特開2016-114909(P2016-114909A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 清原光学の特許一覧

<>
  • 特開2016114909-顕微鏡 図000003
  • 特開2016114909-顕微鏡 図000004
  • 特開2016114909-顕微鏡 図000005
  • 特開2016114909-顕微鏡 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-114909(P2016-114909A)
(43)【公開日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20160527BHJP
   G02B 7/28 20060101ALI20160527BHJP
【FI】
   G02B21/00
   G02B7/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-255912(P2014-255912)
(22)【出願日】2014年12月18日
(71)【出願人】
【識別番号】501193218
【氏名又は名称】株式会社 清原光学
(74)【代理人】
【識別番号】100087446
【弁理士】
【氏名又は名称】川久保 新一
(72)【発明者】
【氏名】清原 元輔
(72)【発明者】
【氏名】清原 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】野口 正人
【テーマコード(参考)】
2H052
2H151
【Fターム(参考)】
2H052AB01
2H052AD06
2H052AD32
2H052AF14
2H151AA11
2H151CB04
2H151CB20
(57)【要約】
【課題】顕微鏡において、対物レンズとステージとの相対的高さを変えずに、ピント合わせをすることによって、ピント合わせの時間を短縮することができる顕微鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】光軸上で、接眼レンズまたは受光素子と対物レンズとの間、または、対物レンズと被検物との間に、平行平面を具備し、しかも、空気の屈折率と異なる屈折率を具備する媒体であって、プレパラート以外の媒体を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡において、
光軸上で、接眼レンズまたは受光素子と対物レンズとの間、または、対物レンズと被検物との間に、平行平面を具備し、しかも、空気の屈折率と異なる屈折率を具備する媒体であって、プレパラート以外の媒体を有することを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
上記媒体は、互いに異なる屈折率を具備する複数の媒体で構成され、
上記複数の媒体を一平面上に載置する板部材と;
上記複数の媒体を上記一平面上で移動する移動手段と;
を有するであることを特徴とする顕微鏡。
【請求項3】
請求項2において、
上記移動手段は、上記複数の媒体を一平面上で回転または往復動する手段であることを特徴とする顕微鏡。
【請求項4】
請求項2において、
上記顕微鏡の結像面に設置されている受光素子と;
上記被検物からの光が上記受光素子に射入することを許容するシャッターと;
上記複数の媒体の移動に同期して、上記シャッターを切る同期手段と;
を有することを特徴とする顕微鏡。
【請求項5】
請求項1において、
上記媒体は、ガラスであることを特徴とする顕微鏡。
【請求項6】
請求項1において、
上記媒体は、液晶であり、上記液晶の屈折率を変化させる屈折率変化手段を有することを特徴とする顕微鏡。
【請求項7】
請求項6において、
上記顕微鏡の結像面に設置されている受光素子と;
上記被検物からの光が上記受光素子に射入することを許容するシャッターと;
上記屈折率変化手段による上記液晶の屈折率の変化に同期して、上記シャッターを切る同期手段と;
を有することを特徴とする顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の顕微鏡において、ピント合わせをする場合、被検物を載置するステージと、対物レンズとの間の距離を調整して、ピント合わせする(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−98256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動的にピント合わせするオートフォーカス装置には、モータが使用され、このモータで対物レンズの高さまたはステージの高さを変化させ、ピントが合った位置で、対物レンズまたはステージの移動を停止する。
【0005】
オートフォーカス装置を使用する場合、対物レンズまたはステージの高さを移動するモータは、対物レンズまたはステージの位置を移動できるだけのパワーを必要とする。したがって、ピント合わせにある程度の時間がかかり、迅速性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、顕微鏡において、対物レンズとステージとの相対的高さを変えずに、ピント合わせをすることによって、ピント合わせの時間を短縮することができる顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の顕微鏡は、光軸上で、接眼レンズまたは受光素子と対物レンズとの間、または、対物レンズと被検物との間に、平行平面を具備し、しかも、空気の屈折率と異なる屈折率を具備する媒体であって、プレパラート以外の媒体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、顕微鏡において、対物レンズとステージとの相対的高さを変えずに、ピント合わせをすることによって、ピント合わせの時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1である顕微鏡100を示す正面図である。
図2】本発明の実施例2である顕微鏡200を示す斜視図である。
図3】本発明の実施例3である顕微鏡300を示す斜視図である。
図4】本発明の実施例4である顕微鏡400を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1である顕微鏡100を示す正面図である。
【0012】
顕微鏡100は、ステージ10と、対物レンズ40と、ガラスG1と、CCD50とを有する。
【0013】
ステージ10は、被検物20を載置し、この被検物20の上にプレパラート30を載せて被検物20の拡大像を視認する。
【0014】
ガラスG1は、平行平面を具備し、しかも、空気の屈折率と異なる屈折率を具備する媒体である。また、ガラスG1は、図示しない移動手段によって、図1の矢印で示す移動方向D1に沿って、水平に平行移動する。
【0015】
CCD50は、その受光面51に被検物20の拡大像が結像し、この結像を電気信号に変換する。
【0016】
つまり、実施例1の顕微鏡100は、光軸A1上で、接眼レンズまたは受光素子と対物レンズ40との間、または、対物レンズ40と被検物20との間に、平行平面を具備し、しかも、空気の屈折率と異なる屈折率を具備する媒体であって、プレパラート以外の媒体を有する。
【0017】
次に、実施例1の動作について説明する。
【0018】
まず、図1において、ガラスG1が存在していない場合、被検物20の図1中、上面部分にピントが合っていたとする。
【0019】
被検物20として、たとえばICウェハーを使用し、この直径が30cmであったとする。ICウェハーの直径が30cm程度であり、その縁で支持すると、ICウェハーの中央部分がやや凹み、たとえば数μm程度凹み、全体が湾曲する。この状態で、顕微鏡100を介してICウェハーの表面を観察する場合、まず、ICウェハーの縁部分を視認するために、対物レンズ40の高さを調整することによって、ピントを合わせる。
【0020】
次に、ICウェハーの中心に向かって視認するために、ICウェハーを載置しているステージ全体をX−Y方向に手動等で移動し、ICウェハーの中心が対物レンズ40の真下に来るように、ICウェハーを相対的に移動する。この移動に伴って、ピントが次第に合わなくなる。これは、ICウェハーの縁部分までの距離よりも、ICウェハーの中心に近い部分までの距離が長くなるためにピントが合わなくなる。
【0021】
ここで、対物レンズ40の高さを調整するのではなく、対物レンズ40とCCD50の受光面51との間の光路中に、ガラスG1を挿入する。これによって、対物レンズ40を経由した被検物20からの光が、ガラスG1によって屈折し、焦点距離が長くなる。このときに、ICウェハーの中心に近い部分までの距離が長くなっているので、ICウェハーの中心部分のピントが合う。これによって、対物レンズ40の高さを調整せずに、ピントを合わせることができる。
【0022】
この場合、対物レンズ40を光軸A1方向に移動してピントを合わせようとすると、対物レンズ40が重いので、ピントが合うまでの時間が長くなる。一方、顕微鏡100では、光路中にガラスG1を挿入することによって、ピントを合わせ、しかもガラスG1が比較的、軽いので、ピントが合うまでの時間が短い。
【0023】
つまり、ガラスG1を図1に示すように、対物レンズ40とCCD50の受光面51との間であって、光路中に存在させると、ガラスG1の屈折率が空気の屈折率よりも大きいので、被検物20の図1中、下面部分にピントが合う。つまり、顕微鏡100では、対物レンズ40の高さを調整せずに、ピント位置を変化することができる。すなわち、焦点深度を変化させることができる。なお、ガラスの屈折率は、通常、1.4〜2.4である。また、対物レンズ40よりもガラスG1が軽いので、対物レンズ40を移動させるよりも、ガラスG1を移動させる場合の方が容易かつ迅速である。
【0024】
実施例1では、対物レンズ40とCCD50の受光面との間の光路中で、ガラスG1を挿抜するようにしているが、このようにする代わりに、対物レンズ40と被検物20との間の光路中で、ガラスG1を挿抜するようにしてもよい。
【実施例2】
【0025】
図2は、本発明の実施例2である顕微鏡200を示す斜視図である。
【0026】
顕微鏡200は、図1に示す顕微鏡100においてガラスG1の代わりに、回転板60を設けた実施例である。
【0027】
回転板60は、厚さが互いに異なる同じ素材のガラスG1、G2、G3、G4を同心円上に設けた板であり、図示しない回転手段によって、上記同心円の回転中心61を中心として回転される。この場合、モータ等で回転するようにしてもよく、人間が手で回転するようにしてもよい。
【0028】
このように、回転板60を回転することによって、光軸A1上に、ガラスG1、G2、G3、G4のどれかが、光軸A1を横切ることによって、被検物20の拡大像がCCD50の受光面51に送られ、ガラスG1、G2、G3、G4のうちで光軸A1を横切る位置に存在しているガラスの屈折率に応じて、被検物20のいずれの高さに対応する部分にピントが合う。
【0029】
顕微鏡200では、回転板60を回転するだけで、光路中の屈折率を変えることができる。これによってピントを合わせているので、ピントを合わせるための焦点距離を多段階で調節することができ、その焦点距離調整作業が容易である。
【0030】
なお、ガラスG1、G2、G3、G4を互いに異なる厚さにして、ガラスG1、G2、G3、G4の素材が異なっても屈折率が互いに同じであってもよい。さらい、ガラスG1、G2、G3、G4を互いに同じ厚さにして、ガラスG1、G2、G3、G4の屈折率が互いに異なるようにしてもよい。
【0031】
ここで、回転板60に目印または小さな透孔を、ガラスG1〜G4の位置とは別に設け、この目印または透孔を、図示しないセンサが検出し、センサが検出した位置に応じて、図示しないシャッターを切るようにすれば、ガラスG1〜G4のいずれかが光軸A1を横切るタイミングに同期してシャッターを切ることができる。
【0032】
そのシャッターを切ったときの画像がボケていたとしても、他のタイミングでシャッターを切った場合の画像のピントが合っていれば、その画像を採用するようにすればよい。
【0033】
なお、回転板60に、4枚のガラス以外の複数のガラスを設けるようにしてもよい。また、回転板60に2つの透孔を設け、一方の透孔に1枚のガラスを設け、他方の透孔にはガラスを設けずに透孔のままとしてもよい。
【0034】
実施例2では、対物レンズ40とCCD50の受光面との間の光路中で、回転板60のガラスG1〜G4を通過させるようにしているが、このようにする代わりに、対物レンズ40と被検物20との間の光路中で、回転板60のガラスG1〜G4を通過させるようにしてもよい。
【実施例3】
【0035】
図3は、本発明の実施例3である顕微鏡300を示す斜視図である。
【0036】
顕微鏡300は、顕微鏡200において、回転板60の代わりに、移動板70を設けた実施例である。
【0037】
移動板70は、厚さが互いに異なるガラスG1、G2を一平面上に設けた板であり、図示しない移動手段によって、移動板70を、図3中、左右に往復動される。
【0038】
このように、移動板70を往復動することによって、ガラスG1、G2のどちらかが、光軸A1を横切ることによって、被検物20の拡大像がCCD50の受光面に送られ、ガラスG1、G2のうちで光軸A1を横切る位置に存在しているガラスの屈折率に応じて、被検物20のどれかの高さ位置でピントが合う。
【0039】
ここで、回転板60に目印または小さな透孔を、ガラスG1、G2の位置とは別に設け、この目印または透孔を、図示しないセンサが検出し、センサが検出した位置に応じて、図示しないシャッターを切るようにすれば、ガラスG1、G2のどっちかが光軸A1を横切るタイミングに同期してシャッターを切ることができる。また、あるタイミングでシャッターを切ったときの画像がボケていたとしても、他のタイミングでシャッターを切ったときの画像のピントが合っていれば、その画像を採用するようにすればよい。
【0040】
なお、ガラスG1、G2を互いに同じ厚さにして、ガラスG1、G2の屈折率を互いに異ならせるようにしてもよい。また、ガラスG1、G2を互いに異なる厚さにして、ガラスG1、G2の屈折率を互いに同じにするようにしてもよい。
【0041】
実施例3では、対物レンズ40とCCD50の受光面との間の光路中で、ガラスG1、G2を挿抜するようにしているが、このようにする代わりに、対物レンズ40と被検物20との間の光路中で、ガラスG1、G2を挿抜するようにしてもよい。
【0042】
実施例1〜3では、屈折率を変化させる部材としてガラスを使用しているが、平行平面を具備し、しかも、空気の屈折率と異なる屈折率を具備し、光を透過する媒体であれば、ガラス以外の部材を使用するようにしてもよい。
【実施例4】
【0043】
図4は、本発明の実施例4である顕微鏡400を示す斜視図である。
【0044】
顕微鏡400は、顕微鏡200において、回転板60の代わりに、液晶80と印加電圧制御手段81とを設けた実施例である。
【0045】
液晶80は、印加電圧を変えると、それを通過する光の屈折率が変わる。そして、印加電圧制御手段81が発生する電圧の値を変えることによって、液晶80の印加電圧が変わり、液晶80を通過する光の屈折率が変化する。ここで、被検物20の拡大像がCCD50の受光面に送られ、このときの屈折率に応じて、被検物20のどの高さかの部分にピントが合う。
【0046】
ここで、印加電圧制御手段81が出力する電圧に応じて、図示しないシャッターを切るようにすれば、出力電圧に同期して、シャッターを切ることができる。つまり、屈折率変化手段による液晶80の屈折率の変化に同期して、上記シャッターを切る同期手段を設ければよい。
【0047】
あるタイミングでシャッターを切ったときの画像がボケていたとしても、他のタイミングでシャッターを切ったときの画像のピントが合っていれば、その画像を採用するようにすればよい。
【0048】
実施例4では、対物レンズ40とCCD50の受光面との間の光路中に、液晶80を設けているが、このようにする代わりに、対物レンズ40と被検物20との間の光路中で、液晶80を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、対物レンズ40とCCD50の受光面との間の光路中と、対物レンズ40と被検物20との間の光路中との双方に、ガラスG1を設けるようにしてもよい。さらに、双方の光路中に、回転板60を設けるようにしてもよく、双方の光路中に、移動版70を設けるようにしてもよく、双方の光路中に液晶80を設けるようにしてもよい。
【0050】
そして、上記各実施例において、受光素子50の代わりに、人間が視認するための接眼レンズを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
100、200、300、400…顕微鏡、
10…ステージ、
20…被検物、
40…対物レンズ、
60…回転板、
G1、G2、G3、G4…ガラス、
70…移動板、
80…液晶。
図1
図2
図3
図4