(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-113889(P2016-113889A)
(43)【公開日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】コンクリートポール用筒形キャップ及びその製造方法、キャップ付きコンクリートポール及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20160527BHJP
【FI】
E02D27/42 B
E02D27/42 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-243084(P2015-243084)
(22)【出願日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-251439(P2014-251439)
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390026103
【氏名又は名称】大日コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】中川 真矢
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA35
(57)【要約】
【課題】下方コンクリートポールの先端部にコンクリートポール用筒形キャップを取り付けてポールの作用長を拡張するキャップ付きコンクリートポールをコストを低く抑えつつ、必要な剛性を確保した状態で提供する。
【解決手段】本発明のキャップ付きコンクリートポール(1)は、所定長さの下方コンクリートポール(2)と、組立て時に下方コンクリートポール(2)の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長を拡張する所定長さのコンクリートポール用筒形キャップ(3)と、を備え、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)が、下方コンクリートポール(2)に嵌合接続される下方鋼管部(6)と、上方筒形コンクリート部(7)と、が互いに接続固定されることによって構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの下方コンクリートポール(2)と、組立て時に該下方コンクリートポール(2)の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長を拡張する所定長さのコンクリートポール用筒形キャップ(3)とを備える、キャップ付きコンクリートポール(1)において、
前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)は、前記下方コンクリートポール(2)に嵌合接続される下方鋼管部(6)と、上方筒形コンクリート部(7)と、が互いに接続固定されてなることを特徴とする、キャップ付きコンクリートポール。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ付きコンクリートポールにおいて、
前記下方鋼管部(6)は、下方コンクリートポール(2)に対して嵌合装着される嵌合部(6a)と、前記上方筒形コンクリート部(7)に埋設される鉄筋(8)を取付けられる鉄筋取付け部(9)とを具備し、
前記上方筒形コンクリート部(7)は、前記鉄筋(8)と、該鉄筋(8)の周囲にモールド成形されたコンクリート部(7a)と、を具備することを特徴とする、キャップ付きコンクリートポール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャップ付きコンクリートポールにおいて、
前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記下方鋼管部(6)は、肉厚(t1)が4〜8mm、好ましくは6mmの鋼管材料によって形成され、且つ前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記筒形コンクリート部(7)は、肉厚(t2)が35〜70mmのコンクリート材料によって形成されていることを特徴とする、キャップ付きコンクリートポール。
【請求項4】
所定長さの下方コンクリートポール(2)の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長を拡張する所定長さのコンクリートポール用筒形キャップ(3)において、
前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)は、前記下方コンクリートポール(2)に嵌合接続される下方鋼管部(6)と、上方筒形コンクリート部(7)とが、互いに接続固定されてなることを特徴とする、コンクリートポール用筒形キャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のコンクリートポール用筒形キャップ(3)において、
前記下方鋼管部(6)は、下方コンクリートポール(2)に対して嵌合装着される嵌合部(6a)と、前記上方筒形コンクリート部(7)に埋設される鉄筋(8)を取付けられる鉄筋取付け部(9)と、を具備し、
前記上方筒形コンクリート部(7)は、前記鉄筋(8)と、該鉄筋(8)の周囲にモールド成形されたコンクリート部(7a)とを具備することを特徴とする、コンクリートポール用筒形キャップ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のコンクリートポール用筒形キャップ(3)において、
前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記下方鋼管部(6)は、肉厚(t1)が4〜8mm、好ましくは6mmの鋼管材料によって形成され、且つ前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記上方筒形コンクリート部(7)は、肉厚(t2)が35〜70mmのコンクリート材料によって形成されていることを特徴とする、コンクリートポール用筒形キャップ。
【請求項7】
コンクリートポール用筒形キャップ(3)の製造方法において、
下方鋼管部(6)の鉄筋取付け部(9)に複数の鉄筋(8)を固着する工程と、
前記複数の鉄筋(8)の周囲にコンクリート部(7a)をモールド成形して上方筒形コンクリート部(7)を形成する工程と、を備えることを特徴とする、コンクリートポール用筒形キャップの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のコンクリートポール用筒形キャップの製造方法において、
前記下方鋼管部(6)は、肉厚(t1)が4〜8mm、好ましくは6mmの鋼管材料によって形成され、且つ前記上方筒形コンクリート部(7)は、肉厚(t2)が35〜70mmの鉄筋コンクリート材料によって形成されていることを特徴とする、コンクリートポール用筒形キャップの製造方法。
【請求項9】
所定長さの下方コンクリートポール(2)を地中に埋設する工程と、
コンクリートポール用筒形キャップ(3)の下方鋼管部(6)を前記下方コンクリートポール(2)に上端部に嵌合させて、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)及び下方コンクリートポール(2)を接続してキャップ付きコンクリートポール(1)を得る工程と、を備えることを特徴とする、キャップ付きコンクリートポールの取付方法。
【請求項10】
請求項9に記載のキャップ付きコンクリートポールの取付方法において、
前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記下方鋼管部(6)は、肉厚(t1)が4〜8mm、好ましくは6mmの鋼管材料によって形成され、且つ前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記上方筒形コンクリート部(7)は、肉厚(t2)が35〜70mmのコンクリート材料によって形成されていることを特徴とする、キャップ付きコンクリートポールの取付方法。
【請求項11】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のキャップ付きコンクリートポール(1)において、
前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の下方鋼管部(6)は上方から下方へ向けて拡径される内周テーパ部を有し、且つ前記下方コンクリートポール(2)の上端部は、前記内周テーパ部と同一テーパ値の外周テーパ部を有し、前記鋼管部(6)の内周テーパ部が前記下方コンクリートポール(2)の外周テーパ部に密着的に嵌合される、キャップ付きコンクリートポール。
【請求項12】
請求項4乃至6の何れか1項に記載のコンクリートポール用筒形キャップ(3)において、
前記筒形キャップ(3)の下方鋼管部(6)は上方から下方へ向けて拡径される内周テーパ部を有し、且つ前記下方コンクリートポール(2)の上端部は、前記内周テーパ部と同一テーパ値の外周テーパ部を有し、前記鋼管部(6)の内周テーパ部が前記下方コンクリートポール(2)の外周テーパ部に嵌合される、コンクリートポール用筒形キャップ。
【請求項13】
請求項7又は8に記載の筒形キャップ(3)の製造方法において、
前記筒形キャップ(3)の鋼管部(6)は内周テーパ部を有し、該内周テーパ部は、上方から下方へ向けて拡径され且つ該鋼管部(6)が取付けられる下方コンクリートポール(2)の上端部のテーパと同一テーパ値を有する、コンクリートポール用筒形キャップの製造方法。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の筒形キャップ(3)の取付方法において、
前記筒形キャップ(3)の鋼管部(6)は内周テーパ部を有し、該内周テーパ部は、上方から下方へ向けて拡径され且つ該鋼管部(6)が取付けられる下方コンクリートポール(2)の上端部のテーパと同一テーパ値を有する、コンクリートポール用筒形キャップの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートポールの先端部に、コンクリート管と接合用鋼管とからなる筒形キャップを嵌合させることでコンクリートポールの実質的な作用長を拡張するようにしたコンクリートポール用筒形キャップ及びその製造方法、当該コンクリートポール用筒形キャップを備えたキャップ付きコンクリートポール及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートポールの主な使用用途は、電力設備から送配電される電力を搬送する電力線や電話設備から送配信される信号を搬送する電話線を空中に架設した状態で支持する架線支持柱である。
【0003】
そして、電力線の架線に使用されるコンクリートポールの長さは14m〜17mにもなり、このような長尺なコンクリートポールを荷物として運搬するには、道路法及び道路交通法で定める法規制を遵守することが求められている。
【0004】
具体的には、全長12mを超える車両は特殊車両扱いとなり、道路管理者に通行許可の申請を行う旨が道路法に定められている。又、車両からのはみ出し長さが、車両長さの10%を超える荷物を運搬する場合は、警察に通行許可の申請をする旨が道路交通法に定められている。
【0005】
更に、道路管理者が荷物の長さや走行する道路環境等により、誘導車の設置や夜間走行の通行条件を満たすことを前提に上記通行許可の申請を認可する旨が道路法に規定されている。
【0006】
従って、道路法の規定での車両長さは荷物も含めた長さが対象となるため、12mまでの長さのコンクリートポールであれば上記法規制に触れることなくトラックで目的地に運搬することが可能になる。又、12mを超える長さのコンクリートポールを運搬する場合には、上記法規制に従った通行許可の申請や誘導車の設置が必要になってくるため、申請に手間がかかり、審査期間(2週間〜2ヶ月)による工期の遅れや申請及び誘導車の確保等にも費用がかかってくる。
【0007】
一方、上下2本のコンクリートポールをフランジ結合式継手部を利用して連結する分割式コンクリートポールとして下記の「特許文献1」に示すものが提案されている。このような分割式コンクリートポールを使用すれば上述した運搬時の通行許可の申請や誘導車の設置の義務は負わないが、1本もののコンクリートポールを使用する場合に比べてフランジ結合式継手部のコストが高いため全体の製品コストが2倍以上かかってしまうという問題点がある。
【0008】
勿論、分割式コンクリートポールと比較して上下のポール全体を互いに材料の異なる鋼材で製造した分割式鋼管柱は、必要強度を確保することは可能であるが、1本もののコンクリートポールの場合に比べてコストが4〜5倍かかってしまうという問題点がある。
そこで他の従来の分割式コンクリートポールとして、下記の「特許文献2」に示す如く、コンクリートポールの上端に鋼管からなるキャップを嵌合させて連結することにより連結部分の簡易化でコストダウンを図ったものがあり、これによれば、全長12mの車両を使用すれば運搬時の通行許可や誘導車の設置の義務を回避することが可能であり、且つ製品コストもフランジ結合式コンクリートポールよりも安価になる。
この場合、鋼管キャップ上端に曲げモーメントが作用したときに、下方のコンクリートポールは鋼管との嵌め合い長さ部分(鋼管キャップ長さの数分の1程度の長さ)のみでこの曲げモーメントを受け止めるため、上記嵌め合い長さが比較的短いことに起因してコンクリートポールの上端において上記曲げモーメントにより過度の圧縮力及び引張力を同時に生じて、コンクリートポールに埋設した複数の鉄筋がコンクリートポール上端から幾分抜け出てしまうと言うおそれがあった。
従って、上記「特許文献2」では、これを防止するために、コンクリートポールの上端面において上記複数の鉄筋の上端部を固着した定着板(「特許文献」2中の
図3中、定着板4参照)を設けて、上記鉄筋の抜け出しを防止している。
しかしながら、この従来例によれば、キャップ全体が鋼製であるため、単なるコンクリート製のキャップを使用することを仮定したときこれに比して2倍程度のコストを要するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−13951号公報
【特許文献2】特開2014−84614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、コンクリートポール用筒形キャップ(3)が、下方鋼管部(6)と上方筒形コンクリート部(7)とを互いに接続固定した構成を有することにより、分割式コンクリートポール特有の効果であるポール運搬時の通行許可や誘導車の設置の義務を回避すること。またフランジ結合式継手により上下のコンクリートポールを接合するものや、筒形キャップ全体が鋼製のものに比してコストを大幅に低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のキャップ付きコンクリートポールは、内部に夫々長手方向に延びる複数の鉄筋(5)が埋設された所定長さの下方コンクリートポール(2)と、組立て時に該下方コンクリートポール(2)の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長を拡張する所定長さのコンクリートポール用筒形キャップ(3)とを備える、キャップ付きコンクリートポール(1)において、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)は、前記下方コンクリートポール(2)に嵌合接続される下方鋼管部(6)と、上方筒形コンクリート部(7)とが、互いに接続固定されてなることを特徴とする。
【0012】
又、本発明のコンクリートポール用筒形キャップは、所定長さの下方コンクリートポール(2)の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長を拡張する所定長さのコンクリートポール用筒形キャップ(3)において、前記筒形キャップ(3)は、前記下方コンクリートポール(2)に嵌合接続される下方鋼管部(6)と、上方筒形コンクリート部(7)とが、互いに接続固定されてなることを特徴とする。
【0013】
又、本発明のコンクリートポール用筒形キャップ(3)の製造方法は、その下方鋼管部(6)の鉄筋取付け部(9)に複数の鉄筋(8)を固着する工程と、前記複数の鉄筋(8)の周囲にコンクリート部(7a)をモールド成形して上方筒形コンクリート部(7)を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
又、本発明のキャップ付きコンクリートポールの取付方法は、所定長さの下方コンクリートポール(2)を地中に埋設する工程と、コンクリートポール用筒形キャップ(3)の下方鋼管部(6)を前記下方コンクリートポール(2)の上端部に嵌合させて、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)を下方コンクリートポール(2)に嵌合接続してキャップ付きコンクリートポール(1)を得る工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記下方鋼管部(6)は、下方コンクリートポール(2)に対して嵌合装着される嵌合部(6a)と、前記上方筒形コンクリート部(7)に埋設される鉄筋(8)を取り付けられる鉄筋取付け部(9)と、を具備し、前記上方筒形コンクリート部(7)は、前記鉄筋(8)と、該鉄筋(8)の周囲にモールド成形されたコンクリート部(7a)と、を具備することが望ましい。
【0016】
又、好ましくは、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記下方鋼管部(6)は、肉厚(t1)が4〜8mm、好ましくは6mmの鋼管材料によって形成され、且つ前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の前記上方筒形コンクリート部(7)は、肉厚(t2)が35〜70mmのコンクリート材料によって形成されていることが望ましい。
前記下方鋼管部(6)および前記上方コンクリート部(7)、下方コンクリートポール(2)は電線やトランスなどの固定荷重や積雪荷重、台風等の暴風による負荷される風荷重あるいは地震発生時に揺れの慣性力を外力とした地震力などの荷重やせん断力に耐えうるように外形と肉厚を設計されている。
また、前記キャップ付きコンクリートポール(1)において、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)の下方鋼管部(6)は上方から下方へ向けて拡径される内周テーパ部を有し、且つ前記下方コンクリートポール(2)の上端部は、前記内周テーパ部と同一テーパ値の外周テーパ部を有し、前記鋼管部(6)の内周テーパ部が前記下方コンクリートポール(2)の外周テーパ部に密着的に嵌合される。
【0017】
また、前記コンクリートポール用筒形キャップ(3)において、前記筒形キャップ(3)の下方鋼管部(6)は上方から下方へ向けて拡径される内周テーパ部を有し、且つ前記下方コンクリートポール(2)の上端部は、前記内周テーパ部と同一テーパ値の外周テーパ部を有し、前記鋼管部(6)の内周テーパ部が前記下方コンクリートポール(2)の外周テーパ部に嵌合される。
また、前記筒形キャップ(3)の鋼管部(6)は内周テーパ部を有し、該内周テーパ部は、上方から下方へ向けて拡径され且つ該鋼管部(6)が取付けられる下方コンクリートポール(2)の上端部のテーパと同一テーパ値を有する。
また、前記筒形キャップ(3)の鋼管部(6)は内周テーパ部を有し、該内周テーパ部は、上方から下方へ向けて拡径され且つ該鋼管部(6)が取付けられる下方コンクリートポール(2)の上端部のテーパと同一テーパ値を有する。
【発明の効果】
【0018】
(1)本発明によれば、所定長さの下方コンクリートポール2と、組立て時に該下方コンクリートポール2の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長を拡張する所定長さのコンクリートポール用筒形キャップ3と、が備えられており、前記コンクリートポール用筒形キャップ3が、前記下方コンクリートポール2に嵌合接続される下方鋼管部6と、上方筒形コンクリート部7と、が互いに接続固定されている。
【0019】
これにより、分割式コンクリートポール特有の効果であるポール運搬時の通行許可や誘導車の設置の義務を回避し得る。又、コンクリートポール用筒形キャップ3の接続部分(継手部分)のみが鋼製で残りの部分がコンクリート製であるため、フランジ結合式継手により上下のコンクリートポールを接合するものや、筒形キャップ全体が鋼製のものに比してコストを大幅に低減し得る効果が得られる。
(2)又、前記下方鋼管部6を、下方コンクリートポール2に対して嵌合装着される嵌合部6aと、前記上方筒形コンクリート部7に埋設される鉄筋8が取り付けられる鉄筋取付け部9と、を具備することによって構成し、前記上方筒形コンクリート部7を、前記鉄筋8と、該鉄筋8の周囲にモールド成形されたコンクリート部7aと、を具備することによって構成した場合には、コストを低く抑えつつ、必要な剛性を確保することが可能になる。
(3)又、前記コンクリートポール用筒形キャップ3の下方鋼管部6を肉厚t1が4〜8mm、好ましくは6mmの鋼管材料によって形成し、且つ前記コンクリートポール用筒形キャップ3の上方筒形コンクリート部7を肉厚t2が35〜70mmによって形成した場合には、重量が必要以上に重くならず、運搬や設置が容易で、必要な剛性が得られるコンクリートポール用筒形キャップ3が得られるようになる。
(4)施工においてもフランジ接合式分割柱と比較して、ボルト接合などの作業を必要とせず、嵌合するだけで作業は完了するので、大幅な施工時間の短縮が出来る。
(5)嵌合部分の上下柱の密着度も、特許文献2のような上部柱全体が鋼管である上柱と比較してコンクリート部分が大部分を占めるので重量も大きくなり、テーパ形状の密着がより促進されることになり、強固な接合が可能になる。
(6)また、上下のポールが互いに材料の異なる鋼材で作成した分割式交換柱に比しても、本発明では、下方ポールはコンクリートポールで且つ上方ポールも接合部以外はコンクリートポールであるから、製造コストを大幅に低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図で、キャップ付きコンクリートポールを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態を示す図で、コンクリートポール用筒形キャップの製造方法を構成する各工程を段階的に示す側断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態を示す図で、完成したコンクリートポール用筒形キャップを一部破断して示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態を示す図で、下方鋼管部を示す側面図(a)と平面図(b)である。
【
図5】本発明の実施の形態を示す図で、キャップ付きコンクリートポールの取付方法を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態を示す図で、完成したキャップ付きコンクリートポールを示す側面図(a)と、(a)中の矢視b部の拡大図(b)である。
【
図7】本発明の実施の形態を示す図で、筒形キャップと下方コンクリートポールとを嵌合接続した部分をテーパ値を拡大して示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るキャップ付きコンクリートポール1の構造及びその取付方法と、該キャップ付きコンクリートポール1に使用されるコンクリートポール用筒形キャップ3の構造及びその製造方法について図示の実施の形態を例にとって説明する。
(1)キャップ付きコンクリートポールの構造
最初に、
図1及び
図5、6に基づいて本実施の形態に係るキャップ付きコンクリートポール1の構造について説明する。
【0022】
本発明のキャップ付きコンクリートポール1は、電力線や電話線等の架線支持柱として利用できる他、ケーブルテレビ・有線放送・PHSアンテナ用の通信線、無線LANケーブル、水道やガスメーターの監視線、交通信号の制御線、道路交通情報通信システム(VICS(登録商標))の情報線や地域気象観測システム(AMeDAS)の情報線等、種々の架線支持柱として利用可能である。
【0023】
本発明のキャップ付きコンクリートポール1は、
図1及び
図5、6に示す如く、内部に夫々長手方向Zに延びる複数の鉄筋5が埋設された所定長さLの下方コンクリートポール2と、組立て時に該下方コンクリートポール2の先端部に嵌合されてコンクリートポールの作用長Mを拡張する所定長さRのコンクリートポール用筒形キャップ3と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0024】
そして、前記コンクリートポール用筒形キャップ3を備えたことが本発明の特徴になっており、該コンクリートポール用筒形キャップ3は、前記下方コンクリートポール2に嵌合接続される下方鋼管部6と、上方筒形コンクリート部7と、が互いに接続固定されることによって構成されている。
【0025】
下方コンクリートポール2は、例えば上端面(末口)20と下端面(元口)21が解放されているコンクリート製の長尺な円管状の部材によって構成されている。そして、該下方コンクリートポール2の側胴部22の内部には、複数本(例えば8本)の鉄筋5が同一円周上に例えば等間隔で埋設されていて曲げ性能の向上が図られている。
【0026】
尚、下方コンクリートポール2の上端面(末口)20の外径D1は、下方コンクリートポール2の下端面(元口)21の外径D0よりも小さくなるように設定されている。具体的には、本実施の形態では、上端面(末口)20の外径D1が約297mm、下端面(元口)21の外径D0が約403mm、ポールの長さLが約8mの、下端面(元口)21から上端面(末口)20にかけて緩やかな傾斜を有する管形状の下方コンクリートポール2が使用されている。
【0027】
コンクリートポール用筒形キャップ3は、前述したように下方鋼管部6と上方筒形コンクリート部7とが互いに接続固定された部材であり、コンクリートポール用筒形キャップ3の上端面(末口)30の外径D2が約203mm、下端面(元口)31の外径D3が約316mm、下端面(元口)31の内径H3が約304mm、キャップ全体の長さRが約8.5mの、下端面31から上端面30にかけて緩やかな傾斜を有する管形状の鋼管とコンクリートポールを組み合わせた複合部材である。
【0028】
尚、前記下方コンクリートポール2とコンクリートポール用筒形キャップ3の嵌合長さNは例えば約500mmであり、下方コンクリートポール2の先端部にコンクリートポール用筒形キャップ3を嵌合させたキャップ付きコンクリートポール1の作用長Mは約16mである。
【0029】
尚、
図7(テーパ値を拡大して示す)に示す如く、コンクリートポール用筒形キャップ3の下方鋼管部6には、内周テーパ部6bが設けられ、また下方コンクリートポール2の上端部には外周テーパ部2aが設けられ、前記内周テーパ部6bと外周テーパ部2aとは略同一のテーパ値を有する。このため、後述する如く、筒形キャップ3を下方コンクリートポール2の上端部に嵌合させたとき、両テーパ部6b及び2aは密着的に強固に嵌合する。なお、テーパ値は、一例として、1/75である。
(2)コンクリートポール用筒形キャップの構造
次に、
図3乃至
図5に基づいて本実施の形態に係るコンクリートポール用筒形キャップ3の構造について更に詳しく説明する。
【0030】
本発明のコンクリートポール用筒形キャップ3は、前述のように下方鋼管部6と、上方筒形コンクリート部7と、を接続固定することによって基本的に構成されている。
【0031】
下方鋼管部6は、前記下方コンクリートポール2に対して嵌合装着される嵌合部6aと、前記上方筒形コンクリート部7に埋設される鉄筋8を取り付けられる鉄筋取付け部9(
図4参照)と、を具備しており、上方筒形コンクリート部7は、鉄筋8と該鉄筋8の周囲にモールド成形されたコンクリート部7aと、を具備することによって構成されている。
【0032】
具体的には、本実施の形態では
図4に示す如く、上端面(末口)60の外径D4が約306mmで内径H4が約294mm、下端面(元口)61の外径D5が約316mmで内径H5が約304mm、長さR1が約800mmのテーパ円管形状の側胴部62と、該側胴部62内の空間を所定深さの位置で仕切る円環状の鉄筋取付け部9と、を具備することによって下方鋼管部6は構成されている。
【0033】
そして、前記側胴部62の肉厚t1は、例えば4〜8mm、好ましくは6mmの、上端面(末口)60と下端面(元口)61が共に開放された鋼管材料によって形成されている。又、鉄筋取付け部9の板厚Tは例えば9mmであり、該鉄筋取付け部9の取付位置は、前記側胴部62の上端面(末口)60からの深さE1が例えば100mm、前記側胴部62の下端面(元口)61からの深さE2が例えば691mmの位置に設定されている。
【0034】
又、鉄筋取付け部9には、
図4(b)に示す如く、例えば18個の穴部9aが同一円周上に図示のような配置で設けられている。
【0035】
尚、前記穴部9aには、上方筒形コンクリート部7の下端面(元口)71から突出する鉄筋8の先端部が挿嵌され、ナット10を使用して該鉄筋8は、鉄筋取付け部9を介して下方鋼管部6と一体に構成されている。(
図2、
図3、
図6(b)参照)
上方筒形コンクリート部7は、例えば上端面(末口)70と下端面(元口)71が開放されているコンクリート製の長尺な円管状の部材によって構成されている。そして、該上方筒形コンクリート部7の側胴部72の内部には、前記鉄筋取付け部9の穴部9aに対応した例えば18本の鉄筋8が埋設されていて曲げ性能の向上が図られている。
【0036】
尚、上方筒形コンクリート部7の上端面(末口)70の外径D2は、上方筒形コンクリート部7の下端面(元口)71の外径D6よりも小さくなるように設定されている。具体的には、本実施の形態では、上端面(末口)70の外径D2が約203mm、下端面(元口)71の外径D6が約294mm、ポールの長さR2が約7.8mの、下端面(元口)71から上端面(末口)70にかけて緩やかな傾斜を有するテーパ管形状のコンクリートポールが使用されている。
【0037】
そして、前記上方筒形コンクリート部7の側胴部72の肉厚t2(
図3、
図6(b)参照)は、例えば35〜70mmの上端面(末口)70と下端面(元口)71が共に開放されたコンクリート材料によって形成されている。尚、このようにして構成される下方鋼管部6と上方筒形コンクリート部7を鉄筋とコンクリートにより連結させたコンクリートポール用筒形キャップ3の全体の長さRは、前述したように例えば約8.5mに設定されている。
(3)コンクリートポール用筒形キャップ3の製造方法
本発明のコンクリートポール用筒形キャップ3の製造方法は、
図2及び
図3に示す如く、下方鋼管部6の鉄筋取付け部9に複数の鉄筋8を固着する工程と、前記複数の鉄筋8の周囲にコンクリート部7aをモールド成形して上方筒形コンクリート部7を形成する工程と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0038】
具体的には、
図2(a)に示す如く、鉄筋8をカゴ状に組んだ鉄筋カゴ11を製作し、該鉄筋カゴ11を下方鋼管部6の上端面(末口)60側の開放部から挿し込む。次に、
図2(b)に示す如く、鉄筋カゴ11の長手方向Zに延びている鉄筋8の元口側の端部を下方鋼管部6の鉄筋取付け部9に形成されている穴部9a(
図4参照)に挿し込んでナット10で固定する。
【0039】
尚、前記
図2(a)(b)に示す作業は鉄筋カゴ11と下方鋼管部6を水平状態にして行う。続いて、
図2(c)に示すように前記鉄筋カゴ11を覆うように型枠12を設置し、該型枠12を水平状態で型枠12内にコンクリート原料を流し込んで行く。そして、型枠12内に充填されたコンクリート原料は、前記型枠12を高速回転させることによって発生する遠心力により型枠12の内周面に張り付き、
図3に示す如く、筒状の上方筒形コンクリート部7にモールド成形される。
(4)キャップ付きコンクリートポール1の取付方法
本発明のキャップ付きコンクリートポールの取付方法は、
図5及び
図6に示す如く、前記下方コンクリートポール2を地中Gに埋設する工程と、前記コンクリートポール用筒形キャップ3の下方鋼管部6を前記下方コンクリートポール2の上端部に嵌合させて、コンクリートポール用筒形キャップ3と下方コンクリートポール2を接続してキャップ付きコンクリートポール1を得る工程と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0040】
具体的には、
図5に示す如く、下方コンクリートポール2を所定深さ地中Gに埋設して固定する。次に、
図5及び
図6に示す如く、下方コンクリートポール2の上端部にコンクリートポール用筒形キャップ3を被せるようにして取り付けることによってキャップ付きコンクリートポール1が完成する。
【0041】
また、このようにして完成したキャップ付きコンクリートポール1では、
図6(b)及び
図7に示す如く、相対的に、下方コンクリートポール2の上端部の外周テーパ部2aが下方鋼管部6の下端面(元口)61から所定深さ下方鋼管部6の内周テーパ部6bの内部空間に入り込んで密着的に嵌合しており、当該入り込んだ部分が下方コンクリートポール2とコンクリートポール用筒形キャップ3の嵌合部6aになって、その嵌合長さNは前述したように例えば約500mmに設定されている。
【0042】
そして、このようにして完成したキャップ付きコンクリートポール1の作用長Mは約16mになり、電力線の架線等に使用できる長尺なコンクリートポールが得られる。このとき、筒形キャップ3及び下方コンクリートポール2の取付方法としては、単に前者を後者に対して両テーパ部6b及び2aが嵌合するように取付けるだけで良く作業が極めて簡単であり、またこの場合、筒形ヤップ3は、特許文献2のような上部柱全体が鋼管である上柱と比較してコンクリート部分が大部分を占めるので重量が大きくなり、テーパ形状の密着がより促進されるので、上記嵌合は密着的且つ堅固に行われる。かくして、筒形キャップ3及び下方コンクリートポール2は、あたかも一体物の如く機能するため、曲げ性能は大幅に向上する。また、筒形キャップ3及び下方コンクリートポール2を相互に固定するためのフランジ結合式に比してボルト取付け作業等も不要であるから、取付コスト及び取付時間を大幅に低減し得る。
又、当該キャップ付きコンクリートポール1の運搬時には、長さLが約8mの下方コンクリートポール2と長さRが約8.5mのコンクリートポール用筒形キャップ3を別々にして運搬できるから、運搬時の通行許可や誘導者の設置義務を回避することが可能になる。
【0043】
又、コンクリートポール用筒形キャップ3の接続部分に存する下方鋼管部6のみが鋼製で残りの部分がコンクリート製であるため、コストを低く抑えつつ、必要な剛性を確保し得るキャップ付きコンクリートポール1が提供できるようになる。
【0044】
以上が本発明の基本的な実施の形態であるが、本発明のコンクリートポール用筒形キャップ3及びその製造方法、キャップ付きコンクリートポール1及びその取付方法は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略、あるいは当業者において周知、慣用の技術を追加することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、コンクリートポールの先端部に筒形キャップを取り付けることによって作用長を拡張するようにしたキャップ付きコンクリートポールの製造、施工分野等で利用でき、特にコストを低く抑えつつ、必要な剛性を確保し得るキャップ付きコンクリートポールを提供したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0046】
1 キャップ付きコンクリートポール
2 下方コンクリートポール
2a 外周テーパ部
3 コンクリートポール用筒形キャップ
5 鉄筋(下方コンクリートポール用)
6 下方鋼管部
6a 嵌合部
6b 内周テーパ部
7 上方筒形コンクリート部
7a コンクリート部
8 鉄筋(上方筒形コンクリート部用)
9 鉄筋取付け部
9a 穴部
10 ナット
11 鉄筋カゴ
12 型枠
20 上端面(末口)
21 下端面(元口)
22 側胴部
30 上端面(末口)
31 下端面(元口)
60 上端面(末口)
61 下端面(元口)
62 側胴部
70 上端面(末口)
71 下端面(元口)
72 側胴部
Z 長手方向
L 長さ(下方コンクリートポール)
M 作用長
N 嵌合長さ
R 長さ(コンクリートポール用筒形キャップ)
D 外径
H 内径
E 深さ
t 肉厚
T 板厚
G 地中