特開2016-113857(P2016-113857A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016113857-建築用被覆シート 図000003
  • 特開2016113857-建築用被覆シート 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-113857(P2016-113857A)
(43)【公開日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】建築用被覆シート
(51)【国際特許分類】
   E04D 12/00 20060101AFI20160527BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20160527BHJP
【FI】
   E04D12/00 N
   E04B1/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-255688(P2014-255688)
(22)【出願日】2014年12月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅文
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DB04
2E001FA04
2E001FA16
2E001GA24
2E001HD11
2E001KA01
2E001LA12
(57)【要約】
【課題】透湿防水シートや屋根下地シートのような建築用被覆シートは、施工時にはタッカーあるいは釘等で固定するのが一般的であるが、従来の建築用被覆シートでは透明性が極めて悪いために、施工時、タッカーあるいは釘打ちする場所がわかりにくく、施工時の効率が著しく悪いという問題があった。本発明は、透視が可能であり、以て、施工性が良好な建築用被覆シートを提供することを課題とする。
【解決手段】施工時において被覆対象物が視認不可能な建築用被覆シート2に、前記被覆対象物が視認可能な透明部分3が設けられていることを特徴とする建築用被覆シート1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工時において被覆対象物が視認不可能な建築用被覆シートに、前記被覆対象物が視認可能な透明部分が設けられていることを特徴とする建築用被覆シート。
【請求項2】
視認不可能な建築用被覆シートが透湿防水シートであることを特徴とする請求項1に記載の建築用被覆シート。
【請求項3】
透湿防水シートが、内部に多数の空隙を含む微多孔性フィルムを構成層として備えることを特徴とする請求項2に記載の建築用被覆シート。
【請求項4】
微多孔性フィルム中に存在する空隙を解消させることにより透明部分が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の建築用被覆シート。
【請求項5】
加熱下における加圧により空隙が解消なされていることを特徴とする請求項4に記載の建築用被覆シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿防水シートや屋根下地シートのような建築用被覆シートに関する。さらに詳しくは、透視性が良好であり、以て、施工性が良好な建築用被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅の外壁や屋根には雨水の進入を防ぐために、防水性のシートが使用されていた。しかし、住宅の高気密化や高断熱化が進み、住宅内で発生した湿気が壁や屋根の内部に滞留し結露を起こして木材を腐食させ、住宅を傷める原因となることがあり、建造物外部からの雨水の浸入を防止する防水性と、壁や屋根の内部に侵入した湿気を外部へ排出する透湿性の両立が求められるようになっている。このような要請に応えるものとして透湿防水シートが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、かさ密度が0.01g/cm以上の不織布層と、該不織布層上に積層される多孔性ポリオレフィンフィルム層と、前記不織布層と前記多孔性ポリオレフィンフィルム層とを接着する樹脂製の接着部とを備え、接着部は、分散して形成されている屋根用下地材が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂に粒子状充填材が配合されてなる樹脂組成物を溶融成形してなるシートを延伸処理して得られた多孔性フィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂よりなる割繊維不織布が積層されてなる透湿性防水シートにおいて、前記割繊維不織布は目付が20〜100g/mの範囲、厚さが0.07〜0.3mmの範囲であり、多孔性フィルムと割繊維不織布とが、互いに交差しない複数条の接着面により接着されてなることを特徴とする透湿性防水シートが開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、平均粒径0.01〜30μmの無機充填剤を配合した熱可塑性樹脂フィルムを延伸して、微孔を形成し、この微多孔膜を布帛や紙のような通気性を有するシート基材の表面に貼合せることを特徴とする建築用シート材料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−275842号公報
【特許文献2】実開平7−35033号公報
【特許文献3】特開昭63−264336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したような透湿防水シートは、一般に白色を呈しており不透明である。これは透湿防水シートの透湿性が、該シート中に存在する空隙によって担保されているためである。すなわち透湿防水シートには、水蒸気は通過するが水滴は通過しないようなサイズの空隙が存在する。このような透湿防水シートが白色を呈し不透明なのは、この空隙と、透湿防水シートのマトリクスとして存在する合成樹脂の屈折率が相違し、透湿防水シートに入射した光線が乱反射することによる。
ところで、透湿防水シートや屋根下地シートのような建築用被覆シートは、施工時にはタッカーあるいは釘等で固定するのが一般的であるが、上記したような透湿防水シートからなる建築用被覆シートは透明性が極めて悪いために、施工時、タッカーあるいは釘打ちする場所がわかりにくく、施工性が著しく悪いという問題があった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、透視性が可能であり、以て、施工性が良好な建築用被覆シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建築用被覆シートは、施工時において被覆対象物が視認不可能な建築用被覆シートに、前記被覆対象物が視認可能な透明部分が設けられていることを基本的な構成とする。すなわち本発明は、
(1)施工時において被覆対象物が視認不可能な建築用被覆シートに、前記被覆対象物が視認可能な透明部分が設けられていることを特徴とする建築用被覆シートに関するものである。
(2)視認不可能な建築用被覆シートが透湿防水シートであることを特徴とする(1)に記載の建築用被覆シートに関するものである。
(3)透湿防水シートが、内部に多数の空隙を含む微多孔性フィルムを構成層として備えることを特徴とする(2)に記載の建築用被覆シートに関するものである。
(4)微多孔性フィルム中に存在する空隙を解消させることにより透明部分が形成されていることを特徴とする(3)に記載の建築用被覆シートに関するものである。
(5)加熱下における加圧により空隙が解消なされていることを特徴とする(4)に記載の建築用被覆シートに関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって提供される建築用被覆シートには被覆対象物が視認可能な透明部分が設けられている。このため本発明の建築用被覆シートは、施工時、タッカーあるいは釘打ちする場所を確認しやすく、施工時の効率が良好であるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)〜(G)は、本発明の建築用被覆シートの概要を示す模式図である。
図2図2(A)〜(E)は、図1で説明した視認可能な透明部分の模式拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の建築用被覆シートは、被覆対象物が視認不可能な建築用被覆シートの一部領域に透明部分が設けられており、この透明部分を通して被覆対象物が視認可能となっている。ここで被覆対象物とは、建築用被覆シートが適用される対象によって異なるが、柱、間柱、野地板等がこれにあたる。
また本発明において、被覆対象物が視認不可能な(以下この特性を「不透明な」と言い換えて用いることがある)建築用被覆シートとは、施工時、肉眼により該建築用被覆シートを通してタッカーあるいは釘打ちする場所の確認が困難な建築用被覆シートを意味する。
なお本発明者の実験によれば、この施工時の被覆対象物の視認性は、JIS K7361−1に準じて測定される全光線透過率の値と関連があることが確認されている。すなわち、被覆対象物が視認可能であるか視認不可能であるかは、施工現場の明るさや建築用被覆シートと被覆対象物との距離により変化するが、全光線透過率が40〜60%の範囲を上回るか下回るか、とりわけ建築用被覆シートの全光線透過率が50%を上回るか下回るかによっておおよそ推定できる。
【0013】
本発明の建築用被覆シートの材料となる不透明な建築用被覆シートとしては、前段で先行技術文献として挙げたような公知の透湿防水性を有するシートを用いることができる。さらには下記する商品名で各社から市販されているようなシートを用いてもよい。
「ピクトロンA」、「タイベック」、「スーパーコート」、「ウォーターガード」、「ハウスコート」、「ラミテクト」、「トーシツシート」、「スーパーエアテックス」、「ツユガード」、「シットール」等。
【0014】
本発明の透湿防水シートの最大の特徴は、不透明な建築用被覆シートに透明部分が設けられていることにある。この透明部分は不透明な建築用被覆シートの一部を透明な部材で置き換える手段、不透明な建築用被覆シートの一部を透明化する手段等により形成できるが、工程の簡潔さという観点から、後者、すなわち不透明な建築用被覆シートの一部を透明化する手段を採用するのが好ましい。
【0015】
次いで、上記した不透明な建築用被覆シートの一部を透明化する手段について説明する。
発明において不透明な建築用被覆シートの一部を透明化するには、熱、及び/又は、圧力により上記した空隙を解消、あるいは減少させる。より具体的には下記の手段が例示できる。
(イ)不透明な建築用被覆シートに熱板を接触させる。
(ロ)不透明な建築用被覆シートに熱板を接触させるとともに加圧する。
(ハ)不透明な建築用被覆シートに加圧用部材を押し当て加圧する。
(ニ)不透明な建築用被覆シートに溶融した合成樹脂を載置し、不透明な建築用被覆シートを構成する合成樹脂を溶融、あるいは変形可能な程度にまで軟化させる。必要により更に加圧する。
【0016】
不透明な建築用被覆シートの全面積に占める透明部分の割合は、大きいほど得られる建築用被覆シートは被覆対象物が視認し易くなり、施工性が良好となる。しかしながら建築用被覆シートの透湿性は低下する。この観点から不透明な建築用被覆シートの全面積に占める透明部分の割合は30%以下に設定することが望ましい。
【0017】
ところで、建築用被覆シートは通常ロール状に巻き取られており、施工時、特に壁面を対象とした施工時においては、このロールを立て、シートをロールから巻き出しつつ壁面の横方向(水平方向)に展張して行くのが一般的である。このような事情に鑑みると本発明の建築用被覆シートにおいて不透明な建築用被覆シートに設ける透明部分は、シートの流れ方向(MD)と平行に設けられているのが好ましい。このように透明部分が設けられていると、施工時、ロール状に巻き取られた建築用被覆シートをロールから巻き出しつつ横方向に展張して行けば被覆対象物をいち早く視認できるし、被覆対象物の配置状況を全体的に把握するうえで好都合である。さらに、不透明な建築用被覆シートに設ける透明部分は、施工時、タッカーあるいは釘打が想定される個所に設けるのが作業性の理由からより望ましい。
【0018】
次いで図面を参照しつつ本発明の建築用被覆シートを説明する。
図1(A)〜(G)は本発明の建築用被覆シート1の概要を示す模式図である。そしてこのうち図1(A)〜(D)が本発明の建築用被覆シート1のより好適な形態を示すものである。図1(A)〜(D)に示した形態では建築用被覆シート2の流れ方向(MD)と平行に視認可能な透明部分3が設けられているのが分かる。このうち図1(A)では、建築用被覆シート2の片方の側縁に沿って視認可能な透明部分3が設けられている。図1(B)では、建築用被覆シート2の両方の側縁に沿って視認可能な透明部分3が設けられている。図1(C)では、建築用被覆シート2のほぼ中央に建築用被覆シート2の流れ方向(MD)と平行に視認可能な透明部分3が設けられている。図1(D)は、図1(A)と視認可能な透明部分3の配置において共通するが、視認可能な透明部分3が断続して設けられている点で相違する。
以上、図1(A)〜(G)を参照して建築用被覆シートに設けられる視認可能な透明部分の概要を示したが、本発明はこれらの例示により制約されるものでないことは言うまでもない。
【0019】
図2(A)〜(E)は、図1(A)〜(G)で説明した視認可能な透明部分3の模式拡大図である。これらの図において斜線を付した領域が透明化セグメント4である。図2(A)では視認可能な透明部分3は一つの透明化セグメント4により形成されている。また図2(B)〜(E)では視認可能な透明部分3は透明化セグメント4が密集することによって形成されている。透明化セグメント4は、前記した(イ)〜(ニ)のような手段により建築用被覆シート2が部分的に透明化されたものである。なお透明化セグメント4はJIS K7361−1に準じて測定される全光線透過率の値が70%を上回ることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によって提供される建築用被覆シートには被覆対象物が視認可能な透明部分が設けられている。このため本発明の建築用被覆シートは、施工時、タッカーあるいは釘打ちする場所を視認しやすく、施工性が良好であるという特長を有する。このような本発明の建築用被覆シートは建築分野において有用に用いられるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 建築用被覆シート
2 被覆対象物が視認不可能な建築用被覆シート
3 視認可能な透明部分
4 透明化セグメント
図1
図2