【実施例】
【0055】
図1は、本実施例に係るステアリングホイールのステアリング芯金と装飾体取付部を示す正面図である。
図2は、同ステアリングホイールのリング部における断面図であり、
図3は、同ステアリングホイールのリング部に取り付けられるヒーター部材の展開図である。
【0056】
なお、ステアリングホイールは、通常、傾斜状態で配されるステアリングシャフトに装着されるものの、本発明において、前後方向とは、ステアリングシャフトの軸方向を言い、特に、ステアリングホイールに対してステアリングシャフト側の方向(ステアリングホイールを運転者が正面から見たときの奥側の方向)を前方とし、運転者側の方向(ステアリングホイールを運転者が正面から見たときの手前側の方向)を後方とする。また、ステアリングホイールを運転者が正面から見た場合において、ステアリングホイールがニュートラル位置のときにおける上下方向及び左右方向を、それぞれ上下方向及び左右方向とする。
【0057】
本実施例のステアリングホイールは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の後述するボス部6の乗員側となる後面に装着される図示しないエアバッグ装置と、ステアリングホイール本体1の裏面(前面)側を被覆する図示しないロアカバーとなどを有しており、ステアリングホイール本体1は、鉄、アルミニウム、マグネシウムなどの金属材料を用いて形成され、骨格(芯体)として形成される芯金を有する。
【0058】
また、ステアリングホイール本体1は、運転者が握るグリップ部となる円環状のリング部(リム部)5と、リング部5の略中央に位置するボス部6と、リング部5とボス部6間を連結する3本のスポーク部7とを有しており、本実施例では、ステアリングホイール本体1を正面から見たときに、3本のスポーク部7がボス部6から略T字状に配されている。
【0059】
ステアリングホイール本体1のリング部5は、円環状のリング芯金10と、リング芯金10の外周を被覆する被覆層11と、被覆層11に固定される装飾体取付部(装飾体取付体)20と、被覆層11を覆うようにリング部5の周方向全体に配される表皮材12と、被覆層11と表皮材12の間に積層状に配されるヒーター部材(面状発熱体)30と、装飾体取付部20に固着する装飾体(フィニッシャ)13とを有する。
【0060】
リング芯金10は、略U字状の断面形状を備えており、リング芯金10の内周側には、3本のスポーク部7のスポーク芯金が連結されている。被覆層11は、リング芯金10の略全体を覆うとともにリング芯金10に固着しており、ポリウレタンなどの軟質の合成樹脂により形成されている。
【0061】
装飾体取付部20は、被覆層11より硬質のABS樹脂等の合成樹脂又は金属により形成されており、被覆層11の成形時にその成形用金型内にリング芯金10とともにインサート部材として挿入されることにより、被覆層11に一体的に固定される。この場合、装飾体取付部20は、リング部5の乗員対向面側(後面側)で、且つ、内周側の位置に取り付けられる。
【0062】
本実施例において、装飾体取付部20は、ステアリングホイールを運転者が正面から見た場合において、アナログ時計における約10時から2時までの角度範囲に配される上側装飾体取付部20aと、約3時から4時までの角度範囲に配される右側装飾体取付部20bと、約5時から7時までの角度範囲に配される下側装飾体取付部20cと、約8時から9時までの角度範囲に配される左側装飾体取付部20dとを有する。
【0063】
また
図2に示したように、リング部5の上下左右に配される各装飾体取付部20a〜20dは、リング芯金10に接触する芯金接触面21と、芯金接触面21の内周側及び外周側に配され、被覆層11に固着する固着面22と、リング部5に表皮材12及び装飾体13が取り付けられていない状態にて外部に露出する露出面23とを有する。
【0064】
更に、装飾体取付部20の露出面23は、表皮材12が被せられる又は貼着する表皮材取付面24と、表皮材12の後述する開口窓部内に位置し、装飾体13が取り付けられる装飾体取付面25とを有する。この場合、装飾体取付部20の表皮材取付面24は、被覆層11の外周面との間に段差がなく、被覆層11の外面と連続するように形成される。
【0065】
更に、装飾体取付部20は、内周側の表皮材取付面24と装飾体取付面25との間に段差部26が設けられており、表皮材12をリング部5へ巻き付けるときに、この段差部26に表皮材12の側縁を当接させることより、リング部5に対する表皮材12の位置合わせを行うことが可能となる。
【0066】
また、この装飾体取付部20は、装飾体取付面25に装飾体13を取り付ける際における装飾体13の位置合わせをし易くするために、装飾体13の後述する突条部13aを嵌入させることが可能な嵌入凹部27が、リング部5の周方向に沿って形成されている。
【0067】
これらの装飾体取付部20に取り付けられる装飾体(フィニッシャ)13は、合成樹脂製であり、リング部5に対応した円環状に形成されている。また、装飾体13の径方向の寸法は、リング部5の径方向の寸法よりも小さく設定されている。
【0068】
この装飾体13の外面となる表面は、装飾体13を装飾体取付部20に取り付けたときに運転者側を向くように配され、滑らかな曲面状に形成されているとともに、木目模様等の装飾が施されている。更に、装飾体13の裏面には、装飾体取付部20に設けた嵌入凹部27の位置に対応して、突条部13aがリング部5の周方向に沿って形成されている。
【0069】
本実施例の表皮材12は、天然皮革や合成皮革などからなるシート状の薄くて柔らかい部材であり、伸縮性を備える。また、この表皮材12は、リング部5と、スポーク部7のリング部5側の端部とを被覆するように、リング部5の周方向に長尺な形状を有する。この場合、表皮材12の長さ方向は、リング部5の周方向に沿った方向に対応しており、表皮材12の幅方向は、リング部5をリング部5の径方向で切断したときの略円形断面の周方向に沿った方向に対応する。
【0070】
更に、本実施例の表皮材12は、後述するようにリング部5の被覆層11とヒーター部材30を包み込むようにリング部5に巻き付けるときに、表皮材12における幅方向の中央部がリング部5の表面(後面)側に配されるとともに、表皮材12の長さ方向に沿って形成される内周側側縁部(第1側縁部)と外周側側縁部(第2側縁部)とが、リング部5の裏面(前面)側に配されるように形成されている。このような表皮材12を伸ばしながらリング部5に巻き付けるとともに、リング部5の裏面側で表皮材12の内周側側縁部と外周側側縁部とを縫製により縫い合わせることにより、表皮材12がリング部5に取り付けられる。
【0071】
また、表皮材12には、リング部5に固定された装飾体取付部20の位置に対応して複数の開口窓部が設けられており、各開口窓部は、装飾体取付部20の装飾体取付面25の大きさに対応する開口面積を有して形成されている。
【0072】
本実施例のヒーター部材30は、
図3に示すように、不織布からなる基材31の全体に、図示しないヒーター線(電熱線)が折り返しながら取り付けられて形成されており、ヒーター線に電気を流すことにより発熱する。なお、本発明において、基材31に対するヒーター線の配設位置等は特に限定されるものではなく、任意に設計することができる。また、ヒーター部材30としては、その他の材料又は構造からなる面状発熱体を用いることも可能である。
【0073】
本実施例のヒーター部材30は、リング部5の周方向に長尺なシート状の形状を有する。この場合、ヒーター部材30の展開図(
図3)におけるヒーター部材30の長さ方向は、リング部5の周方向に沿った方向となり、ヒーター部材30の幅方向は、リング部5をリング部5の径方向で切断したときの略円形断面の周方向に沿った方向となる。
【0074】
また、ヒーター部材30は、リング部5に取り付けるときに、展開図のヒーター部材30における幅方向の中央部がリング部5の表面(後面)側に配されるとともに、ヒーター部材30の長さ方向に沿って形成される内周側側端縁35(
図3の下側に位置する第1側端縁)と、外周側側端縁36(
図3の上側に位置する第2側端縁)とが、リング部5の裏面(前面)側に配されるように形成されている。
【0075】
更に、ヒーター部材30は、当該ヒーター部材30を被覆層11の外周面に取り付けたときに、展開図にて幅方向に沿って形成される長さ方向の両端部が、ステアリングホイールを運転者が正面から見た場合のアナログ時計における7時と8時の間の角度位置に配されるように形成されている。
【0076】
このヒーター部材30は、リング部5に固定された装飾体取付部20の位置に対応して複数の開口部32が設けられている。特に本実施例のヒーター部材30は、上側装飾体取付部20aの位置に対応して形成される上側用開口部(第1開口部)32aと、右側装飾体取付部20bの位置に対応して形成される右側用開口部(第2開口部)32bと、下側装飾体取付部20cの位置に対応して形成される下側用開口部(第3開口部)32cと、左側装飾体取付部20dの位置に対応して形成される左側用開口部(第4開口部)32dとを有する。各開口部32a〜32dは、ヒーター部材30を展開した状態において、ヒーター部材30の長さ方向(すなわち、リング部5の周方向)に長い矩形状の形態に形成されている。
【0077】
また、4つの各開口部32a〜32dは、ヒーター部材30を被覆層11の外周面に取り付けたときに、各装飾体取付部20a〜20dの露出面23が各開口部32a〜32dを介して外側に露出するように、各装飾体取付部20a〜20dの露出面23よりも大きな開口面積をもって形成されている。また、ヒーター部材30の各開口部32a〜32dの開口面積は、表皮材12に形成される対応した各開口窓部の開口面積よりも大きく設定されている。
【0078】
更に、本実施例のヒーター部材30には、展開図における長さ方向に細長く形成された上側用開口部32aの長さ方向の中央部分に、上側用切れ目部(第1切れ目部)33が、ヒーター部材30の内周側側端縁35から上側用開口部32aにかけて、ヒーター部材30の幅方向に沿って設けられている。
【0079】
ここで、
図3に示したように、ヒーター部材30の内周側側端縁35と上側用開口部32aとの間において上側用切れ目部33を間に挟んで形成される長さ方向に細長い一対の矩形片状の部分を、上側用の第1切れ端片部37a及び第2切れ端片部37bとし、第1切れ端片部37aの切断端部となる先端部と、第2切れ端片部37bの切断端部となる先端部とは、上側用切れ目部33によって、互いに離間した状態で配されている。
【0080】
また、第1切れ端片部37aの長さ寸法を、ヒーター部材30の展開図において、上側用開口部32aにおける長さ方向の第1切れ端片部37a側の一端縁の位置から、第1切れ端片部37aの切断端縁となる先端縁の位置までのヒーター部材30の長さ方向に沿った寸法39aとする。第2切れ端片部37bの長さ寸法を、上側用開口部32aにおける長さ方向の第2切れ端片部37b側の他端縁の位置から第2切れ端片部37bの切断端縁となる先端縁の位置までのヒーター部材30の長さ方向に沿った寸法39bとする。
【0081】
この場合、本実施例において、上側用開口部32aの長さ寸法39cは、上側装飾体取付部20aの外径側におけるリング部5の周方向に沿った寸法に合わせられている。更に、ヒーター部材30の展開図における上側用切れ目部33の長さ方向の寸法(第1及び第2切れ端片部37a,37bの先端部間の寸法)は、第1切れ端片部37aの長さ寸法39aと第2切れ端片部37bの長さ寸法39bとの和の大きさが、上側装飾体取付部20aの内径側におけるリング部5の周方向に沿った寸法に合うように設定されている。
【0082】
ここで、本実施例の表皮材12は、上述したように薄くて柔らかく形成されているため、表皮材12の下に配されるヒーター部材30に皺や凹凸等が形成されると、その皺や凹凸等が小さなものであっても、表皮材12の外面(表面)に転写され易い(浮き出し易い)ため、リング部5の見栄えを悪くすることや、また見た目では判らなくても、運転者がリング部5を握ったときに皺や凹凸等に違和感や不快感を生じさせることがある。
【0083】
しかし、本実施例では、上述のように上側用開口部32a及び上側用切れ目部33の寸法が設定されることにより、ヒーター部材30を、各開口部32a〜32d内に対応する各装飾体取付部20a〜20dを挿入するようにしてリング部5の周方向に沿って被覆層11に取り付けたときに、ヒーター部材30の上側用開口部32aの内周側にて第1切れ端片部37aの先端部(第1切断端部)と第2切れ端片部37bの先端部(第2切断端部)とを互いに突き合わせた状態で、第1切れ端片部37aと第2切れ端片部37bとを連続するように被覆層11上に平坦状にきれいに装着することができる。
【0084】
このため、第1及び第2切れ端片部37a,37bの両先端部が互いに重なり合うこと、また、第1及び第2切れ端片部37a,37bにだぶつきや皺が発生することを効果的に防止できる。更に、第1及び第2切れ端片部37a,37bの先端部同士を突き合わせることにより、第1及び第2切れ端片部37a,37b間に小さな凹みが形成されることを防ぐとともに、それらの先端部の形状が、表皮材12の外面側に転写され難く(浮き出し難く)することができる。それにより、表皮材12の外面を、凹凸の少ない滑らかな面に仕上げることができる。
【0085】
また、本実施例のヒーター部材30には、展開図において、その長さ方向に細長く形成された下側用開口部32cにおける長さ方向の中央部分に、下側用切れ目部(第2切れ目部)34が、ヒーター部材30の内周側側端縁35から下側用開口部32cにかけて設けられており、この下側用切れ目部34は、上述した上側用切れ目部33よりも、ヒーター部材30の長さ方向における寸法を大きくして形成されている。
【0086】
これにより、ヒーター部材30を上述のようにリング部5の周方向に沿って被覆層11に取り付けるときに、ヒーター部材30の下側用開口部32cの内周側に配される第1及び第2切れ端片部38a,38bの先端部が互いに重なり合うことを防止するとともに第1及び第2切れ端片部38a,38bがだぶつくことも防止できる。このため、その後に表皮材12を巻き付けたときに、表皮材12の外面を凹凸の少ない滑らかな面に仕上げることができる。
【0087】
なお、本発明においては、ヒーター部材に少なくとも1つの切れ目部が、開口部に対応して設けられていれば良く、例えば本実施例では、上側用切れ目部33又は下側用切れ目部34を形成せずにヒーター部材30を構成しても良く、また、上側用及び下側用切れ目部33,34に加えて、右側用開口部32bや左側用開口部32dに切れ目部を更に設けることも可能である。
【0088】
また本発明では、ヒーター部材に形成される開口部のうち、例えばステアリングホイールを運転者が正面から見た場合において、リング部における角度範囲が40°以上となるように設けられる開口部について、ヒーター部材の内周側側端縁から当該開口部に至る切れ目部が形成されていることが好ましい。
【0089】
また、本実施例のヒーター部材30の基材31における内周側の側縁部と外周側の側縁部とには、
図3に示したように、ヒーター部材30をリング部5に巻き付けるときに皺が更に生じ難いようにするために、複数の小さな切欠き部31aが幅方向中央部に向けて形成されている。
【0090】
次に、本実施例のステアリングホイール本体1のリング部5を製造する工程について説明する。
先ず、被覆層11の成形に用いられる金型の所定位置に、リング芯金10と複数の装飾体取付部20とを保持し、その後、当該金型内に被覆層11の樹脂材料を導入して、被覆層11の成形(インサート成形)を行う。これにより、リング芯金10を被覆するように被覆層11が所定の形状で形成されるとともに、その被覆層11の所定位置に各装飾体取付部20a〜20dが所定の向きで固定される。
【0091】
次に、リング部5の成形された被覆層11に、
図3に示したヒーター部材30を、そのリング部5の周方向に沿って重ねて巻き付ける。このとき、被覆層11に固定されている各装飾体取付部20a〜20dを、ヒーター部材30の対応する各開口部32a〜32dに挿入するようにしてヒーター部材30を位置合わせしながら巻き付ける。なおこの場合、ヒーター部材30と被覆層11とは、接着剤や両面粘着テープ等を用いて接着されても良い。
【0092】
このようにヒーター部材30をリング部5の被覆層11に巻き付けることにより、
図4に示したように、ヒーター部材30が、リング部5の表面(後面)側を被覆するとともに、ヒーター部材30の内周側側端縁35と外周側側端縁36とがリング部5の裏面(前面)側に互いに離間した状態で位置するようにして巻き付けられる。このとき、被覆層11に固定されている各装飾体取付部20a〜20dは、ヒーター部材30に設けた各開口部32a〜32dを介して露呈した状態となる。
【0093】
更にこのとき、ヒーター部材30の上側用開口部32aの内周側では、第1及び第2切れ端片部37a,37bが、互いに重なり合うことやだぶつくことなく、第1切れ端片部37aの先端部と第2切れ端片部37bの先端部とを突き合わせた状態で、被覆層11上に平坦状にきれいに配設される。また、ヒーター部材30の下側用開口部32cの内周側では、第1及び第2切れ端片部38a,38bが、互いに重なり合うことやだぶつくことなく、第1切れ端片部38aの先端部と第2切れ端片部38bの先端部とを離した状態で、被覆層11上に平坦状にきれいに配設される。
【0094】
特に本実施例では、ヒーター部材30の上側用及び下側用開口部32a,32cの内周側に配される第1及び第2切れ端片部37a,37b,38a,38bは、それらの間に上側用及び下側用切れ目部33,34が設けられて分離している。このため、第1切れ端片部37a,38aと第2切れ端片部37b,38bとを、それぞれ弛みや皺を生じさせることなく、被覆層11上に簡単に且つ綺麗に貼り付けることができる。
【0095】
続いて、ヒーター部材30をリング部5の被覆層11に巻き付けた後、表皮材12の裏面に接着剤を塗布して、又は両面粘着テープを貼り付けて、その表皮材12を伸ばしながら、被覆層11及びヒーター部材30を外側から被覆するように重ねて巻き付ける。
【0096】
このとき、各装飾体取付部20a〜20dの装飾体取付面25が、表皮材12に対応して設けた各開口窓部を介して露呈するように、表皮材12が位置合わせされる。また、表皮材12における幅方向の中央部がリング部5の表面(後面)側に配され、且つ、表皮材12の内周側及び外周側側縁部がリング部5の裏面(前面)側に配されるように、表皮材12をリング部5の周方向に沿ってリング部5に巻き付けるとともに、その表皮材12の内周側側縁部と外周側側縁部とをリング部5の裏面側で縫製により縫い合わせる。
【0097】
これにより、各装飾体取付部20a〜20dの装飾体取付面25が、表皮材12の対応する開口窓部からそれぞれ露呈するとともに、表皮材12の開口窓部の周りに配される開口周縁部が、装飾体取付部20の表皮材取付面24に貼り合わせられた状態で、表皮材12がリング部5に取り付けられる。
【0098】
このとき、ヒーター部材30は、上述のように開口部32を有していても皺や凹凸等が形成されずに被覆層11上に貼り付けられているため、そのヒーター部材30を被覆する表皮材12の外面を、凹凸の少ない滑らかな曲面に形成することができる。
【0099】
特にこの場合、ヒーター部材30に設けた上側用及び下側用切れ目部33,34が、巻き付けられた表皮材12の図示しない縫製部分の近傍に配置される。それにより、ヒーター部材30の第1及び第2切れ端片部37a,37b,38a,38bの各先端部形状や、上側用開口部32a側の第1切れ端片部37aと第2切れ端片部37bを突き合わせた境界部のラインを、より目立ち難くすることができる。
【0100】
その後、装飾体13の裏面全体に接着剤を塗布して、又は両面粘着テープを貼り付けて、その装飾体13を、表皮材12が巻き付けられたリング部5の乗員対向面の内周側に貼り付ける。このとき、装飾体13の裏面に設けた突条部13aを、装飾体取付部20に設けた嵌入凹部27に嵌入させることにより、装飾体13をリング部5の所定の位置に安定して取り付けることができる。
【0101】
以上の工程を行うことにより、リング部5の被覆層11と表皮材12との間にヒーター部材30が配置され、且つ、リング部5の乗員対向面に装飾体13が取り付けられたステアリングホイール本体1を簡単に製造することができる。そして、得られたステアリングホイール本体1に、図示しないエアバッグ装置やロアカバーなどを取り付けることにより、ステアリングホイールが製造される。
【0102】
上述のようにして製造された本実施例のステアリングホイールでは、ヒーター部材30に、周方向に細長い上側用及び下側用開口部32a,32cが形成されていても、それぞれに対応する上側用及び下側用切れ目部33,34が設けられているため、リング部5に取り付けられたヒーター部材30(特にヒーター部材30の内周側の部分)に皺や折れ曲がりが生じ難くなる。それにより、そのヒーター部材30の上に巻き付けられる表皮材12の外面を、上述のように凹凸の少ない滑らかな曲面に形成することができるため、本実施例のステアリングホイールは、リング部5の見栄えや、運転者がリング部5を握ったときの手触り感が極めて良好なものとなる。
【0103】
更に、ヒーター部材30の上側用開口部32aの内周側では、第1及び第2切れ端片部37a,37bが、それぞれの先端部同士を突き合わせた状態で貼り付けられているため、上側用開口部32aの内周側に、ヒーター部材30の欠落部分が形成されなくなる。また、ヒーター部材30の下側用開口部32cの内周側においては、第1切れ端片部38aの先端部と第2切れ端片部38bの先端部は互いに離れているものの、両先端部間の離間距離は、下側用開口部32cにおけるリング部5の周方向に沿った寸法よりも短くなるため、下側用開口部32cの内周側に形成されるヒーター部材30の欠落部分を小さくすることができる。これにより、ステアリングホイールのリング部5をヒーター部材30で全体的に安定して温めることができるため、ステアリングホイールの操作時に、リング部5が部分的に冷たくなることに起因する不快感や違和感を運転者に与えなくすることができる。
【0104】
なお、上述した実施例では、ヒーター部材30の上側用開口部32aの内周側に、ヒーター部材30の幅方向に沿った上側用切れ目部33が形成されており、上側用の第1切れ端片部37aの先端部と、第2切れ端片部37bの先端部とは、それぞれ矩形状の形態(先端部の両隅部が略直角となる形態)を有する。
【0105】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば
図5にヒーター部材の変形例を示したように、上側用開口部42aに繋がる上側用切れ目部43を、展開図において、ヒーター部材40の長さ方向又は幅方向又は長に対して斜めに傾斜する方向に沿って形成することもできる。
【0106】
このようにヒーター部材40の切れ目部43を斜め方向に形成することにより、ヒーター部材40をその第1切れ端片部47aの先端部と第2切れ端片部47bの先端部とを突き合わせた状態で被覆層11の外周面に巻き付け、更にその上に表皮材12を巻き付けたときに、ヒーター部材40の第1切れ端片部47aと第2切れ端片部47bとを突き合わせて形成される境界部のラインがよりぼやけやすくなり、その境界部のラインを表皮材12の外周面上に更に表れ難く、また、目立ち難くすることができる。その結果、リング部5の見栄えや手触り感をより向上させることができる。
【0107】
更に本発明では、
図6にヒーター部材の別の変形例を示したように、ヒーター部材50の上側用開口部52aの内周側に配される第1切れ端片部57aの先端部と、第2切れ端片部57bの先端部を、それぞれ円弧状の先端形状を有するようにして、上側用切れ目部53を形成することもできる。
【0108】
これによって、ヒーター部材50を被覆層11に貼り付けたときに、ヒーター部材50の第1及び第2切れ端片部57a,57bの先端部の形状をぼやけさせることができるため、これらの先端部の形状を表皮材12の外面上に目立ち難くすることができる。またこの場合、ヒーター部材50の第1切れ端片部57aと第2切れ端片部57bとを互いに突き合わせて被覆層11に貼り付けても良い。
【0109】
また本発明では、リング部に設ける装飾体取付部と、その装飾体取付部に取り付けられる装飾体の形態や構造は、上述した実施例に限定されるものではなく、例えば前述した特許文献2や特許文献3に記載されているような形態や構造を採用することが可能である。また、装飾体取付部を、例えば前述した特許文献1のように、被覆層とリング芯金とに取付孔部を形成し、この取付孔部に装飾体に設けた係止部を係止させるように構成しても良い。