(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-112278(P2016-112278A)
(43)【公開日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】発音遊具及びワークショップの運営方法
(51)【国際特許分類】
A63H 5/00 20060101AFI20160527BHJP
G10D 13/08 20060101ALI20160527BHJP
【FI】
A63H5/00 S
G10D13/08 D
A63H5/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-254713(P2014-254713)
(22)【出願日】2014年12月17日
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】永井 由佳里
(72)【発明者】
【氏名】森 進太郎
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BA15
2C150CA16
2C150CA25
2C150DF06
2C150DF21
2C150DF27
2C150EB03
2C150EB05
2C150EB16
2C150EB41
2C150EH06
(57)【要約】
【課題】 ワークショップの参加者に対して一体感・達成感を与えることができる発音遊具及びワークショップの運営方法を提供する。
【解決手段】 本発明の発音遊具1は、複数の音板10と、当該音板を着脱自在に支持する複数の基台20と、当該音板の表面に接触することで音板を発音させる接触部材30とを備えている。任意の位置に音板が取り付けられた状態の各基台を連続的に配置し、前記接触部材を音板に対して相対的に移動させることでリズム・メロディを奏でることを特徴とする。使用者は他者と相談しながら基台上の任意の位置に音板を取り付けると共に、曲の出来栄えを相互に批評し合い、必要に応じて基台や音板の位置を入れ替える等の作業を通じてコミュニケーションを取ることができ、これにより一体感・達成感を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音板と、
当該音板を着脱自在に支持する複数の基台と、
当該音板の表面に接触することで音板を発音させる接触部材とを備えており、
任意の位置に音板が取り付けられた状態の各基台を連続的に配置し、前記接触部材を音板に対して相対的に移動させることでリズム・メロディを奏でることを特徴とする発音遊具。
【請求項2】
請求項1に記載の発音遊具を用いることを特徴とするワークショップの運営方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークショップの参加者に対して一体感・達成感を与えることができる発音遊具及びこの発音遊具を使用するワークショップの運営方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークショップでは各参加者の関心事を通して相互のコミュニケーションを活発化させ、一体感・達成感を創出することを目的とすることが多い。
しかし、ワークショップが個人や少人数のグループ等の主催者にとって管理・運営し易い小単位で行われたり、主催者のワークショップ運営能力が必ずしも十分でないこと等が原因となり、一体感・達成感の共有が隣席同士や少人数のグループ内のみに限定されてしまうケースが多く、参加者全体に一体感・達成感を及ぼすことが難しい。
他には、音楽のワークショップでは楽器操作や譜面を読む能力が少なからず必要となるため、参加者間で演奏の完成度に差が出やすい点や、参加者の国籍や文化が異なる場合、言葉が通じて意思疎通が容易な参加者同士で自然発生的にグループが形成され易いため、意思疎通が困難な他のグループとの間に隔たりが生じる点も参加者全体に一体感・達成感を及ぼすことが難しい理由として挙げられる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、多くの人がそれぞれ任意の位置に音板を取り付けて一台の発音遊具を完成させることで、この発音遊具が奏でる一パターンのリズム・メロディを通して多くの人に一体感を持たせることを目的とした発音遊具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-186233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術では以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1記載の発音遊具は一台の発音遊具を参加者全員で一斉に完成させるものであるため、参加者を複数のグループに分ける形式のワークショップでは使用し辛いという問題がある。
また、ワークショップの参加者が多い場合、各参加者が行なうのは自分に割り当てられた音板を適当な位置に取り付けるという単純作業のみになってしまうため、完成した発音遊具がリズム・メロディを奏でた際に他の参加者との一体感・達成感を得にくいという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑み、ワークショップの参加者に対して一体感・達成感を与えることができる発音遊具及びワークショップの運営方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発音遊具は、複数の音板と、当該音板を着脱自在に支持する複数の基台と、当該音板の表面に接触することで音板を発音させる接触部材とを備えており、任意の位置に音板が取り付けられた状態の各基台を連続的に配置し、前記接触部材を音板に対して相対的に移動させることでリズム・メロディを奏でることを特徴とする。
本発明のワークショップの運営方法は上記発音遊具を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者(ワークショップの参加者等)がそれぞれ任意の位置に音板を取り付けることで一つの基台を完成させた後、各基台を連続的に配置し、音板に対して接触部材を移動させることで一つのリズム・メロディを奏でる。
使用者は他者と相談しながら基台上の任意の位置に音板を取り付けると共に、曲の出来栄えを相互に批評し合い、必要に応じて基台や音板の位置を入れ替える等の作業を通じてコミュニケーションを取ることができ、これにより一体感・達成感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態の発音遊具の構造を示す図(a)〜(d)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の発音遊具1の実施の形態について図面を用いて説明するが、各図は発音遊具の構造を模式的に表したものにすぎない。
図1(a)〜(d)に示すように、発音遊具1は複数の音板10、複数の基台20、接触部材30から概略構成される。
音板10は振動させることで所定の音階の音を発する部材であり、本実施の形態では矩形状の板体から成る。音板10の材質は特に限定されるものではなく、木材、金属、樹脂等の周知の材料を使用することができる。また、各音板10の寸法(長手方向及び短手方向の長さや厚み)も特に限定されるものではないが、後述するようにワークショップの参加者がその基台20上の位置を任意に変更することから、美観性の観点から同一寸法にするのが好ましい。
【0011】
基台20は複数の音板10を着脱自在に支持するためのものであり、本実施の形態では下方に傾斜すると共に音板10が取り付けられる支持板21と、支持板21の上端に接合される脚部22と、支持板21の下端及び脚部22の下端に接合される底部23とから成る。なお、基台20の構造はこれに限定されるものではなく、音板10を着脱自在に支持できるものであればよい。
基台20は1台の発音遊具1に対して2つ以上あればよく、ワークショップの参加者数やグループ数に応じてその数を調節すればよい。本実施の形態では4つの基台で1台の発音遊戯を構成している。
また、複数の基台20を並べる際に、隣り合う基台20の高低差を調節して音板10を滑らかに連続させるための高さ調節部材24を備える。
【0012】
接触部材30は音板10の表面に接触することで音板10を発音させるものである。接触部材30の形状は特に限定されるものではなく、例えば球形状、多角形状、円柱形状等が挙げられるが、傾斜して配置した音板10上を転がす場合には球形状が好ましい。接触部材30の材質も特に限定されるものではなく、木材、金属、樹脂等の周知の材料を使用することができる。
【0013】
次に、発音遊具1の操作方法について説明する。
ワークショップの主催者は予め参加者を複数のグループに分けておき、各グループに1台ずつ発音遊具1を割り当てる。グループ分けの方法に決まったルールはなく、各グループを国籍や文化が異なる者同士、或いは国籍や文化を同じくする者同士で構成したり、他には例えば年齢、性別、楽器操作や譜面を読む能力の有無等、様々な方法を採ることができる。
参加者は自分が所属するグループに割り当てられた発音遊具1に対して、グループ内の参加者と相談しながら基台20上の任意の位置に音板10を取り付ける。
音板10の取り付けがある程度進んだ段階で接触部材30を転がして発音させてみて、それが好ましいリズム・メロディかどうかをグループ内で相談し、必要があれば音板10の位置を変更するのが好ましい。
【0014】
各グループで音板10の取り付けが完了した後、主催者は各基台20を連続的に配置する。「連続」とは接触部材30が音板10の表面を相対的にスムーズに移動できる程度に繋がっていることを指す。したがって、接触部材30がスムーズに移動可能であれば必ずしも各音板10の表面が面一で滑らかに繋がっている必要はなく、階段状や或いは隣り合う2つの音板10の間に隙間が存在してもよい。基台20の配置例のバリエーションについては他の実施の形態として後述する。
そして、参加者又は主催者は接触部材30を音板10に対して相対的に移動させて発音させる。本実施の形態のように音板10が水平面に対して傾斜している場合には、頂上の音板10から接触部材30を下方向に転がすことになる。
これによりグループ毎の特色を持ったリズム・メロディが連続的に組み合わされた一つの曲が完成する。
参加者はその曲の出来栄えを相互に批評し合い、必要に応じて基台20や音板10の位置を入れ替える等の作業を行なうことでコミュニケーションを図ることができ、これが一体感・達成感の創出に繋がる。
なお、完成した曲は必ずしも音楽として綺麗なリズム・メロディになっている必要はなく、突然曲調が変化するなど、不連続に構成されていてもよい。突然の曲調の変化という偶然性から驚きや意外性が生まれ、参加者間でよりコミュニケーションを図りやすくなる場合があるためである。
【0015】
[第2の実施の形態]
次に本発明の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。第3以降の実施の形態についても同様とする。
図2に示すように、本実施の形態では音板10を水平方向に配置すると共に左端及び右端の基台20の端部を円弧状部材40で繋いだ点に特徴を有する。
図中に矢印で示すように基台20の一方の端部を下方に押し下げる(他方の端部を上方に押し上げる)ことで音板10を水平面に対して傾斜させ、その状態で接触部材30を転がすことでリズム・メロディが奏でられる。接触部材30が一方の端部まで移動したら、当該端部を上方に押し上げることで接触部材30は反対方向へ転がり、異なるリズム・メロディが奏でられることになる。
【0016】
[第3の実施の形態]
図3に示すように、本実施の形態では音板10を水平方向に配置すると共に、音板10の上方にベルトコンベア50を配置した点に特徴を有する。
ベルトコンベアは左右一対のローラ51と、ローラ51に掛け回されたベルト52から概略構成されており、ベルト52の一部に接触部材30を取り付けている。なお、ローラ52を支持するための架台については図示を省略している。
右側のローラ51を手動で回転させることでベルト52が回転し、ベルト52から下方に垂れ下がった接触部材30が音板10の表面を摺動することでリズム・メロディが奏でられる仕組みになっている。また、ローラ51を反対方向に回転させることで接触部材30を反対方向に摺動させ、異なるリズム・メロディを奏でることもできる。
なお、ローラ51を手動ではなくモータ等を利用した電動にしてもよい。
【0017】
[第4の実施の形態]
図4に示すように、本実施の形態では上記第3の実施の形態のローラ51に風車60を取り付けた点に特徴を有する。
すなわち、風車60の回転力を利用してローラ51を回転させる仕組みになっており、風向きによって接触部材30の摺動方向が変わり、リズム・メロディも変わることになる。
【0018】
[第5の実施の形態]
図5に示すように、本実施の形態では音板10を垂直方向に配置すると共に、音板10の左側にベルトコンベア70を配置した点に特徴を有する。
ベルトコンベア70は上下一対のローラ71、これらローラ71に掛け回されたベルト72及び操作用ローラ73から概略構成されており、ベルト72の一部に接触部材30を取り付けている。なお、ローラ71を支持するための架台については図示を省略している。
操作用ローラ73を手動で回転させることでベルト72から右方向にのびる接触部材30が音板10の表面を摺動していき、リズム・メロディが奏でられる仕組みになっている。また、ローラ71を反対方向に回転させることで音板10を反対方向に摺動させ、異なるリズム・メロディを奏でることもできる。
【0019】
[第6の実施の形態]
図6に示すように、本実施の形態では上記第5の実施の形態と同様に音板10を垂直方向に配置すると共に、上部に滑車80を配置して当該滑車80にロープ81を掛け回している。そして、ロープ81の一方の端部に錘82、他方の端部に接触部材30を取り付けた点に特徴を有する。
錘82を上方に持ち上げた状態で接触部材30が最も下側の音板10に接触するようにロープ81の長さを調節してあり、錘82を重力で下方に自然落下させることで接触部材30が音板10表面を上方に摺動していき、リズム・メロディを奏でる仕組みになっている。
【0020】
[第7の実施の形態]
図7に示すように、本実施の形態では複数の基台20を円形に配置すると共に架台90で支持した箇所を中心にして回転する点に特徴を有する。音板10は円の内側に取り付けられており、音板10が回転することで接触部材30が相対的に音板10上を移動し、リズム・メロディを奏でる仕組みになっている。
なお、本発明の発音遊具は上記実施の形態に示した構造に限らず適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ワークショップの参加者に対して一体感・達成感を与えることができる発音遊具及びワークショップの運営方法であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0022】
1 発音遊具
10 音板
20 基台
21 支持板
22 脚部
23 底部
24 高さ調節部材
30 接触部材
40 円弧状部材
50 ベルトコンベア
51 ローラ
52 ベルト
60 風車
70 ベルトコンベア
71 ローラ
72 ベルト
73 操作用ローラ
80 滑車
81 ロープ
82 錘
90 架台