特開2016-113178(P2016-113178A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-113178(P2016-113178A)
(43)【公開日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】包装材料用接着剤および包装材料
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20160527BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20160527BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20160527BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160527BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160527BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160527BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20160527BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20160527BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20160527BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20160527BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20160527BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   H01M2/02 K
   B32B15/08 F
   B32B27/00 D
   B32B27/30 102
   B32B27/32 101
   B65D81/24 E
   B65D30/02
   B65D33/25 A
   C09J129/04
   C09J123/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-253156(P2014-253156)
(22)【出願日】2014年12月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 拓磨
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
3E086
4F100
4J040
5H011
【Fターム(参考)】
3E064AA04
3E064AA05
3E064AA09
3E064BA17
3E064BA24
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA28
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(57)【要約】
【課題】
刺激性の強い内容物に対しても優れた耐内容物性を発揮する包装材料と、その包装材料に用いる接着剤であって、バリア層の反りを抑制し、かつ非水溶性の溶剤に対する分散安定性に優れ、包装内容物成分の吸着も抑制された接着剤とを提供すること。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸エステル成分を含む酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールと、水性媒体とを含有した水性分散体の形態であり、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対するポリビニルアルコールの含有量が0.1〜10質量部であることを特徴とする包装材料用接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル成分を含む酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールと、水性媒体とを含有した水性分散体の形態であり、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対するポリビニルアルコールの含有量が0.1〜10質量部であることを特徴とする包装材料用接着剤。
【請求項2】
バリア層、接着層およびシーラント層がこの順に積層された包装材料であって、前記接着層が、請求項1記載の包装材料用接着剤より得られる塗膜にて形成されていることを特徴とする包装材料。
【請求項3】
ポリビニルアルコールのケン化度が80〜99.9モル%であることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項4】
ポリビニルアルコールの平均重合度が100〜3000であることを特徴とする請求項2または3に記載の包装材料。
【請求項5】
接着層の量が0.001〜5g/mの範囲にあることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項6】
バリア層がアルミニウムにて構成されていることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項7】
シーラント層がポリオレフィン樹脂にて構成されていることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項8】
ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレンまたはポリプロピレンを主成分とする樹脂であることを特徴とする請求項7記載の包装材料。
【請求項9】
浸透性成分含有液状物質を含む内容物のための包装材料と、浸透性成分含有ペースト状物質を含む内容物のための包装材料と、揮発性成分含有固体を含む内容物のための包装材料とのいずれかであることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項10】
浸透性成分含有液状物質が、アルコール飲料と、液体洗剤と、シャンプーと、リンスと、電池電解液と、酢と、油とのいずれかであることを特徴とする請求項9記載の包装材料。
【請求項11】
浸透性成分含有ペースト状物質が、化粧品と、医薬品と、調味料と、食品とのいずれかであることを特徴とする請求項9記載の包装材料。
【請求項12】
揮発性成分含有固体が香辛料または入浴剤であることを特徴とする請求項9記載の包装材料。
【請求項13】
チャック体として対をなし互いに嵌合する雄型部と雌型部とが、包装材料の内面を構成する一対のシーラント層の表面にそれぞれ接合された構成の、チャックが設けられていることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項14】
詰め替え用包装材料であることを特徴とする請求項2記載の包装材料。
【請求項15】
請求項1記載の包装材料用接着剤をバリア層の少なくとも一方の面に塗布し乾燥することで接着層を形成した後、接着層の上に溶融したシーラント樹脂を押出ラミネーションにより積層することを特徴とする包装材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料用接着剤および包装材料に関し、詳しくは特定内容物に対する耐性を発現可能な包装材料用接着剤および包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料として、アルミニウム箔などのバリア層の上にシーラント層としてポリオレフィン系樹脂フィルムを積層したものが多く使用されている。このシーラント層は、接着層(プライマー、アンカーコートなどとも呼ばれる)を介してバリア層に積層されるのが一般的である。
【0003】
しかし、こうした包装材料を用いて、メントールやナフタレンなどの揮発性を有する物質、香り成分や薬効成分を含有している内容物、もしくは固体有機電解質を含有する二次電池などの、刺激性の強い内容物を包装した場合、保存中にそれらの物質やその成分がバリア層とシーラント層との間の接着層に作用して、バリア層とシーラント層との間の接着強度が経時的に低下したり、両層が剥がれてしまったりする(デラミネーション)といった問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、特許文献1〜3には、包装材料において内容物に対する耐性を向上させるための技術が提案されている。ここで、「内容物に対する耐性」とは、内容物の保存中にバリア層とシーラント層との間の接着強度低下を抑制する性能をいう。以下、この性能を「耐内容物性」と称することがある。
【0005】
本願の出願人も、このような問題を解決するために、特許文献4にて、特定組成の水性分散体をバリア層に塗布、乾燥することで特定の接着層を形成し、この特定の接着層を介してシーラント層を積層する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−254595号公報
【特許文献2】特開2001−322221号公報
【特許文献3】特開2008−127042号公報
【特許文献4】特開2008−120062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、包装材料において、一般内容物に対しては十分な耐内容物性が認められるものの、刺激性の強い内容物に対しては十分な耐内容物性が期待できない。つまり、包装材料の適用範囲が限られる点で改良の余地を残している。
【0008】
特許文献4に記載された水性分散体は、バリア層に塗布、乾燥して接着層を形成した場合に、稀ではあるがバリア層に反りが発生することがあり、その場合は包装材料の取り扱い性が悪くなる問題がある。さらに、特許文献4の水性分散体は、グラビアコーターなどの公知のコーターで塗布できるものである。ところで、一般的な製造現場で使われているコーターは、水系塗料や溶剤系塗料など多種類の塗料が適応されており、使用目的によってこのような塗料を毎回置き換えて使用している。この塗料の置き換え作業の際に、コーターの備え付けの塗料貯蔵タンク、塗料供給ライン、塗料供給パンなどに、少量の非水溶性の溶剤が残存した場合、特許文献4の水性分散体では、微細な凝集物が発生することがある。そのような場合は、バリア層への均一な塗布が困難となる問題がある。即ち、特許文献4の水性分散体では、非水溶性の溶剤(例えばトルエン)が混在した場合の分散安定性に問題がある。
【0009】
また、一般的に包装材料に用いられる接着層やシーラント層は、内容物の成分の吸着が少ないことを望まれる。しかし、特許文献1〜3に記載された接着層は、内容物の成分の吸着性について改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、一般内容物に対しては無論のこと、刺激性の強い内容物に対しても優れた耐内容物性を発揮する包装材料と、その包装材料に用いる接着剤であって、バリア層の反りを抑制し、かつ非水溶性の溶剤に対する分散安定性に優れ、包装内容物成分の吸着も抑制された接着剤とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定組成のポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとを特定の割合で含有する水性分散体を包装材料用の接着層に用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の包装材料用接着剤は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含む酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールと、水性媒体とを含有した水性分散体の形態であり、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対するポリビニルアルコールの含有量が0.1〜10質量部であることを特徴とする。
【0013】
本発明の包装材料は、バリア層、接着層およびシーラント層がこの順に積層され、接着層が、上述の包装材料用接着剤より得られる塗膜にて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の包装材料用接着剤は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含む酸変性ポリオレフィン樹脂と所定量のポリビニルアルコールとを含有した水性分散体の形態であるため、包装材料の加工に好適に用いることができ、またバリア層へ塗布、乾燥してもバリア層の反りの発生が抑えられ、さらに非水溶性の溶剤の混在があっても水性分散体(接着剤)の分散安定性に優れる効果を有する。
【0015】
また、本発明の包装材料用接着剤より得られる塗膜を、接着層として、バリア層とシーラント層との間に設けた本発明の包装材料は、接着層が(メタ)アクリル酸エステル成分を含む酸変性ポリオレフィン樹脂と所定量のポリビニルアルコールとを含有するため、様々な内容物に対し優れた耐内容物性を発揮できるものであり、特に刺激性の強い内容物、例えば酸性成分や香辛料を共に含むような内容物に対しても、優れた耐内容物性を発揮できる。さらに、内容物成分の接着層への吸着が少ない。よって内容物の長期にわたる品質維持に資するところが大きい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の包装材料用接着剤は、包装材料を構成するバリア層とシーラント層との接着に適したものであるが、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、および水性媒体を含有する水性分散体の形態である。そして、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対するポリビニルアルコールの含有量が0.1〜10質量部である。
【0017】
酸変性ポリオレフィン樹脂について説明する。酸変性ポリオレフィン樹脂の主成分たるオレフィン成分としては、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜6のアルケンが接着性の観点から好ましく、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンなどの炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
【0018】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分により酸変性されたものである。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。そのほかに、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどがあげられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸がバリア層との接着性の観点から好ましく、特にアクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などがあげられる。
【0019】
なお、「(無水)〜酸」とは、「〜酸または無水〜酸」を意味する。すなわち、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸または無水マレイン酸を意味する。
【0020】
不飽和カルボン酸成分の含有量は、適宜のものとすることができる。なかでも、バリア層とシーラント層との接着性のバランスから、酸変性ポリオレフィン樹脂を100質量%として、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.5〜4質量%がさらに好ましく、1〜4質量%が特に好ましい。含有量が0.01質量%未満になると、バリア層としてアルミニウム箔などを使用した場合において十分な接着性が得難くなる傾向が生じることがある。一方、10質量%を超えると、シーラント層との接着性が低下する傾向が生じることがある。
【0021】
さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂には、(メタ)アクリル酸エステル成分が含有されている必要がある。この成分を含有していないと、バリア層やシーラント層との十分な接着性が得られない。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物があげられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。(メタ)アクリル酸エステル成分の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、入手の容易さと接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。
【0022】
本発明においては、酸変性ポリオレフィン樹脂に(メタ)アクリル酸エステル成分が含まれていれば足り、その含有量は任意である。しかしながら、その含有量としては、耐内容物性が向上する点から、酸変性ポリオレフィン樹脂を100質量%として、0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜18質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、アルミニウム箔やポリオレフィン樹脂系フィルムとの接着性が低下する傾向が生じることがあり、25質量%を超える場合は、耐内容物性が低下する傾向が生じることがある。(メタ)アクリル酸エステル成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0023】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体が最も好ましい。共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、分子量が高くなるにつれ、本発明の包装材料用接着剤を、包装材料を構成するバリア層とシーラント層との接着に供した場合の耐内容物性が向上する傾向が生じることがある。したがって分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートは、任意の値をとることができるが、100g/10分以下が好ましく、30g/10分以下がより好ましく、0.001〜20g/10分がさらに好ましく、0.01〜10g/10分が特に好ましい。メルトフローレートが100g/10分を超える場合は、その分だけ樹脂の分子量が低くなって、耐内容物性が低下する傾向が生じることがある。メルトフローレートが0.001g/10分未満の場合は、樹脂を高分子量化する際の製造面に制約を受けることがあり得る。
【0025】
以下、ポリビニルアルコールについて説明する。本発明においては、任意のポリビニルアルコールを用いることができる。なかでも、ビニルエステルの重合体を完全ケン化または部分ケン化したものなどを、好ましく使用することができる。ケン化方法としては、公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を採用することができる。中でも、メタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。
【0026】
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどがあげられ、これらを任意に用いることができる。なかでも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0027】
本発明の包装材料用接着剤におけるポリビニルアルコールの含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが必要である。なかでも、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜4質量部がより好ましく、0.2〜4質量部がさらに好ましく、0.3〜3質量部が特に好ましい。ポリビニルアルコールの含有割合が0.1質量部未満では、本発明の効果は小さく、10質量部を超える場合は、基材との密着性や接着層の耐水性が低下する傾向にある。
【0028】
ポリビニルアルコールのケン化度は、任意の値を採用することができる。なかでも、塗膜の耐薬品性向上の観点から、80〜99.9モル%が好ましく、90〜99.9モル%がより好ましく、95〜99.9モル%がさらに好ましい。80モル%未満であると、本発明の包装材料用接着剤を用いて包装材料の接着層を形成した際の内容物成分の吸着抑制効果が低下する傾向が生じることがあったり、包装材料において反り抑制効果が低下する傾向が生じることがあったりする。
【0029】
ポリビニルアルコールの平均重合度としては、任意の値を採用することができる。なかでも、100〜3000が好ましく、300〜2000がより好ましく、500〜1500がさらに好ましく、500〜1000が特に好ましい。100未満であると耐内容物性が悪化する傾向が生じることがあり、3000を超えると水性分散体(包装材料用接着剤)とした場合の粘度が高くなりすぎる傾向が生じることがある。
【0030】
本発明では、内容物成分の吸着抑制効果の低下が少なく耐内容物性にも優れる包装材料を得る観点から、ケン化度が80〜99.9モル%かつ平均重合度が100〜3000であるポリビニルアルコールを使用することが好ましい。
【0031】
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することが可能である。他のビニル化合物であるビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩や;エチレンなど炭素数2〜30のα−オレフィン類や;アルキルビニルエーテル類や;ビニルピロリドン類や;ジアセトンアクリルアミドなどがあげられる。
【0032】
エチレンを共重合した場合、即ち、エチレン−ビニルアルコール共重合体の場合は、エチレンの含有量としては、耐内容物性の観点から50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。
【0033】
なお、ポリビニルアルコールとしては、市販のものを使用できる。具体的には、日本酢ビ・ポバール社製の「J−ポバール」、クラレ社製の「クラレポバール」「エクセバール」、電気化学工業社製の「デンカ ポバール」などを好適に用いることができる。
【0034】
酸変性ポリオレフィン樹脂およびポリビニルアルコールは、後述するような方法で、水性媒体中に分散または溶解させることで、水性分散体(包装材料用接着剤)に加工することが可能である。詳しくは、本発明の包装材料用接着剤は、水性媒体中に、酸変性ポリオレフィン樹脂は主に分散した状態で、ポリビニルアルコールは主に溶解した状態で含有した水性分散体のことを示す。ここで、水性媒体とは、水または、水を含む液体からなる媒体である。水性媒体には、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散安定化に寄与する中和剤や水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。
【0035】
本発明の包装材料用接着剤の製造方法は、特に限定されない。たとえば、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体と、ポリビニルアルコールの水溶液とを、個別に作製しておいてから、それぞれを混合する方法や、水性媒体に固形の酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとを一括して仕込み、同一の系内で両者を分散、溶解する方法などを採用することができる。
【0036】
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体について説明する。
【0037】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散させることで水性分散体に加工することが可能である。分散させる方法としては、自己乳化法や強制乳化法など公知の分散方法を採用すればよい。なお、上述したように、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散の際に、予めポリビニルアルコールを原料として特定量仕込み、これと酸変性ポリオレフィン樹脂とを一括して水性分散化させる方法を採用しても良い。
【0038】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体としては、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体を使用することが、接着性の観点から好ましい。
【0039】
酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化させる際に用いられる水性媒体は、水または、水を含む液体からなる媒体である。これらには、分散安定化に寄与する中和剤や水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体;3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。なお、これら有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の水溶性有機溶媒を用いることが、接着層を形成する際に残存を少なくするために好ましい。このような水溶性有機溶媒として、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられる。
【0040】
酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を中和するのに用いられる塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属等が挙げられる。なお、塩基性化合物は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の塩基性化合物を用いることが、接着層を形成する際に残存を少なくするために好ましい。具体的には、アンモニア 、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0041】
水性媒体へのポリビニルアルコールの溶解方法としては、公知の方法を採用すればよい。具体的には、水性媒体として水を用い、ポリビニルアルコールを水に仕込み撹拌しながら加熱し溶解させる方法が一般的である。このようにして得られたポリビニルアルコールの溶液を、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に特定量添加することで、本発明の包装材料用接着剤(酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールと水性媒体とを含有する水性分散体)を得ることが可能である。ポリビニルアルコールの溶液の添加の際は、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を撹拌しながら添加することが好ましい。
【0042】
包装材料用接着剤中の分散粒子の数平均粒子径は、任意である。なかでも500nm以下であることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。数平均粒子径が500nmを超えると、包装材料用接着剤の保存安定性が低下する傾向が生じたり、均一な厚みの塗布が困難となりその結果安定した効果が得られなくなる傾向が生じたりすることがある。なお、包装材料用接着剤中の分散粒子とは、通常、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散粒子のことを意味する。
【0043】
本発明の包装材料用接着剤の固形分濃度(不揮発成分濃度)は、任意である。なかでも、水性分散体の形態の包装材料用接着剤の全体に対して1〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0044】
本発明の包装材料用接着剤は、本発明の効果を損ねない限りにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール以外の樹脂が含有されていてもよい。このような樹脂の含有率は、具体的には、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して30質量部以下の範囲であることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などがあげられる。このような樹脂の数平均分子量は、任意である。なかでも、耐内容物性の観点から、10000以上が好ましく、30000以上がより好ましい。
【0045】
本発明の包装材料用接着剤には、酸変性ポリオレフィン樹脂および、またはポリビニルアルコールを架橋するための架橋剤が含有されていてもよい。架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、多価メラミン化合物、尿素化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボジイミド化合物、多価オキサゾリン基含有化合物、多価ヒドラジド化合物、多価ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤などがあげられる。架橋剤の含有量は、耐内容物性を考慮して、適宜決定すればよい。なかでも、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールの総和100質量部に対して20質量部以下の範囲で含有されていることが好ましい。
【0046】
上記のような、酸変性ポリオレフィン樹脂およびポリビニルアルコール以外の樹脂や、架橋剤としては、包装材料用接着剤への添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものであることが好ましい。
【0047】
本発明の包装材料用接着剤は、バリア層、接着層およびシーラント層がこの順に積層された構成の包装材料の前記接着層として、好適に用いることが可能である。
【0048】
以下、本発明の包装材料について説明する。
【0049】
本発明の包装材料は、バリア層、接着層およびシーラント層がこの順に積層された包装材料である。
【0050】
バリア層は、液体や気体を遮断できる材料であればどのような材料から構成されていてもよい。詳細には、アルミニウム箔などの軟質金属箔の他、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層;塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層などを採用できる。
【0051】
バリア層として蒸着層を適用する場合には、市販の、蒸着層を有するフィルムを使用することが簡便である。そのような蒸着層を有するフィルムとしては、例えば、大日本印刷社製の「IBシリーズ」、凸版印刷社製の「GL、GXシリーズ」、東レフィルム加工社製の「バリアロックス」「VM−PET」「YM−CPP」「VM−OPP」、三菱樹脂社製の「テックバリア」、東セロ社製の「メタライン」、尾池工業社製の「MOS」「テトライト」「ビーブライト」などを例示できる。蒸着層の表面上に保護コート層が設けられていてもよい。
【0052】
バリア層として有機バリア層を適用する場合には、有機バリア層を有する積層フィルムを使用することが簡便である。この場合、当該フィルムとして、バリア性を有する樹脂を含む塗剤をフィルムにコーティングしたもの、前記樹脂を共押し出し法により積層したものなどの、特別に作製したものを用いることができる。しかし、有機バリア層を有する市販のフィルムを使用することが簡便であり、好ましい。そのような有機バリア層を有するフィルムとしては、クラレ社製の「クラリスタ」「エバール」、呉羽化学工業社製の「ベセーラ」、三菱樹脂社製の「スーパーニール」、興人社製の「コーバリア」、ユニチカ社製の「セービックス(登録商標)」「エンブロンM」「エンブロンE」「エンブレムDC」「エンブレットDC」「NV」、東セロ社製の「K−OP」「A−OP」、ダイセル社製の「セネシ」などを例示することができる。
【0053】
本発明では、バリア層として、バリア性の点から、アルミニウム箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナなどの蒸着層が一般に好ましい。そして、特に安価である点から、アルミニウム箔、アルミニウムの蒸着層といったアルミニウムを用いて形成されたバリア層が好ましい。バリア層の厚みは、特に限定されない。例えばアルミニウム箔の場合は、経済的な面から3〜50μmの範囲の厚みが好ましい。
【0054】
バリア層におけるバリア性については、包装する内容物や保存期間などに応じて最適範囲を適宜選択すればよい。なかでも、水蒸気透過度として、おおむね、100g/m・day(40℃、90%RH)以下が好ましく、20g/m・day以下がより好ましく、10g/m・day以下がさらに好ましく、1g/m・day以下が特に好ましい。酸素透過度としては、100ml/m・day・MPa(20℃、90%RH)以下が好ましく、20ml/m・day・MPa以下がより好ましく、10ml/m・day・MPa以下がさらに好ましく、1ml/m・day・MPa以下が特に好ましい。
【0055】
接着層は、本発明の包装材料用接着剤より得られる塗膜である。詳しくは、接着層の組成は、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールを含み、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対してポリビニルアルコールの含有量が0.1〜10質量部である。
【0056】
接着層は、後述するように、本発明の包装材料用接着剤をバリア層の少なくとも一方の面に塗布し乾燥することで形成することが可能である。
【0057】
接着層の量は、任意である。なかでも、接着面の面積に対して、0.001〜5g/mの範囲であることが好ましく、0.01〜3g/mであることがより好ましく、0.02〜2g/mであることがさらに好ましく、0.03〜1g/mであることが特に好ましく、0.05〜1g/mであることが最も好ましい。0.001g/m未満では、十分な耐内容物性が得られない傾向が生じることがある。一方、5g/mを超える場合は、経済的に不利となる傾向が生じることがある。
【0058】
シーラント層としては、従来から知られたシーラント樹脂を使用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂などがあげられる。なかでも低温シール性の観点からポリエチレン系樹脂が好ましく、安価であることからポリエチレンが特に好ましい。シーラント層の厚みは、特に限定されないが、包装材料への加工性やヒートシール性などを考慮して10〜60μmの範囲が好ましく、15〜40μmの範囲がより好ましい。また、シーラント層に高低差5〜20μmの凸凹を設けることで、シーラント層に滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
【0059】
本発明において、接着層を形成する方法としては、本発明の包装材料用接着剤をバリア層の少なくとも一方の面に塗布して水性媒体の一部または全てを乾燥することで塗膜を形成させる方法や、本発明の包装材料用接着剤を剥離紙上に塗布し、そこから水性媒体の一部または全てを乾燥させて一旦塗膜を形成し、この塗膜を後にバリア層の少なくとも一方の面に転写する方法などがあげられる。なかでも、環境の点、性能の点、接着層の量を調整しやすくする点などから、本発明の包装材料用接着剤を、バリア層の少なくとも一方の面に塗布して水性媒体の一部または全てを乾燥させる方法が好ましい。この場合には、バリア層の少なくとも一方の面に包装材料用接着剤を塗布、乾燥して接着層を形成し、次いで接着層の上にインラインでシーラント樹脂を溶融押出(押出ラミネート)することによってシーラント層を積層する方法があげられる。この方法は、簡便であり、かつ耐内容物性の効果を向上させるために、特に好ましい方法である。
【0060】
包装材料用接着剤の塗布方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などがあげられる。これらの方法により包装材料用接着剤をバリア層の表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供する。この加熱処理によって水性媒体の一部または全てを乾燥することで、均一な塗膜を形成することができる。即ち接着層をバリア層表面に密着させて形成することができる。乾燥の際は、水性媒体の全てを乾燥させることが、接着性や耐内容物性を良好にする観点から好ましい。
【0061】
なお、後述する基材層などをバリア層のどちらか一方の面に積層し、後にバリア層のもう一方の面に包装材料用接着剤を塗布し、乾燥してもよい。
【0062】
本発明において、バリア層に積層された接着層上にさらにシーラント層を積層する方法は、特に限定されない。例えば、接着層とシーラント樹脂フィルムとを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)や、シーラント樹脂を溶融させて接着層上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネーション法)などがあげられる。なかでも、接着層を薄くできること、耐内容物性を向上させ易いことなどの点から、押出ラミネーション法が好ましい。押出しの際の溶融シーラント樹脂の温度は、適宜に設定することができる。なかでも、接着層を介してのバリア層との接着性や、耐内容物性を良好にする観点から、200〜400℃の範囲が好ましく、250〜350℃の範囲がより好ましく、280〜330℃の範囲がさらに好ましい。また、押出しの際の溶融シーラント樹脂には、上記した接着性や耐内容物性を向上させたり、ライン速度を向上させたりするために、オゾン処理などを施しても構わない。
【0063】
本発明の包装材料は、通常、バリア層を外側、シーラント層を内側(内容物側)として包装に供される。また、包装材料としての用途、必要な性能(易引裂性やハンドカット性)、包装材料として要求される剛性や耐久性(例えば、耐衝撃性や耐ピンホール性など)などを考慮した場合、必要に応じてバリア層の外側または内側に他の層を積層することもできる。通常は、バリア層の外側に基材層、紙層、第2のシーラント層、不職布層などを伴って使用される。他の層を積層する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、他の層との層間に接着剤層を設けてドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法などにより積層すればよい。接着剤としては、1液タイプのウレタン系接着剤、2液タイプのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性ポリオレフィンの水性分散体などを用いることが可能である。本発明の包装材料用接着剤を用いても特に構わない。
【0064】
具体的な積層体構成としては、一般の包装材料や蓋材、詰め替え容器などに好適に用いることが可能な、基材層/バリア層/接着層/シーラント層や;紙容器、紙カップなどに好適に用いることが可能な、第1のシーラント層/紙層/バリア層/接着層/第2のシーラント層、第1のシーラント層/紙層/ポリオレフィン樹脂層/基材層/バリア層/接着層/第2のシーラント層、紙層/バリア層/接着層/シーラント層、基材層/紙層/バリア層/基材層/接着層/シーラント層や;チューブ容器などに好適に用いることが可能な、第1のシーラント層/バリア層/接着層/第2のシーラント層などが挙げられる。これら積層体は、必要に応じて、印刷層やトップコート層などを有していても構わない。
【0065】
基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム;ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体などが用いられる。なかでも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムが好ましく用いられる。紙層としては、天然紙や合成紙などが挙げられる。第1および第2のシーラント層は、上述のシーラント層と同様の材料で形成することができる。基材層および紙層の外表面または内面側には、必要に応じて印刷層を設けてもよい。
【0066】
これらの「他の層」は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。また「他の層」は、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、前処理としてフィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などしたものであってもよい。
【0067】
「他の層」の厚さは、包装材料としての適性、積層する場合の加工性を考慮して決定すればよく、特に制限されない。実用的には1〜300μmの範囲が好ましい。ただし、用途によっては300μmを超えるものを採用すればよい。
【0068】
本発明の包装材料の態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、など種々ある。このうち、紙カップとしては、胴部と底部のブランク板を作製し、該ブランク板を用いて、カップ成形機で、筒状の胴部を成形するとともに、該胴部の一方の開口端に底部を成形して熱接着した紙カップなどをあげることができる。
【0069】
また、本発明の包装材料に易開封処理を施してもよい。具体的には、切れ込み線、ハーフカット線、ミシン目などの処理を施してもよい。また、開封位置に適宜切れ目(ノッチ)を設けてもよい。
【0070】
また、再封性手段を適宜設けてもよい。具体的には、最内層のシーラント層に粘着剤を塗布して再封可能としてもよいし、ポリエチレン樹脂製やポリプロピレン樹脂製のチャックを設けて、チャック付き包装袋としてもよい。本発明の包装材料用接着剤は、そのようなチャックとの接着性にも優れる。さらに本発明の包装材料用接着剤は、深絞り成型にも適している。
【0071】
チャック付き包装袋は、包装袋の一端に開口部を有し、その開口部の近傍における最内層のシーラント層に樹脂製のチャックを設けた構成とすることが好適である。本発明の包装材料の内容物がアルコール飲料、入浴剤、香辛料、湿布剤、貼付剤などである場合には、開封後の長期間保存の観点から、チャックが設けられていることが好都合である。チャックが設けられていることで、便利よく内容物を出し入れできる。チャックは一般に一対のチャック体にて構成され、一方のチャック体の雄型部と他方のチャック体の雌型部とが嵌合し、これにより包装袋が密封される。雄型部および雌型部は、通常、それぞれ対向する包装材料のシーラント層と接合される。本発明の包装材料用接着剤は、このようなチャックとの接着性にも優れている。また、チャック付き包装袋は、内容物を収容したうえで、チャックが設けられた開口部の外側が封止された状態で製造されることで、内容物の長期間保存に対応することが可能である。そして、このような包装袋では、封止部とチャックとの間に、内容物使用時に切断もしくは引裂くことが可能な引裂部が設けられていることが好ましい。
【0072】
チャックを構成する材料としては、ポリオレフィン樹脂が好ましく、中でも、安価である点から、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂を主成分とするものがより好ましく、ポリエチレン樹脂を主成分とするものが特に好ましい。中でもLDPE、LLDPEが特に好ましい。
【0073】
チャック体の雄型部および雌型部は、それぞれ別々に押出成型によって作製されたものであって、曲げ弾性率が50〜500MPaのLDPEにて形成されたものであることが好ましい。曲げ弾性率が50MPa未満であると、チャックの嵌合強度が弱くなったり、製袋時の繰り出しが困難となったりする。一方、500MPaを超えると、繰り返しの開封時の強度や再封後の強度が低下したり、チャックの破損が生じたりする。
【0074】
LDPEはメルトインデックス(MI)が1〜15g/10分のものが好ましく、より好ましくは2〜8g/10分のものである。MIが1g/10分未満であるとメルトフラクチャーが発生し易くなり、15g/10分を超えると成形性(型保持性)が悪くなる。なお、チャック体には、LDPE以外のポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体なども使用可能である。
【0075】
本発明の包装材料は、本発明の包装材料用接着剤を用いていることから、様々な内容物に対して良好な耐性を有している。このため本発明の包装材料は、特に、揮発性を有する内容物や刺激性の強い内容物の包装材料として好適である。なかでも、香り成分、香辛料成分、薬効成分を有する製品の包装材料として最適である。具体的には、アルコール(例えばアルコール濃度が50質量%以上の高濃度アルコール)、アルコール飲料、酸化防止剤、亜硫酸塩、芳香剤、香料、入浴剤(液体タイプ、粉末タイプ)、香辛料(チョウジ、唐辛子)、湿布剤、貼付剤、医薬品、電池電解液、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、洗剤、車用洗浄剤、パーマ液、防虫剤、殺虫剤、消毒液、消臭剤、育毛剤、食酢、歯磨き剤、化粧品、現像液、毛染め剤、歯磨き粉、マスタード、食酢、油、カレー、粉末キムチの素、タバスコ(キダチトウガラシを原料とした香辛料、登録商標)、塩基性物質を含んだ物、酸性物物質を含んだ物の包装材料として好適に使用される。
【0076】
本発明の包装材料は、前記の揮発性の内容物を内包した際、その吸着性を抑制することができる。例えば、湿布剤、貼付剤、医薬品であり、消炎鎮痛剤、局所麻酔剤などが挙げられる。具体的に、消炎鎮痛剤は、フルルビプロフェン、ジクロフェナックナトリウム、ベルモプロフェン、ロルノキシカム、ケトロラック、モルヒネ、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、エプタゾシン、ケトプロフェン、チアプロフェン酸、スプロフェン、ロキソプロフェン、トルメチン、カルプロフェン、ベノキサプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、ベンジダミン、ナプロキセン、フェルビナク、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン、ジフルニサール、アザプロパゾン、エトドラック、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、フルルビプロフェン等が挙げられ、これらが単独であってもよく、これらの薬学的に許容される塩であってもよく、これらの混合物であってもよい。局所麻酔剤としては、リドカイン、テトラカイン、プロカイン、ベンゾカイン、エチドカイン、プリロカイン、ジブカイン、ブピバカイン、プロパラカイン、フェナカイン、コカイン、オキシブプロカイン、プロピトカイン、アミノ安息香酸エチル、オルソカイン、オキセサゼイン、メピバカイン又はクロロプロカイン等が挙げられ、これらが単独であってもよく、これらの薬学的に許容される塩であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0077】
また、本発明の包装材料は、上記の内容物のうち、浸透性成分含有液状物質を包装するために好適に用いることができる。ここで浸透性成分含有液状物質とは、シーラント層および/または接着層に浸透し接着性を悪化させうる刺激性成分、香リ成分、薬効成分、高揮発性成分、油成分等を含有する液状物質を意味する。詳細には、アルコール飲料、液体洗剤、シャンプー、リンス、電池電解液、酢、油などを挙げることができる。
【0078】
本発明の包装材料は、上記の内容物のうち、化粧品、医薬品、調味料、食品などの、浸透性成分含有ペースト状物質を包装するためにも、好適に用いることができる。この用途に供される包装材料は、内容物の浸透性成分含有ペースト状物質の取り扱い性の観点から、チューブ容器とすることが好適である。チューブ容器は、例えば、本発明の包装材料を筒状に形成し、その一方の開口部にヒートシール等で封をし、他方の開口部に、肩部と口部とを備えた頭部を設けることにより製造することができる。口部にはノズル、ヒンジキャップ、逆止弁、シール材などを設けても良い。
【0079】
さらに本発明の包装材料は、上記の内容物のうち、香辛料、入浴剤などの揮発性成分含有固体を包装するためにも、好適に用いることができる。内容物の形状としては、パウダー状、フレーク状、ペレット状、ブロック状、キューブ状、タブレット状、クランブル状、ホール状、粒状、顆粒状、板状、球状、糸状などを例示することができる。
【0080】
本発明の包装材料は、容器への詰め替えに供される内容物を包装するための、詰め替え用包装材料として、好適に用いることができる。その場合は、詰め替えの際に、内容物を簡便にボトルなどの別の容器に移し替えるために、包装材料の一部に注出口が設けられていることが好ましい。注出口の取り付け位置は、特に限定されないが、包装材料の上部中央や、コーナー部分に設けることが、内容物の注出操作を容易にするという観点から好ましい。注出口の形状は特に限定されず、袋本体と切れ目なく突出する形で設けられていてもよく、袋本体とは別の材料から構成されていてもよい。また、注出口にネジ付キャップなどが取り付けられていてもよい。
【0081】
内容物を長期間保存する観点から、注出口の先端の外周はヒートシールされていることが好ましい。そして、注出口先端のヒートシール部分には、開封を容易なものとするために、易開封処理が施されていることが好ましい。具体的には、切れ込み線、ハーフカット線、ミシン目などの処理を施してもよい。また、開封位置に適宜切れ目(ノッチ)を設けてもよい。
【0082】
バリア性の包装材料において層間の接着強度が低下する原因の詳細は不明であるが、内容物の揮発成分がバリア層に遮蔽され、バリア層と接着層の界面付近に蓄積されることにより、接着層が膨潤、溶解などの劣化を起すためと考えられる。本発明の包装材料では、特定組成の接着層を用いることにより、その劣化が軽減され、結果として良好な耐内容物性が得られると推定される。
【実施例】
【0083】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0084】
1.包装材料用接着剤の特性
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂の組成
H−NMR分析装置(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。
【0085】
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K7210:1999に記載の方法に準じて、190℃、2160g荷重で測定した。
【0086】
(3)ポリビニルアルコールのケン化度および平均重合度
JIS K6726:1994に記載の方法に準じて測定した。
【0087】
(4)水性分散体の分散粒子の数平均粒子径
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
【0088】
(5)非水溶性の溶剤との分散安定性
内容量30mlの透明ガラス瓶に、20gの包装材料用接着剤および0.5gのトルエン(非水溶性の溶剤)をいれ、ガラス瓶を封止し、激しく振ることで包装材料用接着剤およびトルエンを混合した。混合後、容器内の包装材料用接着剤の状態を目視で観察し、以下の指標で評価した。
良好:凝集物なし
普通:微かに凝集物あり
不良:凝集物あり
【0089】
(6)内容物成分の吸着性
ポリテトラフルオロエチレン製シートの上で、包装材料用接着剤を120℃、5時間で乾燥して、厚み100〜120μmの間の接着層(包装材料用接着剤から得た塗膜)を形成した。その後、接着層をポリテトラフルオロエチレン製シートから剥がした。次いで、接着層の質量が0.3gになるように切り出し、フェルビナクまたはインドメタシンまたはプロカインのいずれかが20gが入った内容量100mlのガラス容器に入れ、容器を封止し50℃で保持した。前記薬剤と接着層は直接接触しないようにステンレスメッシュで上下に区切った。このようにして50℃で5日間静置した。その後、接着層の質量を測定し、下記式にて吸着率を算出した(吸着率が低いほど接着層の吸着性が低いことを示す)。
吸着率(%)=〔暴露後接着層質量(g)−0.3(g)〕÷0.3(g)×100
【0090】
(7)耐水性
ポリテトラフルオロエチレン製シートの上で、包装材料用接着剤を120℃、5時間で乾燥して、厚み100〜120μmの間の接着層(包装材料用接着剤から得た塗膜)を形成した。その後、接着層をポリテトラフルオロエチレン製シートから剥がした。次いで、接着層を40℃で3日間水に浸漬した後の、接着層の状態を目視で観察し、以下の指標で評価した。
良好:全く変化なし
普通:微かに白化がある
劣る:白化がある
不良:少なくとも一部に接着層の溶解がある
【0091】
(8)バリア層の反り
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート・フィルムフィルムと、厚さ7μmのアルミニウム箔とを、二液硬化型のポリウレタン系接着剤でラミネートして積層体を得た。そして、この積層体のアルミ面に、乾燥後の接着層の量が3g/mとなるように包装材料用接着剤を塗布し、120℃で120秒間乾燥した。次いで、接着剤が設けられた積層体を100mm×100mmの正方形に切り出し、これを水平で平らな卓上に接着層面が上になるように静置した。そして、20℃、65%RHで1時間保持したあと、積層体の最も高い位置と卓上面との距離を測定し、次の基準で積層体の反りの程度を評価した。試験はn=5で実施し、反りの値は平均値を用いた。なお本試験では、この距離が長い程、反りの程度が大きいと判断できる。
優秀:距離が5mm未満である
良好:距離が5mm以上10mm未満である
普通:距離が10mm以上15mm未満である
劣る:距離が15mm以上20mm未満である
不良:距離が20mm以上である
【0092】
2.包装材料の特性
(1)接着層の量(塗工量)
予め面積および質量を計測した基材(実施例および比較例にあっては、それぞれバリア層を有した積層体またはバリア層を有したフィルムに相当する)に、実施例にあっては包装材料用接着剤を、比較例にあっては接着剤をそれぞれ所定量塗工し、100℃で120秒間乾燥した。これによって得られた積層体の質量を測定し、塗工前の基材の質量を差し引くことで塗工量を求めた。塗工量と塗工面積から単位面積当りの層量(g/m)を計算した。
【0093】
(2)ラミネート強度(耐内容物試験前)
ラミネートフィルムから幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、Tピール法により試験片の端部からバリア層とシーラント層との界面を剥離して強度を測定した。測定は、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分で行った。なお、ラミネート強度が高い場合には、測定時にシーラントフィルムに伸び、切れなどが発生して剥離が不可能となることがある。このような現象は、ラミネート状態として最も好ましい。
【0094】
(3)耐内容物試験
10cm角のラミネートフィルムを2枚用い、ラミネートフィルムのシーラント層を内側とし、内容物を入れ、シール幅10mmで四方をヒートシールして密封し包装材料を得た。これを50℃で2週間保存した。その後、密封した各包装材料を開封し、前記(2)と同様にして、包装材料のラミネートフィルムから試験片を採取して、ラミネート強度を測定した。
【0095】
(4)引き裂き性
耐内容物試験後の袋を開封する際、切り目を入れて手で引き裂いた場合の状況を目視で観察し、以下の指標で評価した。
良好:引き裂き性良好でありフィルム間の剥離なし
不良:引き裂き性不良でありフィルム間の剥離あり
【0096】
(5)チャック部分の評価(耐内容物試験前)
得られたラミネートフィルム製の包装材料を150mm×180mmの大きさに切り出し、2枚の包装材料における包装袋の開口となる部分のチャック形成部のシーラント層表面、およびLLDPE製チャック体(実施例96の場合のみポリプロリレン樹脂製チャック体を用いた)の接合面のそれぞれをコロナ放電処理により易接合処理を行った。その後にヒートシーラーによって160℃でチャック体を包装材料のチャック形成部に溶着した(実施例96の場合のみ200℃でチャック体を包装材料のチャック形成部に溶着した)。次いで、包装材料における包装袋の側部、底部となる部分をヒートシーラーによって溶着し、チャック付包装袋を得た。
得られたチャック付包装袋のチャック部について、手による開閉試験を50回行い、不具合(チャック形成部からのチャック体の剥離や、チャック体の割れなど)の有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
良好: 剥離や割れがない
不良: 剥離や割れがある
【0097】
(5)チャック部分の評価(耐内容物試験後)
チャック付包装袋の中に内容物を入れ、チェックを閉め、さらに包装袋におけるチャックよりも開口端側をヒートシールして密封した後、50℃で2週間保存した。その後、開封し、チャック部について、手による開閉試験を50回行い、上記と同様の不具合(剥離や割れなど)の有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
良好: 剥離や割れがない
不良: 剥離や割れがある
【0098】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂〔アルケマ社製「ボンダインTX−8030(以下、「TX8030」と略称することがある)」〕、90.0gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、粒状物は浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体「E−1」を得た。
【0099】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造〕
酸変性ポリオレフィン樹脂としてアルケマ社製「ボンダインHX−8290(以下、「HX8290」と略称することがある)」を用い、水性分散体E−1の製造の際と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体「E−2」を得た。
【0100】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造〕
酸変性ポリオレフィン樹脂としてアルケマ社製「ボンダインLX−4110(以下、「LX4110」と略称することがある)」を用い、水性分散体E−1の製造と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体「E−3」を得た。
【0101】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4の製造〕
酸変性ポリオレフィン樹脂としてアルケマ社製「ボンダインAX−8390(以下、「AX−8390」と略称することがある)」を用い、水性分散体E−1の製造と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4を得た。
【0102】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5の製造〕
酸変性ポリオレフィン樹脂としてアルケマ社製「ロタダー3210(以下、「3210」と略称することがある)」を用い、水性分散体E−1の製造と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体「E−5」を得た。
【0103】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−6の製造〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(ダウケミカル社製プリマコール5980I、以下「5980I」と略称することがある)、16.8gのトリエチルアミン、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体「E−6」を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
【0104】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−7の製造〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、30.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂〔日本ポリエチレン社製「レクスパールEAA A210K(以下、「A210K」と略称することがある)〕、90.0gのイソプロパノール、10.0gのトリエチルアミンおよび170.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を155〜165℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体「E−7」を得た。
【0105】
水性分散体E−1〜E−7の製造に使用した酸変性ポリオレフィン樹脂の組成を表1に示す。水性分散体E−1〜E−5は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を用いたものであった。これに対し、水性分散体E−6、E−7は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有しない酸変性ポリオレフィン樹脂を用いたものであった。
【0106】
【表1】
【0107】
〔ポリビニルアルコールの水溶液PVA1〜4の製造〕
ポリビニルアルコールとして日本酢ビ・ポバール社製「VC−10」「JF−03」「JL−25E」「JP−10」を用い、水と混合したうえで加熱、撹拌することによって8質量%ポリビニルアルコール水溶液を得た。「VC−10」の水溶液を「PVA1」、「JF−03」の水溶液を「PVA2」、「JL−25E」の水溶液を「PVA3」、「JP−10」の水溶液を「PVA4」と称する。
【0108】
原料に用いたポリビニルアルコールの特性を以下に示す。
VC−10:平均重合度1000、ケン化度99.5モル%
JF−03:平均重合度300、ケン化度99.0モル%
JL−25E:平均重合度2500、ケン化度79.0モル%
JP−10:平均重合度1000、ケン化度89.0モル%
〔ポリビニルアルコールの水溶液PVA5の製造〕
ポリビニルアルコールとしてエチレンビニルアルコール共重合体である日本合成化学社製「ソアノール16D(以下、「16D」と略称することがある)」(エチレン含有量29質量%)を用い、50質量%イソプロパノール水溶液と混合したうえで加熱、撹拌することによって、8質量%エチレンビニルアルコール共重合体水溶液(イソプロパノールを含む)を得た。得られた水溶液を「PVA5」と称す。
【0109】
(実施例1)
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体「E−1」と、ポリビニルアルコールの水溶液「PVA1」とを用いて、「E−1」中の酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して「PVA1」中のポリビニルアルコールの含有量が0.1質量部になるように「E−1」と「PVA1」とを撹拌しながら混合し、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとを含有する水性分散体を得た。さらに、水性分散体の固形分濃度が8質量%となるように水を加えて撹拌した。以上で得られた水性分散体を包装材料用接着剤「AD1」とした。なお、以上のように予め、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体とポリビニルアルコールの水溶液を調整しておいてから両者を混合して包装材料用接着剤を製造する方法を「ブレンド法」と称する。
【0110】
(実施例2〜5)
ポリビニルアルコールの含有量が表2に示した質量部となるように、実施例1に比べて「PVA1」の混合量を変えた。それ以外は実施例1と同様の操作で、水性分散体を製作した。得られた水性分散体を、包装材料用接着剤「AD2〜AD5」とした。
【0111】
(実施例6〜13)
実施例1に比べ、ポリビニルアルコールの種類および含有量が表2に示した種類および値となるように、ポリビニルアルコール水溶液の種類と混合量を変えた。詳細には、実施例6、7は「PVA2」、実施例8、9は「PVA3」、実施例10、11は「PVA4」、実施例12、13は「PVA5」をそれぞれ用いた。それ以外は実施例1と同様の操作で、水性分散体を製作した。得られた水性分散体をAD6〜AD13とした。
【0112】
(実施例14)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「TX−8030」、0.6gの「VC−10」(TX8030の100質量部に対して1質量部)、90.0gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、水を456.9g投入して固形分濃度8質量%に調整した。その後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な水性分散体を得た。この水性分散体を包装材料用接着剤AD14とした。なお、以上のように、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールを、一括して溶解および水性分散化して包装材料用接着剤を製造する方法を「一括分散法」と称する。
【0113】
(実施例15〜18)
酸変性ポリオレフィン樹脂が表2に示した種類となるように、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の種類を変えた。詳細には、実施例15は「E−2」、実施例16は「E−3」、実施例17は「E−4」、実施例18は「E−5」をそれぞれ用いた。そして、それ以外は実施例3と同様の操作で、水性分散体を製作した。得られた水性分散体を包装材料用接着剤AD15〜AD18とした。
【0114】
(比較例1)
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体「E−1」を用い、ポリビニルアルコールは用いずに、固形分濃度が8質量%となるように水を加えて撹拌することで、水性分散体を得た。この水性分散体を接着剤N1とした。
【0115】
(比較例2、3)
実施例1に比べて、ポリビニルアルコールの含有量が表2に示した質量部となるように「PVA1」の混合量を変えた。それ以外は実施例1と同様の操作で、水性分散体を作製した。得られた水性分散体を接着剤N2、N3とした。
【0116】
(比較例4)
実施例3に比べ、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体として「E−6」を用いることで、酸変性ポリオレフィン樹脂の種類が5980Iとなるようにした。それ以外は実施例3と同様の操作で、水性分散体を製作した。得られた水性分散体を接着剤N4とした。
【0117】
(比較例5)
実施例3に比べ、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体として「E−7」を用いることで、酸変性ポリオレフィン樹脂の種類がA210Kとなるようにした。それ以外は実施例3と同様の操作で、水性分散体を製作した。得られた水性分散体を接着剤N5とした。
【0118】
包装材料用接着剤AD1〜AD18および接着剤N1〜5について評価(数平均粒子径、非水溶性の溶剤との分散安定性、内容物成分の吸着性、耐水性、バリア層の反り)を行った。これらの接着剤組成および製法、評価結果を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
(実施例19)
厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムと厚さ7μmのアルミニウム箔とを二液硬化型のポリウレタン系接着剤でラミネートして、バリア層を有した積層体を得た。この積層体のアルミニウム箔面に、乾燥後の接着層の量が0.5g/mとなるように「AD1」を塗布し、100℃で120秒間乾燥させ、接着層を形成させた。
【0121】
次いで、押出機を備えたラミネート装置を用いて、接着層の表面にシーラント樹脂としてLDPE(住友化学社製「L211」)を320℃で溶融押出して、25μmのLDPE層からなるシーラント層を備えた、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。
【0122】
(実施例20〜35)
実施例19と比べて、包装材料用接着剤の種類を表3に示したものに変えた。それ以外は実施例19と同様の操作を行って、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。
【0123】
(実施例36〜38)
実施例21と比べて、乾燥後の接着層の量が表3に示した量となるように「AD3」の塗布量を変えた。それ以外は実施例21と同様の操作を行って、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。
【0124】
(実施例39)
バリア層を有したフィルムとして、市販のアルミニウム蒸着フィルム(東セロ社製「メタラインML−PET」)を用い、アルミニウム蒸着面に「AD3」を塗布した。それ以外は実施例21と同様の操作を行って、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。「メタラインML−PET」のガスバリア性能は、酸素透過度が10ml/m・day・MPa、水蒸気透過度が1g/m・dayであった。
【0125】
(実施例40)
厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムと厚さ7μmのアルミニウム箔とを二液硬化型のポリウレタン系接着剤でラミネートして、バリア層を有した積層体を得た。この積層体のアルミニウム箔面に、乾燥後の接着層の量が5g/mとなるように「AD3」を塗布し、100℃で120秒間乾燥させ、接着層を形成させた。
【0126】
次いで、押出機を備えたラミネート装置を用いて、接着層の表面にシーラント樹脂としてPP(プライムポリマー社製「ウルトゼックス1520L」)を290℃で溶融押出して、25μmのPP層からなるシーラント層を備えた、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。
【0127】
(比較例6〜9)
包装材料用接着剤の代わりに、表3に示した接着剤「N2〜N5」を用いた。それ以外は実施例19と同様の操作を行って、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。
【0128】
(比較例10)
実施例19と比べて、包装材料用接着剤AD1の代わりに、ポリウレタン樹脂水性分散体(旭電化社製「アデカボンタイターHUX380」)を用いた。それ以外は実施例19と同様の操作を行って、包装材料としてのラミネートフィルムを得た。
【0129】
実施例19〜40および比較例6〜10で得られた各ラミネートフィルムすなわち包装材料について、耐内容物試験の前後におけるラミネート強度と、引き裂き性との評価を行った。耐内容物試験の際の内容物としては、タバスコ(登録商標)1gを染み込ませた脱脂綿と、トルエン1gを染み込ませた脱脂綿との2種類を用いた。引き裂き性の評価は、タバスコを用いた耐内容物試験後の袋を開封する際に行った。
【0130】
評価結果を表3に示す。なお、比較例8〜10では、耐内容物試験中にシーラント層とバリア層との間でデラミネーションが発生して、ラミネート強度測定を実施できなかった。
【0131】
【表3】
【0132】
実施例1〜18のように、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、および水性媒体を含有する水性分散体であって、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対してポリビニルアルコールの含有量が0.1〜10質量部である包装材料用接着剤は、非水溶性の溶剤との分散安定性、内容物成分の吸着性、バリア層の反りに関して優れた効果を有していた。
【0133】
これらの包装材料用接着剤を接着層として得られた包装材料(実施例19〜40)は、耐内容物性や引き裂き性に優れていた。特に、実施例2、6、10の結果と実施例8の結果との対比、および実施例3、7、11の結果と実施例9の結果との対比から明らかなように、ケン化度80〜99.9モル%のポリビニルアルコール(VC−10、JF−03、JP−10)を使用した接着剤は、ケン化度80モル%未満のポリビニルアルコール(JL−25E)を使用した接着剤と比べ、内容物成分の吸着性(%)が低く、内容物成分の吸着抑制効果が低下し難い接着層を得るうえで有利となることが示された。
【0134】
さらに、実施例20、26、28の結果と実施例24の結果との対比、および実施例21、27、29の結果と実施例25の結果との対比から明らかなように、平均重合度が高いポリビニルアルコールを使用すると、包装材料としたとき耐内容物性の向上に有利となることが示された。
【0135】
一方、本発明の包装材料用接着剤以外の接着剤(比較例1〜5)は、非水溶性の溶剤との分散安定性、内容物成分の吸着性、バリア層の反りのすべてに優れた効果を有するものは無かった。
【0136】
本発明の包装材料用接着剤以外の接着剤を接着層として得られた包装材料(比較例6〜10)は、耐内容物性や引き裂き性に劣っていた。
【0137】
(実施例41〜54、比較例11〜15)
実施例19〜40、比較例6〜10と同様の、表4に示す条件で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製した(実施例41は実施例19と同様、実施例42は実施例20と同様、実施例43は実施例21と同様、実施例44は実施例22と同様、実施例45は実施例23と同様、実施例46は実施例25と同様、実施例47は実施例27と同様、実施例48は実施例31と同様、実施例49は実施例32と同様、実施例50は実施例36と同様、実施例51は実施例37と同様、実施例52は実施例38と同様、実施例53は実施例39と同様、実施例54は実施例40と同様、比較例11は比較例6と同様、比較例12は比較例7と同様、比較例13は比較例8と同様、比較例14は比較例9と同様、比較例15は比較例10と同様の方法で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製した)。
【0138】
次に、表4に示す各種の内容物1gを染み込ませた脱脂綿を準備した。試験に用いた内容物を以下に示す。
・アルコール飲料(薩摩酒造社製、さつま白波、25度)
・液体洗剤(ライオン社製、トップ NANOX)
・シャンプー(資生堂社製、スーパーマイルドシャンプー)
・リンス(資生堂社製、スーパーマイルドコンディショナー)
・電池電解液(宇部興産社製、ピュアライト(登録商標))
・酢(ミツカン社製、穀物酢)
・油(日清オイリオ社製、日清サラダ油)
実施例41〜54および比較例11〜15で得られた各ラミネートフィルムすなわち包装材料について、耐内容物試験の際の内容物として上記各種の脱脂綿を使用し、実施例19〜40、比較例6〜10と同様の手法で、耐内容物試験の前後におけるラミネート強度の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0139】
【表4】
【0140】
実施例41〜54のように、接着層として、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対してポリビニルアルコールを0.1〜10質量部含んでいる包装材料は、様々な内容物に対する耐性に関して優れた効果を有していた。
【0141】
(実施例55〜68、比較例16〜20)
実施例41〜54、比較例11〜15と同様の、表5に示す条件で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製し、実施例41〜54、比較例11〜15と同様の手法で、耐内容物試験の前後におけるラミネート強度の評価を行った(実施例55は実施例41と同様、実施例56は実施例42と同様、実施例57は実施例43と同様、実施例58は実施例44と同様、実施例59は実施例45と同様、実施例60は実施例46と同様、実施例61は実施例47と同様、実施例62は実施例48と同様、実施例63は実施例49と同様、実施例64は実施例50と同様、実施例65は実施例51と同様、実施例66は実施例52と同様、実施例67は実施例53と同様、実施例68は実施例54と同様、比較例16は比較例11と同様、比較例17は比較例12と同様、比較例18は比較例13と同様、比較例19は比較例14と同様、比較例20は比較例15と同様の方法で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製し、耐内容物試験の前後におけるラミネート強度の評価を行った)。試験に用いた内容物を以下に示し、評価結果を表5に示す。
・歯磨剤(ライオン社製、デントヘルス薬用ハミガキSP)
・洗顔料(花王社製、ビオレ スキンケア洗顔料 モイスチャー)
・クレンジング剤(コーセー社製、Predia クレンジング クリーム)
・鎮痛薬(興和社製、バンテリンコーワ クリームLT)
・鎮痒薬(池田模範堂社製、ムヒS)
・わさび(S&B社製、本生本わさび)
・マスタード(キューピー社製、マスタード あらびき)
・おろし生姜(S&B社製、本生 生しょうが)
・練乳(雪印社製、北海道コンデンスミルク)
・ゼリー飲料(森永製菓製、ウィダーinゼリー エネルギーイン)
【0142】
【表5】
【0143】
実施例55〜68のように、接着層として、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対してポリビニルアルコールを0.1〜10質量部含んでいる包装材料は、様々な内容物に対する耐性に関して優れた効果を有していた。
【0144】
(実施例69〜82、比較例21〜25)
実施例41〜54、比較例11〜15と同様の、表6に示す条件で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製し、実施例41〜54、比較例11〜15と同様の手法で、耐内容物試験の前後におけるラミネート強度の評価を行った(実施例69は実施例41と同様、実施例70は実施例42と同様、実施例71は実施例43と同様、実施例72は実施例44と同様、実施例73は実施例45と同様、実施例74は実施例46と同様、実施例75は実施例47と同様、実施例76は実施例48と同様、実施例77は実施例49と同様、実施例78は実施例50と同様、実施例79は実施例51と同様、実施例80は実施例52と同様、実施例81は実施例53と同様、実施例82は実施例54と同様、比較例21は比較例11と同様、比較例22は比較例12と同様、比較例23は比較例13と同様、比較例24は比較例14と同様、比較例25は比較例15と同様の方法で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製し、耐内容物試験の前後におけるラミネート強度の評価を行った)。試験に用いた内容物を以下に示し、評価結果を表6に示す。
・唐辛子(S&B社製、チリーペッパー(パウダー))
・クローブ(S&B社製、クローブ(パウダー))
・コショウ(S&B社製、ホワイトペッパー(パウダー))
・カレー粉(S&B社製、カレーパウダー)
・入浴剤(花王社製、バブ 森の香り)
【0145】
【表6】
【0146】
実施例69〜82のように、接着層として、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対してポリビニルアルコールを0.1〜10質量部を含んでいる包装材料は、様々な内容物に対する耐性に関して優れた効果を有していた。
【0147】
なお、これまでの記載から理解されるように、実施例19〜82の包装材料は、詰め替え用包装材料としても、好適に用いることができる。
【0148】
(実施例83〜96、比較例26〜30)
実施例41〜54、比較例11〜15と同様の、表7に示す条件で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製した(実施例83は実施例41と同様、実施例84は実施例42と同様、実施例85は実施例43と同様、実施例86は実施例44と同様、実施例87は実施例45と同様、実施例88は実施例46と同様、実施例89は実施例47と同様、実施例90は実施例48と同様、実施例91は実施例49と同様、実施例92は実施例50と同様、実施例93は実施例51と同様、実施例94は実施例52と同様、実施例95は実施例53と同様、実施例96は実施例54と同様、比較例26は比較例11と同様、比較例27は比較例12と同様、比較例28は比較例13と同様、比較例29は比較例14と同様、比較例30は比較例15と同様の方法で、包装材料としてのラミネートフィルムを作製した)。そして、チャック部分の評価のために、上述の条件でチャック付包装袋を作製した。このチャック付包装袋を用いて、耐内容物試験前におけるチャック部分の評価のための試験を行った。また袋に内容物として入浴剤(ツムラ社製「クールバスクリン(商品名)」)を1g入れ、耐内容物試験後におけるチャック部分の評価のための試験を行った。この入浴剤を用いたときの耐内容物試験後の袋を開封する際の引き裂き性についても、試験を行った。チャック部分の評価の結果を、耐内容物試験の結果および引き裂き性の試験の結果とあわせて、表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
実施例83〜96のチャック付包装袋は、他の実施例の包装材料と同様に内容物に対する耐性に関して優れた効果を有していたのみならず、チャックを繰り返し開閉してもチャック形成部からのチャック体の剥離や、チャック体の割れなどは観察されなかった。引き裂き性についても、良好な結果を示した。
【0151】
一方、本発明で規定する以外の構成の接着層を有する包装材料(比較例26〜30)は、内容物に対する耐性と、チャック部分の評価と、引き裂き性とのすべてにおいて満足な結果を示すものは無かった。