(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-113778(P2016-113778A)
(43)【公開日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】水門開閉器の補助駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20160527BHJP
【FI】
E02B7/20 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-252008(P2014-252008)
(22)【出願日】2014年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】510220622
【氏名又は名称】谷 一身
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】谷 一身
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA57
2D019AA64
(57)【要約】
【課題】電動工具(「電動ドライバー/電動ドリル」をいう)を動力源として用いた、全体として小型で安価な水門開閉器の補助駆動装置を提供する。
【解決手段】水門開閉器11のケーシング16に取付けられるハウジング19と、ハウジング19内にあって第1の軸受35、36によって支持され、使用にあっては水平軸15に連結される第1の駆動軸21と、第1の駆動軸21に取付けられた第1のスプロケット23と、第2の軸受25a、25bに回転可能に設けられた第2の駆動軸25に固着された第2のスプロケット26と、第1、第2のスプロケット23、26を連結するチェーン27とを有し、第2の駆動軸25には、電動工具29のチャック30に取付けられた断面多角形の回転伝達具31の係合手段32が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動ハンドルが取付け可能な水平軸を備えたゲートの昇降機構と、前記昇降機構が内装されたケーシングとを有する水門開閉器に付設する補助駆動装置であって、
前記ケーシングに取付けられるハウジングと、前記ハウジング内にあって第1の軸受によって支持され、使用にあっては前記水平軸に連結される第1の駆動軸と、該第1の駆動軸に取付けられた第1のスプロケットと、前記ハウジング内に配置された第2の軸受に回転可能に設けられた第2の駆動軸と、該第2の駆動軸に固着された第2のスプロケットと、前記第1、第2のスプロケットを連結するチェーンとを有し、前記第2の駆動軸には、電動工具のチャックに取付けられた断面多角形の回転伝達具の係合手段が設けられていることを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の水門開閉器の補助駆動装置において、前記ハウジングには前記第2の駆動軸に前記回転伝達具が正規の連結状態を保つ保持金具が設けられていることを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水門開閉器の補助駆動装置において、前記第1駆動軸には、前記手動ハンドル又は別の手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け手段が設けられていることを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の水門開閉器の補助駆動装置において、前記ハウジング内には、前記チェーンのテンション機構が設けられていることを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載の水門開閉器の補助駆動装置において、前記電動工具の電源は充電式の電池であることを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路又は揚水場の水路等の各種の水路に配置された水門開閉器に取付けて使用し、特に、回転駆動源として電動工具を用いる水門開閉器の補助駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小型の従来の水門開閉器は、ハンドル操作によって駆動軸を回転し、歯車機構によって減速し、大きな力を発生させて水門の開閉を行うようにしている。
しかしながら、人力で水門を開閉する場合には、十分な力と時間を必要とし、極めて作業性が悪いという問題があった。
そこで、特許文献1に示すように、電池駆動の電動工具をハウジング(ケーシング)内に内蔵し、ドリル等を取付けるチャックに駆動軸を装着し、歯車によって減速し、水門開閉器の駆動軸を時計方向又は反時計方向に回転駆動する構造となった電動式の水門開閉器が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−89286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の電動水門開閉器においては、各水門開閉器毎に電動工具を必要とし、更にハウジング内に電動工具を収納する空間も必要であるので、全体的に嵩張るという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、電動工具(「電動ドライバー/電動ドリル」をいう)を動力源として用いた、全体として小型で安価な水門開閉器の補助駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、手動ハンドルが取付け可能な水平軸を備えたゲートの昇降機構と、前記昇降機構が内装されたケーシングとを有する水門開閉器に付設する補助駆動装置であって、
前記ケーシングに取付けられるハウジングと、前記ハウジング内にあって第1の軸受によって支持され、使用にあっては前記水平軸に連結される第1の駆動軸と、該第1の駆動軸に取付けられた第1のスプロケットと、前記ハウジング内に配置された第2の軸受に回転可能に設けられた第2の駆動軸と、該第2の駆動軸に固着された第2のスプロケットと、前記第1、第2のスプロケットを連結するチェーンとを有し、前記第2の駆動軸には、電動工具のチャックに取付けられた断面多角形の回転伝達具の係合手段が設けられている。
【0007】
第2の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、第1の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置において、前記ハウジングには前記第2の駆動軸に前記回転伝達具が正規の連結状態を保つ保持金具が設けられている。
【0008】
第3の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、第1、第2の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置において、前記第1駆動軸には、前記手動ハンドル又は別の手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け手段が設けられている。
【0009】
第4の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、第1〜第3の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置において、前記ハウジング内には、前記チェーンのテンション機構が設けられている。
【0010】
そして、第5の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、第1〜第4の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置において、前記電動工具の電源は充電式の電池である。
【発明の効果】
【0011】
第1〜第5の発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、動力源にハウジングに取付け取外しが容易な電動工具を用いているので、電動工具を収納する部屋を設ける必要がなく、装置全体の小型化が図れ、必要な場合は、一台の電動工具で複数の水門開閉器を駆動することができる。
【0012】
特に、電池駆動型の電動工具を用いた場合は、電源のない場所に設置される水門開閉器であっても操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る水門開閉器の補助駆動装置の一部省略側断面図である。
【
図5】(A)はハウジングの一部省略正面図、(B)は第1の駆動軸周りの説明図、(C)は変形例に係る第1の駆動軸周りの説明図である。
【
図6】(A)、(B)はそれぞれ電動工具の側面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1〜
図6に示すように、本発明の一実施の形態に係る水門開閉器の補助駆動装置10(以下、単に、「補助駆動装置10」という)を取付ける水門開閉器11は、例えば、水門(ゲート)11aを昇降するスクリュー軸12と、スクリュー軸12に噛合する雌ねじを内側に有するウォームホイル13と、ウォームホイル13を駆動するウォーム14と、ウォーム14を駆動する水平軸15と、これらのケーシング16とを有する。そして、水平軸15、ウォーム14、ウォームホイル13、及びスクリュー軸12が水門11aの昇降機構18を形成する。また、水平軸15の端部は多角形穴又は多角形軸となって、この多角形穴又は多角形軸に係合する図示しない手動ハンドルが取付け可能となっている。
【0015】
この補助駆動装置10の主要部は、L字状の2つの連結金具19a(
図2〜
図4参照)でケーシング16に固定保持されたハウジング(カバー枠)19内に配置され、水平軸15の端部に一端が取外し可能に固定され、他端には手動ハンドル20が取付け可能な角軸56(角穴でもよい)が設けられた第1の駆動軸21と、第1の駆動軸21に取付けられた第1のスプロケット23と、ハウジング19内に配置された第2の軸受の一例であるベアリング25a、25bによって両端を支持されて回転可能に設けられた第2の駆動軸25と、第2の駆動軸25に固着された第2のスプロケット26と、第1、第2のスプロケット23、26を連結するチェーン27とを有している。
【0016】
ベアリング25a、25bは軸受支持部材25c、25dによってハウジング19に取付けられている。更に、第1の駆動軸21はハンジング19に取付けられた軸受支持部材33、34によって支持されるベアリング35とブッシュ36からなる第1の軸受によって回転自由に保持されている。
【0017】
軸受支持部材33、34の周囲のハウジング19には、複数(8本)の雌ねじ孔33aが同一ピッチで設けられ、前記した2本の連結金具19aをボルトによって固定し、ハウジング19をケーシング16に固定しているが、雌ねじ孔33aの取付け位置を変えることによって、
図4に示すように、水平軸15に対するハンジング19の取付け角度を45度単位で変更できる。なお、ハウジング19には円形の取付け板19bが設けられ、取付け板19bを介してハウジング19が連結金具19aに固定されている。
【0018】
第2の駆動軸25には、電動工具(例えば、電動ドライバー、電動ドリルをいう、
図6参照)29のチャック30に取付けられた断面多角形の回転伝達具の一例である六角棒31が嵌入する六角孔32(係合手段の一例)が設けられている。なお、
図6(A)、(B)に電動工具29を示すが、底部に電動工具29の電源となる充電式の電池29aが設けられている。
第1のスプロケット23の歯数は第2のスプロケット26の歯数より多く(例えば、2〜4倍)、第1、第2のスプロケット23、26及びチェーン27が一つの減速機を構成し、第2の駆動軸25に加えられる電動工具29の回転力(トルク)を増加している。
【0019】
また、ハウジング19には、第2の駆動軸25に電動工具29に取付けた六角棒31が正規の連結状態(即ち、水平状態)を保つように、
図1〜
図3に示すように、保持金具38が設けられ、電動工具29のチャック30を含むホルダー39が嵌入するようになっている。更に、保持金具38には突出片40が設けられ電動工具29に取付けられたバンド状の連結金具41の対向する突出部42、43に係合し、電動工具29の駆動時に発生する反動回転力を保持する回り止めを図っている。なお、突出部42、43には貫通孔44が設けられ、必要な場合、ボルト、ナット等により突出部42、43の隙間を縮め、更に連結金具41を電動工具29に固定できる構造となっている。また、突出部42、43の隙間に突出片40が嵌入し、回り止めを図っている。
【0020】
図4、
図5(A)に示すように、ハウジング19内であって、第1、第2のスプロケット23、26を連結するチェーン27には、テンション機構46が設けられている。このテンション機構46はアイドルスプロケット47と、その取付け金具48とを有し、ボルト49を回転することによって、その位置を変えて、チェーン27にテンションを与えることができる。なお、50はボルト49をその位置に固定するナットを、51、52は取付け金具48をその場固定するボルトを示す。
【0021】
図5(B)にはこの実施の形態に係る補助駆動装置10の第1の駆動軸21を示すが、第1の駆動軸21の一方は、既設の水門開閉器11の水平軸15の多角形穴に嵌入する角軸部54を、第1の駆動軸21の他方には、手動ハンドル20を取付け可能なハンドル取付け手段の一例である角軸(四角棒)56が設けられている。
図5(C)には変形例に係る第1の駆動軸57を示すが、一方に角軸部54を他方に角穴(四角穴)58を有しており、手動ハンドルの差し込み部の種類によって適宜変更する。
【0022】
この補助駆動装置10の使用方法について説明する。製造された補助駆動装置10を、2本の連結金具19a及びボルト60、61と予め用意されたナットで固定する。具体的には、ボルト60、61の頭部を下にしてケーシング16の中間天井部61aを貫通し、ナット62、63によりボルト60、61を固定する。次に、ボルト60、61に下ナット64、65を螺入し、連結金具19aの一方側に設けられた所定の取付け孔をボルト60、61に挿通し上ナット66、67により固定する。連結金具19aの他方側にはハウジング19を取付けるが、
図4に示すように、予め定められた任意の角度でハウジング19を取付け可能である。
【0023】
次に、六角棒31が装着された電動工具29をハウジング19に取付けるが、予め、突出部42、43を有する連結金具41を電動工具29に取付け、補助駆動装置10の突出片40を突出部42、43の間に入れるようにして、チャック30を保持金具38内に入れる。以上の操作によって、電動工具29の装着が完了する。この状態で六角棒31が六角孔32に装着される。
【0024】
この状態で、電動工具29を正転又は逆転させて、第2のスプロケット26を駆動し、チェーン27を介して第1のスプロケット23を回転させ、第1の駆動軸21を回転させる。これによって水平軸15が回転し、水門11aが開閉する。
電動工具29を使用しない場合は、
図1に示すように手動ハンドル20を回して第1の駆動軸21を回転させる。
【0025】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
【符号の説明】
【0026】
10:水門開閉器の補助駆動装置、11:水門開閉器、11a:水門、12:スクリュー軸、13:ウォームホイル、14:ウォーム、15:水平軸、16:ケーシング、18:昇降機構、19:ハウジング、19a:連結金具、19b:取付け板、20:手動ハンドル、21:第1の駆動軸、23:第1のスプロケット、25:第2の駆動軸、25a、25b:ベアリング、25c、25d:軸受支持部材、26:第2のスプロケット、27:チェーン、29:電動工具、29a:電池、30:チャック、31:六角棒、32:六角孔、33、34:軸受支持部材、33a:雌ねじ孔、35:ベアリング、36:ブッシュ、38:保持金具、39:ホルダー、40:突出片、41:連結金具、42、43:突出部、44:貫通孔、46:テンション機構、47:アイドルスプロケット、48:取付け金具、49:ボルト、50:ナット、51、52:ボルト、54:角軸部、56:角軸、57:第1の駆動軸、58:角穴、60、61:ボルト、61a:中間天井部、62、63:ナット、64、65:下ナット、66、67:上ナット