルコア10の外周を覆っている。なお、第1層21が本発明の内層に相当する。第1層を構成する繊維は、引っ張り破断強度が250kgf/mm
2〜350kgf/mm
2のものが好ましい。
【0018】
第1層21は、太さが1420デニールのケブラーであり、例えば、打ち数12本、持ち数2本、ピッチ40mm、外径3.5mmである。
例えばケブラー49は、単位面積当りの引っ張り強度は約300kgf/mm
2(20.8cN/dtex、1kgf/mm
2=9.8MPa)、破断伸度は2.4%、比重は1.44であり、鋼線とケブラー49とを比較した場合、単位面積当りの引っ張り強度は約200kgf/mm
2と約300kgf/mm
2、比重は7.85と1.44とでそれぞれ示される。このため、ケブラーの引っ張り強度は鋼線の約1.5倍になり、ケブラーの重量は鋼線の約18.3%程度で済む。なお、現在想定される設備で安全率を20に設定した場合には、ケーブル全体の引っ張り強度は500kgf以上が好ましい。
【0019】
このように、第1層21を高張力繊維で編組すれば、引っ張りに対するケーブルの強度を高めることができると共に、テンションメンバを配置する場合に比べてケーブルの軽量化を図ることができる。よって、通信用あるいは給電用のケーブルをロープのように利用可能になり、用途の広いケーブルを提供できる。また、ケーブル外径は、直径が約3.5mm未満の単心の光ファイバ心線や電線の場合には5mm程度に抑えられ、鋼線等を用いた場合に比べて半分以下に抑えることができる。
【0020】
一方、シース20の第2層22は、耐摩耗性を有し、かつ、滑り性を有した繊維(例えばポリアミド繊維)で筒状に編組されており、第1層21の外周を覆っている。なお、第2層22が本発明の外層に相当する。ナイロンを一例に挙げると、引っ張り強度は約58kgf/mm
2(5cN/dtex)、破断伸度は19%、比重は1.13である。
また、滑り性を有した繊維(例えばポリプロピレン繊維(パイレン(登録商標))で筒状に編組されていてもよい。このパイレンは、引っ張り強度は約51kgf/mm
2(5.5cN/dtex)、破断伸度は40%、比重は0.91である。そして、このパイレンの吸水率が0%であり、その表面が滑らかで滑り性が良い。
第2層の滑り性はポリエチレン板に対する滑り摩擦係数で規定することができる。ポリエチレン板に対する滑り摩擦係数が0.2以上0.4以下のものが本発明のケーブルのシースの第2層として好適である。
ポリプロピレン繊維は、耐薬品性に優れている。本発明のケーブルは滑車に掛けられて使用されることがある。その場合に滑車に付いた油がシースの第2層に付着することがあるが、ポリプロピレン繊維は油による劣化がない点でも優れる。
本発明のケーブルは屋外でも使用できる。屋外で使用する上で、シースの吸水率が低いことが要求される。シースが吸水すると膨潤してシース表面に凹凸が生じてしまう。ケーブルを滑車に掛けて滑らせて使用する場合に、表面に凹凸があると滑り性が悪い。シースの第2層は吸水率が0.3%以下のものが好ましい。吸水率が0.1%以下であるとさらに好ましい。
また、屋外で使用する上でケーブルには耐候性が要求される。耐候性は、紫外線に曝された場合にシースの劣化が少ないことで規定され、本発明のケーブルのシースの第2層の耐候性は、150mW/cm
2の紫外線を240時間照射した場合に、シースの引っ張り破断強度の残率が80%以上であることが好ましい。このような材料にはポリプロピレンがあげられる。
【0021】
このパイレンによる第2層22は、太さが1520デシテックスであり、例えば、打ち数24本、持ち数1本、ピッチ15mm、外径4.2mmである。第2層22のピッチは、第1層21のピッチ(30〜80mm)の半分程度(10〜40mm)が好ましい。
第2層22を耐摩耗性のある繊維で形成すれば、擦り減りが生じ難いため、ケーブルコア10内を保護できる。また、第2層22を滑り性のある繊維で形成すれば、例えば滑車に掛け回すことも可能になる。
また、第1層21と第2層22のように特性の異なるものを組み合わせ、例えば、第1層21と第2層22の各伸び量を同等となるように調整すれば、第1層21または第2層22が他方よりも突出することによる、端部での第1層21と第2層22とのずれがない。
【0022】
図4は、本発明によるケーブルの他の例を示す図であり、通信用のケーブルの概略を示す断面図である。本発明のケーブルコアに収容される光ファイバ心線は、
図1で説明した単心線だけでなく、
図4(A)に示すような、光ファイバ心線11を複数本集めたものや、
図4(B)に示すような、例えば4心の光ファイバテープ心線12を1枚あるいは複数枚集めたものであってもよい。なお、ケーブルコアの内部に、光ファイバ心線11や光ファイバテープ心線12を収容するための、樹脂製のスロットを配置してもよい。
【0023】
また、その図示は省略するが、パイプをケーブル内に配置してもよい。具体的には、例えばケーブルコア10を覆うような1本のパイプ、あるいは、ケーブルコア10とシース20との空間を埋めるような複数本のパイプを設け、液体または気体を輸送可能に構成してもよい。液体輸送用または気体輸送用のパイプをケーブルに収容すれば、この点も用途の広いケーブルの提供に寄与する。パイプの材質は、PVC、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ETFEなどのフッ素樹脂、ナイロンなどがある。
【0024】
図5は、本発明によるケーブルの他の例を示す図であり、通信用のケーブルの概略を示す断面図である。
上述の各実施形態では、二重構造のシースの例を挙げて説明したが、シース20は、第2層22の外周を覆う第3層23を備えることもできる。具体的には、第3層23を耐候性を有した樹脂(例えばポリエチレン樹脂)で筒状に形成すれば、ケーブル1の例えば屋外常設化が可能になる。なお、第3層23が本発明の最外層に相当する。
【0025】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0026】
1…ケーブル、10…ケーブルコア、11…光ファイバ心線、12…光ファイバテープ心線、13…チューブ、15…導体線、16…絶縁層、20…シース、21…第1層、22…第2層、23…第3層。