【解決手段】液体送り出し駆動装置は、モータと、モータの回転を負荷に伝達する駆動伝達部材と、モータを駆動する駆動回路と、モータの駆動によって前記駆動伝達部材が駆動されたとき、前記モータの負荷トルクに関する値を検出値として検出するセンサと、記憶部と、初期電源投入されたときの検出値を第1検出値として記憶部に記憶させ、初期電源投入より後に電源が投入されたときの検出値を第2検出値として第1検出値と第2検出値とを比較し、前記第1検出値と前記第2検出値とを比較した結果を出力する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記初期電源投入より後に電源が投入されたときの前記検出値を第2検出値として前記記憶部に記憶させると共に、前記第1検出値と前記第2検出値とを比較した結果が第1の所定量以上増えた場合に、エラーを示す信号を出力する請求項1記載の液体送り出し駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を装着した状態を示す平面図である。なお、本実施形態では、液体送り出し駆動装置1が適応される例として、シリンジポンプを例に説明する。
【0010】
図1を参照して、液体送り出し駆動装置1の構成の概要について説明する。
図1に示すように、液体送り出し駆動装置1は、筐体100、モータ101、センサマグネット102、エンコーダ103、駆動回路基板104、第1取付板105を備えている。液体送り出し駆動装置1は、第1ギア107、第2ギア108、リードスクリュー109、第2取付板110、キャリッジ111、ガイド棒112、制御部113、記憶部114、駆動回路115、およびスライダ120を備えている。モータ101は、シャフト106を備えている。スライダ120は、検出部121を備えている。
【0011】
また、
図1に示すように、シリンジ2は、押し子204と、筒先206とを備えている。筒先206には、チューブ3が取り付けられる。
【0012】
モータ101は、ケーブル141を介して駆動回路基板104に接続されている。また、モータ101は、第1取付板105に取り付けられている。
センサマグネット102は、シャフト106の短先端106Bに、取り付けられている。
第1ギア107は、シャフト106の長先端106Aに、圧入されている。
【0013】
駆動回路基板104には、エンコーダ103、制御部113、記憶部114、および駆動回路115が取り付けられている。
図1に示すように、エンコーダ103は、センサマグネット102と対向する位置に取り付けられている。さらに、駆動回路基板104には、インタフェース端子131が取り付けられている。
【0014】
リードスクリュー109は、第1取付板105と第2取付板110に回転可能に取り付けられている。また、リードスクリュー109の第1取付板105側端に、第2ギア108が取り付けられている。第2ギア108は、第1ギア107とかみ合わされて組み付けられている。
【0015】
キャリッジ111は、リードスクリュー109に組み付けられている。リードスクリュー109は、第2ギア108および第1ギア107を介してモータ101によって、回転する。リードスクリュー109の回転に伴って、キャリッジ111が、リードスクリュー109上を移動する。シリンジ2に収納された溶液を、チューブ3に押し出す場合、キャリッジ111は、第2取付板110から第1取付板105へ向かう方向に移動する。
【0016】
ガイド棒112の一方端は、キャリッジ111に取り付けられている。ガイド棒112の他方端は、スライダ120に取り付けられている。
【0017】
検出部121は、鰐口205がスリット122に取り付けられたこと示す情報を制御部113に出力する。
【0018】
図1において、キャリッジ111が第2取付板110に接する位置をp1とし、キャリッジ111が第1取付板105に接する位置をpnとする。また、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が取り付けられた初期状態のキャリッジ111の位置をpcとする。なお、以下の説明において、位置とは、キャリッジ111の位置である。
【0019】
なお、
図1に示した例において、移動機構としてリードスクリュー109とキャリッジ111を用いる例を示したが、これに限られない。移動機構は、例えば、ラックとピニオンギアで構成されていてもよい。
【0020】
次に、
図2を参照して、液体送り出し駆動装置1の回路構成について説明する。
図2は、実施形態に係る液体送り出し駆動装置1の回路構成を説明するブロック図である。
図2に示すように、液体送り出し駆動装置1は、モータ101、エンコーダ103、制御部113、記憶部114、駆動回路115、検出部121、およびインタフェース端子131を備えている。
また、液体送り出し駆動装置1は、インタフェース端子131を介して、電源部301、操作部303、および報知部304と接続されている。
【0021】
操作部303は、利用者による操作を検出する。操作には、例えば、モータ101を回転させるか否かを示す操作、モータ101の回転方向の操作等が含まれる。
【0022】
報知部304は、エラーを示す情報sg3を、インタフェース端子131を介して、制御部113から受け取る。報知部304は、受け取った情報sg3に基づいて、エラーを報知する。報知部304は、表示装置、音響信号出力装置、発光装置のうち、少なくとも1つである。
なお、本実施形態においては、報知部304がエラーを示す情報sg3に基づいてエラーを報知する場合について説明するが、これに限られない。制御部113は、エラーを示す情報sg3に代えて、又はエラーを示す情報sg3に加えて、液体送り出し駆動装置1が正常状態であることを示す情報を出力する構成であってもよい。この構成の場合には、報知部304は、液体送り出し駆動装置1が正常状態であることを示す情報を制御部113が出力したことに基づいて、液体送り出し駆動装置1が正常状態であることを報知する。また、報知部304は、正常状態である情報を制御部113が出力しなくなったことに基づいて、エラーを報知する構成であってもよい。
【0023】
リセットスイッチ305は、液体送り出し駆動装置1の記憶部114に記憶されている情報を初期化するためのスイッチである。リセットスイッチ305は、例えば、メンテナンス後にサービスマンによって操作される。
駆動回路115は、制御部113から入力される駆動指示値に基づいて、駆動信号を生成し、生成した駆動信号によってモータ101を駆動する。
モータ101は、駆動回路115によって駆動される。モータ101は、例えば、ステッピングモータである。
【0024】
エンコーダ103は、センサマグネット102の回転によって生じる磁界の変化を検出し、検出した検出値を制御部113に出力する。エンコーダ103は、例えば、磁気センサと磁気エンコーダとから構成される。磁気センサは、例えばホール素子である。
【0025】
インタフェース端子131は、駆動回路基板104への電力の供給、情報の出力、情報の入力を行う端子である。
【0026】
記憶部114は、不揮発性メモリである。記憶部114に記憶される情報については、後述する。
【0027】
制御部113は、例えばCPU(中央演算処理装置)である。制御部113は、操作部303から入力された指示信号sg2に応じて利用者による操作を検出し、検出した操作結果に応じた制御を行う。
また、制御部113は、駆動回路115を介してモータ101を動作させる。制御部113は、モータ101の負荷トルクを取得する。この負荷トルクは、モータ101の動作に伴って変化するキャリッジ111の位置に応じて変化する。制御部113は、液体送り出し駆動装置1の初期状態において取得済みの負荷トルクと、初期状態以降のモータ101の動作時に取得して得られる負荷トルクとを、キャリッジ111の位置毎に比較することにより、機構部品の磨耗や使用に伴う経時的な劣化による負荷の異常を検出する。ここで、負荷とは、モータ101から、スライダ120に至るまでの各部品である。具体的には、負荷とは、第1ギア107、第2ギア108、リードスクリュー109、キャリッジ111、ガイド棒112、スライダ120である。以下、制御部113による負荷の異常検出の詳細について説明する。
【0028】
ここでは、まず、液体送り出し駆動装置1の初期状態における、制御部113による負荷トルクの取得について説明する。次いで、液体送り出し駆動装置1の初期状態の後における、制御部113による負荷トルクの取得と、負荷の異常の検出とについて説明する。
本実施形態では、液体送り出し駆動装置1の「初期状態」の具体例として、液体送り出し駆動装置1が工場等で組み立てられた後、液体送り出し駆動装置1に初めて電源が投入された場合について説明する。なお、以下の説明において、初期状態における液体送り出し駆動装置1への電源の投入を、初期電源投入と称する。また、初期状態における制御部113の動作モードを、初期モードと称する。
また、以下の説明において、液体送り出し駆動装置1の初期状態の後の状態を、通常状態と称する。通常状態において、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を取り付けない状態でモータ101を動作させる制御部113の動作モードを、点検モードと称する。
【0029】
[初期モードにおける制御部113の処理]
初期モードにおいて、制御部113は、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が取り付けられていない状態における、モータ101の負荷トルクを取得し、取得した負荷トルクを記憶部114に記憶させる。なお、以下の説明において、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が取り付けられていない状態を、無負荷状態と称する。また、液体送り出し駆動装置1の初期状態におけるモータ101の負荷トルクを、初期無負荷トルク、又は第1検出値と称する。
【0030】
初期モードにおいて、制御部113は、モータ101の初期無負荷トルクを取得し、取得した初期無負荷トルクを記憶部114に記憶させる。ここで、制御部113は、モータ101の動作に応じて移動するキャリッジ111の位置毎に、初期無負荷トルクを取得する。制御部113がキャリッジ111の位置毎に、初期無負荷トルクを取得する具体例について、
図3と
図4を参照して説明する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る制御部113の初期モードにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下の処理は、例えば液体送り出し駆動装置1の工場出荷時に行われる。
【0032】
(ステップS1)液体送り出し駆動装置1に初めて電源が投入されると、制御部113は、動作モードを初期モードに設定する。
なお、制御部113は、このステップS1において、電源投入済みであることを示す情報を記憶部114に記憶させてもよい。これにより制御部113は、電源投入済みであることを示す情報が記憶部114に記憶されているか否かに基づいて、初回の起動か、2回目以降の起動かを判定することができる。
【0033】
(ステップS2)制御部113は、所定のパルス数のパルス信号を駆動回路115に出力して、モータ101を駆動する。これにより、キャリッジ111は、制御部113が出力するパルス信号のパルス数に応じた位置に移動する。この一例において、制御部113は、キャリッジ111の移動開始位置を、
図1に示す位置p1にし、キャリッジ111の移動終了位置を位置pnにして、キャリッジ111を移動させる。なお、移動開始位置が位置pn、移動終了位置が位置p1であってもよい。
ここで、キャリッジ111を位置p1から位置pnに移動させた場合の、モータ101の初期無負荷トルクの一例を
図4に示す。
【0034】
図4は、キャリッジ111の位置p1から位置pnまでの各位置における、モータ101の初期無負荷トルクを説明する図である。同図において、横軸は、キャリッジ111の位置pkを示し、縦軸は、モータ101の負荷トルクの大きさを示す。ただし、添え字k及び添え字nについて、1≦k≦nである。同図に示す曲線g201は、位置p1から位置pnまでの各位置における初期無負荷トルクAの大きさを示す。ここで、キャリッジ111の位置pkにおける初期無負荷トルクの大きさを、初期無負荷トルクA(k)と称する。一例として、位置p1のときの初期無負荷トルクの値は、初期無負荷トルクA(1)である。また、一例として、位置pnのときの初期無負荷トルクの値は、初期無負荷トルクA(n)である。
【0035】
(ステップS3)制御部113は、位置p1から位置pnまでキャリッジ111を移動させる間、キャリッジ111の位置毎に、モータ101の負荷トルクを取得する。具体的には、制御部113は、キャリッジ111が位置pkにあるときに、初期無負荷トルクA(k)を取得する。
【0036】
(ステップS4)制御部113は、ステップS3で取得した初期無負荷トルクA(k)と、初期無負荷トルクA(k)の取得時のキャリッジ111の位置pkとを関連付けて記憶部114に記憶させる。
【0037】
(ステップS5)制御部113は、キャリッジ111が移動終了位置、すなわち位置pnに到達したか否かを判定する。制御部113は、キャリッジ111が位置pnに到達していないと判定した場合(ステップS5;NO)、ステップS3に処理を戻す。また、制御部113は、キャリッジ111が位置pnに到達したと判定した場合(ステップS5;YES)、初期モードの処理を終了する。
ここまで説明した制御部113の処理によって、キャリッジ111の位置pkに応じた初期無負荷トルクA(k)が記憶部114に記憶される。
【0038】
[点検モードにおける制御部113の処理]
点検モードにおいて、制御部113は、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が取り付けられていない状態における、モータ101の負荷トルクを取得する。また、制御部113は、取得した負荷トルクと、予め取得されている初期無負荷トルクとを比較し、比較した結果を報知部304に出力する。なお、以下の説明において、点検モードにおけるモータ101の負荷トルクを、点検時無負荷トルク、又は第2検出値と称する。
【0039】
点検モードにおいて、制御部113は、取得した点検時無負荷トルクと、予め記憶部114に記憶させた初期無負荷トルクとを比較する。ここで、制御部113は、点検時無負荷トルクの取得と、取得した点検時無負荷トルクと初期無負荷トルクとの比較を、モータ101の動作に応じて移動するキャリッジ111の位置毎に行う。この点検モードにおける、制御部113の処理の具体例について、
図5、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0040】
図5は、本実施形態に係る制御部113の点検モードにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下の処理は、例えば液体送り出し駆動装置1を使用する前に行われる。より具体的には、以下の処理は、液体送り出し駆動装置1の工場出荷後、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を取り付ける前に行われる。
【0041】
(ステップS101)制御部113は、動作モードを点検モードに設定する。
なお、制御部113は、検出部121の出力に基づいてシリンジ2が装着されていないと判定した場合に限り、点検モードの処理を開始してもよい。
【0042】
(ステップS102)制御部113は、記憶部114に記憶されている初期無負荷トルクA(k)を、位置p1から位置pnについて全て読み出す。すなわち、制御部113は、初期無負荷トルクA(1)から初期無負荷トルクA(n)までを、記憶部114から読み出す。
【0043】
(ステップS103)制御部113は、初期モードにおけるステップS2と同様にして、モータ101を駆動し、キャリッジ111を移動させる。すなわち、制御部113は、キャリッジ111の移動開始位置を、
図1に示す位置p1にし、キャリッジ111の移動終了位置を位置pnにして、キャリッジ111を移動させる。
【0044】
ここで、キャリッジ111を位置p1から位置pnに移動させた場合の、モータ101の点検時無負荷トルクの一例を
図6に示す。
【0045】
図6は、キャリッジ111の位置p1から位置pnまでの各位置における、モータ101の点検時無負荷トルクを説明する図である。同図において、横軸は、キャリッジ111の位置pkを示し、縦軸は、モータ101の負荷トルクの大きさを示す。ただし、添え字k及び添え字nについて、1≦k≦nである。同図に示す曲線g211は、位置p1から位置pnまでの各位置における点検時無負荷トルクBの大きさを示す。ここで、キャリッジ111の位置pkにおける点検時無負荷トルクの大きさを、点検時無負荷トルクB(k)と称する。一例として、位置p1のときの点検時無負荷トルクの大きさは、点検時無負荷トルクB(1)である。また、一例として、位置pnのときの点検時無負荷トルクの大きさは、点検時無負荷トルクB(n)である。
【0046】
(ステップS104)制御部113は、位置p1から位置pnまでキャリッジ111を移動させる間、キャリッジ111の位置毎に、モータ101の負荷トルクを取得する。具体的には、制御部113は、キャリッジ111が位置pkにあるときに、点検時無負荷トルクB(k)を取得する。
なお、制御部113は、取得した点検時無負荷トルクB(k)と、点検時無負荷トルクB(k)の取得時のキャリッジ111の位置pkを示す情報とを関連付けて記憶部114に記憶させてもよい。
【0047】
(ステップS105)制御部113は、ステップS104で取得した点検時無負荷トルクB(k)と、記憶部114から読み出した初期無負荷トルクA(k)とを比較する。具体的には、制御部113は、ステップS104で取得した点検時無負荷トルクB(k)の大きさから、記憶部114から読み出した初期無負荷トルクA(k)の大きさを減算する。続けて、制御部113は、減算した値が、判定しきい値である所定値Pより大きいか否かを判定する。この所定値Pとは、例えば、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が装着されていない場合のモータ101および負荷を含む最大定格の負荷トルクの大きさを示す値である。この所定値Pは、一例として、液体送り出し駆動装置1が工場から出荷される前の時点において、予め記憶部114に記憶される。初期無負荷トルクA(k)と点検時無負荷トルクB(k)との差分と、所定値Pとについて、
図7を参照して説明する。
【0048】
図7は、キャリッジ111の位置p1から位置pnまでの各位置における、点検時無負荷トルクB(k)と初期無負荷トルクA(k)との差分の算出結果と、所定値Pとの関係を説明する図である。同図において、横軸は、キャリッジ111の位置pkを示し、縦軸は、モータ101の負荷トルクの大きさを示す。
図7の曲線g221は、キャリッジ111が位置pkにある場合における、点検時無負荷トルクB(k)の大きさから初期無負荷トルクA(k)の大きさを減算した差分{B(k)−A(k)}を表している。例えば、位置p1において、差分{B(1)−A(1)}である。また、
図7の破線g222は、所定値Pを表している。
この
図7に示す一例の場合においては、差分{B(k)−A(k)}が、いずれの位置pkにおいても所定値P以下である。
【0049】
図5に戻り、制御部113は、点検時無負荷トルクB(k)の大きさから、初期無負荷トルクA(k)の大きさを減算した値が所定値P以下であると判別した場合(ステップS105;NO)、ステップS106に処理を進める。制御部113は、点検時無負荷トルクB(k)の大きさから、初期無負荷トルクA(k)の大きさを減算した値が所定値Pより大きいと判別した場合(ステップS105;YES)、ステップS107に処理を進める。
【0050】
(ステップS106)制御部113は、キャリッジ111が移動終了位置、すなわち位置pnに到達したか否かを判定する。制御部113は、キャリッジ111が位置pnに到達していないと判定した場合(ステップS106;NO)、ステップS104に処理を戻す。また、制御部113は、キャリッジ111が位置pnに到達したと判定した場合(ステップS106;YES)、点検モードの処理を終了する。
【0051】
(ステップS107)制御部113は、負荷の異常、すなわちエラーを示す情報を、インタフェース端子131を介して報知部304に出力する。制御部113は、報知後、点検モードの処理を終了する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の制御部113は、初期無負荷トルクA(k)と、点検時無負荷トルクB(k)との比較結果に基づいて、負荷の経時的な変化を検出する。これにより、本実施形態の液体送り出し駆動装置1によれば、シリンジポンプが有する機構部品の磨耗や使用に伴う経時的な劣化による負荷の異常を検出することができる。
【0053】
[変形例]
なお、
図5に示した例では、キャリッジ111の位置pk毎に、負荷の異常検出を行う例を説明したが、これに限られない。制御部113は、移動開始位置から移動終了位置までの各位置pkについて、点検時無負荷トルクB(k)の取得が終了した後に、記憶部114に記憶させた初期無負荷トルクA(k)と点検時無負荷トルクB(k)とを位置pk毎に逐次読み出して比較するようにしてもよい。
【0054】
また、
図5に示した例では、点検時無負荷トルクB(k)から初期無負荷トルクA(k)を減算することにより、負荷の異常検出を行う例を説明したが、これに限られない。制御部113は、減算に限られず、比率、所定の区間の平均値同士の差分、所定の区間の平均値同士の比率、および他の統計手法のいずれかを用いて、所定値Pと比較して異常検出を行うようにしてもよい。この場合、所定値Pは、用いる手法に応じて予め設定された値である。
【0055】
なお、
図5において、点検時無負荷トルクB(k)から初期無負荷トルクA(k)を減算した値が所定値P以下の場合であっても、点検時無負荷トルクB(k)の値と所定値Rとを、さらに比較するようにしてもよい。ここで、所定値Rは、所定値Pより小さい値であり、例えば出荷時に行われる検査で用いられる値であってもよい。この場合、制御部113は、減算した値が所定値Rより大きい場合に、エラーを示す情報を、インタフェース端子131を介して報知部304に出力するようにしてもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、キャリッジ111の移動開始位置から移動終了位置までの全ての範囲における初期無負荷トルクA(k)を用いて負荷の異常検出を行う例を説明したが、これに限られない。記憶部114は、例えばリードスクリュー109の1回転分の範囲における初期無負荷トルクA(k)を用いて、負荷の異常検出を行ってもよい。この場合、制御部113は、記憶部114に記憶されているリードスクリュー109の1回転分の初期無負荷トルクA(k)を用いて、他の位置pjの初期無負荷トルクA(j)を推定するようにしてもよい。このように、リードスクリュー109の1回転分の初期無負荷トルクA(k)のみの記憶でもよい理由は、出荷前の初期状態であるため、リードスクリュー109の回転数毎の初期無負荷トルクA(k)のバラツキが少ないと想定されるためである。
【0057】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、液体送り出し駆動装置1の使用状態において、すなわち、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を装着した状態において、負荷の異常を検出する例について説明する。
なお、液体送り出し駆動装置1およびシリンジ2の構成は、上述した第1の実施形態と同一である。上述した第1の実施形態と同一又は対応する部分については、同一の符号を用いて説明を省略する。
第1の実施形態において、制御部113は、工場出荷前などの初期状態の無負荷トルクと、初期状態から経時後の無負荷トルクとを比較することにより、負荷の異常を検出する。つまり、第1の実施形態では、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を取り付けない状態での負荷トルクどうしを比較する。一方、第2の実施形態において、制御部113は、初期状態の無負荷トルクと、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を取り付けた状態の負荷トルクとを比較することにより、負荷の異常を検出する。つまり、第2の実施形態では、シリンジ2を取り付けている場合においても、負荷の異常を検出できる点において、第1の実施形態と異なる。なお、以下の説明において、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を取り付けた状態でモータ101を動作させる制御部113の動作モードを、シリンジ使用モード、又は単に、使用モードと称する。また、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2を取り付けた状態の負荷トルクのうち、位置pkにおける負荷トルクを、シリンジ負荷トルクC(k)、又は第3検出値と称する。
【0058】
[使用モードにおける制御部113の処理]
使用モードにおける、制御部113の処理の具体例について、
図8、
図9及び
図10を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が装着された場合の制御部113の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、液体送り出し駆動装置1にシリンジ2が装着された状態において、シリンジ2の輸液開始位置が、シリンジ2の種類によらず位置p1で一定である場合について説明する。シリンジ2の輸液開始位置が、シリンジ2の種類によって位置p1から位置pnの間で変化する場合の例については、変形例において後述する。
また本実施形態では、初期モードにおいて制御部113が取得した初期無負荷トルクA(k)が、記憶部114に記憶されている状態であることを前提にして説明する。
【0059】
(ステップS200)制御部113は、動作モードを使用モードに設定する。
なお、制御部113は、検出部121の出力に基づいてシリンジ2が装着されていると判定した場合に限り、動作モードを使用モードに設定してもよい。
【0060】
(ステップS201)制御部113は、点検モードにおけるステップS102と同様にして、初期無負荷トルクA(k)を、位置p1から位置pnについて記憶部114から全て読み出す。すなわち、制御部113は、初期無負荷トルクA(1)から初期無負荷トルクA(n)までを、記憶部114から読み出す。
【0061】
(ステップS202)制御部113は、初期モードにおけるステップS2と同様にして、モータ101を駆動し、キャリッジ111を移動させる。すなわち、制御部113は、キャリッジ111の移動開始位置を、
図1に示す位置p1にし、キャリッジ111の移動終了位置を位置pnにして、キャリッジ111を移動させる。
【0062】
(ステップS203)制御部113は、キャリッジ111の位置pkにおけるシリンジ負荷トルクC(k)を取得する。ここで、キャリッジ111を位置p1から位置pnに移動させた場合の、モータ101のシリンジ負荷トルクC(k)の一例を
図9に示す。
【0063】
図9は、第2の実施形態に係る初期無負荷トルクA(k)とシリンジ負荷トルクC(k)との関係を説明する図である。同図において、横軸は、キャリッジ111の位置pkを示し、縦軸は、モータ101の負荷トルクの大きさを示す。ただし、添え字k及び添え字nについて、1≦k≦nである。同図に示す曲線g201は、キャリッジ111の位置kにおける初期無負荷トルクA(k)の大きさを示す。また、同図に示す曲線g301は、キャリッジ111の位置kにおけるシリンジ負荷トルクC(k)の大きさを示す。
なお、キャリッジ111の移動開始位置pc1及び移動開始位置pc2については、変形例において後述する。
【0064】
(ステップS204)制御部113は、ステップS203で取得したシリンジ負荷トルクC(k)から、ステップS201で取得した初期負荷トルクA(k)を減算して、差分{C(k)−A(k)}を算出する。次に、制御部113は、算出した差分{C(k)−A(k)}が所定値Qより大きいか否かを判定する。
ここで、シリンジ負荷トルクC(n)と初期無負荷トルクA(n)との差分{C(k)−A(k)}と、所定値Qとの関係を説明する。
【0065】
図10は、本実施形態に係るシリンジ負荷トルクC(k)と初期無負荷トルクA(k)との差分と、所定値Qとの関係を説明する図である。同図において、横軸は、キャリッジ111の位置pkを示し、縦軸は、モータ101の負荷トルクの大きさを示す。
図10の曲線g311は、経時的な劣化による負荷の異常が発生していない状態における差分{C(k)−A(k)}を表している。
図10の曲線g311’は、経時的な劣化による負荷の異常が発生している状態における差分{C(k)−A(k)}を表している。
図10の破線g312は、所定値Qを表している。
制御部113は、例えば、位置p2において、減算した値{C(2)−C(2)}と所定値Qとの値を比較し、減算した値が所定値Q未満のため、負荷トルクを正常であると判定する。また、負荷トルクが曲線311’の場合に、位置pmにおいて、減算した値{C(m)−A(m)}と所定値Qとの値を比較し、減算した値が所定値Qより大きいため、負荷トルクを異常であると判定する。
制御部113は、差分{C(k)−A(k)}が所定値Qより大きいと判定した場合(ステップS204;YES)、ステップS206に処理を進める。制御部113は、減算した値{(C(k)−A(k)}が所定値Q以下であると判別した場合(ステップS204;NO)、ステップS205に処理を進める。
【0066】
(ステップS205)制御部113は、キャリッジ111が移動終了位置、すなわち位置pnに到達したか否かを判定する。制御部113は、キャリッジ111が位置pnに到達していないと判定した場合(ステップS205;NO)、ステップS203に処理を戻す。また、制御部113は、キャリッジ111が位置pnに到達したと判定した場合(ステップS205;YES)、使用モードの処理を終了する。
【0067】
(ステップS206)制御部113は、駆動回路115を介してモータ101の駆動を停止させる。続けて、制御部113は、負荷の異常、すなわちエラーを示す情報を、インタフェース端子131を介して報知部304に出力する。なお、制御部113は、エラーを示す情報にエラーの種類を示す情報を含めるようにしてもよい。制御部113は、報知後、処理を終了する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の制御部113は、シリンジ2を装着した状態での負荷トルクの異常を検出する。つまり、本実施形態の負荷には、モータ101から、スライダ120に至るまでの各部品に加え、シリンジ2、及びチューブ3が含まれる。ここで、チューブ3は、外力等によって閉塞することがある。チューブ3が閉塞すると、チューブ3の内部の圧力損失が高まることにより、チューブ3内部の液体が流れにくくなるため、閉塞していない状態に比べてモータ101の負荷トルクが増加する。本実施形態の制御部113は、この負荷トルクの増加を負荷の異常として検出することができる。また、シリンジ2の筒先206の閉塞や、シリンジ2の摺動部の変形などによっても、モータ101の負荷トルクが増加するため、この負荷トルクの増加を負荷の異常として検出することができる。すなわち、本実施形態の液体送り出し駆動装置1によれば、液体送り出し駆動装置1の経時的変化による異常のみならず、シリンジ2やチューブ3の状態の変化による異常を検出することができる。
また、本実施形態の液体送り出し駆動装置1によれば、負荷トルクの異常を検出した場合に、モータ101の動作を止めるため、チューブ3の閉塞時などの液体の送り出しが困難な場合において、輸液を停止させることができる。
【0069】
[変形例]
次に第2実施形態の変形例について、
図9及び
図11を参照して説明する。シリンジ2は、その種類や大きさによって、摺動部のストロークがシリンジ2毎に相違することがある。つまり、摺動部のストロークが比較的長いシリンジ2と、摺動部のストロークが比較的短いシリンジ2とが存在する。したがって、シリンジ2の種類や大きさによっては、キャリッジ111の移動開始位置pcが、
図9に示す位置p1ではない場合がある。例えば、あるシリンジ2は、キャリッジ111の移動開始位置pcが、
図9に示す移動開始位置pc1である。また、別のシリンジ2は、キャリッジ111の移動開始位置pcが、
図9に示す移動開始位置pc2である。この移動開始位置pcが一定ではない場合、移動開始位置pcと、位置pkとの対応づけを行うことにより、制御部113は、初期無負荷トルクA(k)と、シリンジ負荷トルクC(k)との比較ができる。液体送り出し駆動装置1は、記憶部114に、シリンジ2の種類や大きさ毎に、キャリッジ111の移動開始位置pcを予め記憶させておくことにより、移動開始位置pcと、位置pkとの対応づけを行う。
【0070】
図11は、第2の実施形態に係る記憶部114に記憶されているシリンジの識別情報と開始位置を示す情報と所定値Qとの関係を説明する図である。記憶部114には、シリンジ2の種類や大きさ毎に、シリンジ2の識別情報と、移動開始位置pcとが互いに関連付けられて記憶されている。制御部113は、装着されているシリンジ2の識別情報に基づいて、記憶部114から移動開始位置pcを読み出す。制御部113は、読み出した移動開始位置pcに基づいて、移動開始位置pcと、位置pkとの対応づけを行う。なお、シリンジ2の識別情報とは、シリンジ2のメーカー名、シリンジ2の型番等である。
【0071】
また、
図11に示すように、記憶部114には、上述した所定値Qが、シリンジ2の識別情報毎に記憶されていてもよい。これにより、制御部113は、負荷の異常を判定するしきい値、すなわち所定値Qを、シリンジ2の種類や大きさに対応付けて判定することができる。したがって、本変形例の液体送り出し駆動装置1によれば、シリンジ2の種類や大きさが一定ではないことにより、シリンジ負荷トルクCの大きさが一定ではない場合においても、負荷トルクの異常を精度よく検出することができる。
【0072】
なお、
図8に示した例では、シリンジ負荷トルクC(k)から初期無負荷トルクA(k)を減算し、減算した値を所定値Qと比較して異常検出を行う例を説明したが、これに限られない。制御部113は、減算に限られず、比率、所定の区間の平均値同士の差分、所定の区間の平均値同士の比率、および他の統計手法のいずれかを用いて、所定値Qと比較して異常検出を行うようにしてもよい。この場合、所定値Qは、用いる手法に応じて予め設定された値である。
【0073】
また、
図8に示した例では、シリンジ負荷トルクC(k)と初期無負荷トルクA(k)とを比較する例を説明したが、これに限られない。制御部113は、シリンジ負荷トルクC(k)と点検時無負荷トルクB(k)とを比較するようにしてもよい。例えば、制御部113は、シリンジ負荷トルクC(k)から同じ位置の点検時無負荷トルクB(k)を減算し、減算した値を所定値Sと比較して異常検出を行うようにしてもよい。所定値Sは、所定値Qと同じ値であってもよく、又は所定値Qより小さな値であってもよい。したがって、この変形例の液体送り出し駆動装置1によれば、経時変化後の負荷トルクを基準にして、シリンジ負荷トルクCとの差分を算出することができる。つまり、この変形例の液体送り出し駆動装置1によれば、シリンジ2の有無による負荷トルクの変化をより正確に検出することができる。
【0074】
また、第1の本実施形態〜第2の実施形態では、初期無負荷トルクA(k)を基準にして、点検時無負荷トルクB(k)が所定値よりも大きい場合に、制御部113がエラーを報知する場合を例にして説明した。すなわち、上述の各実施形態において、負荷トルクが増加した場合に、制御部113がエラーを報知する例を説明したが、これに限られない。制御部113は、初期無負荷トルクA(k)を基準にして、点検時無負荷トルクB(k)が所定値よりも小さい場合に、すなわち負荷トルクが減少した場合に、制御部113がエラーを報知してもよい。具体例として、第1ギア107、又は第2ギア108がシャフトから脱落する場合がある。これらのギアが脱落すると、ギアが脱落する前に比べて、負荷トルクが急激に減少する。制御部113は、負荷トルクの減少が検出された場合に、エラーを示す情報を、インタフェース端子131を介して報知部304に出力する。
【0075】
また、第1の本実施形態〜第2の実施形態では、制御部113は、エラーを示す情報sg3、又は正常状態であることを示す情報を、報知部304に対して出力する一例について説明したが、これに限られない。制御部113は、液体送り出し駆動装置1の外部の装置にこれらの情報を出力することもできる。例えば、制御部113は、より高性能なCPUを有する機器にエラーを示す情報sg3、又は正常状態であることを示す情報を出力してもよい。
【0076】
なお、第1の本実施形態〜第2の実施形態では、モータ101の負荷を、センサマグネット102とエンコーダ103と用いて検出する例を説明したが、これに限られない。モータ101の負荷は、スリットが設けられている円盤をシャフト106に取り付け、フォトセンサを用いて検出するようにしてもよい。
【0077】
また、第1の本実施形態〜第2の実施形態では、負荷の例としてシリンジ2を説明したがこれに限られない。負荷は、例えば第1ギア107、第2ギア108、リードスクリュー109、キャリッジ111、およびガイド棒112等のうち、少なくとも1つを介して駆動されるものであればよい。負荷は、例えば、血液ポンプであってもよい。
また、第1の本実施形態〜第2の実施形態では、モータ101としてステッピングモータの例を説明したが、これに限られない。モータ101は、ACモータ、DCモータ等であってもよい。
【0078】
なお、本発明における液体送り出し駆動装置1における制御部113の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各処理の手順を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境あるいは表示環境を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0079】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク又は通信網や電話回線等の通信回線又は通信線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。