【課題】撥水性、撥油性に優れ、肌への塗布時の感触が滑らかで付着性も良好な表面処理粉体及びこの表面処理紛体を安価かつ簡単な操作で製造すること、並びにこの表面処理粉体を配合した化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】一般式(1)で示される、カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物によって基材粉体の表面が処理されていることを特徴とする表面処理粉体及びこの表面処理粉体を配合した化粧料を提供する。
請求項1又は2に記載のカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が基材粉体量の1〜50質量%によって表面処理されていることを特徴とする表面処理粉体。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理粉体を製造する方法であって、製造工程においてカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を塩基性物質で中和して用いることを特徴とする表面処理粉体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
化粧料には、化粧料用粉体として様々な粉体が用いられており、その使用目的に合わせて、随時種々の化合物で表面処理が行なわれている。また、汗・涙・雨などによる化粧くずれや皮脂・化粧料の油分などによる化粧くずれの防止を目的として、撥水性、撥油性をもたせるための表面処理に関する研究が行われている。
【0003】
従来、提案されている撥水性、撥油性に優れるフッ素化合物で処理した粉体としては、例えば、パーフルオロアルキル基を有するリン酸エステルで粉体の表面処理をした撥水撥油性粉体(特許文献1)、パーフルオロアルキルシランで粉体を処理した撥水撥油性顔料(特許文献2)、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸及びその塩等で基材粉体の表面を処理した化粧用粉体(特許文献3)、パーフルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性シリコーンにて表面処理された改質粉体(特許文献4)、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン化合物を表面処理した撥水撥油性化粧料用粉体顔料(特許文献5)、パーフルオロアクリレート共重合体が表面に被覆された顔料粉体(特許文献6)、パーフルオロポリエーテル変性ポリウレタンを表面処理した撥水撥油性化粧料用粉体顔料(特許文献7)等が挙げられ、いずれも化粧料用の粉体として利用されている。
しかしながら、これらのフッ素化合物はいずれも、撥水性、撥油性と使用感触の両立については必ずしも十分ではない。
【0004】
一方、本発明者らが着目した一般式(1)のカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、パーフルオロアルキレン又はパーフルオロアルキルと結合しているエーテル酸素を2個以上有するパーフルオロアルコキシ基の繰り返し単位から誘導されるポリパーフルオロポリエーテル鎖が構造中に組み込まれ、かつ、一般式(1)の末端構造中にカチオン性のカルボキシル基が側鎖として存在する、その中和塩が水溶性のパーフルオロポリエーテル化合物である。
【0005】
本発明に係わる一般式(1)は、パーフルオロポリエーテル鎖が末端カルボキシル基に組み込まれた化合物であるが、これは公知のパーフルオロポリエーテル鎖を有する酸フルオライドを加水分解することで容易に得ることができる(特許文献8〜10)。これら各種誘導体が界面活性剤、消火薬剤として報告されているが、カルボン酸そのものを粉体の処理剤として利用するものではなく、化粧用としても応用もなされていない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の表面処理粉体について詳述する。
本発明は、一般式(1)で示される、カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物によって基材粉体の表面が処理されていることを特徴とする表面処理粉体である。
【化1】
(但し、mは0〜5の整数を表し、nは平均値で1〜20の整数を表し、Xはフッ素原子、または炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)
【0011】
本発明に関わるカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物中の繰り返し構造中のXはフッ素原子、または炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であれば上記効果を充分に呈するものであるが、Xがトリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
本発明に係わるカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は例えば、米国特許2764603号、米国特許3250808号などに記載されている酸フルオライドを酸性条件または塩基性条件下で加水分解することで合成できる。
【0012】
本発明は、前記表面処理成分を処理する事により、従来では得られない撥油性と感触、付着性、更には他の表面処理粉体との混和性を両立した粉体が得られることにある。表面処理量について制限するものではないが、本発明の表面処理成分は基材粉体100質量%に対して、1以上50質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明に係わるカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の性状は、パーフルオロポリエーテル部のXの種類、または分子量に依存して常温で液体〜固体を呈する。また、カルボキシル基を持つことから中和塩は水に溶解又は分散する。
本発明に係わるカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、前処理することなくそのまま利用いても十分な効果を発揮するが、適当な塩基性物質で中和した塩を用いることが好ましい。
【0014】
中和に用いられる塩基性物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、次のような物質が挙げられる。またこれらの塩基性物質は1種または2種以上を混合して用いても構わない。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アミルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピリジン、ピリミジン、アルギニン、リジン、ポリエチレンジアミン、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリクオタニウムなどが挙げられる。
【0015】
表面処理剤を使用して基材粉体の表面を処理する方法は、一般的には湿式法、乾式法の2方法がある。湿式法は溶剤、もしくは水/溶剤溶液に基材粉体を分散し、ここに攪拌しながら、表面処理剤を添加し、均一にコート後ろ過して、乾燥し表面処理粉体を得るものである。乾式法はヘンシェルミキサー、ボールミルなどに基材粉体を加え、表面処理剤を加え、良く混合後乾燥、加熱して処理粉体を得るものである。
【0016】
本発明における表面処理の方法は特に制限するものでは無いが、乾式法、湿式法のどちらを用いても優れた撥水性、撥油性に優れ、肌への塗布時の滑らかな感触を付与することができる。均質な表面処理をするには湿式法がより好ましい。
【0017】
具体的には、一般式(1)で表されるカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は塩基性下で水に溶解する。したがって、一般式(1)で表されるカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物で粉体表面を処理するためには基材粉体を水に分散し、pH8.0以上の塩基性下で表面処理剤を加え、良く混合して、ろ過、乾燥して処理粉体を得ることができる。
上述のようにして得られる本発明の表面処理粉体は撥水性、撥油性に優れ、且つ肌への塗布時の感触が滑らかで、肌との付着性にも優れる。
【0018】
更に、本発明に係わる基材粉体の表面処理にあたっては、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)以外の表面処理剤を同時又は連続的に基材粉体に表面処理することができる。本発明に使用できる表面処理剤としては、例えばパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、炭素数9〜15のフルオロアルコールリン酸、トリフルオロプロピルシクロペンタシロキサン、パーフルオロポリエーテルアミドアミン、PEG8トリフルオロプロピルジメチコンコポリマー等の本発明に係わる表面処理剤以外のフッ素系化合物、ハイドロジェンシリコーン、アミノシリコーン、反応性オルガノポリシロキサン、アルキルシランなどのシリコーン化合物、有機チタネート、ポリオレフィン、レシチン及び/又はその塩、水添レシチン及び/又はその塩などのレシチン類、アシル化アミノ酸及び/又はその塩、酸性エステル油、脂肪酸及び/又はその塩類、デキストリン脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、コラーゲン、高級アルコール、エステル、ワックス、金属石鹸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
上記パーフルオロポリエーテル変性アミノシランは、特開昭58−122979号公報に準じた方法で合成できる。パーフルオロオクチルトリエトキシシランは、Gelest,Inc.製のものを利用できる。炭素数9〜15のフルオロアルコールリン酸は、特開2004−277389号公報に準じた方法で合成できる。トリフルオロプロピルシクロペンタシロキサンは、信越化学工業社のKF−5002などが利用できる。パーフルオロポリエーテルアミドアミンは米国特許第3547995号に準じた方法で合成できる。PEG8トリフルオロプロピルジメチコンは信越化学工業社のFPD−6131などを利用できる。反応性オルガノポリシロキサンとしては、信越化学工業社のKF99(メチコン)、KF9901(ハイドロジェンジメチコン)等、KF−9908(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)、KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)、KP−574((アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー)、KF―7312(トリメチルシロキシケイ酸とシクロペンタシロキサンの混合物)、KF―9001(トリメチルシロキシケイ酸のデカメチルシクロペンタシロキサン50%溶液)等を使用できる。アルキルシランとしては、ダウコーニング社のZ−6341(オクチルトリエトキシシラン)やデグサ社のF−8261(トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン)等を使用できる。有機チタネートとしては、味の素社のプレンアクトKR−TTS(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート)等が使用できる。ポリオレフィンとしては、例えば、特開昭63−179972号公報に記載の公知の化合物や、ポリプロピレンを酸化して得られる酸化ポリエチレン、マレイン化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン等を使用できる。水添レシチン及び/又はその塩類としては、例えば、日光ケミカルズ社のレシノールS−10(水素添加大豆リン脂質)、キユーピー社の卵黄レシチンPL−100P(水素添加卵黄リン脂質)等を使用できる。アシル化アミノ酸及び/又はその塩としては、日光ケミカルズ社のサルコシネートMN(ミリストイルメチルアミノ酢酸ナトリウム)、アラニネートLN−30(ラウロイルメチルアラニンナトリウム)、サルコシネートCN−30(ココイルサルコシンナトリウム)、サルコシネートOH(オレオイルサルコシン)等、味の素社のアミソフトHS−21(N−ステアロイル−L−グルタミン酸ニナトリウム)等、SEPPIC社のSEPILIFT DPHP(ジパルミトイルヒドロキシプロリン)等を使用できる。
【0020】
これら表面処理剤の使用量を限定するものではないが、本発明の表面処理剤の特性を損なわない程度に使用することが好ましい。好ましくは1から20質量%程度である。
【0021】
本発明に用いられる基材粉体としては、従来化粧料用粉体として用いられている粉体であれば特に制限されず、例えば、次のような基材粉体が挙げられる。またこれらの基材粉体は1種または2種以上を混合して用いても構わない。具体的には、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化クロム、群青、ベンガラ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシュウム、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、水酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラック、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ホウ素、シリカ−アルミナ粉末、ベントナイト、スメクタイトなどの無機顔料、ナイロンパウダー、ポリウレタンパウダー、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリエチレン粉体、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンガム、シルクパウダー、カルナバワックス、ライスワックス、デンプン、微結晶セルロースなどの有機粉体、ローダミンB等の有機色素、赤色201号、黒色401号、黄色4号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機着色料、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母などの複合粉体、表面処理がなされている粉体などが挙げられ、形状としては、球状、板状、針状、繊維状など通常化粧料に用いられる形状、粒径であれば構わない。
【0022】
次に本発明の化粧料について詳述する。
本発明の化粧料は、上述の本発明の表面処理粉体を含有するもので、その剤型は任意であり、一般に従来の化粧料用粉体を含有する化粧料はすべて含まれる。それら化粧料としては、例えば、ファンデーション、白粉、ほほ紅などのフェイシャル化粧料、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、眉墨、口紅、ネイルエナメルなどといったメークアップ化粧料及び日焼け止め化粧品、乳液、ローションなどの基礎化粧料等が挙げられる。また、化粧料の他、皮膚外用剤、医薬用軟膏等にも好適に使用できる。
【0023】
本発明の表面処理粉体の配合量は、化粧料の形態に応じて変動するが、通常、0.1〜99.9質量%である。化粧料として香料等の他の成分を配合させること、また、0.1質量%未満の配合量では本発明に係る表面処理粉体による撥水性、撥油効果及び好ましい感触が十分に表われないことを考え合わせると、表面処理粉体の配合量は、好ましくは0.1〜99質量%の範囲である。なお、化粧料の種類により、例えば固形粉体化粧料には、20〜80質量%、クリーム状化粧料には5〜50質量%、乳液状化粧料には2〜40質量%、ローション類には2〜30質量%を配合するのがさらに好ましい。
【0024】
本発明の化粧料に配合できる、本発明に係わる表面処理粉体以外の成分としては、目的とする化粧料の種類に応じて、通常の化粧料に配合される成分から適宜選択して使用することができる。これらの成分としては、例えば、流動パラフィン、ワセリンなどの炭化水素、植物油脂、ロウ類、合成エステル油、シリコーン系の油相成分、フッ素系の油相成分、高級アルコール類、低級アルコール、脂肪酸類、増粘剤、紫外線吸収剤、粉体、無機・有機顔料、色材、各種界面活性剤、多価アルコール、糖、高分子化合物、生理活性成分、経皮吸収促進剤、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤、各種添加剤等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明の化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。本発明の化粧料用粉体を配合した化粧料は、耐水性・耐皮脂性に優れ、汗及び皮脂等による化粧崩れを防止し、且つ肌上への化粧料の塗布時の感触が滑らかで、付着性に優れ、しっとりした使用感を与えることができる。
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
1.製造方法
(1)表面処理剤の製造法1
特許文献8の合成方法に従い得られた酸フルオライドを硫酸触媒存在下、加水分解することで平均重合度n=8である下記化学式(2)に示す目的の表面処理剤を153.7g得た。
【化2】
【0028】
(2)表面処理剤の製造法2
任意の鎖長を有するパーフルオロアルキレン化合物を用い、特許文献8の合成方法に従い得られた酸フルオライドを硫酸触媒存在下、加水分解することで下記化学式(3)に示す目的とする表面処理剤を得た。得られた表面処理剤のm、n、Xは下記表1に示す通りである。
【化3】
【0029】
(3)表面処理粉体の製造方法1
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン950gを入れ、表面処理剤の製造法1で合成した前記化学式(2)に示す表面処理剤50gを3重量%水酸化ナトリウム水溶液450gに溶解したものを加えて攪拌した。攪拌後、110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品1とした。
【0030】
(4)表面処理粉体の製造方法2
ビーカーに顔料酸化チタン95.0gを秤り取り、精製水100gを加えてよく攪拌した。ここに水酸化ナトリウムを加えてpH10として、表面処理剤の製造法1で合成した前記化学式(2)に示す表面処理剤5.0g加え、30分間混合後ろ過した。これを取り出し乾燥機にて110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品2とした。
【0031】
(5)表面処理粉体の製造方法3
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン950gを入れ、表面処理剤の製造法2で合成した前記化学式(3)に示す表面処理剤50gを3重量%水酸化ナトリウム水溶液450gに溶解したものを加えて攪拌した。攪拌後、110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品3〜8および比較品1〜4とした。用いた表面処理剤の種類は下記表1に示すm、n、Xの通りである。
【0032】
(6)表面処理粉体の製造方法4
ビーカーに顔料酸化チタン95.0gを秤り取り、精製水100gを加えてよく攪拌した。ここに水酸化ナトリウムを加えてpH10として、表面処理剤の製造法2で合成した前記化学式(3)に示す表面処理剤を5.0g加え、30分間混合後ろ過した。これを取り出し乾燥機にて110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品9〜13および比較品5〜8とした。用いた表面処理剤の種類は下記表1に示すm、n、Xの通りである。
【0033】
2.評価方法
(1)撥水性、撥油性
試料を平板な容器に入れ、100kg/cm
2の力で平坦な表面を作り、ここに水滴、スクワラン滴を静かに落として、接触角を測定した。
【0034】
(2)付着性
上腕内側部に試料を均質に擦り付け、これを刷毛ではき取った時に付着している様子を肉眼観察し、以下の5点のスコアで評価し、その平均を求めた。
5: 未処理粉体よりも付着性に優れる
4: 未処理粉体よりも比較的付着性に優れる
3: 未処理粉体と同程度
2: 未処理粉体よりも比較的崩れやすい
1: 未処理粉体よりもかなり崩れやすい
【0035】
(3)感触
モニター5名で、塗布時の滑らかさを以下の5点のスコアで評価し、その平均を求めた。
5: 未処理粉体よりもかなり良い
4: 未処理粉体より良い
3: 未処理粉体と同程度
2: 未処理粉体よりも比較的劣る
1: 未処理粉体よりもかなり劣る
【0036】
3.評価結果
評価結果を表1に示す。乾式表面処理、湿式表面処理のどちらの表面処理方法を用いても撥水、撥油性、感触に優れた良好な粉体が得られた。感触に関しては乾式処理を用いた方が良く、撥水性、撥油性に関しては湿式処理を用いた方が良好という結果が得られた。比較品1〜8に示すように、重合度nが大きい場合や、パーフルオロアルキル基であるm、Xが長すぎると付着性、感触が極端に劣り、また、側鎖にパーフルオロアルキル基がなく、水素原子の場合には撥水、撥油性が著しく劣ることという結果が得られた。
【表1】
【実施例2】
【0037】
1.製造方法
(1)表面処理粉体の製造方法5
ビーカーに顔料酸化チタン100.0gを秤り取り、精製水100gを加えてよく攪拌した。ここに下記表2に示す塩基性物質を加えてPH9として、表面処理剤の製造法1で合成した前記化学式(2)に示す表面処理剤を加え、30分間混合後ろ過した。これを取り出し乾燥機にて110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品14〜24とした。
【0038】
(2)表面処理粉体の製造方法6
ビーカーに顔料酸化チタン100.0gを秤り取り、m−キシレンヘキサフルオライド100gを加えてよく攪拌した。ここに表面処理剤の製造法1で合成した前記化学式(2)に示す表面処理剤を5.0g加え、30分間混合後ろ過した。これを取り出しろ過した後、乾燥機にて110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品25とした。
【0039】
2.評価方法
(1)撥水性、撥油性
試料を平板な容器に入れ、100kg/cm
2の力で平坦な表面を作り、ここに水滴、スクワラン滴を静かに落として、接触角を測定した。
【0040】
(2)感触
モニター5名で、塗布時の滑らかさを以下の5点のスコアで評価し、その平均を求めた。
5: 未処理粉体よりもかなり良い
4: 未処理粉体より良い
3: 未処理粉体と同程度
2: 未処理粉体よりも比較的劣る
1: 未処理粉体よりもかなり劣る
【0041】
3.評価結果
評価結果を表2に示す。塩基性物質の種類を問わず、良好な撥水性、撥油性、感触の粉体が得られた。中和を行う際の塩基性物質の種類による撥水性、撥油性、感触の違いに大きな影響は見られなかったが、未中和よりも中和した表面処理剤を用いた方が高い効果が得られた。
【表2】
【実施例3】
【0042】
1.製造方法
(1)表面処理粉体の製造方法7
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン94gを入れ、表面処理剤の製造法1で合成した前記化学式(2)に示す表面処理剤5gを5重量%水酸化ナトリウム水溶液中45gに溶解したものを加えて攪拌した。次いでさらに本発明でいう一般式(1)以外の表面処理剤1gを別途添加し、再度攪拌した。攪拌後、110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品26〜32とした。
【0043】
2.評価方法
(1)撥水性、撥油性
試料を平板な容器に入れ、100kg/cm
2の力で平坦な表面を作り、ここに水滴、スクワラン滴を静かに落として、接触角を測定した。
【0044】
(2)感触
モニター5名で、塗布時の滑らかさを以下の5点のスコアで評価し、その平均を求めた。
5: 未処理粉体よりもかなり良い
4: 未処理粉体より良い
3: 未処理粉体と同程度
2: 未処理粉体よりも比較的劣る
1: 未処理粉体よりもかなり劣る
【0045】
3.評価結果
評価結果を表3に示す。多くの組み合わせで、パーフルオロポリエーテル化合物単独と同程度の撥水性、撥油性と感触が得られた。本実験においてもアミノ基を有するパーフルオロポリエーテル化合物との併用により、相乗的に機能の改善が認められた。
【表3】
【実施例4】
【0046】
1.製造方法
(1)表面処理粉体の製造方法8
ヘンシェルミキサーに、表4に示す化粧用顔料95gを入れ、表面処理剤の製造法1で合成した前記化学式(2)に示す表面処理剤5gを5質量%水酸化ナトリウム水溶液中45gに溶解したものを加えて攪拌した。攪拌後、110℃で4時間乾燥し、アトマイザー粉砕した表面処理粉体を本発明品33〜45とした。
【0047】
2.評価方法
(1)撥水性、撥油性
試料を平板な容器に入れ、100kg/cm
2の力で平坦な表面を作り、ここに水滴、スクワラン滴を静かに落として、接触角を測定した。
【0048】
(2)感触
モニター5名で、塗布時の滑らかさを以下の5点のスコアで評価し、その平均を求めた。
5: 未処理粉体よりもかなり良い
4: 未処理粉体より良い
3: 未処理粉体と同程度
2: 未処理粉体よりも比較的劣る
1: 未処理粉体よりもかなり劣る
【0049】
3.評価結果
評価結果を表4に示す。多くの無機顔料、有機顔料において、良好な撥水性、撥油性と感触が得られた。
【表4】
【0050】
以下に、本発明の表面処理粉体を配合した化粧料の応用例を示す。配合量は質量%である。
【実施例5】
【0051】
化粧下地
A グリセリン 5.0質量%
ステアロキシPGヒドロキシPGヒドロキシエチル
スルフォン酸ナトリウム 2.0
水 残部
B パーフルオロアルキル(C4−14)エトキシジメチコン 13.0
シクロメチコン 10.0
ジメチコン 6.0
メトキシケイヒ酸オクチル 4.0
エタノール 3.0
イソステアリルグリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カーボマー(4%水溶液) 2.0
ナイロン12 2.0
表面処理12−ナイロンパウダー(本発明品45) 2.0
表面処理酸化チタン(本発明品2) 2.0
表面処理ベンガラ(本発明品38) 0.5
表面処理酸化鉄(本発明品39) 0.5
表面処理酸化鉄(本発明品40) 0.1
(調製方法)A相を常温にてホモミキサーにて攪拌しなら、B相を加えて乳化した。
(結果)SPF30/PA++で、撥水性、撥油性に優れ、感触の良い化粧下地を得た。
【実施例6】
【0052】
パウダーファンデーション
A 表面処理マイカ(本発明品35) 残部
表面処理タルク(本発明品34) 15.0質量%
表面処理セリサイト(本発明品36) 10.0
ナイロン12 10.0
B ジメチコン 7.0
ミリスチン酸イソセチル 5.0
メトキシケイヒ酸オクチル 5.0
(ジフェニルジメチコン/ビニルフェニルジメチコン/
シルセスキオキサン)クロスポリマー 3.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 3.0
水添ポリイソブテン 3.0
(調製方法)B成分をよく混和し、A成分を加えて均一になるまでさらに混和し、容器に充填して製品とした。
(結果)SPF30/PA++で、撥水撥油性に優れ、感触の良いファンデーションを得た。
【実施例7】
【0053】
リキッドファンデーション
A 精製水 残部
ブチレングリコール 5.0質量%
グリセリン 2.0
カルボマー 0.1
フェノキシエタノール 3.0
B シクロペンタシロキサン 20.0
表面処理酸化チタン(本発明品1) 5.0
表面処理酸化亜鉛(本発明品33) 6.0
PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.0
(アクリルサンアルキル/ジメチコン)コポリマー 2.0
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 2.0
フィトステロールイソステアレート 1.0
色材 適量
(調製方法)B相をディスパーで良く混合後、均一溶液としたA相にホモミキサー攪拌しながら、加えて乳化した。
(結果)撥水性、撥油性に優れた乳液状ファンデーションを得た。紫外線防御能もSPF20、PA++と高い値を示した。
【実施例8】
【0054】
W/O紫外線防御化粧品
A ジメチコン 10.0質量%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 5.0
(ジメチコン/メチコン)・コポリマー 6.0
セレシン 5.0
トリオクタン酸トリメチロールプロパン 5.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 4.0
カルナウバロウ 1.0
微粒子酸化亜鉛 10.0
微粒子酸化チタン 2.0
表面処理タルク(本発明品34) 2.0
表面処理セリサイト(本発明品36) 2.0
シクロメチコン 3.0
メトキシケイヒ酸オクチル 5.0
ミネラルオイル 1.0
ワセリン 1.0
B ジプロピレングリコール 2.0
ヒアルロン酸Na 0.2
水 残部
(調製方法)A成分を70℃に加熱し、本発明粉体以外を均一に溶解させた後、ホモミキサーまたはディスパーミキサーでゆっくりと攪拌しながらAにBを徐々に加えた後、強く攪拌して乳化を行う。
(結果)撥水性、撥油性に優れ、使用感の良いW/O型の紫外線防御化粧品が得られた。また本発明処理粉体の分散性は高く、高い紫外線防御能を示した。SPF35、PA+++
【実施例9】
【0055】
紫外線防御機能を有するファンデーション
表面処理タルク(本発明品34) 残部
表面処理マイカ(本発明品35) 10.0質量%
粒子酸化亜鉛 5.0
メトキシケイヒ酸オクチル 6.0
ミネラルオイル 5.0
微粒子シリカ 3.0
フィトステリルイソステレート 3.0
ジメチコン 3.0
ナイロン粉末 3.0
トリエチルヘキサノイン 3.0
水 3.0
トリイソステアリン酸ポリグリセリル‐2 1.0
色材 1.0
(調製方法)上記の成分をヘンシェルミキサーにて均一になるまで混合し、容器に充填して製品とした。
(結果)肌に対する伸び、滑らかさ、付着性に優れ、オイルへの分散性に優れ、色むらの無いファンデーションが得られた。SPF25、PA++
【実施例10】
【0056】
口紅
ポリブテン 60.0質量%
リンゴ酸イソステアリル 10.0
トリオクタノイン 10.0
パルミチン酸デキストリン 3.0
トリイソステアリン酸ジグリセリン 3.0
テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル 3.0
(ジメチコン/メチコン)コポリマー 2.0
ジメチコン 2.0
炭酸カルシウム 1.0
ミリスチン酸デキストリン 1.0
表面処理酸化チタン(本発明品30) 1.0
表面処理ベンガラ(本発明品38) 1.0
表面処理マイカ(本発明品35) 1.0
その他色材、香料 残部
(調製方法)上記の処方にて、ロールミルを使用して、均一に混和して作成した。
(結果)顔料の分散性に優れ鮮やかな色調の口紅が得られた。付着性に優れ、容器などへの色移りし難いものが得られた。