【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例1のマッサージ機を備えた椅子Aを示し、マッサージ機3を椅子1に設置した状態を示す斜視図である。
図2(a)は椅子1を折り畳んだ状態を示す側面図であり、
図2(b)はマッサージ機3を折り畳んだ状態を示す側面図である。
図3は、マッサージ機3の座部30の下に高さ調節部材Cを差し込んだ状態を示す部分側面図である。
図1に示すように、マッサージ機を備えた椅子Aは、マッサージ機3と、これが取り外し可能に前面側に設置される折り畳み収納可能な椅子1とからなる。なお、図面において、マッサージ機3の背凭れ部40の下端側部背面側から延びる電源コードと電源プラグ、リモコンとリモコンコードについては、便宜上省略している。また、以下の説明において、椅子1と対向する位置から視認した状態を基準として、使用者が座る側を前面側又は前方、その反対側を背面側又は後方とする。
【0012】
まず、椅子1の各構成について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、椅子1は、前脚部11と後脚部13とからなる脚フレーム部10と、手摺部15と、背凭れフレーム部21と座面フレーム部23とからなる本体フレーム部20と、本体フレーム部20に張られたシート部27とから構成されている。本体フレーム部20は、マッサージ機3の幅、高さ及び奥行きにちょうど合う大きさに形成されている。また、本体フレーム部20に張られたシート部27は、適度な強度と弾力性を備えたメッシュ素材からなり、シート部27をフラットな面とすることにより、マッサージ機3の破損や故障を防ぐとともに、後述する下揉み玉42が患部に加える力が弱まることを防いでいる。
【0013】
椅子1は、リクライニング機能を有し、手摺部15の下面には、その長手方向に沿って長穴17(
図2(a)参照)が形成されており、長穴17の底部(
図1においては上方となる面)には、脚フレーム部10上端の突起部aを引っ掛けることができる7つの係止穴19が設けられている。背凭れフレーム部21は、座面フレーム部23及び手摺部15と、本体回動軸25及び回動軸bによりそれぞれ回動可能に連結されている。突起部aを引っ掛ける係止穴19の位置を変えることにより、背凭れフレーム部21の、座面フレーム部23に対する傾斜角度を変化させることができ、例えば、その傾斜角度は略100度〜略140度の間で調節できるように構成されている。なお、座面フレーム部23は略水平であるが、後方に向かって僅かに下方に傾斜しており、使用者がゆったりと座れるようになっている。
【0014】
前脚部11と後脚部13、前脚部11と座面フレーム部23、後脚部13と本体回動軸25とは、回動軸c、回動軸d、折畳用金具e等によりそれぞれ回動可能に連結されており、
図2(a)に示すように、マッサージ機3を外した椅子1はコンパクトに折り畳むことができ、収納する際に場所を取らない。また、脚フレーム部10、手摺部15及び本体フレーム部20は、主として軽量な金属素材(例えば、軽量アルミ合金)からなり、シート部27は上述したようにメッシュ素材のシート状部材であるので、容易に持ち運ぶことができる。
【0015】
次に、マッサージ機3について、図面を参照して説明する。
マッサージ機3は、使用者の臀部を保持する座部30と、使用者の背部を保持する背凭れ部40と、使用者の頭部を保持するピロー部50と、背凭れ部40の下端部と座部30の後端部を繋ぐ繋ぎ部33と、ピロー部50を背凭れ部40の上面側上方に支持する支持部材35と、背凭れ部40の前後に着脱可能に取り付けられる背シート部材37(
図1においては背面側に取り付けられている)とからなる。
【0016】
次に、マッサージ機3の各構成について説明する。
マッサージ機3の座部30は略等脚台形形状であり、内部に振動機構などを有する。本実施例においては、3段階の強さ調節可能なバイブレーター機能を有する部材(図示せず)が搭載されており、振動により血流を促進し、大腿部から臀部の筋肉のコリをほぐすことができる。なお、正面視において、座部30の左側縁部には、各揉み玉を制御するためのリモコンを収納するリモコンポケットP(
図2(b)参照)が設けられている。
【0017】
マッサージ機3の繋ぎ部33は、柔軟性を有する素材(例えば、合成皮革や布など)からなる略矩形のシート状であり、背凭れ部40の下端部と座部30の後端部とを遊びを設けた状態で繋いでいる。よって、
図1に示すように、マッサージ機3を椅子1に設置した際には、少し撓んだような状態となる。繋ぎ部33を設けたことにより、
図3に示すように、使用者は必要に応じて座部30と椅子1の座面との間にクッション等の高さ調節部材Cを差し込んで、座面を所望の高さに調節することができる。
【0018】
また、マッサージ機3は、上述の繋ぎ部33を有することにより、コンパクトに折り畳んで収納することができる。具体的には、
図2(b)に示すように、背シート部材37を背凭れ部40前面側に取り付けて、それを挟み込むように座部30を背凭れ部40前面側に屈曲させる。なお、詳細は後述するが、ピロー部50も背凭れ部40に近づけるように折り畳むことができる。
【0019】
マッサージ機3の背凭れ部40は、略矩形状であり、その中央部分には縦中心線に対して線対称に、上下動可能な2つの下マッサージ手段41を内蔵している。下マッサージ手段41は、それぞれ、背凭れ部40の前面側からその一部が突出するように設けられた2つの下揉み玉42を有している。下マッサージ手段41は、背凭れ部40の内部において、上端部から下端部に掛けて左右並行するように形成されたレール部材に噛合する歯車(図示せず)によって、上下方向に移動自在に設けられている。よって、使用者はリモコンを操作することにより、背中のコリが溜まっている患部の位置に下揉み玉42の位置を合わせて所望の箇所のみを集中的に揉みほぐしたり、背中の上下の全範囲又は一部範囲に移動させて広い範囲を押し伸ばしてほぐしたりすることができる。また、下マッサージ手段41は、後述する3次元動作機構により、間隔幅の調節が可能であるので、下揉み玉42の位置を、使用者の体型や患部の位置に合うように調節することができる。
【0020】
背凭れ部40の下マッサージ手段41には、下揉み玉42の先端部の3次元的な動きを可能とする3次元動作機構が搭載されている。ここで、3次元動作機構について、図面を参照して説明する。
図4は、下マッサージ手段41の概略を説明するための正面図である。なお、
図4において、背凭れ部40は、便宜上省略している。
図4に示すように、下マッサージ手段41は、図示しない駆動手段を有する略直方体形状の本体部41aと、本体部41aの駆動手段により回転する円筒カム41bと、円筒カム41bの回転動作により揺動する揺動部材41cと、揺動部材41cの動き(回転)を規制する動作規制部材41dとを、3次元動作機構として有している。
【0021】
本体部41aは、上述したレール部材に上下移動可能に取り付けられ、円筒カム41bは、本体部41aの前面から前方に突出するように設けられた中心軸を回転軸としている。動作規制部材41dは、本体部41aから前方に突出する略矩形状の部材であり、その中央に前後方向(円筒カム41bの中心軸と平行)に延びる長孔である動作規制孔Mが設けられている。
【0022】
揺動部材41cは、正面視略二等辺三角形状の部材であり、略中央部分には円筒カム41bに嵌め込むための貫通孔Qが形成され、貫通孔Q内面からは円筒カム41bのカム溝に係合する従動凸部(図示せず)が突設されている。また、揺動部材41cは、その頂角部分から外方へ突出するように形成された緩嵌凸部Nと、その両底角部分に前方に突出するように配設された略半球形状の下揉み玉42とを有する。
【0023】
円筒カム41bが回転すると、動作規制部材41dの動作規制により緩嵌凸部Nが支点となり、下揉み玉42は、前後方向に波打つように3次元に揺動する。よって、2つの下揉み玉42は互いの突出高さを異にするように、上下方向、左右方向及び前後方向に移動し、使用者のコリが溜まっている筋繊維を人の手指のような動きで揉みほぐすことができる。また、上述したように下マッサージ手段41自体を上下移動させつつ、下揉み玉42を3次元動作させることができるので、集中して患部を揉みほぐすだけでなく、背中全体の血流が改善するようにマッサージすることも可能である。さらに、下揉み玉42はヒーター機能(後述する上揉み玉86と同様)も有しており、患部を温めることができる。
【0024】
マッサージ機3の外装は主として、汚れにくい合成皮革からなるが、背凭れ部40の前面側の下揉み玉42が移動する背凭れ中央部43は強度と弾力性を有するメッシュ素材からなる。背凭れ中央部43をメッシュ素材とすることにより、下揉み玉42の動きを妨げることがない。また、ヒーター機能を動作させた際に下揉み玉42から発せられる熱で効率的に患部を温めるとともに、背凭れ部40内部に熱がこもるのを防ぐことができる。また、背凭れ部40の背面側は、椅子1のシート部27に滑ることなく保持されるように合成繊維からなる。なお、座部30の背面側(下面側)も合成繊維からなる。
【0025】
背凭れ部40の上面には、ピロー部50を支持する支持部材35の下端部を嵌め入れるための嵌入穴46を有する係止具45が左右2箇所に取り付けられている。ここで、支持部材35は、略円柱状の部材であり、その前面側には縦方向に複数の凹状の係止凹部36が形成されている(
図7参照)。係止具45は、この係止凹部36と係合する係止凸部(図示せず)を有し、係止具45の後方の高さ調節ボタンを押すことにより係合状態を解除して、支持部材35の突出長さを調節できる構成となっている。これにより、使用者は、ピロー部50を所望の高さに調節することができる。なお、本実施例においては、支持部材35に4つの係止凹部36が、略3cmの長さに亘り等間隔に設けられているが、ピロー部50の上下調節可能高さやその間隔がこれに限られないのは勿論である。
【0026】
2つの係止具45の間には、後述する背シート部材37を着脱可能に取り付けることができるように、背シート部材取付部47としての面ファスナーが縫い付けられている。また、片方の係止具45の横(正面視において背凭れ部40の上面の左端側)には引出孔48が設けられており、ピロー部50の上揉み玉動作機構60(
図7参照)を電気的に接続するためのケーブルE(
図3参照)が引き出されている。
【0027】
背凭れ部40の両側縁の略中央部には、ベルト部材44がそれぞれその一端側を縫い込むようにして取り付けられている。ベルト部材44は、伸縮性を有する帯状の部材であり、背凭れフレーム部21に掛け回した際に対向する他端側の対面部にはそれぞれ面ファスナーが縫い付けられている。椅子1の前面側に置かれたマッサージ機3は、
図1に示すように、ベルト部材44を背凭れフレーム部21背面側に掛け回して面ファスナーで止めるだけで簡単に固定することができ、椅子1への取り付け・取り外しが容易である。なお、マッサージ機3を折り畳んで収納する際には、
図2(b)に示すように、このベルト部材44を座部30の後面側に回し止めることで折り畳んだ状態を保持させることができる。
【0028】
マッサージ機3の背シート部材37は、背凭れ部40の前面の背凭れ中央部43よりも一回り大きい柔軟性を有する略矩形のシート状部材である。背シート部材37の上部は、上縁部に向かい徐々に幅が狭くなり、上縁部は背凭れ部40上面の係止具45と係止具45の間にちょうど差し入れられる大きさとなるように形成されている。また、上縁部には上述した背凭れ部40上面の面ファスナー(背シート部材取付部47)と対面するように、面ファスナーが縫い付けられており、背シート部材37は背凭れ部40の前面側からも背面側からも取り付けることができるようになっている。背シート部材37は、
図1に示すように、通常はマッサージ機3の背面側に収納しておくが、例えば、背凭れ部40の下揉み玉42の揉み加減が強く感じる場合には、背凭れ部40前面側に取り付けてその強さを減ずることができる。また、マッサージ機3を椅子1から取り外して収納する場合にも、
図2(b)に示すように背凭れ部40前面側に取り付けて、座部30との間に挟む込むことができる。
【0029】
図5は、ピロー部50を説明するための拡大正面図であり、
図6はピロー部50の角度調節機能について説明するための斜視図であり、(a)は前傾させる前の状態、(b)は少し前傾させた状態、(c)は前傾角度を最大にした状態を示す。マッサージ機3のピロー部50は、上述したように、支持部材35により背凭れ部40の上方に支持される。
ピロー部50は、
図5に示すように、正面視において、略矩形状の枕本体部51と、その前面側に取り付けられる略矩形のシート状の保護シート部53と、枕本体部51及び保護シート部53の前面側の開口部54にオープンファスナー(スライドファスナー)Fにより取り外し可能に取り付けられる上揉み玉カバー部55を有する。上述したように、ピロー部50は、支持部材35及び係止具45により上下位置が調節可能であるが、前傾角度も調節可能に保持できるように構成されている。
【0030】
枕本体部51は、略直方体形状をしており、前面側から前方に突出するように設けられる左右2つの上揉み玉86を動作させるための上揉み玉動作機構60と、ピロー部50を前傾させた状態で保持するための角度調節機構90とが内蔵されているが、その詳細については後述する。枕本体部51の下面には、上述の2つの支持部材35の上端側を差し込むための差込孔52が設けられている。なお、この差込孔52は、ピロー部50を前傾させることができるように、その厚さ方向に延びる長穴となっており、後述する本体ケース95の溝97(
図7参照)に対応する位置に設けられている。また、背凭れ部40上面の引出孔48から引き出されたケーブルEは、正面視左側の差込孔52を利用して、枕本体部51の上揉み玉動作機構60に接続されている。
【0031】
シート状の保護シート部53は、その上端部が枕本体部51の前面上縁部に縫い込まれ、枕本体部51の前面側を覆うように取り付けられている。保護シート部53及び枕本体部51の前面上側中央部分には、連通するように切り欠かれた開口部54が設けられている。開口部54の周縁には、オープンファスナーFのテープの一片側が、保護シート部53及び枕本体部51に縫い付けられている。保護シート部53の下側は、
図6に示すように、枕本体部51から離れ前方へ移動可能となっており、ピロー部50の前傾角度・上下位置を調節する際に、使用者の後頭部などを保護し、例えば、使用者の髪の毛が支持部材35などに挟まったりするのを防ぐ。
【0032】
上揉み玉カバー部55には、枕本体部51前面から前方に突出する2つの上揉み玉86に対応するように、2つの山状の凸部56が形成されている。上揉み玉カバー部55の素材は、背凭れ部40の背凭れ中央部43と同様のメッシュ素材を縫合したものである。上揉み玉カバー部55の周縁には、オープンファスナーFのテープの他片側が縫い付けられており、上揉み玉カバー部55はピロー部50に着脱可能に取り付けられる。使用者の後頭部や首などに直接当たる部分であるので、取り外して洗濯することが可能となっている。なお、上揉み玉カバー部55を取り外した際に、内蔵されている上揉み玉動作機構60などがむき出しになるのを防ぐために、上揉み玉カバー部55と二重になるように、少し大きめの布カバー(図示せず)が開口部54を覆うように縫い込まれている。
【0033】
ピロー部50は、角度調節機構90(詳細は後述)により前傾させ、その状態を保持することができる。本実施例においては、
図6(a)に示す前傾前の状態から前傾させる角度を5段階に調節することができ、
図6(b)は2段階前傾させた状態を示し、最大前傾角度は、
図6(c)に示すように略90度となるように構成されている。ピロー部50を前傾角度調節可能とすることにより、後頭部、首筋から肩の所望の位置に上揉み玉86を当てることができる。具体的には、ピロー部50を前傾させない状態においては、後頭部の頭を支える筋肉(後頭筋など)に当てることができ、前傾させることにより首筋に沿うように上揉み玉86を移動させて、その先端部を当てたり、内側側面により首筋を摘むように揉みほぐしたりすることができる。また、前傾角度を大きくすると首の付け根部分や肩の上面側に当てることができ、略直角となる位置まで曲げた際には、肩の上面側に上方から上揉み玉86を当てることができる。このように、ピロー部50を前傾させて、上揉み玉86を後頭部から首、肩への鉛直方向の湾曲(カーブ)に略合うように円弧状に移動させることができる。後述するように上揉み玉86の先端部は、回転移動するので、その回転軸を肩上面に対して垂直になるように当てることで、肩のコリを効果的に揉みほぐすことができる。
【0034】
次に、枕本体部51に内蔵されている上揉み玉動作機構60及び角度調節機構90について、図面を参照して説明する。
図7は、ピロー部50の枕本体部51に内蔵されている部材を示す分解斜視図である。
図8は、ピロー部50に内蔵される傾斜偏心板82を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は前方から視認した状態における正面図、(c)は拡大背面図である。なお、
図7は、枕本体部51の前面側が図面の上側となるように示されている。また、
図8においては、便宜上、取付部84の内部を省略している。
枕本体部51には、
図7に示すように、2つの上揉み玉86を動作させる上揉み玉動作機構60と、支持部材35の上端側に配設される角度調節機構90と、これらが組み入れられる本体ケース95とが内蔵されている。
【0035】
まず、上揉み玉動作機構60について説明する。
上揉み玉動作機構60は、上揉み玉86の駆動源である駆動部61と、駆動部61の動力を伝える2つの伝達部65と、各伝達部65により伝達された動力で動作する2つの上揉み玉部81と、駆動部61及び伝達部65を所定位置に収納するとともに、その前面側(
図7においては上面側)に上揉み玉部81を回転可能に支持する収納部71とを備えている。
【0036】
駆動部61は、ケーブルE(
図5参照)に接続されるモータ62と、モータ62の駆動軸63と、駆動軸63の動きを左右の伝達部65に伝達するウォーム64とを有する。
伝達部65は、ウォーム64により伝達される動力の回転軸方向を90度変えるとともに変速するためのギア部66と、ギア部66により伝達された動力により回転する作動軸69とを有する。ギア部66は、互いに噛合する平歯車である第1ギア67及び第2ギア68からなり、第1ギア67はウォーム64と噛合する。作動軸69の基端側は第2ギア68の中心部に固定され、第2ギア68の回転軸となっている。なお、後述するヒーター機構もケーブルEに接続されている。
【0037】
収納部71は略直方体形状の筐体であり、背面(
図7において下面)が開口した箱状の前ギアケース72と、前面(
図7において上面)が開口した箱状の後ギアケース73とを有する。前ギアケース72及び後ギアケース73には、上述した駆動部61及び伝達部65の各部材を収納するために、隔壁等で区画された複数の収容空間が設けられており、それぞれを所定の収容位置に収納することで位置決めする。また、前ギアケース72の前面上側(
図7においては、右上側)には、作動軸69の先端側を突出させるための貫通孔Hが2つ形成されている。
【0038】
前ギアケース72の前面側に取り付けられる上揉み玉部(上マッサージ手段)81は、作動軸69に固定される傾斜偏心板82と、傾斜偏心板82に固定される弾性部材85と、上揉み玉86とを備えており、上揉み玉86は、弾性部材85に固定される上揉み玉本体部87と上揉み玉本体部87の前方側をカバーする上揉み玉先端部88とを有する。
傾斜偏心板82は樹脂製であり、
図8に示すように、前ギアケース72から突出している作動軸69の先端に固定される台座部83と、台座部83の前面から突出するように形成され、弾性部材85が取り付けられる取付部84とを有する。
【0039】
台座部83は前面(以下、適宜、傾斜面Sという)が傾斜した略円柱形状、取付部84は略円筒形状であり、取付部84は傾斜面Sから前方に突出するように形成されている。後述する弾性部材85、上揉み玉本体部87及び上揉み玉先端部88は、この取付部84の中心線と、各中心線が同一直線上にくるように配設される。なお、この傾斜偏心板82の形状など詳細については後述する。
【0040】
弾性部材85は金属製のコイルバネであり、上揉み玉86をフレキシブルに支持する。
上揉み玉本体部87は外壁部分が樹脂製部材からなる略円筒状の部材であり、内部にヒーター機構(図示せず)を備えている。ヒーター機構は、上揉み玉86にヒーター機能をもたせるために、加熱部材(例えば、赤外線電球など)を内部に保持する。上揉み玉先端部88は中空半球形状の樹脂材であり、上揉み玉本体部87の前方に取り付けることで、上揉み玉86は先端側が半球面状の円筒形状となる。
【0041】
上述のように構成した上揉み玉動作機構60により、回転動作する上揉み玉86は、その先端が円を描くように動くので、様々な向きの筋肉を効果的に揉みほぐすことができる。また、その内側側面部を利用して、首筋の筋肉を摘むように揉みほぐすこともできる。上揉み玉86は、弾性部材85により固定されているので患部への当たりを柔らかいものとすることができ、ヒーター機能を用いれば患部を温めながら揉みほぐすことができる。
【0042】
次に、角度調節機構90について説明する。
角度調節機構90は、支持部材35に本体ケース95を回動可能に取り付けるための支持金具であるケース支持部91と、本体ケース95(ピロー部50)を前傾させた状態で保持可能とするための前傾保持部94とからなる。ケース支持部91は、ケース支持部材92と連結軸93からなり、ケース支持部材92の基端側が支持部材35の先端側に、連結軸93により回動可能に軸支され、先端側は上述した収納部71内に固定される。また、前傾保持部94は、片側の支持部材35及びケース支持部91の連結部分に組み込まれたラチェット機構であり、本実施例においては、5段階に前傾させることができるものを使用している(以下、適宜、前傾保持部94を角度調節部94という)。
【0043】
次に、本体ケース95について説明する。
本体ケース95は、枕本体部51の骨格を形成する略直方体形状の樹脂製部材であり、その前面側に形成された正面視略矩形状の凹状の収納空間96と、この収納空間96から下方(
図7においては、左斜め下方向)に向かって形成された2つの並行する溝97とを有する。収納空間96には、上揉み玉動作機構60等を収容した収納部71が嵌め込まれて固定され、溝97には角度調節機構90の基端側(支持部材35とケース支持部材92の連結部分)が嵌め込まれる。このような構成とすることにより、ピロー部50を角度調節可能に前傾させることができる。
【0044】
ここで、
図8を参照して、傾斜偏心板82の形状について詳細に説明する。
図8に示すように、取付部84は、傾斜面Sに対して略垂直方向に突出するように形成されている。そのため、
図8(c)に示すように、台座部83の中心線Xと取付部84の中心線Yは平行ではなく、その交角θは傾斜面Sの傾斜角度sと同じ角度となる。そして、傾斜偏心板82は、台座部83の中心線Xが作動軸69の中心線と一致するように固定される一方、弾性部材85及び上揉み玉86は、その中心線が、取付部84の中心線Yと同一直線上にくるように配設される。このような構成とすることにより、傾斜偏心板82が回転すると、上揉み玉先端部88(上揉み玉86)が円を描くように動く。また、傾斜面Sから垂直に取付部84を突出させることにより、弾性部材85がどの方向に変形しても上揉み玉本体部87(上揉み玉86)の下縁部が傾斜面Sにぶつかる虞が少なくなっている。
【0045】
さらに、取付部84は、台座部83の中心点Oから傾斜面Sの下方に逸れた位置に、形成されている。このような構成とすることにより、先端の上揉み玉先端部88(上揉み玉86)が描く円の径を大きくなる。台座部83の大きさなどに制限されることなく、上揉み玉先端部88が描く円の径の大きさを調整することができる。
【0046】
傾斜偏心板82の傾斜面Sの傾斜角度s(交角θ)は1度から89度までのいずれかの角度とすることができるが、好ましくは1度から45度までであり、さらに好ましくは1度から30度までである。傾斜角度を大きくすることにより、先端の上揉み玉先端部88が回転して描く円の径をより大きくすることができる。ただし、傾斜角度が大きくなるにつれ、弾性部材85を屈曲させる方向に力が掛かり、破損する虞も大きくなる。なお、上揉み玉86の描く円の径の大きさは、傾斜角度s(交角θ)だけでなく、台座部83の形状(高さなど)、取付部84と中心点Oとの距離、台座部83の傾斜面Sと上揉み玉86先端との距離なども関係する。なお、本実施例においては、後述するように、後頭部や首筋や肩上面の各部を効果的に揉みほぐすのに最適な構成としている。
【0047】
本実施例においては、台座部83の最も厚い部分の高さが略20mmであり、その径を略50mm、傾斜面Sの傾斜角度sを略15度としている。取付部84は、その中心が傾斜面Sの中心点Oから略5mmずれている。また、台座部83の傾斜面Sから上揉み玉先端部88の先端までの長さは略80mmであり、上揉み玉先端部88は略40mmの径の円を描く。上揉み玉86自体の径は略50mmであり、患部に当てられた際に略90mmの径の円を描くようにして揉みほぐす。また、作動軸69の間隔は略120mmとなっており、2つの上揉み玉86の最小間隔は略30mm、最大間隔は略220mmとなるように構成されている。
なお、上揉み玉先端部88が患部に当てられた際に描く円の大きさは、例えば、略10mm〜略60mm(好ましくは、略20mm〜50mm)であってもよく、作動軸69の間隔も略100mm〜140mmの間であればよく、肩上面の筋肉を効果的に揉みほぐせれば図示した実施例に限られないのは勿論である。
【0048】
上述のような構成にすることにより、ピロー部50(上揉み玉86)を略90度まで前傾させた際に、肩上面の首の付け根側のコリが溜まりやすい筋肉を上方から効果的に揉みほぐすことができる。また、ピロー部50(上揉み玉86)を前傾させない状態又は少し前傾させた状態においては、後頭部又は首筋の筋肉を揉みほぐすことができる。
【0049】
また、本実施例においては、上揉み玉86の高さを略80mm〜略90mmとし、その傾斜角度(交角θ)を略15度とすることにより、ピロー部50を首筋に当たるように前傾させた際に、両上揉み玉86の間に首筋の後部が入るので、これを摘むようにして揉みほぐすことができる。また、傾斜している上揉み玉86の回転動作により、必要以上に首筋が入り込むのを防ぐことができる。
なお、上揉み玉86の側面(上揉み玉本体部87)の高さは、例えば、略60mm〜略100mmのいずれかであってもよく、その傾斜角度(交角θ)も略10度〜30度の間であれば好ましいが、これに限らず、首筋を効果的に揉みほぐせるような構成であればよい。
【0050】
このようにマッサージ機3によれば、ピロー部50は、所定の間隔で配設されている上揉み玉86を回転動作させる動作機構を有し、上揉み玉86は、先端が球面状の円筒形状であり、ピロー部50の前面から斜めに突出するように構成されているため、上揉み玉86の先端部は使用者の後頭部や首筋や肩を押しながら回転し、上揉み玉86の先端部の側面側は使用者の首筋を摘むように回転する。また、ピロー部50を深く前傾させることにより、上揉み玉86の先端を肩上面に上方から当てることができる。よって、後頭部から肩上面の各部分の筋肉を効果的に揉みほぐすことができる。
【0051】
次に、マッサージ機を備えた椅子Aの使用方法について簡単に説明する。
使用者は、所望の角度にリクライニングさせた椅子1に座り、リモコンを用いて座部30の振動機構、背凭れ部40の下揉み玉42及びピロー部50の上揉み玉86の位置や動き、ヒーター機能などを操作することができる。使用者は、肩上面から後頭部までのコリが溜まっている箇所に上揉み玉86が当たるように、ピロー部50を所望の角度に前傾させる。なお、角度調節機構90はラチェット機構であり、前傾角度を変更する際にはピロー部50を大きく前傾させることにより係止状態を解除し、背凭れ部40の立ち上がり方向にあうように立ち上げた後に、所望の角度となるように調節することができる。また、身長が低く上揉み玉86の位置が合わない場合や力加減を強くしたい場合ときには、座部30の下又は/及び座部30の上にクッションなどの高さ調節部材Cを入れて調節することができる。
【0052】
図9は、マッサージ機を備えた椅子Aの使用状態を示す一部拡大斜視図である。なお、
図9は、マッサージ機を備えた椅子Aの主要構成を図示した概略図としている。
上述したように、上揉み玉部(上マッサージ手段)81はピロー部50の上側に配設されており、突出している両上揉み玉86の間には空間が設けられている(
図7等参照)。そのため、背凭れ部40(椅子1の背凭れフレーム部21)を立てた状態でピロー部50を少し前傾させた際には、この空間に使用者は後頭部又は/及び首の後部を入れることができる(図示せず)が、深く前傾させた際には枕本体部51の上面前端部が後頭部に当たるため、使用者は、
図9に示すように少しあごを引いてうつむく必要がある。なお、背凭れ部40(椅子1の背凭れフレーム部21)を後傾させて使用する場合には、ピロー部50の上面前端部に後頭部を凭せることができる(図示せず)ので、肩や首の力を抜いた状態で肩上面を揉みほぐすことができる。
【0053】
なお、上揉み玉86を使用しない場合には、ピロー部50の位置を上げてその下側で頭部を支えるようにすることができる。また、マッサージ機3は椅子1から取り外すこともできるので、それぞれを単体使用することも可能である。例えば、マッサージ機3はソファーなどの上において使用することもできる。
収納する際には、それぞれコンパクトに折り畳めるので、置き場所も小さくて済み、家具の隙間などを利用して収納することができる。
【0054】
本発明の実施例1のマッサージ機を備えた椅子Aによれば、背中を揉みほぐす下マッサージ手段41だけでなく、肩上面や首筋等を揉みほぐす上マッサージ手段81を備えているので、それぞれをその部位に適した構成とすることができる。また、上マッサージ手段81を備えたピロー部50を、下マッサージ手段41を備えた背凭れ部40と別体とすることにより、ピロー部50を深く前傾させることができ、肩上面の筋肉を上方から揉みほぐすことができる。さらに、背凭れ部40がピロー部50及び座部30と別体であるので、下マッサージ手段41(下揉み玉42)の上下動の範囲を背凭れ部40の上下幅ギリギリまで設けることができ、背中から腰までの広範囲を揉みほぐすことができる。
【0055】
椅子1はリクライニング機能を有しているので、背凭れフレーム部21の傾斜角度を変えることにより、自身の重みを利用して揉み玉の力加減を調節することができる。椅子1のリクライニング機能、マッサージ機3のピロー部50の高さ調節機能及び角度調節機能は手動で段階的に調節することができるので、容易に同じ位置に設定することができる。身体のコリは、個々の姿勢や癖などにより決まった箇所にでる場合が多いが、一度自分に合う設定位置がわかれば、揉み玉の位置のみをリモコン操作により調節することで同じ箇所を揉みほぐすことができる。
【0056】
マッサージ機を備えた椅子Aは軽量で場所を取らないので、容易に設置、収納することができる。また、効果的に身体の各部分を揉みほぐすことができるにもかかわらず、簡単な構成であるので経済的な価格で消費者に提供することができる。
【0057】
なお、マッサージ機を備えた椅子A、椅子1及びマッサージ機3の各部材の形状、大きさ、構成等は上述した実施の形態に限定されず、前傾可能なピロー部50を備え、肩の上面側を略上方から効果的に揉みほぐすことができればよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。また、「揉みほぐす」とは、使用者の身体に物理的な刺激を加えることであり、上述したような上揉み玉86の回転動作などに限らず、例えば、回動動作、往復動作、突出方向における往復移動、振動などの様々な動作により使用者の身体に刺激を加えてほぐすことをいう。椅子1やマッサージ機3の一部又は全部を一体としたり、椅子1やマッサージ機3の一部を分割した構成とすることもできる。例えば、椅子1のような通常の椅子(リクライニング機能を有無を問わない)自体に嵌入穴46や係止具45を設けて、ピロー部50を支持部材35により前傾可能に支持させてもよい。さらに、その椅子に、座部31又は/及び背凭れ部40を一体的に組み込む込んだ構成とすることも可能である。
【0058】
上述した実施例においては、左右の各支持部材35に係止具45を備えた構成としているが、係止具45をどちらか片方のみとして、ピロー部50の上下位置を調節可能としてもよい。また、ピロー部50の前傾角度及び上下位置調節を手動にて行うようにしているが、リモコン操作により調節可能な構成とすることができるのは勿論であり、その際に検知センサなどを用いて自動で行うようにしてもよい。
また、座部30の高さ調節についても、例えば、座部30と背凭れ部40とを別体とし、互いに嵌合するギアなどを利用するなどして、背凭れ部40が座部30に対して上下移動可能な構成とすることもできる。
【実施例2】
【0059】
次に、実施例2のマッサージ機を備えた椅子Bについて図面を参照して説明する。
図10は、マッサージ機を備えた椅子Bのピロー部50bを説明するための一部拡大正面図であり、
図11は、マッサージ機を備えた椅子Bのピロー部50bを説明するための一部拡大斜視図である。
図12は、マッサージ機を備えた椅子Bの使用状態を示す一部拡大斜視図である。なお、
図12は、マッサージ機を備えた椅子Bの主要構成を図示した概略図としている。
図13は、マッサージ機を備えた椅子Bの繋ぎ部33bを説明するための一部拡大斜視図である。
図10〜
図13に示すように、マッサージ機を備えた椅子Bは、実施例1のマッサージ機を備えた椅子Aと、マッサージ機3のピロー部50の形状及び構成、繋ぎ部33の形状及び構成等が異なる。
【0060】
実施例2のマッサージ機3b(マッサージ機を備えた椅子B)の第一の特徴部分は、ピロー部50bの上面中央部に切欠部U(
図10参照)が形成されていることである。切欠部Uは、ピロー部50bを前傾させた際に、使用者が後頭部又は/及び首の後部を差し入れる空間を確保するために設けられたものである。また、実施例2のマッサージ機3b(マッサージ機を備えた椅子B)の第二の特徴部分は、繋ぎ部33b(
図13参照)に係止部材Kを設けて、背凭れ部40に座部30を着脱自在となるように構成したことである。
以下、実施例1のマッサージ機を備えた椅子Aと異なる部分を図示して説明し、同様又は略同様の構成等については実施例1と同様又は略同様の符号、名称を付す等して重複する説明及び図示は省略する。なお、マッサージ機を備えた椅子Bの構成の概要と第一の特徴部分(ピロー部50b)について説明したのちに、第二の特徴部分(繋ぎ部33b)について説明する。
【0061】
マッサージ機を備えた椅子Bは、
図10〜
図12に示すように、マッサージ機3bと、これが取り外し可能に前面側に設置される折り畳み収納可能な椅子1とからなる。そして、マッサージ機3bは、使用者の臀部を保持する座部30と、使用者の背部を保持する背凭れ部40と、使用者の頭部を保持するピロー部50bと、背凭れ部40の下端部と座部30の後端部を繋ぐ繋ぎ部33bと、ピロー部50bを背凭れ部40の上面側上方に支持する支持部材35と、背凭れ部40の前後に着脱可能に取り付けられる背シート部材37とからなる。なお、
図10〜
図12においては、座部30及び繋ぎ部33b等の図示を省略し、
図13においては、ピロー部50b、支持部材35及び繋ぎ部33b等の図示を省略している。
【0062】
第一の特徴部分であるピロー部50bは、
図10に示すように、正面視において、上側中央部に切欠部Uが形成された略矩形状の本体部57と、略短筒形状の保護カバー部59とからなり、保護カバー部59の上端部は本体部57の背面及び下面に縫い付けられている。また、本体部57は、ピロー部50bの骨格を形成する本体ケース部95bと、これに収納される上揉み玉動作機構60b(図示せず)及び角度調節機構90(図示せず)と、これら全体を覆うカバー部58とから構成されている。
図11に示すように、ピロー部50bは、実施例1のピロー部50と同様、支持部材35及び係止具45bにより背凭れ部40に対する上下位置が調節可能であり、また、角度調節機構90により背凭れ部40に対する前傾角度も調節可能に保持できるように構成されている。
【0063】
本体ケース部95bは、
図10に示すように実施例1の本体ケース部95と異なり、前傾させない状態における上面の中央部に切欠部Uが形成された、外形が略直方体形状の筐体である。この切欠部Uは、横断面が略U字状の、前面から後面に貫通する溝状の空間であり、これにより、実施例1のピロー部50と本実施例のピロー部50bとは、その外形が大きく異なるものとなっている。切欠部Uの切欠深さiは、
図12に示すように、背凭れ部40(椅子1の背凭れフレーム部21)を立てた状態でピロー部50bを深く前傾させても、使用者がうつむこことなく前方(例えば、テレビ画面のある方向など)を向いた状態で首筋の付け根や肩上面を揉みほぐすことができるような大きさとなっている。また、切欠部Uの底面部分は略平面状に形成されており、上方に向かってなだらかに切欠幅(横幅)jが広くなるように形成され、使用者が切欠部Uの内壁面(底面等)に後頭部又は/及び首の後部を保持させて肩上面等を揉みほぐしながら、所望の方向(例えば、家族のいる方向など)に顔を向けるなど適宜頭を左右に動かすことができるような大きさとなっている。
【0064】
本体ケース部95bに収納される上揉み玉動作機構60b(図示せず)は、一対の上揉み玉86bを、実施例1のようなピロー部50の上部ではなく、
図10に示すように、切欠部Uの切り込みの下端部(底面)よりも鉛直方向下方に位置するように、かつ、切欠部Uの縦中心線に対して線対称に位置するように、本体ケース部95bに収納されている。また、一対の上揉み玉86bは、実施例1同様、ピロー部50bの前面から略前方に大きく突出するように設けられているが、実施例1の上揉み玉86よりも突出量(例えば、上揉み玉本体部87の高さ)が小さくなっている。このような上揉み玉86bの位置等の変更は、上述の切欠部Uを設けたことによるものである。
【0065】
カバー部58は、上揉み玉動作機構60b等を収納した本体ケース部95bにフィットするような形状や大きさとなるようにシート状の部材を縫合して、一体的に構成されている。具体的には、背面側と側面側と前面側の水平方向における中央部分には合成皮革が使用され、前面側の他の部分(上揉み玉86bに対応する部分など)には上述したメッシュ素材が使用されている。このように、カバー部58は、耐久性を有するとともに、2つの上揉み玉86bの動きを妨げないような構成となっている。
【0066】
保護カバー部59は、短い略円筒状の、柔軟性を有する合成皮革であり、
図11に示すようにその内部に支持部材35及びケーブルEを囲うことにより、実施例1の保護シート部53と同様の役割を担うものである。つまり、ピロー部50bの前傾角度や上下位置を調節する際に、使用者の後頭部などを保護する。上述のように、ピロー部50bに切欠部Uを設け、上揉み玉86bの位置を変えたことにより、保護カバー部59は実施例1の保護シート部53と異なる構成(形状や取り付け箇所や保護方法等)となっている。なお、
図11に示すように、カバー部58及び保護カバー部59は、オープンファスナーF´により本体ケース部95b等に着脱可能に構成されている。
【0067】
なお、マッサージ機3bにおいては、左右一対の支持部材35及び係止具45bの配設間隔を、実施例1のマッサージ機3に比べて広くなるように配設するとともに、係止具45bに支持部材35を把持する長さの大きいものを使用して、ピロー部50bに掛かる負荷に対する耐久性を強化している。また、このような係止具45b等の変更に伴い、ケーブルEの引出位置(引出孔48等の位置)を中央に移動した構成としている。なお、これらの機能は実施例1のマッサージ機3と変わらないので、詳細については省略する。
【0068】
次に、第二の特徴部分である繋ぎ部33bについて説明する。
図13は、マッサージ機を備えた椅子Bのマッサージ機3bの繋ぎ部33bを正面斜め上方から視認した状態を示す一部拡大斜視図である。なお、
図13においては、便宜上、後述する係止部材K
1,K
2を剥離した状態を図示するために、座部30を前方にずらして示している。
繋ぎ部33bは、
図13に示すように、背凭れ部40の下端部から下方に突出するように形成された背凭れ側繋ぎ部33b
1と、座部30の後端部から上方に突出するように形成された座部側繋ぎ部33b
2と、これらを着脱自在に係止する係止部材K(K
1,K
2)とからなる。背凭れ側繋ぎ部33b
1と座部側繋ぎ部33b
2は、それぞれ柔軟性を有する素材(例えば、合成皮革や布など)からなる略矩形のシート状の部材である。背凭れ側繋ぎ部33b
1と座部側繋ぎ部33b
2には、その相対向する面に互いに係着/剥離可能な一対の面ファスナーK
1,K
2が設けられており、面ファスナーK
1は、背凭れ側繋ぎ部33b
1の背面側に、面ファスナーK
2は、座部側繋ぎ部33b
2の上面側に取り付けられている。なお、面ファスナーK
1,K
2を係着させた際には、実施例1のマッサージ機3の繋ぎ部33と同様に、背凭れ部40の下端部と座部30の後端部とを遊びを設けた状態で繋がれるように構成されている。
【0069】
座部30は、実施例1のマッサージ機3と同様に振動機構(図示せず)を内部に搭載しており、これに電力を供給するために背凭れ部40と座部30とは、ケーブルG(G
1,G
2)より接続されている。背凭れ部40から引き出されたケーブルG
1と座部30から引き出されたケーブルG
2とは、安全性などを確保するために接続部gにより着脱可能となっており、ケーブルGの全長は、例えば、略50cmである。なお、実施例1のマッサージ機3においては、振動機構に電力を供給するケーブルの図示を省略しているが、繋ぎ部33内に配設されている。
【0070】
繋ぎ部33b及びケーブルGを上述のような構成とすることにより、使用者は、繋ぎ部33bの面ファスナーK
1,K
2を剥離して、座部30を背凭れ部40から取り外して使用することができる。例えば、椅子1の前方に設置した台の上に取り外した座部30を置き、椅子1に座って台上の座部30の上にふくらはぎを載せれば、振動機構を動作させることにより、使用者はふくらはぎや膝裏などをほぐすことができる。また、取り外した座部30を足の下に置けば、使用者は足裏をほぐすことが可能となる。ここで、ケーブルGは、使用者が取り外した座部30を移動させて、ほぐしたい所望の箇所に設置可能な構成とされていればよい。なお、このような繋ぎ部33b等の変更に伴い、マッサージ機3bにおいては、リモコンを収納するリモコンポケットP´が、背凭れ部40の正面視左側面の下側部分に、上方に開口するポケットとして設けられている。
【0071】
本発明の実施例2のマッサージ機を備えた椅子Bによれば、実施例1のマッサージ機を備えた椅子Aによる効果に加え、以下のような効果を有する。
実施例1のマッサージ機3においては、
図9に示すように、一対の揉み玉86をピロー部50の上部から大きく突出させ、両上揉み玉86の間に空間を設けた構成としている。このような構成により、背凭れ部40を立てた状態でピロー部50を深く(例えば、略90度)前傾させても、使用者が首を前傾させて少しうつむいた体勢をとるだけで、首の付け根や肩の上面側の筋肉を揉みほぐすことができる。これに対し、実施例2のマッサージ機3bにおいては、ピロー部50bの上部に切欠部Uを設けることにより、ピロー部50を前傾させても使用者の後頭部や首の後部がぶつかることがなく、使用者は前方を向いた状態で後頭部から首筋、首の付け根や肩の上面側の筋肉を揉みほぐすことができる。
【0072】
また、ピロー部50bの切欠部Uには、後頭部又は/及び首の後部をしっかりと凭せ掛けることができ、肩や首の力を抜いてリラックスした状態で肩上面等を揉みほぐすことができる。さらに、切欠部Uは、上述したように使用者が後頭部を動かせるような大きさに形成しているので、所望の左右方向に顔を動かすこともできる。また、首を左右どちらかに傾けることで、コリの強い方を強く揉みほぐすような体勢をとることもできる。
【0073】
さらに、実施例2のマッサージ機3bにおいては、
図13に示すように、繋ぎ部33bを背凭れ部40と座部30とを着脱可能に繋ぐことができるように構成したので、座部30を背凭れ部40から取り外して移動させることができる。よって、使用者は、座部30のマッサージ機構により、臀部や大腿部以外の所望の箇所の筋肉のコリをほぐすのに使用することが可能である。また、係止部材K
1,K
2を、背凭れ側繋ぎ部33b
1と座部側繋ぎ部33b
2にそれぞれ取り付けてあるので、背凭れ部40に座部30を着脱しやすい。
【0074】
なお、マッサージ機を備えた椅子B、椅子1及びマッサージ機3bの各部材の形状、大きさ、構成等は、実施例1と同様、上述した実施の形態に限定されず、ピロー部50bを前傾させた際に使用者が後頭部又は/及び首の後部を差し入れることができる切欠部Uを備えた構成であればよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。例えば、上述した実施例においては、切欠部Uの切欠幅jを上方に向かって徐々に大きくなるように構成して、顔を所望の方向に向けることができる構成としたが、同じ大きさに形成して(切欠部Uを正面視U字状として)顔を前方に向けた状態でしっかり保持する構成としてもよい。
【0075】
また、例えば、切欠部Uの形状や大きさ等を、人の後頭部や首の後部の水平方向又は/及び鉛直方向の湾曲に合うように形成したり、切欠部Uの内壁面に、クッション性を有する部材(例えば、低反発ウレタンフォームを使用した部材)を取り付けるなどとして、使用者の後頭部等にフィットするような構成としてもよい。
【0076】
さらに、上揉み玉86bの大きさ、突出量や位置なども、切欠部Uの形状に合うように、適宜変更できることは勿論である。また、本実施例においては、2つの上揉み玉86bの基端側を収納部71(図示せず)に固定しているが、例えば、実施例1の下揉み玉42と同様に、レール部材とこれに噛合する歯車を用いるなどして本体ケース部95b内を移動可能な構成としてもよい。使用者がリモコン操作などで上揉み玉86bの位置を動かし、2つの上揉み玉86bの間隔を適宜広げたり戻したりできるようにすることで、例えば、肩上面においては、首の付け根側だけでなく腕の付け根側まで揉みほぐすことができる。
【0077】
また、繋ぎ部33bについても、上述した実施の形態に限定されず、係止部材Kにより、座部30を背凭れ部40に着脱自在に繋ぐことができる構成であればよい。本実施例の繋ぎ部33bにおいては、背凭れ側繋ぎ部33b
1と座部側繋ぎ部33b
2とを有する構成として座部30の高さ調節も可能としているが、繋ぎ部33bは、例えば、係止部材Kのみから構成するようにしてもよい。具体的には、テープ幅の広いオープンファスナーを使用して、オープンファスナーのテープの一方の側部を背凭れ部40に、他方の側部を座部30にと、直に係止部材Kを背凭れ部40と座部30とに設けることもできる。この場合、座部30を背凭れ部40から取り外した状態とすれば、マッサージ機3b等をコンパクトに収納できる。なお、係止部材Kは脱着可能な部材であればよく、面ファスナーに限らず、例えば、ボタンとボタンホールとの組み合わせ、雄スナップボタンと雌スナップボタンとの組み合わせ、鉤ホックと鉤受けとの組み合わせなどでもよい。
ケーブルGは、使用者が、臀部や大腿部以外の所望の箇所をほぐすために、適宜座部30を移動させて振動機構を動作させることができるように構成されていればよく、その全長なども上述した構成に限らない。また、座部30の内部には、使用者の身体のコリをほぐすことができるマッサージ機能を有するマッサージ機構を搭載していればよく、上述した振動機構に限らず、例えば、ローラ部材などでもよく、ヒーター機能をさらに備えたものとしてもよい。
【0078】
最後に確認事項として上述した実施の形態から抽出される発明の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、実施例で示した構成要素との対応がわかるように明示しているが、明示した構成に限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0079】
[マッサージ機M1]
使用者の背中を保持する背凭れ部(40)と、前記背凭れ部と別体であり、使用者の頭又は/及び首を保持するピロー部(50)と、前記ピロー部を前記背凭れ部の略上方に支持する支持部材(35)と、を備え、前記ピロー部は、前面上部から略前方に突出するように設けられた左右一対の揉み玉(86)と、前記揉み玉を動作させる動作機構(60)と、前記揉み玉を前傾させてその状態を保持することができる前傾保持部(94)と、を有する、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、背凭れ部と別体であるピロー部を、支持部材を介して背凭れ部に支持させることにより、背凭れ部とピロー部との間に隙間を作ることができ、ピロー部を深く前傾させることができる。また、ピロー部の上部から揉み玉を突出させているので、後頭部だけでなく、頭にぶつかることなくピロー部を前傾させて、肩の上面側の筋肉を略上方から揉みほぐすことができる。
【0080】
[マッサージ機M2]
使用者の背中を保持する背凭れ部(40)と、前記背凭れ部と別体であり、使用者の頭又は/及び首を保持するピロー部(50b)と、前記ピロー部を前記背凭れ部の略上方に支持する支持部材(35)と、を備え、前記ピロー部は、正面視において上側略中央部に形成された切欠部(U)と、前記切欠部の縦中心線に対して略線対称に、前面上部から略前方に突出するように設けられた左右一対の揉み玉(86b)と、前記揉み玉を動作させる動作機構(60)と、前記揉み玉を前傾させてその状態を保持することができる前傾保持部(94)とを有する、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、背凭れ部と別体であるピロー部を、支持部材を介して背凭れ部に支持させることにより、背凭れ部とピロー部との間に隙間を作ることができ、ピロー部を深く前傾させることができる。また、ピロー部の上側略中央部に切欠部が形成されているので、ピロー部を前傾させた際に、使用者はこの切欠部に後頭部等を差し入れて、首を前傾させることなく前方を向いた状態で、肩の上面側の筋肉を略上方から揉みほぐすことができる。また、使用者は切欠部に後頭部等を凭せ掛けるなどしてリラックスした状態で、コリを効果的に揉みほぐすことができる。
【0081】
[マッサージ機M3]
上記マッサージ機M1又はM2において、前記ピロー部は、前記前傾保持部により、前記背凭れ部となす角度が少なくとも略90度となる位置まで前傾可能である、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、肩の上面側の筋肉にを上方から揉み玉を当てることができるので、コリを効果的に揉みほぐすことができる。
【0082】
[マッサージ機M4]
上記マッサージ機M1乃至M3のいずれかにおいて、前記前傾保持部は、前記背凭れ部に対する前傾角度を調節可能に保持することができる、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、前傾角度を調節して、後頭部から首筋、首の付け根や肩の上面側の筋肉を適宜揉みほぐすことが可能である。
【0083】
[マッサージ機M5]
上記マッサージ機M1乃至M4のいずれかにおいて、前記ピロー部は、前記支持部材の突出長さを調節することにより、前記背凭れ部に対して上下方向の位置調節可能に設けられている、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、体型や患部の位置に合うように、ピロー部を上下動させることができる。
【0084】
[マッサージ機M6]
上記マッサージ機M1乃至M5のいずれかにおいて、前記動作機構は、前記揉み玉を回転動作させ、前記揉み玉は、正面視においてその先端部の軌跡が略円形である、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、様々な向きに走る筋肉を効果的に揉みほぐすことができる。
【0085】
[マッサージ機M7]
上記マッサージ機M1乃至M5のいずれかにおいて、前記動作機構は、前記揉み玉を回転動作させ、前記揉み玉は、先端が球面状の円筒形状であり、前記ピロー部の前面から斜めに突出するように、かつ、所定の間隔で配設されたことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、前傾保持部により揉み玉の位置を変えることができるので、使用者は、後頭部や肩のコリに対しては、揉み玉を患部に略対面するように配置し、その先端部で上から押すようにして揉みほぐすことができ、首筋のコリに対しては、一対の揉み玉を患部の両側に配置し、その側面部により摘むようにして揉みほぐすことができる。後頭部から首筋、首の付け根、肩の上面側にかけて、対象箇所に適した方法で揉みほぐすことができる。
【0086】
[マッサージ機M8]
上記マッサージ機M1乃至M7のいずれかにおいて、前記背凭れ部と別体に形成された座部(30)と、前記背凭れ部に前記座部を着脱可能に繋ぐ繋ぎ部(33b)と、をさらに備え、前記座部は、マッサージ機能を有するマッサージ機構を内蔵している、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、使用者は、座部を背凭れ部から取り外し、臀部や大腿部以外の箇所の筋肉のコリをほぐすのに使用することが可能である。
【0087】
[マッサージ機M9]
上記マッサージ機M1乃至M7のいずれかにおいて、前記背凭れ部と別体に形成された座部(30)と、前記背凭れ部と前記座部とを繋ぐ繋ぎ部(33,33b)と、をさらに備え、前記座部は、前記繋ぎ部により前記背凭れ部に対して高さ調節可能に設けられている、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、体型や患部の位置に合わせて、座部を上下動させることができる。
【0088】
[マッサージ機M10]
上記マッサージ機M8又は9において、前記繋ぎ部(33,33b)には、柔軟性を有するシート状の部材が用いられている、ことを特徴とするマッサージ機。
このマッサージ機によれば、着脱や高さ調節を簡単に行うことができる。
【0089】
[マッサージ機を備えた椅子C1]
使用者の背中を保持する背凭れ部(40)と、前記背凭れ部と別体であり、使用者の頭又は/及び首を保持するピロー部(50)と、前記ピロー部を前記背凭れ部の略上方に支持する支持部材(35)と、を備え、前記ピロー部は、前面上部から略前方に突出するように設けられた左右一対の揉み玉(86)と、前記揉み玉を動作させる動作機構(60)と、前記揉み玉を前傾させてその状態を保持することができる前傾保持部(94)とを有する、ことを特徴とするマッサージ機を備えた椅子。
このマッサージ機を備えた椅子によれば、背凭れ部と別体であるピロー部を、支持部材を介して背凭れ部に支持させることにより、背凭れ部とピロー部との間に隙間を作ることができ、ピロー部を深く前傾させることができる。また、ピロー部の上部から揉み玉を突出させているので、後頭部だけでなく、頭にぶつかることなくピロー部を前傾させて、肩の上面側の筋肉を略上方から揉みほぐすことができる。
【0090】
[マッサージ機を備えた椅子C2]
使用者の背中を保持する背凭れ部(40)と、前記背凭れ部と別体であり、使用者の頭又は/及び首を保持するピロー部(50b)と、前記ピロー部を前記背凭れ部の略上方に支持する支持部材(35)と、を備え、前記ピロー部は、正面視において上側略中央部に形成された切欠部(U)と、前記切欠部の縦中心線に対して略線対称に、前面から略前方に突出するように設けられた左右一対の揉み玉(86b)と、前記揉み玉を動作させる動作機構(60)と、前記揉み玉を前傾させてその状態を保持することができる前傾保持部(94)とを有する、ことを特徴とするマッサージ機を備えた椅子。
このマッサージ機を備えた椅子によれば、背凭れ部と別体であるピロー部を、支持部材を介して背凭れ部に支持させることにより、背凭れ部とピロー部との間に隙間を作ることができ、ピロー部を深く前傾させることができる。また、ピロー部の上側略中央部に切欠部が形成されているので、ピロー部を前傾させた際に、使用者はこの切欠部に後頭部等を差し入れて、首を前傾させることなく前方を向いた状態で、肩の上面側の筋肉を略上方から揉みほぐすことができる。また、使用者は切欠部に後頭部等を凭せ掛けるなどしてリラックスした状態で、コリを効果的に揉みほぐすことができる。