前記一般式(4)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤と前記一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤とが異なる構造の非イオン性界面活性剤である請求項7に記載の非イオン性界面活性剤の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている脂肪酸アルキルエステルエトキシレートは、その両末端が疎水基となっていて、分子構造が直線的ではなく曲がっているとされている。そして、両末端の疎水基が皮脂汚れ等の油成分に付着して洗浄力を発揮するといわれている。
また、その両末端にヒドロキシル基が存在しない構造であるため、基本的には泡立ちの少ない非イオン性界面活性剤であると考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載された界面活性剤には以下の課題があった。
【0008】
まず、脂肪酸アルキルエステルエトキシレートはエステル基を有するために、アルカリに対する耐性が強くなく、アルカリ存在下で分解が生じることがある。そのため、脂肪酸アルキルエステルエトキシレートを配合した洗浄剤組成物はアルカリ安定性が悪いという課題があった。
【0009】
次に、特許文献1に記載されている脂肪酸アルキルエステルエトキシレートは、脂肪酸由来でない側の末端のアルキル基の炭素数は1〜3であり、この部分の疎水性があまり強くない。そのため、こちらの側のアルキル基の炭素数をより大きくする等にして疎水性を向上させると、両末端の疎水基が強くなってより洗浄力の高い界面活性剤とすることができると考えられた。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、泡立ちが少なく、アルカリ安定性が高く、洗浄力の高い非イオン性界面活性剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決することのできる非イオン性界面活性剤の構造について鋭意検討した結果、アセタール結合を2箇所に有する構造にすることによって、泡立ちが少なく、アルカリ安定性が高く、両末端に疎水性の高い構造を配することのできる界面活性剤とすることができることを見出し、本発明に想到した。
【0012】
すなわち、本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、R
1、R
2は炭化水素基であり、R
3、R
5は水素原子又はアルキル基であり、R
4、R
6は炭化水素基であり、Xは(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基又はアルキレン基であり、n
1、n
2、n
3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数である。)
【0013】
本発明の非イオン性界面活性剤は、アセタール構造を2箇所に有する。
本発明の非イオン性界面活性剤は、典型的には後述する一般式(3)で示されるようなジアルケニルエーテル1分子と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2分子の反応によって製造することができる。
ジアルケニルエーテル末端の二重結合に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル末端のヒドロキシル基が付加反応することによってアセタール構造が形成される。一般式(1)の両末端に示す置換基R
1、R
2はそれぞれポリオキシアルキレンアルキルエーテルが有する炭化水素基であり、この炭化水素基の炭素数の大きいものが多く市販されているので、両末端に疎水性の高い構造を配することができる。
また、一般式(1)中にはエステル基は存在せず、アセタール構造は酸性下では不安定であり再びヒドロキシル基を生成するが、中性下及びアルカリ性下では安定である。従って、本発明の非イオン性界面活性剤は中性及びアルカリ性の環境下において泡立ち抑制効果を発揮することができる。
【0014】
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、塩素安定性に優れている。
界面活性剤の末端がヒドロキシル基であると、塩素剤と反応して塩素剤が失活することがあるが、本発明の非イオン性界面活性剤は末端にヒドロキシル基を有しておらず、アセタール構造は塩素剤とは反応しないため、塩素剤の失活を防止し高い塩素安定性を示すという効果も発揮される。そのため、塩素剤と共存させることに適した界面活性剤である。
【0015】
一般式(1)において、左側のアセタール構造は、R
3、R
4と結合している炭素原子と、上記炭素原子の右隣りの酸素原子、及び、(AO)
n1で示す(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子で構成される。
また、右側のアセタール構造は、R
5、R
6と結合している炭素原子と、上記炭素原子の左隣りの酸素原子及び右隣りの酸素原子で構成される。
【0016】
また、本明細書におけるアセタール構造とは、R
3、R
5が水素原子であるアセタール、R
3、R
5がアルキル基であるケタールの両方を含む概念である。
【0017】
本発明の非イオン性界面活性剤では、上記一般式(1)におけるR
1とR
2が異なる構造であることが好ましい。
また、上記一般式(1)におけるR
1とR
2の炭素数の合計が8以上であることが好ましい。上述したように、本発明の非イオン性界面活性剤は、ジアルケニルエーテル1分子と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2分子の反応によって製造することができるが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして2種類の化合物を使用することにより、R
1とR
2が異なる構造である非イオン性界面活性剤を得ることができる。そして、R
1とR
2の特性(疎水性の度合い等)を調整することにより、所望の特性の非イオン性界面活性剤を得ることができる。
また、R
1とR
2の炭素数の合計が8以上となるようにすることによって、非イオン性界面活性剤の末端部分の疎水性が強くなるので油汚れ等により強く結合して高い洗浄性を発揮させることができる。
【0018】
本発明の非イオン性界面活性剤では、上記一般式(1)におけるXがn−ブチレン基であることが好ましい。
Xの構造がn−ブチレン基であるときは、親水性は主に両側の(ポリ)オキシアルキレン鎖[(AO)n
1及び(AO)n
2]によって発揮される。
【0019】
本発明の非イオン性界面活性剤では、上記一般式(1)におけるXが、下記一般式(2)で示される(ポリ)オキシエチレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基であることが好ましい。
【化2】
Xの構造が上記構造である場合、親水性は両側の(ポリ)オキシアルキレン鎖[(AO)n
1及び(AO)n
2]に加えてXに含まれる(EO)n
3によっても発揮される。
また、上記一般式(2)におけるn
3が2であることが好ましい。
【0020】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法は、本発明の非イオン性界面活性剤を製造する方法であって、下記一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルの両末端の二重結合に対して、下記一般式(4)及び下記一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基の付加反応を行うことにより、上記一般式(1)で示される構造を有する化合物とすることを特徴とする。
【化3】
(一般式(3)〜(5)中、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、R
1、R
2は炭化水素基であり、R
3、R
5は水素原子又はアルキル基であり、R
4´、R
6´は一般式(1)でR
4、R
6で示される炭化水素基から水素原子を一つ除いた2価の基であり、Xは(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基又はアルキレン基であり、n
1、n
2、n
3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数である。)
【0021】
上記製造方法によると、ジアルケニルエーテル末端の二重結合にそれぞれヒドロキシル基が付加反応することによってアセタール構造が形成される。そして末端に一般式(4)及び一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤に由来する炭化水素基であるR
1及びR
2を有する非イオン性界面活性剤とすることができる。
なお、本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法においてジアルケニルエーテルとの反応に使用する非イオン界面活性剤は1種類であってもよい。非イオン界面活性剤が1種類である場合は、一般式(4)で示される非イオン性界面活性剤と一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤が同じである場合と考えることができ、この場合R
1及びR
2は同じになる。
【0022】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法においては、上記一般式(4)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤と上記一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤とが異なる構造の非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
この場合、R
1とR
2が異なる構造である非イオン性界面活性剤を得ることができる。そして、R
1とR
2の特性(疎水性の度合い等)を調整することにより、所望の特性の非イオン性界面活性剤を得ることができる。
【0023】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法においては、上記一般式(4)及び上記一般式(5)におけるR
1とR
2の炭素数の合計が8以上であることが好ましい。
R
1とR
2の炭素数の合計が8以上となるようにすることによって、非イオン性界面活性剤の末端部分の疎水性が強くなるので油汚れ等により強く結合して高い洗浄性を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非イオン性界面活性剤は、アセタール結合を2箇所に有する構造であり、両末端がヒドロキシル基ではなく炭化水素基である。そのため泡立ちが少なく、アルカリ安定性が高く、両末端に疎水性の高い構造を配することのできる界面活性剤となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする。
【化4】
(一般式(1)中、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、R
1、R
2は炭化水素基であり、R
3、R
5は水素原子又はアルキル基であり、R
4、R
6は炭化水素基であり、Xは(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基又はアルキレン基であり、n
1、n
2、n
3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数である。)
【0027】
本発明の非イオン性界面活性剤において、R
1、R
2は炭化水素基である。この部分は通常は疎水基として機能する。
R
1、R
2は鎖状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、炭素鎖は直鎖でも分岐鎖であってもよい。また、炭素鎖は不飽和結合を有していても有していなくてもよい。
この中では、鎖状脂肪族炭化水素基が、環境規制との関連で、芳香族炭化水素基(例えば、ノニルフェニル基等)と比べて望ましい。
【0028】
一般式(1)におけるR
1とR
2が異なる構造であることが好ましく、また、R
1とR
2の炭素数の合計が8以上であることが好ましく、R
1とR
2がともに炭素数4以上の炭化水素基であることがより好ましく、R
1とR
2がともに炭素数8以上の炭化水素基であることがさらに好ましい。
炭化水素基としては、アルコールの残基が挙げられる。
本明細書において「アルコール」にはフェノール性水酸基を有する化合物も含まれる。
R
1、R
2はアルコールに由来する残基であれば特に限定されるものではないが、例としては、以下のアルコールからヒドロキシル基を除いた構造等が挙げられる。
【0029】
アルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪族アルコール、又は、芳香環を有するアルコールが挙げられ、不飽和結合を有していても有していなくてもよい。また、脂肪族アルコールの望ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデシルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール(エイコサノール)、2−オクチルドデカン−1−オール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)、エルシルアルコール、トリコサノール、リグノセリルアルコール(1−テトラコサノール)、ペンタコサノール、セリルアルコール、1−ヘプタコサノール、モンタニルアルコール(1−オクタコサノール)、1−ノナコサノール、ミリシルアルコール(1−トリアコンタノール)、1−ヘントリアコンタノール、1−ドトリアコンタノール、ゲジルアルコール(1−テトラトリアコンタノール)等が挙げられる。また、芳香環を有するアルコールとしては、ベンジルアルコール、4−エチルベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、4−メチルフェネチルアルコール、3−メチルフェネチルアルコール、2−メチルフェネチルアルコール、2,4,6−トリメチルフェネチルアルコール、1−フェニル−1−プロパノール、1−フェニル−2−プロパノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、2−メチル−1−(p−トリル)−2−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−4−フェニル−2−ブタノール、5−フェニル−1−ペンタノール、4−メチル−1−フェニル−2−ペンタノール、3−メチル−1−フェニル−3−ペンタノール等が挙げられる。
【0030】
また、アルコールとしては、アルキルフェノールも挙げられ、直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキルフェノールが挙げられる。アルキルフェノールの望ましい例としては、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、5−イソプロピル−2−メチルフェノール、6−イソプロピル−3−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、4−ブチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−sec−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2−tert−ブチル−4−エチルフェノール、4−tert−ブチル−2,6−ジイソプロピルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、4−ペンチルフェノール、2−tert−ペンチルフェノール、4−tert−ペンチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、4−ヘキシルフェノール、4−ヘプチルフェノール、4−オクチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、ペンタデシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクチルクレゾール等が挙げられる。
【0031】
また、R
1、R
2としては、炭素数4〜20のアルコールに由来する残基であることが望ましく、炭素数4〜20のアルコールのより望ましい例としては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデシルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール(エイコサノール)、及び、2−オクチルドデカン−1−オール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等が挙げられる。
また、R
1、R
2は置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。また、R
1、R
2の中にはエーテル結合を含んでいてもよい。
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、R
1、R
2としてこれらの炭化水素基のうちの1種類のみを有する化合物であってもよく、異なるR
1、R
2を有する複数の化合物の混合物であってもよい。
【0032】
R
3、R
5は水素原子又はアルキル基である。
R
3、R
5がアルキル基である場合、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
R
3、R
5としては水素原子であることが好ましい。
【0033】
R
4、R
6は炭化水素基である。
また、R
4、R
6がジアルケニルエーテルの二重結合末端の置換基であるR
4´、R
6´に由来する場合、R
4´、R
6´は一般式(1)でR
4、R
6で示される炭化水素基から水素原子を一つ除いた2価の基であることから、R
4、R
6で示される炭化水素基は1級又は2級の炭化水素基であることが好ましい。
R
4、R
6の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0034】
AO(オキシアルキレン基)としては、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、又は、オキシブチレン基(BO)が挙げられる。非イオン性界面活性剤には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基のうちの1種類のみが含まれていてもよく、これらのうちの複数種類が含まれていてもよい。オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基の繰り返し構造の単位も特に限定されるものではない。
【0035】
一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤では、(ポリ)オキシアルキレン鎖は(AO)n
1で示される構造及び(AO)n
2で示される構造であり、また、Xが(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基である場合はそこも(ポリ)オキシアルキレン鎖である。
一般式(1)において、n
1、n
2、n
3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数である。
【0036】
本発明の対象物である非イオン性界面活性剤のAOの付加モル数を測定した場合、非イオン性界面活性剤に含まれるAOの付加モル数の合計、すなわち、n
1、n
2、n
3の合計値として測定される。
そして、非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の合計値は整数値であるが、実際には、非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の合計値には分布があり、値は異なるので、n
1、n
2、n
3の合計値は非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の合計値の平均(平均付加モル数)として測定される。この測定値(合計値の平均)が1〜1000の間に入っていることを確認できれば、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数であると判断できる。
【0037】
n
1、n
2、n
3はそれぞれ0〜100であることが好ましい。
非イオン性界面活性剤が(AO)n
1、(AO)n
2及び(AO)n
3を有するときにn
1、n
2、n
3のそれぞれの値を分けて測定することは難しいが、合成前の原料段階では(AO)n
1、(AO)n
2及び(AO)n
3となる予定の構造に対応するn
1、n
2、n
3の値は分かっている場合があるので、原料に含まれるn
1、n
2、n
3の値から本発明の非イオン性界面活性剤におけるn
1、n
2、n
3を定めることは可能な場合がある。
【0038】
一般式(1)においてXは(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基又はアルキレン基である。
一般式(1)において、Xが(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基である場合は、一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤は下記一般式(6)で示される構造となる。
【化5】
【0039】
この場合、(AO)n
3はさらに下記一般式(2)で示される(ポリ)オキシエチレン鎖であることが好ましい。全体の構造は上記一般式(6)において(AO)n
3を(EO)n
3で置き換えた構造となる。
【化6】
そして、上記一般式(2)におけるn
3が2であることがより好ましい。
【0040】
一般式(1)においてXがアルキレン基である場合は、一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤は下記一般式(7)で示される構造となる。
【化7】
(一般式(7)においてR
7はアルキレン基である。)
【0041】
この場合、R
7としては、鎖状のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコシレン基等が挙げられる。
また、アルキレン基としては環状構造を有する2価の基であってもよく、1,4−シクロへキシレン基、1,4−ジメチレンシクロヘキサン基等、環状構造を有するアルキレン基であってもよい。
これらの中でもR
7がn−ブチレン基であることが好ましい。
【0042】
本発明の非イオン性界面活性剤はアセタール構造を2箇所に有し、末端にヒドロキシル基を有していない。
アセタール構造は中性及びアルカリ性下で安定な構造であるため、中性及びアルカリ性の洗浄剤組成物に使用することに適した界面活性剤とすることができる。
また、アセタール構造は、ジアルケニルエーテル末端の二重結合に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル末端のヒドロキシル基が付加反応することによって生成させることができる。この付加反応は反応率が高いため、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル末端のヒドロキシル基が残存しないように末端を封鎖させることができる。
すなわち、アセタール構造は、「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴と「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴を有する。
【0043】
有機合成の分野で用いられる、ヒドロキシル基を保護するための保護基としてアセタール構造以外の保護基(例えば、メチル基、ベンジル基、アセチル基、トリメチルシリル基等)が挙げられる。しかしながら、アセタール構造以外の保護基は、アセタール構造の特徴である「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴、又は、「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴のいずれかを満足しないため、ヒドロキシル基末端を封鎖するための構造として適していない。すなわち、アセタール構造でヒドロキシル基末端を封鎖している本発明の界面活性剤には、他の保護基でヒドロキシル基末端を封鎖した界面活性剤にはない有利な効果が存在する。
【0044】
以下、本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法について説明する。
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法は、本発明の非イオン性界面活性剤を製造する方法であって、下記一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルの両末端の二重結合に対して、下記一般式(4)及び下記一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基の付加反応を行うことにより、上記一般式(1)で示される構造を有する化合物とすることを特徴とする。
【化8】
(一般式(3)〜(5)中、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、R
1、R
2は炭化水素基であり、R
3、R
5は水素原子又はアルキル基であり、R
4´、R
6´は一般式(1)でR
4、R
6で示される炭化水素基から水素原子を一つ除いた2価の基であり、Xは(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基又はアルキレン基であり、n
1、n
2、n
3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数である。)
【0045】
まず、出発物質として、一般式(3)で示される構造のジアルケニルエーテル、並びに、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤を準備する。
なお、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤として1種類のみを用いてもよく、この場合は一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤として同じものを用いたとみなせる。
また、一般式(4)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤と一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤とが異なる構造の非イオン性界面活性剤としてもよい。
この場合、R
1とR
2が異なる構造である非イオン性界面活性剤を得ることができる。そして、R
1とR
2の特性(疎水性の度合い等)を調整することにより、所望の特性の非イオン性界面活性剤を得ることができる。
一般式(3)で示される構造のジアルケニルエーテルと、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤との配合比率は、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤を合計で2当量に対して、一般式(3)で示される構造のジアルケニルエーテル1当量以上を配合することが好ましく、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤の末端の全てのヒドロキシル基が反応するようにすることが好ましい。
【0046】
一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルとしては、Xがアルキレン基であるものの例として、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
また、Xが(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基であるものの例として、モノエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサエチレングリコールジビニルエーテル等のポリオキシアルキレン鎖を有するジビニルエーテル類((ポリ)エチレングリコールジビニルエーテル等)が挙げられる。Xが(AO)n
3で示される(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子を除いた残基である場合、n
3は1〜100であることが好ましく、AOはエチレンオキサイドであることが好ましい。
【0047】
一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルとしては、アルケニル基がビニル基である、ジビニル構造を有するエーテルが好ましい。この場合、一般式(3)においてR
3、R
5は水素原子であり、R
4´、R
6´はメチレン基となる。
R
4´、R
6´は一般式(1)でR
4、R
6で示される炭化水素基から水素原子を一つ除いた2価の基であるので、R
4´、R
6´がそれぞれメチレン基である場合、製造される一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤のR
4、R
6はそれぞれメチル基となる。
【0048】
一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤としては、市販されている界面活性剤を使用することができる。例えば、商品名「エマルミン」(三洋化成工業株式会社製)、商品名「ブラウノン」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「ファインサーフ」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「アデカノール」(株式会社ADEKA製)、商品名「プルラファック」「プルロニック」(BASFジャパン製)、商品名「ノイゲン」(第一工業製薬株式会社製)、商品名「ペレテックス」(ミヨシ油脂株式会社製)、商品名「ノニオン」(日油株式会社製)等が挙げられる。
【0049】
また、市販の非イオン性界面活性剤にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドをさらに付加させて、オキシアルキレン基の平均付加モル数やオキシアルキレン基に含まれるオキシエチレン基の割合を調整した上で使用してもよい。
例えば、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基のみを有する市販の非イオン性界面活性剤にプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドを付加させる方法等が挙げられる。
【0050】
一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数(n
1、n
2)はそれぞれ0〜100であることが好ましい。そして、一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルの両末端の二重結合に一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤をそれぞれ付加させた際に、n
1、n
2、n
3の合計が1〜1000の数となるように定められていることが好ましい。
【0051】
また、一般式(4)及び一般式(5)におけるR
1とR
2の炭素数の合計が8以上であることが好ましく、R
1とR
2がともに炭素数4以上の炭化水素基であることがより好ましく、R
1とR
2がともに炭素数8以上の炭化水素基であることがさらに好ましい。
好ましいR
1とR
2の例は本発明の非イオン性界面活性剤について記載したものと同様であるので省略する。
【0052】
一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルの両末端の二重結合に対して一般式(4)及び一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基の付加反応を行うことによりヒドロキシル基を封鎖して、一般式(1)で示される構造を得る。
付加反応の具体的な手順としては、一般式(3)で示される構造を有するジアルケニルエーテルと一般式(4)及び一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤を酸触媒と共に有機溶媒下で反応させる方法が挙げられる。
【0053】
上記酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸、酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。この中では、扱いが容易であり、安価であるためp−トルエンスルホン酸が望ましい。
【0054】
上記反応に用いる有機溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができ、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル等を用いることができる。
【0055】
反応の終了は、酸触媒の中和により行う。中和に用いる塩基としては特に限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の粉末またはそれらの溶液等を用いることができる。
【0056】
反応条件は、出発物質の種類や量により適宜定めることができるが、例えば、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤として1種類の非イオン性界面活性剤50〜100gを塩化メチレン溶液25〜100mL中で反応させる場合、非イオン性界面活性剤に対して5〜30gのジエチレングリコールジビニルエーテルと酸触媒として1〜10mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、0.1時間〜終夜(10時間)室温にて撹拌した後、炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0057】
続いて、本発明の非イオン性界面活性剤を用いた洗浄剤組成物の一例について説明する。
洗浄剤組成物には、例えば、本発明の非イオン性界面活性剤(A)、アルカリ剤(B)を配合することができる。また、塩素剤(C)を配合してもよい。
【0058】
洗浄剤組成物中における非イオン性界面活性剤(A)の濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜5.0重量%であることが望ましい。
界面活性剤が複数種類用いられている場合、界面活性剤の濃度は各界面活性剤の濃度の合計値として定められる。
【0059】
アルカリ剤(B)としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が望ましい。
これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。
これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。これらのアルカリ剤を使用するとpHを12を超えて高くしやすくなるためである。
また、これらのアルカリ剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄剤組成物中におけるアルカリ剤(B)の濃度は、特に限定されるものではないが、2〜90重量%であることが望ましく、5〜80重量%であることがより望ましく、12〜80重量%であることがさらに望ましい。
アルカリ剤が複数種類用いられている場合、アルカリ剤の濃度は各アルカリ剤の濃度の合計値として定められる。
【0060】
塩素剤(C)としては、例えば、塩素化イソシアヌール酸塩(塩素化イソシアヌール酸ナトリウム、塩素化イソシアヌール酸カリウム等)、トリクロロイソシアヌール酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等が挙げられる。
また、これらの塩素剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の非イオン性界面活性剤はその末端にヒドロキシル基を有さず、アセタール構造を有しており、アセタール構造は塩素剤(C)と反応しないので、洗浄剤組成物中の塩素剤(C)の失活が防止される。その結果、界面活性剤による洗浄効果と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮することのできる洗浄剤組成物となる。
洗浄剤組成物中における塩素剤の濃度は、特に限定されるものではないが、洗浄剤組成物100重量%中、純分で0.1〜30重量%であることが望ましく、4.0〜20重量%であることがより望ましい。
塩素剤が複数種類用いられている場合、塩素剤の濃度は各塩素剤の濃度の合計値として定められる。
【0061】
洗浄剤組成物はpHが12以上であることが望ましく、13以上であることがより望ましいい。
pHが12以上と高い洗浄剤組成物は、アルカリ性洗浄剤として油汚れ等の除去に特に効果的である。洗浄剤組成物に含まれる本発明の非イオン性界面活性剤のアセタール構造は、このような高いpHの下においても安定であるため、泡立ち抑制効果の高いアルカリ性の洗浄剤組成物とすることができる。また、非イオン性界面活性剤と塩素剤が高いpHの下で共に安定に存在することもできるため、塩素剤を配合することによって界面活性剤による油汚れ等に対する洗浄効果と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮させることができる。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、株式会社堀場製作所製、D−21型を用いて測定することができる。
【0062】
洗浄剤組成物は、必要に応じて高分子分散剤(D)、キレート剤(E)、溶媒/工程剤(F)、可溶化剤(G)等の、洗浄剤組成物に配合される他の成分を含有してもよい。また、非イオン性界面活性剤(A)以外の界面活性剤を含有していてもよい。
高分子分散剤(D)としては、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、スルホン化ポリマレイン酸、オレフィン−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸スチレン共重合体、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸エチレン共重合体、無水マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸ブタジエン共重合体、無水マレイン酸イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、イタコン酸、エチレン共重合体、イタコン酸アコニット酸共重合体、イタコン酸マレイン酸共重合体、イタコン酸アクリル酸共重合体、マロン酸メチレン共重合体、イタコン酸フマール酸共重合体、エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、これらの金属塩等があげられる。なかでも、コスト面、経済性の点から、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量Mw=3,000〜30,000)、ポリマレイン酸−アクリル酸ナトリウム、オレフィン−マレイン酸ナトリウム共重合体等が好適に用いられる。
キレート剤(E)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、ポリアクリル酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、並びに、下記式(8)で示されるポリアスパラギン酸系化合物、下記式(9)で示されるイミノジコハク酸系化合物、下記式(10)で示されるイミノジ酢酸系化合物が挙げられる。
【0063】
【化9】
[式(8)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。s、tは整数である。]
【化10】
[式(9)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【化11】
[式(10)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【0064】
洗浄剤組成物中におけるキレート剤の濃度は、特に限定されるものではないが、0〜80重量%であることが望ましく、0〜70重量%であることがより望ましく、15〜50重量%であることがさらに望ましい。
溶媒(F)としては、水や一般的に用いられる有機溶媒が挙げられる。工程剤(F)は、剤形が固体の場合の増量剤であり、pHが中性であるものが望ましく、硫酸ナトリウム、粉末シリカ等が挙げられる。
可溶化剤(G)としては、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、カプリル酸、オクチル酸及びこれらの塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0065】
洗浄剤組成物の剤形は、液体、固体(錠剤、粉末等)のいずれでもよく、液体に限定されるものではない。
洗浄剤組成物が固体であり、洗浄剤組成物のpHを直接測定できない場合、洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物10gを水90gと混合した状態(洗浄剤組成物の濃度が10重量%)で測定したpHと定める。
【実施例】
【0066】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
原料としての非イオン性界面活性剤として、青木油脂工業株式会社製ファインサーフTDE−1055(50g)を準備し、上記非イオン性界面活性剤の塩化メチレン溶液(50mL)に6gのジエチレングリコールジビニルエーテルと、触媒として2mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去して目的生成物を得た。
青木油脂工業株式会社製ファインサーフTDE−1055は、一般式(4)で示される構造の非イオン性界面活性剤であって、R
1がトリデシルアルコールの残基、(AO)n
1がEO/PO比(モル比)=80/20のオキシアルキレン鎖であり、平均分子量770である界面活性剤である。
非イオン性界面活性剤として1種類のみを用いているため、一般式(4)及び一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤として同じものを用いたとみなす。
得られた生成物は、ジエチレングリコールジビニルエーテルの両末端のビニル基にファインサーフTDE−1055のヒドロキシル基がそれぞれ付加反応してなる、アセタール構造を2箇所に有する非イオン性界面活性剤である。
【0068】
(実施例2)
原料としての非イオン性界面活性剤を青木油脂工業株式会社製ブラウノンEL−1507(50g)に変更し、6gのジエチレングリコールジビニルエーテルを10gの1,4−ブタンジオールジビニルエーテルに変更した他は、実施例1と同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
青木油脂工業株式会社製ブラウノンEL−1507は、一般式(4)で示される構造の非イオン性界面活性剤であって、R
1がラウリルアルコールの残基、(AO)n
1がEO/PO比(モル比)=100/0のオキシアルキレン鎖であり、EO平均付加モル数7である界面活性剤である。
得られた生成物は、1,4−ブタンジオールジビニルエーテルの両末端のビニル基にブラウノンEL−1507のヒドロキシル基がそれぞれ付加反応してなる、アセタール構造を2箇所に有する非イオン性界面活性剤である。
【0069】
(実施例3)
原料としての非イオン性界面活性剤を青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフID−50(40g)及び青木油脂工業株式会社製ブラウノンSA−30/70 2000R(200g)に変更し、6gのジエチレングリコールジビニルエーテルを30gのポリエチレングリコールジビニルエーテル(平均分子量Mn250)に変更した他は、実施例1と同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフID−50は、一般式(4)で示される構造の非イオン性界面活性剤であって、R
1がイソデシルアルコールの残基、(AO)
n1がエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドがランダムに付加されたEO/PO比(モル比)=65/35のオキシアルキレン鎖であり、平均分子量400である界面活性剤である。
青木油脂工業株式会社製ブラウノンSA−30/70 2000Rは、一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤であって、R
2がステアリルアルコールの残基、(AO)n
2がエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドがランダムに付加されたEO/PO比(モル比)=30/70のオキシアルキレン鎖であり、平均分子量2000である界面活性剤である。
【0070】
(実施例4)
原料としての非イオン界面活性剤を青木油脂工業株式会社製ブラウノンEH−11(60g)及びポリオキシブチレンポリオキシエチレンブチルエーテル(30g)に変更し、6gのジエチレングリコールジビニルエーテルを25gのトリエチレングリコールジビニルエーテルに変更した他は、実施例1と同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
青木油脂工業株式会社製ブラウノンEH−11は、一般式(4)で示される構造の非イオン性界面活性剤であって、R
1が2−エチルヘキサノールの残基、(AO)
n1がEO/PO比(モル比)=100/0のオキシアルキレン鎖であり、EO平均付加モル数11である界面活性剤である。
ポリオキシブチレンポリオキシエチレンブチルエーテルは、一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤であって、R
2がブタノールの残基、(AO)
n2がEO/BO比(モル比)=50/50のオキシアルキレン鎖であり、平均分子量300である界面活性剤である。
【0071】
(比較例1)
実施例1で使用した原料としての非イオン性界面活性剤であるファインサーフTDE―1055を準備した。
【0072】
(比較例2)
脂肪酸アルキルエステルエトキシレート型の非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン脂肪酸(ラウリル)メチルエステル(ライオン株式会社製レオファットLA−110M−95)を準備した。
【0073】
(比較例3)
脂肪酸アルキルエステルエトキシレート型の非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル(ライオン株式会社製レオファットLA−90−25)を準備した。
【0074】
(比較例4)
実施例2で使用した原料としての非イオン性界面活性剤であるブラウノンEL−1507を準備した。
【0075】
(比較例5)
実施例3で使用した原料としての非イオン性界面活性剤であるワンダーサーフID−50を準備した。
【0076】
(比較例6)
実施例3で使用した原料としての非イオン性界面活性剤であるブラウノンSA−30/70 2000Rを準備した。
【0077】
(比較例7)
実施例4で使用した原料としての非イオン性界面活性剤である青木油脂工業株式会社製ブラウノンEH−11を準備した。
【0078】
(比較例8)
実施例4で使用した原料としての非イオン性界面活性剤であるポリオキシブチレンポリオキシエチレンブチルエーテルを準備した。
【0079】
(アルカリ剤存在下での泡立ち性試験)
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4で準備した非イオン性界面活性剤を純分換算で5重量%、水酸化ナトリウム(顆粒)を10重量%、水を85重量%混合して、アルカリ剤を配合した洗浄剤組成物を調製した。
これらの洗浄剤組成物について、調製直後及び45℃で6日間保管後の泡立ち性を測定した。
泡立ち性の測定は、洗浄剤組成物の10%水溶液100mLを500mLメスシリンダーに加え、攪拌機を用いて2000rpmで1分間撹拌した直後の泡量を測定することにより行った。
泡立ち性試験の結果をまとめて表1及び
図1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1、2では泡量が調製直後、6日間保管後のいずれでも低くなっており、泡立ちが少なく、アルカリ安定性に優れていた。
一方、比較例1、4では非イオン性界面活性剤の末端がヒドロキシル基であるので泡立ち性が高く、アルカリ安定性も悪くなっていた。
比較例2、3では末端がメチル基であるため調製直後の泡立ち性は悪くなかったがエステル結合を有するためにアルカリ安定性が悪くなっていた。
【0082】
(耐アルカリ性試験)
各実施例及び比較例で準備した非イオン性界面活性剤を、アルカリ剤の粉末にまぶして所定時間放置し、変色の具合を観察することにより行った。
具体的には、各非イオン性界面活性剤を、水酸化ナトリウム100重量%に対して10重量%まぶした。その後、80℃で2時間静置し、目視により混合物の色を確認した。変色していない場合は、「変色なし」と、褐色に変色していた場合は「褐色に変色」と評価した。
表2には、耐アルカリ性試験の結果をまとめて示した。
【0083】
【表2】
【0084】
(塩素安定性試験)
塩素安定性試験では、実施例1、比較例1〜3の非イオン性界面活性剤のいずれかを含む洗浄剤組成物を調製し、各洗浄剤組成物について塩素安定性を評価した。
洗浄剤組成物の組成は、非イオン性界面活性剤を純分換算で2重量%、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度12%)を44重量%、水酸化ナトリウム水溶液(濃度48重量%)を16重量%、可溶化剤(キシレンスルホン酸塩水溶液(濃度40重量%))を30重量%、水を8重量%とした。
【0085】
有効塩素濃度を下記に示すヨウ素滴定法で測定した。
上記洗浄剤組成物約1gに、ヨウ化カリウム水溶液(濃度約2重量%)50mL及び酢酸10mLを添加して充分に混合することにより混合液を作製した。次に、0.1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で混合液を滴定し、褐色が消えて無色になった点を終点とした。その時のチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量に基づき、次式(1)によって有効塩素濃度を算出した。
有効塩素濃度[%]=チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量[mL]×0.3546/洗浄剤組成物採取量[g]・・・(1)
【0086】
上記方法による有効塩素濃度の測定を、洗浄剤組成物の調製直後(0日)、3日、6日経過後にそれぞれ実施した。
洗浄剤組成物は、45℃のインキュベータ内で所定日数保管した。
洗浄剤組成物の調製直後(0日)の有効塩素濃度を100(%)とし、洗浄剤組成物の調製直後の有効塩素濃度に対する、3日、6日経過後の有効塩素濃度の割合(%)を有効塩素残存率(%)として求め、表3に示した。
図2には、塩素安定性試験における有効塩素残存率の経時変化を示すグラフを示した。
【0087】
【表3】
【0088】
表3及び
図2に示すように、非イオン性界面活性剤の末端がアセタール構造である実施例1では、非イオン性界面活性剤の末端がヒドロキシル基である比較例1の場合に比べて有効塩素残存率が高くなっている。