【解決手段】非加熱型深部温プローブは、体表面側温度センサ13、このセンサの体表面逆側に対向して既知熱抵抗の断熱材11を介して配置された外気側温度センサ15、外気側の外部熱抵抗条件を変更する外部熱抵抗変更手段2を備える。初期設定中の各センサ温度測定値が一定になった第1の時点の温度測定値の組を取得し、初期設定中に、外部熱抵抗変更手段2を用いて第1の時点とは外部熱抵抗条件を異ならせて各センサ温度測定値が一定になった第2の時点の温度測定値の組を取得し、第1・第2の時点の温度測定値の組を用いて、身体の皮下組織の熱抵抗を算出し、任意の時点の各センサの温度測定値、身体の皮下組織の熱抵抗を用い、任意の時点の深部体温を算出する。
前記初期設定値算出手段による前記身体の皮下組織の熱抵抗算出後、所定時間経過後に、前記初期設定値算出手段による前記身体の皮下組織の熱抵抗算出を再度行うよう促す初期設定要求メッセージを表示する手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の深部体温測定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の深部体温計では、人体への貼り付け直後の過渡状態前後で検出された温度値の組を利用して初期設定し、この初期設定に基づき深部体温を測定するものであるため、貼り付け直後から長時間経過した後は、深部体温の測定値に誤差が大きくなっていた。
また、従来の深部体温計では、人体に装着する深部温プローブからの測定データを、ケーブルで連結された深部体温表示器に有線で送信し、表示、記録等する。従って、深部温プローブが移動できる範囲は、深部体温表示器からケーブルで接続できる範囲に限定され、深部体温計の使用可能範囲が、病室等に限定されていた。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、連続して長時間深部温プローブを装着した状態でも正確な深部体温を測定可能な深部体温測定システム及び深部体温測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、深部温プローブを装着後体表温度が一定になった定常期においても測定誤差が小さい深部体温測定システム及び深部体温測定方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、深部温プローブから深部体温データを無線でコンピュータ等に送信してデータ管理可能な深部体温測定システム及び深部体温測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の深部体温測定システムによれば、非加熱型の深部温プローブを用いて身体の深部体温を測定する深部体温測定システムであって、前記深部温プローブは、前記身体の体表面側に配置された体表面側温度センサと、該体表面側温度センサよりも体表面逆側に対向して、既知の熱抵抗を有する断熱材を介して配置された外気側温度センサと、該外気側温度センサより外気側の外部熱抵抗条件を変更するための外部熱抵抗変更手段と、を備え、前記体表面側及び前記外気側温度センサからそれぞれ得られる温度測定値を用いて前記深部体温を算出する算出手段を備え、該算出手段は、初期設定中において前記体表面側及び前記外気側温度センサのそれぞれの前記温度測定値が一定になった第1の時点における、前記体表面側及び前記外気側温度センサの温度測定値を、第1の時点の温度測定値の組として取得する第1測定値取得手段と、前記初期設定中の前記第1の時点より前又は後に、前記外部熱抵抗変更手段を用いて前記第1の時点とは前記外部熱抵抗条件を異ならせ、前記体表面側及び前記外気側温度センサのそれぞれの前記温度測定値が一定になった第2の時点における前記体表面側及び前記外気側温度センサの温度測定値を、第2の時点の温度測定値の組として取得する第2測定値取得手段と、前記第1及び前記第2の時点の温度測定値の組を用いて、前記身体の皮下組織の熱抵抗を算出する初期設定値算出手段と、任意の時点における前記体表面側及び前記外気側温度センサのそれぞれの温度測定値と、前記身体の皮下組織の熱抵抗とを用いて、前記任意の時点における前記深部体温を算出する深部体温算出手段と、を備えること、により解決される。
【0011】
また、前記課題は、本発明の深部体温測定方法によれば、非加熱型の深部温プローブを用いて身体の深部体温を測定する深部体温測定方法であって、前記深部温プローブは、前記身体の体表面側に配置された体表面側温度センサと、該体表面側温度センサよりも体表面逆側に対向して、既知の熱抵抗を有する断熱材を介して配置された外気側温度センサと、該外気側温度センサより外気側の外部熱抵抗条件を変更するための外部熱抵抗変更手段と、を備え、初期設定中において前記体表面側及び前記外気側温度センサのそれぞれの前記温度測定値が一定になった第1の時点における、前記体表面側及び前記外気側温度センサの温度測定値を、第1の時点の温度測定値の組として取得する第1測定値取得手順と、前記初期設定中の前記第1の時点より前又は後に、前記外部熱抵抗変更手段を用いて前記第1の時点とは前記外部熱抵抗条件を異ならせ、前記体表面側及び前記外気側温度センサのそれぞれの前記温度測定値が一定になった第2の時点における前記体表面側及び前記外気側温度センサの温度測定値を、第2の時点の温度測定値の組として取得する第2測定値取得手順と、前記第1及び前記第2の時点の温度測定値の組を用いて、前記身体の皮下組織の熱抵抗を算出する初期設定値算出手順と、任意の時点における前記体表面側及び前記外気側温度センサのそれぞれの温度測定値と、前記身体の皮下組織の熱抵抗とを用いて、前記任意の時点における前記深部体温を算出する深部体温算出手順と、を備えること、により解決される。
【0012】
このように、断熱材の熱抵抗が既知であるという前提において、体表面側及び外気側温度センサを、異なる外部熱抵抗条件とした異なる時点におけるそれぞれの温度測定値を取得するので、初期設定値取得手段で、個体によって異なる身体の皮下組織の熱抵抗を初期設定値として算出することが可能となり、その結果、体表面側及び外気側温度センサの測定値を用いて、深部体温を算出することが可能となる。
深部体温の算出用の初期情報として必要とされる身体の皮下組織の熱抵抗値を取得するためには、体表面側及び外気側温度センサの測定値の組を、異なる外部熱抵抗条件について取得する必要がある。本発明では、体表面側及び外気側温度センサの測定値の組を、異なる時点で外部熱抵抗条件を異ならせることにより取得するため、従来の非加熱型の深部体温計のように、体表面側及び外気側温度センサの組自体を複数設置する必要がない。従って、一組の体表面側及び外気側温度センサだけで、皮下組織の熱抵抗値が取得可能となり、深部温プローブの小型化が可能となる。
【0013】
また、体表面側及び外気側温度センサの組数を減少できるため、温度センサ用の必要電力を削減でき、深部温プローブの省電力化と、搭載する電池の削減による更なる小型化、低コスト化が可能となる。
また、深部温プローブの小型化によって、絆創膏型の無線式深部温プローブの提供が可能となり、外部コンピュータから無線で深部温プローブの温度センサの測定値を取得して、外部コンピュータ側で深部体温を算出、管理する無線の深部体温測定システムの提供が可能となる。その結果、有線式深部温プローブから、有線で接続された表示器に測定データを送って深部体温を計算する従来の深部体温計では、表示器からの物理的距離が限定され、深部体温が測定可能な物理的範囲が病院内等に限定されていたが、本発明によれば、無線式深部温プローブの提供が可能であるため、医療機関外で、仕事や余暇の活動などの日常生活を通常通り送りながら深部体温を測定することも可能となる。また、従来の有線式の深部体温計では、一つの表示器に対して使用できる深部温プローブの数も限定されていたが、本発明によれば、無線式深部温プローブの提供が可能であるため、一つの制御用外部コンピュータに対して、多数の深部温プローブを用いることも可能となり、深部体温測定システムを低コストで提供可能となる。
【0014】
また、深部温プローブは、外部熱抵抗条件を変更するための外部熱抵抗変更手段を備え、初期設定中の第1の時点より前又は後に、熱抵抗変更手段を用いて第1の時点とは外部熱抵抗条件を異ならせた後、体表面側及び外気側温度センサのそれぞれの温度測定値が一定になった第2の時点における体表面側及び外気側温度センサの温度測定値を、第2の時点の温度測定値の組として取得するため、外部熱抵抗条件を、いつでも、能動的に変更することが可能となり、初期設定をいつでも行うことができる。従って、深部温プローブを体表面に装着したままの状態でも、必要に応じて適宜初期設定ができ、長期間の間欠的な測定でも、誤差の少ない深部体温の測定値を得ることができる。
その結果、深部温プローブを装着したまま、連続した長期間の深部体温の間欠的測定が可能となる。
また、深部温プローブは、非加熱式であるため、加熱式の深部体温計のような、ヒータが不要である。従って、ヒータを制御する温度制御機構を設ける必要がなく、小型化が可能である。
【0015】
このとき、前記外部熱抵抗変更手段は、前記外気側から前記深部温プローブを被覆する着脱可能なカバーからなり、前記第2測定値取得手段では、前記第2の時点において、前記カバーで前記外気側から前記深部温プローブが被覆されることにより、前記第1の時点と前記第2の時点における前記外部熱抵抗条件が異なっていてもよい。
このように構成しているため、カバーにより、簡単に外部熱抵抗条件を変更でき、簡易な構成の深部体温測定システムを構築できる。また、外部熱抵抗条件の変更による初期設定に、着脱可能なカバーを用いるため、いつでも初期設定を行うことができ、長期間にわたって、誤差の少ない正確な深部体温の測定値を得ることができる。
【0016】
このとき、前記初期設定算出手段による前記身体の皮下組織の熱抵抗算出後、所定時間経過後に、前記初期設定算出手段による前記身体の皮下組織の熱抵抗算出を再度行うよう促す初期設定要求メッセージを表示する手段を備えていてもよい。
このように構成しているため、ユーザは、初期設定が必要なタイミングを自動で知ることができ、長期間にわたる誤差の少ない正確な深部体温の測定が可能となる。
【0017】
このとき、前記深部温プローブと無線による情報送受信可能に接続されたコンピュータを備え、該コンピュータは、前記初期設定値取得手段及び前記深部体温算出手段を備えていてもよい。
このように構成しているため、物理的な制約がなくなり、深部体温の測定を、医療機関等の内部に限られず、行うことができる。その結果、日常生活を通常通り送りながら深部体温の測定を行うことも可能となる。更に、一つのコンピュータに、複数の被測定者の深部温プローブを対応させることも可能となり、深部体温測定のコストを低減させることができる。
【0018】
このとき、前記初期設定値算出手段は、前記第1の時点における前記体表面側温度センサの温度測定値Ts11及び前記外気側温度センサの温度測定値Ts21と、前記第2の時点における前記体表面側温度センサの温度測定値Ts12及び前記外気側温度センサの温度測定値Ts22と、前記断熱材の前記既知の熱抵抗値Rsとを、式
【0019】
【数1】
【0020】
【数2】
【0021】
に代入することにより、前記身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを算出してもよい。
このように、簡単な数式により、深部体温を算出可能である。
【0022】
このとき、前記深部体温算出手段は、前記任意の時点における前記体表面側温度センサの温度測定値Ts1n及び前記外気側温度センサの温度測定値Ts2nと、前記断熱材の前記既知の熱抵抗値Rsと、前記身体の皮下組織の熱抵抗値Rbとを、式
【0023】
【数3】
【0024】
に代入することにより、前記任意の時点における前記深部体温Tbnを算出してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、断熱材の熱抵抗が既知であるという前提において、体表面側及び外気側温度センサを、異なる外部熱抵抗条件とした異なる時点におけるそれぞれの温度測定値を取得するので、初期設定値取得手段で、個体によって異なる身体の皮下組織の熱抵抗を初期設定値として算出することが可能となり、その結果、体表面側及び外気側温度センサの測定値を用いて、深部体温を算出することが可能となる。
深部体温の算出用の初期情報として必要とされる身体の皮下組織の熱抵抗値を取得するためには、体表面側及び外気側温度センサの測定値の組を、異なる外部熱抵抗条件について取得する必要がある。本発明では、体表面側及び外気側温度センサの測定値の組を、異なる時点で外部熱抵抗条件を異ならせることにより取得するため、従来の非加熱型の深部体温計のように、体表面側及び外気側温度センサの組自体を複数設置する必要がない。従って、一組の体表面側及び外気側温度センサだけで、皮下組織の熱抵抗値が取得可能となり、深部温プローブの小型化が可能となる。
【0026】
また、深部温プローブは、外部熱抵抗条件を変更するための外部熱抵抗変更手段を備え、初期設定中の第1の時点より前又は後に、熱抵抗変更手段を用いて第1の時点とは外部熱抵抗条件を異ならせた後、体表面側及び外気側温度センサのそれぞれの温度測定値が一定になった第2の時点における体表面側及び外気側温度センサの温度測定値を、第2の時点の温度測定値の組として取得するため、外部熱抵抗条件を、いつでも、能動的に変更することが可能となり、初期設定をいつでも行うことができる。従って、深部温プローブを体表面に装着したままの状態でも、必要に応じて適宜初期設定ができ、長期間の間欠的な測定でも、誤差の少ない深部体温の測定値を得ることができる。
その結果、深部温プローブを装着したまま、連続した長期間の深部体温の間欠的測定が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る深部体温測定システムSについて、
図1〜
図6を参照しながら説明する。
本明細書において、深部体温測定システムS及び深部体温測定方法の測定対象となる身体とは、病院の入院患者、外来患者を含む患者、健康診断や検査を受ける被検者、臨床試験を受ける被験者、その他健常者を含む人の身体のほか、治療、健康診断、実験を受ける動物の身体も含む。
また、本明細書において、「温度測定値が一定」とは、温度測定値が、任意の値で変化しない定常期に達したことを意味し、所定時間内、例えば5秒間の温度変化が、所定の閾値、例えば、0.1℃を超えない状態をいう。
【0029】
<深部体温測定システムS>
図1は、本実施形態の深部体温計としての深部温プローブ1を用いた深部体温測定システムSの概略構成を示す図である。
本実施の形態に係る深部体温測定システムSは、
図1で示すように、人の体表面に装着される深部体温計としての深部温プローブ1と、深部温プローブ1の初期設定時に用いられる着脱式カバー2と、深部温プローブ1の温度センサの測定データを受信するレシーバ150と、レシーバ150から測定データを情報通信網N経由で受信する医療機関内サーバコンピュータ(以下、「サーバ」という。)101及びクラウドサーバ130と、医療機関内端末コンピュータ(以下、「端末」という。)120、被測定者の端末140と、を主要構成要素とする。
本実施形態の深部体温測定システムSでは、深部温プローブ1の一対の温度センサ13、15で測定された温度測定データが、レシーバ150に送信され、レシーバ150に格納された深部体温測定プログラムにより、深部体温が計算され、情報通信網N経由で医療機関内サーバ101、クラウドサーバ130に送信される。なお、深部体温測定プログラムを深部温プローブ1又は医療機関内サーバ101、クラウドサーバ130に格納し、深部温プローブ1又は医療機関内サーバ101、クラウドサーバ130で、深部体温を計算してもよい。
【0030】
深部温プローブ1は、被測定者の体表面に接着剤や粘着テープで直接貼り付けられ、深部体温を測定する深部体温計である。深部温プローブ1の縦断面の概略構造を、
図2に示す。
深部温プローブ1は、
図1、2に示すように略円板状に形成されており、略円板状の断熱材11と、断熱材11の体表面側の面に設けられた円板状の熱伝導部材12と、熱伝導部材12の一方の面に形成された第1の温度センサ13と、断熱材11の体表面逆側の面に設けられた円板状の均熱材14と、均熱材14の体表面側の面に形成された第2の温度センサ15と、均熱材14の体表面逆側に設けられた回路基板16と、を備えている。
【0031】
断熱材11は、発泡ゴムやポリウレタン等の公知の断熱素材から形成されている。
第1、第2の温度センサ13、15は、公知の温度センサ用金属材料からなる薄膜から形成されている。第1、第2の温度センサ13、15は、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、加熱蒸着法等の真空成膜法や、塗布法等を用いることができる。好ましくは、より薄く均一に薄膜を形成できる真空成膜法を用いるのがよい。更に好ましくは、均一に成膜ができるスパッタリング法を用いるのがよい。
【0032】
このように、第1、第2の温度センサ13、15を薄膜センサから構成しているため、深部温プローブ1の小型化が可能となる。また、薄膜センサは非剛性で、軟性であるため、温度センサ13、15を軟性部材として構成可能となり、身体の体表面に密着し易く、長期間の装着が可能で、装着している感覚を被測定者に与えない、装着感のない深部温プローブ1を構成可能となる。従って、例えば、絆創膏のように、被測定者の体表面に接着剤や粘着テープで貼付しても、被測定者の動きや衣服に引っ掛けることにより外れることのない深部温プローブ1を提供可能となる。その結果、1〜2日間、又は数日間、或いは1週間以上の長時間装着して、日常生活を普段通りに送りながら、無線で測定データをサーバ101、130に送信した深部体温の連続測定も可能となる。
なお、温度センサ13、15の代わりに、バルクの金属線からなる温度センサとしてもよい。
【0033】
均熱材14は、アルミニウム板等からなり、外部の急激な温度変化によって、第2の温度センサ15の測定値が不安定になるのを防ぐため、第2の温度センサ15に検出される温度を均一化するために備えられる。
均熱材14の体表面逆側には、所定の空間を置いて回路基板16が設けられている。回路基板16は、第1、第2の温度センサ13、15から温度の測定データを受け取って一時的に保存する記憶部と、外部の送受信機からデータ送信要求情報を受信し、記憶部から測定データを取得して外部の送受信機に送信する送受信部と、記憶部、送受信部等を制御する制御部と、を備えている。
なお、本実施形態では、第1、第2の温度センサ13、15の測定データをレシーバ150に送信しているが、これに限定されるものではなく、回路基板16に、第1、第2の温度センサ13、15の測定データから深部体温を計算する深部体温測定プログラムを格納し、回路基板16で深部体温を計算して、レシーバ150に送信するように構成してもよい。
【0034】
着脱式カバー2は、発泡ゴムやポリウレタン等の公知の断熱素材から形成され、
図1、
図2に示すように、深部温プローブ1を内部に格納可能な凹部2が一方の面側に形成された略円板状体からなる。
【0035】
レシーバ150は、被測定者自身が所持するスマートフォン、タブレット端末、メディアプレーヤ等の携帯デバイスや、病室に設置された無線送受信機等の情報通信機器であって、深部温プローブ1から第1、第2の温度センサ13、15の測定データを受信して、深部体温を計算し、保存する。
レシーバ150のハード構成を
図3に示す。レシーバ150は、データの演算・制御処理装置としてのCPU71、記憶装置であるRAM72、ROM73、HDD74及び記憶媒体装置75を備えている。
【0036】
CPU71は、ROM73又はHDD74に記憶されているプログラムにしたがって各種の処理を実行するようになされている。RAM72には、CPU71が各種の処理を実行するために必要なデータなどが記憶される。
また、入力装置77は、タッチパネルやキーボード、マウス等からなり、CPU71に指令を入力するとき操作される。
【0037】
表示装置78には、所定の書式で表示される情報、画像等が出力表示される。
記憶媒体装置75は、外付けハードディスク、光磁気ディスク、CD−R、DVD、メモリスティックなどにより構成され、情報通信網Nを介して送信されてきたデータを適宜記憶し、またこれを読み出すことができるようになされている。
通信装置76は、情報通信網Nに対してデータを送信し、また情報通信網Nを介して供給されたデータを受信するようになされている。
【0038】
HDD74には、深部体温測定方法を実行する深部体温測定プログラム、既知の断熱材11の熱抵抗値Rs、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを算出するための式(5)(6)、深部体温Tbを算出するための式(7)、深部体温測定プログラムの
図5、6の処理で算出した身体の皮下組織の熱抵抗値Rb、深部体温Tbの値を格納する測定結果テーブルが、格納されている。
【0039】
情報通信網Nは、インターネット、イントラネット等の情報通信網からなる。
医療機関内サーバ101は、被測定者の深部体温測定を実行、管理する医療機関等の施設に設けられ、深部体温の計算値を、被測定者毎に蓄積し、端末120に、医師、看護師等の医療従事者が閲覧可能に表示するためのサーバコンピュータである。
医療機関内サーバ101は、医療機関の基幹サーバコンピュータと別体として設けられてもよいし、一体として設けられていてもよい。医療機関内サーバ101には、医療機関内のLAN(Local Area Network)により、端末120、レシーバ150が接続されている。
【0040】
医療機関内サーバ101は、データの演算・制御処理装置としてのCPU、記憶装置であるRAM、ROM、HDD、記憶媒体装置及び通信装置を備えている。
また、その他、入力装置である不図示のキーボードとマウスが、CPUに所定の指令を入力するとき適宜操作可能に設けられていてもよい。
さらに不図示の表示装置、プリンタが、所定の書式で表示される情報、画像等が出力表示可能に設けられていてもよい。
【0041】
HDDには、医療機関の患者や健康診断受診者のうち、深部体温の被測定者を特定する患者・受診者IDと、被測定者の担当医師等の担当医療従事者の特定情報と、レシーバ150から定期的に受信した被測定者の深部体温の計算値と、深部体温を測定した日時の情報とが、紐付けられて登録された深部体温測定値テーブルが格納されている。
【0042】
<深部体温計算方法>
深部温プローブ1を用いた深部体温の計算方法について、説明する。
図4は、第1、第2の温度センサ13、15を備えた本実施形態の深部温プローブ1における熱流を、電気回路相似法を用いて電気回路として表現した図である。
図4に示すように、熱流を電流i、温度を電圧T、熱抵抗を電気抵抗Rとすることで、深部温プローブ1における熱流は、
図4の等価回路により表現することができる。
【0043】
図4において、Tbは深部体温を、Rbは身体の皮下組織の熱抵抗値を、Ts1は第1の温度センサ13において検出された温度を、Rsは第1、第2の温度センサ13、15間の断熱材11の熱抵抗値を、Ts2は第2の温度センサ15において検出された温度を、Rcは、外部熱抵抗、つまり、第2の温度センサ15と外界の室温との間の熱抵抗値を、それぞれ表している。
【0044】
体表面の任意の領域を断熱材で覆うと、その部分では体表面からの熱放散が少なくなるので、外気に露出している部分よりも体表面の温度が高くなる。
従って、身体の体表面に深部温プローブ1を装着したとき、断熱材11および直下の皮下組織において、熱流iが一定で、体表面に対して垂直上向きであるとすると、熱流は断熱材11の熱抵抗値Rsと温度差(Ts1−Ts2)から求められる。同様に、断熱材11に覆われた部分の皮下組織内の深部温と体表面の温度差(Tb−Ts1)と身体の皮下組織の熱抵抗値Rbとからも熱流iは求められるため、深部体温Tbは、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbと未知数としての断熱材11の体表面側及び外気側の温度Ts1、Ts2と熱抵抗値Rsとから求められる。
従って、
図4の等価回路では、熱流iについて、
【0046】
が成り立つ。
身体の皮下組織の熱抵抗値Rbは個人差があり、また、頭部、腹部などの部位によっても異なるため、一定値に定めることは困難である。そこで、本実施形態では、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを予め定めるための初期設定を行う。
【0047】
本実施形態の初期設定では、まず、深部温プローブ1が身体の体表面に装着され、深部温プローブ1を露出した第1の測定条件(外部熱抵抗条件1)で、第1、第2の温度センサ13、15の温度Ts1、Ts2が安定した定常状態において、第1、第2の温度センサ13、15の温度Ts11、Ts21の測定値を得る。
次いで、連続して、深部温プローブ1が身体の体表面に装着され、深部温プローブ1を着脱式カバー2で覆った第2の測定条件(外部熱抵抗条件2)で、第1、第2の温度センサ13、15の温度Ts12、Ts22の測定値を得る。
ここで、第1の測定条件と第2の測定条件とでは、第2の温度センサ15と外界の室温との間の外部熱抵抗Rcが異なる。これら外部熱抵抗Rcが相互に異なる第1、第2の測定条件を、外部熱抵抗条件1、2とする。
【0048】
身体の皮下組織の熱抵抗値Rbが一定であるとして、外部熱抵抗Rcを変化させた二つの外部熱抵抗条件1、2とすることにより、それぞれの外部熱抵抗条件1、2について、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを未知数として、深部体温Tbを、第1、第2の温度センサ13、15の温度差と熱抵抗値Rsとから求め、それらの深部体温の式を連立させて身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを消去すれば、深部体温Tbを求めることができる。
【0049】
つまり、外部熱抵抗条件1の場合、(1)式より、
【0051】
となる。
但し、外部熱抵抗条件1における第1、第2の温度センサ13、15の検出温度をTs11、Ts21、深部体温をTb1とする。
(2)式を変形し、
【0053】
が得られる。
一方、外部熱抵抗条件2の場合、(1)式より、
【0055】
となる。
ここで、外部熱抵抗条件1と2における測定は、初期設定が行われる短期間の間、例えば10分程度の間に行うので、初期設定中、Tb1とTb2とは等しいとみなすことができ、
【0057】
に置き換えることができる。ここで、Tbiは、初期設定中における深部体温であって、初期設定における深部体温Tbの初期値である。
従って、(4)式と(3)式とから、
【0062】
となる。
このTbiを、Tbi=Tb1として、初期設定におけるTbの初期値として(3)式に代入すると、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbは、
【0064】
となる。
以降のn番目の測定値(T1n、T2n)において、深部体温Tbnは(2)式から
【0068】
を得ることができる。
以上のように、深部温プローブ1が身体の体表面に装着され、第1、第2の温度センサ13、15の温度Ts1、Ts2が安定した定常状態において、外部熱抵抗値を変化させた二つのタイミングで、第1、第2の温度センサ13、15の温度Ts1、Ts2を測定することにより、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを得ることができる。その結果、その後の深部温を、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbと、第1、第2の温度センサ13、15の測定値Ts1、Ts2から、計算することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、外部熱抵抗条件1、2に外部熱抵抗値を変化させるために、外部熱抵抗条件1、2のうちの一方では、深部温プローブ1を露出した状態とし、他方では、深部温プローブ1に着脱式カバー2を被覆した状態としているが、これに限定されるものではなく、ほかの方法により、相互に異なる外部熱抵抗条件1、2を調整してもよい。
例えば、深部温プローブ1の外気側に設けたヒータにより、深部温プローブ1を外気側から加熱してもよいし、室温を変化させてもよい。
【0070】
<深部体温測定方法>
以下、本実施形態に係る深部体温測定方法について説明する。
本実施形態の深部体温測定方法では、まず、本実施形態の深部体温測定方法を実行する深部体温測定プログラムを、レシーバ150のHDD74に格納し、インストールする。
被測定者の体表面、例えば、腹部等の体表面に、深部温プローブ1を、公知の医療用接着剤又は粘着テープで貼付する。
【0071】
次いで、深部温プローブ1の初期設定を行う。深部温プローブ1の初期設定は、深部温プローブ1を装着したときに実行される。また、深部体温測定プログラムのアラーム機能で、例えば、1日毎、数時間毎等の所定時間ごとに、「初期設定してください」等のメッセージ表示及びアラーム音を鳴動するアラームを設定しておき、このアラームが起動したときに、実行してもよい。また、運動や入浴の前後等に初期設定を行ってもよい。
初期設定は、深部温プローブ1を身体に装着した後であれば、いつでも行うことができる。従って、本実施形態の深部体温測定システムSにより、数日間連続して間欠的に深部体温の測定データを取得したい場合には、例えば、一日一回など、定期的に
図5の初期設定フローによる初期設定を行うことにより、より誤差の少ない深部体温の測定データを得ることが可能となる。
まず、深部温プローブ1の初期設定を行う操作者は、レシーバ150の表示装置78の画面上で、深部体温測定プログラムを立ち上げ、不図示の初期設定トップページを表示させる。
【0072】
不図示の初期設定トップページにおいて、「初期設定ボタン」をクリックすると、レシーバ150の画面上に、「初期設定:1回目の測定中です。動かずにお待ちください」との表示をし、
図5の初期設定フローの処理をスタートする。
図5の初期設定フローの処理は、レシーバ150のCPU71により、制御される。
まず、ステップS1で、Ts2の測定値が、上昇中又は下降中の過渡状態でない定常状態にあるか判定する。このステップの処理は、第2の温度センサ15の測定値Ts2を、所定時間毎、例えば2秒ごとに取得し、2秒前の測定値Ts2との差が0.2℃より小さいかを判定することにより行う。
【0073】
Ts2の測定値が、上昇中又は下降中の過渡状態であって、定常状態でない場合(ステップS1:No)、ステップS1に戻り、Ts2の測定値が、上昇中又は下降中の過渡状態でない定常状態にあるか判定する。つまり、Ts2の測定値が上昇中又は下降中の過渡状態である場合には、ステップS1を繰り返し、Ts2の測定値が定常状態になるまで待つ。
Ts2の測定値が、定常状態にある場合(ステップS1:Yes)、つまり、Ts2の測定値と2秒前の測定値との差が0.2℃より小さい場合、ステップS2で、第1、第2の温度センサ13、15の測定値を取得し、外部熱抵抗条件1の測定温度の組Ts11、Ts21として、RAM72に保存する。
【0074】
次いで、ステップS3で、レシーバ150の画面に、「着脱式カバー2を、深部温プローブ1に被せて下さい」との、外部熱抵抗条件の変更を指示する表示を行い、ステップS4で、Ts2の測定値が、外部熱抵抗条件変更前のTs21から変わったか判定する。このステップの処理は、第2の温度センサ15の測定値Ts2を取得し、この測定値Ts2とTs21との差が0.2℃より大きいかを判定することにより行う。
Ts2の測定値が、外部熱抵抗条件変更前のTs21から変わっていない場合(ステップS4:No)、ステップS5で、「着脱式カバー2の深部温プローブ1への被覆が検知されません。着脱式カバー2を、深部温プローブ1に被せて下さい」とのエラー表示をし、ステップS4に戻り、Ts2の測定値が、外部熱抵抗条件変更前のTs21から変わったか判定する。つまり、Ts2の測定値が外部熱抵抗条件変更前のTs21から0.2℃より大きい値で変わるまで、ステップS4、S5を繰り返し、Ts2が異なる外部熱抵抗条件に変更されるまで待つ。
【0075】
Ts2の測定値が、外部熱抵抗条件変更前のTs21から変わった場合(ステップS4:Yes)、つまり、Ts2の測定値が外部熱抵抗条件変更前のTs21から0.2℃より大きい値で変わった場合、ステップS6で、ステップS1と同様の判定により、Ts2の測定値が、上昇中又は下降中の過渡状態でない定常状態にあるか判定する。
Ts2の測定値が、上昇中又は下降中の過渡状態であって、定常状態でない場合(ステップS6:No)、ステップS6に戻り、Ts2の測定値が、上昇中又は下降中の過渡状態でない定常状態にあるか判定する。つまり、Ts2の測定値が上昇中又は下降中の過渡状態である場合には、ステップS6を繰り返し、Ts2の測定値が定常状態になるまで待つ。
Ts2の測定値が、定常状態にある場合(ステップS6:Yes)、ステップS7で、第1、第2の温度センサ13、15の測定値を取得し、外部熱抵抗条件2の測定温度の組Ts12、Ts22として、RAM72に保存する。
【0076】
次いで、ステップS8で、レシーバ150のHDD74に予め格納された二つの式
【0079】
と、断熱材11の熱抵抗値Rsの値を取得し、式(5)(6)、Rsの値、ステップS2、7で取得したTs11、Ts21、Ts12、Ts22の値を用いて、身体の皮下組織の熱抵抗値Rbを算出し、レシーバ150のHDD74の測定結果テーブルに、その時点の日時の情報を付して保存する。このとき、測定結果テーブルに、既にRbの値が保存されている場合には、前回初期設定時のRbの値であるため、ステップS8で算出した新しいRbの値で上書きをする。
その後、ステップS9で、レシーバ150の画面に、「初期設定を終了しました」との終了メッセージを表示し、
図5の初期設定フローの処理を終了する。
【0080】
次いで、深部温プローブ1による深部体温測定を行う。深部体温測定は、
図5の初期設定フローによる初期設定終了後又はレシーバ150の深部体温測定プログラムの不図示の画面上で深部体温測定の開始が指示された後、予め設定された時間毎に、自動で実行される。
図5の初期設定フローによる初期設定が終了したか、レシーバ150の深部体温測定プログラムの不図示の画面上で深部体温測定の開始が指示されたか、前回測定終了後予め設定された時間(例えば、30分、1時間、3時間、8時間、24時間等)が経過したことが、レシーバ150のタイマで検知された場合、
図6の測定フローの処理をスタートする。
図6の測定フローの処理は、レシーバ150のCPU71により、制御される。
ステップS21で、第1、第2の温度センサ13、15の測定値の組Ts1n、Ts2nを取得する。
次いで、ステップS22で、レシーバ150のHDD74に予め格納された式
【0082】
及び断熱材11の熱抵抗値Rsと、ステップS8で保存した身体の皮下組織の熱抵抗値Rbの値を取得し、取得したこれらの式及び値と、ステップS1で取得したTs1n、Ts2nの値を用いて、深部体温Tbを算出し、レシーバ150のHDD74に格納された測定テーブルに、その時点の日時の情報を付して保存する。また、レシーバ150の画面に、「〇年〇月〇日 ○時〇分の深部体温は、36.0℃です」など、深部体温値を表示してもよい。
その後、
図6の測定フローの処理を終了する。
【0083】
<試験例1>
試験例1として、本実施形態の深部体温測定システムSによる深部体温測定の実証シミュレーション試験を行った。本試験例では、着脱式カバーの有無によって、第1、第2の温度センサに温度変化が確かに起こるかを確認した。
試験例1の実験系Eを、
図7に示す。
本試験例の実験系Eは、恒温槽Bと、恒温槽Bに貯留させたオイルOと、オイルO上に、不図示のワイヤーにより固定したPC基板201と、PC基板201上に公知の医療用テープ217で固定され、表裏面にそれぞれ第1、第2の温度センサ213、215が固定された保温被覆材211と、PC基板201上に医療用テープ217で固定され、表裏面にそれぞれ第1、第2の温度センサ233、235が固定されたシリコンゴム材231と、保温被覆材211及びシリコンゴム材231ごとPC基板201を着脱可能に被覆する着脱式カバー202と、K型シース熱電対からなる室温測定用の室温温度計241と、オイル油温測定用のオイル温度計242と、を備えて構成した。
保温被覆材211表裏の第1、第2の温度センサ213、215、シリコンゴム材231表裏の第1、第2の温度センサ233、235、室温温度計241、オイル温度計242は、不図示のケーブルで不図示の情報記録装置に連結し、各センサ及び温度計の測定値を記録した。
【0084】
保温被覆材211及び着脱式カバー202には、不織布、ポリエステル極細繊維、不織布、アルミ薄膜、ウレタンコーティングの順に積層されてなる保温覆布(東レ・メディカル株式会社製サンステート(登録商標))を用いた。
シリコンゴム材231には、タイガースポリマー株式会社製SRシート厚み1mmを用いた。
第1、第2の温度センサ213、233、215、235には、薄膜温度センサ(ジオマテック株式会社製)を用いた。
【0085】
本試験例は、次の方法により行った。
まず、恒温槽Bの不図示の温度設定手段により、オイルOの温度を38℃に調整した。また、PC基板201上に、表裏面にそれぞれ第1、第2の温度センサ213、215が固定された保温被覆材211と、表裏面にそれぞれ第1、第2の温度センサ233、235が固定されたシリコンゴム材231と、を公知の医療用テープ217で固定した。
オイルOの温度が38℃で一定になった後、PC基板201をオイルOに浸し、
図7の状態とした。
PC基板201をオイルOに浸した時点を0分とし、20分の時点に、着脱式カバー202でPC基板201の外気側の面全体を覆った。その後、40分の時点で、着脱式カバー202をPC基板201表面から除去した。0分の時点から60分の時点まで、保温被覆材211表裏の第1、第2の温度センサ213、215、シリコンゴム材231表裏の第1、第2の温度センサ233、235、室温温度計241、オイル温度計242の温度測定値を記録した。
【0086】
結果を、
図8に示す。
図8に示すように、0分でPC基板201をオイルOに浸した時点から、保温被覆材211表裏の第1、第2の温度センサ213、215、シリコンゴム材231表裏の第1、第2の温度センサ233、235の温度測定値は上昇し、20分経過時点では、温度測定値の経時変化が小さくなって、温度測定値が一定の定常状態となった。
その後、20分の時点で着脱式カバー202を被せると、保温被覆材211表裏の第1、第2の温度センサ213、215、シリコンゴム材231表裏の第1、第2の温度センサ233、235の温度測定値は上昇し、35分時点では、温度測定値の経時変化が小さくなって、温度測定値が一定の定常状態となった。
【0087】
40分の時点で着脱式カバー202を除去すると、保温被覆材211表裏の第1、第2の温度センサ213、215、シリコンゴム材231表裏の第1、第2の温度センサ233、235の温度測定値は下降し、50分時点では、温度測定値の経時変化は小さくなって、温度測定値が一定の定常状態となった。
以上の結果より、保温被覆材211表裏の第1、第2の温度センサ213、215、シリコンゴム材231表裏の第1、第2の温度センサ233、235を固定したPC基板201を、38℃のオイルO油面に浸したとき、着脱式カバー202を被せたとき、着脱式カバー202を除去したときの3つの状態に変化させた場合に、温度変化が起こることを確認できた。
【0088】
この実験系Eは、人体の深部体温測定系を模したシミュレーション実験であり、オイルO、PC基板201は、それぞれ、人体の身体深部及び深部温プローブ1を模したものである。
つまり、PC基板201をオイルOに浸した
図8の0分の時点が、人体の皮膚に深部温プローブ1を接触させて貼付した時点に対応し、18〜20分の時点が、深部温プローブ1に着脱式カバー2を被せずに、第1、第2の温度センサの温度測定値が一定になった第1の時点に対応する。20分の時点が、深部温プローブ1に着脱式カバー2を被せることにより、外部熱抵抗条件を異ならせた時点に対応する。33〜40分の時点が、深部温プローブ1に着脱式カバー2を被せた異なる外部熱抵抗条件で、第1、第2の温度センサの温度測定値が一定になった第2の時点に対応する。
【0089】
従って、実験系Eにより、着脱式カバー2(202)の有無により、オイルO油面、すなわち体表面の温度測定値が変化することが確認された。このことより、着脱式カバー2(202)を着脱して外部熱抵抗条件を変化させた上記実施形態の深部体温測定システムS及びその方法により立式ができ、深部体温の測定が計算により可能であることが分かった。
また、第1、第2の温度センサ213、233、215、235を表裏に固定する断熱材11として、
図8の実験系Eでは保温被覆材211、シリコンゴム材231の2種類を用いて実験を行ったところ、第1、第2の温度センサの温度差は、シリコンゴム材231では、1℃未満であったのに対し、保温被覆材211では、3〜4℃が確保されていた。
【0090】
第1、第2の温度センサの温度差が3〜4℃確保されていれば、上記実施形態の断熱材11の性能としては十分であり、上記実施形態の断熱材11として、保温被覆材211が使用できることが分かった。
なお、
図8において、第1、第2の温度センサ213、233、215、235の0分における温度測定値が、外気温よりも1〜2℃程度高くなっているのは、PC基板201のセッティングを、38℃に設定したオイルOの油面から1〜2cm離れた位置で行ったことにより、オイルOからの熱影響を受けたためと思われる。室温温度計241は、オイルOの油面から5cm程度の位置に設置したため、第1、第2の温度センサ213、233、215、235よりも、オイルOからの熱影響を受けにくい状態にあった。
更に、合計4つの第1、第2の温度センサ213、233、215、235の中でも、保温被覆材211のオイルO側の面に固定された第1の温度センサ213の温度測定値のみが、0分の時点において、他の3つの温度測定値よりも高くなっていた。これは、第1の温度センサ213が、第2の温度センサ233、235よりも熱源であるオイルO側にあり、かつ、保温被覆材211の断熱効果がシリコンゴム材231よりも高かったためと思われる。