【解決手段】ガラス基板の製造方法は、複数のガラス基板をそれぞれシート体の間に挟んだ状態で厚さ方向に積層してガラス基板の積層体を作製する工程と、積層体を熱処理することにより、ガラス基板の熱収縮率を低下させる熱処理工程と、を含む。積層体を作製する工程において、積層体の厚さ方向における一端から他端の間に選択的に加熱板を介在させ、熱処理工程において加熱板により複数のガラス基板間の熱分布を均等に調整する。
前記熱処理工程において、前記積層体が配置される空間内の気体の温度を調節する温度調節装置を、前記積層体の積層方向の一方の端部から積層方向に離間し、かつ、各ガラス基板の面内方向の中央位置に配置し、前記温度調節装置により前記積層体の積層方向の一方の端部を面内方向の中央部から加熱又は冷却する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
前記シート体は、カーボングラファイト、アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、及び、多孔質セラミックスから選ばれた一種、又は、それらの組合せからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のガラス基板の製造方法について詳細に説明する。
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の流れを示すフローチャートである。製造されるガラス基板は、特に制限されないが、例えば縦寸法及び横寸法のそれぞれが500mm〜3500mmであることが好ましい。ガラス基板の厚さは、0.1〜1.1(mm)の極めて薄い矩形形状の板であることが好ましい。
まず、熔融されたガラスが、例えばフュージョン法あるいはフロート法等の公知の方法により、所定の厚さの帯状ガラスであるシートガラスが成形される(ステップS1)。
次に、成形されたシートガラスが所定の長さの素板であるガラス基板に採板される(ステップS2)。採板により得られたガラス基板は、ガラス基板を保護するシート体と交互に積層してガラス基板の積層体を作製する(ステップS3)。次に、このガラス基板の積層体に対して熱処理を行なう(ステップS4)。このステップS3の処理およびステップS4の処理が本実施形態のアニーリング工程である。アニーリング工程の詳細については後述する。
【0016】
熱処理後のガラス基板は切断工程に搬送され、製品のサイズに切断され、ガラス基板が得られる(ステップS5)。得られたガラス基板には、端面の研削、研磨およびコーナカットを含む端面加工が行われた後、ガラス基板は洗浄される(ステップS6)。洗浄されたガラス基板はキズ、塵、汚れあるいは光学欠陥を含む傷が無いか、光学的検査が行われる(ステップS7)。検査により品質の適合したガラス基板は、ガラス基板を保護する紙と交互に積層された積層体としてパレットに積載されて梱包される(ステップS8)。梱包されたガラス基板は納入先業者に出荷される。
【0017】
このようなガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO
2 55〜80モル%、
Al
2O
3 8〜20モル%、
B
2O
3 0〜12モル%、
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
【0018】
SiO
2は60〜75モル%、さらには、63〜72モル%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0〜10モル%、CaOが0〜10モル%、SrOが0〜10%、BaOが0〜10%であることが好ましい。
【0019】
また、SiO
2、Al
2O
3、B
2O
3、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO
2)+Al
2O
3)/((2×B
2O
3)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
【0020】
また、モル%表示のB
2O
3の含有率の2倍とモル%表示のROの含有率の合計は、30モル%以下、好ましくは10〜30モル%であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5モル%含み、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
【0021】
〔アニーリング工程〕
次に、アニーリング工程について詳細に説明する。まず、ステップS2で採板された複数のガラス基板11と複数のシート体12とを交互に1枚ずつ積層してガラス基板の積層体10を作製する(ステップS3)。
【0022】
図2は、ガラス基板の積層体10(以下、積層体10という)が載せられたパレット20を示す側面図である。ここで、
図2の左側をパレット20の前側、
図2の右側をパレット20の後側とする。パレット20には、積層体10が積層方向をほぼ前後方向として載置される。ここで、積層体10の積層方向は前後方向と完全に一致している必要はない。例えば、
図2に示すように、ガラス基板11を斜めに立てかける場合、積層方向と前後方向とのなす角はガラス基板11の上下方向とのなす角となる。
パレット20は、基台部21と、載置部22と、背面板23と、等を備える。
基台部21、載置部22および背面板23は、例えば鋼鉄等の金属からなり、溶接等により一体に形成されている。
基台21は略長方形の板状であり、端面にフォークリフトの爪を挿入するための開口21aが設けられている。
載置部22は基台21の上部に固定されており、載置部22の上部にガラス基板の積層体10が載せられる。ここで、載置部22の上面は完全に水平である必要はない。例えば、
図2に示すように、ガラス基板11を斜めに立てかける場合、ガラス基板11の立てかけ角度に応じて載置部22の上面を傾斜させておいてもよい。
背面板23は略長方形の板状であり、基台21の上部において、載置部22の後端に載置部22とほぼ垂直に固定されている。背面板23は載置部22の上部に載せられる積層体10の積層方向の後端部を支持する。ここで、背面板23は完全に垂直である必要はない。例えば、
図2に示すように、ガラス基板11を斜めに立てかける場合、ガラス基板11の立てかけ角度に応じて背面板23を傾斜させておいてもよい。
【0023】
次に、積層体10について説明する。積層体10は、複数のガラス基板11と、複数のシート体12と、加熱板14(第1の加熱板)と、を有する。
【0024】
シート体12は、ガラス基板11同士の間に挟まれる。シート体12は積層されるガラス基板11同士の密着を防ぐ役割を果たす。シート体12には、積層体10を熱処理する際の温度に耐えうる耐熱性を有する材料を用いることができる。シート体12は、ガラス基板11よりも高い熱伝導率を有することが好ましい。
このようなシート体12の材料として、例えば、カーボングラファイト、アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、及び、多孔質セラミックスから選ばれた一種、又は、それらの組合せを選択することができる。
シート体12の厚さは、ガラス基板11の面内方向の熱伝導率を高めるために厚いことが好ましい。一方、積層体10の体積を低減するためにシート体12の厚さは薄いことが好ましい。このため、シート体12の厚さは、0.02mm〜3mm程度であることが好ましい。シート体12の面積は、ガラス基板11同士の密着を防ぐ役割から、ガラス基板11と同程度またはそれ以上であることが好ましい。
【0025】
加熱板14は、積層体10の積層方向(
図2の前後方向)における一端から他端の間に選択的に介在している。加熱板14は、積層体10において任意の隣接する2枚のガラス基板11の間に配置されている。ここで、加熱板14は、任意の隣接する2枚のガラス基板11の間に、シート体12に代えて、又はシート体12とともに、配置されていてもよい。ガラス基板11と加熱板14の間にシート体12が配置されていてもよいし、ガラス基板11と加熱板14とが接触していてもよい。ステップS4の熱処理において加熱板14により複数のガラス基板11間の熱分布を均等に調整することができれば、積層体10における加熱板14の位置は任意である。なお、
図2においては、積層体10の積層方向の中間位置に1枚の加熱板14を配置しているが、本発明はこれに限らず、複数の加熱板を積層体10の積層方向の任意の位置に配置することができる。
【0026】
加熱板14として、例えば、電流が流されることで発熱する電極板を用いることができる。この場合、電極板の抵抗値が電極板の温度に応じて変化するため、電極板の温度に応じて電極板を流れる電流量が変化する。このため、電極板を流れる電流量に基づいて加熱板14の温度を制御することができる。これにより、複数のガラス基板11間の熱分布を均等に調整することができる。
【0027】
次に、ステップS4の熱処理について説明する。
ステップS3の処理で作製された積層体10に対して、製造ラインから外れたオフラインで熱処理が行われる(ステップS4)。この熱処理では、ガラス基板の積層体を所定の温度の雰囲気下に所定時間放置するとともに、加熱板14により積層体10を内部から加熱し、複数のガラス基板間の熱分布が揃うように調整する。
【0028】
具体的には、熱処理を行う炉に上記の積層体10が載せられたパレット20を搬入し、炉内の空気を加熱するとともに、加熱板14に通電することで積層体10を内部から加熱して所定時間放置することによりガラス基板11を熱処理する。
熱処理の温度は、ガラス基板11の歪点−400℃の温度から歪点の温度範囲であることが、熱収縮率を低減させ、ガラス基板の歪分布を一様とする点から好ましい。熱処理の時間は、例えば1〜120時間である。熱処理における雰囲気中の温度の時間履歴は特に制限されず、雰囲気の温度が、歪点−400℃の温度から歪点の温度範囲にある時間が少なくとも1時間以上あるとよい。1時間未満であると、熱収縮率が十分に低下せず、120時間より長いと、熱収縮率は十分低減するが、ガラス基板11の生産効率が低下する。
なお、歪点はガラスの種類によって異なるが、ガラス基板11は、熱収縮を小さくするために、歪点が高いガラス組成を有することが好ましく、例えばガラス基板11のガラスの歪点は、600℃〜760℃であることが好ましく、655℃以上であることがより一層好ましい。例えば、歪点は、661℃である。歪点が低いガラス基板であっても、熱処理することにより、歪点が高いガラス基板と同程度の熱収縮率を実現することができる。この場合、熱処理温度の最低温度は、200℃(=600℃―400℃)以上である。
ガラス基板の積層体が晒される高温の雰囲気は、特に制限されず、酸素含率が5〜50%である雰囲気であってもよく、例えば空気からなる大気雰囲気であってもよい。
【0029】
図3(a)は、ガラス基板11上での点A、Bの位置を示した図であり、
図3(b)は、
図3(a)のガラス基板11上の点A、Bの各位置における熱履歴を示す図である。ここで、熱履歴とは、熱処理によって変化するガラス基板11の温度の履歴を示すものである。ガラス基板11の積層体10を積層方向に挟んだ状態で、積層体10を熱処理を行う炉に搬入し、炉内の雰囲気の温度を上昇させると、雰囲気の熱が積層体10の積層方向の外側からガラス基板11に伝わる。ガラス基板11の縁を含む縁領域11aは、高温の雰囲気から熱の伝導を受けて、ガラス基板11の縁領域11aに囲まれた中央領域11bに比べて早く昇温する。また、雰囲気を降温し、低温となった雰囲気に高温状態のガラス基板11の縁領域11aは晒されて放熱し、ガラス基板11の中央領域11bに比べて早く降温する。このため、
図3(b)に示すように、ガラス基板11上では、点A周辺は、点B周辺より早く昇温、降温する。このように熱履歴に差が生じると、縁領域11aから中央領域11bにかけて(点A周辺から点B周辺にかけて)、熱収縮率が異なり、引っ張りと圧縮応力が生じるために歪が発生する。ガラス基板11面内での熱収縮率を均一して、歪の発生を抑制するためには、ガラス基板11の縁領域11aから中央領域11bかけての温度変化の差をなくす、つまり、熱履歴の差を小さくする必要がある。
【0030】
ここで、LTPS、IGZOから構成される半導体層をガラス基板11に形成する温度は、400℃〜600℃(歪点が661℃である場合、歪点より60℃〜260℃低い温度)であるため、この温度範囲におけるガラス基板11の熱収縮率を低減できればよい。このため本実施形態では、ガラス基板11の点A及び点Bの周辺の温度が、400℃〜500℃の温度範囲になるよう熱処理を行う。熱収縮率は、ガラス基板11を熱処理した時の最高温度だけでなく、熱履歴によっても変化する。特に、
図3(b)に示すように、熱処理温度の最高温度(例えば、500℃)から、最高温度より50℃〜300℃低い温度(例えば、450℃〜200℃)までの熱履歴が、熱収縮率に大きく影響する。熱収縮率は、熱収縮率を評価する温度、ここでは、LTPS、IGZOから構成される半導体層をガラス基板11に形成する温度である例えば400℃〜500℃で熱処理することにより、この温度領域において熱収縮率が低減する。また、この温度領域400℃〜500℃以下の温度領域においても熱収縮が低減する。つまり、熱収縮率を評価する温度に近い温度では、熱収縮率に大きく影響し、温度が離れるほど、熱収縮率への影響は小さくなる。このため本実施形態では、熱処理温度の最高温度から50℃〜300℃低い温度になるまでの温度領域において、ガラス基板11の面方向での熱履歴の差が抑制されるよう熱処理を行う。
図3(b)では、300℃〜500℃の温度範囲における熱履歴の差を示している。ガラス基板11の縁領域11a(点A周辺)と中央領域11b(点B周辺)との熱履歴の差(
図3(b)における面積S)を小さくすることにより、ガラス基板11面上の熱収縮率のばらつきが抑制され、歪の発生を抑制することができる。
【0031】
点Aの熱履歴と点Bの熱履歴との差によって形成される面積Sが小さいほど、歪の値は小さくなる。
図4は、熱履歴の差を示す面積と歪との関係を示すグラフである。同図に示すように、歪を2 kgf/cm
2以下にする場合には、面積がS1以下になるように、ガラス基板11を熱処理する。また、歪を4 kgf/cm
2以下にする場合には面積をS2以下に、歪を9 kgf/cm
2以下にする場合には面積をS3以下になるように、ガラス基板11を熱処理する。面積S1〜S3の値は、時間×温度、つまり、熱量である。面積S1〜S3の値は、ガラス基板11の大きさ、厚さ、組成等によって任意に変更できる。これにより、高精細ディスプレイのパネル製造時に求められる歪の許容値に応じて、ガラス基板11の熱処理における温度、時間を適宜変更することもできる。
【0032】
また、ガラス基板11の中央領域11b(点B周辺)の温度が、縁領域11a(点A周辺)の温度と同様の最高温度に達するように熱処理する。ガラス基板11の中央領域11b(点B周辺)の温度が最高温度に達することにより、縁領域11a(点A周辺)と中央領域11b(点B周辺)との熱収縮率の差が小さくなり、歪の発生を低減することができる。中央領域11b(点B周辺)の温度が最高温度を継続(保持)する時間は、任意であり、例えば、1時間〜4時間であり、より好ましくは、1時間〜2時間である。所定の熱収縮率を達成するために、縁領域11a(点A周辺)から中央領域11b(点B周辺)にかけてのガラス基板11の温度が、最高温度に到達するように熱処理し、歪の発生を抑制するために、ガラス基板11での面方向での熱履歴の差が小さくなるように熱処理する。
【0033】
このような熱処理により、ガラス基板11の熱収縮率を0〜15ppmとすることができる。ガラス基板11の熱収縮率は、0〜12ppmとすることが好ましく、0〜6ppmとすることがより好ましい。このような熱収縮率が、ガラス基板のガラス組成と、熱処理の温度と熱処理時間を調整することにより達成することができる。
【0034】
本実施形態では、ガラス基板の積層体10を作製する際に、隣接する任意の2枚のガラス基板11の間に加熱板14を配置し、熱処理工程において加熱板14により複数のガラス基板11間の熱分布が揃うように調整することで、熱処理後のガラス基板11の熱収縮率のばらつきを低減することができる。特に、積層体10の積層方向の両端部のガラス基板11は雰囲気により加熱されやすいのに対し、積層方向の中間部のガラス基板は雰囲気により加熱されにくい。このため、積層方向の中間部に加熱板14を配置し、加熱板14により積層体10を内部から加熱することで、積層方向の中間部のガラス基板11を積層方向の両端部のガラス基板11と同様に加熱することができる。
さらに、シート体12としてガラス基板11よりも高い熱伝導率を有する材料を用いることで、ガラス基板11の面内方向の伝熱を促進し、ガラス基板11の端部領域と中央領域との熱分布を一様にすることができる。このため、ガラス基板の歪分布を一様にすることができる。
【0035】
なお、
図2においては、積層体10の積層方向の中間位置に加熱板14を配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、積層体10の積層方向において任意の隣接する2枚のガラス基板11の間に加熱板14を配置することができる。また、加熱板14は1枚に限らず、複数の加熱板を積層方向の任意の位置に配置してもよい。
【0036】
〔変形例1〕
上記実施形態では積層体10の積層方向において任意の隣接する2枚のガラス基板11の間に加熱板14(第1の加熱板)を配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られない。
例えば、
図5に示すように、積層体10の積層方向の一端(前端)に加熱板15をさらに設けるとともに、他端(後端)に加熱板16をさらに設け、加熱板14、15、16を用いて複数のガラス基板11間の熱分布を均等に調整してもよい。また、加熱板15、16のみを設け、加熱板14を設けなくてもよい。
【0037】
〔変形例2〕
あるいは、
図6に示すように、積層体10の積層方向の一端(前端)のみに、加熱板15(第2の加熱板)をさらに設け、加熱板14、加熱板15を用いて複数のガラス基板11間の熱分布を均等に調整してもよい。また、加熱板15のみを設け、加熱板14を設けなくてもよい。
【0038】
〔変形例3〕
あるいは、
図7に示すように、積層体10の積層方向の他端(後端)のみに、加熱板16をさらに設け、加熱板14、16を用いて複数のガラス基板11間の熱分布を均等に調整してもよい。また、加熱板16のみを設け、加熱板14を設けなくてもよい。
【0039】
本実施形態で製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板あるいは、有機ELディスプレイ用のガラス基板として好適である。さらに、本実施形態で製造されるガラス基板は、高精細ディスプレイに用いるLTPS(Low-temperature poly silicon)・TFTディスプレイ用ガラス基板、あるいは、酸化物半導体・TFTディスプレイ用のガラス基板として特に好適である。
【0040】
本実施形態における熔融ガラスからシートガラスを成形する方法として、フロート法やフュージョン法等が用いられるが、本実施形態のガラス基板のオフラインにおける熱処理を含むガラス基板の製造方法では、フュージョン法(オーバーダウンドロー法)において製造ライン上の徐冷装置を長くすることが困難である点から、フュージョン法に適している。
【0041】
(実験例)
下記ガラス組成を有するガラス基板をフュージョン法の1つであるオーバダウンドロー法により複数作製した。ガラス基板の歪点は660℃であった。
【0042】
(ガラス組成)
SiO
2 67.0モル%、
Al
2O
3 10.6モル%、
B
2O
3 11.0モル%、
RO 11.4モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
【0043】
〔アニーリング〕
このガラス基板に対し、アニーリングを行った。実施例では、ガラス基板を積層し、中間部に加熱板を挟んで積層体を形成し、熱処理を行なった。比較例では、ガラス基板の間に加熱板を挟まずに積層体を形成し、熱処理を行った(従来例)。熱処理は、雰囲気温度を500℃とし、放置時間を8時間とした。
【0044】
〔熱収縮率の測定〕
熱処理前に所定のサイズの長方形にガラス基板を切りだし、長辺両端部にケガキ線を入れ、短辺中央部で半分に切断し、2つのガラスサンプルを得る。このうちの一方のガラスサンプルを、熱処理(昇温速度が10℃/分、450℃で1時間放置)する。熱処理をしない他方のガラスサンプルの長さを計測する。さらに、熱処理したガラスサンプルと未処理のガラスサンプルとをつき合わせてケガキ線のずれ量を、レーザ顕微鏡等で測定して、ガラスサンプルの長さの差分を求めることでサンプルの熱収縮量を求めることができる。この熱収縮量である差分と、熱処理前のガラスサンプルの長さを用いて、以下の式により熱収縮率が求められる。このガラスサンプルの熱収縮率をガラス基板の熱収縮率とした。
熱収縮率(ppm)=(差分)/(熱処理前のガラスサンプルの長さ)×10
6
【0045】
アニーリング前のガラス基板について熱収縮率を調べたところ、50ppmであった。
アニーリング後のガラス基板について熱収縮率を調べたところ、実施例では、積層方向の端部のガラス基板の熱収縮率は2ppm、積層方向の中央部のガラス基板の熱収縮率は3ppmであった。一方、従来例では、積層方向の端部のガラス基板の熱収縮率は10ppm、積層方向の中央部のガラス基板の熱収縮率は18ppmであった。
このように、ガラス基板の積層体の間に加熱板を配置し、熱処理工程において加熱板により複数のガラス基板間の熱分布を均等に調整することで、熱処理後のガラス基板の熱収縮率のばらつきを低減することができる。
【0046】
以上、本発明のガラス基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例等に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。