【解決手段】チタン酸バリウム系主成分及び副成分を含み、焼結後の微細構造において、Ca含量が2.5mol%未満の結晶粒を第1の結晶粒11、Ca含量が2.5〜13.5mol%の結晶粒を第2の結晶粒12としたとき、上記第2の結晶粒12の断面積比が全断面積100%に対して30%〜80%である誘電体磁器組成物である。
前記副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上を含む原子価可変アクセプタ元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第1の副成分を含み、
前記第1の副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上の原子価可変アクセプタ元素の総含量は前記主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部である、請求項4に記載の誘電体磁器組成物。
前記副成分は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第3の副成分を含み、
前記第3の副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち一つ以上の元素の総含量は前記主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部である、請求項4から6のいずれか1項に記載の誘電体磁器組成物。
前記副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上を含む原子価可変アクセプタ元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第1の副成分を含み、
前記第1の副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上の原子価可変アクセプタ元素の総含量は前記主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部である、請求項16に記載の積層セラミックキャパシタ。
前記副成分は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第3の副成分を含み、
前記第3の副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち一つ以上の元素の総含量は前記主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部である、請求項16から18のいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0014】
本発明は、誘電体磁器組成物に関するもので、誘電体磁器組成物を含む電子部品としては、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスタ等がある。以下では、誘電体磁器組成物及び電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、主成分(母材)及び副成分を含み、上記誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造において、Ca含量が2.5mol%未満の結晶粒を第1の結晶粒、Ca含量が2.5〜13.5mol%の結晶粒を第2の結晶粒としたとき、上記第2の結晶粒の断面積比が全断面積100%に対して30%〜80%を満たす。
【0016】
上記主成分は、Ba及びTiを含むチタン酸バリウム系化合物である。
【0017】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の焼結後のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3の(110)ピークに対する、回折角(2θ)30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、 Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr、Tb のうち一つ以上)のピークの比が0.02以下を満たすことができる。
【0018】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、EIA(Electronic Industries Association)規格に明示されているX5R(−55℃〜85℃)、X7R(−55℃〜125℃)及びX8R(−55℃〜150℃)特性を満たすことができる。
【0019】
また、XRD分析においてパイロクロア(Pyrochlore)相の相対強度を制御することにより、信頼性に優れた誘電体磁器組成物、誘電体材料及びこれを含む積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ニッケル(Ni)を内部電極に用い、1300℃以下で上記ニッケル(Ni)が酸化されない還元雰囲気で焼成が可能な誘電体磁器組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物を焼結して形成された誘電体材料、及び上記誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックキャパシタが提供される。
【0022】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記温度特性を満たし且つ優れた信頼性を具現することができる。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造を説明するための概略図である。
【0024】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を焼結して形成された誘電体材料は、
図1に示されているように複数の誘電体グレインを含む。
【0025】
図1を参照すると、上記誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造において、Ca含量が2.5mol%未満の結晶粒を第1の結晶粒11、Ca含量が2.5〜13.5mol%の結晶粒を第2の結晶粒12としたとき、上記第2の結晶粒の断面積比は、焼結後の誘電体材料の全断面積100%に対して30%〜80%を満たす。
【0026】
結晶粒内のCa含量は、STEM‐EDS(Scanning Transmission Electron Microscopy‐Energy‐Dispersive x‐ray Spectroscopy)分析で測定されることができる。
【0027】
本発明の一実施形態による誘電体組成物の焼結体において、一つの結晶粒内のCa含量は、
図1に示されているように、各結晶粒のP1、P2、P3、P4位置で測定された値の平均値で決定される。
【0028】
上記P1、P2、P3、P4はそれぞれ一つの結晶粒を横切る直線の1/5、2/5、3/5、4/5の地点で規定される。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の焼結後のXRD(X‐Ray Diffraction、XRD)分析によるX線回折グラフである。
【0030】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、焼結後のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、BaTiO
3の(110)ピークに対する、30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、 Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr、Tb のうち一つ以上)のピークの比が0.02以下を満たす。
【0031】
特に、
図2を参照すると、上記パイロクロア(Pyrochlore)相はY
2Ti
2O
7であってもよい。
【0032】
高温温度特性を具現するために主成分粉末としてCaが固溶されたチタン酸バリウム(BCT)を用いると、高温部での静電容量変化率、即ち、高温部でのTCC(Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)を改善することができるが、AC電界による誘電率の変化が大きく、常温RC値低下、DF上昇等の副作用が発生する可能性がある。
【0033】
しかしながら、本発明の一実施形態によれば、Ca含量の異なる第1の主成分及び第2の主成分を適正な比率で混合し、副成分である添加剤の組成を調節することにより、高温温度特性(X8R特性)及び良好な信頼性を具現し且つ副作用の発生を減少させることができる誘電体磁器組成物が提供される。
【0034】
一方、高温温度特性(X8R特性)を満たすためにBaTiO
3にCaZrO
3及び過量の希土類元素を添加する場合は、上記高温温度特性は具現されても、母材自体のキュリー温度が125℃であることから、高温部でのTCC (Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)を改善するには限界がある。
【0035】
また、過量の希土類元素の添加によってパイロクロア(Pyrochlore)相が生成されることから、信頼性が低下するという問題がある。
【0036】
しかしながら、本発明の一実施形態によれば、第1の主成分及び第2の主成分の含量を制御することにより、高温温度特性(X8R特性)を満たし且つ良好な高温部でのTCC(Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)特性を具現することができる。
【0037】
また、希土類元素の含量を調節することにより、パイロクロア(Pyrochlore)相のピークの大きさを調節し、信頼性を保証することができる。
【0038】
したがって、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を用いる積層セラミックキャパシタは、高温温度特性(X8R特性)を満たし且つ良好な高温部でのTCC(Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)特性を具現することができる。
【0039】
また、適正な誘電率と焼結性が具現できる副成分の(Ba+Ca)/Si比を調節することにより、誘電率及び焼結性が具現され、高温温度特性(X8R特性)を満たすことができる。
【0040】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は主成分と副成分を含み、上記副成分は第1〜第6の副成分を含むことができる。
【0041】
以下、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0042】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、Ba及びTiを含む主成分を含むことができる。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、上記主成分は、(Ba
1−xCa
x)TiO
3(x≦0.02)で表される第1の主成分、及び(Ba
1−yCa
y)TiO
3(0.04≦y≦0.12)で表される第2の主成分を含む。
【0044】
上記xは0以上である。上記xが0の場合、第1の主成分はBaTiO
3である。
【0045】
上記主成分は粉末状で含まれ、上記第1の主成分は第1の主成分粉末、上記第2の主成分は第2の主成分粉末として上記誘電体磁器組成物に含まれることができる。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、上記第1の主成分のモル比を1−z、第2の主成分のモル比をzとしたとき、zは0.3≦z≦0.8を満たす。
【0047】
例えば、第1の主成分粉末と第2の主成分粉末とが混合された主成分混合粉末を(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3で表すと、zは0.3≦z≦0.8を満たす。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、上記zが0.3≦z≦0.8の範囲を満たすことにより、誘電体組成物の焼結後、上述した微細構造が得られ、良好な高温部でのTCC、低いDF及び高いRC値を同時に具現することができる。
【0049】
上記主成分混合粉末の平均粒径は、特に制限されないが、1000nm以下であればよい。
【0050】
BaTiO
3にCaZrO
3及び希土類元素を過量に添加する場合は、X8R温度特性が具現されても、母材自体のキュリー温度が約125℃であることから高温部でのTCCを改善するには限界があり、過量の希土類元素の添加によってPyrochlore相が生成されることから信頼性が低下するという問題がある。
【0051】
しかしながら、本発明の一実施形態により、上記第1の主成分と第2の主成分とが混合された混合主成分に副成分である添加剤を適用して第1の結晶粒と第2の結晶粒からなる混合微細構造を具現する場合、BaTiO
3にCaZrO
3や過量の希土類元素を添加した場合に比べて良好な高温部でのTCC特性を具現することができる。
【0052】
また、本発明の一実施形態により、上記第1の主成分と第2の主成分とが混合された混合主成分に副成分である添加剤を適用して第1の結晶粒と第2の結晶粒からなる混合微細構造を具現する場合、BCT単独の母材を適用した場合に比べて低いDF及び高い絶縁抵抗特性が得られる。
【0053】
b)第1の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、第1の副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnからなる群から選択される一つ以上の元素、これらの酸化物及びこれらの炭酸塩のうち一つ以上を含むことができる。
【0054】
上記第1の副成分は、上記主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部含まれることができる。
【0055】
上記第1の副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩等の添加形態を区分せず、第1の副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上の元素の含量に基づくことができる。
【0056】
例えば、上記第1の副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上の原子価可変アクセプタ元素の総含量は上記主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部であればよい。
【0057】
上記第1の副成分は、誘電体磁器組成物の耐還元性を改善させ、誘電体磁器組成物が用いられる積層セラミックキャパシタの高温耐電圧特性を向上させる役割をする。
【0058】
上記第1の副成分の含量、及び後述する第2〜第4の副成分及び第6〜第7の副成分の含量は、主成分100モル部に対する相対的な量で、特に、各副成分が含む金属又は半金属(Si)のモル部で定義されることができる。上記金属又は半金属のモル部は、イオン状態の金属又は半金属のモル部を含むことができる。
【0059】
上記第1の副成分の含量が主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部の場合、RC値が確保され高温耐電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0060】
上記第1の副成分の含量が0.1モル部未満の場合は、RC値が非常に低くなり、高温耐電圧が低くなる可能性がある。
【0061】
上記第1の副成分の含量が2.0モル部を超える場合は、RC値が減少する可能性がある。
【0062】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、主成分粉末100モル部に対して0.1〜2.0モル部の含量を有する第1の副成分を含むため、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性が得られる。
【0063】
c)第2の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、第2の副成分として、Mgを含む原子価固定アクセプタ(fixed‐valence acceptor)元素の、酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含むことができる。
【0064】
上記第2の副成分は、上記主成分100モル部に対して2.0モル部以下含まれることができる。
【0065】
上記第2の副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩等の添加形態を区分せず、第2の副成分に含まれたMg元素の含量に基づくことができる。
【0066】
例えば、上記第2の副成分に含まれたMg元素の含量は上記主成分100モル部に対して2.0モル部以下であればよい。
【0067】
上記第2の副成分の含量が主成分100モル部に対して2.0モル部を超える場合は、誘電率及び高温耐電圧特性が低くなる可能性があるため好ましくない。
【0068】
d)第3の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第3の副成分を含むことができる。
【0069】
上記第3の副成分は、上記主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部含まれることができる。
【0070】
上記第3の副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩等の添加形態を区分せず、第3の副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち少なくとも一つ以上の元素の含量に基づくことができる。
【0071】
例えば、上記第3の副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr、Tb及びSmのうち少なくとも一つ以上の元素の総含量は上記主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部であればよい。
【0072】
上記第3の副成分は、本発明の一実施形態において誘電体磁器組成物が用いられる積層セラミックキャパシタの信頼性の低下を防止する役割をする。
【0073】
具体的には、上記第3の副成分の含量を調節することにより、焼結された誘電体層のXRD分析において、上記BaTiO
3結晶相の(110)面のピークを1.00に換算したとき、このピークに対する、30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、 Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr、Tb 及びSmのうち少なくとも一つ以上の元素)のピークの比が0.02以下を満たすようにすることができる。
【0074】
上記第3の副成分の含量が上記主成分100モル部に対して0.2モル部未満の場合は高温部でのTCCの改善効果が大きくなく、上記第3の副成分の含量が上記主成分100モル部に対して5.0モル部を超える場合はパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち少なくとも一つ以上の元素)の生成によって高温耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0075】
e)第4の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第4の副成分を含むことができる。
【0076】
上記第4の副成分は、上記主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部含まれることができる。
【0077】
上記第4の副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩等のいずれであるかに依らず、第4の副成分に含まれたBa及びCaのうち少なくとも一つ以上の元素の含量に基づくことができる。
【0078】
例えば、上記第4の副成分に含まれたBa及びCaのうち少なくとも一つ以上の元素の総含量は上記主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部であればよい。
【0079】
上記第4の副成分が上記主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部含まれる場合、高温耐電圧特性が向上することができる。
【0080】
f)第5の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、CaZrO
3を含む第5の副成分を含むことができる。
【0081】
上記CaZrO
3は、上記主成分100モル部に対して3モル部以下含まれることができる。
【0082】
上記第5の副成分(CaZrO
3)の含量が主成分100モル部に対して3モル部を超える場合は、低温部でのTCC(−55℃)規格を外れる可能性があるため好ましくない。
【0083】
g)第6の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、Si元素の酸化物、Si元素の炭酸塩及びSi元素を含むガラスからなる群から選択される一つ以上を含む第6の副成分を含むことができる。
【0084】
上記第6の副成分は、上記主成分100モル部に対して0.5〜3.0モル部含まれることができる。
【0085】
上記第6の副成分の含量は、ガラス、酸化物又は炭酸塩等のいずれであるかに依らず、第6の副成分に含まれたSi元素の含量に基づくことができる。
【0086】
上記第6の副成分の含量が主成分100モル部に対して0.5モル部未満の場合は誘電率及び高温耐電圧が低下する可能性があり、3.0モル部を超える場合は焼結性及び緻密度の低下、二次相の生成等の問題が発生する可能性があるため好ましくない。
【0087】
図3は本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略斜視図であり、
図4は
図3のA‐A'線に沿う積層セラミックキャパシタの概略断面図である。
【0088】
図3及び
図4を参照すると、本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部には、当該セラミック本体110の内部に交互に配置された第1の内部電極121及び第2の内部電極122とそれぞれ導通する第1の外部電極131及び第2の外部電極132が形成されることができる。
【0089】
セラミック本体110の形状は、特に制限されないが、一般に六面体状である。また、その寸法も、特に制限されず、用途に応じて適切に変更可能であり、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であればよい。
【0090】
誘電体層111の厚さはキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更可能であり、本発明の一実施例において焼成後の誘電体層の厚さは1層当たり0.1μm以上であることが好ましい。
【0091】
誘電体層の厚さが薄すぎる場合は一層内に存在する結晶粒の数が少なく信頼性に悪影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは0.1μm以上であることが好ましい。
【0092】
第1の内部電極121及び第2の内部電極122は、各端面がセラミック本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層されることができる。
【0093】
上記第1の外部電極131及び第2の外部電極132は、セラミック本体110の両端部に形成され、第1の内部電極121及び第2の内部電極122の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0094】
上記第1の内部電極121及び第2の内部電極122に含有される導電性材料としては、特に限定されないが、ニッケル(Ni)を用いることが好ましい。
【0095】
上記第1の内部電極121及び第2の内部電極122の厚さは、用途等に応じて適切に変更可能であり、特に制限されないが、例えば、0.1〜5μm又は0.1〜2.5μmであればよい。
【0096】
上記第1の外部電極131及び第2の外部電極132に含有される導電性材料としては、特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又はこれらの合金を用いることができる。
【0097】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を含むことができる。
【0098】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を焼結して形成されることができる。
【0099】
上記誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウム系主成分及び副成分を含み、焼結後の微細構造において、Ca含量が2.5mol%未満の結晶粒を第1の結晶粒、Ca含量が2.5〜13.5mol%の結晶粒を第2の結晶粒としたとき、上記第2の結晶粒の断面積比が全断面積100%に対して30%〜80%を満たす。
【0100】
上記誘電体磁器組成物の焼結後のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3の(110)ピークに対する、30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr及びTbのうち一つ以上)のピークの比が0.02以下を満たすことができる。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体層は、上記誘電体磁器組成物の焼結によって形成され、上記誘電体層の微細構造において、Ca含量が2.5mol%未満の結晶粒を第1の結晶粒、Ca含量が2.5〜13.5mol%の結晶粒を第2の結晶粒としたとき、上記第2の結晶粒の断面積比が全断面積100%に対して30%〜80%を満たす。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体層のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3の(110)ピークに対する、30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Pr、Tbのうち一つ以上)のピークの比が0.02以下を満たす。
【0103】
他に上記誘電体磁器組成物の特徴は上述した本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の特徴と同じであるため、その具体的な説明を省略する。
【0104】
以下では、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本実験例は本発明の具体的な理解のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0105】
<実験例>
第1の主成分及び第2の主成分を含む主成分粉末である(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3混合固溶体粉末を、下記のように固相法を用いて製造した。
【0106】
出発原料はBaCO
3、TiO
2、CaCO
3である。これらの出発原料粉末をボールミルで混合し、900〜1000℃の範囲でか焼して、平均粒子サイズ300nmの第1の主成分粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3 と第2の主成分粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3 (x<y)を製造した。上記主成分粉末に、副成分である添加剤粉末を、表1、表3、表5及び表7に示されている組成比で添加した後、主成分と副成分が含まれた原料粉末に、ジルコニアボールを混合/分散メディアとして用いてエタノール/トルエンと分散剤及びバインダーを混合し、20時間ボールミリングした。
【0107】
製造されたスラリーにドクターブレード方式のコーターを用いて厚さ10μmの成形シートを製造した。成形シートにNi内部電極印刷を行った。カバー用シートを25層ずつ積層して上カバーと下カバーを製作し、内部電極の印刷された活性シート21層を上記上カバーと下カバーの間に積層し加圧して圧着バー(bar)を製作した。この圧着バーを、切断機を用いて3216サイズ(長さ×幅×厚さ:3.2mm×1.6mm×1.6mm)のチップに切断した。
【0108】
製作が完了したチップをか焼し、還元雰囲気(0.1%のH
2/99.9%のN
2、H
2O/H
2/N
2雰囲気)で1200〜1250℃の温度で2時間焼成した後、1000℃で窒素(N
2)雰囲気で3時間再酸化して熱処理した。
【0109】
焼成されたチップに対してCuペーストを用いて電極焼成工程及びターミネーション工程を行って外部電極を形成した。
【0110】
上記のように製造されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto‐type MLCC)の試験片に対し、容量、DF、絶縁抵抗、TCC及び高温150℃での電圧レベルの増加による抵抗劣化挙動等を評価した。
【0111】
積層セラミックキャパシタ(チップ)の常温静電容量及び誘電損失は、LCR‐meterを用いて1kHz、AC0.2V/μmの条件下で測定した。
【0112】
静電容量と積層セラミックキャパシタの誘電体層の厚さ、内部電極の面積、積層数から、積層セラミックキャパシタの誘電率を計算した。
【0113】
常温絶縁抵抗(IR)は、10個ずつのサンプルを取ってDC電圧10V/μmを印加した状態で60秒経過した後に測定した。
【0114】
温度による静電容量の変化は、−55℃〜150℃の温度範囲で測定した。
【0115】
高温IR昇圧実験では、150℃でDC電圧レベルを5V/μmずつ段階的に増加させながら抵抗劣化挙動を測定した。各段階は10分間継続されて、5秒間隔で抵抗値を測定した。
【0116】
高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導出した。これは、焼成後に厚さ7μmの20層の誘電体層を有する3216サイズのチップに対し、150℃で5V/μmの電圧レベルを10分間印加して、その後、各段階で電圧レベルを5V/μmずつ継続的に増加させながら測定したときに、IRが10
5Ω以上になる電圧を意味する。
【0117】
上記誘電体層の誘電体材料内のパイロクロア(Pyrochlore)相(Y
2Ti
2O
7)の存否は、X線回折(X‐Ray Diffraction、XRD)分析による回折角(2θ)30.5度付近における該当相のピーク(peak)の存否によって確認した。
【0118】
上記誘電体層の誘電体材料内のCa含量が2.5mol%未満の結晶粒、2.5〜13.5mol%の結晶粒をそれぞれ第1の結晶粒、第2の結晶粒とする。
【0119】
20個の結晶粒に対してSTEM/EDS分析によりCa含量を分析し、第1の結晶粒の断面積比(%)100−aと第2の結晶粒の断面積比(%)aを算出した。一つの結晶粒内のCa含量は、
図1に示されているように、P1〜P4地点のそれぞれのCa含量の平均値、即ち、4個のデータの平均値で決めた。
【0120】
下記表1、表3、表5及び表7は、実験例の組成表であり、表2、表4、表6及び表8は、表1、表3、表5及び表7に示されている組成に該当するプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto‐type MLCC)の特性を示す。
【0123】
表1のサンプル1〜23は、主成分混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3 100molに対し、第1の副成分の原子価可変元素(Mn、V)の和が0.4mol、第2の副成分のMgの含量が0mol、第3の副成分の希土類元素Yの含量が1.5mol、第4の副成分の(Ba、Ca)の和が2.2mol、第5の副成分のCaZrO
3の含量が1mol、第6の副成分のSiの含量が1.25mol、第4の副成分の和(Ba+Ca)と第6の副成分のSiとの比(Ba+Ca)/Siが1.76に固定された条件下で、第1の主成分粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3のCa含量xが0であり、第2の主成分粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含量y及び第2の主成分粉末の比率zを変化させて製造したものであり、表2のサンプル1〜23は、表1のサンプルに該当する試料の特性を示す。
【0124】
上記第1の主成分粉末は第1の主成分、上記第2の主成分粉末は第2の主成分と同じ意味で用いられる。
【0125】
また、第1の主成分粉末と第2の主成分粉末との混合モル比は第1の主成分と第2の主成分との混合モル比と同じ意味で用いられる。
【0126】
第2の主成分粉末のCa含量yが0.03であり、第2の主成分粉末の比率z=0(サンプル1)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1(サンプル2)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たすがDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。
【0127】
サンプル3〜7は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.04であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2(サンプル3)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1.0(サンプル7)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。しかしながら、第2の主成分粉末の比率zが0.3〜0.8(サンプル4〜6)の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし、且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を具現することができる。
【0128】
この際、第2の結晶粒の断面積比は全断面積に対して30〜80%の範囲内にあることが分かる。
【0129】
サンプル8〜13は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.075であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2(サンプル8)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1.0(サンプル13)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。しかしながら、第2の主成分粉末の比率zが0.3〜0.8(サンプル9〜12)の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし、且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を具現することができる。
【0130】
この際、第2の結晶粒の断面積比は全断面積に対して30〜80%の範囲内にあることが分かる。
【0131】
サンプル14〜18は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.12であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2(サンプル14)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1.0(サンプル18)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。しかしながら、第2の主成分粉末の比率zが0.3〜0.8(サンプル15〜17)の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし、且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を具現することができる。
【0132】
この際、第2の結晶粒の断面積比は全断面積に対して30〜80%の範囲内にあることが分かる。
【0133】
サンプル19〜23は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.15であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2、0.3、0.6(サンプル19、20、21)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=0.8、1.0(サンプル22、23)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。したがって、第2の主成分粉末のCa含量yが0.15の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を同時に具現することができない。
【0135】
上記サンプル1〜23の結果から、本発明の目的とする特性を具現できる微細構造は、第1の結晶粒の断面積比を100−a、第2の結晶粒の断面積比をaとしたとき、aが30〜80%の範囲内にある微細構造であることが確認できる。上記微細構造は、第1の主成分粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3のCa含量x=0のとき、第2の主成分粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含量y及び第2の主成分粉末の比率zの範囲が0.04≦y≦0.15、0.3≦z≦0.8である。
【0138】
表3のサンプル24〜41は、主成分混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3 100molに対し、第1の副成分の原子価可変元素(Mn、V)の和が0.4mol、第2の副成分のMgの含量が0mol、第3の副成分の希土類元素の含量が1.5mol、第4の副成分の(Ba、Ca)の和が2.2mol、第5の副成分のCaZrO
3の含量が1mol、第6の副成分のSiの含量が1.25mol、第4の副成分の和(Ba+Ca)と第6の副成分のSiとの比(Ba+Ca)/Siが1.76に固定された条件下で、第1の主成分粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3のCa含量xが0.02であり、第2の主成分粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含量y及び第2の主成分粉末の比率zを変化させて製造したものであり、表4は、表3のサンプルに該当する試料の特性を示す。
【0139】
第2の主成分粉末のCa含量yが0.03であり、第2の主成分粉末の比率z=0.5(サンプル24)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=0.8(サンプル25)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たすがDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。
【0140】
サンプル26〜30は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.04であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2(サンプル26)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1.0(サンプル30)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。しかしながら、第2の主成分粉末の比率zが0.3〜0.8(サンプル27〜29)の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし、且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を具現することができる。
【0141】
この際、第2の結晶粒の断面積比は全断面積に対して30〜80%の範囲内にあることが分かる。
【0142】
サンプル31〜36は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.075であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2(サンプル31)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1.0(サンプル36)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。しかしながら、第2の主成分粉末の比率zが0.3〜0.8(サンプル32〜35)の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし、且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を具現することができる。
【0143】
この際、第2の結晶粒の断面積比は全断面積に対して30〜80%の範囲内にあることが分かる。
【0144】
サンプル37〜41は、第2の主成分粉末のCa含量yが0.12であり、第2の主成分粉末の比率zの変化例を示す。z=0.2(サンプル37)の場合は高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を外れ、z=1.0(サンプル41)の場合はDFが7.5%以上と大きくなりRC値が1000未満と低くなるという問題がある。しかしながら、第2の主成分粉末の比率zが0.3〜0.8(サンプル38〜40)の場合は、高温部でのTCC(150℃)がX8R規格を満たし、且つ7.5%以下の低いDF、1000以上のRC値、50V/μm以上の高温耐電圧特性を具現することができる。
【0145】
この際、第2の結晶粒の断面積比は全断面積に対して30〜80%の範囲内にあることが分かる。
【0146】
上記サンプル24〜41の結果から、本発明の目的とする特性を具現できる微細構造は、第1の結晶粒の断面積比を100−a、第2の結晶粒の断面積比をaとしたとき、aが30〜80%の範囲内にある微細構造であることが確認できる。
【0147】
上記微細構造は、第1の主成分粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3のCa含量x=0.02のとき、第2の主成分粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含量y及び第2の主成分粉末の比率zの範囲が0.04≦y≦0.12、0.3≦z≦0.8である。
【0150】
表5のサンプル42〜72は、主成分混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3において第1の主成分粉末のCa含量xが0、第2の主成分粉末のCa含量yが0.075、第2の主成分粉末の比率zが0.04であり、各副成分の含量を変化させて製造したものであり、表6は、上記サンプルの特性を示す。
【0151】
表5のサンプル42〜50は、上記主成分混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3(x=0、y=0.075、z=0.04) 100molに対し、第1の副成分の原子価可変元素(Mn、V)の和が0.4mol、第2の副成分のMgの含量が0mol、第4の副成分の(Ba、Ca)の和が2.2mol、第5の副成分のCaZrO
3の含量が1mol、第6の副成分のSiの含量が1.25mol、第4の副成分の和(Ba+Ca)と第6の副成分のSiとの比(Ba+Ca)/Siが1.76に固定された条件下で、第3の副成分の希土類元素Yの含量を変化させて製造したものであり、表6のサンプル42〜50は、上記サンプルに該当する試料の特性を示す。第3の副成分のYの含量が0mol(サンプル42)の場合は、高温耐電圧が50V/μm未満と低くなり、5mol以上(サンプル49、50)と多すぎる場合は、Pyrochlore相(Y
2Ti
2O
7)の生成によって高温耐電圧特性が悪くなる。特に、Pyrochlore相の比が2%(サンプル49)以下の場合は、高温耐電圧が50V/μm以上に維持され、製品を具現できる特性が維持されるのに対し、5.0%(サンプル50)以上の場合は、高温耐電圧特性が急激に悪くなる。したがって、第3の副成分のYの含量の適正範囲は、主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部である。
【0152】
表5のサンプル51〜56は、主成分混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3(x=0、y=0.075、z=0.04) 100molに対し、第1の副成分の原子価可変元素(Mn、V)の和が0.4mol、第3の副成分のYの含量が1.5mol、第4の副成分の(Ba、Ca)の和が2.2mol、第5の副成分のCaZrO
3の含量が1mol、第6の副成分のSiの含量が1.25mol、第4の副成分の和(Ba+Ca)と第6の副成分のSiとの比(Ba+Ca)/Siが1.76に固定された条件下で、第2の副成分のMgの含量を変化させて製造したものであり、表6のサンプル51〜56は、上記サンプルに該当する試料の特性を示す。Mg含量が増加するにつれて、誘電率は減少するが、RC値は上昇する。しかしながら、Mg含量が3mol(サンプル56)と多すぎる場合は、誘電率が1800未満と低くなり、高温耐電圧が50V/μm未満と低くなるという問題がある。したがって、第2の副成分のMgの適正含量は、主成分100モル部に対して2.0モル部以下である。
【0153】
表5及び表6のサンプル57〜61は、第5の副成分のCaZrO
3(CZ)の含量変化による特性変化を示す。CZ含量が増加するにつれて、誘電率及びRC値は上昇する。しかしながら、CZ含量が4mol(サンプル61)と多すぎる場合は、低温部でのTCC(−55℃)が±15%を外れるという問題がある。したがって、第5の副成分のCaZrO
3(CZ)の適正含量は、主成分100モル部に対して3.0モル部以下である。
【0154】
表5及び表6のサンプル62〜69は、第1の副成分のMnの含量変化による特性変化を示す。Mn含量が0mol(サンプル62)の場合は、耐還元特性が具現されず、RC値が非常に低くなり、高温耐電圧が低くなる。Mn含量が増加するにつれて、高温部でのTCC(150℃)には大きな変化がなく、高温耐電圧特性が向上する傾向がある。Mnの含量が2.5mol(サンプル69)と多すぎる場合は、RC値が減少する現象が発生する。したがって、第1の副成分のMnの適正含量は、主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部である。
【0155】
表5及び表6のサンプル70〜72は、第1の副成分のMnとVの和が0.4moleのときのMn及びVの比率による特性変化を示す。Mnの一部又は全部がVに変化するにつれて、RC値は多少低くなり、高温耐電圧及び高温部でのTCC(150℃)には大きな変化がなく、X8R特性を満たす。したがって、第1の副成分は、Mn、V、及び原子価可変アクセプタ元素であって遷移金属元素であるCr、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうち少なくとも一つ又はそれ以上を含むことができる。
【0158】
表7のサンプル73〜103は、主成分混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3において第1の主成分粉末のCa含量xが0、第2の主成分粉末のCa含量yが0.075、第2の主成分粉末の比率zが0.04であり、各副成分の含量を変化させて製造したものであり、表8は、上記サンプルの特性を示す。
【0159】
表7及び表8のサンプル73〜76は、サンプル46の組成と比較して、第4の副成分のBa含量の一部又は全部をCaに変えたときの特性変化を示す。サンプル46の試料と比較すると、誘電率、DF、RC、TCC及び高温耐電圧特性がほぼ同じであることが確認できる。したがって、第4の副成分は、Ba又はCaのうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0160】
表7及び表8のサンプル77〜82は、サンプル46の組成と比較して、第6の副成分のSiO
2の含量が1.25molのときの第4の副成分のBaの含量変化及びそれによる(Ba+Ca)/Si比による特性変化を示す。(Ba+Ca)/Si比が1.28(サンプル77)と小さい場合は、誘電率が3000以上と非常に高いため、高温部でのTCC(150℃)が低下し、高温耐電圧も40V/μmと低い。Ba含量及び(Ba+Ca)/Si比が増加するにつれて、誘電率が減少し、高温耐電圧特性が上昇する傾向を示す。しかしながら、Ba含量及び(Ba+Ca)/Si比が2.88(サンプル82)と多すぎる場合は、誘電率が2097と低くなり、高温耐電圧も50V/μm未満と低くなる。したがって、SiO
2含量が1.25molのとき、(Ba+Ca)/Si比の適正範囲は1.44〜2.56であり、第4の副成分の(Ba+Ca)の適正範囲は1.8〜3.2molである。
【0161】
表7及び表8のサンプル83は、サンプル46の組成と比較して、(Ba+Ca)/Si比が1.76と同じであり、(Ba+Ca)及びSiの含量がそれぞれ0.527mol及び0.3molに減少した場合の特性を示す。このようにSiの含量が0.3molと小さい場合は、(Ba+Ca)/Si比が適正範囲に含まれても、誘電率が1748と低く、高温耐電圧も40V/μmと低い。
【0162】
表7及び表8のサンプル84〜88は、サンプル46の組成と比較して、第6の副成分のSiO
2の含量が0.5molのときの第4の副成分のBaの含量変化及びそれによる(Ba+Ca)/Si比による特性変化を示す。(Ba+Ca)/Si比が1.2(サンプル84)と小さすぎるか又は2.88(サンプル88)と大きすぎる場合は、高温耐電圧が50V/μm未満と低い。したがって、Si含量が0.5molのとき、(Ba+Ca)/Si比の適正範囲は1.44〜2.56であり、第4の副成分の(Ba+Ca)の適正範囲は0.72〜1.28molである。
【0163】
表7及び表8のサンプル89〜92、93〜97及び98〜102は、SiO
2の含量がそれぞれ1.0mol、2.0mol、3.0molのときのBaの含量変化及びそれによる(Ba+Ca)/Si比による特性変化を示す。上記3つのSiO
2含量において、(Ba+Ca)/Si比が1.44未満であるか又は2.56を超える場合(サンプル92、93、97、98、102)のBa含量条件下では、高温耐電圧が45V/μm以下と低い。さらに一部のサンプルは、高温部でのTCC(150℃)が±15%を外れる。したがって、これらの実施例において(Ba+Ca)/Si比の適正範囲は1.44≦(Ba+Ca)/Si≦2.56である。
【0164】
表7及び表8のサンプル103は、サンプル46の組成と比較して、(Ba+Ca)/Si比が1.76と同じであり、(Ba+Ca)及びSiO
2の含量がそれぞれ6.16mol及び3.50molと多すぎる場合の特性を示す。このようにSiの含量が3.50と多すぎる場合は、(Ba+Ca)/Si比が適正範囲に含まれても、誘電率が2000以下と低く、Pyrochlore相が生成されて高温耐電圧も50V/μm未満と低い。
【0165】
したがって、サンプル73〜103の結果からすると、第4の副成分及び第6の副成分の適正範囲は、主成分100モル部に対し、第4の副成分の(Ba+Ca)の含量範囲が0.72〜7.68モル部、第6の副成分のSiの含量範囲が0.5〜3.0モル部であり、(Ba+Ca)/Si比が1.44≦(Ba+Ca)/Si≦2.56である。
【0166】
また、サンプル73〜103のうち、X8R温度特性、低いDF、高いRC値及び高い高温耐電圧特性が同時に具現されるサンプルの微細構造条件は、Ca含量が2.5mol%未満の結晶粒を第1の結晶粒、Ca含量が2.5〜13.5mol%の結晶粒を第2の結晶粒としたとき、第2の結晶粒の断面積比が全断面積100%に対して30%〜80%であることが確認できる。
【0169】
表9及び表10のサンプル104〜132は、第3の副成分のYを別の希土類元素に変えたときの試料の特性を示す。サンプル104〜108、サンプル109〜112、サンプル113〜116、サンプル117〜120、サンプル121〜124はそれぞれYの代わりにDy、Ho、Sm、Gd、Erを適用した例を示す。上記サンプルの特性とサンプル47〜50のYを適用した場合の特性とを比較すると、誘電率、DF、RC、TCC及び高温耐電圧特性がほぼ同じであることが確認できる。サンプル125〜128及びサンプル129〜132はそれぞれYの代わりにTm及びYbを適用した例を示す。Tm又はYbを適用した場合は、希土類元素Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Erを適用した場合とは異なり、XRD分析におけるPyrochlore相のピークの比が0.02以下であるにもかかわらず、高温耐電圧が50V/μm未満(サンプル126、130)であり、同じ含量条件下でY、Dy、Ho、Sm、Gd、Erを適用した場合と比べ、XRD分析におけるPyrochlore相のピークの比が高く、高温耐電圧が25V/μm以下と非常に低い。したがって、第3の副成分は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Erの6種元素のうち少なくとも一つ又はそれ以上を含むことができる。
【0170】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。